(独)国立高等専門学校機構

(独)国立高等専門学校機構
独立行政法人
10
目 次
ごあいさつ … …………………… 秋田工業高等専門学校長 山田 宗慶 1
共同研究等成果の概要(掲載内訳)
… ………………………………………… 3
平成23年度 … ……………………………………………………………… 4
専攻科特別研究の概要(掲載内訳)
… ………………………………………… 11
平成23年度 … ……………………………………………………………… 12
研究紹介(掲載内訳)…………………………………………………………… 37
卒業研究テーマ一覧
平成23年度 … ……………………………………………………………… 56
研究紀要目次 … ………………………………………………………………… 63
科学研究費助成事業・共同研究・受託研究・寄附金(平成23年度)
… …… 64
外部資金受入実績一覧 … ……………………………………………………… 65
地域共同テクノセンター平成23年度活動一覧 … …………………………… 66
関連行事紹介 … ………………………………………………………………… 68
規 則
秋田工業高等専門学校地域共同テクノセンター規則 … ……………… 73
秋田工業高等専門学校地域共同テクノセンター運営委員会規則 … … 75
秋田工業高等専門学校地域共同テクノセンター専門部会規則 … …… 76
地域共同テクノセンター運営委員会委員等名簿 … ………………………… 77
秋田工業高等専門学校産学協力会平成23年度事業報告 … ………………… 78
秋田工業高等専門学校産学協力会規約 … …………………………………… 79
秋田工業高等専門学校産学協力会会員企業名簿 … ………………………… 80
あとがき … …………………… 地域共同テクノセンター長 宮脇 和人 81
ご あ い さ つ
秋田工業高等専門学校
校長 山 田 宗 慶
皆様その後お変わりありませんか。我が国は震災からの復興,再生と科学技術イノベーションを
主柱とする第4期科学技術基本計画を昨年立てました。秋田高専もその一端を担い今年も地域共同
テクノセンターを中心に秋田の産業と連携して教育・研究にまい進する覚悟でございます。
さて,今年度起こった高専を象徴する出来事をご紹介します。この4月に古川国家戦略担当大臣
が秋田高専にお見えになりました。3月に大臣視察の打診があったときには半信半疑でしたが,大
臣秘書官の話では,有効求人倍率が非常に低い秋田県にあって秋田高専の求人倍率が非常に高い理
由を大臣ご自身の目でご覧になりたい,とのこと。事前の大臣秘書官や秋田県警などとの何回かの
打ち合わせを経て当日の大臣の視察は順調に進みました。前半の対談では私のほうから秋田高専の
教育・研究活動の概要と秋田高専ならではの研究成果を2-3ご紹介しました。大臣はいずれの内容
にも高い関心を示され,特に秋田杉を原料に牛の飼料をつくる本校教員の研究には大臣の持論でも
ある第6次産業そのものであると喜ばれました。また対談に同席いただいた秋田電子システムズの
吉崎社長からは高専生を多数採用している企業の立場から高専をご紹介いただき高専への強い期待
を大臣に説明していただきました。後半の見学では,高専の特長である実験,実習,次いで学生の
課外活動や教員の研究活動をご覧いただきました。大臣は課外活動を紹介した学生達とすぐ親しく
なられ,大臣自らガッツポーズの音頭を取って学生達と写真に収まるというご機嫌の良さでした。
その後の記者会見やご本人のツイッターで,高専の学生たちについて「みなやる気があっていきい
きとしていました」
,
「就職率が抜群に高い背景には,能力はもとよりこうした意欲ある姿勢がある
のではないでしょうか」と大きな賛辞を頂戴しました。大臣のお褒めの言葉通り秋田高専の今年の
求人倍率は昨年,一昨年を上回り本科で12倍,専攻科で26倍に達しております。
また,大臣にも好評だった秋田高専の地域連携型研究は今年度の地域イノベーションにも採択さ
れました。全国で10件ほどしか採択されないことを考えますと,秋田高専の責任は重大です。また
本研究プロジェクトは震災以後我が国で脚光を浴びている新エネルギー研究も包含しておりますの
で秋田県内外のご支援を是非御願いしたいものです。
昨年の大震災の復興の槌音は遅れているようですし,ギリシアに端を発するEUの経済危機の動
向も気になります。秋田高専も平成16年の独立行政法人化以来毎年のように運営費交付金は減額さ
れ,さらに今年は臨時とは言え教職員の給与が減額されるなど,高専を取り巻く環境も決して穏や
かなものではありませんが,秋田高専はグリーンイノベーション,ライフイノベーションを巻き起
こせるよう頑張っておりますのでこれまで同様ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
―1―
共同研究等
共同研究等成果の概要
平成23年度
掲載内訳
区分
研
究
テ
ー
マ
共同 ニオブ酸リチウムの微細加工ひずみの光学的検出の検討
学 科
・
氏 名
頁
物 質 ・ 丸山耕一 4
〃
負荷共振周波数追従制御に基づく単相高周波インバータの一構成法 電気情報 ・ 安東 至 5
〃
知能制御機器設計技術開発
受託
自動車産業における生産技術高度化に対応した産業用ロボット用
硬さ試験グリッパの開発
宮脇和人
機 械 ・ 木澤 悟 6
小林義和
〃
・ 宮脇和人
7
環境都市 ・ 金 主鉉 8
〃
八郎湖におけるCOD実態調査
〃
佐藤恒之
長寿命水素化分解触媒開発のための選択的溶解法による新規ゼオ
9
物 質 ・
山田宗慶
ライトの合成
共同研究等成果の概要(平成23年度)
共同研究等
研究年度
平成23年度
研究テーマ
ニオブ酸リチウムの微細加工ひずみの光学的検出の検討
本 校
研究組織
企 業
代表者名
区分
共同研究
丸山 耕一
研究者名
企 業 名
長岡技術科学大学
研究者名
磯部 浩已
本共同研究は,ニオブ酸リチウムなどの
誘電圧電材料を,機械工具によって微細加
工した際の,残留歪み等の物性値を光学的
な計測から得ることを最終目標としてい
る。誘電体や高分子素材などの複屈折素子
の性能評価を調べるためには,偏光解析法
や干渉法などが用いられる。複屈折素子を
透過・反射した光は通常楕円偏光である。
補償子を用いた楕円偏光解析は波長分散す
るという欠点があるが,液晶リターダ(ネ
図1 液晶リターダ(LCR)の楕円偏光解析のた
めの透過光学系および制御系の配置図。
マティック液晶による位相子)を用いた場合は改善されるため,後者の方法が着目されている。
ネマティック液晶自体も複屈折特性を有する。このため,本研究では,液晶リターダ(LCR)
の電気光学特性を明らかにすることを目的とした。回転検光子法による偏光解析光学系および
その制御系の概略図を図1に示す。LCR素
子に電圧を印加した際の偏光状態を調べる
ことができる。LCRの45 °方位角(光学遅
延軸方位から反時計周りに45°
)に直線偏
光を入射した際の,透過楕円偏光の位相差
Δ の,LCRの電圧(V)依存性を図2に示す。
2V付近(Δ ≃180°
)で直線偏光と,3V付
近(Δ ≃90°)で円偏光,それ以外では楕
円偏光であることがわかった。この結果か
ら,位相差が複屈折に比例することを用い
図2 LCRの透過光の位相差Δ の印加電圧依存
性。
て,光学遅延軸の屈折率の電圧依存項を算出できた。
今後,図2に示したデータから,超音波振動した微細加工した際の加工歪みによる誘電率変
化を複屈折パラメータから明らかにする。また,素子の構造歪みの他,磁化や電気分極等に付
随する歪み現象の検出にも活用することが期待できる。
―4―
研究年度
平成23年7月〜平成24年3月31日
研究テーマ
負荷共振周波数追従制御に基づく単相高周波インバータの一構成法
本 校
研究組織
企 業
代表者名
区分
共同研究
安東 至
研究者名
企 業 名
長岡技術科学大学
研究者名
大石 潔,佐沢 政樹
研究成果の概要
X線CT装置のインバータは,高効率動作を実現させるために負荷変動に対してインバータ駆
動周波数やインバータ出力電力を制御する必要がある。本研究では,単一インバータの出力電
流センサを用いて負荷共振周波数追従制御と定常時電圧変動率3%以内のインバータ出力電力制
御を達成する電力制御方法を提案,開発した。さらに,その制御方法を応用して補助共振転流
回路などの追加回路無しのソフトスイッチング制御方法と制御情報に関する無駄時間による制
御不安定補償を提案し,実機実験を通してその有効性を確認した。
研究内容
本研究で想定しているX線CT装置は,インバータ,直列共振コンデンサ,非接触リングトラ
ンス,主変圧器,整流器,X線管から構成される。インバータ駆動周波数の負荷共振周波数追
従制御は,インバータゲート信号から出力電圧基本波正負信号を理論的に算出し,インバータ
出力電流正負信号を比較,PI制御補償器を介してインバータ駆動周波数を制御する。出力電力
制御はインバータの位相シフト量をPI制御することにより負荷共振周波数追従制御を達成しつ
つ電力制御を可能にする。また,インバータ駆動周波数を負荷共振周波数より常に高く制御す
ることで,すべてのIGBTでのソフトスイッチングが達成できる。
これら制御を実機で達成する場合,電力供給部と制御部や制御データ送受信の非接触化が
必要である。制御データ送受信の非接触化はAD/DA変換などの無駄時間により制御データの
フィードバックは1ms 程度の遅れを伴い,制御性が著しく劣化し不安定となる恐れがある。さ
らに,その無駄時間が変動するような場合にはその影響は大きい。そこで,本研究では,スミ
ス法による無駄時間補償を提案した。スミス法には装置のモデル化が不可欠であるが,DSPに
よりモデル化できる部分はDSPによるモデル化を行い,その他はGeneral Impedance Converter
回路を用いて変圧器などのリアクトルを,オペアンプなどの電子回路によりダイオード整流器
をそれぞれ忠実にモデル化する「ハイブリッドモデル」をスミス法に組込むとともに,無駄時
間変動情報もスミス法制御データとして活用した。
研究結果
シミュレーションと出力電力が実機の1/25 となる小規模モデルで行った実験より,以下の結
果を得ることができた。
⑴ 負荷共振周波数追従制御においては,軽負荷時,全負荷時に出力直流電圧は指令値に対
して2ms 以内に追従し,追従後の電圧変動率は2% 以下を達成できることが確認できた。
ソフトスイッチング制御により,装置効率も軽負荷時3.2%程度,重負荷時に1.5%程度の向
上がみられ,その効果が確認できた。
⑵ スミス法による無駄時間補償はその効果が大きく,1ms の無駄時間が存在しても,無駄
時間がない場合と同様に制御することができた。さらに,モデルの構成に20%の誤差が存
在しても,その無駄時間補償効果が変わらないことが確認できた。
―5―
共同研究等
共同研究等成果の概要(平成23年度)
共同研究等
共同研究等成果の概要(平成23年度)
研 究研究年度
年度
平成22年5月〜平成24年3月
平成 22 年 5 月~ 平成 24 年 3 月 区分区 共同研究
分
共同研究
研究テーマ
研究テーマ
知能制御機器設計技術開発
知能制御機器設計技術開発
研究組織
本校 代表者名
代表者名宮脇 和人
山田 宗慶
本 校
研究者名
研究者名木澤 悟,小林 義和
機械工学科 宮脇和人、木澤悟、小林義和
研究組織
業 名
ミナトエンジニアリング株式会社
企業 企 企業名
ミナトエンジニアリング株式会社
企 業
代表者名
六平 澄人
研究者名 田口 友子
研究者名
六平澄人、田口友子
研究成果の概要
研究成果の概要
1.はじめに
1.はじめに
新たな産業構造への転換を図るため、産学官の連携による介護福祉機器等の試作
新たな産業構造への転換を図るため,産学官の連携による介護福祉機器等の試作品の開発と,
品の開発と、実用化に向けての設計技術者の養成を行う。秋田工業高等専門学校は、
実用化に向けての設計技術者の養成を行う。秋田工業高等専門学校は,この時に養成する設計
この時に養成する設計技術者への機械的な基礎知識の提供と、福祉介護機器等の試
技術者への機械的な基礎知識の提供と,福祉介護機器等の試作品設計・製作に関する技術的な
指導を実施した。ミナトエンジニアリング株式会社は,秋田工業高等専門学校殿の指導を受け
作品設計・製作に関する技術的な指導を実施した。ミナトエンジニアリング株式会
ながら開発(設計・試作品製作)を行った。本共同研究は秋田県ふるさと雇用再生特別基金事
社 は、秋田工業高等専門学校殿の指導を受けながら開発(設計・試作品製作)を行
業の一環として行われた。
った。本共同研究は秋田県ふるさと雇用再生特別基金事業の一環として行われた。
2.研究内容
2.研究内容
本共同研究で技術者を養成するために試作した介護福祉機器は,機能的電気刺激(FES)を
本共同研究で技術者を養成するために試作した介護福祉機器は、機能的電気刺激
利用したFESサイクリング(図1,図2)と,屋内で全身運動が可能なローイングマシン(櫓
(FES)を利用した FES サイクリング(図 1,図2)と、屋内で全身運動が可能なロ
を漕ぐ装置)である。
ーイングマシン(櫓を漕ぐ装置)である。
図1 FES サイクリング(1 号機)
図2 FES サイクリング(2号機)
図1 FESサイクリング(1号機)
図2 FESサイクリング(2号機)
ものづくりの基本となる機械工作法と、高齢者・障害者の様々な特性に適合させる
福祉工学を座学により修得することで、介護福祉機器の設計・製作能力の向上を図っ
ものづくりの基本となる機械工作法と,高齢者・障害者の様々な特性に適合させる福祉工学
た。
を座学により修得することで,介護福祉機器の設計・製作能力の向上を図った。
3.まとめ
3.まとめ
FESを利用した新たな福祉介護機器を試作することで,にかほ市・由利本荘市在住の13名の
FES を利用した新たな福祉介護機器を試作することで、にかほ市・由利本荘市在住
機械設計技術者を養成した。
の 13 名の機械設計技術者を養成した。
機能的電気刺激(FES)-脊髄損傷などで麻痺した神経や筋肉に,体外より電気刺激を与え
機能的電気刺激(FES)-脊髄損傷などで麻痺した神経や筋肉に、体外より電気刺
ることで失った動作の再建を行う技術。
激を与えることで失った動作の再建を行う技術。
―6―
自動車産業における生産技術高度化に対応した
自動車産業における生産技術高度化に対応した
研究組織研究組織
山田 宗慶
研本校
究 年 度 代表者名
平成23年4月〜平成24年3月
本校
代表者名
山田 宗慶区分 受託研究
研究者名
機械工学科
宮脇和人宮脇和人
自動車産業における生産技術高度化に対応した
研究テーマ
研究者名
機械工学科
産業用ロボット用硬さ試験グリッパの開発
企業 企業名
財団法人財団法人
本荘由利産業科学技術振興財団
企業 企業名
本荘由利産業科学技術振興財団
代表者名
宮脇 和人
本 校
代表者名代表者名
長谷部 長谷部
誠
研究者名
誠
共同研究等
産業用ロボット用硬さ試験グリッパの開発
産業用ロボット用硬さ試験グリッパの開発
共同研究等成果の概要(平成23年度)
研究組織
研究成果の概要
企 業 名
財団法人 本荘由利産業科学技術振興財団
研究成果の概要
企 業
代表者名
長谷部 誠
1.はじめに
1.はじめに
研究成果の概要
自動車の生産ラインへの応用が可能でありながら、工業規格に準拠した“硬さ試
自動車の生産ラインへの応用が可能でありながら、工業規格に準拠した“硬さ試
1.はじめに
験”との相関性や信頼性の高い試験技術の確立と
3 次元空間内における任意の個所
験”との相関性や信頼性の高い試験技術の確立と
3 次元空間内における任意の個所
自動車の生産ラインへの応用が可能でありながら,工業規格に準拠した“硬さ試験”との相
を自在に計測するため、多関節型工業ロボットと組み合わすことができるグリッパ
を自在に計測するため、多関節型工業ロボットと組み合わすことができるグリッパ
関性や信頼性の高い試験技術の確立と3次元空間内における任意の個所を自在に計測するため,
形状の“硬さ試験グリッパ”実用化を目指す。
多関節型工業ロボットと組み合わすことができるグリッパ形状の“硬さ試験グリッパ”実用化
形状の“硬さ試験グリッパ”実用化を目指す。
本研究は平成
23 年度戦略的基盤技術高度化支援事業の一環として行われた。事
を目指す。
本研究は平成
23 年度戦略的基盤技術高度化支援事業の一環として行われた。事
本研究は平成23年度戦略的基盤技術高度化支援事業の一環として行われた。事業の主担当企
業の主担当企業は株式会社マツザワである。
業の主担当企業は株式会社マツザワである。
業は株式会社マツザワである。
2.研究内容
2.研究内容
2.研究内容
本年度は「電動型ビッカース硬さ試験機」
(図 1)と「電動型ロックウェル硬さ
本年度は「電動型ビッカース硬さ試験機」
(図1)と「電動型ロックウェル硬さ試験機」
(図2)
本年度は「電動型ビッカース硬さ試験機」
(図 1)と「電動型ロックウェル硬さ
を開発し,
試験力の精度の検証,
及び間接検証(硬さ基準片による硬さ測定)を「JIS B7725 ビッ
試験機」
(図
2)を開発し、試験力の精度の検証、及び間接検証(硬さ基準片によ
試験機」
(図 2)を開発し、試験力の精度の検証、及び間接検証(硬さ基準片によ
カース硬さ試験機の検証」
B7726-ロックウェル硬さ試験機の検証」に従って行い,試験機
る硬さ測定)を「JIS
B7725 「JIS
ビッカース硬さ試験機の検証」
「JIS B7726-ロック
る硬さ測定)を「JIS
B7725
ビッカース硬さ試験機の検証」
「JIS B7726-ロック
の能力及び精度の評価を行った。
ウェル硬さ試験機の検証」
に従って行い、
試験機の能力及び精度の評価を行った。
ウェル硬さ試験機の検証」に従って行い、試験機の能力及び精度の評価を行った。
図1
電動型ビッカース硬さ試験機
図2 電動型ロックウェル硬さ試験機
図1 電動型ビッカース硬さ試験機 図2 電動型ロックウェル硬さ試験機
図1 電動型ビッカース硬さ試験機
図2 電動型ロックウェル硬さ試験機
3.まとめ
3.まとめ3.まとめ
本年度開発した「電動型ロックウェル硬さ試験機」
「電動型ビッカース硬さ試験機」について,
,
本年度開発した「電動型ロックウェル硬さ試験機」、
「 電動型ビッカース硬さ試験機」
本年度開発した
「電動型ロックウェル硬さ試験機」、
「 電動型ビッカース硬さ試験機」
製品化(市販モデルの発売)に向けた取り組みを行う。
について、製品化(市販モデルの発売)に向けた取り組みを行う。
について、製品化(市販モデルの発売)に向けた取り組みを行う。
―7―
研
究年度
様式2
平成23年5月〜平成24年3月
区分
共同研究等
八郎湖におけるCOD実態調査
共同研究等
受託研究
研究テーマ
代表者名
金 主鉉
研究年度
受託研究
本 校 平成 23 年 5 月 ~ 平成 24 年 3 月 区 分
研究者名
研究
組研究テーマ
織
研究年度
平成八郎湖におけるCOD実態調査
23 年 5 月 ~ 平成 24 年 3 月 区 分
受託研究
企 業 名
秋田県
研究組織
本校
代表者名
金
主鉉
企 業
研究テーマ 八郎湖におけるCOD実態調査
代表者名
佐竹 敬久
研究者名 金 主鉉
研究組織
本校 代表者名
研究成果の概要
企業研究者名
企業名
秋田県
指定湖沼である八郎湖では,
近年,水質環境基準が確保されない状況が続いている。このため,
企業 企業名
秋田県
研究成果の概要
秋田県の策定した第1期計画では,
「八郎湖への汚濁負荷の削減」を主体として対策を実施して
指定湖沼である八郎湖では、
近年、水質環境基準が確保されない状況が続いている。
研究成果の概要
このため、秋田県の策定した第
1水質環境基準が確保されない状況が続いている。
期計画では、「八郎湖への汚濁負荷の削減」を主体
いる。しかし,八郎湖ではBOD(生物化学的酸素要求量)が横ばいの推移を示しているにも関
指定湖沼である八郎湖では、
近年、
として対策を実施している。しかし、八郎湖では
BOD(生物化学的酸素要求量)が
らず,COD
このため、秋田県の策定した第
1 期計画では、「八郎湖への汚濁負荷の削減」を主体
Mn(過マンガン酸カリウムによる化学的酸素要求量)が年々増加の傾向にある。こ
横ばいの推移を示しているにも関らず、CODMn(過マンガン酸カリウムによる化学的
として対策を実施している。しかし、八郎湖では
BOD(生物化学的酸素要求量)が
の現象は面源負荷源からの有機物流入および湖沼の内部生産に伴う難分解性有機物の流入・蓄
酸素要求量)が年々増加の傾向にある。この現象は面源負荷源からの有機物流入およ
横ばいの推移を示しているにも関らず、CODMn(過マンガン酸カリウムによる化学的
積が原因として考えられる。
び湖沼の内部生産に伴う難分解性有機物の流入・蓄積が原因として考えられる。
酸素要求量)が年々増加の傾向にある。この現象は面源負荷源からの有機物流入およ
そこで本調査研究では,八郎湖湖水および流入河川水,大潟村からの農業排水に含まれる難
そこで本調査研究では、八郎湖湖水および流入河川水、大潟村からの農業排水に含
び湖沼の内部生産に伴う難分解性有機物の流入・蓄積が原因として考えられる。
まれる難分解性有機物を存在形態別に定量評価するとともに季節トレンドを解析し、
分解性有機物を存在形態別に定量評価するとともに季節トレンドを解析し,難分解性有機物に
そこで本調査研究では、八郎湖湖水および流入河川水、大潟村からの農業排水に含
難分解性有機物による八郎湖の水質汚濁メカニズムを解明するための基礎研究を行
まれる難分解性有機物を存在形態別に定量評価するとともに季節トレンドを解析し、
よる八郎湖の水質汚濁メカニズムを解明するための基礎研究を行った。その結果,湖水(湖心
った。その結果、湖水(湖心の表層)の難分解性 COD Mn 濃度は 2.2~3.5 mg/L で推移
難分解性有機物による八郎湖の水質汚濁メカニズムを解明するための基礎研究を行
全CODMn濃度の30%~80%弱を占め,
の表層)の難分解性COD
Mn濃度は2.2~3.5 mg/Lで推移し,
し、全 COD Mn 濃度の 30%~80%弱を占め、また難分解性
Mn に占める溶存態の
2.2~3.5
mg/L で推移
った。その結果、湖水(湖心の表層)の難分解性
COD Mn 濃度はCOD
また難分解性COD
Mnに占める溶存態の割合は,湖水68~91%,流入河川57~89%,排水機場46
割合は、湖水
68~91
%、流入河川
57~89
%、排水機場
46~84
%と極めて高いことが
し、全 COD Mn 濃度の 30%~80%弱を占め、また難分解性 COD Mn に占める溶存態の
~84%と極めて高いことが明らかであった(図1)
。
明らかであ
った(
図 1 )。 こ の
原因は
割合は、湖水
68~91
%、流入河川
57~89
%、排水機場 46~84 %と極めて高いことが
この原因はUV254/
DOC比から土壌由来の溶存
明 らUV
か254
で/DOC
あ っ た比から土壌由来の溶存有機
( 図 1 )。 こ の 原 因 は
生分解前
物
の
流
入
に
よ
るものと考えられる。一
生分解後
UV254 /DOC 比から土壌由来の溶存有機
有機物の流入によるものと考えられる。一方,大
生分解前
大潟村の農業排水は代かき期の
物 の方、
流入
に よ る も の と 考 え ら れ る 。 一5 月
生分解後
潟村の農業排水は代かき期の5月において難分解
中の懸濁態の
において難分解性
COD
Mn
方、大潟村の農業排水は代かき期の
5月
中の懸濁態の割合は約50%以上と高く,
性CODMn
割合は約
50%以上と高く、流入河川の
において難分解性 COD Mn 中の懸濁態の
流入河川の難分解性COD
難分解性
COD Mn は懸濁態・溶存態とも
Mnは懸濁態・溶存態と
割合は約
50%以上と高く、流入河川の
45
40
に季節的変動が大きかった。また、大潟
もに季節的変動が大きかった。また,大潟村の農
難分解性
COD Mn は懸濁態・溶存態とも
村の農業排水由来の難分解性
COD Mn 負
に季節的変動が大きかった。また、大潟
業排水由来の難分解性COD
Mn負荷は,全体の半
荷は、全体の半分以上を占
めるこ
とか
村の農業排水由来の難分解性
COD
Mn 負
分以上を占めることから,八郎湖をめぐる水利用
八郎湖をめぐる水利用のあり方に問
荷 はら、
、全
体の半分以上を占めることか
のあり方に問題があることが示された(表1)
題があることが示された(表
1)。 。
ら、八郎湖をめぐる水利用のあり方に問
35
30
25
20
UV/ DOC比 (Abs・L/cm/g-C)
40
45
UV/ DOC比 (Abs・L/cm/g-C)
共同研究等
共同研究等成果の概要(平成23年度)
様式2
15
35
30
25
20
15
10
5
10
0
湖心
5
三種川
馬場目川
北部排水機場
南部排水機場
調査地点
0
湖心
三種川
馬場目川
北部排水機場
南部排水機場
調査地点
図1 各調査地点のUV
/DOC比
図 1 各調査地点の
UV 254254
/DOC
比
図1
各調査地点の UV 254 /DOC 比
表 1 2011 年 1)
5。
月~10 月における各流入源別 COD Mn 負荷量
題があることが示された(表
表表1 2011年
1 2011 年 55月∼10月における各流入源別COD
月~10 月における各流入源別
COD
負荷量
Mn
Mn負荷量
流入河川
大潟村の農業排水
COD
Mn 負荷量
(ton/
6 ヶ月)
COD
Mn 負荷量
(ton/ 6易分解性
ヶ月)
三種川
北部排水機場
南部排水機場
流入河川 馬場目川
大潟村の農業排水
358 北部排水機場
653
828
三種川184
馬場目川
南部排水機場
184 250
250 434
358 376
376 734
難分解性の割合
(%) 434 58
合
計
734 51
難分解性
易分解性
合
計
難分解性
難分解性の割合(%)
58
51
―8―
653 835
8351,488
1,488 56
56
8281,268
2,096
1,268
2,096 60
60
共同研究等
研究年度
研究年度
研究テーマ
研究テーマ
平成23年5月〜平成24年3月
受託研究
長寿命水素化分解触媒開発のための
平成
23 年 4 月 ~ 平成 24 年 3 月
区 分
受託研究
選択的溶解法による新規ゼオライトの合成
本 校
研究組織
研究組織
区分
共同研究等
共同研究等成果の概要(平成23年度)
本校
企 業
長寿命水素化分解触媒開発のための
佐藤 恒之
選択的溶解法による新規ゼオライトの合成
研究者名
佐藤 恒之,山田 宗慶
代表者名
代表者名
企 業 名
佐藤 恒之
日揮触媒化成株式会社
研究者名
代表者名
佐藤 恒之、
小松 通郎
山田
宗慶
企業
研究成果の概要
企業名
日揮触媒化成株式会社
1.はじめに
代表者名
小松
通郎
研究者名
小松
通郎
研究成果の概要
人工ゼオライト結晶(主にLTA(4A)
)を用い,塩酸プロトンによる格子間結合の切断・溶
1.
はじめに
解による結晶微細化に取り組んでいる。この溶解プロセスでは4Aの酸素8員環構造を塩酸プ
人工ゼオライト結晶(主に LTA(4A))を用い、塩酸プロトンによる格子間結
ロトンにより化学的に切断し,残る4A構造骨格の酸素6員環ならびに4員環からなるアルミ
合の切断・溶解による結晶微細化に取り組んでいる。この溶解プロセスでは4A
ノシリケートナノ骨格の形成を目指している。実験仮説としては,6員環以下の構造が残ると
の酸素8員環構造を塩酸プロトンにより化学的に切断し、残る4A
構造骨格の酸
すれば水素分子より大きな細孔(0.41nm)を有する8員環が消滅することになり,溶解液に残
素6員環ならびに4員環からなるアルミノシリケートナノ骨格の形成を目指し
存するこれらナノ骨格を成膜後,きわめて高い水素分離能を持つ分離膜や新規ゼオライトの合
ている。実験仮説としては、6員環以下の構造が残るとすれば水素分子より大き
成などへの応用が図れると考えている。
な細孔(0.41nm)を有する8員環が消滅することになり、溶解液に残存するこれ
本年度はゼオライトの選択溶解に関する時間対応実験を行ったので,その結果の一部につい
らナノ骨格を成膜後、きわめて高い水素分離能を持つ分離膜や新規ゼオライトの
て報告する。
合成などへの応用が図れると考えている。本年度はゼオライトの選択溶解に関す
る時間対応実験を行ったので、その結果の一部について報告する。
2.酸処理時間によるゼオライト溶解にともなう結晶子径変化
2. 酸処理時間によるゼオライト溶解にともなう結晶子径変化
図1に,溶解時間を変化さ
図1に、溶解時間を変化 酸処理時間によるゼオライト溶解の結晶子径変化とXRD結果(1)
せ,その後得られたゼオライ
条件;
前提:溶解過程にある粒子径と焼成後の粒子径の線形関係
させ、その後得られたゼオ ‐酸濃度m(0.5 mol/L)
‐温度(293K)
トの焼成粒子のXRD分析結
ライトの焼成粒子の XRD 分 ‐酸処理時間t(5, 10, 20, 30s)
X線回折装置(Rigaku製SmartLab)
‐熟成時間T(0h)
果 を 示 す。XRD強 度 は 酸 処
結晶子サイズ解析(Halder-Wagner plot)
析結果を示す。XRD 強度は
t=5
t=10
t=20
理時間の延長とともに結晶
酸処理時間の延長とともに
から非晶質への変化を表し
結晶から非晶質への変化を
ている。このことは溶解過程
表している。このことは溶
においてプロトンの格子間
2θ
2θ
2θ
解過程においてプロトンの
15000
切断の結果,原料結晶に微小
t=30
格子間切断の結果、原料結
10000
化が起きていることを示唆
晶に微小化が起きているこ
粒径の酸処理時間依存性
5000
している。また本条件下では
溶解核生成過程(誘導期)
とを示唆している。また本
から急速な粒消滅
0
径減少速度シグモイド型
およそ20sから30sの極短時間
0
20
40
60
80
100
2θ
条件下ではおよそ 20s から
の酸処理時間では焼成粒子
30s
の極短時間の酸処理時
径が大きく変化する。溶解過
図1 酸処理時間によるゼオライト結晶子径変化(溶解初期)
間では焼成粒子径が大きく
程にある粒子径と焼成後の
変化する。溶解過程にある粒子径と焼成後の粒子径間に正の相関関係(線形関係
粒子径間に正の相関関係(線形関係を含む)があると仮定すると,溶解中の粒径には酸処理時
を含む)があると仮定すると、溶解中の粒径には酸処理時間依存性があり、径の
間依存性があり,径の減少速度がシグモイド型となることから酸処理の初期においては溶解核
減少速度がシグモイド型となることから酸処理の初期においては溶解核生成過
生成過程(誘導期)が存在しているのではないかと推測される。
程(誘導期)が存在しているのではないかと推測される。
強度
(CPS)
10000
(CPS)
10000
5000
0
0
強度 (CPS)
15000
強度
15000
20
40
60
80
強度 (CPS)
―9―
100
5000
0
0
20
40
60
80
100
特 別 研 究
専攻科特別研究の概要
平成23年度
掲載内訳
区分
研
究
テ
ー
マ
生産 アクティブフィルタ機能を有する交流チョッパ式UPSの基本電力供給手法の開発
学 科
・
氏 名
頁
電気情報 ・ 安東 至 12
〃
誘導性窓を用いた導波管分配器の整合
〃
・ 宮田克正
〃
狭管壁導波管スロットアンテナに装荷した誘電体レンズの収束効果
〃
・
宮田克正
14
伊藤桂一
〃
導波管分波器のFDTD解析
〃
・
宮田克正
15
伊藤桂一
〃
有限要素解析を用いた加速空洞における電磁場の周波数領域解析
〃
・ 坂本文人
16
〃
ベイジアンネットワークによる現在地予測に基づくコミュニケーションシステムの設計
〃
・ 平石広典
17
〃
表面磁石型同期電動機の磁束分布に関する基礎検討
〃
・ 髙橋身佳
18
〃
向流移動層での粒子挙動と温度分布に及ぼす炉壁突起物の影響
〃
FES(機能的電気刺激)を用いた車いす用下肢駆動ユニットの開発
〃
・ 小林義和
20
〃
フライホイール型倒立振子の安定化制御
〃
・ 木澤 悟
21
〃
非接触型センサを用いた歩行遊脚期の検出システム
〃
・ 木澤 悟
22
〃
制振鋼板における振動減衰特性の評価方法の検討
〃
・ 木澤 悟
23
〃
レーザ光計測を用いた極低温流体中の熱伝達特性の解明
〃
・ 野澤正和
24
〃
水素型及びヘリウム型人工原子の電子構造に関する理論的研究
環境 草本系バイオマスを利用した埋め立て地浸出水中の窒素除去法の開発
13
機 械 ・ 一田守政 19
自然科学 ・ 上田 学 25
環境都市 ・ 金 主鉉 26
〃
臭化サマリウム
(II)
を用いた炭酸エステル系保護基の脱保護法の開発
〃
電気光学材料の光学的な計測に関する研究
〃
・ 丸山耕一
28
〃
ポリピロール化学酸化自己組織化膜の金属イオン交換に関する研究
〃
・ 丸山耕一
29
〃
機能性高分子を用いた新規酵素安定化システムの構築
〃
・ 榊秀次郎
30
〃
新規生体高分子/合成高分子複合材料の創成
〃
・ 榊秀次郎
31
〃
放線菌からのセルラーゼ生産菌の探索
〃
・ 上松 仁
32
〃
酸化亜鉛微粒子の合成に対する反応条件の影響
〃
・ 西野智路
33
〃
ラジカル反応によるフェノールの分解
〃
・ 船山 齊
34
〃
臭化サマリウム
(II)
を用いた新規シクロプロピル化反応の開発
〃
・ 鈴木祥子
35
〃
臭化サマリウム
(II)
を用いたベンゾイル基の選択的脱保護法の開発
〃
・ 鈴木祥子
36
― 11 ―
物 質 ・ 横山保夫 27
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
生産システム工学専攻
区
分
研究テーマ
特 別 研 究
アクティブフィルタ機能を有する
交流チョッパ式 UPS の基本電力供給手法の開発
アクティブフィルタ機能を有する 電気情報工学科
交流チョッパ式UPSの基本電力供給手法の開発
生産システム工学専攻
安東
至
1.緒言
研究者名
電気情報工学科 安東 至
我が国では長時間停電はほとんどないが,自然現象に起因する瞬時停電,瞬時電圧低下
1.緒言
を完全に防ぐことは困難である。一方で,各種OA機器の普及により高品質な電力供給が求め
我が国では長時間停電はほとんどないが,自然現象に起因する瞬時停電,瞬時電圧低下を完
られており,短時間電力補償用UPS(Uninterruptible Power Supply : 無停電電源装置)の需
全に防ぐことは困難である。一方で,各種OA機器の普及により高品質な電力供給が求められて
要が増加している。本研究ではアクテ ィブフィルタ(以下,A.F.)機能を有する交流チョ
おり,短時間電力補償用UPS(Uninterruptible Power Supply : 無停電電源装置)の需要が増加
ッパ式UPSの基本電力供給手法を提案するとともに,定常・電源異常時に対する制御能力を
している。本研究ではアクテ ィブフィルタ(以下,A.F.)機能を有する交流チョッパ式UPSの
実験により検証することで,その有効性を確認するものである。
基本電力供給手法を提案するとともに,定常・電源異常時に対する制御能力を実験により検証
2.研究方法
することで,その有効性を確認するものである。
図1に提案するA.F.機能を有する交流チョッパ式UPSの主回路を示す。回路中央のリンク部
2.研究方法
には小容量フィルムコンデンサを配することによって小型軽量化・長寿命化を図っている。
図1に提案するA.F.機能を有する交流チョッパ式UPSの主回路を示す。回路中央のリンク部に
本研究では,電源正常時,電源異常(上昇・低下)時,停電時について検証を行ったが,こ
は小容量フィルムコンデンサを配することによって小型軽量化・長寿命化を図っている。
こでは,例として昇圧モード時の制御手法について述べる。電源電圧が低い電源異常時には
本研究では,
電源正常時,
電源異常(上昇・低下)時,
停電時について検証を行ったが,
ここでは,
入力チョッパが,
負荷で消費される電力分とバッテリ放出分の電力を入力力率100%の入力電
例として昇圧モード時の制御手法について述べる。電源電圧が低い電源異常時には入力チョッ
流追従制御により供給する。A.F.回路部では,出力電圧歪補償としての基本補償電流指令値
パが,負荷で消費される電力分とバッテリ放出分の電力を入力力率100%の入力電流追従制御に
ic *に実際のicが追従するよう制御する。加えてバッテリ充電のために電圧指令値Vdc*と実際
より供給する。A.F.回路部では,出力電圧歪補償としての基本補償電流指令値ic*に実際のicが
のVdcの偏差を取り,PI補償を施し, 電源電圧と同相の充電電流指令値を加えている。また,
追従するよう制御する。加えてバッテリ充電のために電圧指令値Vdc*と実際のVdcの偏差を取
確実な出力電圧確保のために,出力電圧のフィードバック制御を加えることによって,安定
り,PI補償を施し,電源電圧と同相の充電電流指令値を加えている。また,確実な出力電圧確
した出力電圧を確保している。
保のために,出力電圧のフィードバック制御を加えることによって,安定した出力電圧を確保
3.結果
している。
提案した制御手法が有効であるかを確認するために,指令出力電圧を100[Vrms]とし,整
3.結果
流器負荷として実験を行った。
提案した制御手法が有効であるかを確認するために,指令出力電圧を100[Vrms]とし,整
図2に電源電圧が20%ほど低下した入力電圧80[Vrms]の昇圧モード時の実験結果を示す。入
流器負荷として実験を行った。
力電流・電圧間には位相差も殆どなく,入力力率は99.4%であった。また,尖塔状の出力電
図2に電源電圧が20%ほど低下した入力電圧80[Vrms]の昇圧モード時の実験結果を示す。
流であってもA.F.部の制御により出力電圧波形は正弦波状の出力電圧を維持していること
入力電流・電圧間には位相差も殆どなく,入力力率は99.4%であった。また,尖塔状の出力電流
が確認できる。図3に停電時の各部波形を示す。停電時はS1~S4をOFFし,A.F.がインバータ
であってもA.F.部の制御により出力電圧波形は正弦波状の出力電圧を維持していることが確認
動作を行って出力電圧を確保する。
出力電圧は停電時も良好に確保できていることが分かる。
できる。図3に停電時の各部波形を示す。
停電時はS1~ S4をOFFし,
A.F.がインバータ動作を行っ
定常・降圧モードについても,良好に制御出来ていることを確認し,本研究で提案した回路
て出力電圧を確保する。出力電圧は停電時も良好に確保できていることが分かる。定常・降圧モー
