シゴト体験① 聴覚障害者 × ホールスタッフ

2月22日O.A.
テーマ「就労」
シゴト体験①
スタジオ出演
聴覚障害者
× ホールスタッフ
◆岡﨑 伸彦(おかざき・のぶひこ)・・・・聴覚障害/シゴト体験者
福島 規子(ふくしま・のりこ)
・・・・・九州国際大学教授/シゴト体験企画提案者
坪井 さやか(つぼい・さやか)
・・・・・番組ディレクター
ナレーション
◆神戸 浩(かんべ・ひろし)・・・・・・・俳優
はるな愛:は~い。 “バリアフリー・バラエティー”「バリバラR」の時間です。パーソナリティーのはるな愛で
す。よろしくピース!「バリバラ R」は、Eテレで放送している障害者情報バラエティー「バリバラ」
のラジオバージョンです。今週と来週シリーズでお伝えするシゴト体験の第1弾です。障害のある人
が、今までやりたくても出来ずにいた仕事に挑戦します!番組を担当した、坪井さやかディレクター
と共に進めていきたいと思います。
坪井 D :よろしくお願いします。
はるな愛:おもしろそうな企画ですね!
坪井 D :はい。実は、この仕事体験は、視聴者の方が考えた企画なんです。ご紹介します。
九州国際大学教授の福島規子さんです。
福島
:よろしくお願いします。
はるな愛:よろしくお願いします。学校では、何を教えていらっしゃるんですか?
福島
:私の専門は、観光が専門です。科目は、ポスピタリィマネージメントとか、社会心理学科の対人コミ
ュニケーション論なんかを教えています。
はるな愛:でも、そもそもなぜ、障害者の人が仕事の体験をするっていう企画をやろうと思ったんですか?
福島
:もとは、2年ほど前に、地元の北九州の7社の企業と、社会人向けに「シゴト体験企画」というのを
作りました。それをやっていたんですけど、去年の夏に、「では、その障害者版をやりましょう」と
いうことで、今回、障害者版のシゴト体験企画、
「オ・シゴト・バリ体験」というのを企画しました。
はるな愛:それは、授業でやられたんですか?
福島
:はい。そうです。ゼミ活動の一つとして、ずっと授業でやっています。
はるな愛:へぇー。「オ!シゴト・バリ体験」っていうことなんですけども、これはどういったことをやるんで
すか?
福島
:障害者の人たちが、シゴト体験するんですけど、実際にいろんな方にインタビューをしてみると、
仕事を楽しいとか、そう思っている障害者の方って、あまりいらっしゃらないんですよね。
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どうしてだろ?って考えていくと、障害者の方が、仕事を選ぼうとしたときの、まず選択の幅が少な
い、もうちょっと仕事自体を楽しいと思う以前に、「こんな仕事があるんだよ」っていうのを、もっ
と知ってほしいなというふうに思いまして、今回「オ!・シゴト・バリ体験」という、いろんなライ
ンナップをそろえたお仕事の体験をしてもらおうということで始めました。で、最終的には、それか
ら独立をして、障害者の方も個人事業主として、自分で、それで飯を食っていくというか、そういう
ような仕事に結びつくようなものを提案できればな、というふうに思って。
はるな愛:えーすごい。すばらしいですね。あらかじめできないみたいなんで、幅を狭めてるかもしれないとこ
ろを、いろんな体験してもらおうということですか?お仕事の。
福島
:そうですね。だから、
「できない」とか、
「やれない」とかじゃなくて、まずは、
「やりたいことは何?」
っていうところから始めたのが、この「オ!・シゴト・バリ体験」です。
で、やはり、障害者といえば、バリバラさんにお願いをしたいなということで、学生の方から NHK
さんのほうに、企画を提案したということです。
坪井 D :というわけで、今回は、聴覚障害のある人がレストランのホールスタッフに初挑戦しました。
では、シゴト体験者をご紹介します。岡﨑伸彦さんです。
岡﨑
:はい、よろしくお願いします。
はるな愛:岡﨑さんは、聴覚障害があるんですよね?
岡﨑
:はい。
はるな愛:スタジオの中に今日は手話通訳の方がいて、私たちの言葉をちゃんと伝えてもらってるんですけど、
私たちの口の動きを読み取ることもできるんですよね。
岡﨑
:みなさんの口の動きを見てたら、大体、言ってることがわかりますので。
はるな愛:なるほどー。
岡﨑
:よろしくお願いします。
はるな愛:岡﨑さんは、どうしてホールのスタッフをしたいと思ったんですか?
岡﨑
:普段は、住宅メーカーの会社で働いているんですけど、基本的にはパソコンと向かい合いながら仕事
をしていることが多くて、あんまり人と話す機会がないんですね。僕、基本的にいろんな人とおしゃ
べりするのが好きなので、接客業っていうのは、けっこう憧れがあったんですね。でも、やっぱり聴
覚障害があって、興味があるけど、なかなか踏み込めないというところがありまして、そこにたまた
ま今回のお話をいただいたので、これはやってみたいと思って挑戦させていただきました。
はるな愛:すごい。でも接客業に対して不安とかなかったですか?
岡﨑
:やっぱり、最初はいろんな不安がありましたね。自分も結構いろんな飲み屋とか行くんですけど、結
構ざわざわしてるじゃないですか。ざわざわしてる中で、本当にお客様の言ってることが分かるのか
どうかっていうのもありましたし、自分が注文を聞く立場やったら、聞き間違えたらいけないですし、
正確にオーダーを通さないといけないし、あとそれ以外にもお店のスタッフさんたちとコミュニケー
ションがうまくとれるかっていうのも結構心配でしたね。
はるな愛:そうですよね、ちょっと心配ですよね。
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坪井D :今回、岡﨑さんが体験してくれたのは、大阪にある鉄板焼きのお店です。オーナーの方も、障害者を
お店で受け入れるのは初めてだったんですけれど、快く引き受けてくださいました。では、4 日間の
体験をされましたが、まず体験の初日、どんな様子だったのか、録音をお聞きください。
録音① 岡﨑さんのシゴト体験【1日目】
(店に入る)
岡﨑:おはようございます。今日からお世話になります。岡﨑と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
ナレ)さっそくオーナーから、仕事内容が伝えられた。
店主:初日なんで、オーダーを的確に通すことと、持って行く事。焦らずに的確にやるように。
大変やと思うんですけどやってください。
スタッフ:テーブルがこちらから、
「1」
「2」・・・。
ナレ)オープン前に、スタッフが、接客の流れを説明する。
(メモをとる)
スタッフ:メニューですね。
ナレ)お昼の12時。
(岡﨑さんが客をテーブルに案内する)
岡﨑:何名様ですか?5名様ですね、あちらへどうぞ。
ナレ)最初のお客さんが来店。岡﨑さんの初仕事!水とおしぼりを運ぶ。
(恐る恐る運んでいる)
その間に、ほかのスタッフが注文を取り始めた。
スタッフ:はい、カレーで。カレー2つ、C2つ、Aで。お待ち下さい。
ナレ)無事に水を出し終えた岡﨑さんだが・・・なぜかテーブルで立ち尽くしている。
(伝票を持って客の顔を見ている)
スタッフ:オーダーOK
ナレ)すでに注文を取り終えていたことに気づいていなかったのだ。
次の注文を取りにいく岡﨑さん。
岡﨑:Aセットの肉ダブルがひとつと、Aひとつと鬼カラ定食がひとつ、はい、かしこまりました。
ナレ)ちゃんと注文を厨房に伝えることができた。
スタッフ:ありがとうございました。
ナレ)初めての接客に奮闘すること2時間。なんとかランチタイムを乗り切った。
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(午後 5 時)
ナレ)しかし、夜の営業は、岡﨑さんにとって厳しい試練が待ち受けていた。
店主:夜は昼みたいにセットメニューじゃないので、ドリンクやったり、ちょっと料理名も細かかったりす
るので、その、もしわからなかった時は、僕らに言って下さい。
ナレ)夜のメニューは、食べ物が100種類、飲み物が150種類に及ぶ。見慣れないお酒の名前もずらり。
果たして岡﨑さんは、注文を的確に取れるのだろうか?
(3 人連れの客に注文を聞く)
お客1:世界一すっぱい…
お客2:世界一すっぱい梅酒がひとつ
岡﨑 :すっぱい梅酒がひとつ。
ナレ)次々としゃべり出す3人。
岡﨑 :飲み方は?