構成とその基本的な電力供給手法の有効性を確認することができた。
ドについても,良好に制御出来ていることを確認し,本研究で提案した回路構成とその基本的
な電力供給手法の有効性を確認することができた。
図 1 提案する UPS の主回路構成
2 昇圧モード時波形
図 3 停電モード時波形
昇圧モード時波形 図3
停電モード時波形
図1 提案するUPSの主回路構成 図 図2
― 12 ―
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
区
分
生産システム工学専攻
誘導性窓を用いた導波管分配器の整合
誘導性窓を用いた導波管分配器の整合
導波管の壁面に複数の細長い穴(スロット列)を切り,管内を伝搬する電波をスロットから漏洩さ
している(図
1)
.これは下側入力ポートからの入射波を88等分に分配して各ポートに出力するものであ
等分に分配して各ポートに出力するものであ
している(図
1)
.これは下側入力ポートからの入射波を
せることで放射するアンテナを導波管スロットアレーアンテナという。当研究室では8つの入力をもつ
り,出力を導波管スロットアレーアンテナに背面給電して用いる.導波管分配器はその導波路中に複数
り,出力を導波管スロットアレーアンテナに背面給電して用いる.導波管分配器はその導波路中に複数
導波管スロットアレーアンテナを研究の対象にしており,これ
の曲がり部(エルボー型導波路)および分岐部(Y
型導波路)をも
の曲がり部(エルボー型導波路)および分岐部(Y
型導波路)をも
に給電するために導波管型8分配器を設計している(図1)
。これ
っており,
これらからの反射によって伝送特性が劣化する.
そこで,
は下側入力ポートからの入射波を8等分に分配して各ポートに出
っており,
これらからの反射によって伝送特性が劣化する.
そこで,
力するものであり,出力を導波管スロットアレーアンテナに背
特性改善のためにインピーダンス整合を行い,反射を抑制する必要
特性改善のためにインピーダンス整合を行い,反射を抑制する必要
面給電して用いる。導波管分配器はその導波路中に複数の曲が
がある.本研究では,整合素子として誘導性窓を用い,導波管分配
がある.本研究では,整合素子として誘導性窓を用い,導波管分配
り部(エルボー型導波路)および分岐部(Y型導波路)をもって
エルボー
エルボー
型導波路
型導波路
3
3
エルボー
エルボー
型導波路
型導波路
2
2
器のインピーダンス整合について数値的・実験的に検討した.
器のインピーダンス整合について数値的・実験的に検討した.
おり,これらからの反射によって伝送特性が劣化する。そこで,
特性改善のためにインピーダンス整合を行い,反射を抑制する
Y型
Y型
導波路
導波路
3
3
Y型
Y型
導波路
導波路
2
2
エルボー
エルボー
型導波路
型導波路
1
1
Y型
Y型
導波路
導波路
1
1
2.研究方法
必要がある。本研究では,整合素子として誘導性窓を用い,導
2.研究方法
波管分配器のインピーダンス整合について数値的・実験的に検
誘導性窓は,導波路の左右の管壁に対称に取りつけて用いる
枚
誘導性窓は,導波路の左右の管壁に対称に取りつけて用いる
22枚
247.1mm
247.1mm
討した。
組の薄い金属板であり,回路素子としては並列インダクタンスの
11 組の薄い金属板であり,回路素子としては並列インダクタンスの
はたらきをする.したがって,導波路中でサセプタンスが正(容量
はたらきをする.したがって,導波路中でサセプタンスが正(容量
図11 導波管型
導波管型88分配器
分配器
図1 導波管型8分配器
図
2.研究方法
性)となる位置に誘導性窓を装荷すると正負のサセプタンスが打ち消
性)となる位置に誘導性窓を装荷すると正負のサセプタンスが打ち消
誘導性窓は,導波路の左右の管壁に対称に取りつけて用いる2
し合うこととなり,
このことを利用して整合をとることが可能である.
枚1組の薄い金属板であり,回路素子としては並列インダクタン
し合うこととなり,
このことを利用して整合をとることが可能である.
スのはたらきをする。したがって,導波路中でサセプタンスが
窓の装荷位置は,アドミタンスチャートを用いて決定する.整合の手
窓の装荷位置は,アドミタンスチャートを用いて決定する.整合の手
正(容量性)となる位置に誘導性窓を装荷すると正負のサセプ
順としては,はじめに導波管分配器をモデル化し,シミュレーション
順としては,はじめに導波管分配器をモデル化し,シミュレーション
タンスが打ち消し合うこととなり,このことを利用して整合を
により誘導性窓の整合パラメータ(装荷位置および寸法)を求める.
により誘導性窓の整合パラメータ(装荷位置および寸法)を求める.
とることが可能である。窓の装荷位置は,アドミタンスチャー
次に得られたパラメータの窓を実際に試作し,分配器に装荷すること
次に得られたパラメータの窓を実際に試作し,分配器に装荷すること
トを用いて決定する。整合の手順としては,はじめに導波管分
で整合をとる.シミュレーションでは窓のパラメータを容易に変更で
配器をモデル化し,シミュレーションにより誘導性窓の整合パ
で整合をとる.シミュレーションでは窓のパラメータを容易に変更で
ラメータ
(装荷位置および寸法)を求める。次に得られたパラメー
きるため,労力の削減が期待される.シミュレーションには研究室で
きるため,労力の削減が期待される.シミュレーションには研究室で
タの窓を実際に試作し,分配器に装荷することで整合をとる。
所有している境界要素法による二次元問題用プログラムを使用した.
所有している境界要素法による二次元問題用プログラムを使用した.
シミュレーションでは窓のパラメータを容易に変更できるため,
はじめにYY型導波路
型導波路11を単独でモデル化し,シミュレーションおよ
を単独でモデル化し,シミュレーションおよ
はじめに
労力の削減が期待される。シミュレーションには研究室で所有
び実測で整合を試みた.例として,Y
型導波路11に
に22枚の誘導性窓を
枚の誘導性窓を 図2 Y型導波路1の解析モデル
図22 YY型導波路
型導波路11の解析モデル
の解析モデル
び実測で整合を試みた.例として,Y
型導波路
図
している境界要素法による二次元問題用プログラムを使用した。
装荷した場合の解析モデルを図
に示す.
はじめにY型導波路1を単独でモデル化し,シミュレーション
装荷した場合の解析モデルを図
22に示す.
および実測で整合を試みた。例として,Y型導波路1に2枚の誘導
性窓を装荷した場合の解析モデルを図2に示す。
3.研究結果
3.研究結果
を,計算および実測で求めた結果を図
に示す.計算値と実測値がよ
を,計算および実測で求めた結果を図
33に示す.計算値と実測値がよ
Y型導波路1の11.8 GHz ~12.2 GHzにおける定在波比の周波数
く一致していることが確認できる.はじめに
組の誘導性窓を装荷す
特性を,計算および実測で求めた結果を図3に示す。計算値と実
く一致していることが確認できる.はじめに
11組の誘導性窓を装荷す
測値がよく一致していることが確認できる。はじめに1組の誘導
ることで整合を試みた結果,
12.0GHz
GHzにおいて定在波比が
において定在波比が1.02
1.02程度ま
程度ま
ることで整合を試みた結果,
12.0
性窓を装荷することで整合を試みた結果,12.0
GHzにおいて定在
で低減されたが,その他の周波数では定在波比が上昇しており,十分
で低減されたが,その他の周波数では定在波比が上昇しており,十分
波比が1.02程度まで低減されたが,その他の周波数では定在波比
な整合とはいえない状態であった.
そこで,
さらに22組の窓を追加し,
組の窓を追加し,
な整合とはいえない状態であった.
そこで,
さらに
が上昇しており,十分な整合とはいえない状態であった。そこで,
周波数特性の改善を試みた.その結果,定在波比はすべての周波数に
周波数特性の改善を試みた.その結果,定在波比はすべての周波数に
さらに2組の窓を追加し,周波数特性の改善を試みた。その結果,
亘って
1.03以下にまで抑えられ,
以下にまで抑えられ,
型導波路11の整合が達成できたと
の整合が達成できたと
定在波比はすべての周波数に亘って1.03以下にまで抑えられ,Y
亘って
1.03
YY型導波路
型導波路1の整合が達成できたと同時に,導波管分配器全体の整YY
同時に,導波管分配器全体の整合をとる見通しが得られた.今後は
同時に,導波管分配器全体の整合をとる見通しが得られた.今後は
合をとる見通しが得られた。今後はY型導波路1以外の導波路に
型導波路
以外の導波路についても整合を試み,それらの結果を導波
型導波路
11以外の導波路についても整合を試み,それらの結果を導波
ついても整合を試み,それらの結果を導波管分配器全体に適用
管分配器全体に適用することで,導波管分配器の整合を目差したい.
管分配器全体に適用することで,導波管分配器の整合を目差したい.
することで,導波管分配器の整合を目差したい。
― 13 ―
2.0
2.0
1.9
1.9
1.8
1.8
1.7
1.7
1.6
1.6
1.5
1.5
1.4
1.4
1.3
1.3
1.2
1.2
1.1
1.1
1.0
1.0 11.8
11.8
定在波比
定在波比
3.研究結果
型導波路11の
の11.8
11.8GHz~12.2
GHz~12.2GHz
GHzにおける定在波比の周波数特性
における定在波比の周波数特性
YY型導波路
整合前(実測値)
整合前(実測値)
整合前(計算値)
整合前(計算値)
整合後,周波数特性改善前(実測値)
整合後,周波数特性改善前(実測値)
整合後,周波数特性改善前(計算値)
整合後,周波数特性改善前(計算値)
整合後,周波数特性改善後(計算値)
整合後,周波数特性改善後(計算値)
11.9
11.9
12.0
12.1
12.0
12.1
周波数 [GHz]
周波数 [GHz]
12.2
12.2
図 3 定在波比の周波数特性
図 3 定在波比の周波数特性
図3 定在波比の周波数特性
(Y型導波路
型導波路1)
1)
(Y
特 別 研 究
電気情報工学科 宮田克正
宮田克正
研究テーマ
誘導性窓を用いた導波管分配器の整合 電気情報工学科
1.緒 言
言
1.緒
導波管の壁面に複数の細長い穴(スロット列)を切り,管内を伝搬する電波をスロットから漏洩させ
導波管の壁面に複数の細長い穴(スロット列)を切り,管内を伝搬する電波をスロットから漏洩させ
研究者名
電気情報工学科 宮田 克正
ることで放射するアンテナを導波管スロットアレーアンテナという.当研究室では88つの入力をもつ導
つの入力をもつ導
ることで放射するアンテナを導波管スロットアレーアンテナという.当研究室では
1.緒言
波管スロットアレーアンテナを研究の対象にしており,これに給電するために導波管型
分配器を設計
波管スロットアレーアンテナを研究の対象にしており,これに給電するために導波管型
88分配器を設計
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
専攻科特別研究
区
分
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
研究者名
1.緒言
電気情報工学科
電気情報工学科 宮田 克正,伊藤 桂一
宮田
1.緒言
導波管の壁面にスロットを空けた場合,導波管はスロッ
より電界を放射するアンテナとして動作する。これは導波管
トより電界を放射するアンテナとして動作する。これは導
スロットアンテナと呼ばれている。導波管スロットアンテナ
波管スロットアンテナと呼ばれている。導波管スロットア
のスロットに誘電体レンズを装荷した場合、レンズの収束効
ンテナのスロットに誘電体レンズを装荷した場合,レンズ
[1]
[1]。
の収束効果により放射特性の改善が期待できる
。
果により放射特性の改善が期待できる
図 図1に示すように導波管には広管壁,狭管壁の2つの壁面
1 に示すように導波管には広管壁、狭管壁の 2 つの壁面
が存在し,広管壁にスロットを空けた場合についてはこれ
が存在し、広管壁にスロットを空けた場合についてはこれま
まで研究が行われてきた。従って本研究では導波管狭管壁
で研究が行われてきた。従って本研究では導波管狭管壁にス
にスロットを空け,誘電体レンズを装荷した場合の収束効
ロットを空け、誘電体レンズを装荷した場合の収束効果につ
果についてFDTD法を用いて検討した。
克正,伊藤
桂一
導波管の壁面にスロットを空けた場合、導波管はスロット
図
1 解析モデル
図1 解析モデル
のもと、zx 平面、yz 平面の 2 平面において遠方界の電界を計
−55
−60
Without lens
With lens
−65
2
4
6
8
Slot wideth d [mm]
図2 スロット幅特性(θ=30deg)
図 2 スロット幅特性(θ=30 deg)
Far−field
radiation power [dB]
2.研究方法
図1にFDTD解 析 モ デ ル を 示 す。 導 波 路 は22.90×
2.研究方法
10.20mmのWRJ-10規格とし,励振周波数は12GHzとして
図 1 に FDTD 解析モデルを示す。導波路は 22.90×10.20 mm
TE10モードの電界を入射している。最適なスロット条件を
の WRJ-10 規格とし、励振周波数は 12 GHz として TE10 モー
検討するためにスロット幅d,スロット角度θをパラメー
ドの電界を入射している。最適なスロット条件を検討するた
タとしている。装荷する誘電体レンズは直径20mmの球形
めにスロット幅
d、スロット角度 θ をパラメータとしている。
であり,材料はポリスチレンを想定して比誘電率を2.2とし
た。
装荷する誘電体レンズは直径
20 mm の球形であり、材料はポ
FDTD法の計算では,セルサイズ0.5mmでモデリングを
リスチレンを想定して比誘電率を
2.2 とした。
行い,3000ステップまで計算した。誘電体レンズおよび斜
FDTD 法の計算では、セルサイズ 0.5 mm でモデリングを行
めスロット部は階段状に近似してモデリングを行った。導
い、3000 ステップまで計算した。誘電体レンズおよび斜めス
波管終端には無反射終端となるようPMLを挿入した。以
ロット部は階段状に近似してモデリングを行った。導波管終
上の条件のもと,zx平面,yz平面の2平面において遠方界
端には無反射終端となるよう
PML を挿入した。以上の条件
の電界を計算し,レンズの収束効果を検討した。
Far−field
radiation power [dB]
いて FDTD 法を用いて検討した。
3.研究結果
算し、レンズの収束効果を検討した。
−60
−70
−80
10
Without lens
With lens
20
30
40
50
Angle  [deg]
スロット幅d,スロット角度θに対する遠方界の放射電
図 3 角度特性(d=3 mm)
図3 角度特性(d=3mm)
力をそれぞれ図2,図3に示す。この結果より最適なスロッ
3.研究結果
ト条件をスロット幅3mm,スロット角度30度と決定した。
−60
スロット幅 d、スロット角度 θ に対する遠方界の放射電力
スロット角度30度,スロット幅3mmにおける遠方界放
−70
をそれぞれ図
2、図 3 に示す。この結果より最適なスロット
射パターンを図4に示す。図4よりレンズ装荷によりピーク
Without lens
−80
条件をスロット幅
3 mm、スロット角度 30 度と決定した。
電力が約1.4dB増大していることが分かる。また,
-3dBビー
With lens
ム幅は80.6degから61.4degに狭まっており,レンズの収束
スロット角度
30 度、スロット幅 3 mm における遠方界放射
−90
−90
−45
0
45
90
効果により指向性が向上していることが分かる。
パターンを図
4 に示す。図 4 よりレンズ装荷によりピーク電
Angle [deg]
レンズの収束効果を定量的に検討するためにレンズ収束
図 4 遠方界放射パターン
力が約
1.4 dB 増大していることが分かる。また、-3dB ビーム 図4 遠方界放射パターン(yz平面)
量を求めたところ3.5dBとなり,広管壁の収束量5.0dBと比
(yz 平面)
幅は 80.6 deg から 61.4 deg に狭まっており、レンズの収束効
べて若干減少する傾向が見られた。
果により指向性が向上していることが分かる。
また,8スロットアレーアンテナ,8スロット平面アンテナについて同様の解析を行ったが,レンズ
レンズの収束効果を定量的に検討するためにレンズ収束量
の収束効果は1スロットの場合に比べて低下する傾向を示した。参考文献
Far−field
ra diation p ow er [dB ]
特 別 研 究
狭管壁導波管スロットアンテナに装荷した誘電体レンズの収
研究テーマ
狭管壁導波管スロットアンテナに装荷した誘電体レンズの収束効果
束効果
を求めたところ 3.5 dB となり、広管壁の収束量 5.0 dB と比べ
参考文献
て若干減少する傾向が見られた。
[1]伊藤他:信学論,Vol.J92-B,No.7,pp.1185-1192(2009)
また、
8 スロットアレーアンテナ,8 スロット平面アンテナ
について同様の解析を行ったが、レンズの収束効果は 1 スロ
ットの場合に比べて低下する傾向を示した。
― 14 ―
[1] 伊藤他:信学論,Vol.J92-B,
No.7,pp.1185-1192(2009)
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
分
生産システム工学専攻
専攻科特別研究
生産システム工学専攻
研究テーマ
導波管分波器のFDTD解析
研究者名
電気情報工学科 宮田 克正,伊藤 桂一
電気情報工学科 宮田 克正,伊藤 桂一
1.諸言
1.諸言
導波管スロットアンテナを並べて平面アンテナを構成すると
導波管スロットアンテナを並べて平面アンテナを構成する
き,各アンテナに均等に給電する方法として導波管型分波器を
とき,各アンテナに均等に給電する方法として導波管型分波
用いる場合がある。導波路の曲がり部と分岐部では反射が大き
器を用いる場合がある.導波路の曲がり部と分岐部では反射
くなることが予想され,ビスを挿入するなどして整合をとるこ x
が大きくなることが予想され,ビスを挿入するなどして整合
とが要求される。
をとることが要求される.
これまで8分配分波器の最適なビス挿入位置および深さを調
これまで8分配分波器の最適なビス挿入位置および深さを
べるためにFDTD法によるシミュレーションを行ってきた。本
調べるために FDTD 法によるシミュレーションを行ってきた.
研究では,分波器全体をFDTD法を用いて解析できるように改
本研究では,分波器全体を FDTD 法を用いて解析できるよう
善し,モデリングおよび計算値の妥当性を検討した。
に改善し,モデリングおよび計算値の妥当性を検討した.
22.9 mm
TE10
z
WRJ-10
Y
y
Y
Y
PML
図1 8分配分波器の概要図
図1.8分配分波器の概要図
2.研究方法
2.研究方法
8分配分波器は図1に示すような導波路であり,複数のエル
2.5
測定値
VSWR
VSWR
計算値
ボー型導波路とY型導波路から構成される。導波路のサイズは
8分配分波器は図1に示すような導波路であり,複数のエ 2.0
WRJ-10規格
(22.90×10.20mm)
であり,入射波としてTE10モー
ルボー型導波路と
Y 型導波路から構成される。
導波路のサイ
ドの正弦波を給電している。
導波路の始端側は金属壁で短絡し,
ズは WRJ-10 規格(22.90×10.20 mm)であり,入射波として TE10 1.5
終端側はアンテナ放射部に接続することを想定して無反射終端
モードの正弦波を給電している.導波路の始端側は金属壁で
(PML境界条件)とした。
短絡し,終端側はアンテナ放射部に接続することを想定して 1.0
11.8
11.9
12.0
12.1
12.2
セルサイズは0.5mmであり,全解析空間は733×528×55セル
無反射終端(PML 境界条件)とした.
周波数[GHz]
である。また,FDTD法のセルは立方体なので,斜めの部分は
セルサイズは 0.5 mm であり,全解析空間は 733×528×55 セ 図2.Y 型導波路①の定在波比
図1に示すようにステップ状に近似してモデリングを行った。 図2 Y型導波路①の定在波比の周波数特性
ルである.また,FDTD 法のセルは立方体なので,斜めの部
の周波数特性
しかし,このモデリングの精度が計算結果に影響を与えること
分は図1に示すようにステップ状に近似してモデリングを行 20.0
は容易に想像がつく。そこでまずはモデリングの妥当性を検討
った.しかし,このモデリングの精度が計算結果に影響を与
測定値
するために,Y型導波路①および8分配分波器について11.8〜
計算値
15.0
えることは容易に想像がつく.そこでまずはモデリングの妥
12.2GHzの電圧定在波比の周波数特性を計算し,測定値との比
当性を検討するために,Y 型導波路①および8分配分波器に
較を行った。
10.0
その後,8分配分波器を構成する3種類のY型導波路のモデ
ついて 11.8~12.2 GHz の電圧定在波比の周波数特性を計算し,
ルから,それぞれのY型導波路における最適なビス挿入位置お
測定値との比較を行った.
5.0
よび深さを全ての組み合わせを計算することにより求め,それ
その後,8分配分波器を構成する3種類の Y 型導波路のモ
1.0
11.8
11.9
12.0
12.1
12.2
を8分配分波器全体のモデルにも適用した。
デルから,それぞれの Y 型導波路における最適なビス挿入位
周波数[GHz]
VSWR
置および深さを全ての組み合わせを計算することにより求め,図3 8分配分波器の定在波比の周波数特性
図3.8分配分波器の定在波比
3.研究結果
それを8分配分波器全体のモデルにも適用した.
の周波数特性
Y型導波路①の定在波比の周波数特性と測定値を比較した結
2.5
果を図2に示す。測定結果と比較して全体の傾向がほぼ一致し
3.研究結果
非整合時
た。同様に図3に示す8分配分波器でも,測定結果と比較する
ビス挿入時
Y 型導波路①の定在波比の周波数特性と測定値を比較した
とおおまかな傾向は一致しており,斜め部分について良好にモ
2.0
結果を図2に示す.測定結果と比較して全体の傾向がほぼ一
デリングされていることがわかる。
致した.同様に図3に示す8分配分波器でも,測定結果と比
図4にY型導波路①にビスを1本挿入した結果を示す。ビス
1.5
較するとおおまかな傾向は一致しており,斜め部分について
挿入パラメータは位置20セル×深さ10セル=200通りの組み合
良好にモデリングされていることがわかる.
わせの計算することにより得られた最良値である。ビス挿入に
図4に Y 型導波路①にビスを1本挿入した結果を示す.ビ
より,12.0GHzにおいて約1.1程度まで定在波比が低減されてい
ることがわかる。
ス挿入パラメータは位置 20 セル×深さ 10 セル=200 通りの組
み合わせの計算することにより得られた最良値である.ビス
挿入により,12.0 GHz において約 1.1 程度まで定在波比が低
減されていることがわかる.
― 15 ―
1.0
11.8
11.9
12.0
周波数[GHz]
12.1
12.2
図4.非整合時とビス挿入時
図4 非整合時とビス挿入時の周波数特性
の周波数特性
特 別 研 究
導波管分波器の FDTD 解析
様専攻科特別研究の概要(平成23年度)
式3
専攻科特別研究
区
分
生産システム工学専攻
研究テーマ
有限要素解析を用いた加速空洞における電磁場の周波数領域解析
有限要素解析を用いた加速空洞における電磁場の周波数領域解析
特 別 研 究
電気情報工学科 坂 本 文 人
研究者名
電気情報工学科 坂本 文人
1.はじめに
1. はじめに
近年,医療・産業界の要請により,電子
近年,医療・産業界の要請により,電子
線形加速器の小型化の研究が積極的になさ
線形加速器の小型化の研究が積極的になさ
れ,加速周波数帯域はさらに高くなる傾向
れ,加速周波数帯域はさらに高くなる傾向
にある。周波数が高くなるにつれ,設計段
にある.周波数が高くなるにつれ,設計段
階における電磁場の数値解析に要求される
階における電磁場の数値解析に要求される
精度も厳しくなり,X-band帯域においては
精度も厳しくなり,X-band 帯域においては
空洞のQ値も高くなることから,10-6〜 -7も
空洞の Q 値も高くなることから,10-6~-7 も
の精度が要求される。当研究室では,電磁
1 X-band 加速空洞モデルの解析結果(磁場強度分布)
の精度が要求される.当研究室では,電磁 図
図1 X-band加速空洞モデルの解析結果(磁場強度分布)
場解析及び荷電粒子運動解析といった総合
場解析及び荷電粒子運動解析といった総合
的な加速器設計ツールの実現を目標とし,
的な加速器設計ツールの実現を目標とし,
シミュレータの開発を行っている。
シミュレータの開発を行っている.
2.研究方法
2. 研究方法
これまでに解析領域の分割手法の解析精
これまでに解析領域の分割手法の解析精
度に及ぼす影響と解析時間を定量的に評価
度に及ぼす影響と解析時間を定量的に評価
するため,三角形および四角形の各1,2次要
するため,三角形および四角形の各 1,2 次
素による解析コードを作成した。2次要素
要素による解析コードを作成した.2 次要
では離散化式の導出にアイソパラメトリッ
図 2 要素数と解析精度の関係
図2 要素数と解析精度の関係
素では離散化式の導出にアイソパラメトリ
ク要素を採用し,アルゴリズムの簡素化を
ック要素を採用し,アルゴリズムの簡素化を試みている.図 1 に X-band 高周波電子銃における
試みている。図1にX-band高周波電子銃における加速空洞モデルの解析結果を示す。また,要
素数に対する解析精度の変化を図2に示す。作成されたコードでは十分な精度が得られているこ
加速空洞モデルの解析結果を示す.また,要素数に対する解析精度の変化を図 2 に示す.作成さ
とが示されたが,既存のコードと比較すると多くの時間を要しているため,共役勾配法を用い
れたコードでは十分な精度が得られていることが示されたが,既存のコードと比較すると多くの
た固有値ソルバーにも改善を検討している。
時間を要しているため,共役勾配法を用いた固有値ソルバーにも改善を検討している.
3.おわりに
3. おわりに
二次元軸対象電磁場の解析から荷電粒子の運動解析が可能な加速器シミュレータの開発を進
二次元軸対象電磁場の解析から荷電粒子の運動解析が可能な加速器シミュレータの開発を進め
めている。これまでに静電磁場と空洞共振器における共振モード解析が可能になったが,まだ
ている.これまでに静電磁場と空洞共振器における共振モード解析が可能になったが,まだ精度
精度の面で改善が必要である。精度の改善として二次曲線要素を採用し曲線の再現を行い,既
の面で改善が必要である.精度の改善として二次曲線要素を採用し曲線の再現を行い,既存のコ
存のコードとの精度比較を実施する。荷電粒子の運動解析については未着手であるが,今後早
ードとの精度比較を実施する.荷電粒子の運動解析については未着手であるが,今後早急に着手
急に着手する予定である。また,近年計算機の計算処理能力が飛躍的に発展しているため,マ
する予定である.また,近年計算機の計算処理能力が飛躍的に発展しているため,マルチコア CPU
ルチコアCPUに対応したコーディングを進め,解析の高速化を計画している。
に対応したコーディングを進め,解析の高速化を計画している.
― 16 ―
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区 生産システム工学専攻
分
生産システム工学専攻
ベイジアンネットワークによる現在地予測に基づくコミュニケーシ
ベイジアンネットワークによる現在地予測に基づくコミュニ
ケーションシステムの設計
ョンシステムの設計
研究テーマ
電気情報工学科 平石 広典
電気情報工学科
平石 広典
1.緒言
1.緒言
本研究では,高専や大学のような高等教育機関における各研究室を対象に,在室者の状況を
本研究では,高専や大学のような高等教育機関における各研究室を対象に,在室者の状況を指し示
指し示す一般的な手動操作の情報板に替わり,自動で現在地を予測し,適切な連絡手段を提供
す一般的な手動操作の情報板に替わり,自動で現在地を予測し,適切な連絡手段を提供するコミュニ
するコミュニケーションシステムを設計した。
ケーションシステムを設計した.
これは,在室者の行動履歴を利用したベイジアンネットワークにより実現され,一般的な情
これは,在室者の行動履歴を利用したベイジアンネットワークにより実現され,一般的な情報板におけ
報板における操作の忘失や,指し示す場所が間違っていた場合でも,確率的に複数の候補を示
る操作の忘失や,指し示す場所が間違っていた場合でも,確率的に複数の候補を示すことが可能であ
すことが可能である。また,前期や後期などの,大幅なスケジュール変更にも対応できること
る.また,前期や後期などの,大幅なスケジュール変更にも対応できることが特徴的である.
が特徴的である。
2.システム概要
2.システム概要
TV電話,メール,伝言板の3つを連絡手段として用意
TV 電話,メール,伝言板の 3 つを連絡手段として用意
し,現在地の予測に基づき状況に適切な連絡手段を,シ
し,現在地 の予測に基づき状況に適切な連絡 手段を,
ステムが制限して提供する。また一目での視認性を向上
システムが制限して提供する.また一目での視認性を向
させるため,現在地確率を濃淡によっても表現しており,
上させるため,現在地確率を濃淡によっても表現してお
これにより複数の候補の表示にも対応している。
り,これにより複数の候補の表示にも対応している.
現在地の予測は,システムが提示した位置に対して,
現在地の予測は,システムが提示した位置に対して,
在室者がどのように変更を行ったかによって実現され
在室者がどのように変更を行ったかによって実現される.
る。例えば,システムが在室100%を示していた場合に,
例えば,システムが在室 100%を示していた場合に,会議
会議によって退出した場合は,その時間帯には,会議が
によって退出した場合は,その時間帯には,会議が入る
入る可能性があるため,会議に対する確率値を増やすべ
可 能 性があるため,会 議 に対 する確 率 値を増やすべき
きである。この時,外出などの一時的な変更,もしくは
講義などの恒久的な変更というような違いによって,ど
である.この時,外出などの一時的な変更,もしくは講義
の程度の確率値を増やすべきかを判断する必要がある。
などの恒久的な変更というような違いによって,どの程度
そのため,図1に示すようなシステムの出力と在室者
の確率値を増やすべきかを判断する必要がある.そのた
の変更を入力としたベイジアンネットワークを構築し
め,図1に示 すようなシステムの出 力 と在 室 者 の変 更 を
た。それぞれの組み合わせから恒久的変更か一時的変更
入力としたベイジアンネットワークを構築した.それぞれ
を判断し,さらに,恒久的変更に対しては30%,もしく
の組み合わせから恒久的変更か一時的変更を判断し,
は40%の確率値を変更し,一時的変更に対しては,10%, 図1 変更の一時性を判断するベイ
さらに,恒久的変更に対しては 30%,もしくは 40%の確率
もしくは20%の確率値を変更するように設計した。
ジアンネットワーク
値を変更し,一時的変更に対しては,10%,もしくは 20%
の確率値を変更するように設計した.
3.研究結果
実際の在室者の6週間の行動履歴(スケジュール変更なし)を利用した運用評価を行った。シ
ステムは初期(常に在室100%)状態から,収集した行動履歴に基づいて確率値の変更を行った。
3.研究結果
そして,6週間分の行動履歴の頻度による確率値と,最終的にシステムが出力するようになった
実際の在室者の 6 週間の行動履歴(スケジュール変更なし)を利用した運用評価を行った.シス
確率値と比較した。その結果,全体の精度は91.2%となった。つまり,本方式において高い精度
テムは初期(常に在室 100%)状態から,収集した行動履歴に基づいて確率値の変更を行った.そ
で行動履歴に基づく現在地の予測が可能である。
して,6 週間分の行動履歴の頻度による確率値と,最終的にシステムが出力するようになった確率
ここで,単純に頻度を元にして計算を行うと,正解率は高くなるものの,徐々に1回の操作あ
値と比較した.その結果,全体の精度は 91.2%となった.つまり,本方式において高い精度で行動
たりの確率値の変化量が小さくなってしまう。すなわち,過去の操作よりもより意味のある直
履歴に基づく現在地の予測が可能である.
近の操作が反映されにくくなるということであり,スケジュール変更への対応は難しい。本シ
ここで,単純に頻度を元にして計算を行うと,正解率は高くなるものの,徐々に 1 回の操作あたり
ステムでは,常に状況に適した値を反映させ,高い正解率と変化への対応という2点を両立して
の確率値の変化量が小さくなってしまう.すなわち,過去の操作よりもより意味のある直近の操作が
いるものと考えられる。
反映されにくくなるということであり,スケジュール変更への対応は難しい.本システムでは,常に状
況に適した値を反映させ,高い正解率と変化への対応という 2 点を両立しているものと考えられる.
― 17 ―
特 別 研 究
研究者名
専攻科特別研究
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
区
分
生産システム工学専攻
表面磁石型同期電動機の磁束分布に関する基礎検討
表面磁石型同期電動機の磁束分布に関する基礎検討
研究テーマ
表面磁石型同期電動機の磁束分布に関する基礎検討
電気情報工学科 髙橋
研1.緒
究 者 名言 電気情報工学科 髙橋 身佳
1.緒 言
近年,世界的に環境問題に対する関心が高まり,電動機の効率改善に関する研究が盛ん
1.緒言
近年,世界的に環境問題に対する関心が高まり,電動機の効率改善に関する研究が盛ん
に行われている. 電動機は,近年の磁石材料の高エネルギー化に伴い,回転子に永久磁石
近年,世界的に環境問題に対する関心が高まり,電動機の効率改善に関する研究が盛んに行
に行われている.
電動機は,近年の磁石材料の高エネルギー化に伴い,回転子に永久磁石
を用いた同期電動機の効率が著しく高まり,
様々な分野で応用されている. 本研究では,
われている電動機は,近年の磁石材料の高エネルギー化に伴い,回転子に永久磁石を用いた同
を用いた同期電動機の効率が著しく高まり,
様々な分野で応用されている. 本研究では,
三相6スロット表面磁石型同期電動機を対象に,ギャップ内に含まれる磁界を算出し,効
期電動機の効率が著しく高まり,様々な分野で応用されている。本研究では,三相6スロット
三相6スロット表面磁石型同期電動機を対象に,ギャップ内に含まれる磁界を算出し,効
率低下の原因となる高調波含有状況を解析により明らかにした.さらに,起電力波形をよ
表面磁石型同期電動機を対象に,ギャップ内に含まれる磁界を算出し,効率低下の原因となる
率低下の原因となる高調波含有状況を解析により明らかにした.さらに,起電力波形をよ
り正弦波状に近づけるための検討を行った.
高調波含有状況を解析により明らかにした。さらに,起電力波形をより正弦波状に近づけるた
り正弦波状に近づけるための検討を行った.
めの検討を行った。
2.研究方法
2.研究方法
2.研究方法
研究対象機は60W級三相4極6スロット同期電動機
研究対象機は60W級三相4極6スロット同期電動機
研究対象機は60W級三相4極6スロット同期電動機であ
である.図1に,解析対象電動機の構造を示す.永久磁
である.図1に,解析対象電動機の構造を示す.永久磁
る。図1に,解析対象電動機の構造を示す。永久磁石材料
石材料にはネオジムを使用し,固定子巻線の巻数は18
石材料にはネオジムを使用し,固定子巻線の巻数は18
にはネオジムを使用し,固定子巻線の巻数は18とした。こ
とした.この電動機の固定子内側表面の磁束分布と誘導
とした.この電動機の固定子内側表面の磁束分布と誘導
の電動機の固定子内側表面の磁束分布と誘導起電力を,有
起電力を,有限要素法によって解析した.
起電力を,有限要素法によって解析した.
限要素法によって解析した。
また,実際に製作した電動機の固定子内側表面にさぐ
また,実際に製作した電動機の固定子内側表面にさぐ
また,実際に製作した電動機の固定子内側表面にさぐり
りコイルを設置し,さぐりコイルの出力から磁束分布と
りコイルを設置し,さぐりコイルの出力から磁束分布と
コイルを設置し,さぐりコイルの出力から磁束分布と誘導
誘導起電力を測定した.次に,回転子表面に配置した永
誘導起電力を測定した.次に,回転子表面に配置した永
起電力を測定した。次に,回転子表面に配置した永久磁石
久磁石間の磁気抵抗を変更し,前述の解析を行い高調波
久磁石間の磁気抵抗を変更し,前述の解析を行い高調波
間の磁気抵抗を変更し,前述の解析を行い高調波の含有状
の含有状況を比較検討した.
の含有状況を比較検討した.
況を比較検討した。
図1 研究対象機断面
図1 研究対象機断面
図1
研究対象機断面
3.研究結果
3.研究結果
3.研究結果
誘導起電力の解析をした結果,理想状態では固定子内の起電力には基本波と低次の奇数
誘導起電力の解析をした結果,理想状態では固定子内の起電力には基本波と低次の奇数の高
誘導起電力の解析をした結果,理想状態では固定子内の起電力には基本波と低次の奇数
の高調波成分のみ含有するが,実際に製作した電動機の起電力には偶数次の高調波成分も
調波成分のみ含有するが,実際に製作した電動機の起電力には偶数次の高調波成分も含有する
の高調波成分のみ含有するが,実際に製作した電動機の起電力には偶数次の高調波成分も
含有することがわかった.これは,偏心等による構造上の非対称が原因であると考えられ
ことがわかった。これは,偏心等による構造上の非対称が原因であると考えられる。図2に
含有することがわかった.これは,偏心等による構造上の非対称が原因であると考えられ
る.図2に
Imax
=50[Hz]
1.5[A],f=
50[Hz]の条件における固定子内側表面のさぐりコイル誘
Imax
= 1.5[A]
,
f=
の条件における固定子内側表面のさぐりコイル誘導起電力波形を,
る.図2に
Imax
= 1.5[A],f=
50[Hz]の条件における固定子内側表面のさぐりコイル誘
導起電力波形を,図3に起電力波形をFFTで分析した結果を示す.また,永久磁石間を