お客1:ロックがいい?
お客2:何でもいい。
お客3:ロックで。
岡﨑 :ロックを3つ?
お客1:いや、1つ。
岡﨑 :冷たい梅酒のロックが1つ。
ナレ)口を読み取るのが間に合わない。さらに・・・
お客2:パッソアオレンジ
岡﨑 :ん?
お客2:パッソアオレンジ。パッソア・・
岡﨑 :パッ?パズドラ?
ナレ) 知らないドリンクメニューも飛び出した!
そしてこちらのテーブルでも・・
お客3:オイルサーディン。
岡﨑 :オイル?
お客3:サーディン。
ナレ) あわててメニューの確認をしていると・・・
(別の客が呼ぶ)
お客4:すみませーん。
お客5:おーい。おーい。
ナレ) 後ろから声をかけられてもなかなか気づけない。
(スタッフにうながされて客の元へ)
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お客4:すみませーん。
お客5:おーい。もうひとつお願いしまーす。
(注文を書きとめている)
店長 :今日はこれで終了です。お疲れ様です。
はるな愛:んー、私も鉄板焼き屋を経営していて、聴覚障害のスタッフがいるんですよ。ホールの接客はしてな
いんですよ。やっぱり難しいことがあると思うし、だから、厨房周りのものは、いろいろやってもら
ってるけど、でもたまに物さげたりとかは、コミュニケーションとりたいと思うから、「出てね」っ
て言ってるんだけど。もうほんとお店側の気持ちと、もうほんと大変そうに苦労してたの、力入りな
がら聞いてましたけど、初日、結構大変でしたしょ?
岡﨑
:そうですね。一番最初に来られたお客様のところで、オーダーが終わっていることに気がつかずに、
ずっと待ってる状態があったんですね。それが一発目のお客様だったので、最初の最初で失敗してし
まったので、そっから身体がガチガチに硬くなってしまいまして。だから、店長の毛利さんからも言
われたんですけども、「岡﨑さんの緊張感がお客様に伝わってしまうので、もっとリラックスして緊
張感がお客様に伝わらないようにして」っていうふうに、アドバイスしていただきまして。
はるな愛:確かにお客さんに緊張が伝わると、ちょっとお客さんも楽しんでご飯食べられないですよね、食事も。
坪井 D :緊張というところでいうと、岡﨑さん、あまりお客さんの方、初日は、あんまり見てなかった・・な
かなか・
岡﨑
:そうですね。
坪井 D :見られなかった。
岡﨑
:それもあって、お客様から呼ばれてるってことに気づけなかったっていうのがあるんですけども。
個人的に、お客様をジロジロ見てると、お客様が気持ちよく食事できないかなっていう、そういう思
いもありまして、できるだけ見ないといけないんですけど、見るならばさりげなく見ていくっていう
スタンスで(笑)
。
はるな愛:
(笑)福島先生、すごい緊張してましたよね。
福島
:そうですね。ほんと大変だなっていうか、見てハラハラしましたね。
はるな愛:福島先生から見て、聴覚障害の人が、接客業するっていうこのコラボは、どうなんですか?
福島
:無理だな、と正直・・・難しいなっていうのはありましたよね。私も旅館やレストランのお手伝いを
してるんですけど、実際に、したいっていうことで言われてきた方がいらっしゃったんですけど
やっぱり、はるなさんほど勇気がなかったので、いやあ、難しいよねって言って、「ちょっとご自分
でよく考えてごらんなさい」って言ってしまったことがあったので。それは、自分で考えさせちゃい
けなくて、環境がそうしてるだけだなっていうのは本当に思ったので。
はるな愛:ほんとにドタバタしてた感がすごいあったんですけど、お客さんに、障害のことは伝えたんですか?
岡﨑
:いや、ちゃんと伝えないといけないなとは思ってたんですけど、実際、お客様が来られると、おしぼ
りとかを出して、水とか出して、オーダーとか確認するんですけど、いつ、どのタイミングで、自分
5
が障害があるということを伝えたらいいのかな、ということを、結構考えれば考えるほど、タイミン
グがわからなくなってきたんですよ。で、「いらっしゃいませ」って言って「聞こえないんですよ」
というのも早すぎますし、おしぼりを出すタイミングで「聞こえない」っていうのも変ですし、
まあ、オーダーを取るタイミングで聞くのがよかったのかな、って今では思うんですよね。
はるな愛:確かに。実際に今言ったように、お客さんが来ると、やることもいっぱいあるから、タイミング逃し
たっていうことね。
坪井 D :今、岡﨑さんが言われたように、障害を伝えるタイミングが難しいということで、岡﨑さんは、ある
対策を考えたんです。
はるな愛:ある対策ってなんですか?