図3に起電力波形をFFTで分析した結果を示す。また,永久磁石間を鉄心から空隙に変える
導起電力波形を,図3に起電力波形をFFTで分析した結果を示す.また,永久磁石間を
鉄心から空隙に変えることで,各次高調波成分を4~7%低減させることができた.
ことで,各次高調波成分を4~7%低減させることができた。
鉄心から空隙に変えることで,各次高調波成分を4~7%低減させることができた.
今後の課題としては,磁石間の材質以外に,ティース部のギャップ幅や回転子表面の永
今後の課題としては,磁石間の材質以外に,ティース部のギャップ幅や回転子表面の永久磁
今後の課題としては,磁石間の材質以外に,ティース部のギャップ幅や回転子表面の永
久磁石の厚みを変えた場合の検討が挙げられる.
石の厚みを変えた場合の検討が挙げられる。
久磁石の厚みを変えた場合の検討が挙げられる.
0.5
測定値
測定値
解析値
解析値
1
0.5
0
0
0
-0.5
0
-0.5
-1
-1
-1.5
-1.5
5
5
10
10
15
15
20
120
20
EMFスペクトラム[%]
EMF[V]
1
1.5
EMFスペクトラム[%]
1.5
EMF[V]
特 別 研 究
身佳
髙橋 身佳
電気情報工学科
100
80
60
40
20
0
時間[ms]
時間[ms]
120
測定値
測定値
解析値
解析値
100
80
60
40
20
0
1
図2 固定子内側表面のさぐりコイルの
図2 図2 固定子内側表面のさぐりコイルの
固定子内側表面のさぐりコイルの
誘導起電力波形
誘導起電力波形
誘導起電力波形
― 18 ―
1
2
2
3
3
4
4
5
6
5
6
7
高調波次数
高調波次数
7
8
8
9
9
10
図3 高調波含有状況
図3 高調波含有状況
図3 高調波含有状況
10
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
生産システム工学専攻
区
分
生産システム工学専攻
向流移動層での粒子挙動と温度分布に及ぼす炉壁突起物の影響
研究テーマ
向流移動層での粒子挙動と温度分布に及ぼす炉壁突起物の影響
機械工学科 一田 守政
機械工学科 一田 守政
鉄鋼業の CO2 排出量の大部分を占める高炉プロセスの熱効率の改善は重要課題である。本研究では向
1.緒言
流移動層である高炉プロセスの二次元縮尺模型装置を用いた熱効率の改善を目的とした。まず粒子挙動
鉄鋼業のCO
2排出量の大部分を占める高炉プロセスの熱効率の改善は重要課題である。本研
に着目し、炉壁面に形状の異なる突起物を設置して粒子流線の測定を行った。同時に 2 本の羽口から温
究では向流移動層である高炉プロセスの二次元縮尺模型装置を用いた熱効率の改善を目的とし
風を送風することによりアルミナ球と温風の向流移動層状態にして、炉壁突起物形状が粒子挙動と温度
た。まず粒子挙動に着目し,炉壁面に形状の異なる突起物を設置して粒子流線の測定を行った。
分布に及ぼす影響を検討した。
同時に2本の羽口から温風を送風することによりアルミナ球と温風の向流移動層状態にして,炉
壁突起物形状が粒子挙動と温度分布に及ぼす影響を検討した。
2.研究方法
2.研究方法
実験装置は、高炉縮尺二次元模型、温風発生装置、ブロワー、流量計、熱画像測定装置、CCD カメラ、
実験装置は,高炉縮尺二次元模型,温風発生装置,ブロワー,流量計,熱画像測定装置,
ノートパソコンによって構成される。粒子挙動測定は、炉壁に各形状の突起物(設置間隔 90mm、45mm、
CCDカメラ,ノートパソコンによって構成される。粒子挙動測定は,炉壁に各形状の突起物(設
20mm)を設置し、模型内にアルミナ球を充填した後、実験装置下部よりアルミナ球を排出して CCD カ
置間隔90mm,45mm,20mm)を設置し,模型内にアルミナ球を充填した後,実験装置下部よ
メラで測定した。測定データをノートパソコンに保存した後に PIV 法 1)により粒子の速度ベクトル解析
りアルミナ球を排出してCCDカメラで測定した。測定データをノートパソコンに保存した後に
を行った。温度分布は、熱画像測定装置で実験装置前面のアクリル板表面より測定した。温風発生装置
PIV法1)により粒子の速度ベクトル解析を行った。温度分布は,熱画像測定装置で実験装置前
により暖められた空気をブロワーから左右2本の送風羽口を介して装置本体へ送風し、実験装置内に充
面のアクリル板表面より測定した。温風発生装置により暖められた空気をブロワーから左右2
填されているアルミナ球を約 2 時間昇温した後にアルミナ球の排出を開始して向流移動層状態にして測
本の送風羽口を介して装置本体へ送風し,実験装置内に充填されているアルミナ球を約2時間昇
定を行った。
温した後にアルミナ球の排出を開始して向流移動層状態にして測定を行った。
3.研究結果
3.研究結果
炉芯模擬障害物を設置した高炉向流移動層条件で炉壁突起物が未設置の場合には,中心部近
炉芯模擬障害物を設置した高炉向流移動層条件で炉壁突起物が未設置の場合には、中心部近傍の温度
傍の温度が高い(図1)
。これは,レースウェイへ降下するアルミナ粒子の移動領域に沿って温
が高い(図 1)。これは、レースウェイへ降下するアルミナ粒子の移動領域に沿って温風が流れて温度分布
風が流れて温度分布が決まるためである。一方,炉壁突起物を設置(設置間隔20mm)した条
が決まるためである。一方、炉壁突起物を設置(設置間隔 20mm)した条件では、炉壁近傍の降下速度が
件では,炉壁近傍の降下速度が低下し,中心部近傍の降下領域が拡大した。そして,中心部近
低下し、中心部近傍の降下領域が拡大した。そして、中心部近傍の温度は低下した(図2)。これは、中
傍の温度は低下した(図2)
。これは,中心部近傍の降下速度の上昇とガス流量の減少(炉壁近
心部近傍の降下速度の上昇とガス流量の減少(炉壁近傍のガス流量の増大)により中心部近傍の熱流比が
傍のガス流量の増大)により中心部近傍の熱流比が上昇し,粒子の昇温が不十分になった結果
上昇し、粒子の昇温が不十分になった結果である。
である。
以上の結果より、向流移動層内の温度分布が粒子挙動と密接に関連したガス流れの変化の結果として
以上の結果より,向流移動層内の温度分布が粒子挙動と密接に関連したガス流れの変化の結
決まることがわかった。熱効率の改善には径方向に均一なガス流れと温度分布が必要である。そのため
果として決まることがわかった。熱効率の改善には径方向に均一なガス流れと温度分布が必要
には、理想的なガス流れを形成する粒子挙動の確保が必要であり、炉壁平滑度の維持が重要であること
である。そのためには,理想的なガス流れを形成する粒子挙動の確保が必要であり,炉壁平滑
が判明した。
度の維持が重要であることが判明した。
レースウェイ
レースウェイ
図1 炉壁突起物未設置条件における温度分布
炉壁突起物未設置条件における温度分布
図1
図 2 炉壁突起物設置条件における温度分布
炉壁突起物設置条件における温度分布
図2
参考文献 1)加賀昭和,井上義雄,山口克人:可視化情報,14(1994)53,
参考文献 1) 加賀昭和、井上義雄、山口克人:可視化情報、14(1994)53, 38. 38.
― 19 ―
特 別 研 究
研
究 者言
名
1.緒
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
生産システム工学専攻
区
分
生産システム工学専攻
特 別 研 究
FES(機能的電気刺激)を用いた車いす用下肢駆動ユニットの開発
FES(機能的電気刺激)を用いた車いす用下肢駆動ユニット
機械工学科 小林 義和
研究テーマ
の開発
1. 緒 言
研 車いすは機器への依存性が高くなる傾向があるため,下肢の筋をほとんど使用しない従来の
究者名
機械工学科 小林 義和
車いすを使用し生活を続けた場合,下肢の筋萎縮や血行障害などでさらに歩行能力が低下する.
1.緒言
これらを予防するために,医学の分野では FES(機能的電気刺激)を用いた FES サイクリン
車いすは機器への依存性が高くなる傾向があるため,下肢の筋をほとんど使用しない従来の車いす
グというものがある.FES サイクリングは屋外で使用されることが多く,その場合には屋内で
を使用し生活を続けた場合,下肢の筋萎縮や血行障害などでさらに歩行能力が低下する。これらを予
使用される車いすから屋外で使用される FES サイクリングへ移乗しなくてはいけない.その
防するために,医学の分野ではFES(機能的電気刺激)を用いたFESサイクリングというものがある。
ため,使用者や介助者への負担が増加し,リハビリテーションが長く続かずに症状が悪化して
FESサイクリングは屋外で使用されることが多く,その場合には屋内で使用される車いすから屋外で
しまうことも多い.移乗の際の使用者や介助者への負担を減らすためには屋内では従来の操作
使用されるFESサイクリングへ移乗しなくてはいけない。そのため,使用者や介助者への負担が増加し,
性の良い車いすを使い,そこから移乗を行うことなく屋外での FES サイクリングによるリハ
リハビリテーションが長く続かずに症状が悪化してしまうことも多い。移乗の際の使用者や介助者へ
ビリテーションをできるようにする必要がある.そこで本研究では障害を持つ場合の問題点を
の負担を減らすためには屋内では従来の操作性の良い車いすを使い,そこから移乗を行うことなく屋
考慮したアタッチメント式の下肢駆動前輪ユニットの製作・改良を目的とした.
外でのFESサイクリングによるリハビリテーションをできるようにする必要がある。そこで本研究で
は障害を持つ場合の問題点を考慮したアタッチメント式の下肢駆動前輪ユニットの製作・改良を目的
2. 研究概要
とした。
本研究では,一号機,二号機,三号機と,計三台の下肢駆動前輪ユニットが開発された.一号
機は,イレクターとメタルジョイントと JIS 鋼管を用いてフレームを構成し,市販の自転車の
2.研究概要
パーツを加えて製作した.その後秋田大学にて FES 駆動実験を行い,そこで明らかになった
本研究では,一号機,二号機,三号機と,計三台の下肢駆動前輪ユニットが開発された。一号機は,
問題点をリプレースメントクランプ等を用いて改良した.二号機は一号機での問題点や医師の
イレクターとメタルジョイントとJIS鋼管を用いてフレームを構成し,市販の自転車のパーツを加えて
意見を参考に,ミナトエンジニアリング株式会社が開発した.三号機は,前輪部と座席,後輪
製作した。その後秋田大学にてFES駆動実験を行い,そこで明らかになった問題点をリプレースメン
部が取り外せるよ
トクランプ等を用いて
うになっている前
改良した。二号機は一
輪駆動二輪車の前
号機での問題点や医師
輪部を改造し,車
の意見を参考に,ミナ
トエンジニアリング株
いすに着脱できる
式会社が開発した。三
前輪ユニットとし
号機は,
前輪部と座席,
た.その
後,より
後輪部が取り外せるよ
着脱を容易にする
うになっている前輪駆
改良と運転性能を
動二輪車の前輪部を改
高める改良を併せ
造し,車いすに着脱で
て行った.
きる前輪ユニットとし
3. 研究結果
た。その後,より着脱
一号機は駆動実
を容易にする改良と運
験から FES による
転性能を高める改良を
図1 一号機(左)と二号機の外観
図1 一号機(左)と2号機の外観
併せて行った。
電気刺激のみでサ
イクリング運動を
3.研究結果
実現できるという
一号機は駆動実験か
ことがわかったが,
らFESによる電気刺激
図2 前輪駆動自転車(左)と三号機の外観
図2 前輪駆動自転車(左)と3号機の外観
さらなる改良が必
のみでサイクリング運
要だと考えられる.
動を実現できるということがわかったが,さらなる改良が必要だと考えられる。三号機は,より運転
三号機は,より運転しやすいように改良し,二号機と併せて秋田大学にて FES 駆動実験を行
しやすいように改良し,二号機と併せて秋田大学にてFES駆動実験を行う必要がある。また,二号機
う必要がある.また,二号機や三号機の構造ではどうしてもペダルの位置が高く,障害者の方
や三号機の構造ではどうしてもペダルの位置が高く,障害者の方には運転しづらいと考えられ,ペダ
には運転しづらいと考えられ,ペダルの位置を低くした新たなフレーム構造の開発が必要であ
ルの位置を低くした新たなフレーム構造の開発が必要であるということがわかった。
るということがわかった.
― 20 ―
専攻科特別研究
専攻科特別研究
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
分
機械工学科
フライホイール型倒立振子の安定化制御機械工学科
木
木 澤
澤
悟
悟
-2-2
-3-3
-4-4
00
11
22
33
Time[s]
Time[s]
44
55
Fig.2
Fig.2 振子角度の応答
振子角度の応答
Fig.2 振子角度の応答
1600
1600
1400
1400
Case.Ⅰ
Case.ⅠD=60mm
D=60mm
Case.Ⅱ
Case.ⅡD=100mm
D=100mm
1200
1200
Angle of Rotor[deg]
Angle of Rotor[deg]
り,
り,D=100[mm]の方が始動時において振れ幅が大きいが,
D=100[mm]の方が始動時において振れ幅が大きいが,
3.研究結果
0[deg]付近,つまり鉛直状態に漸近している.また,フラ
0[deg]付近,つまり鉛直状態に漸近している.また,フラ
Fig.2~ Fig.4はそれぞれ,各フライホイールの振子角度フ
イホイールの角度も
イホイールの角度も 0[deg]近傍に収束しており,安定した
0[deg]近傍に収束しており,安定した
ライホイール角度,モータ電圧の応答である。Fig.2より,
状態
状態を維
を維持
持して
している
いるこ
ことが
とがわか
わかる
る.一
.一方で
方で,
,D=
D=60[mm]
60[mm]
D=100[mm]の方が始動時において振れ幅が大きいが,0
の方は振子角度が-0.3[deg]付近に漸近しており,Fig.3
の方は振子角度が-0.3[deg]付近に漸近しており,Fig.3 よ
よ
[deg]付近,つまり鉛直状態に漸近している。また,フラ
りフライホイール角度では,一定の回転速度で回転したま
りフライホイール角度では,一定の回転速度で回転したま
イホイールの角度も0[deg]近傍に収束しており,安定した状
まである.このことから,D=60[mm]のフライホイールで
まである.このことから,D=60[mm]のフライホイールで
態を維持していることがわかる。一方で,D=60[mm]の
Angle of Pendulum[deg]
Angle of Pendulum[deg]
近年,マニピュレータの姿勢制御の開発において,関節の数よりアクチュエータの数を
研 近年,マニピュレータの姿勢制御の開発において,関節の数よりアクチュエータの数を
究
者名
機械工学科 木澤 悟
減らした劣駆動システムが注目されている.本研究では,劣駆動システムの一例であるフ
減らした劣駆動システムが注目されている.本研究では,劣駆動システムの一例であるフ
1.緒言
ライホイール型倒立振子を,鉛直に倒立状態を保持させることを目指した.そして,振子
ライホイール型倒立振子を,鉛直に倒立状態を保持させることを目指した.そして,振子
近年,マニピュレータの姿勢制御の開発において,関節の数よりアクチュエータの数を減ら
を真上状態に倒立させる制御手法には,最適レギュレータを用い,最適レギュレータにお
を真上状態に倒立させる制御手法には,最適レギュレータを用い,最適レギュレータにお
した劣駆動システムが注目されている。本研究では,劣駆動システムの一例であるフライホイー
ける重み関数を調整して,安定化制御を試みた.さらに,本研究では,反動トルクの違い
ける重み関数を調整して,安定化制御を試みた.さらに,本研究では,反動トルクの違い
ル型倒立振子を,鉛直に倒立状態を保持させることを目指した。そして,振子を真上状態に倒
による安定化の性能を比較,検討するために,直径
による安定化の性能を比較,検討するために,直径 D
D の異なる
の異なる D=60[mm]と
D=60[mm]と D=100[mm]
D=100[mm]
立させる制御手法には,最適レギュレータを用い,最適レギュレータにおける重み関数を調整
の
の 22 種類のフライホイールを用意し,それぞれの場合について安定化制御実験を行った.
種類のフライホイールを用意し,それぞれの場合について安定化制御実験を行った.
して,安定化制御を試みた。さらに,本研究では,反動トルクの違いによる安定化の性能を比較,
2.研究方法
2.研究方法
検討するために,
直径Dの異なるD=60[mm]とD=100[mm]
DC
DCMotor
Motor
実
験
装
置
に
使
用
実
験
装
置
に
使
用し
した
たフ
フラ
ライ
イホ
ホイ
イー
ール
ル型
型倒
倒立
立振
振子
子シ
シ
の2種類のフライホイールを用意し,それぞれの場合につい
with
withEncoder
Encoder
Motor
MotorAmp./
Amp./
ステムを
ステムを Fig.1
Fig.1 に示す.フライホイール型倒立振子は
に示す.フライホイール型倒立振子は
て安定化制御実験を行った。
Power
PowerSupply
Supply
振子,フライホイールから構成されており,それぞれ
振子,フライホイールから構成されており,それぞれ
D/A
D/A
2.研究方法
の角度はロータリーエンコーダで計測される.
そして,
の角度はロータリーエンコーダで計測される.
そして,
実験装置に使用したフライホイール型倒立振子システム
Multi
Multi Q-PCI(カウンタ)を介して
Q-PCI(カウンタ)を介して PC
PC へと送られ,
へと送られ,
Counter
Counter
をFig.1に示す。フライホイール型倒立振子は振子,フラ
MATLAB/Simulink
MATLAB/Simulinkおよび
および Wincon
Winconを用いて制御入力
を用いて制御入力
PPCC
Multi
Rotary Encoder
MultiQ-PCI
Q-PCI
イホイールから構成されており,それぞれの角度はロータ Rotary Encoder
が計算され
が計算される.出力さ
る.出力された制御入
れた制御入力は
力は Multi
Multi Q-PCI
Q-PCI
リーエンコーダで計測される。そして,Multi Q-PCI(カウ
Fig.1 倒立振子システム
Fig.1
倒立振子システム
(D/A
Fig.1
倒立振子システム
(D/A コンバータ)で電圧として変換された後,モータ
コンバータ)で電圧として変換された後,モータ
ンタ)を介してPCへと送られ,MATLAB/Simulinkおよび
アンプで増幅して,モータへ入力電圧として送られる.
アンプで増幅して,モータへ入力電圧として送られる.
44
Case.Ⅰ
Case.ⅠD=60mm
D=60mm
Winconを用いて制御入力が計算される。出力された制御入
Case.Ⅱ
Case.ⅡD=100mm
D=100mm
33
3.研究結果
3.研究結果
力はMulti
Q-PCI(D/Aコンバータ)で電圧として変換され
22
11
Fig.2~Fig.4
Fig.2~Fig.4 はそれぞれ,各フライホイールの振子角度
はそれぞれ,各フライホイールの振子角度
た後,モータアンプで増幅して,モータへ入力電圧として
00
送られる。
フライホイール角度,モータ電圧の応答である.Fig.2
フライホイール角度,モータ電圧の応答である.Fig.2 よ
よ
-1-1
1000
1000
800
800
600
600
INPUT Moter Voltage[V]
INPUT Moter Voltage[V]
400
400
は,ロータが回転しながら振子の安定化制御を実現させて
は,ロータが回転しながら振子の安定化制御を実現させて
方は振子角度が-0.3[deg]付近に漸近しており,Fig.3より
200
200
いる.しかし,0[deg]付近に漸近している
いる.しかし,0[deg]付近に漸近している D=100[mm]の
D=100[mm]の
フライホイール角度では,一定の回転速度で回転したまま
00
-200
-200
00
11
22
33
44
55
である。このことから,
D=60[mm]のフライホイールでは,
方が,精度よく安定化制御が行われていることがわかる.
方が,精度よく安定化制御が行われていることがわかる.
Fig.3
Fig.3 フライホイール
フライホイール
ロータが回転しながら振子の安定化制御を実現させている。
Fig.3 フライホイール角度の応答
また,Fig.4
また,Fig.4の制御電圧より,D=100[mm]の場合,ロータの直
の制御電圧より,D=100[mm]の場合,ロータの直
角度の応答
角度の応答
しかし,0[deg]付近に漸近しているD=100[mm]の方が,
径が大きい分始動時の電圧は大きいが,反動トルクが大き
径が大きい分始動時の電圧は大きいが,反動トルクが大き
4040
Case.Ⅰ
Case.ⅠD=60mm
D=60mm
精度よく安定化制御が行われていることがわかる。また,
Case.Ⅱ
Case.ⅡD=100mm
D=100mm
い分,倒立後はモータがほぼ停止状態なので,D=60[mm]
い分,倒立後はモータがほぼ停止状態なので,D=60[mm]
Fig.4の制御電圧より,D=100[mm]の場合,ロータの直
2020
よりも電圧が小さいことがわかる.
よりも電圧が小さいことがわかる.
径が大きい分始動時の電圧は大きいが,反動トルクが大き
00
以上より,コントローラとしての最適レギュレータは,
以上より,コントローラとしての最適レギュレータは,
い分,倒立後はモータがほぼ停止状態なので,D=60[mm]
フライホイール型倒立振子の安定化制御に有効であり,フ
フライホイール型倒立振子の安定化制御に有効であり,フ
よりも電圧が小さいことがわかる。
-20
-20
ライホイールの直径を大きくすることにより,反動トルク
ライホイールの直径を大きくすることにより,反動トルク
以上より,コントローラとしての最適レギュレータは,
の影響を受け,
振子を安定化させやすいことが確認できた.
の影響を受け,
振子を安定化させやすいことが確認できた.
フライホイール型倒立振子の安定化制御に有効であり,フ
ライホイールの直径を大きくすることにより,反動トルク
の影響を受け,振子を安定化させやすいことが確認できた。
― 21 ―
-40
-40
00
11
22
33
Time[s]
Time[s]
44
Fig.4
Fig.4 電圧の応答
電圧の応答
Fig.4 電圧の応答
55
特 別 研 究
研究テーマ
1.緒
1.緒 言
言
フライホイール型倒立振子の安定化制御
フライホイール型倒立振子の安定化制御
生産システム工学専攻
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
生産システム工学専攻
区
分非接触型センサを用いた歩行遊脚期の検出システム
生産システム工学専攻
専攻科特別研究
生産システム工学専攻
研究テーマ
非接触型センサを用いた歩行遊脚期の検出システム
機械工学科 木 澤
特 別 研 究
非接触型センサを用いた歩行遊脚期の検出システム
悟
1.緒 言
研究者名
機械工学科 木澤 悟
脳卒中の後遺症として片麻痺が残る場合,歩行時に足のつま先を上げることができない
機械工学科 木 澤 悟
下垂足を生じることがある.これに対して FES を用いた歩行再建法があるが,電気刺激の
1.緒言
1.緒
言
制御タイミングとして遊脚期の検出が必要である.従来,遊脚期の検出は足底に装着した
脳卒中の後遺症として片麻痺が残る場合,歩行時に足のつま先を上げることができない下垂
脳卒中の後遺症として片麻痺が残る場合,歩行時に足のつま先を上げることができない
足を生じることがある。これに対してFESを用いた歩行再建法があるが,電気刺激の制御タイ
接触センサによって行われていたが,この方法では違和感や耐久での問題がある.そこで
ミングとして遊脚期の検出が必要である。従来,遊脚期の検出は足底に装着した接触センサに
下垂足を生じることがある.これに対して
FES を用いた歩行再建法があるが,電気刺激の
非接触センサと Neural Network(以下 N.N.)を組み合わせ遊脚期の推定を行う方法を検討
よって行われていたが,この方法では違和感や耐久での問題がある。そこで非接触センサと
制御タイミングとして遊脚期の検出が必要である.従来,遊脚期の検出は足底に装着した
した.その結果,健常者の遊脚期検出は可能であったが,実用化のためには検出精度が低
Neural
Network(以下N.N.)を組み合わせ遊脚期の推定を行う方法を検討した。その結果,健
接触センサによって行われていたが,この方法では違和感や耐久での問題がある.そこで
く,また実際の患者に対する有用性は未知数であった.本研究では遊脚期推定の検出精度
常者の遊脚期検出は可能であったが,実用化のためには検出精度が低く,また実際の患者に対
非接触センサと
Neural Network(以下 N.N.)を組み合わせ遊脚期の推定を行う方法を検討
の向上と,下垂足患者の遊脚期検出の検出精度についての検証を目的とする.
する有用性は未知数であった。本研究では遊脚期推定の検出精度の向上と,下垂足患者の遊脚
した.その結果,健常者の遊脚期検出は可能であったが,実用化のためには検出精度が低
2.研究方法
期検出の検出精度についての検証を目的とする。
く,また実際の患者に対する有用性は未知数であった.本研究では遊脚期推定の検出精度
遊脚期検出システムとその装着図を Fig.1 に示す.本システムは非接触・接触の各セン
の向上と,下垂足患者の遊脚期検出の検出精度についての検証を目的とする.
サ,非接触センサのノイズ除去用のロー
2.研究方法
2.研究方法
パスフィルタ(以下 LPF),H8 マイコン,
遊脚期検出システムとその装着図をFig.1に示す。本システムは非接触・接触の各センサ,非
遊脚期検出システムとその装着図を
Fig.1 に示す.本システムは非接触・接触の各セン
データロガーによって構成され,学習用
接触センサのノイズ除去用のローパスフィ
データロガー
本体
サ,非接触センサのノイズ除去用のロー
データの取得とマイコン上での N.N.構
ルタ(以下LPF)
,H8マイコン,データロガー
H8/3052F搭載
H8/3052F搭載
パスフィルタ(以下
LPF),H8 マイコン,
築,および遊脚期の推定を行う.なお,
によって構成され,学習用データの取得と
LPF内蔵
LPF内蔵
データロガーによって構成され,学習用
システムはコンパクト化を図り再設計し,
マイコン上でのN.N.構築,および遊脚期の
データロガー
データの取得とマイコン上での
LPF に つ い て は 遮 断 周 波 数 がN.N.構
先 行 研 究 本体
推定を行う。なお,システムはコンパクト
3軸加速度および
H8/3052F搭載
H8/3052F搭載
築,および遊脚期の推定を行う.なお,
で使用した 10[Hz]のものと新たに
ジャイロセンサ
化を図り再設計し,LPFについては遮断周
LPF内蔵
内蔵
LPF接触センサ
システムはコンパクト化を図り再設計し,
5[Hz]のも
のを
用
意
し
,健
常
者
の
行う
波数が先行研究で使用した10[Hz]のもの
Fig.1 実験システムと装着図
LPF
については遮断周波数が先行研究
歩行と患者の行う歩行についての遊脚期
と新たに5[Hz]のものを用意し,健常者の
3軸加速度および
で使用した
10[Hz]のものと新たに
検出精度について比較を行った.
行う歩行と患者の行う歩行についての遊脚
ジャイロセンサ
接触センサ
5[Hz]のも
のを
用
意
し
,健
常
者
の
行う
期検出精度について比較を行った。
3.研究結果
Fig.1 実験システムと装着図
Fig.1 実験システムと装着図
歩行と患者の行う歩行についての遊脚期
5[Hz]の LPF を使用し健常者の遊脚期推定実験を行い,先行研究での結果と比較したヒ
3.研究結果
検出精度について比較を行った.
ストグラムを Fig.2 に示す.なお白抜きが 5[Hz],塗りつぶしが 10[Hz]を使用した場合の
5[Hz]のLPFを使用し健常者の遊脚期推定実験を行い,先行研究での結果と比較したヒスト
遅れ時間である.遊脚期開始時について,推定遊脚期と実際の遊脚期との時間差の減少な
3.研究結果
グラムをFig.2に示す。なお白抜きが5[Hz]
,塗りつぶしが10[Hz]を使用した場合の遅れ時
5[Hz]の
LPF を使用し健常者の遊脚期推定実験を行い,先行研究での結果と比較したヒ
ど検出精度の向上が見られ,検出ミスによるエラーの発生も抑えられた.また健常者が患
間である。遊脚期開始時について,推定遊脚期と実際の遊脚期との時間差の減少など検出精度
ストグラムを
Fig.2 に示す.なお白抜きが 5[Hz],塗りつぶしが 10[Hz]を使用した場合の を
者の行う歩行を模倣した,歩行中脚を大きく横に振るような歩行について,5[Hz]LPF
の向上が見られ,検出ミスによるエラーの発生も抑えられた。また健常者が患者の行う歩行を
遅れ時間である.遊脚期開始時について,推定遊脚期と実際の遊脚期との時間差の減少な
使用した遊脚期検出を行ったところ,遊脚期を検
模倣した,歩行中脚を大きく横に振るような歩行につい
ど検出精度の向上が見られ,検出ミスによるエラーの発生も抑えられた.また健常者が患
出することができ,検出ミスによるエラーは発生
て,5[Hz]LPFを使用した遊脚期検出を行ったところ,
者の行う歩行を模倣した,歩行中脚を大きく横に振るような歩行について,5[Hz]LPF
を
しなかった.これらは LPF により非接触センサ信
遊脚期を検出することができ,検出ミスによるエラーは
使用した遊脚期検出を行ったところ,遊脚期を検
号の高周波成分が取り除かれたことによるもので
発生しなかった。これらはLPFにより非接触センサ信号
出することができ,検出ミスによるエラーは発生
あ る と 考 え ら れ る . 本 研 究 で 開 発 し た 5[Hz]の
の高周波成分が取り除かれたことによるものであると考
しなかった.
これらは LPF により非接触センサ信
LPF を使用した遊脚期検出システムは,先行研究
えられる。本研究で開発した5[Hz]のLPFを使用した
号の高周波成分が取り除かれたことによるもので
で 10[Hz]の LPF を使用した遊脚期検出システム
遊脚期検出システムは,先行研究で10[Hz]のLPFを使
あ と比較して通常歩行,あるいは下垂足患者が行う
る と 考 え ら れ る . 本 研 究 で 開 発 し た 5[Hz]の
用した遊脚期検出システムと比較して通常歩行,あるい
LPF
を使用した遊脚期検出システムは,先行研究
ような歩行においても遊脚期検出が可能で,遊脚
は下垂足患者が行うような歩行においても遊脚期検出が
で 期推定の時間的遅れも遊脚期開始時については,
10[Hz]の LPF を使用した遊脚期検出システム
可能で,遊脚期推定の時間的遅れも遊脚期開始時につい
と比較して通常歩行,あるいは下垂足患者が行う
ほぼ減少し遊脚期検出システムとして有効である
ては,ほぼ減少し遊脚期検出システムとして有効である
Fig.2 ヒストグラムによる遊脚期検出の比較
ような歩行においても遊脚期検出が可能で,遊脚
ことが確認された.
ことが確認された。
Fig.2 ヒストグラムによる遊脚期検出の比較
期推定の時間的遅れも遊脚期開始時については,
ほぼ減少し遊脚期検出システムとして有効である
― 22 ―
ことが確認された.
Fig.2
ヒストグラムによる遊脚期検出の比較
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
専攻科特別研究
生産システム工学専攻
専攻科特別研究
専攻科特別研究
区
分 非制振鋼板における振動減衰特性の評価方法の検討
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
非制振鋼板における振動減衰特性の評価方法の検討
悟
1.緒 言
機械工学科
澤 悟
研究者名
機械工学科 木澤 悟
機械工学科 木
機械工学科
木木澤澤 悟悟
先行研究では制振鋼板の板材において,Fig.1 に示す通
1.緒
1.緒言
1.緒
言言
り,1次の共振モードのみを2次系の伝達関数にモデル化
1.緒言
先行研究では制振鋼板の板材において,Fig.1
先行研究では制振鋼板の板材において,Fig.1に示す通
に示す通
先行研究では制振鋼板の板材において,Fig.1
に示す通
先行研究では制振鋼板の板材において,Fig.1に示す通り,
して1次の共振ピークを実際の測定モデルにチューニング
り,1次の共振モードのみを2次系の伝達関数にモデル化
り,1次の共振モードのみを2次系の伝達関数にモデル化
1次の共振モードのみを2次系の伝達関数にモデル化して
り,1次の共振モードのみを2次系の伝達関数にモデル化
することにより,ほぼ正確な減衰係数を同定することが可
して1次の共振ピークを実際の測定モデルにチューニング
して1次の共振ピークを実際の測定モデルにチューニング
1次の共振ピークを実際の測定モデルにチューニングする
して1次の共振ピークを実際の測定モデルにチューニング
能となった.しかしながら,この方法では制振鋼板の梁材
することにより,ほぼ正確な減衰係数を同定することが可
することにより,ほぼ正確な減衰係数を同定することが可
ことにより,ほぼ正確な減衰係数を同定することが可能と
することにより,ほぼ正確な減衰係数を同定することが可
の場合は試験片が軽量であるため,Fig.2 のように低い周
能となった.しかしながら,この方法では制振鋼板の梁材
能となった.しかしながら,この方法では制振鋼板の梁材
なった。しかしながら,この方法では制振鋼板の梁材の場
能となった.しかしながら,この方法では制振鋼板の梁材
波数領域にも複数のモードが存在し,2次や3次の共振ピ
の場合は試験片が軽量であるため,Fig.2
のように低い周
合は試験片が軽量であるため,Fig.2のように低い周波数領
の場合は試験片が軽量であるため,Fig.2
のように低い周
の場合は試験片が軽量であるため,Fig.2
のように低い周
ークをモデル化することができなかった.
波数領域にも複数のモードが存在し,2次や3次の共振ピ
域にも複数のモードが存在し,2次や3次の共振ピークを
波数領域にも複数のモードが存在し,2次や3次の共振ピ
波数領域にも複数のモードが存在し,2次や3次の共振ピ
そこで,本研究では1次から4次モードまでの共振・反
Fig.1 遊脚期検出システム
モデル化することができなかった。
ークをモデル化することができなかった.
ークをモデル化することができなかった.
ークをモデル化することができなかった.
共振モデルの伝達関数を構築しそのモデルを測定波形にチ
Fig.1 遊脚期検出システム
そこで,本研究では1次から4次モードまでの共振・反
そこで,本研究では1次から4次モードまでの共振・反
Fig.1
そこで,本研究では1次から4次モードまでの共振・反
Fig.1遊脚期検出システム
遊脚期検出システム
そこで,本研究では1次から4次モードまでの共振・反
Fig.1 遊脚期検出システム
ューニングすることにより1次のみならず2次から4次モ
共振モデルの伝達関数を構築しそのモデルを測定波形に
共振モデルの伝達関数を構築しそのモデルを測定波形にチ
共振モデルの伝達関数を構築しそのモデルを測定波形にチ
共振モデルの伝達関数を構築しそのモデルを測定波形にチ
ードまでの減衰係数を算出し,その減衰特性が評価指標と
チューニングすることにより1次のみならず2次から4次
ューニングすることにより1次のみならず2次から4次モ
ューニングすることにより1次のみならず2次から4次モ
ューニングすることにより1次のみならず2次から4次モ
モードまでの減衰係数を算出し,その減衰特性が評価指標
して妥当であるかどうかを検討した.
ードまでの減衰係数を算出し,その減衰特性が評価指標と
ードまでの減衰係数を算出し,その減衰特性が評価指標と
として妥当であるかどうかを検討した。
ードまでの減衰係数を算出し,その減衰特性が評価指標と
2.研究方法
して妥当であるかどうかを検討した.
して妥当であるかどうかを検討した.
して妥当であるかどうかを検討した.
モデルは Fig.2 の①~④の様に各次の共振・反共振の対
2.研究方法
2.研究方法
2.研究方法
2.研究方法
として考え,それらを組み合わせることで測定した波形全
モデルは
モデルはFig.2の①~④の様に各次の共振・反共振の対と
モデルはFig.2
Fig.2の①~④の様に各次の共振・反共振の対
の①~④の様に各次の共振・反共振の対
モデルは
Fig.2
の①~④の様に各次の共振・反共振の対
体の近似を図ろうとした.そして,1~4次モードまでを
として考え,それらを組み合わせることで測定した波形全
して考え,それらを組み合わせることで測定した波形全体
として考え,それらを組み合わせることで測定した波形全
として考え,それらを組み合わせることで測定した波形全
考慮した多自由度系のモデルを以下の様に定義した.
体の近似を図ろうとした.そして,1~4次モードまでを
の近似を図ろうとした。そして,1~4次モードまでを考
体の近似を図ろうとした.そして,1~4次モードまでを
Fig.2 実装実験(装着時)
1
体の近似を図ろうとした.そして,1~4次モードまでを
Gi ( s )  Gia ( s)  Gir ( s )
慮した多自由度系のモデルを以下の様に定義した。
G(s)  α×G1(s)×G 2(s)×G 3(s)×G 4(s)
考慮した多自由度系のモデルを以下の様に定義した.
考慮した多自由度系のモデルを以下の様に定義した.
考慮した多自由度系のモデルを以下の様に定義した.
Fig.2 実装実験(装着時)
Fig.2
1
ここで,
Fig.2実装実験(装着時)
実装実験(装着時)
(・1~4次モードに関する反共振モデル
s)  ×1 ( s )× ( s)× ( s)× ( s )
G ( s )  G ( s)  ・1~4次モードに関する共振モデル
G (s)
GG(s)α
Fig.2 実装実験(装着時)
1 G× ( sG
( sG
)×G ( sG
)× ( s )
i
 irG(irs()s )
2)×G
( s )×
s)×
GiaiaG(ias()s)G
G(s)  α×αGG
GiaG(s) ia2 GiG( si ()s) 
SG
(s2)×Gia(
ir
ir2
ここで,
・1~4次モードに関する反共振モデル
・1~4次モードに関する共振モデル
G
(
s
)