坪井D :実は、この企画は、福島先生のゼミの学生が、コーディネーターとして参加してるんですが、そのコ
ーディネーターと一緒に考えて、名札を作ることにしたんです。
はるな愛:名札!なるほど。そこで説明するってこと?
岡﨑
:そうですね。まず名前を覚えてもらうために、普段は「のぶ」って呼ばれてるんですけども、そのお
店で働いてるときだけは、
「おかぴー」という名前で、あだ名をつけてもらったんですね。
はるな愛:呼びやすいようにね、お客さんがね。
岡﨑
:それで、
「わたしの名前は、おかぴーです」で、その下に「耳が聞こえません」って、耳が聞こえな
いというキーワードだけを、名札に入れるようにしたんですね。
はるな愛:なるほど。よく居酒屋とかで、名前書いて、下に夢とか趣味とか書いてる・・あそこに「耳が聞こえ
ません」って書いたんだ。
岡﨑
:そうです。
はるな愛:なるほどー。福島先生、コーディネーターって、困ったときに必要なんですよね?
福島
:そうですね。まあ、どういうふうに、体験の人たちを、受け入れてくれた人たちを、つないでいくの
に、どういうふうにしていこうか、っていうのを考えるのがコーディネーターだったんですけど、
今回すごくコーディネーターの仕事として気をつけてることは、とにかく指示をしない。例えば、
「こ
うしたらどうですか?」「名札つけたらどうですか?」とか「筆談でやったらどうですか?」ってい
うのは、それをコーディネーターは、できるだけっていうか、そういうのは言わないようにしようと
いうふうに思っていて、ですから障害の人たちが、人によっては、筆談をしてほしい障害の人もいる
だろうし、筆談が嫌だって言う人もいるだろうし、ですからややもすると、「あれもしたらどうでし
ょう?これもしたらどうでしょう?」って、足し算になっていくと思うんですけど、そうではなくっ
て、コーディネーターが大事な仕事っていうのは、どういうふうにしたいのかっていう、そのご自身
の気持ちとか困ってることを、とにかく引き出していくっていうことを、すごく心がけていて。そう
いうのが役割かな、とは考えてました。
はるな愛:なるほどねー。
坪井 D :では、名札を使って、うまくコミュニケーションをとることができたのでしょうか。
坪井D :体験2日目と3日目の様子をお聞きください。
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録音② 岡﨑さんのシゴト体験【2・3日目】
【体験2日目】
ナレ)この日の夜は、11人の団体予約が入っていた。
(オーナー毛利さん)
全部予約がコースなんで、飲み放題、おかわりすごいたくさんされると思います。
で、グラスが空いているお客さんを見つけて、呼ばれる前に積極的に、なにかおかわりどうですかと
か、そういう感じで自分から声をかけていくと。
ナレ)予約のお客さんが来店。岡崎さん、これだけの人数を前に、自分の障害を伝えることができるのか?
岡﨑:すみません、お待たせしました。まず自己紹介を簡単にさせていただきます。
わたし、おかぴーと申します。耳が聞こえないので、大変申し訳ないのですけども
ご注文されるときはメニューを指差していただけると
お客:わかりましたー了解です。
ナレ)自分の障害とともに、具体的な手助けの方法も伝えた!
岡﨑:ビール?はい、ビールの方~123456、ビール6で。
ナレ)複数の注文も間違えることなく対応することができた。岡崎さんは名札のほかに、
もうひとつ工夫を考えていた。それは「立ち位置」
。つねにお客さんの動きが見渡せ
る位置をキープ。そうすると、呼ばれれば、すぐに対応できる。
岡﨑:ハイボールのプレーンが、プレーンとジンジャー。
ナレ)こうして団体の接客を、滞りなく終えることができた。
【体験3日目】
店長&岡﨑:今日は、お客様に、ひと声掛けてコミュニケーションとりながら、自分なりの接し方でいてく
ださい。お願いします。
ナレ) 店には、その日の限定メニューがあり、お客さんに勧めている。
(ボードに書かれている)
なかでも「牛のせせり」はイチ押し。岡崎さんスマホで詳しい内容を検索。
岡﨑 :とにかくレアで高いというのはわかった。
「希少価値がありますんで」って言えるなって。
ナレ) さて、おすすめメニューを使って、岡崎さんならではのコミュニケーションがとれるのか?
(4 人の女性客。お勧めのボードを見せる。
)
岡﨑 :本日のおすすめメニューなんですけど、こちら幻の白い生せんまい。
もうひとつおすすめが牛のせせりっていうのがあるんですけど、牛の首の部分の肉で、
なかなか取れない、希少価値が高い肉になっているんですね。
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お客1:珍しい?それも是非。
岡﨑 :いっちゃいます?ありがとうございます。
ナレ) 説明もばっちり、
「牛のせせり」の注文ゲット!
オススメをきっかけに、会話がはずむ。
お客2:おかぴー大阪?
岡﨑 :ずーっと大阪。
お客3:関西弁じゃない。
岡﨑 :よく言われるんです。手話を使ってるからだと思うんですけど。
お客4:関西弁の手話ってどんなんなん?
岡﨑 :僕が知ってるのは、
「すんまへん」ってこうやるらしいんですよ。
(親指を顎にあててその他の指をひらひらさせる)
ナレ) 得意の手話をまじえて、岡崎さんならではのおもてなしをすることが出来た。
はるな愛:できましたね。自己紹介も、いやあ、ほんとスムーズに。お客さんも協力的なお客さんで、すごいい
い感じでした。どうでした?
岡﨑
:もう自己紹介の効果がほんとに大きかったですね。最初に、「すいません。わたし耳が聞こえないん
です」って言った瞬間に、お客さんがみんな「え?」っていう感じになるんですけど、そこから「耳
が聞こえないので、メニューを指さしでお願いします」って言ったら、「あ、そういうことか」って
いう感じで、みなさん笑顔になるので、多分すごくやりやすかったですね。あとは、おかぴーという
名前が、自分が思っている以上に、結構好評でして、「おかぴー、おかぴー」といろんな人が呼んで
くださって、ただ、あだ名をつけただけなんですけど、それだけで、お客様との親近感がわくように
なったな、と思いました。
はるな愛:また、おかぴーの・・おかぴーって言っちゃった(笑)
岡﨑
:
(笑)いいですよ。
はるな愛:おかぴーのキャラクターも、おしゃべりが大好きで、とにかくコミュニケーションとりたいっていう
気持ちも、お客様に伝わってるんだと思いますよ。
岡﨑
:嬉しいです。
坪井 D :岡﨑さん、立ち位置を気をつけたっていうのもあると思うんですけども、2日目、3日目で、お客さ
んの目線に自分の顔がくるように、しゃがんでっていうのも、結構気をつけたりいろんなところで工
夫してましたよね。
岡﨑
:お客様に呼ばれたらですね、基本的にお客様の近くにいって、お客様の顔と同じ位置に頭を下げるん
ですね。すると、目が合うので、めっちゃくちゃコミュニケーションしてる気持ちになるんですよ。
はるな愛:なるほどねー。テーブルの横にしゃがんで。メニューとって。
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岡﨑
:これだけ近い距離で相手の目を見てると、やっぱり相手もしっかり自分の顔見て、しゃべってくれる
んですね。それがないと、多分メニューを見ながら、ボソボソって言ったりとか、メニュー見ながら
「コレ」みたいな感じになるかなと思ったんですけど、やっぱり目を見てると、ほんとに相手もこっ
ちの顔を見てしゃべってくれるので・・
はるな愛:答えてくれるってことなんですね。
岡﨑
:そうなんです、そうなんです。それでだから「大阪出身?」とか、会話すごい弾んでましたよね。
福島先生どうでした?