ここで,
・1~4次モードに関する反共振モデル
・1~4次モードに関する共振モデル
ia
2
Gir ( s )  2
ここで,
・1~4次モードに関する反共振モデル ・1~4次モードに関する共振モデル
i  1 ~ 4
ここで,
・1~4次モードに関する反共振モデル
2
 i  1 ~ 4  ・1~4次モードに関する共振モデル
2
ia
S 22S2 
22ia 


S  2ir22ir  ir2
ia
ia
2




GiaG( s()s) S  2 ia ia2 ia ia ia ia
2 ir
GirG( s()s)  2
irir
 i  1~1 ~4 4 
2
Gia (ias ) 
2
このように,共振・反共振ピーク毎にさらにモデルを構築する.上式における,減衰比
 i i 1~1 ~4 4 
ia
irs )  S 
2 2     2  i i 1
2 ia
G
(
~ 4
ir
ir
2S  2ir ir  ir
2
i  1 ~ 4



ia
ir  ir
S  2 ir  ir 
ir
ζ ia およびζ ir を測定波形に合わせてチューニングすることにより,モデルの近似を図る.
1
1
1
2
2
2
3
3
3
4
4
4
このように,共振・反共振ピーク毎にさらにモデルを構築する.上式における,減衰比
このように,共振・反共振ピーク毎にさらにモデルを構築する.上式における,減衰比
このように,共振・反共振ピーク毎にさらにモデルを構築する.上式における,減衰比
このように,共振・反共振ピーク毎にさらにモデルを構
ζ3.研究結果
ia およびζ
ir を測定波形に合わせてチューニングすることにより,モデルの近似を図る.
ia およびζ ir を測定波形に合わせてチューニングすることにより,モデルの近似を図る.
ζζ
およびζ
ia
ir を測定波形に合わせてチューニングすることにより,モデルの近似を図る.
築する。上式における,減衰比ζ
iaおよびζirを測定波形に
共振・反共振モデルから導出した等価減衰比と,従来
3.研究結果
3.研究結果
合わせてチューニングすることにより,モデルの近似を図る。
3.研究結果
の評価指標である損失係数との関係を
Fig.3 に示す.図よ
共振・反共振モデルから導出した等価減衰比と,従来
共振・反共振モデルから導出した等価減衰比と,従来
共振・反共振モデルから導出した等価減衰比と,従来
り,等価減衰比と従来の評価指標において線形性が確認さ
の評価指標である損失係数との関係を
Fig.3
の評価指標である損失係数との関係を
Fig.3に示す.図よ
に示す.図よ
3.研究結果
の評価指標である損失係数との関係を
Fig.3
に示す.図よ
れ,また,Fig.4 は3次モードの共振値の低い領域におい
り,等価減衰比と従来の評価指標において線形性が確認さ
共振・反共振モデルから導出した等価減衰比と,従来の評
り,等価減衰比と従来の評価指標において線形性が確認さ
り,等価減衰比と従来の評価指標において線形性が確認さ
て,制振鋼板の拘束板の厚さの違いによる減衰効果の違い
れ,また,Fig.4
は3次モードの共振値の低い領域におい
価指標である損失係数との関係をFig.3に示す。図より,等
れ,また,Fig.4
は3次モードの共振値の低い領域におい
れ,また,Fig.4
は3次モードの共振値の低い領域におい
がはっきりとあらわれた.
価減衰比と従来の評価指標において線形性が確認され,ま
て,制振鋼板の拘束板の厚さの違いによる減衰効果の違い
Fig.3 等価減衰比と従来の評価指標の関係
て,制振鋼板の拘束板の厚さの違いによる減衰効果の違い Fig.3 等価減衰比と従来の評価指標の関係
て,制振鋼板の拘束板の厚さの違いによる減衰効果の違い
以上より,提案したモデルから導出した等価減衰比は,
た,Fig.4は3次モードの共振値の低い領域において,制振
がはっきりとあらわれた.
がはっきりとあらわれた.
Fig.3
がはっきりとあらわれた.
Fig.3等価減衰比と従来の評価指標の関係
等価減衰比と従来の評価指標の関係
制振鋼板の減衰特性の差が明確に表れ,減衰特性の評
鋼板の拘束板の厚さの違いによる減衰効果の違いがはっき Fig.3
等価減衰比と従来の評価指標の関係
以上より,提案したモデルから導出した等価減衰比は,
以上より,提案したモデルから導出した等価減衰比は,
以上より,提案したモデルから導出した等価減衰比は,
価指標として有効であると考えられる.
りとあらわれた。
制振鋼板の減衰特性の差が明確に表れ,減衰特性の評
制振鋼板の減衰特性の差が明確に表れ,減衰特性の評
制振鋼板の減衰特性の差が明確に表れ,減衰特性の評
以上より,提案したモデルから導出した等価減衰比は,制
価指標として有効であると考えられる.
価指標として有効であると考えられる.
振鋼板の減衰特性の差が明確に表れ,減衰特性の評価指標
価指標として有効であると考えられる.
として有効であると考えられる。
Fig.4 3次共振値と等価減衰比の関係
Fig.4 3次共振値と等価減衰比の関係
― 23 ―
Fig.4
3次共振値と等価減衰比の関係
Fig.4
3次共振値と等価減衰比の関係
Fig.4 3次共振値と等価減衰比の関係
特 別 研 究
非制振鋼板における振動減衰特性の評価方法の検討
研究テーマ非制振鋼板における振動減衰特性の評価方法の検討
制振鋼板における振動減衰特性の評価方法の検討
機械工学科 木 澤
様式3
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
生産システム工学専攻
区
分
研究テーマ
生産システム工学専攻
レーザ光計測を用いた極低温流体中の熱伝達特性の解明
機械工学科 野 澤 正
レーザ光計測を用いた極低温流体中の熱伝達特性の解明
和
特 別 研 究
研1.緒言
究者名
機械工学科 野澤 正和
極低温流体は,様々な分野において利用されており,今後も水素エネルギー技術などの新分野
1.緒言
への応用が期待されている.極低温流体は密度や蒸発潜熱が小さい.そのため,外部からの熱侵
極低温流体は,様々な分野において利用されており,今後も水素エネルギー技術などの新分
入により蒸発し易いため,気液二相状態に容易に変化する.極低温流体の効率的な利用のため
野への応用が期待されている。極低温流体は密度や蒸発潜熱が小さい。そのため,外部からの
に,気液二相流における極低温流体の流動・伝熱現象の把握が必要である.極低温流体中での
熱侵入により蒸発し易いため,気液二相状態に容易に変化する。極低温流体の効率的な利用の
各物理量の計測は,計測機器の感度や真空断熱槽をはじめとした機器の構造の問題から,困難
ために,気液二相流における極低温流体の流動・伝熱現象の把握が必要である。極低温流体中
を伴う場合が多い.本研究では,極低温気液二相流中における流動・伝熱現象を把握する計測
での各物理量の計測は,計測機器の感度や真空断熱槽をはじめとした機器の構造の問題から,
技術の検討として,流路内を透過するレーザ光の透過率を利用して,流路内の熱伝達特性と流動
困難を伴う場合が多い。本研究では,極低温気液二相流中における流動・伝熱現象を把握する
様式やボイド率との関連性を明らかにする.
計測技術の検討として,流路内を透過するレーザ光の透過率を利用して,流路内の熱伝達特性
と流動様式やボイド率との関連性を明らかにする。
2.研究方法
二相流の流動・伝熱現象を計測するため,常温から極低温までの広い温度範囲で使用可能な
2.研究方法
矩形流路を作成した.流路は両側の壁面から加熱が可能で別の壁面部分は石英ガラス製で可視
二相流の流動・伝熱現象を計測するため,常温から極低温までの広い温度範囲で使用可能な
化観測を可能とした.ガラス面から流路にレーザ光(He-Ne レーザ)を透過させ,密度変化や気泡
矩形流路を作成した。流路は両側の壁面から加熱が可能で別の壁面部分は石英ガラス製で可視
の発生により,レーザ光の反射,屈折,散乱によるレーザ光の透過量の変動を測定した.同時に流
化観測を可能とした。ガラス面から流路にレーザ光(He-Neレーザ)を透過させ,密度変化や
路内の熱伝達率を測定し,二相流中の伝熱特性と流動状態の関連性を把握した.極低温流体と
気泡の発生により,レーザ光の反射,屈折,散乱によるレーザ光の透過量の変動を測定した。
して,液体窒素(77 K)を用いて計測を行った.
同時に流路内の熱伝達率を測定し,二相流中の伝熱特性と流動状態の関連性を把握した。極低
温流体として,液体窒素(77K)を用いて計測を行った。
3.結果
3.結果
液体窒素中における熱伝達率の測定結果を,図 1 に示す.加熱量が増加し,流路内の流動様
液体窒素中における熱伝達率の測定結果を,図1に示す。加熱量が増加し,流路内の流動様式
式が気泡流からスラグ流へと変化していくにつれて,熱伝達特性の傾向が変化した.気泡流からス
が気泡流からスラグ流へと変化していくにつれて,熱伝達特性の傾向が変化した。気泡流から
ラグ流へと変化し,気泡による流体撹拌効果により熱伝達特性が変化すると考えられる.熱伝達率
スラグ流へと変化し,気泡による流体撹拌効果により熱伝達特性が変化すると考えられる。熱
の変化と透過率の関係を図 2 に示す.縦軸がレーザ光の透過率,横軸が熱伝達率を示す.加熱
伝達率の変化と透過率の関係を図2に示す。縦軸がレーザ光の透過率,横軸が熱伝達率を示す。
量が増加して,熱伝達率が高くなるにしたがって,流路内の気泡(ボイド率)が増大し,流路を透過
加熱量が増加して,熱伝達率が高くなるにしたがって,流路内の気泡(ボイド率)が増大し,
するレーザ光はより透過しにくくなることが確認できる.この結果より,加熱量が 22 W 以下の時と,
流路を透過するレーザ光はより透過しにくくなることが確認できる。この結果より,加熱量が
40 W 以上の時とでは流路内の流動様式が変化していることが確認でき,それぞれ異なった傾向を
22W以下の時と,40W以上の時とでは流路内の流動様式が変化していることが確認でき,それ
持つことが分かる.今回の実験では,気泡流とスラグ流の流動様式のみを計測したが,流動様式の
ぞれ異なった傾向を持つことが分かる。今回の実験では,気泡流とスラグ流の流動様式のみを
変化により,透過率と熱伝達率の相関も変化すると考えられる.
計測したが,流動様式の変化により,透過率と熱伝達率の相関も変化すると考えられる。
図1 液体窒素の熱伝達特性。温度77K
図 1.液体窒素の熱伝達特性.温度 77 K
図2 液体窒素の気液二相流におけるレーザ
図 2.液体窒素の気液二相流におけるレーザ
光の透過率と熱伝達率の関係。
光の透過率と熱伝達率の関係.
― 24 ―
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
専攻科特別研究
分
生産システム工学専攻
生産システム工学専攻
水素型及びヘリウム型人工原子の電子構造に関する理論的研究
水素型及びヘリウム型人工原子の電子構造に関する理論的研究
研究テーマ
自然科学系 上田 学
自然科学系
上田
学
1.はじめに
1.はじめに
人工原子とは,異なる2種類の半導体を使
人工原子とは,異なる 2 種類の半導体
い,人為的に原子と同じ電子の束縛状態を作
を使い,人為的に原子と同じ電子の束縛
り出したものである。母体となる真性半導体
状 態 を作 り出 したものである。母 体 となる
の中に,コアとなる半導体の球状微粒子を注
真 性 半 導 体 の中 に,コアとなる半 導 体 の
入し,さらに,コア内部にZ個の電子をドー
球状微粒子を注入し,さらに,コア内部に
プする。図は人工原子のエネルギー概念図を
人工原子のエネルギー概念図
人工原子のエネルギー概念図
Z 個の電子をドープする。図は人工原子のエ
表したもので,太い実線は伝導帯の底を示し
ている。中央がコアで,その周りが母体であるが,バンドギャップが異なるために伝導帯の底
ネルギー概念図を表したもので,太い実線は伝導帯の底を示している。中央がコアで,その周りが
に段差が生じている。母体の電子親和力がコアの電子親和力より大きければ,母体の方の伝導
母体であるが,バンドギャップが異なるために伝導帯の底に段差が生じている。母体の電子親和力
帯の底が図に示すように下がり,その結果,ドープされた電子(コア中の小円はドープ電子の
がコアの電子親和力より大きければ,母体の方の伝導帯の底が図に示すように下がり,その結果,
不純物準位を表す)は母体の方に移動する。このとき,ドープ電子はイオン化されたコアとの
ドープされた電子 (コア中の小円はドープ電子の不純物準位を表す) は母体の方に移動する。こ
間のクーロン力によって界面に束縛され(界面近傍の点線は束縛された電子のエネルギー準位
のとき,ドープ電子はイオン化されたコアとの間のクーロン力によって界面に束縛され (界面近傍の
を表す),コアを原子核とした原子番号Zの人工原子が作られる。人工原子は,
コア−電子間のクー
点線は束縛された電子のエネルギー準位を表す),コアを原子核とした原子番号 Z の人工原子が
ロン力によって束縛される多電子系という意味において自然原子と共通点を有し,1/rの特異点
作られる。人工原子は,コア-電子間のクーロン力によって束縛される多電子系という意味において
が消失している点,および原子核(コア)のサイズや原子番号 Z(コアの不純物濃度)を人為
自然原子と共通点を有し,1/r の特異点が消失している点,および原子核 (コア) のサイズや原子
的に操作できるという点で異なっている。
番号 Z (コアの不純物濃度) を人為的に操作できるという点で異なっている。
2.研究方法
私たちの研究の目的は,人工原子の電子構造を系統的に計算し,その特徴を分析することで
2.研究方法
ある。一般に,多電子系の計算は平均場近似を用いて行われる。一電子シュレディンガー方程
私たちの研究の目的は,人工原子の電子構造を系統的に計算し,その特徴を分析することであ
式であるコーン・シャム方程式を解き,束縛される電子の軌道関数と軌道エネルギーを求め,
る。一般に,多電子系の計算は平均場近似を用いて行われる。一電子シュレディンガー方程式で
さらに原子の基底状態のエネルギーを求める。このとき,コーン・シャム方程式には電子間相
あるコーン・シャム方程式を解き,束縛される電子の軌道関数と軌道エネルギーを求め,さらに原子
互作用から派生するハートリーポテンシャルや,さらに量子効果から生じる交換・相関ポテン
の基底状態のエネルギーを求める。このとき,コーン・シャム方程式には電子間相互作用から派生
シャルが存在する。これらが軌道関数に依存するため,実際の数値計算では一度求めた軌道関
するハートリーポテンシャルや,さらに量子効果から生じる交換・相関ポテンシャルが存在する。これ
数からこれらのポテンシャルを作り,それらを用いて再び軌道エネルギーと軌道関数を求め,
らが軌道関数に依存するため,実際の数値計算では一度求めた軌道関数からこれらのポテンシャ
つじつまの合うように(自己無撞着に)反復計算する必要がある。
ルを作り,これらのポテンシャルを用いて再び軌道エネルギーと軌道関数を求め,つじつまの合うよ
今回用いた計算方法は,次の
① ~ ③ の通りである。① コーン・シャム方程式の解である軌
うに (自己無撞着に)
反復計算する必要がある。
道関数を
xyz 直角座標系において複数の幅の異なるガウス型関数の一次結合で表す。
② これ
今回用いた計算方法は,次の ① ~ ③ の通りである。① コーン・シャム方程式の解である軌
を用いて,コーン・シャム方程式をいわゆる「一般化された固有値方程式」の形式に変える。
③ これを数値的に対角化することにより,軌道エネルギーおよびそれに対応する軌道関数を構
道関数を xyz 直角座標系において複数の幅の異なるガウス型関数の一次結合で表す。 ② これ
成する個々のガウス型関数
(基底)の係数を求める。基底にガウス型関数を用いることの利点は,
を用いて,コーン・シャム方程式をいわゆる
「一般化された固有値方程式」 の形式に変える。 ③
行列要素を解析的に求められることである。これにより,数値計算の省力化が図れる。
これを数値的に対角化することにより,軌道エネルギーおよびそれに対応する軌道関数を構成す
る個々のガウス型関数 (基底) の係数を求める。基底にガウス型関数を用いることの利点は,行列
3.結果と今後の展開
要素を解析的に求められることである。これにより,数値計算の省力化が図れる。
これまで,電子数が2個までの人工原子についてコアに関する物理的パラメタ-を変えて系
統的に計算した。その結果,コア半径を先行研究が想定したものと同じく 12 nm とした場合,
3.結果と今後の展開
原子番号が
Z = 1, 2 ではドープ電子を束縛できなかった。この結果は先行研究の結果と反する
これまで,電子数が 2 個までの人工原子についてコアに関する物理的パラメタ-を変えて系統
ため,より慎重な検討が必要であろう。また,私たちの系統的計算は,ドープ電子数が少ない
的に計算した。その結果,コア半径を先行研究が想定したものと同じく 12 nm とした場合,原子
状況では人工原子が現れないことを示唆している。今後はドープ電子数と原子番号を増やし,
番号が Z = 1, 2 ではドープ電子を束縛できなかった。この結果は先行研究の結果と反するため,
実際に電子がコアに束縛される状態の人工原子がどのようにすれば実現できるのか検討してい
く予定である。
より慎重な検討が必要であろう。また,私たちの系統的計算は,ドープ電子数が少ない状況では人
工原子が現れないことを示唆している。今後はドープ電子数と原子番号を増やし,実際に電子がコ
― 25 ―
アに束縛される状態の人工原子がどのようにすれば実現できるのか検討していく予定である。
特 別 研 究
研究者名
様式3
専攻科特別研究
環境システム工学専攻
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
草本系バイオマスを利用した埋め立て地浸出水中の窒素除去法の開発
分
環境システム工学専攻
環境都市工学科
金
主鉉
学的窒素除去法を用いて排水処理が行われている。しかし、生物学的な窒素除去にはメタ
研究者名
環境都市工学科 金 主鉉
ノール、リンなどの薬剤コストが大きく、そのほとんどはアンモニア性窒素のような窒素
1.はじめに
除去に使用されている。このような窒素除去は、埋め立て地の窒素成分の溶出が終わるま
廃棄物最終処分場では,高濃度のアンモニア性窒素を含む浸出水が発生しており,生物学的
で継続する必要があるため、低コストかつ高効率の窒素除去技術が必要である。その一方、
窒素除去法を用いて排水処理が行われている。しかし,生物学的な窒素除去にはメタノール,
草本系バイオマスは農業生産や河川・道路整備から多く出されているが、そのほとんどは
リンなどの薬剤コストが大きく,そのほとんどはアンモニア性窒素のような窒素除去に使用さ
焼却処分されていることから、健全な物質循環の視点に立った有効利用技術の確立が求め
れている。このような窒素除去は,埋め立て地の窒素成分の溶出が終わるまで継続する必要が
られている。そこで本研究では、埋め立て地浸出水中の窒素除去に使用されているメタノ
あるため,低コストかつ高効率の窒素除去技術が必要である。その一方,草本系バイオマスは
ールやリン酸に代わる炭素源、リン源、さらに生物付着担体として有効活用が期待できる
農業生産や河川・道路整備から多く出されているが,そのほとんどは焼却処分されていること
草本系バイオマスに着目し、埋め立て地浸出水の脱窒プロセスとしての実用性について 2
から,健全な物質循環の視点に立った有効利用技術の確立が求められている。そこで本研究では,
年間にわたる現場実験により検討を行った。
埋め立て地浸出水中の窒素除去に使用されているメタノールやリン酸に代わる炭素源,リン源,
さらに生物付着担体として有効活用が期待できる草本系バイオマスに着目し,埋め立て地浸出
2.実験方法
水の脱窒プロセスとしての実用性について2年間にわたる現場実験により検討を行った。
2009 年度の実験では 5~10 cm にカットしたヨシ、さらにこれらをアルカリ処理し、脱
リグニンしたものをそれぞれ 15 kg ずつ有効容積 207 L の横流式脱窒反応槽、201 L の上向
2.実験方法
流式脱窒反応槽に充填し、充填率 20 %、接触滞留時間 24 時間の条件下で運転を行った。
2009年度の実験では5~10cmにカットしたヨシ,さらにこれらをアルカリ処理し,脱リグニ
2010 年度の実験では、比較して処理が良好だった上向流式脱窒反応槽にアルカリ処理ヨシ
ンしたものをそれぞれ15kgずつ有効容積207Lの横流式脱窒反応槽,201Lの上向流式脱窒反応
を 25 %充填し、接触滞留時間は 12 時間、24 時間の 2 つの実験条件で運転を行った。流入
槽に充填し,充填率20%,接触滞留時間24時間の条件下で運転を行った。2010年度の実験では,
原水は埋め立て地浸出水を処理している秋田県環境保全センターの第一硝化槽処理水を用
比較して処理が良好だった上向流式脱窒反応槽にアルカリ処理ヨシを25%充填し,接触滞留時
間は12時間,24時間の2つの実験条件で運転を行った。流入原水は埋め立て地浸出水を処理して
いた。また、各反応槽は秋田県環境保全センターの排水処理施設内に設置し、連続運転を
いる秋田県環境保全センターの第一硝化槽処理水を用いた。また,各反応槽は秋田県環境保全
行った。
センターの排水処理施設内に設置し,連続運転を行った。
3.実験結果
3.実験結果
アルカリ処理を行った草本系バイオマスは生物担体かつ炭素源、リン酸の供給源として
アルカリ処理を行った草本系バイオマスは生物担体かつ炭素源,リン酸の供給源として有効
有効であり、埋め立て地浸出水中の窒素除去に活用できることがベンチスケールの現場実
であり,埋め立て地浸出水中の窒素除去に活用できることがベンチスケールの現場実験から実
験から実証できた。窒素除去への草本系バイオマスの有効活用においては、前処理として
証できた。窒素除去への草本系バイオマスの有効活用においては,前処理としてアルカリ処理
アルカリ処理が有効であり、処理方法
が有効であり,処理方法としては上向流
原水
第一脱窒槽処理水(現場)
HRT_24h(本法)
としては上向流式カラム型反応槽が適
70
式カラム型反応槽が適した方式と考えら
した方式と考えられた。また、最適水
60
れた。また,最適水温また適正な充填率
温また適正な充填率の確保が必要であ
50
の確保が必要であり,水温約25℃以上で
り、水温約
25
℃以上では充填率
25
%
は充填率25%程度で安定した窒素除去が
40
程度で安定した窒素除去が可能であっ
可能であった。なお,処理水の酸化還元
30
た。
なお、
処理水の酸化還元電位
(ORP)
電位(ORP)をモニタリングしたところ,
20
をモニタリングしたところ、-100 mV
-100mV以上では亜硝酸・硝酸性窒素濃度
10
以上では亜硝酸・硝酸性窒素濃度と正
と正の相関関係が認められ,-100mV以下
0
の相関関係が認められ、-100 mV 以下
では亜硝酸・硝酸性窒素が存在しなかっ
0
10
20
30
40
50
60
TN (mg/L)
特 別 研 究
1.はじめに 草本系バイオマスを利用した埋め立て地浸出水中の窒素除去
研究テーマ
法の開発
廃棄物最終処分場では、高濃度のアンモニア性窒素を含む浸出水が発生しており、生物
たことから,維持管理指標として有効で
では亜硝酸・硝酸性窒素が存在しなか
あることがわかった。
ったことから、維持管理指標として有
効であることがわかった。
経過時間 (日)
図図1 現場実験における原水・処理水の全窒素
1 現場実験における原水・処理水の全窒素(TN)の
(TN)の経時変化(充填率42%)
経時変化(充填率 42 %)
― 26 ―
環境システム工学専攻
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
臭化サマリウム(II)を用いた炭酸エステル系保護基の脱保護法の開発
区
分
環境システム工学専攻
物質工学科 横山 保夫
研究テーマ
研 近年、天然に存在する有機化合物(天然物)の医薬、農薬への応用が活発になるにつれ、天然
究者名
物質工学科 横山 保夫
物を人為的に合成する全合成研究が再び注目されるようになってきた。全合成における重要な手
1.緒言
法の一つとして、官能基の保護、および脱保護が良く知られている。これは目的の反応を行う際、
近年,天然に存在する有機化合物(天然物)の医薬,農薬への応用が活発になるにつれ,天
対象以外の官能基が変化するという副反応の抑制を目的とするため、対象以外の官能基を不活性
然物を人為的に合成する全合成研究が再び注目されるようになってきた。全合成における重要
な手法の一つとして,官能基の保護,および脱保護が良く知られている。これは目的の反応を
な構造へ変換しておくというものであり、特に水酸基に適用される場合が多い。この水酸基の保
行う際,対象以外の官能基が変化するという副反応の抑制を目的とするため,対象以外の官能
護の一つにトリクロロエトキシカルボニル基 (Troc 基)を導入し、カーボネ―トとする手法が知
基を不活性な構造へ変換しておくというものであり,特に水酸基に適用される場合が多い。こ
られている。この Troc 基は脱保護する際、有毒な試薬や高価な実験装置、また煩雑な反応手順
の水酸基の保護の一つにトリクロロエトキシカルボニル基(Troc 基)を導入し,カーボネート
を必要とするため、使用するのが比較的困難である。従って温和な条件下、簡便に脱保護する手
とする手法が知られている。このTroc基は脱保護する際,有毒な試薬や高価な実験装置,また
法の開発が望まれている。そこで我々は有機合成に適した穏やかな還元力を持ち、不活性ガス中
煩雑な反応手順を必要とするため,使用するのが比較的困難である。従って温和な条件下,簡
では安定である臭化サマリウム(II)を用い、本保護基を還元的に脱保護できれば、より温和な手
便に脱保護する手法の開発が望まれている。そこで我々は有機合成に適した穏やかな還元力を
法として使用できると考えた。本研究では 1-ヘキサデカノール、
およびコレステロ-ルの Troc エ
持ち,不活性ガス中では安定である臭化サマリウム
(II)を用い,本保護基を還元的に脱保護で
きれば,より温和な手法として使用できると考えた。本研究では1-ヘキサデカノール,および
ステルの脱保護を検討した。
コレステロ-ルのTrocエステルの脱保護を検討した。
2.実験方法
2.実験方法
基質 (0.1 mmol)を、窒素雰囲気下で THF (0.5 mL)に溶解し、アルコール等のプロトン源(2 eq.)
基質(0.1mmol)を,窒素雰囲気下でTHF(0.5mL)に溶解し,アルコール等のプロトン源(2
存在下、臭化サマリウム(II)(6(II)
eq.)で処理することにより脱保護反応を行った。
eq.)存在下,臭化サマリウム
(6 eq.)で処理することにより脱保護反応を行った。
3.結果と考察
3.結果と考察
Table
に1-ヘキサデカノール誘導体を基質として脱保護反応を行った結果の一部を示す。
Table 11 に
1-ヘキサデカノール誘導体を基質として脱保護反応を行った結果の一部を示す。00℃
℃
で本反応を行うと,目的の化合物は89%の収率で得られることが分かった(Entry 1)
。それに
で本反応を行うと、目的の化合物は 89%の収率で得られることが分かった(Entry 1)。それに対し、
対し,本法を50℃および60℃で行うと,対応する化合物は約90%の収率で得られることを見出
本法を 50 ℃および 60 ℃で行うと、対応する化合物は約 90%の収率で得られることを見出した
した(Entries 2 and 3)
。従って,本系は室温で行うのが適当であるということを見出した。本
(Entries
2
and
3)。従って、本系は室温で行うのが適当であるということを見出した。本法をコレ
法をコレステロール誘導体に応用した結果をFigure 1 に示す。基質を室温で,メタノールの存
ステロール誘導体に応用した結果を
Figure 1 に示す。基質を室温で、メタノールの存在下、1.5 時
在下,1.5時間臭化サマリウム
(II)と反応させると,84%の収率でコレステロールに変換できる
間臭化サマリウム(II)と反応させると、84%の収率でコレステロールに変換できることが分かった。
ことが分かった。
Table 1. Deprotection of Troc Unit
O
C 16H 33O
(CH 2)3
SmBr2 (6.0 eq.), THF
OCH 2 CCl3 CH 3 OH (2.0 eq.), 0.5 h
C 16H 33OH
Entry
Temp. (o C)
Isolated Yield (%)
1
0
89
2
50
93
3
60
90
H
H
SmBr2 (6.0 eq.), THF
CH 3OH (2.0 eq.) rt, 1.5 h
H
TrocO
(CH 2)3
H
H
HO
Figure 1. Reductive Deprotection
― 27 ―
H
84%
特 別 研 究
1.緒言
臭化サマリウム
(ⅠⅠ)を用いた炭酸エステル系保護基の脱保
護法の開発
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
分
環境システム工学専攻
特 別 研 究
研究テーマ
電気光学材料の光学的な計測に関する研究
研究者名
物質工学科 丸山 耕一
1.緒言
強誘電体に電場を印加すると,誘電分域が配列し,圧電体の場合には,さらに結晶が歪む。
光を照射した圧電性強誘電体に電場を印加すると,これらの現象は屈折率の変化として検出で
きる。ニオブ酸リチウムなどの圧電性物質には,通常複屈折特性があり,直線偏光を用いると,
透過光や反射光は楕円偏光となる。外力や電場を印加した圧電体と光の相互作用を総称して,
ピエゾ光学効果と呼ぶことにする。
本研究[1]では,圧電体試料に電場を印加した際の透過光や反射光の強度変化を検出するた
めの計測システムを構築し,圧電素子や電気光学素子のピエゾ光学効果を評価することを目的
とした。CWレーザを光源に用いたシステムに加え,パルスレーザを用いたディレイ法による時
間分解計測システムへも拡張した。
2.研究方法
ダイオードレーザ(4.5 mW,635 nm)を光源とし,ビームスプリッタによりモニター用光路
を分割するが,グラントムソン偏光プリズムを偏光子とした入射光学系である。試料に電場を
印加するフォルダを自作し,フォトダイオードにより,モニター光および反射光(あるいは透
過光)の強度を検出する。試料フォルダは回転ステージ,ゴニオステージ,並進ステージ上に
設置し,入射角と試料面位置を高精度に自動制御できるシステムとした。モニター強度で規格
化した反射(透過)光強度の統計誤差の検討を行った。このシステムを用いて,36 °Y面ニオ
ブ酸リチウム(LiNbO3)単結晶試料,シリコン(Si)基板上にスパッタ法で形成したLiNbO3薄
膜試料のピエゾ光学効果を測定した。
ナノ秒パルスレーザ(25 mJ,532 nm,5~7 nsec)を光源とし,光電管によりパルス波を検
出する光学系とすることで,時間分解計測へ拡張した。光強度は,帯域幅500 MHzのデジタル
オシロスコープによって波形パルスの積分強度として得,ディレイ機能(最小分解能5 psec)
を搭載した4 chのパルスジェネレータにより,試料への電圧印加とレーザのパルス発振のタイ
ミングを同期させた。ネマティック液晶の電気光学効果の時間応答を測定した。
3.研究結果
光強度を瞬時にn点測定するのを1sec間隔で繰り返すことで,合計N点の測定値の統計誤差を
N=1000で平均値のばらつきの割合
検討した。n=20の測定を繰り返す方法が最も精度が良く,
(相
対誤差)は±0.0003 %であった。
厚み0.35 mmのLiNbO3単結晶試料の面直方向に最大±3.5 kVの電圧を印加すると,透過配置
でのピエゾ光学強度は最大±8 %まで達したが,履歴曲線の形状は試料の強誘電特性の小ループ
と判断できた。ピエゾ光学強度に再現性がないのは,逆圧電効果による試料位置の不安定性に
起因すると考えられた。LiNbO3薄膜(厚み100 nm)試料では,逆圧電効果の影響が軽減され,
再現性のあるピエゾ光学効果が反射光学系で観測された。また,高電圧印加によるSi基板また
はLiNbO3層の表面電荷による誘電率変化と推測されるピーク強度が±2.2 kVで観測された。得
られた履歴曲線からピーク強度の寄与を除去することで,LiNbO3層のピエゾ光学効果(最大±
0.002 %の小ループ)を分離できた。
液晶光学素子を透過する光の旋光性の電圧(0~5 V)依存性をダイオードレーザで観測した。
パルスレーザを用いて,素子に5 Vの電圧を印加した際の時間応答をμsecオーダーの時間分解
で観測した。両者の比較から,液晶光学素子の印加電圧に対する時間応答は5 msecであった。
これは,液晶の分子分極に対応する応答時間と考えた。なお,本時間分解計測システムではパ
ルスレーザのジッター(±3 nsec)が最小時間分解能を決定している。
[1]本研究の一部は、S. Abe, K. Maruyama, F. Sakamoto, et. al., ISSS-6 conference, 14PN-102
(2011)で報告した。
― 28 ―
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
分
環境システム工学専攻
ポリピロール化学酸化自己組織化膜の金属イオン交換に関す
る研究
研究者名
物質工学科 丸山 耕一
1.緒言
ポリピロール(PPY)の導電性はピロールのπ電子に起因する。この電子導電性高分子を水
溶液中で分極することで,金属イオンを吸着・脱離できる。ピロールイオンを化学酸化重合さ
せると,自己組織的に成長する。この自己組織化膜中にドープされた磁性イオンが周期配列す
ることが期待できる。この技術を応用して,
磁性誘電体素子の開発を目指している。本研究[1]は,
化学酸化重合法で合成したPPY自己組織化膜の構造を評価し,硝酸塩溶液中での電気化学的挙
動を明らかにすることを目的とする。
2.研究方法
M.K. Ramらが報告したPPY自己組織化膜の合成法[2]を参照した。質量変化を観測するために,
金コートした水晶(QC)電極を,X線回折(XRD)による構造を評価するために,シリコンウ
エハをそれぞれ基板として用いた。基板上にアンモニウムイオン相を吸着させ,クーロン相互
作用でポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)イオン相を形成する。これをPPY水溶液に
浸漬することで,PPY自己組織化膜を形成した。微小質量分析(QCM)法により,各浴の浸漬
時間を最適化した。
シリコンウエハを基板としたPPYの単層および多層の試料を用いて,X線反射率測定から膜
厚,密度,ラフネス,また,XRD測定から試料面内および直交方向の周期長を解析した。厚み
~10 nmのPPY自己組織化膜をM(NO3)n(M=Ca2+,Mn2+,K+)溶液中に浸漬して,電気化
学的サイクリックボルタグラム(CV)測定を行った。同時に電極の質量変化をQCM法により
観測した。質量-電位曲線より吸着開始電位(Eads)と脱離開始電位(Edes)を決定した。サブ
レーの式より算出した金属イオンの吸着量と,