福島
:目線を合わせるというのも本当に自然になさっていらっしゃるので。障害だからとかっていうのは関
係なく、普通に接客のセオリーみたいなものがキチッと出来てたし、やっぱり今回の体験を見てて思
ったのは、お客様に助けられているところが先ほどは話にもありましたけど、やっぱりサービスとか
接客って、一緒に作っていくものなんですね。サービスをしてやる側と、もらう側っていうのじゃな
くて、やっぱり対等に目線を合わせて、それは障害者の世界でも同じだと思うんですけど、やっぱり
一緒にその場をつくっていくっていう空気感とか、それがすごくたくみだったし、そのへんが、障害
を感じさせないっていうのは、まさに、今ガッツポーズちっちゃくなさいましたけど。
はるな愛:おかぴーが。
福島
:まさに、おかぴーの目線合わせたりとか、口をちゃんとこちらからも大きく開けて答えるとか、発音
をはっきりするとか、そういう心がけで、その場をすごくいい空気に作っていったっていうのは、や
っぱりプロとして、すごいなあというぶうに思いました。
岡﨑
:ありがとうございます。
福島
:すばらしい。
はるな愛:すばらしい(拍手)
。
♪インターミッション
はるな愛:はるな愛の「バリバラR」
。今日は、シゴト体験の第1弾、障害のある人がホールスタッフの仕事を
体験する企画です。聴覚障害のある岡﨑伸彦さん、企画を提案された九州国際大学教授の福島規子さ
ん、そして、坪井ディレクターと共にお送りしています。さて、いよいよ4日目、最終日ですね!
坪井 D :はい、今回、岡﨑さんの最終目標は、お客さんに、“居心地が良かった、また来たい”と思ってもらえ
るような接客をすることです。
はるな愛:そのとおりです。お店の心得。
坪井D :果たして、それができたのでしょうか。録音をお聞きください。
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録音③ 岡﨑さんのシゴト体験【最終日】
最終日
ナレ) この日一番の団体客、総勢21名。未体験の領域だ。
岡﨑 :本日は当店をご利用頂きありがとうございます。
私、本日ホールを担当させていただきます、おかぴーと申します。
お客1:おかぴー!?
ナレ) これだけの人数の注文をさばききれるのか?
岡﨑 :はいお待たせしました。ライムチューハイでーす。失礼致しまーす。
当店名物のもーり焼きでございます。
ナレ) 飲み物と料理を休むまもなく運び続ける。
お客2:おかぴー!
ナレ) 呼びかけにはすぐさま反応!
だんだんと店内におかぴーコールが飛び交いはじめた。
お客3:おかぴー、おかぴー!
お客4:我らのおかぴー
岡﨑 :ピッチャーを1つ。
ナレ) 実は、こちらのお客さん、老舗の食品メーカーの販売員。
岡崎さんの接客はどう見えたのか?
お客5:笑顔がかわいかった、すごい。かわいいっていうか、母親目線で。
お客6:笑顔や気配りももちろんですけど、状況判断と言いますか、お皿を片づけるタイミングとかも
きっちり見てはったので、すごいなと思いましたね。
ナレ) 接客のプロからも太鼓判を押してもらった。岡崎さん、最後のお見送り。
(ありがとうの手話)
4日間の仕事体験、これにて終了~!
はるな愛:
(拍手)よかった。ほんとにすごい流ちょうに接客してましたよね。ノリノリで。
岡﨑
:ノリノリだった。
はるな愛:ノリノリだった(笑)ノリがすごい感じられましたよね。おかぴーコールもすごい。「我らのおかぴ
ー」って。お客さんからマスコットボーイみたいに、飛び交ってましたけど、最終日終えてどうでし
たか?
岡﨑
:もうサイコーでしたね。おかぴーコールが出ただけでも幸せでしたし、やっぱりお客様とのいい関係
が築けたなって、自分でいうのもあれですけど、本当にそれぐらい手応えのある接客っていうのがで
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きたんだと思うんですね。お客様も自分のことにとても興味を持ってくださって、結構いろいろ聞い
てくださるんですよ。
「出身どこなん?」とか、
「どれぐらい聞こえるん?」みたいな感じで、聞いて
くださりますし。帰り際、皆さんが、「ありがとう」っていう手話を1人一人表して、もう帰ってい
かはったんですよ。それがもうとても感動で、接客業ってこういう楽しいところがあるんだなって、
そういうのを一番感じた瞬間だったね。
はるな愛:あ、そう。どう?思ってたとおりの接客業でした?
岡﨑
:そうですねー。目標に対しては80%ぐらい達成できたかなっていうのがありまして、残りの20%
は何かと言いますと、やっぱり自分の中で、もうちょっとかっこいい接客をしたいなっていうのがあ
ったんですよ。お盆の持ち方。お盆から飲み物をお客様に出すときに、ちょっとこうフラフラしちゃ
うんですね。それを、ビシッと決めたいなっていう目標があったんですけども、それが最終日まで残
念ならがらうまくいかなくて、そういったところが、マイナス20点かなっていうふうに思ってます。
はるな愛:厳しい。私は、もうすごい大成功だと思いますよ。
岡﨑
:あー、嬉しいです。
はるな愛:だって、私涙ぐみそうになっちゃって。やっぱりお客様が、これだけ楽しくご飯食べて、「ありがと
う」って帰ってくれる・・すごい素晴らしかったなって。福島先生、いかがでした?今のを聞いて。
福島
:そうですね。今、一番心に残ったのは、「幸せだな」と思ったっていう。だから、要するに仕事を労
働だけでとらえてるんじゃなくて。やっぱりそこに幸せだったりとか、よかったとか、もっと自分の
目標をしたいとか、自己実現だったり、ほんとに仕事が本来もっているべきものを、すごく訴えてく
れたっていうか。だからそれを見てて感じたし、そういうところがすごく良かったなっていうふうに
思いました。
はるな愛:いやあ、ほんとに。私も勉強になって。自分がしたいことだけじゃなくて、お客様もやっぱり喜んで
幸せになってるから、私も自分の店帰って、(聴覚障害のあるスタッフに)接客してもらおうってい
う気持ちになりましたね。いやあ、でもお店のオーナーさんは、なんて言ってたんですかね?
坪井D :なんと「このまま、うちで働いてほしい」と。
はるな愛:
(拍手)すごーい!いや、すごいですよ。どうですか?今のオーナーさんの言葉聞いて。
岡﨑
:めちゃ嬉しかったです。もう聴覚障害があっても、接客業ができるんだなっていうふうに、感じまし
たし、やっぱりそういうふうに認めてもらえることが、すごい嬉しかったですね。
はるな愛:そういうことをたくさんの方に教えてくれたと思いますよ、今回。おかぴー、今後どうするんですか?
岡﨑
:転職しようかなあ。
一同
:
(笑)
岡﨑
:冗談ですよ~。
はるな愛:冗談で(笑)
。でも、接客業は?
岡﨑
:やってみたいっていう気持ちはありますね、今でも。
はるな愛:そうなんですね。じゃあ、時期見てまた。お店に飛び交うかも知れないですね、おかぴーコールがね。
福島
:ですよね。
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はるな愛:はい、今日は、シゴト体験の第1弾として、聴覚障害のある人がホールスタッフとして働く様子をお
送りしてきましたけども、岡﨑さん、いかがでしたか?
岡﨑
:とてもいい経験をさせていただきました。自分自身聴覚障害があることで、いろんなことに挑戦する
のに、ためらってしまう部分っていうのがあるんですけども、今回の接客業っていうのは、自分の中
では大きな挑戦でして、正直できないかもしれないっていう気持ちもあったんですけど、この4日間
で自己紹介とか、名札を工夫したりとか、いろんな工夫を重ねて接客してみて、「できるじゃんか」
って。聞こえなくてもできるって、ほんとにそういう自信がつきました。
はるな愛:嬉しいですね、福島先生。
福島
:ひと言でいえば、
「できるじゃん」っていうのが全てかなと思いました。
はるな愛:みなさんどうもありがとうございました。
岡﨑
:ありがとうございました。
はるな愛:来週は、シゴト体験の第2弾として、四肢欠損のある人が、メークアップアーティストに挑戦すると
いう体験の様子をお送りします。
さて、はるな愛の「バリバラR」いかがでしたか?感想やメッセージをお待ちしています。
宛先は郵便番号540-8501。NHK大阪放送局、
「バリバラの係」です。
メールは、番組ホームページから送っていただけます。ホームページのアドレスは、nhk.jp/baribara
です。来週の「バリバラR」も、どうぞお楽しみに。はるな愛でした!バイバイ!
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