試料の誘電結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)
結果とを対照させた。なお,CVおよびQCM計測システムの構築を合わせて行った。
3.研究結果
QC電極上のアンモニウムイオン相,PSSイオン相,PPY膜相の吸着・脱離挙動から,各々の
相を得るための浸漬時間を5分間,10分間,17分間と最適化した。PSSイオン相,PPY膜相の形
成は,同様の操作を繰り返すことで多層化された。
シリコンウエハ基板上に酸化シリコン相,PSSイオン相,PPY相を仮定したモデルで,試料
のX線反射率結果から膜厚,密度,ラフネスを解析したところ,PSS相はそれぞれ18 nm,1.1
g/cm3,2.0 nm,PPY相はそれぞれ12 nm,3.5 g/cm3,0.37 nmであった。PPY単層試料のX線
回折からは,試料面内方向および直交方向ともに明確な回折ピークは観測できなかった。この
ため,PPY多層(10層)試料で同様の測定をしたところ,試料面内方向にPPY相,PSS相に起
因する,それぞれ0.47 nm,0.28 nmの周期長,直交方向には1.23 nmの周期長を観測した。これ
らの値は,多層化により回折強度の増大のために観測されたが,各層内の周期長であることが
実験的に確認できた。
PPY自己組織化膜のCa2+およびMn2+の吸着・脱離挙動を脱気処理の有無で比較した。いずれ
のイオンでもEadsとEdesの値には脱気の影響はほとんどなく,前者が後者に比べ卑であった。脱
気により水素発生反応は抑制され,Ca2+の吸着量には変化はないが,一方でMn2+では1/2に抑
制された。CV測定を50サイクル行った結果,各サイクルの,Ca2+,K+のEadsとEdesは一定値で
あった。これに対してMn2+は両電位差がサイクルごとに徐々に増大した。Ca2+とMn2+をそれぞ
れ-1.3 V(vs.Pt2+/Pt)
,-1.7 Vの定電位で任意時間吸着させた試料のICP-AES分析結果とQCM
法からの算出値を比較した。後者に対する前者の割合がCa2+ではほぼ100 %,一方でMn2+では
40 %であった。このことから,Mn2+は錯体などの化合物として吸着していると推測した。
化学酸化重合法によりPPY単層および多層のSAMが形成された。PPY-SAM中へのCa2+,
Mn2+,K+のドーピングおよび脱ドーピングが電気化学的に可能であることを示した。
[1]S. Nakanishi, K. Maruyama, et.al., ISSS-6 conference(2011), Abstract 13PN-111
[2]M.K. Ram, M. Adami, et.al., Polymer 41(2000)7499–7509
― 29 ―
特 別 研 究
研究テーマ
様式3
専攻科特別研究
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
様式3 環境システム工学専攻
区 専攻科特別研究
分
環境システム工学専攻
機能性高分子を用いた新規酵素安定化システムの構築
環境システム工学専攻
研究テーマ
物質工学科 榊 秀次郎
機能性高分子を用いた新規酵素安定化システムの構築
物質工学科 榊 秀次郎
研 1.緒言
究者名
物質工学科 榊 秀次郎
プルラン
コレステロール基
分子シャペロンは、生体内で変性酵素を
1.緒言
リフォールディングし安定化している。
1.緒言
分子シャペロンは,生体内で変性酵素をリ
機 能 性 高 分 子 であるコレステリル基 導 入
自己
プルラン
コレステロール基
分子シャペロンは、生体内で変性酵素を
フォールディングし安定化している。
会合
CHP
プルラン(CHP ナノゲル,図1)は、分子シャ
機能性高分子であるコレステリル基導入プ
リフォールディングし安定化している。
ナノゲル
ペロン同様リフォールディング能を有 するこ
ルラン(CHPナノゲル,図1)は,分子シャ
機 能 性 高 分 子 であるコレステリル基 導 入
図1. CHPナノゲルの構造自己
会合
とは既知であるが、生体内同様の安定化シ
ペロン同様リフォールディング能を有するこ
CHP
プルラン(CHP ナノゲル,図1)は、分子シャ
ナノゲル
とは既知であるが,生体内同様の安定化シス
ステムは未だ構築されていない(図2)。
ペロン同様リフォールディング能を有 するこ
テムは未だ構築されていない(図2)
。
図1. CHPナノゲルの構造
そこで本 研 究 では、分 子 シャペロンの代
図1.CHPナノゲルの構造
未変性酵素
とは既知であるが、生体内同様の安定化シ
崩壊
そこで本研究では,分子シャペロンの代わ
わりに CHP ナノゲルを、酵素として西洋ワサ
ナノゲル
ステムは未だ構築されていない(図2)。
りにCHPナノゲルを,酵素として西洋ワサ
CD
ビ過酸化酵素(HRP)を用いて、新規酵素安
そこで本 研 究 では、分 子 シャペロンの代
未変性酵素
ビ過酸化酵素(HRP)を用いて,新規酵素
定化システムの構築を目的とした。
崩壊
わりに CHP ナノゲルを、酵素として西洋ワサ
安定化システムの構築を目的とした。
ナノゲル
CD
ビ過酸化酵素(HRP)を用いて、新規酵素安
変性酵素
2.研究(方法・結果)
CHPナノゲル
2.研究(方法・結果)
定化システムの構築を目的とした。
複合体
HRP熱を変熱性(95
変 性 (℃・
95 ℃1・ 1
させ
、
CHPナノゲル
HRPを
時時
間間
))さ
せ,
HRP/CHP ナノゲル複合体を調製した。シク
図2. CHPナノゲルによるリフォールディング
変性酵素
HRP/CHPナノゲル複合体を調製した。シク
2.研究(方法・結果)
CHPナノゲル
ロデキストリン(CD)を添加し、ナノゲル崩壊
複合体
ロデキストリン(CD)を添加し,ナノゲル崩
HRP を 熱 変 性 ( 95 ℃ ・ 1 時 間 ) さ せ 、
CHPナノゲル
壊させ,HRPのリフォールディングを行った。
させ、HRP のリフォールディングを行った。
HRP/CHP ナノゲル複合体を調製した。シク
図2. CHPナノゲルによるリフォールディング
図2.CHPナノゲルによるリフォールディング
最適CD濃度の検討
最適 CD 濃度の検討
ロデキストリン(CD)を添加し、ナノゲル崩壊
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリ
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、メチル-β-シクロデキストリン(Me-β
させ、HRP のリフォールディングを行った。
ン(HP-β-CD)
,メチル-β-シクロデキストリン(Me-β-CD)を終濃度が0-10
mMになるように
-CD)を終濃度が
0 - 10 mM になるように添加し、4℃・24 h インキュベートし、リフォールディングを
最適
CD
濃度の検討
添加し,4℃・24hインキュベートし,リフォールディングを行った。基質(ABTS)を添加し,
行った。基質(ABTS)を添加し、生じた 450 nm の吸光度より HRP 活性を測定した。
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、メチル-β-シクロデキストリン(Me-β
生じた450
nmの吸光度よりHRP活性を測定した。
未変性 HRP 活性を 100%としたとき、Me-β-CD 添加では約 70%、HP-β-CD 添加では約 60%
-CD)を終濃度が
0 - 10 mM になるように添加し、4℃・24 h インキュベートし、リフォールディングを
未変性HRP活性を100%としたとき,Me-β-CD添加では約70%,HP-β-CD添加では約60%の
のリフォールディングが確認できた(図3)。
リフォールディングが確認できた(図3)
。 nm の吸光度より HRP 活性を測定した。
行った。基質(ABTS)を添加し、生じた 450
HRP
安定化システムの構築
HRP安定化システムの構築
未変性 HRP 活性を 100%としたとき、Me-β-CD 添加では約 70%、HP-β-CD 添加では約 60%
HRP/CHP
ナノゲル複合体及び、HRP 単独を 25 ℃でインキュベートした。各日後に HP-β-CD
HRP/CHPナノゲル複合体及び,HRP単独を25℃でインキュベートした。各日後にHP-β-CD
のリフォールディングが確認できた(図3)。
を終濃度 mM添加することで,リフォールディングを行った。
10 mM 添加することで、リフォールディングを行った。
を終濃度10
HRP 安定化システムの構築
HRP-CHPナノゲル複合体は初期の段階で若干活性が落ちるが,17~30日後では約74%の活性
HRP-CHP ナノゲル複合体は初期の段階で若干活性が落ちるが、17~30 日後では約 74%の活
HRP/CHP ナノゲル複合体及び、HRP 単独を 25 ℃でインキュベートした。各日後に HP-β-CD
を維持した(図4)
。
性を維持した(図4)。
を終濃度 10 mM 添加することで、リフォールディングを行った。
100
Relative
Relative Activity
(%)Activity (%)
100
HRP-CHP ナノゲル複合体は初期の段階で若干活性が落ちるが、17~30
日後では約 74%の活
Relative
Relative Activity
(%)Activity (%)
特 別 研 究
機能性高分子を用いた新規酵素安定化システムの構築
80
性を維持した(図4)。
Me-β-CD
60
100
40
80
20
60
0
400
20
60
100
40
80
20
60
0
400
HP-β-CD
Me-β-CD
2
4
6 HP-β-CD
8
Concentration of CD (mM)
80
10
図3.最適CD濃度の検討
図3. 最適CD濃度の検討
0
20
0
HRP/CHPナノゲル複合体
HRP単独
HRP/CHPナノゲル複合体
10
20
Incubation Time (day)
30
HRP単独
図4.HRPの安定化
図4. HRPの安定化
0
2
4
6
8
10
0
10
20
30
3.結言
3.結言
Concentration of CD (mM)
Incubation Time (day)
以上の結果より,CHPナノゲルを用いることにより新規安定化システムの構築可能なことが
以上の結果より、CHP
ナノゲルを用いることにより新規安定化システムの構築可能なことがわか
図3. 最適CD濃度の検討
図4. HRPの安定化
わかった。
った。
3.結言
以上の結果より、CHP ナノゲルを用いることにより新規安定化システムの構築可能なことがわか
った。
― 30 ―
様式3
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
専攻科特別研究
分
環境システム工学専攻
環境システム工学専攻
新規生体高分子/合成高分子複合材料の創成
新規生体高分子/合成高分子複合材料の創成
研究者名
物質工学科 榊 秀次郎
物質工学科
O
O
O
O
修飾プロテアーゼ
図1.修飾プロテアーゼの調製
図1.修飾プロテアーゼの調製
O
O
O P O
O
O
CH2
n
CH 3
N + CH 3
CH 3
O
O
H
N
CH2
mO
H
N
CH 3 C
図2.修飾プロテアーゼ/MPC共重合体
図2.修飾プロテアーゼ/MPC共重合体
ABCDEF
A:分子量マーカー
(97200, 66400, 45000,
29000, 20100 )
B:未修飾プロテアーゼ
C:修飾プロテアーゼ
D:単独重合体
E:MA共重合体
F:MPC共重合体
図3.重合プロテアーゼのSDS-PAGE
図3.重合プロテアーゼのSDS-PAGE
40
相対活性(%)
34.1
際の相対活性が 27.9%であった〔図 4〕。
3.結言
以上の結果より,活性を有し非常に高分子量の修
3.結言
飾プロテアーゼ/MPC共重合体の調製を確認できた。
以上の結果より、活性を有し非常に高分子量の
修飾プロテアーゼ/MPC 共重合体の調製を確認できた。
― 31 ―
プロテアーゼ
H
N
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を用いて残
て残存アミノ基の定量を行い,MOIの修飾率を求め
存アミノ基の定量を行い、MOI の修飾率を求めた
た結果,プロテアーゼ1分子に対し2.5分子のMOIの
修飾を確認した。修飾酵素と他のモノマーを,水溶
結果、プロテアーゼ1分子に対し 2.5 分子の MOI の
性アゾ重合開始剤を用いて重合し,修飾プロテアー
修飾を確認した。修飾酵素と他のモノマーを、水溶
ゼ単独重合体(単重合体)
性 アゾ重 合 開 始 剤 を用 ,修飾プロテアーゼ/メタ
いて重 合 し、修 飾 プロテア
クリルアミド(MA)共重合体(MA共重合体)
,修
ーゼ単独重合体(単重合体),修飾プロテアーゼ/
飾プロテアーゼ/2-メタクリロイルオキシエチルホス
メタクリルアミド(MA)共重合体(MA 共重合体),修
ホリルコリン(MPC)共重合体(MPC共重合体)
〔図
飾 プロテアーゼ/2-メタクリロイルオキシエチルホス
2〕の調製を試みた。SDS-PAGEに供して各共重合体
ホリルコリン(MPC)共重合体(MPC 共重合体)〔図
の分子量を確認した結果,修飾プロテアーゼ/MPC
2〕の調製を試みた。SDS-PAGE に供して各共重合
共重合体が非常に分子量の高い高分子と確認できた
体の分 子 量 を確認した結果 、修 飾 プロテアーゼ
〔図3〕。基質にカゼインを用いて修飾プロテアーゼ/
/MPC 共 重 合体が非 常 に分子 量の高い高 分子 と
MPC共重合体の活性測定を行った結果,未修飾プロ
確認できた〔図 3〕。基質にカゼインを用いて修飾プ
テアーゼの酵素活性を100%とした際の相対活性が
ロテアーゼ/MPC 共重合体の活性測定を行った結
27.9%であった〔図4〕
。
果、未修飾プロテアーゼの酵素活性を 100%とした
NH2
+
2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート
(MOI)
CH 3 C
2.研究(方法・結果)
2.研究(方法・結果)
重合官能基としてメタクリロイル基,酵素のアミ
重合官 能基 としてメタクリロイル基、酵 素のアミノ
ノ基と結合可能な官能基としてイソシアネート基を
基と結合可能な官能基としてイソシアネート基を有
有する2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナー
する 2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート
ト(MOI)をプロテアーゼに化学修飾させ,重合官
(MOI)をプロテアーゼに化 学 修 飾 させ、重 合。
官能
能基を持つ修飾プロテアーゼを調製した〔図1〕
基を持つ修飾プロテアーゼを調製した〔図 1〕。
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を用い
N=C=O
O
1.緒言
1.緒言
汎 用 性 合 成 高 分 子 は溶 解 や過 熱 により容 易 に
汎用性合成高分子は溶解や過熱により容易に成形
できるため,繊維化やフィルム化が可能である。し
成 形 できるため、繊 維 化 やフィルム化 が可 能 であ
かし,極めて高い基質特異性と触媒活性を有する生
る。しかし、極めて高い基質特異性と触媒活性を有
体高分子である酵素は,熱や有機溶剤によって容易
する生体高分子である酵素は、熱や有機溶剤によ
に変性してしまい,繊維化やフィルム化が不可能で
って容易に変性してしまい、繊維化やフィルム化が
ある。そこで本研究では,繊維化やフィルム化が可
不可能である。そこで本研究では、繊維化やフィル
能な,新規生体高分子/合成高分子複合材料の創成を
ム化が可能な、新規生体高分子/合成高分子複合
試みている。具体的には,タンパク質分解酵素(プ
材料の創成を試みている。具体的には、タンパク質
ロテアーゼ)を用いた酵素繊維を検討中で,空気清
分解酵素(プロテアーゼ)を用いた酵素繊維を検討
浄器のフィルター等に応用しウイルスやアレルゲン
中で、空気清浄器のフィルター等に応用しウイルス
の分解を目指している。
やアレルゲンの分解を目指している。
榊 秀次郎
30
27.8
27.9
MA共
重合体
MPC共
重合体
20
13.4
10
0
修飾プロ 単独
テアーゼ 重合体
図4.重合プロテアーゼの活性
図4.重合プロテアーゼの活性
特 別 研 究
研究テーマ
H
N
区
様式3
様式3 専攻科特別研究の概要(平成23年度)
専攻科特別研究
専攻科特別研究
区
分
環境システム工学専攻
環境システム工学専攻
環境システム工学専攻
研究テーマ
特 別 研 究
研究者名
放線菌からのセルラーゼ生産菌の探索
放線菌からのセルラーゼ生産菌の探索
放線菌からのセルラーゼ生産菌の探索
物質工学科
物質工学科
物質工学科 上松 仁
上松 仁
上松 仁
1.緒言
1.緒言
1.緒言
近年、石油枯渇が懸念される中、様々な新エネルギーの開発が進んでいる。そのひとつ
近年,石油枯渇が懸念される中,様々な新エネルギーの開発が進んでいる。そのひとつにバ
近年、石油枯渇が懸念される中、様々な新エネルギーの開発が進んでいる。そのひとつ
にバイオマスエネルギーがある。これは生物系資源(バイオ)を原料として得られるエネ
イオマスエネルギーがある。これは生物系資源(バイオ)を原料として得られるエネルギーの
にバイオマスエネルギーがある。これは生物系資源(バイオ)を原料として得られるエネ
ルギーのことで、CO 2 の吸収量と排出量が同じであるカーボンニュートラルなためにクリ
ことで,CO
2の吸収量と排出量が同じであるカーボンニュートラルなためにクリーンエネルギー
ルギーのことで、CO
2 の吸収量と排出量が同じであるカーボンニュートラルなためにクリ
ーンエネルギーとして知られている。バイオマス資源の中でも食料と競合しないセルロー
として知られている。バイオマス資源の中でも食料と競合しないセルロース系バイオマスが注
ーンエネルギーとして知られている。バイオマス資源の中でも食料と競合しないセルロー
ス系バイオマスが注目されている。
目されている。
ス系バイオマスが注目されている。
セルロースはグルコースがβ1-4 結合で直鎖状に結合した高分子で、セルロース中では
セルロースはグルコースがβ1-4結合で直鎖状に結合した高分子で,セルロース中ではグル
セルロースはグルコースがβ1-4 結合で直鎖状に結合した高分子で、セルロース中では
グルコースが一つずつ互いに裏返しになって一列に並び、隣のセルロース分子との間で水
コースが一つずつ互いに裏返しになって一列に並び,隣のセルロース分子との間で水素結合を
グルコースが一つずつ互いに裏返しになって一列に並び、隣のセルロース分子との間で水
素結合をし、このグルコースの鎖が集まってシート状になり、さらにそのシートが互いに
し,このグルコースの鎖が集まってシート状になり,さらにそのシートが互いに少しずつずれ
素結合をし、このグルコースの鎖が集まってシート状になり、さらにそのシートが互いに
少しずつずれて重なり水素結合により結晶化している。セルラーゼはセルロースを加水分
て重なり水素結合により結晶化している。セルラーゼはセルロースを加水分解するいくつか酵
少しずつずれて重なり水素結合により結晶化している。セルラーゼはセルロースを加水分
解するいくつか酵素の総称であり、
素の総称であり,セルラーゼ生産菌は
解するいくつか酵素の総称であり、
グルコース
セロビオース
菌体外にそれらの複数の酵素を分泌す
セルラーゼ生産菌は菌体外にそれら
グルコース
セロビオース
セルラーゼ生産菌は菌体外にそれら
る。セルロースの糖化はエンドグルカ
の複数の酵素を分泌する。セルロー
の複数の酵素を分泌する。セルロー
セロオリゴ糖
ナーゼ,エキソグルカナーゼ,β-グ
スの糖化はエンドグルカナーゼ、エ
セロオリゴ糖
スの糖化はエンドグルカナーゼ、エ
ルコシダーゼの3種類の酵素の相乗作
キソグルカナーゼ、β-グルコシダー
キソグルカナーゼ、β-グルコシダー
結晶領域
非結晶領域
結晶領域
用によって行われる(右図)
。
エンドグルカナーゼ
エキソグルカナーゼⅠ
ゼの3種類の酵素の相乗作用によっ
結晶領域
非結晶領域
結晶領域
エンドグルカナーゼ
エキソグルカナーゼⅠ
ゼの3種類の酵素の相乗作用によっ
これまでに自然界から多くの微生物
て行われる(右図)。
て行われる(右図)。
がセルラーゼ生産菌として分離されて
これまでに自然界から多くの微生
Β-グルコシダーゼ
エキソグルカナーゼⅡ
これまでに自然界から多くの微生
Β-グルコシダーゼ
エキソグルカナーゼⅡ
いる。セルラーゼの分泌生産量が多い
物がセルラーゼ生産菌として分離さ
物がセルラーゼ生産菌として分離さ
株と知られている微生物のほとんどが
れている。セルラーゼの分泌生産量が多い株と知られている
れている。セルラーゼの分泌生産量が多い株と知られている
真菌である。本研究ではこれまでに研究があまり進展していな
微生物のほとんどが真菌である。本研究ではこれまでに研究
い放線菌のセルラーゼに着目して,土壌から木綿を分解する放
微生物のほとんどが真菌である。本研究ではこれまでに研究
があまり進展していない放線菌のセルラーゼに着目して、土
線菌の探索を行った。
があまり進展していない放線菌のセルラーゼに着目して、土
壌から木綿を分解する放線菌の探索を行った。
壌から木綿を分解する放線菌の探索を行った。
2.研究方法
2.研究方法
2.研究方法
自然界より土壌を採取し、数日間デシケーターの中で乾燥
自然界より土壌を採取し,数日間デシケーターの中で乾燥さ
自然界より土壌を採取し、数日間デシケーターの中で乾燥
させた後、100℃で 30 分の乾熱処理をしてから腐食酸を添加した HA 寒天培地で放線菌を
せた後,100℃で30分の乾熱処理をしてから腐食酸を添加したHA寒天培地で放線菌を分離した。
させた後、100℃で 30 分の乾熱処理をしてから腐食酸を添加した HA 寒天培地で放線菌を
分離した。分離した放線菌を 28℃で3日間培養して培養上清を得て、一次スクリーニング
分離した放線菌を28℃で3日間培養して培養上清を得て,一次スクリーニングとしてカルボキ
分離した。分離した放線菌を 28℃で3日間培養して培養上清を得て、一次スクリーニング
としてカルボキシメチルセルロース(CMC)含有寒天平板を用いた CMC の分解活性から
シメチルセルロース(CMC)含有寒天平板を用いたCMCの分解活性からセルラーゼ活性の測定
としてカルボキシメチルセルロース(CMC)含有寒天平板を用いた CMC の分解活性から
セ ル ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 を 行 っ た 。 活 性 が 確 認 さ れ た 株 に つ い て は 、50m M 酢 酸 緩 衝 液
を行った。活性が確認された株については,50mM酢酸緩衝液(pH4.8)中で1%アビセル(結
セ ル ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 を 行 っ た 。 活 性 が 確 認 さ れ た 株 に つ い て は 、50m M 酢 酸 緩 衝 液
(pH4.8)中で1%アビセル(結晶セルロース)を基質として、生成したグルコースおよ
晶セルロース)を基質として,生成したグルコースおよびセロビオースをHPLCで定量分析して
(pH4.8)中で1%アビセル(結晶セルロース)を基質として、生成したグルコースおよ
セルラーゼ活性を確認した。
びセロビオースを HPLC で定量分析してセルラーゼ活性を確認した。
びセロビオースを HPLC で定量分析してセルラーゼ活性を確認した。
3.研究結果
3.研究結果
3.研究結果
土壌から分離した放線菌 237 株の内、セルラーゼ生産菌は 26 株であり、割合にして 11%
土壌から分離した放線菌 237 株の内、セルラーゼ生産菌は 26 株であり、割合にして 11%
土壌から分離した放線菌237株の内,セルラーゼ生産菌は26株であり,割合にして11%であっ
であった。次に経過時間ごとに培養液をサンプリングして培養何日目で最もセルラーゼ活
であった。次に経過時間ごとに培養液をサンプリングして培養何日目で最もセルラーゼ活
た。次に経過時間ごとに培養液をサンプリングして培養何日目で最もセルラーゼ活性が高くな
性が高くなるのかを検討した。経過時間ごとのセルラーゼ活性は、K8 株を除く 3 株 AT-129、
性が高くなるのかを検討した。経過時間ごとのセルラーゼ活性は、K8 株を除く 3 株 AT-129、
るのかを検討した。経過時間ごとのセルラーゼ活性は,K8株を除く3株AT-129,AT-145,C44
AT-145、C44 で培養 53.4 時間~77.7 時間で最も活性が高くなった。
AT-145、C44 で培養 53.4 時間~77.7 時間で最も活性が高くなった。
で培養53.4時間~77.7時間で最も活性が高くなった。
今後は選択した 4 株 AT-129、AT-145、C44、K8 が生産するセルラーゼについてセルロ
今後は選択した 4 株 AT-129、AT-145、C44、K8 が生産するセルラーゼについてセルロ
今後は選択した4株AT-129,AT-145,C44,K8が生産するセルラーゼについてセルロースの
ースのグルコースへの糖化反応の最適条件を検討していく予定である。
ースのグルコースへの糖化反応の最適条件を検討していく予定である。
グルコースへの糖化反応の最適条件を検討していく予定である。
― 32 ―
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
分
環境システム工学専攻
酸化亜鉛微粒子の合成に対する反応条件の影響
研究者名
物質工学科 西野 智路
1.はじめに
安価なアルコールを溶媒とする液相法を用いた酸化亜鉛微粒子の調製について検討した。と
くに反応溶液中における反応初期の酸化亜鉛微粒子の挙動や粒成長について詳細に追跡すると
ともに,反応温度や酢酸亜鉛に対する水酸化ナトリウムのモル比などの反応条件が反応初期の
粒成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
2.実験方法
はじめに,酢酸亜鉛二水和物を熱エタノールに加えて溶解させた。その後,0℃まで冷却する。
そこへ塩基性溶液として水酸化ナトリウムをエタノールに溶解させ0℃まで冷却したものを加え
た。酢酸亜鉛に対する水酸化ナトリウムのモル比はNa/Zn=1.4とし,反応は0℃,超音波洗浄器
を用いて撹拌を行い,酸化亜鉛微粒子を得た。
3.実験結果ならびに考察
得られた酸化亜鉛微粒子の粒成長挙動を観察するため,反応液の吸収スペクトルを紫外・可
視分光光度計で測定した。測定したスペクトルデータをFig.1に示す。透過率が上昇する吸収端
波長が反応時間とともに長波長側へシフトしていることが分かった。そこで,酸化亜鉛微粒子
の光学バンドギャップを透過スペクトルの吸収端波長より求め,Brus1)により報告されている
有効質量モデルを用いたエネルギーギャップEg
の式を用いて計算により粒径を算出した。その
結果,反応開始時の酸化亜鉛微粒子の粒径は3.1
nmであり,反応時間とともに粒成長しているこ
とが確認できた。また,同様にして計算により
粒径を求め,反応温度ならびに酢酸亜鉛に対す
る水酸化ナトリウムのモル比(Na/Znモル比)
が粒成長に及ぼす影響について検討した。反応
温度について室温と0℃で比較したところ,反応
温度を低くすると粒子の粒径が小さくなり,さ
らに粒成長を抑制できることが分かった。次に,
Fig.1 吸収スペクトル
各Na/Znモル比における粒径変化をFig.2に示す。
これより,Na/Zn比が大きくなるほど粒成長速
度が速くなるとともに,得られる粒径も大きく
なることが分かった。これらのことから反応溶
液中のNa/Znモル比によって酸化亜鉛微粒子の
粒径を制御できる可能性が示された。
得られた酸化亜鉛懸濁液に紫外線を照射し蛍
光特性を調べた。これより,反応時間0分,30分,
24hでは蛍光発光の色が異なり,青色から緑色,
そして黄色と変化していることがわかった。
1)L. E. Brus; J. Chem. Phys.,79(11),pp.55665571(1983)
― 33 ―
Fig.2 粒径に及ぼすNa/Znモル比の影響
特 別 研 究
研究テーマ
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区 環境システム工学専攻
分
環境システム工学専攻
研究テーマ
ラジカル反応によるフェノールの分解
ラジカル反応によるフェノールの分解
特 別 研 究
物質工学科
研究者名
船山 齊
物質工学科 船山 齊
1.緒 言
1.緒言
ラジカル分解法は,有機化合物を分解する際に用いられる方法の一つで,分解後にでき
ラジカル分解法は,有機化合物を分解する際に用いられる方法の一つで,分解後にできる生
る生成物の処理が簡単という長所がある。例えば OH ラジカルは,近傍の有機化合物の結
成物の処理が簡単という長所がある。例えばOHラジカルは,近傍の有機化合物の結合を分断し
合を分断し逐次的に開環化合物にすることが知られている。しかし,OH ラジカルのよう
逐次的に開環化合物にすることが知られている。しかし,OHラジカルのように酸化力の高いラ
に酸化力の高いラジカルは,寿命が極めて短く,十分な分解効果を得るには大量に発生さ
ジカルは,寿命が極めて短く,十分な分解効果を得るには大量に発生させる必要がある。
せる必要がある。
本研究では紫外線を用いたフェノールの光分解を基準として,
さらに超音波照射,光触媒添加,
本研究では紫外線を用いたフェノールの光分解を基準として,さらに超音波照射,光触
過酸化水素添加よりラジカルの発生量を増大させ,高度酸化分解法に対する設計指針を与える
媒添加,過酸化水素添加よりラジカルの発生量を増大させ,高度酸化分解法に対する設計
ことを最終目標とし,それぞれの影響について比較,検討を行った。
指針を与えることを最終目標とし,それぞれの影響について比較,検討を行った。
2.研究方法
2.研究方法
超音波発生源に市販の超音波洗浄器(本多電子㈱製,W-113)
,光源に主波長253.7nmの15W
超音波発生源に市販の超音波洗浄器(本多電子(株)製,W-113)
,光源に主波長 253.7nm
紫外線ランプ(東芝㈱製,GL-15)を発光長が80mmとなるように両端を黒紙で覆い使用した。
の 15W 紫外線ランプ(東芝(株)製,GL-15)を発光長が 80mm となるように両端を黒紙で
また,反応槽内の温度上昇を防ぐためポンプを用いて超音波洗浄器内に冷却水を循環した。実
覆い使用した。また,反応槽内の温度上昇を防ぐためポンプを用いて超音波洗浄器内に冷
験操作は,1g/lフェノール水溶液を100mlビーカーに入れ,紫外線あるいは超音波を5時間連続
却水を循環した。実験操作は,1g/l フェノール水溶液を 100ml ビーカーに入れ,紫外線あ
して照射し,途中1時間ごとに試料1mlを採取した。光触媒を用いた実験ではビーカー底部に酸
るいは超音波を 5 時間連続して照射し,途中 1 時間ごとに試料 1ml を採取した。光触媒を
化チタン薄膜を塗布したラシヒリング(直径10mm,長さ10mm)を敷き詰め同様の操作を行っ
用いた実験ではビーカー底部に酸化チタン薄膜を塗布したラシヒリング(直径 10mm,長さ
た。一方,過酸化水素を用いた実験では,過酸化水素を添加し,紫外線あるいは超音波を15分
10mm)を敷き詰め同様の操作を行った。一方,過酸化水素を用いた実験では,過酸化水素
間連続で照射し,3分ごとに試料1mlを採取した。なお,フェノールおよび過酸化水素濃度は分
を添加し,紫外線あるいは超音波を 15 分間連続で照射し, 3 分ごとに試料 1ml を採取し
光光度計を用い測定した。
た。なお,フェノールおよび過酸化水素濃度は分光光度計を用い測定した。
3.結言
3.結 言
紫外線照射ならびに各種ラジカル生成反応場によるフェノールの分解傾向を明らかにしたと
紫外線照射ならびに各種ラジカル生成反応場によるフェノールの分解傾向を明らかにし
ころ,フェノールの分解は図1に示すように一次反応に従うことおよび図2に示すように過酸
たところ,フェノールの分解は図 1 に示すように一次反応に従うことおよび図 2 に示すよ
化水素添加効果が最大となることが分かった。
うに過酸化水素添加効果が最大となることが分かった。
紫外線-超音波併用系ではそれぞれを単独で照射した際の効果が単純に足し合される結果と
紫外線-超音波併用系ではそれぞれを単独で照射した際の効果が単純に足し合される結
なり,加成則の成立することが確認できた。紫外線-過酸化水素併用系では反応の経過ととも
果となり,加成則の成立することが確認できた。紫外線-過酸化水素併用系では反応の経
に一次からずれることも分かった。さらに,過酸化水素がフェノールの分解に及ぼす影響を検
過とともに一次からずれることも分かった。さらに,過酸化水素がフェノールの分解に及
討したところ,反応速度が過酸化水素濃度の一次に比例することが分かった。
ぼす影響を検討したところ,反応速度が過酸化水素濃度の一次に比例することが分かった。
6
5
4
3
2
1
0
図1 フェノール分解に及ぼす紫外線,超音
図 1 フェノール分解に及ぼす紫外線,超音波の影響
波の影響
UV
US28
US45
H2O2
図 2 フ ェ ノ ールの 分 解 反 応 速度 に 及 ぼ す 紫 外 線 ,
図2 フェノールの分解反応速度に及ぼす紫
超音波および過酸化水素の影響
外線,超音波および過酸化水素の影響
― 34 ―
環境システム工学専攻
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
区
分
環境システム工学専攻
臭化サマリウム(II)を用いた新規シクロプロピル化反応の開発
研究テーマ
研1.緒言
究者名
物質工学科 鈴木 祥子
天然に存在するシクロプロパン環を有する化合物として、蚊取り線香や農薬など殺虫剤の成分
1.緒言
であるピレスロイドと呼ばれる化合物群がよく知られている。この化合物群に特有のシクロプロ
天然に存在するシクロプロパン環を有する化合物として,蚊取り線香や農薬など殺虫剤の成
パン環骨格はその環歪みのため、合成する際にはシクロプロパン環部の構築が常に問題となるこ
分であるピレスロイドと呼ばれる化合物群がよく知られている。この化合物群に特有のシクロ
とから、シクロプロピル化合物を簡便に合成する手法の開発は有機合成化学の分野において重要
プロパン環骨格はその環歪みのため,合成する際にはシクロプロパン環部の構築が常に問題と
な課題である。この合成手法の一つとして、ブロモシクロプロパンを金属リチウム、有機リチウ
なることから,シクロプロピル化合物を簡便に合成する手法の開発は有機合成化学の分野にお
いて重要な課題である。この合成手法の一つとして,ブロモシクロプロパンを金属リチウム,
ム化合物、あるいは金属マグネシウムで還元することにより発生したアニオン種を求核剤とする
有機リチウム化合物,あるいは金属マグネシウムで還元することにより発生したアニオン種を
シクロプロピル化反応は利用価値が比較的高い。しかしこれらの還元剤は反応性、危険性等から
求核剤とするシクロプロピル化反応は利用価値が比較的高い。しかしこれらの還元剤は反応性,
取り扱いが比較的困難であるため、操作が煩雑となり易く合成手法としてあまり実用的でない。
危険性等から取り扱いが比較的困難であるため,操作が煩雑となり易く合成手法としてあまり
従ってより穏やかな条件下で簡便に行えるシクロプロピル化反応の開発が望まれている。そこで
実用的でない。従ってより穏やかな条件下で簡便に行えるシクロプロピル化反応の開発が望ま
有機合成に適した穏やかな還元力を持ち、取り扱いが容易で、不活性ガス中において安定である
れている。そこで有機合成に適した穏やかな還元力を持ち,取り扱いが容易で,不活性ガス中
臭化サマリウム(II)を用い、シクロプロピル化反応を行うことができれば、より温和な手法として
において安定である臭化サマリウム
(II)を用い,シクロプロピル化反応を行うことができれば,
使用できると考え、ケトンおよびイミンに対するシクロプロピル化反応について検討を行った。
より温和な手法として使用できると考え,ケトンおよびイミンに対するシクロプロピル化反応
について検討を行った。
2.実験方法
2.実験方法
窒素雰囲気下、臭化サマリウム(II)のテトラヒドロフラン(THF)懸濁液 (0.1 N, 3.0 mL, 0.3 mmol)
窒素雰囲気下,臭化サマリウム
(II)
のテトラヒドロフラン(THF)懸濁液(0.1 N, 3.0 mL, 0.3
とヘキサメチルリン酸トリアミド (HMPA, 0.75 mL)の混合物に、シクロプロピルブロミド (12.0
mmol)とヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA, 0.75 mL)の混合物に,シクロプロピルブロ
μL, 0.15 mmol)を加えて室温下で
30 分間攪拌した後、基質 (0.1 mmol)を加え攪拌した。反応終了
ミド(12.0
μL, 0.15 mmol)を加えて室温下で30分間攪拌した後,基質(0.1
mmol)を加え攪
1
後、ショートカラム及びカラムクロマトグラフィーによって目的物を単離し、
H NMR あるいは
拌した。反応終了後,ショートカラム及びカラムクロマトグラフィーによって目的物を単離し,
1H
NMRあるいはGC-MSによって化合物の同定を行った。
GC-MS
によって化合物の同定を行った。
3.結果と考察
3.結果と考察
臭化サマリウムでシクロプロ
OH
臭化サマリウムでシクロプ
1) SmBr2 (3 eq.), HMPA
ピ ル ブ ロ ミ ド1を 処 理 し た 後,
THF, rt, 0.5 h
ロピルブロミド 1 を処理した後、
(1)
Br
C5H11
ケトン等の求電子剤と反応させ
2) 6-Undecanone
C5H11
50 °C, 48 h
ケトン等の求電子剤と反応さ
るシクロプロピル化について詳
1
2
せるシクロプロピル化につい
細に反応条件を検討した。
まず, (1.5 eq.)
95% yield
6-ウンデカノンを求電子剤に用
て詳細に反応条件を検討した。
NHTs
1) SmBr2 (3 eq.), HMPA
いた系では種々の検討から,50
THF, rt, 0.5 h
まず、6-ウンデカノンを求電子
(2)
Br
℃ に お い て48時 間 反 応 さ せ る
Ph
2) Ph
剤に用いた系では種々の検討
N
Ts
と,95%の 収 率 で 目 的 物2が 得
から、50 °C において 48 時間反
1
3
4
られる事を見出した(式1)
。ま
(1.5 eq.)
50 °C, 24 h
62% yield
応させると、95%の収率で目的
たイミンにも適用を試みたとこ
物 2 が得られる事を見出した(式 1)。またイミンにも適用を試みたところ、N-トシルイミン
3 に対
ろ,N-トシルイミン3に対してシクロプロピル化が起こり,50
℃で24時間反応させると目的の
アミン4が62%の収率で得られる事が分かった(式2)
。それぞれの系における汎用性については
してシクロプロピル化が起こり、50°C で 24 時間反応させると目的のアミン
4 が 62%の収率で得
現在検討中であるが,本系は幅広い求電子剤に対して適用可能であり,シクロプロピルカルビ
られる事が分かった(式 2)。それぞれの系における汎用性については現在検討中であるが、本系
ノールやアミンを合成する為の有用な手法となると考えている。
は幅広い求電子剤に対して適用可能であり、シクロプロピルカルビノールやアミンを合成する為
の有用な手法となると考えている。
― 35 ―
特 別 研 究
物質工学科 鈴木 祥子
臭化サマリウム
(ⅠⅠ)を用いた新規シクロプロピル化反応の
開発
環境システム工学専攻
臭化サマリウム(II)を用いたベンゾイル基の選択的脱保護法の開発
環境システム工学専攻
専攻科特別研究の概要(平成23年度)
物質工学科 鈴木 祥子
臭化サマリウム(II)を用いたベンゾイル基の選択的脱保護法の開発
区
環境システム工学専攻
分
物質工学科
1.緒言
鈴木
祥子
臭化サマリウム
(ⅠⅠ)を用いたベンゾイル基の選択的脱保護
特 別 研 究
研究テーマ
多様な官能基を有する複雑な有機化合物を合成する上で目的の反応のみを円滑に進行させる為
法の開発
1.緒言
に、保護基を使用する事は重要な戦略の一つである。実際の合成においては多種類の保護基で保
多様な官能基を有する複雑な有機化合物を合成する上で目的の反応のみを円滑に進行させる為
研
究者名
物質工学科 鈴木 祥子
護されている同一の官能基が存在し、特定の保護基のみを選択的に除去することが必須となる場
に、保護基を使用する事は重要な戦略の一つである。実際の合成においては多種類の保護基で保
合がある。これを選択的脱保護と呼び、特に水酸基に適用される場合が多い。複雑な化合物の合
1.緒言
護されている同一の官能基が存在し、特定の保護基のみを選択的に除去することが必須となる場
成では保護基の選択や脱保護の順序などの戦略が成否を分けることも多く、選択的脱保護は有機
多様な官能基を有する複雑な有機化合物を合成する上で目的の反応のみを円滑に進行させる
合がある。これを選択的脱保護と呼び、特に水酸基に適用される場合が多い。複雑な化合物の合
合成を行う上で非常に重要である。そこで本研究ではこの選択的脱保護に臭化サマリウム(II)を用
為に,保護基を使用する事は重要な戦略の一つである。実際の合成においては多種類の保護基
成では保護基の選択や脱保護の順序などの戦略が成否を分けることも多く、選択的脱保護は有機
で保護されている同一の官能基が存在し,特定の保護基のみを選択的に除去することが必須と
いた還元反応を適用することを試みた。その結果、ベンゾイル基のみを選択的に脱保護できるこ
合成を行う上で非常に重要である。そこで本研究ではこの選択的脱保護に臭化サマリウム(II)を用
なる場合がある。これを選択的脱保護と呼び,特に水酸基に適用される場合が多い。複雑な化
とを見出したので以下報告する。
合物の合成では保護基の選択や脱保護の順序などの戦略が成否を分けることも多く,選択的脱
いた還元反応を適用することを試みた。その結果、ベンゾイル基のみを選択的に脱保護できるこ
保護は有機合成を行う上で非常に重要である。そこで本研究ではこの選択的脱保護に臭化サマ
とを見出したので以下報告する。
2.実験方法
リウム(II)を用いた還元反応を適用することを試みた。その結果,ベンゾイル基のみを選択的
ω-ベンゾキシアセテートのテトラヒドロフラン (THF) 懸濁液 (0.1 mmol/mL) 0.5 mL (0.05
に脱保護できることを見出したので以下報告する。
2.実験方法
mmol) に、臭化サマリウム(II)の THF 溶液 (0.1 mol/mL) とプロトン源(0.1 mmol)を加え、窒素
ω-ベンゾキシアセテートのテトラヒドロフラン
(THF) 懸濁液 (0.1 mmol/mL) 0.5 mL (0.05
2.実験方法
雰囲気下で攪拌した(Scheme
1)。反応終了後、ショートカラム及びカラムクロマトグラフィーによ
1
mmol)
に、臭化サマリウム(II)の
THF 溶液 (0.1 mol/mL) とプロトン源(0.1
mmol)を加え、窒素
ω-ベンゾキシアセテートのテトラヒドロフラン(THF)溶液(0.1
mmol/mL)0.5
mL(0.05
って目的物を単離し、
H NMR によって化合物の同定を行った。
mmol)に,
臭化サマリウム
(II)
のTHF懸濁液(0.1 mol/mL)とプロトン源(0.1 mmol)を加え,
雰囲気下で攪拌した(Scheme
1)。反応終了後、ショートカラム及びカラムクロマトグラフィーによ
1
窒素雰囲気下で攪拌した(Scheme
1)
。反応終了後,ショートカラム及びカラムクロマトグラ
って目的物を単離し、 H NMR によって化合物の同定を行った。
O
O
1
フィーによって目的物を単離し, H NMRによって化合物の同定を行った。
O
O
O
O
3.結果と考察
10
O
SmBr2
O
Proton source (2.0 eq.)
SmBr2
O
10
OH
Proton source
(2.0 eq.) DibromideO
Scheme 1. Deprotection Promoted
by Samarium(II)
10
OH
10
O
O
Scheme
1. Deprotection
Samarium
(II)
Dibromide
Scheme
1. DeprotectionPromoted
Promoted by
by Samarium(II)
Dibromide
ω-ベンゾキシアセテートを基質とし、臭化サマリウム(II)によるベンゾイル基の脱保護について
3.結果と考察
3.結果と考察
詳細に反応条件を検討した。
その結果、臭化サマリウム(II)を
6 当量、
プロトン源として水を用い、
ω-ベンゾキシアセテートを基質とし,臭化サマリウム
(II)
によるベンゾイル基の脱保護につ
ω-ベンゾキシアセテートを基質とし、臭化サマリウム(II)によるベンゾイル基の脱保護について
室温下、48 時間攪拌する事によって、98%と最も高い収率で目的の
ω-ヒドロキシアセテートが得
いて詳細に反応条件を検討した。その結果,臭化サマリウム
(II)を6当量,プロトン源として水
詳細に反応条件を検討した。
その結果、
臭化サマリウム(II)を 6 当量、プロトン源として水を用い、
を用い,室温下,48時間攪拌する事によって,98%と最も高い収率で目的のω-ヒドロキシアセ
られることを見出した (Scheme
2)。本反応の詳細については現在検討中であるが、この選択性は
室温下、48
時間攪拌する事によって、98%と最も高い収率で目的の
ω-ヒドロキシアセテートが得
テートが得られることを見出した(Scheme
2)
。本反応の詳細については現在検討中であるが,
ベンゾイル基とアセチル基の還元電位に起因しており、臭化サマリウムの還元力に適したベンゾ
この選択性はベンゾイル基とアセチル基の還元電位に起因しており,臭化サマリウムの還元力
られることを見出した
(Scheme 2)。本反応の詳細については現在検討中であるが、この選択性は
イル基のみが還元されたためであると考えている。
に適したベンゾイル基のみが還元されたためであると考えている。
ベンゾイル基とアセチル基の還元電位に起因しており、臭化サマリウムの還元力に適したベンゾ
イル基のみが還元されたためであると考えている。
SmBr2 (6.0 eq.)
O
O
O
H2O (2.0 eq.)
O
10 O O
SmBr
(6.0
O
THF,2 rt,
48eq.)
h
O
10 OH
O
H2O (2.0 eq.)
O
98% yield
10 O
THF, rt, 48 h
O
10 OH
Scheme 2. Cleavage of Benzoyl Group Using SmBr2
Scheme 2. Cleavage of Benzoyl Group Using SmBr2
98% yield
Scheme 2. Cleavage of Benzoyl Group Using SmBr2
― 36 ―
研 究 紹 介
研 究 紹 介
掲載内訳
区分
研
究
テ
ー
マ
科研 誘電体−磁性体界面の微細構造構築と新規情報記憶機能の創成
学 科
・
氏 名
頁
物 質 ・ 丸山耕一 38
〃
溶融飛灰に含まれる金属塩の形態解明と分離挙動に関する研究
〃
〃
ニューラルネットワークによる学習アルゴリズムの設計とセン
機 械 ・ 木澤 悟 40
サー取付け装具の開発
〃
極低温流体中の膜沸騰現象における流体力学的安定性
〃
・ 野澤正和
41
〃
機能的電気刺激を用いたパワーリハビリシステム利用時における
バイオメカニクス的な評価
〃
・ 宮脇和人
43
〃
ロバート・ヘリックの抒情詩における社会性と政治的機能
・ 野中利瀬弘
39
人文科学 ・ 古河美喜子 44
外資 小型X-bandマルチバンチ電子ライナックを用いたX線源の開発
電気情報 ・ 坂本文人 45
書籍 若者ことばの分析と通時的変化
人文科学 ・ 桑本裕二 46
トピ 進化的多目的最適化手法による環境計画支援システム
環境都市 ・ 井上 誠 47
〃
ピロティ階を有する建築物の耐震性能の評価
〃
・ 寺本尚史
48
〃
ミクロ交通シミュレーションのための希望走行速度に関する研究
〃
・ 松尾幸二郎
49
〃
電磁波の再放射を利用する高周波誘電率測定法
電気情報 ・ 駒木根隆士 50
〃
エネルギー粒子線照射による物質特性改質効果の理論
自然科学 ・ 金田保則 51
〃
英語教育とe-learning
人文科学 ・ 小林 貢 53
科研:科学研究費助成事業
外資:外部資金(共同研究,受託研究)
書籍:書籍
トピ:トピックス
― 37 ―
様式4
研究紹介
研究紹介
誘電体-磁性体界面の微細構造構築と新規情報記憶機能の創成
研究テーマ
物質工学科 丸 山 耕 一
誘電体−磁性体界面の微細構造構築と新規情報記憶機能の創成
研 究 紹 介
1.概要
研究者名
物質工学科 丸山 耕一
誘電体と磁性体を接合した素子の界面の微細構造を制御する。圧電歪と磁歪の機能を
1.概要
ハイブリッドさせることで、超高速かつ省電力な磁気記憶デバイスを提案できる。磁性相を微細化
誘電体と磁性体を接合した素子の界面の微細構造を制御する。圧電歪と磁歪の機能をハイブ
することで、記録密度の限界達成を挑戦できる。
リッドさせることで,超高速かつ省電力な磁気記憶デバイスを提案できる。磁性相を微細化す
ることで,記録密度の限界達成を挑戦できる。
2.研究方法と成果
スパッタ法によるニオブ酸リチウム圧電膜とフェライト系磁歪膜を積層させた試料を合成し
2.研究方法と成果
た。これ以外にも、電析法や電析法による試料合成や、導電性高分子に磁性イオンをドーピングし
スパッタ法によるニオブ酸リチウム圧電膜とフェライト系磁歪膜を積層させた試料を合成し
た試料の合成技術も確立した。
た。これ以外にも,電析法や電析法による試料合成や,導電性高分子に磁性イオンをドーピン
秋田高専では、反射率計測・偏光解析を原理とする、圧電特性と磁歪特性を分離できる
グした試料の合成技術も確立した。
光学計測装置を構築した。 [1] 単色半導体レーザでの計測を基本とするが、単パルス YAG レーザを
秋田高専では,反射率計測・偏光解析を原理とする,圧電特性と磁歪特性を分離できる光学
用いた、時間分解計測へも拡張できる。
計測装置を構築した。[1]単色半導体レーザでの計測を基本とするが,単パルスYAGレーザを用
シリコン基板上に圧電性薄膜を形成した試料において、半導体の表面電荷と圧電歪み
いた,時間分解計測へも拡張できる。
に起因すると思われる誘電率の変化を分離することに成功した。これらの成果は国際会議で報告
シリコン基板上に圧電性薄膜を形成した試料において,半導体の表面電荷と圧電歪みに起因
した。
すると思われる誘電率の変化を分離することに成功した。これらの成果は国際会議で報告した。
3.今後の方向性
3.今後の方向性
試料合成は,スパッタ法とゾルゲル法の検討を並行してすすめ,圧電層と磁歪層を積層した
試料合成は、スパッタ法とゾルゲル法の検討を並行してすすめ、圧電層と磁歪層を積層
試料の微細領域の磁化制御と,その検出技術を確立する。これらの技術を知財権として獲得し,
した試料の微細領域の磁化制御と、その検出技術を確立する。これらの技術を知財権として獲得
記憶素子の実用化を視野としていく。
し、記憶素子の実用化を視野としていく。
(左図)図1 誘電層と磁歪層を
(左図)図1 誘電層と磁歪層をハイ
ハイブリッドした素子の概念図。
ブリッドした素子の概念図。素子に電
素子に電圧を印加すると、各層
圧を印加すると,各層の界面に応力が
の界面に応力が生じ、微細化し
生じ,微細化した超常磁性相が強磁性
た超常磁性相が強磁性転移す
転移する。この原理を応用して,超高
る。この原 理 を応 用 して、 超 高
速・省電力な情報記憶媒体およびにそ
速 ・省 電 力 な情 報 記 憶 媒 体 お
の記憶方式を提案できる。[2] 磁気光
よ び にそ の 記 憶 方 式 を 提 案 で
学効果と電気(ピエゾ)光学効果を検
き る 。 [2] 磁 気 光 学 効 果 と 電 気
出する方法で,この素子の機能性を評
( ピエ ゾ) 光 学 効 果 を 検 出 す る
価するための計測装置を秋田高専に構
方法
で今後,この技術を応用し
、この素子の機能性を
[1]
築した。
評 価 するための計 測 装 置 を秋
て磁化配列を検出する技術として確立
[1]
する。田 高 専 に構 築 した。 今 後 、こ
の技術を応用して磁化配列を
検出する技術として確立する。
Ref.
[1]S. Abe, K. Maruyama, F. Sakamoto, et.al., e-Journal of Surface Science and
Ref.
Nanotechnology
10,
(2012)
,503-508
[1]
S. Abe, K. Maruyama,
F.
Sakamoto, et.al., e-Journal of Surface Science and Nanotechnology
[2]本研究は,JSPS科研費20310079(2008年度~2010年度)の助成を受けたものです。
(in printing)
[2] 本研究は、JSPS 科研費 20310079(2008 年度~2010 年度)の助成を受けたものです。
― 38 ―
様式4
研究紹介
研究紹介
溶融飛灰に含まれる金属塩の形態解明と分離挙動に関する研究
研究テーマ
溶融飛灰に含まれる金属塩の形態解明と分離挙動に関する研究
物質工学科 野中利瀬弘
研
究者名
1.緒言
物質工学科 野中利瀬弘
転換挙動を詳細に調べた.
目し,存在形態の種類と存在量比を明らかにすると共に,硫黄トラップ剤を添加したときの鉛
の形態変化と転換挙動を詳細に調べた。
2.実験方法
2.実験方法
塩化実験には,原料や処理条件が異なる 2 種の溶融飛灰試料を,それぞれ-42 +65 mesh に分
塩化実験には,原料や処理条件が異なる2種の溶融飛灰試料を,それぞれ-42
+65 meshに分級
級した粉末を用いた.添加剤として,カルシウム化合物を各試料中の硫黄と等モル量となるよう添
した粉末を用いた。添加剤として,カルシウム化合物を各試料中の硫黄と等モル量となるよう
加・混合した.調製した試料粉末を不活性ガス流通下,固定床型反応器により熱処理し,各種分
添加・混合した。調製した試料粉末を不活性ガス流通下,固定床型反応器により熱処理し,各
析を行った.加熱前後の試料は,JIS 規格に基づき溶解した後に,ICP ならびにイオンクロマトグラ
種分析を行った。加熱前後の試料は,JIS規格に基づき溶解した後に,ICPならびにイオンクロ
フィーにより各元素濃度を測定した.併せて,鉛化合物の形態変化を明らかにするため,逐次抽出
マトグラフィーにより各元素濃度を測定した。併せて,
鉛化合物の形態変化を明らかにするため,
により酢 酸 可 溶 分 (PbO),酢 酸 アンモニウム可 溶 分 (PbSO4 ),塩 化 鉄 -塩 化 ナトリウム可 溶 分
逐次抽出により酢酸可溶分(PbO)
,酢酸アンモニ
(PbS),硝酸可溶分(M - Pb)の 4 種に鉛形態を分
100
,塩化鉄-塩化ナトリウム可
ウム可溶分(PbSO4)
Ash A
類した.また試 料の物 質 同 定および組 成 分 析は
溶分(PbS),硝酸可溶分(M−Pb)の4種に鉛形態
XRD および EPMA を用いて行った.
80
を分類した。また試料の物質同定および組成分析は
PbO
XRDおよびEPMAを用いて行った。
60
3.研究成果
な類似の形態で硫黄が含まれていることを明らかに
にした.さらに,含 有 硫 黄 化 合 物 との接 触により発
した。さらに,含有硫黄化合物との接触により発生
生する PbS 生成反応の抑制を目的として,灰中硫
するPbS生成反応の抑制を目的として,灰中硫黄と
黄 と CaCO 3 を所 定 量 混 合 した試 料 を調 製 ・加 熱
CaCO
3を所定量混合した試料を調製・加熱し,逐次
し,逐次抽出法を用いて鉛化合物の形態変化と揮
抽出法を用いて鉛化合物の形態変化と揮発挙動を調
発挙動を調べた.その結果,Metal/Sulfur 比が小さ
べた。その結果,Metal/Sulfur比が小さい硫黄高含
い硫 黄 高 含 有 試 料 において,熱 処 理 時 の固 相 中
有試料において,熱処理時の固相中PbS量を0%に
PbS 量を 0%に抑えることができ,顕著な PbS の生成
抑えることができ,顕著なPbSの生成抑制効果があ
抑制効果があることを見出した.これにより,従来の
ることを見出した。これにより,従来の単独加熱処
単独加熱処理に比べて鉛の揮発率を 25.2%向上さ
理に比べて鉛の揮発率を25.2%向上させ,1/6の加熱
せ,1/6 の加熱保持時間で 97%以上の揮発率を達
保持時間で97%以上の揮発率を達成することができ
成することができた.
た。
※本研 究の一部は科 学 研究 費 補 助 金(若 手研 究
※本研究の一部は科学研究費補助金(若手研究(B)
)
(B))の助成を得て実施したものである.
の助成を得て実施したものである。
― 39 ―
40
Lead - form distribution [ % ]
溶融飛灰試料の結晶構造解析と逐次抽出を組
3.研究成果
み合わせることにより,硫黄含有率が 1.8~6.3%と幅
溶融飛灰試料の結晶構造解析と逐次抽出を組み
広く高濃度で含まれていること,存在形態が ZnS や
合わせることにより,硫黄含有率が1.8~6.3%と幅
FeS のほか,硫酸塩などで存在しており,溶融処理
広く高濃度で含まれていること,存在形態がZnSや
の種別や処理温度,原料種に関わらず,前述のよ
FeSのほか,硫酸塩などで存在しており,溶融処理
うな類似の形態で硫黄が含まれていることを明らか
の種別や処理温度,原料種に関わらず,前述のよう
PbSO4
20
0
100
PbS
M-Pb
0
20
40
60
80
100
120
Ash A with CaCO 3
80
PbO
60
40
20
0
PbS
0
20
PbSO 4
M-Pb
40
60
80 100
Holding time [ min ]
120
Fig. 1 Change in lead - form distribution
with holding time at 1073 K for
molten fly ashes.
研 究 紹 介
廃棄物処理に伴い排出される溶融飛灰は,鉱石と同程度の金属を含有することから,有用なベ
1.緒言
ースメタル源としての利用が期待できる二次資源である.これら溶融飛灰は,種々の一般・産業廃
廃棄物処理に伴い排出される溶融飛灰は,鉱石と同程度の金属を含有することから,有用な
棄物に由来する金属化合物から構成されているため,多様な組成に対応した分離技術の開発が
ベースメタル源としての利用が期待できる二次資源である。これら溶融飛灰は,種々の一般・
求められている.本研究では,鉛の塩化揮発反応による分離を阻害する灰中の硫黄に着目し,存
産業廃棄物に由来する金属化合物から構成されているため,多様な組成に対応した分離技術の
在形態の種類と存在量比を明らかにすると共に,硫黄トラップ剤を添加したときの鉛の形態変化と
開発が求められている。本研究では,鉛の塩化揮発反応による分離を阻害する灰中の硫黄に着
研究紹介
研究紹介
ニューラルネットワークによる学習アルゴリズムの設計と
センサー取付け装具の開発
センサー取付け装具の開発
ニューラルネットワークによる学習アルゴリズムの設計と
研究テーマ
機械工学科 木 澤 悟
センサー取付け装具の開発
研究紹介
ニューラルネットワークによる学習アルゴリズムの設計と
研 究 紹 介
機械工学科 木 澤 悟
1.緒 言
研究者
機械工学科 木澤 悟
言名
1.緒
機能的電気刺激(FES)による片麻痺下垂足歩行の再建では,踵部に装着したフットス
機能的電気刺激(FES)による片麻痺下垂足歩行の再建では,踵部に装着したフットス
イッチで歩行遊脚期を検出し,足首の背屈運動に重要な前脛骨筋を刺激しリハビリを行っ
1.緒 言
イッチで歩行遊脚期を検出し,足首の背屈運動に重要な前脛骨筋を刺激しリハビリを行っ
ている.これまで著者らは,フットスイッチによる遊脚期のタイミング情報を得ることの
機能的電気刺激(FES)による片麻痺下垂足歩行の再建では,踵部に装着したフットスイッ
ている.これまで著者らは,フットスイッチによる遊脚期のタイミング情報を得ることの
チで歩行遊脚期を検出し,足首の背屈運動に重要な前脛骨筋を刺激しリハビリを行っている。
代替えとして,片麻痺患者の膝蓋腱上に非接触型センサとして 3 軸の加速度センサおよび
代替えとして,片麻痺患者の膝蓋腱上に非接触型センサとして 3 軸の加速度センサおよび
これまで著者らは,フットスイッチによる遊脚期のタイミング情報を得ることの代替えとして,
ジャイロセンサを設置し,それらのセンサ情報とパターン解析が得意なニューラルネット
ジャイロセンサを設置し,それらのセンサ情報とパターン解析が得意なニューラルネット
片麻痺患者の膝蓋腱上に非接触型センサとして3軸の加速度センサおよびジャイロセンサを設置
(N.N.)を組み合わせることで,歩行中の遊脚期情報を推定するシステムを開発し,歩行
(N.N.)を組み合わせることで,歩行中の遊脚期情報を推定するシステムを開発し,歩行
し,それらのセンサ情報とパターン解析が得意なニューラルネット(N.N.)を組み合わせるこ
再建における新しい FES システムを提案してきた.本研究では,臨床実験の前段階として
再建における新しい
FES システムを提案してきた.本研究では,臨床実験の前段階として
とで,歩行中の遊脚期情報を推定するシステムを開発し,歩行再建における新しいFESシステ
健常者に対し FES を装着した状態で学習データを取り,学習後の実装実験で本システムの
健常者に対し
FES を装着した状態で学習データを取り,学習後の実装実験で本システムの
ムを提案してきた。本研究では,臨床実験の前段階として健常者に対しFESを装着した状態で
有効性を検証した.
有効性を検証した.
学習データを取り,学習後の実装実験で本システムの有効性を検証した。
2.研究方法
2.研究方法
開発した遊脚期検出システムとその装着図を
2.研究方法
開発した遊脚期検出システムとその装着図を
Fig.1 に示す.本システムは非接触センサ,フ
開発した遊脚期検出システムとその装着図を
Fig.1
に示す.本システムは非接触センサ,フ
ィルタ,H8 マイコン,データロガーによって
Fig.1に示す。本システムは非接触センサ,フィル
ィルタ,H8
マイコン,データロガーによって
構成され,遊脚期と判定したとき構築された書
タ,H8マイコン,データロガーによって構成さ
構成され,遊脚期と判定したとき構築された書
込みシステムの出力が FES(低周波治療器)に送
れ,遊脚期と判定したとき構築された書込みシス
込みシステムの出力が
FES(低周波治療器)に送
られ,前頸骨筋を刺激し,つま先を引き上げる
テムの出力がFES(低周波治療器)に送られ,前
られ,前頸骨筋を刺激し,つま先を引き上げる
ことになる. Fig.2
に実験の手順を示す.
頸骨筋を刺激し,
つま先を引き上げることになる。
ことになる.
Fig.2
に実験の手順を示す.
3.研究結果
Fig.2に実験の手順を示す。
Fig.1 実験システムと装着図
3.研究結果
実験は 2 人の被験者に行い,各被験者の学習
3.研究結果
実験は 2 人の被験者に行い,各被験者の学習
で用いる入力データは歩行データ時間が 60 秒
実験は2人の被験者に行い,各被験者の学習で
で用いる入力データは歩行データ時間が 60 秒
間とした.学習後の歩行速度は感覚的に一定に
用いる入力データは歩行データ時間が60秒間とし
間とした.学習後の歩行速度は感覚的に一定に
約 80 秒間歩行し,N.N の出力と検証用フット
た。学習後の歩行速度は感覚的に一定に約80秒間
約 80 秒間歩行し,N.N の出力と検証用フット
スイッチとの時間的タイミングの比較および認
歩行し,N.Nの出力と検証用フットスイッチとの
スイッチとの時間的タイミングの比較および認
時間的タイミングの比較および認識率の比較を
識率の比較を行った.Fig.3 は,ある被験者の
識率の比較を行った.Fig.3 は,ある被験者の
行った。Fig.3は,ある被験者のN.N.の出力結果と
N.N.の 出 力 結 果 と フ ッ ト ス イ ッ チ の 出 力 結 果
N.N.の
出力結果とフットスイッチの出力結果
フットスイッチの出力結果を比較した図である。
を比較した図である.表 1 には,N.N.の実装実
を比較した図である.表
1 には,N.N.の実装実
表1には,N.N.の実装実験から得られた遅れ時間
験から得られた遅れ時間を示しており,FES に
験から得られた遅れ時間を示しており,FES
に
を示しており,FESによる刺激のタイミングは平
よる刺激のタイミングは平均遊脚期開始および
よる刺激のタイミングは平均遊脚期開始および
均遊脚期開始および平均遊脚期終了遅れ時間か
平均遊脚期終了遅れ時間から,いずれも約 0.2
平均遊脚期終了遅れ時間から,いずれも約
0.2
ら,いずれも約0.2秒前後遅れて入力されることが
秒前後遅れて入力されることがわかる. また,
秒前後遅れて入力されることがわかる.
また,
わかる。また,
表1には,
歩行実験時間内でのエラー
表 1 には,歩行実験時間内でのエラー率を示して
率を示しており,悪くてもエラー率は2%に収まっ
表
1 には,歩行実験時間内でのエラー率を示して
おり,悪くてもエラー率は 2%に収まっており,
ており,遊脚期を充分推定していると考えられる。
おり,悪くてもエラー率は
2%に収まっており,
遊脚期を充分推定していると考えられる.なお,
なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究C)
遊脚期を充分推定していると考えられる.なお,
本研究は科学研究費補助金(基盤研究 C)22560257
22560257の助成を得て実施したものである。
本研究は科学研究費補助金(基盤研究
C)22560257
の助成を得て実施したものである.
の助成を得て実施したものである.
Fig.1
実験システムと装着図
Fig.2 実験の手順
Fig.2 実験の手順
Table.1 遅れ時間と認識率
Table.1 遅れ時間と認識率
被験者 A
60
60
秒
秒
間
被験者 A
平 均 遊 脚 期 開 始 遅 れ(sec)
0.19
平 均 遊 脚 期 開 始 遅 れ(sec)
0.19
平 均 遊 脚 期 終 了 遅 れ(sec)
0.21
0.18
0.20
平 均 遊 脚 期 終 了 遅 れ(sec)
エラー歩 数
0.21
0.00
0.20
1.00
0.00
0.00
1.00
1.04
エラー率 (%)
0.00
平 均 遊 脚 期 開 始 遅 れ(sec)
0.19
1.04
0.15
間 エラー歩 数
エラー率 (%)
80
平均
平遊
均脚
遊期
脚開
期始
終遅
了れ(sec)
遅 れ(sec)
秒 平 均 遊 脚 期 終 了 遅 れ(sec)
エラー歩 数
秒
間 エラー歩 数
エラー率 (%)
間
エラー率 (%)
80
Fig.3 N.N 出力とフットスイッチの比較
Fig.3 N.N 出力とフットスイッチの比較
― 40 ―
被験者 B
被験者 B
0.18
0.19
0.21
0.15
0.20
0.21
0.00
0.20
1.00
0.00
0.00
1.00
0.78
0.00
0.78
研究紹介
研究紹介
研究紹介
研究テーマ
極低温流体中の膜沸騰現象における流体力学的安定性
極低温流体中の膜沸騰現象における流体力学的安定性
極低温流体中の膜沸騰現象における流体力学的安定性
機械工学科
機械工学科
野
野 澤
澤 正
和
正 和
輸送を行うための冷却条件や冷却系を検討することは重要である.しかし,極低温流体中の沸騰
的な熱輸送を行うための冷却条件や冷却系を検討することは重要である。しかし,極低温流体
輸送を行うための冷却条件や冷却系を検討することは重要である.しかし,極低温流体中の沸騰
現象に関する研究データは少なく,その特性もあまり明らかにされてはいない.
現象に関する研究データは少なく,その特性もあまり明らかにされてはいない.
中の沸騰現象に関する研究データは少なく,その特性もあまり明らかにされてはいない。
本研究では,水の膜沸騰における流体力学的安定論を援用し,各極低温流体中の膜沸騰の
本研究では,水の膜沸騰における流体力学的安定論を援用し,各極低温流体中の膜沸騰の流体
本研究では,水の膜沸騰における流体力学的安定論を援用し,各極低温流体中の膜沸騰の
流体力学的安定性について解析を行う.
力学的安定性について解析を行う。
流体力学的安定性について解析を行う.
2.研究方法
2.研究方法
2.研究方法
安定性解析は,図1に示す二次元膜沸騰モデルを用いた。図のSolidはヒータを表す。境界条件
安定性解析は,図
安定性解析は,図 11 に示す二次元膜沸騰モデルを用いた.図の
に示す二次元膜沸騰モデルを用いた.図の Solid
Solid はヒータを表す.境界条
はヒータを表す.境界条
h’
は,z’
=
0では,温度と熱流束が連続であり,z’
=
で質量,運動量,エネルギーの釣合が成り
件は,z’
件は,z’ =
= 00 では,温度と熱流束が連続であり,z’
では,温度と熱流束が連続であり,z’ =
= h’で質量,運動量,エネルギーの釣合
h’で質量,運動量,エネルギーの釣合
立つとする。蒸気膜界面の運動境界条件,圧力の境界条件,蒸気膜界面の質量流束と膜厚の関
が成り立つとする.蒸気膜界面の運動境界条件,圧力の境界条件,蒸気膜界面の質量流束
が成り立つとする.蒸気膜界面の運動境界条件,圧力の境界条件,蒸気膜界面の質量流束
係式から,膜厚hに関する強非線形方程式
と膜厚の関係式から,膜厚
と膜厚の関係式から,膜厚 hh に関する強非線形方程式
に関する強非線形方程式
 hh H
H  11 [ h 333 ( h  h ) ]
11 
hh 
Q

Q
 [ h ( h  h XX
)XX ] XXX
XX

XX X
hh 
Λ
Λ 12
12
が導かれる.ここで,添え字 τ,
τ, X
X は,それぞれ時間,位置に対しての偏微分を表し,Q
は,それぞれ時間,位置に対しての偏微分を表し,Q は
は
が導かれる.ここで,添え字
が導かれる。ここで,添え字τ, Xは,それぞれ時間,位置に対しての偏微分を表し,Qはヒー
ヒータからの加熱量,H
ヒータからの加熱量,H は無次元化された平衡膜厚,Λ
は無次元化された平衡膜厚,Λ は非平衡蒸発条件及びヒータの熱
は非平衡蒸発条件及びヒータの熱
タからの加熱量,Hは無次元化された平衡膜厚,Λ は非平衡蒸発条件及びヒータの熱抵抗を表す。
抵抗を表す.解析により,沸騰時に形成される,平衡膜厚(d
)と臨界膜厚(d CCC )の値を比較す
)の値を比較す
抵抗を表す.解析により,沸騰時に形成される,平衡膜厚(d EEE )と臨界膜厚(d
解析により,
沸騰時に形成される,
平衡膜厚(dE)と臨界膜厚(dC)の値を比較することにより,
ることにより,沸騰時の安定性判別ができる.平衡膜厚は,蒸気膜中の熱伝導とサブクー
ることにより,沸騰時の安定性判別ができる.平衡膜厚は,蒸気膜中の熱伝導とサブクー
沸騰時の安定性判別ができる。平衡膜厚は,蒸気膜中の熱伝導とサブクールされた周囲流体に
ルされた周囲流体による除熱が釣合う場合の特定の膜厚となり,
ルされた周囲流体による除熱が釣合う場合の特定の膜厚となり,
よる除熱が釣合う場合の特定の膜厚となり,
ΔT
D
ΔTSUP
Dkkk zz'' LLL  Γ z'
SUP
SUP
dd EE 

 Γ kkk z' SSS
E
ΔT
N
N
ΔTSUB
SUB
SUB
は無次元化した過熱度,ΔT
は無次元化したサブクール度,
と表される.ここで,ΔT
SUP
SUB
は無次元化した過熱度,ΔT
は無次元化したサブクール度,
Δ TSUP
は無次元化した過熱度,
Δ TSUB
は無次元化したサブクール度,D
と表される。ここで,
k
SUP
SUB
と表される.ここで,ΔT
SUP
SUB
D
は蒸気と液体の熱伝導率の比,N
はヌセルト数,Γ
は蒸気とヒータの熱伝導率の比を表
kk は蒸気とヒータの熱伝導率の比を表
Nはヌセルト数,
は蒸気と液体の熱伝導率の比,
Γ kは蒸気とヒータの熱伝導率の比を表す。一方,
Dkkk は蒸気と液体の熱伝導率の比,N
はヌセルト数,Γ
k
す.一方,臨界膜厚は,膜沸騰状態が不安定になる場合での膜厚となり,
臨界膜厚は,膜沸騰状態が不安定になる場合での膜厚となり,
す.一方,臨界膜厚は,膜沸騰状態が不安定になる場合での膜厚となり,
11
15
 48
48 E
E  55  ΔT  11155
dd CC 
d

5
 d
  ΔTSUP
SUP
C
SUP 
 B
B 
と表される。ここで,dは平均初期膜厚,Eは蒸発の時間スケール,Bはボンド数を表す。それ
と表される.ここで,d は平均初期膜厚,E
は平均初期膜厚,E は蒸発の時間スケール,B
は蒸発の時間スケール,B はボンド数を表す.
はボンド数を表す.
と表される.ここで,d
d
d
<
のとき安定,d
>
のとき不安定な膜沸騰状態と
ぞれ過熱度に依存した関数となり,d
E
C
E
C
それぞれ過熱度に依存した関数となり,d EE <
d C のとき安定,d
d C のとき不安定な膜沸騰
E >
それぞれ過熱度に依存した関数となり,d
E < dC
C のとき安定,d E
E > dC
C のとき不安定な膜沸騰
d
=
となる点を臨界安定点と呼び,極低温流体の状態と過熱度に対して,
なる。d
E
C
=
d
となる点を臨界安定点と呼び,極低温流体の状態と過熱度に対して,
状態となる.d
E
C
状態となる.d EE = d CC となる点を臨界安定点と呼び,極低温流体の状態と過熱度に対して,
― 41 ―
研 究 紹 介
研究者名
機械工学科 野澤 正和
1.緒言
1.緒言
1.緒言
極低温流体は,1
極低温流体は,1 K
K から
から 100
100 K
K 程度の温度領域にて液体で存在する物質を指す.代表的なもの
程度の温度領域にて液体で存在する物質を指す.代表的なもの
極低温流体は,
1
Kから100
K程度の温度領域にて液体で存在する物質を指す。
代表的なものに,
に,液体窒素(大気圧下での液化温度
に,液体窒素(大気圧下での液化温度 77.4
77.4 K),液体水素(20
K),液体水素(20 K),液体ヘリウム(4.2
K),液体ヘリウム(4.2 K)が挙げら
K)が挙げら
液体窒素
(大気圧下での液化温度77.4 K)
,
液体水素(20 K)
,
液体ヘリウム(4.2 K)が挙げられる。
れる.極低温流体は,超伝導電磁石や宇宙空間での観測機器の冷却,身近なところでは,食品や
れる.極低温流体は,超伝導電磁石や宇宙空間での観測機器の冷却,身近なところでは,食品や
極低温流体は,超伝導電磁石や宇宙空間での観測機器の冷却,身近なところでは,食品や医療
医療の分野でも用いられている.特に,超伝導分野においては液体ヘリウムによる冷却が主流だ
医療の分野でも用いられている.特に,超伝導分野においては液体ヘリウムによる冷却が主流だ
の分野でも用いられている。特に,超伝導分野においては液体ヘリウムによる冷却が主流だが,
が,近年の高温超伝導体の発見・開発により,液体水素や液体窒素による冷却でも可能な超伝導
が,近年の高温超伝導体の発見・開発により,液体水素や液体窒素による冷却でも可能な超伝導
近年の高温超伝導体の発見・開発により,液体水素や液体窒素による冷却でも可能な超伝導体
体の実用化も期待される.
体の実用化も期待される.
の実用化も期待される。
冷却対象の発熱が大きくなった場合,冷媒は相変化を起こし,極低温流体中に沸騰が発生す
冷却対象の発熱が大きくなった場合,冷媒は相変化を起こし,極低温流体中に沸騰が発生す
冷却対象の発熱が大きくなった場合,冷媒は相変化を起こし,極低温流体中に沸騰が発生す
る.超伝導電磁石の冷却の場合,超伝導状態から常伝導状態に転移するクエンチが発生すると,
る.超伝導電磁石の冷却の場合,超伝導状態から常伝導状態に転移するクエンチが発生すると,
る。超伝導電磁石の冷却の場合,超伝導状態から常伝導状態に転移するクエンチが発生すると,
ジュール熱発生により冷媒に大きな熱負荷が加わり,結果として加熱面全体が沸騰蒸気で覆われ
ジュール熱発生により冷媒に大きな熱負荷が加わり,結果として加熱面全体が沸騰蒸気で覆われ
ジュール熱発生により冷媒に大きな熱負荷が加わり,結果として加熱面全体が沸騰蒸気で覆わ
る膜沸騰が発生する.このような場合において,膜沸騰時の伝熱・流動機構を理解し,効率的な熱
る膜沸騰が発生する.このような場合において,膜沸騰時の伝熱・流動機構を理解し,効率的な熱
れる膜沸騰が発生する。このような場合において,膜沸騰時の伝熱・流動機構を理解し,効率
研究紹介
研究紹介
サブクールされた液体の温度である.z’ = 0 をヒータ表面の位置とおいて,z’S はヒータの
図 1.二次元膜沸騰モデル.T’ S ,T’ SAT,T’ L はそれぞれ,ヒータ温度,飽和蒸気の温度,
図1.二次元膜沸騰モデル。
T’
S,T’
SAT,T’
Lはそれぞれ,ヒータ温度,飽和蒸気の温度,サブクー
厚さ,z’ L はサブクールの平衡温度に保たれる位置,つまり温度境界層厚さに相当する.
サブクールされた液体の温度である.z’
= 0 をヒータ表面の位置とおいて,z’
S はヒータの
z’Sはヒータの厚さ,
z’Lはサ
ルされた液体の温度である。z’= 0をヒータ表面の位置とおいて,
厚さ,z’
はサブクールの平衡温度に保たれる位置,つまり温度境界層厚さに相当する.
L
ブクールの平衡温度に保たれる位置,つまり温度境界層厚さに相当する。
臨界安定点の変化を示したものを臨界安定曲線と呼ぶ.今回は,各極低温流体のサブクー
臨界安定点の変化を示したものを臨界安定曲線と呼ぶ。今回は,各極低温流体のサブクール度
ル度に対する臨界安定曲線の変化を求めた.
臨界安定点の変化を示したものを臨界安定曲線と呼ぶ.今回は,各極低温流体のサブクー
に対する臨界安定曲線の変化を求めた。
ル度に対する臨界安定曲線の変化を求めた.
3.結果
3.結果
図 2 に各極低温流体の臨界安定曲線の変化を示す.縦軸は有次元の過熱度 T’ SUP ,横軸はサ
図2に各極低温流体の臨界安定曲線の変化を示す。縦軸は有次元の過熱度T’
SUP,横軸はサブ
3.結果
ブクール度(T’ L – T’ SAT )を飽和蒸気の温度で無次元化したものである.すなわち,サブクール度
クール度(T’
L – T’SAT)を飽和蒸気の温度で無次元化したものである。すなわち,サブクール
図 2 に各極低温流体の臨界安定曲線の変化を示す.縦軸は有次元の過熱度
T’ SUP ,横軸はサ
ΔTSUB = 0 の場合は,飽和蒸気圧線上の状態となる.臨界曲線の下側の領域では沸騰状態は安
T
=
0の場合は,飽和蒸気圧線上の状態となる。臨界曲線の下側の領域では沸騰状態は
度Δ
SUB
ブクール度(T’ L – T’ SAT )を飽和蒸気の温度で無次元化したものである.すなわち,サブクール度
定であり,逆に上側の状態では不安定となる.液体窒素,液体水素,液体ヘリウムと飽和蒸気圧温
安定であり,逆に上側の状態では不安定となる。液体窒素,液体水素,液体ヘリウムと飽和蒸
ΔTSUB = 0 の場合は,飽和蒸気圧線上の状態となる.臨界曲線の下側の領域では沸騰状態は安
度が上昇するに従って,臨界安定点の過熱度が増加傾向にあることが分かる.また,臨界安定点
気圧温度が上昇するに従って,臨界安定点の過熱度が増加傾向にあることが分かる。また,臨
定であり,逆に上側の状態では不安定となる.液体窒素,液体水素,液体ヘリウムと飽和蒸気圧温
のサブクール度に対する変化については,サブクール度の増加に従って臨界安定曲線の傾きは
界安定点のサブクール度に対する変化については,サブクール度の増加に従って臨界安定曲線
度が上昇するに従って,臨界安定点の過熱度が増加傾向にあることが分かる.また,臨界安定点
小さくなる.これらの傾向の原因としては,各極低温流体の熱伝導率の違いにあると考えられる.図
の傾きは小さくなる。これらの傾向の原因としては,各極低温流体の熱伝導率の違いにあると
のサブクール度に対する変化については,サブクール度の増加に従って臨界安定曲線の傾きは
3 に,各極低温流体の蒸気(k V)と液体(k L)の熱伝導率の比
k の,サブクール度に対する変化を
)の熱伝導率の比D
考えられる。図3に,各極低温流体の蒸気(k
V)と液体(kLD
kの,サブクー
小さくなる.これらの傾向の原因としては,各極低温流体の熱伝導率の違いにあると考えられる.図
示す.比の値が小さい程,液体の熱伝導率が比較的大きくなるということを示す.液体の熱伝導率
ル度に対する変化を示す。比の値が小さい程,液体の熱伝導率が比較的大きくなるということ
3 に,各極低温流体の蒸気(k V)と液体(k L)の熱伝導率の比 D k の,サブクール度に対する変化を
が大きい場合,沸騰膜の蒸気界面からの熱輸送量を多くすることができ,沸騰状態を安定化させ
を示す。
液体の熱伝導率が大きい場合,
沸騰膜の蒸気界面からの熱輸送量を多くすることができ,
示す.比の値が小さい程,液体の熱伝導率が比較的大きくなるということを示す.液体の熱伝導率
沸騰状態を安定化させる方向へ働くと考えられる。
る方向へ働くと考えられる.
が大きい場合,沸騰膜の蒸気界面からの熱輸送量を多くすることができ,沸騰状態を安定化させ
104
る方向へ働くと考えられる.
0.7
3 4
1010
0.6
0.7
0.5
0.6
D =k /k
Dk = kVk/ kL V L
2 3
1010
T'
,K
T'SUP , KSUP
研 究 紹 介
図 1.二次元膜沸騰モデル.T’ S ,T’ SAT,T’ L はそれぞれ,ヒータ温度,飽和蒸気の温度,
0.4
0.5
2
1
1010
1010
1010
0.2
N
H
0.1
0.2
HeHII
2
-1
0
0.2
0.3
H2
HeNI2
-1 0
-2
1010
0.3
0.4
N2
0 1
He I
He II
0.4
0.6
0.8
1
TSUB
10-2
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
図2.各極低温流体の臨界曲線
TSUB
図 2.各極低温流体の臨界曲線
図 2.各極低温流体の臨界曲線
― 42 ―
0.0
0.1
0
0.0
2
2
HeNI2
H
0.1
0.2
0.3
TSUB
2
0.4 He 0.5
I
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
図3.各極低温流体の蒸気と液体の
TSUB
図 3.各極低温流体の蒸気と液体の
熱伝導率比D kの変化
熱伝導率比 Dk の変化
図 3.各極低温流体の蒸気と液体の
熱伝導率比 Dk の変化
様式4
様式4研究紹介
研究紹介
機能的電気刺激を用いたパワーリハビリシステム利用時における
研究紹介
機能的電気刺激を用いたパワーリハビリシステム利用時における
バイオメカニクス的な評価
機能的電気刺激を用いたパワーリハビリシステム利用時に
研究テーマ
バイオメカニクス的な評価
おけるバイオメカニクス的な評価
機械工学科 宮脇和人
機械工学科 宮脇和人
研究種目名:基盤研究(c) 研究期間:平成22年度~平成24年度 課題番号22500522
研究者名
機械工学科 宮脇 和人
研究種目名:基盤研究(c) 研究期間:平成22年度~平成24年度 課題番号22500522
1.緒言
1.緒言
研究種目名:基盤研究(c)
研究期間:平成22年度〜平成24年度 課題番号22500522
高齢者は加齢や運動不足により下肢機能が低下し、下肢の筋萎縮や血行障害などが起こ
高齢者は加齢や運動不足により下肢機能が低下し、下肢の筋萎縮や血行障害などが起こ
1.緒言
る。そのため日常的にトレーニングを行い筋肉を維持し、運動不足を改善する必要がある
れる。高齢者のリハビリトレーニングとしては,理学療法士の手により関節を動かすストレッ
かすストレッチなどの運動療法や、上肢で平行棒を掴んで下肢を交互に引きずる他動的な
歩行運動を行っている。しかし、これらの他動的な運動だけでは下肢の筋萎縮は防止でき
チなどの運動療法や,上肢で平行棒を掴んで下肢を交互に引きずる他動的な歩行運動を行って
歩行運動を行っている。しかし、これらの他動的な運動だけでは下肢の筋萎縮は防止でき
ない。その理由として、他動的な運動だけでは速筋の強化が期待できないことが挙げられ
いる。しかし,これらの他動的な運動だけでは下肢の筋萎縮は防止できない。その理由として,
ない。その理由として、他動的な運動だけでは速筋の強化が期待できないことが挙げられ
る。筋の能動的な収縮運動がなければ血流ポンプとしての作用も小さく、末梢循環不全と
他動的な運動だけでは速筋の強化が期待できないことが挙げられる。筋の能動的な収縮運動が
る。筋の能動的な収縮運動がなければ血流ポンプとしての作用も小さく、末梢循環不全と
内臓障害の充分な予防にもつながりにくい。高齢者における遅筋と速筋の筋萎縮の比較で
なければ血流ポンプとしての作用も小さく,末梢循環不全と内臓障害の充分な予防にもつなが
内臓障害の充分な予防にもつながりにくい。高齢者における遅筋と速筋の筋萎縮の比較で
は速筋の方が優位に萎縮する。それゆえに、他動的な運動だけではなく、高齢者が自ら行
りにくい。高齢者における遅筋と速筋の筋萎縮の比較では速筋の方が優位に萎縮する。それゆ
は速筋の方が優位に萎縮する。それゆえに、他動的な運動だけではなく、高齢者が自ら行
う能動的な運動で、速筋も強化する、機能的電気刺激を用いたパワーリハビリシステムの
えに,他動的な運動だけではなく,高齢者が自ら行う能動的な運動で,速筋も強化する,機能
う能動的な運動で、速筋も強化する、機能的電気刺激を用いたパワーリハビリシステムの
開発を行ってきた。本研究はこのパワーリハビリシステム利用時のバイオメカニクス的評
的電気刺激を用いたパワーリハビリシステムの開発を行ってきた。本研究はこのパワーリハビ
開発を行ってきた。本研究はこのパワーリハビリシステム利用時のバイオメカニクス的評
価手法を確立することである。
リシステム利用時のバイオメカニクス的評価手法を確立することである。
価手法を確立することである。
2.研究方法
2.研究方法
2.研究方法
モデルベースシミュレーションのテクニックを導
モデルベースシミュレーションのテクニック
モデルベースシミュレーションのテクニックを導
入 し身
体 への影 響 を定 量 評 価 する手 法 を提 案
を導入し身体への影響を定量評価する手法を提
入
し身
体 への影 響 を定 量 評 価 する手 法 を提 案
する。例えばローイング運動の下肢に着目した場
案する。例えばローイング運動の下肢に着目し
する。例えばローイング運動の下肢に着目した場
合 、ローイングは屈
伸 運 動 のため膝 関 節 にかか
た場合,ローイングは屈伸運動のため膝関節に
合
、ローイングは屈
伸 運 動 のため膝 関 節 にかか
かかる負担が一番気になる点である。そこで
る負担が一番気になる点である。そこでローイン
関節間力
関節間力
る負担が一番気になる点である。そこでローイン
ローイング運動の動作を計測し各関節の軌跡,
グ運動の動作を計測し各関節の軌跡、足裏部に
グ運動の動作を計測し各関節の軌跡、足裏部に
足裏部にかかる力,
剛体リンクモデルを用いて,
かかる力、剛体リンクモデルを用いて、足、膝、腰
かかる力、剛体リンクモデルを用いて、足、膝、腰
足,
膝,腰関節にかかるモーメントを評価した。
関節にかかるモーメントを評価した。
関節にかかるモーメントを評価した。
3.結言
3.結言
健常者によりハンドルを使用し
3.結言
健
常者によりハンドルを使用
た通常ローイング時の1ストロー
健常者によりハンド
ルを使用
した通常ローイング時の
1 ストロ
ク実験結果を図2に示す。ここで,
した通常ローイング時の
1 ストロ
ーク実験結果を図
2 に示す。ここ
(a)が股関節モーメント,
(b)が
ーク実験結果を図 2 に示す。ここ
で、(a)が股関節モーメント、(b)
膝関節モーメント,
(c)が足関節
で、(a)が股関節モーメント、(b)
が膝関節モーメント、
(c)が足関節
モーメント,それぞれ中央の太線
が膝関節モーメント、(c)が足関節
モーメント、それぞれ中央の太線
は平均値,細線は標準偏差である。
モーメント、それぞれ中央の太線
は平均値,
細線は標準偏差である。
今回の実験は高齢者の動作を模
は平均値,
今
回 の 実 験細線は標準偏差である。
は高齢者の動作を
擬しているため負荷は小さいが,
今
回
の
実
験は高齢者の動作を
模擬しているため負荷は小さいが、
各関節モーメントは極端に大きな
模擬しているため負荷は小さいが、
各関節モーメントは極端に大きな
値をとることなく滑らかに変動し
各関節モーメントは極端に大きな
値をとることなく滑らかに変動し
ていることがわかる。また,歩行
値をとることなく滑らかに変動し
ていることがわかる。また、歩行
運動と比べても小さい値であるた
ていることがわかる。また、歩行
運動と比べても小さい値であるた
め,ローイング運動は高齢者や障
運動と比べても小さい値であるた
め、ローイング運動は高齢者や障
害者にも有効であることが示唆さ
め、ローイング運動は高齢者や障
れた。
害者にも有効であることが示唆された。
害者にも有効であることが示唆された。
筋張力
筋張力
図1 剛体リンクモデル
図1
剛体リンクモデル
図1
剛体リンクモデル
図2
関節モーメントの変化
図2 関節モーメントの変化
図2 関節モーメントの変化
― 43 ―
研 究 紹 介
る。そのため日常的にトレーニングを行い筋肉を維持し、運動不足を改善する必要がある
高齢者は加齢や運動不足により下肢機能が低下し,下肢の筋萎縮や血行障害などが起こる。
と考えられる。高齢者のリハビリトレーニングとしては、理学療法士の手により関節を動
と考えられる。高齢者のリハビリトレーニングとしては、理学療法士の手により関節を動
そのため日常的にトレーニングを行い筋肉を維持し,運動不足を改善する必要があると考えら
かすストレッチなどの運動療法や、上肢で平行棒を掴んで下肢を交互に引きずる他動的な
研究紹介
研究テーマ
ロバート・ヘリックの抒情詩における社会性と政治的機能
研究者名
人文科学系 古河美喜子
研 究 紹 介
1.はじめに
本研究は,平成20~21年度及び平成22~23年度にかけて科学研究費補助金の若手研究(B)に
て採択され行われた研究課題「ロバート・ヘリックの理想郷と動乱のイギリス社会」
(課題番号
20720088)並びに「ロバート・ヘリックの田園世界―『ヘスペリディーズ』の抒情性と社会性
―」(課題番号22720123)を基底とするものである。そこで得られた知見をもとに,17世紀イ
ギリスの王党派詩人ロバート・ヘリック(Robert Herrick, 1591-1674)が描いた理想郷的世界
がピューリタン社会とはいかに対極的な世界になっているかについて論じ,そこに込められた
ピューリタニズム批判のメッセージに着目することで,
最終的には抒情詩集『ヘスペリディーズ』
(Hesperides, 1648)が持つ社会性や政治的機能を明らかにする。
2.研究の背景及び研究方法
平成20~21年度課題において,二年間にわたり計画された研究課題を進めるうち,ヘリック
の場合,一見相反するように見える「抒情性」と「社会性」は言論統制・検閲といった当時の
時代背景や「詩」というジャンルが持つ隠喩・婉曲表現といった特殊性から実は分ち難く結び
ついているという新たな検討課題が浮かび上がってきた。こうした抒情性と社会性の融合の問
題に関しては,平成22~23年度にかけての採択課題において,継続的に美学と政治学という観
点からの考察も含めて,芸術や哲学にまで及ぶ領域である美学に関する資料の収集や文献の整
理など基礎研究を重ねつつ検討が進められた。
またこれまで詩人の政治的意図を明らかにするために,研究の柱として第一に「田園生活に
隠された政治性」
,第二に「民俗学的興味に隠された政治性」という二つを掲げ研究を行って
きた。この二つの柱については,ヘリックの詩集を政治的文脈で読み解こうとする際,田園生
活や民俗学をテーマにした作品中の「遊びの精神」が17世紀半ばにあっては政治的テーマとも
なり得るという観点から,マーカス(Leah S. Marcus)の論(The Politics of Mirth: Jonson,
Herrick,Milton,Marvell,and the Defense of Old Holiday Pastimes, 1986)を踏まえ「田
園生活に隠された政治性」と,スワン(Marjorie Swann)の論(Curiosities and Texts: The
Culture of Collecting in Early Modern England, 2001)から発展的に「民俗学的興味に隠され
た政治性」として分類・分析をすることもできる。
スワン論では,アイデンティティの観点からヘリック作品の中の政治性もみとめつつ,美学
的な視点を強調した形の読解が与えられている。詩という形態である限り,作家は美学という
面を意識せざるを得ないが,17世紀という時代の特殊性が,ヘリックにして,政治的な側面と
美学的な側面をテクストの中に併存させたことについても目を向ける。美しい田園風景やそこ
で繰り広げられる楽し気な習俗を捉えてつぶさに描くことは,詩集に抒情的な一面を付与する
が,ヘリックの場合,田園の自然や民間信仰・伝説並びに風俗等がピューリタン批判の道具と
して使われていたことを考えれば,ヘリックの民俗学的興味の中にもピューリタン社会や動乱
の時代に対する当擦りの言説が内在するからである。
3.おわりに
本研究は,科研費採択課題二件で四年間にわたり続けてきた取り組みをもとに,17世紀イギ
リスの王党派の思想,とくにロバート・ヘリックの抒情詩集における社会性や政治的機能につ
いて考察を深め,その成果を纏めるというものである。
最近の研究動向としては,ピュー(Syrithe Pugh)が『ヘスペリディーズ』と同年に出版
されたファンショー(Richard Fanshawe, 1608-1666)の著作との「間テクスト性」から政
治 的 読 解(Herrick, Fanshawe and the Politics of Intertextuality: Classical Literature and
Seventeenth-Century Royalism, 2010)を展開しており,こうした動きにも着目したい。
― 44 ―
様式 4
研究紹介
研究紹介
小型
X-band マルチバンチ電子ライナックを用いた
X 線源の開発
研究テーマ
小型X-bandマルチバンチ電子ライナックを用いたX線源の開発
電気情報工学科
研究者名
坂
本
文
人
電気情報工学科 坂本 文人
1. 1.はじめに
はじめに
研 究 紹 介
東京大学との共同研究により,レー
東京大学との共同研究により,レーザーパ
ザーパルスと電子線形加速器(電子ライ
ルスと電子線形加速器(電子ライナック)か
ナック)からの電子ビームによる逆コン
らの電子ビームによる逆コンプトン散乱 X 線
プトン散乱X線発生装置の開発を進めて
発生装置の開発を進めている[1,2].
いる[1,2]。
このX線発生装置は,逆コンプトン散
この X 線発生装置は,逆コンプトン散乱に
乱により発生するX線の角度依存性をも
より発生する X 線の角度依存性をもつためエ
つためエネルギー広がりの極めて小さい
ネルギー広がりの極めて小さい準単色性
X線
準単色性X線を取り出せることから,血
管造影といった医療診断技術の発展に大
を取り出せることから,血管造影といった医
きな期待が寄せられている。
療診断技術の発展に大きな期待が寄せられて
いる.
2.研究方法
システムは電子ライナックのダウンサ
図 1:X-band マルチバンチ電子ライナック
図1:X-bandマルチバンチ電子ライナック
2. イジングを実現させるため,加速周波数
研究方法
にX-band(11.424 GHz)
を採用している。また,
生成X線の単位時間当りの強度を確保するために,
システムは電子ライナックのダウンサイジングを実現させるため,加速周波数に
マルチバンチ電子ビームとロングパルスレーザーによる多重散乱スキームを採用している。そ
X-band(11.424
GHz)を採用している.また,生成 X 線の単位時間当りの強度を確保するために,
のため,電子ビーム源にはX-band熱陰極RFガンを採用している。図1に電子ライナック全体の
イメージ図を示す。これまでに東京大学キャパス内において加速器の設置が完了し,電子ビー
マルチバンチ電子ビームとロングパルスレーザーによる多重散乱スキームを採用している.その
ムの生成・加速試験が行われている。秋田高専坂本研究室では,加速器内における電子ビーム
ため,電子ビーム源には
X-band 熱陰極 RF ガンを採用している.図 1 に電子ライナック全体の
の挙動をコンピュータシミュレーションにより解析およびシステム全体の高度化の検討を実施
イメージ図を示す.これまでに東京大学キャパス内において加速器の設置が完了し,電子ビーム
している。特に,X-band加速空洞は世界的にも前例がなく,電磁場とビームの相互作用や電磁
の生成・加速試験が行われている.秋田高専坂本研究室では,加速器内における電子ビームの挙
石によるビーム輸送においても解決すべき課題が山積しているため,シミュレーションによる
解析は非常に重要となっている。本研究室では,電子の電磁場中における運動方程式を,ルン
動をコンピュータシミュレーションにより解析およびシステム全体の高度化の検討を実施してい
ゲクッタ法により4次元で運動解析を実施している。
る.特に,X-band 加速空洞は世界的にも前例がなく,電磁場とビームの相互作用や電磁石による
ビーム輸送においても解決すべき課題が山積しているため,シミュレーションによる解析は非常
3.おわりに
現在は,熱陰極高周波電子銃からのマルチバンチ電子ビームを高品質化するため,アルファ
に重要となっている.本研究室では,電子の電磁場中における運動方程式を,ルンゲクッタ法に
マグネットによる電子ビーム圧縮と輸送の高効率化の検討を進めている。実験結果との比較を
より
3 次元で運動解析を実施している.
実施し,小型X線源の実現を目指していく。
3. 参考文献
おわりに
[1] K. Dobashi, et al.,“Status of 11.424 GHz X-band Linac in UTNS”, Proc. of 8h Annual
現在は,熱陰極高周波電子銃からのマルチバンチ電子ビームを高品質化するため,アルファマ
Meeting of Particle Accelerator Society of Japan, Tsukuba, Aug. 1-3, 2011
グネットによる電子ビーム圧縮と輸送の高効率化の検討を進めている.実験結果との比較を実施
[2] F. Sakamoto, et al.,“Compton scattering monochromatic X-ray source based on X-band
し,小型
X 線源の実現を目指していく.
multi-bunch
linac at the University of Tokyo”, Nucl. Inst. and Meth. A, 608(2009)
参考文献
S36-S40
[1] K. Dobashi, et al., “Status of 11.424 GHz X-band Linac in UTNS”, Proc. of 8h Annual Meeting of
Particle Accelerator Society of Japan, Tsukuba, Aug. 1-3, 2011
[2] F. Sakamoto, et al., “Compton scattering monochromatic X-ray source based on X-band
multi-bunch linac at the University of Tokyo”, Nucl. Inst. and Meth. A, 608 (2009) S36-S40
― 45 ―
研究紹介
研究紹介
研究テーマ
若者ことばの分析と通時的変化
若者ことばの分析と通時的変化
人文科学系
桑 本 裕 二
研 1.はじめに
究者名
人文科学系 桑本 裕二
研 究 紹 介
「若者ことば」と一般に言われ、若年層の言葉遣いとして時に批判の対象になる語彙や言い回し
1.はじめに
について、言語学的に、特に音韻論的、形態論的、意味論・語彙論的側面などから分析すると、
「若者ことば」と一般に言われ、若年層の言葉遣いとして時に批判の対象になる語彙や言い回
そこに表れる特徴や豊富な表現力について知ることができる。筆者は、これに基づき、2010 年に
しについて、言語学的に、特に音韻論的、形態論的、意味論・語彙論的側面などから分析すると、
『若者ことば 不思議のヒミツ』(秋田魁新報社)と題する著作を発表した。
そこに表れる特徴や豊富な表現力について知ることができる。筆者は、これに基づき、2010年
に『若者ことば 不思議のヒミツ』
(秋田魁新報社)と題する著作を発表した。
2.研究方法
本研究は、筆者の経験を含んだここ 30 年にわたる若者ことばの分析に基づく。高年齢層には
2.研究方法
「意味がわからない」「耳障りだ」と言われる理由として、若者ことばの語彙の特徴を次の 4 種類に分
本研究は、筆者の経験を含んだここ30年にわたる若者ことばの分析に基づく。高年齢層には
類した。
「意味がわからない」
「耳障りだ」と言われる理由として、若者ことばの語彙の特徴を次の4種類
に分類した。
①
曖昧な語彙の意味
① 曖昧な語彙の意味
②
過度な省略
② 過度な省略
③
アルファベットや英語の使用
③ アルファベットや英語の使用
④
過度な分類
④ 過度な分類
現在流用されている若者ことばのほとんどはこれらの項目の少なくとも 1 つは特徴としている。そして、
現在流用されている若者ことばのほとんどはこれらの項目の少なくとも1つは特徴としている。
若者ことばがどこから来て定着したかについては、漫画やテレビ、最近ではインターネットを媒介と
そして、若者ことばがどこから来て定着したかについては、漫画やテレビ、最近ではインター
しており、それらの流行とともに広まったということを実例とともに挙げている。さらに、ある特定の語
ネットを媒介としており、それらの流行とともに広まったということを実例とともに挙げてい
彙、あるいは語義が時代とともにどのように移り変わったのかを例証、最後に将来の若者ことばの予
る。さらに、ある特定の語彙、あるいは語義が時代とともにどのように移り変わったのかを例証、
測で本書は締めくくられる。
最後に将来の若者ことばの予測で本書は締めくくられる。
たとえば、冒頭で「草食系男子」ということばを取り上げたが、およそ次のように分析可能である。
たとえば、冒頭で「草食系男子」ということばを取り上げたが、およそ次のように分析可能
である。
3.結論
3.結論
本研究の成果として発表した著作は、新書判の形で出版されたものであり、基本的には一般
本研究の成果として発表した著作は、新書判の形で出版されたものであり、基本的には一般向
向けの体裁をとり、表現などが過度に専門的にならないように配慮しているが、現代日本語の
けの体裁をとり、表現などが過度に専門的にならないように配慮しているが、現代日本語の世相語
世相語研究または社会言語学研究に対しては、研究書として十分に耐えうる内容となっている。
研究または社会言語学研究に対しては、研究書として十分に耐えうる内容となっている。ちなみに、
ちなみに、出版物としての本書は2010年7月の発行のあと、2011年12月第2刷が増刷された。
出版物としての本書は 2010 年 7 月の発行のあと、2011 年 12 月第 2 刷が増刷された。
― 46 ―
様式4
研究紹介
研究紹介
研究テーマ
研究者名
進化的多目的最適化手法による環境計画支援システム
進化的多目的最適化手法による環境計画支援システム
環境都市工学科 井上 誠
環境都市工学科 井上 誠
多数目的問題に対する解決も新たな試みも視野に入れている.
う多数目的問題に対する解決も新たな試みも視野に入れている。
2.研究方法
2.研究方法
環境計画支援システムの空間生成アルゴリズムと成長ルールの調整によって計画空間と計画範
環境計画支援システムの空間生成アルゴリズムと成長ルールの調整によって計画空間と計画
囲の形状を実務的なものに適応させる.また 3 次元空間の計画に対応するため,計画空間の定義
範囲の形状を実務的なものに適応させる。また3次元空間の計画に対応するため,計画空間の定
に用いる行列を 3 次元とする.提案アルゴリズムの素性検討のために数学的検討及び PC による全
義に用いる行列を3次元とする。提案アルゴリズムの素性検討のために数学的検討及びPCによ
数検索などのアプローチを試みる.
る全数検索などのアプローチを試みる。
多 数 目 的 問 題 に対 する進 化 的 多 目 的 最 適 化 への研 究 を進 めるために提 案 手 法 を幾 つかの
多数目的問題に対する進化的多目的最適化への研究を進めるために提案手法を幾つかのEMO
EMO アルゴリズムに導入し計算実験を行うことでその特性を明らかにする.評価には EMO で用い
アルゴリズムに導入し計算実験を行うことでその特性を明らかにする。評価にはEMOで用いら
られる解の収束性と多様性に関する指標を用いる.対話型システムの研究では多数目的に対する
れる解の収束性と多様性に関する指標を用いる。対話型システムの研究では多数目的に対する
有用性や対話型 EMO システムとするための組合せ方法の検討のために,被験者あるいは擬似人
有用性や対話型EMOシステムとするための組合せ方法の検討のために,被験者あるいは擬似人
間による実験によって提案手法の特性を調べる.
間による実験によって提案手法の特性を調べる。
3.結果と意義
3.結果と意義
提案の空間生成アルゴリズムは,建築だけでなく大規模集積回路から敷地計画までの 2 次元及
提案の空間生成アルゴリズムは,建築だけでなく大規模集積回路から敷地計画までの2次元及
び 3 次元空間の計画支援が期待できる仕組みである.それは実用的な空間形状で,計画範囲の
び3次元空間の計画支援が期待できる仕組みである。それは実用的な空間形状で,計画範囲の隙
隙間を少なく計画できる.また遺伝子コーディングにも工夫をしており,変数次元をあまり大きくする
間を少なく計画できる。また遺伝子コーディングにも工夫をしており,変数次元をあまり大き
必要がなく,探索空間も実用的な範囲に収めることができる.
くする必要がなく,探索空間も実用的な範囲に収めることができる。
提案の少数目的組合せによる進化的多目的最適化手法はパレート・アプローチの有無を問わ
提案の少数目的組合せによる進化的多目的最適化手法はパレート・アプローチの有無を問わ
ず EMO に応用でき,タスクにも依存せず,組合せ目的数を変えることで解の収束性と多様性のバ
ずEMOに応用でき,タスクにも依存せず,組合せ目的数を変えることで解の収束性と多様性の
ランスを調整できることが特色である.多数目的問題に対して従来手法よりも解の進行が期待され
バランスを調整できることが特色である。多数目的問題に対して従来手法よりも解の進行が期
る.工学や産業分野での現実的な問題に対する EMO 利用が期待できる.
待される。工学や産業分野での現実的な問題に対するEMO利用が期待できる。
図
2 環境計画支援システムによる住戸プラン
図2 環境計画支援システムによる住戸プラン
図図1 環境計画支援システム構成概念
1 環境計画支援システム構成概念
― 47 ―
研 究 紹 介
1.はじめに
1.はじめに
建築等の実務において利用可能な空間のフロア形状を計画範囲に隙間なくプラン作成できる
建築等の実務において利用可能な空間のフロア形状を計画範囲に隙間なくプラン作成できるこ
こと,そのプランを多数目的に対して最適化し計画できることに新規性・有用性がある。外構
と,そのプランを多数目的に対して最適化し計画できることに新規性・有用性がある.外構をも含む
をも含む建築全体を計画する環境計画まで対応させる。環境計画や工学応用分野では最適化す
建築全体を計画する環境計画まで対応させる.環境計画や工学応用分野では最適化すべき目的
べき目的は“多数”に及ぶことが多く,進化的多目的最適化の性能が著しく悪くなることが指
は“多数”に及ぶことが多く,進化的多目的最適化の性能が著しく悪くなることが指摘されている.
摘されている。
予め設定した定量的目的だけでなくユーザの好みや経験的見地を含む定性的な目的を進化的
予め設定した定量的目的だけでなくユーザの好みや経験的見地を含む定性的な目的を進化的
計算へ算入するための対話型システムも導入する.この対話型システムで解空間の限定等を行う
計算へ算入するための対話型システムも導入する。この対話型システムで解空間の限定等を行
1.はじめに
ピロティ建物とは、建物の 1 階部分を、壁がほとんどない柱のみの開放的な空間(ピロティ階)で
研究紹介
構成した建築物の事である。ピロティ建物は、集合住宅の1階を駐車場として、あるいは商業ビル
の 1 階を開放的な公共空間として利用するのに適していることから、社会的にも強く望まれている
形式である。また、東日本大震災後の被害調査の結果、津波に比較的強い構造形式であるとの
研究テーマ
ピロティ階を有する建築物の耐震性能の評価
報告もなされている。
研 究 紹 介
一方、耐震性の面から考えると、残念ながら必ずしも適した構造とは言えない。一般的に建築物
研究
者名
環境都市工学科 寺本 尚史
は、各階にバランス良く壁やブレースなどの耐震要素を配置する事により、地震に強い建物となる
1.はじめに
が、ピロティ建物の場合、他の階よりも壁の少ないピロティ階が耐震上の弱点となり、被害が集中し
ピロティ建物とは,建物の1階部分を,壁がほとんどない柱のみの開放的な空間(ピロティ階)
て生じる恐れがある。そのため、特にピロティ建物に多くの被害が生じた1995年の兵庫県南部地
で構成した建築物の事である。ピロティ建物は,集合住宅の1階を駐車場として,あるいは商
震以降、日本では耐震設計上避けるべき構造形式として認識されてきた。
業ビルの1階を開放的な公共空間として利用するのに適していることから,社会的にも強く望ま
本研究は、鉄筋コンクリート造(RC 造)ピロティ建物の耐震性能を実験等により詳細に評価し、耐
れている形式である。また,東日本大震災後の被害調査の結果,津波に比較的強い構造形式で
震 性 の高い建 物 にするための手 法 を確 立 すること
あるとの報告もなされている。
層崩壊
全体曲げ
を最終的な目的としている。
一方,耐震性の面から考えると,残念ながら必
ずしも適した構造とは言えない。一般的に建築物
2.研究概要
は,各階にバランス良く壁やブレースなどの耐震
ピロティ建物の地震時における被害として一般的
要素を配置する事により,
地震に強い建物となる。
柱の軸方向
に見られるのが、図1(a)に示す形の損傷形態である。
への変形
しかしピロティ建物の場合,他の階よりも壁の少
いわゆる「層 崩壊形」と呼ばれるもので、ピロティ階
ないピロティ階が耐震上の弱点となり,被害が集
の柱の上下 端、あるいは中央部が損 傷し、最終 的
中して生じる恐れがある。
そのため,
特にピロティ
に層崩壊に至る場合もある。一方、図1(b)に示すよ
建物に多くの被害が生じた1995年の兵庫県南部地
うに、柱が軸(上下)方向に変形・損傷する形態とし
柱頭柱脚の
震以降,日本では耐震設計上避けるべき構造形式
損傷
た場合、ピロティ階に損傷が集中することなく、しか
として認識されてきた。
(a)
(b)
も建物全体として地震に対する粘り強さも期待でき
本研究は,
鉄筋コンクリート造(RC造)ピロティ
図 1 ピロティ建物の損傷形態
る。この損傷形態は、建物全体の曲げ挙動が卓越
建物の耐震性能を実験等により詳細に評価し,耐
震性の高い建物にするための手法を確立すること
することから、「全体曲げ形」と呼ばれている。
を最終的な目的としている。
耐震性 能が高いと考えられるのは、全体曲げ形
の方である。実際にこれまで行ってきた研究により、
2.研究概要
その耐震性能の高さが明らかになってきた。一例と
ピロティ建物の地震時における被害として一般
して、図 2 に擬似的に地震時の挙動を考慮した実
的に見られるのが,図1(a)に示す形の損傷形
験における、層 崩壊 形、全 体曲げ形 それぞれのピ
態である。いわゆる
「層崩壊形」
と呼ばれるもので,
ロティ階の柱の損傷状況を示す。両者を比較すると、
ピロティ階の柱の上下端,あるいは中央部が損傷
全体曲げ形の方が明らかに損傷が少ないことがわ
し,最終的に層崩壊に至る場合もある。一方,図
かる。また、ピロティ階への損傷集中も、層崩壊形と
1
(b)に示すように,
柱が軸(上下)方向に変形・
(a)層崩壊形
(b)全体曲げ形
比べて全体曲げ形の方が軽減されることも明らかに
損傷する形態とした場合,ピロティ階に損傷が集
図 2 ピロティ階の柱の損傷状況
中することなく,しかも建物全体として地震に対
なった。
(柱を横から見た場合のひび割れ分布図)
する粘り強さも期待できる。この損傷形態は,建
3.結言
物全体の曲げ挙動が卓越することから,
「全体曲げ形」と呼ばれている。
これらの結果から、ピロティ建物が地震時に全体曲げ形となるよう設計するのが耐震性能の向上
耐震性能が高いと考えられるのは,全体曲げ形の方である。実際にこれまで行ってきた研究
に非常に有効であることが明らかになった。今後は、全体曲げ形となるピロティ建物の設計上の問
により,その耐震性能の高さが明らかになってきた。一例として,図2に擬似的に地震時の挙動
題点の検証を行い、併せて追加実験や解析により全体曲げのピロティ建物における耐震性能を明
を考慮した実験における,層崩壊形,全体曲げ形それぞれのピロティ階の柱の損傷状況を示す。
らかにすることにより、実建物レベルでの効率的な設計手法を確立することが目標である。
両者を比較すると,全体曲げ形の方が明らかに損傷が少ないことがわかる。また,ピロティ階
への損傷集中も,層崩壊形と比べて全体曲げ形の方が軽減されることも明らかになった。
3.結言
これらの結果から,ピロティ建物が地震時に全体曲げ形となるよう設計するのが耐震性能の向
上に非常に有効であることが明らかになった。今後は,全体曲げ形となるピロティ建物の設計上
の問題点の検証を行い,併せて追加実験や解析により全体曲げのピロティ建物における耐震性能
を明らかにすることにより,実建物レベルでの効率的な設計手法を確立することが目標である。
― 48 ―
様式4
研究紹介
研究紹介
ミクロ交通シミュレーションのための希望走行速度に関する研究
研究テーマ
ミクロ交通シミュレーションのための希望走行速度に関する研究
環境都市工学科 松尾 幸二郎
研究者名
環境都市工学科 松尾幸二郎
った。その大きな理由は、実際の道路交通においてドライバーは追従走行している場合がほとんど
まで十分に分析されてこなかった。その大きな理由は,実際の道路交通においてドライバーは
追従走行している場合がほとんどであり,希望走行速度が観測できないということである。そ
であり、希望走行速度が観測できないということである。そこで本研究では、1)希望走行速度の推
こで本研究では,1)希望走行速度の推定方法を提案すること,2)希望走行速度と道路条件と
定方法を提案すること、2)希望走行速度と道路条件との関係を定量的に明らかにすることを目的と
の関係を定量的に明らかにすることを目的としている。
している。
2.研究方法
2.研究方法
個々のドライバーの希望走行速度を完全に把握することはできないので,まずはその平均値
個々のドライバーの希望走行速度を完全に把握することはできないので、まずはその平均値を
を研究対象としている。実際のドライバーの多くが追従走行により希望走行速度で走行できて
研究対象としている。実際のドライバーの多くが追従走行により希望走行速度で走行できていない
いないため,観測された速度の平均値を取ると,真の希望走行速度の平均値よりも低くなって
ため、観測された速度の平均値を取ると、真の希望走行速度の平均値よりも低くなってしまう(図 1
しまう(図1の観測平均速度参照)
。そこで本研究では,
「①追従走行していない車両の観測速度
の観測平均速度参照)。そこで本研究では、「①追従走行していない車両の観測速度  希望走行
_希望走行速度」という仮定を置き,
=希望走行速度」
,
「②追従走行している車両の観測速度 <
速度」、「②追従走行している車両の観測速度  希望走行速度」という仮定を置き、このような情報
このような情報から平均値を推定できるトービットモデルを応用して,希望走行速度の平均値
から平均値を推定できるトービットモデルを応用して、希望走行速度の平均値の推定を行う。
の推定を行う。
20%
10%
誤差率
3.おわりに
3.おわりに
まずは簡 易 的 なミクロ交 通 シミュレ
まずは簡易的なミクロ交通シミュ
ーションを用いて上述した推定方法
レーションを用いて上述した推定方
の妥当性を検討した。具体的には、
法の妥当性を検討した。具体的には,
あらかじめ設定した希望走行速度の
あらかじめ設定した希望走行速度の
って希
望走
走行
行速
速度
確確率率分分布布にに従
従っ
て希望
度を
を
与えた車両を発生させ、追従走行し
与えた車両を発生させ,追従走行し
0%
-10%
-20%
-30%
推定平均速度(km/h)
観測平均速度(km/h)
ている状態で速度を観測し、希望走
ている状態で速度を観測し,希望走
-40%
行速度の平均値を推定した。あらか
行速度の平均値を推定した。あらか
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
じめ設定した平均値と推定した平均
追従車割合
じめ設定した平均値と推定した平均
値との誤差を分析したところ,80%
値との誤差を分析したところ、80%程
図 1 提案した推定方法による推定誤
図1 提案した推定方法による推定誤差と追従車
程度の追従車が存在していても精度
割合との関係
度の追従車が存在していても精度の良い推定
差と追従車割合との関係
の良い推定ができることが明らかと
ができることが明らかとなった(図 1 の推定平均
なった(図1の推定平均速度参照)
。さらに,愛知県豊橋市内の道路36地点を対象として実際の
速度参照)。さらに、愛知県豊橋市内の道路
36 地点を対象として実際の車両速度を観測し、上述
車両速度を観測し,上述の推定方法を用いて,道路幅員と希望走行速度の平均値との関係を定
の推定方法を用いて、道路幅員と希望走行速度の平均値との関係を定量的に明らかにした。
量的に明らかにした。
今後は、規制速度等の他の道路条件や地域性と希望走行速度との関係の分析を進めていく。ま
今後は,規制速度等の他の道路条件や地域性と希望走行速度との関係の分析を進めていく。
た、希望走行速度の平均値だけでなく分散等と道路条件との関係も明らかにする予定である。
また,希望走行速度の平均値だけでなく分散等と道路条件との関係も明らかにする予定である。
― 49 ―
研 究 紹 介
1.はじめに
1.はじめに
道路交通において、渋滞対策や交通安全対策等の道路交通施策を実施する際には、その効
道路交通において,渋滞対策や交通安全対策等の道路交通施策を実施する際には,その効果
果や周辺への影響の程度を事前に評価することが重要となっている。そこで近年、車両や歩行者
や周辺への影響の程度を事前に評価することが重要となっている。そこで近年,車両や歩行者
など交通主体個々の動きを再現するミクロ交通シミュレーションが盛んに開発されている。ミクロ交
など交通主体個々の動きを再現するミクロ交通シミュレーションが盛んに開発されている。ミ
通シミュレーションでは個々の交通主体に種々のパラメータが設定されるが、その 1 つに「希望走行
クロ交通シミュレーションでは個々の交通主体に種々のパラメータが設定されるが,その1つ
速度」がある。希望走行速度とは、「実際の道路条件のもとで、他の交通の影響を受けない状態で
に「希望走行速度」がある。希望走行速度とは,
「実際の道路条件のもとで,他の交通の影響を
ドライバーが選ぶ速度」のことであり、簡潔に言えば、前方に車両や歩行者等がいない状態でドライ
受けない状態でドライバーが選ぶ速度」のことであり,簡潔に言えば,前方に車両や歩行者等
バーが走りたいと考える速度である。適切なパラメータ設定のためには、道路幅員等の種々の道路
がいない状態でドライバーが走りたいと考える速度である。適切なパラメータ設定のためには,
条件と希望走行速度との関係を明らかにしておく必要があるが、これまで十分に分析されてこなか
道路幅員等の種々の道路条件と希望走行速度との関係を明らかにしておく必要があるが,これ
電磁波の再放射を利用する高周波誘電率測定法
様式4
様式4
研究紹介
様式4
電気情報工学科
駒木根 隆士
研究紹介
研究紹介
研究紹介
1.はじめに
研究テーマ
電磁波の再放射を利用する高周波誘電率測定法
電気電子情報機器の動作周波数が高くなるにつれ,使用する部品材料の高周波特性はますま
Normalized
amplitude
Normalized
amplitude
Normalized
amplitude
Normalized amplitude
研 究 紹 介
電磁波の再放射を利用する高周波誘電率測定法
電磁波の再放射を利用する高周波誘電率測定法
す重要となり,その迅速な評価が求められている。誘電体は,配線基板,コンデンサ,絶縁材料な
研究者名
電気情報工学科 駒木根隆士
電磁波の再放射を利用する高周波誘電率測定法
どに用いる基本的材料であり,誘電率や誘電損失は高周波特性を支配する要素である。このため,
電気情報工学科 駒木根
駒木根 隆士
隆士
電気情報工学科
電気情報工学科 駒木根 隆士
1.はじめに
様々な特徴をもつ測定法が考案・実用化されている。本研究では,極めて簡便かつ迅速な誘電率
電気電子情報機器の動作周波数が高くなるにつれ,使用する部品材料の高周波特性はますま
測定法を開発している。
1.はじめに
1.はじめに
す重要となり,その迅速な評価が求められている。誘電体は,配線基板,コンデンサ,絶縁材
1.はじめに
電気電子情報機器の動作周波数が高くなるにつれ,使用する部品材料の高周波特性はますま
電気電子情報機器の動作周波数が高くなるにつれ,使用する部品材料の高周波特性はますま
料などに用いる基本的材料であり,誘電率や誘電損失は高周波特性を支配する要素である。こ
電気電子情報機器の動作周波数が高くなるにつれ,使用する部品材料の高周波特性はますま
2.誘電率測定法
す重要となり,その迅速な評価が求められている。誘電体は,配線基板,コンデンサ,絶縁材料な
す重要となり,その迅速な評価が求められている。誘電体は,配線基板,コンデンサ,絶縁材料な
のため,様々な特徴をもつ測定法が考案・実用化されている。本研究では,極めて簡便かつ迅
す重要となり,その迅速な評価が求められている。誘電体は,配線基板,コンデンサ,絶縁材料な
直径
a の球形の誘電体試料に十分に長い波長  (>10a)の高周波電界が加わると,誘電体中に
速な誘電率測定法を開発している。
どに用いる基本的材料であり,誘電率や誘電損失は高周波特性を支配する要素である。このため,
どに用いる基本的材料であり,誘電率や誘電損失は高周波特性を支配する要素である。このため,
どに用いる基本的材料であり,誘電率や誘電損失は高周波特性を支配する要素である。このため,
は電界方向に分極を生じ,その極性が交番して変化する変位電流が流れ,電流の変化により電
様々な特徴をもつ測定法が考案・実用化されている。本研究では,極めて簡便かつ迅速な誘電率
様々な特徴をもつ測定法が考案・実用化されている。本研究では,極めて簡便かつ迅速な誘電率
様々な特徴をもつ測定法が考案・実用化されている。本研究では,極めて簡便かつ迅速な誘電率
磁波が再放射される。この再放射波がつくる電界の強さは次式のように求められた[1]。
2.誘電率測定法
測定法を開発している。
測定法を開発している。
2
測定法を開発している。
   1  2  3 E S
λ(>20a)
aの球形の誘電体試料に十分に長い波長
半径
8
(1)

E RCV   r
 a
r
の高周波電界が加わると,誘電体中には電界方向に分
7
  r  2   
2.誘電率測定法
2.誘電率測定法
2.誘電率測定法
極を生じ,その極性が交番して変化する変位電流が流
ここで,r は比誘電率,E S は試料に加わる電界強度,r は再
6
直径 aaの球形の誘電体試料に十分に長い波長
の球形の誘電体試料に十分に長い波長(>10a)の高周波電界が加わると,誘電体中に
(>10a)の高周波電界が加わると,誘電体中に
直径
れ,電流の変化により電磁波が再放射される。この再
直径
a
の球形の誘電体試料に十分に長い波長

(>10a)の高周波電界が加わると,誘電体中に
5
放 射 波を受 信 するアンテナとの距 離である。さらに,球 の体
は電界方向に分極を生じ,その極性が交番して変化する変位電流が流れ,電流の変化により電
は電界方向に分極を生じ,その極性が交番して変化する変位電流が流れ,電流の変化により電
放射波がつくる電界の強さは次式のように求められた
3
は電界方向に分極を生じ,その極性が交番して変化する変位電流が流れ,電流の変化により電
4
積 V=4 a /3 を用いて式を変形すると,次式が得られる。
磁波が再放射される。この再放射波がつくる電界の強さは次式のように求められた[1]。
磁波が再放射される。この再放射波がつくる電界の強さは次式のように求められた[1]。
[1]。
2
磁波が再放射される。この再放射波がつくる電界の強さは次式のように求められた[1]。
3
  r  1  22
E RCV  r

3r r 
1122
 2S 33 EESS (2) (1)
88
2
(1)
E S EERCV
V r r122 aa 3 E S
8
(1)

ERCV
a
rr
RCV r r 22
  
77
1



r
2

7
 r

左辺の値は,再放射波の電界強度
E RCV の測定値と測定
Eは試料に加わる電界強度,r
ここで,
は比誘電率,
rは比誘電率,E
は再 0 66
ここで,rrεは比誘電率,E
ここで,
S は試料に加わる電界強度 は再
SS は試料に加わる電界強度,r
ここで,r は比誘電率,E S は試料に加わる電界強度,r
システムの設定値で与えられ,その結果,分極率
 S が求まる。は再 0 56 200 400 600 800 1000
rは再放射波を受信するアンテナとの距離である。さら
5
放射
射波を受
波を受信
信するアンテナとの距
するアンテナとの距離である。さらに,球
離である。さらに,球
の体
放
の体
5 {( r -1)/( r +2)}ɑ 3 [mm3]
放 射 波を受
信 するアンテナとの距
離である。さらに,球 の体
3/3を用いて式を変形すると,次式
したがって比誘電率
πraは次式の関係から得られる。
33
に,球の体積V=4
4
4
/3
を用いて式を変形すると,次式が得られる。
積 V=4
V=4aa /3
を用いて式を変形すると,次式が得られる。
積
3
4
を用いて式を変形すると,次式が得られる。
積 V=4
3 a2/3
9
図 133 分極と再放射電界の関係
が得られる。
図1 分極と再放射電界の関係
22S
(3)




1
 r  EERCV


2
r

  rr  1 
 r2
3
(2)
(2)
E3RCV
 S r3333r S 1SS
RCV
22
(2)
V


2
EESS V


2
S
2
E S V  r rr  2
被測定試料
電波吸収材
図 1 は,式(2)の線形性を調べた実験結果であり,
r および
11
(サイズa)
の測定値と測定
左辺の値は,再放射波の電界強度 EERCV
左辺の値は,再放射波の電界強度
RCV の測定値と測定
1
ERCVの測定値と測定
左辺の値は,再放射波の電界強度
E RCV の測定値と測定
a 左辺の値は,再放射波の電界強度
の異なる試料に対する分極が再放射波受信電圧と比例し
00
距
離
システムの設定値で与えられ,その結果,分極率
が求まる。
0
システムの設定値で与えられ,その結果,分極率
SS が求まる。
r
200
400
600
800 1000
1000
α Sが求ま
システムの設定値で与えられ,その結果,分極率
00
200
400
600
800
システムの設定値で与えられ,その結果,分極率
 S が求まる。
3
33
 は 300 mm,試料直
ている関係が確認された。ここで,波長
0
200
400
600
800
1000


{(
-1)/(
+2)}
[mm
ɑɑ3 3[mm


{(
-1)/(
+2)}
]3]
r
r
r
r

は次式の関係から得られる。
したがって比誘電率

は次式の関係から得られる。
したがって比誘電率
r
r
再
る。したがって比誘電率
{( r -1)/(放r +2)}ɑ [mm ]
したがって比誘電率
εrrは次式の関係から得られる。
は次式の関係から得られる。
射
径aは
10 および 20 mm,試料の誘電率
 r は 2.0,9.7,およ
波
3322
図11 分極と再放射電界の関係
分極と再放射電界の関係
99
図
(3)
9 22
(3)
図 1 規定電界E
分極と再放射電界の関係
r r  3  2SSS 
ERCV
び∞である。構築した測定システムでは比誘電率
9.7
のアル
(3)
 r  33SS 33SS  2
例:0.1V/m
高周波


3

3

S
S
ミナ球を基準に校正して,テフロン球の比誘電率
2.0 を精度
発振器
被測定試料
被測定試料
電波吸収材
電波吸収材
図1は,式(2)の線形性を調べた実験結果であり,
図11は,式(2)の線形性を調べた実験結果であり,
は,式(2)の線形性を調べた実験結果であり,rrおよび
および
図
高周波
(サイズa)
被測定試料
波長λm
(サイズa)
電波吸収材
図
1
は,式(2)の線形性を調べた実験結果であり,

および
電圧計
r
(サイズa)
2%で推定できている。システム例を図
2
に示す。
ε r および
aの異なる試料に対する分極が再放射波受信電
の異なる試料に対する分極が再放射波受信電圧と比例し
aa の異なる試料に対する分極が再放射波受信電圧と比例し
距距離
離 r
a の異なる試料に対する分極が再放射波受信電圧と比例し
距
図2 測定システム例
図
2
測定システム例
r
λは
圧と比例している関係が確認された。ここで,波長
離
r
は 300
300 mm,試料直
mm,試料直
ている関係が確認された。ここで,波長は
ている関係が確認された。ここで,波長

は
300
mm,試料直
ている関係が確認された。ここで,波長
再
再 放
3.むすび
300mm,試料直径2aは10および20mm,試料の誘電率εr
放
再 射射
径 aa は
は 10
10 および
および 20
20 mm,試料の誘電率
mm,試料の誘電率 rは
は 2.0,9.7,およ
2.0,9.7,およ
径
放 波波
射
径 a は 10 および 20 mm,試料の誘電率 r r は 2.0,9.7,およ
は2.0,9.7,および∞である。構築した測定システムでは比誘電率9.7のアルミナ球を基準に校正
波
高周波に対する誘電率の様々な評価法が考案されているがそれぞれの方法には長短がある。
規定電界E
規定電界E
び∞である。構築した測定システムでは比誘電率
9.7
のアル
EERCV
び∞である。構築した測定システムでは比誘電率 9.7 のアル
RCV
例:0.1V/m
例:0.1V/m
規定電界E
ERCV
び∞である。構築した測定システムでは比誘電率
9.7
のアル
して,テフロン球の比誘電率2.0を精度2%で推定できている。システム例を図2に示す。
本研究で提案する電磁波の再放射を利用する方法は,高周波電界中の誘電体からの再放射波
高周波
例:0.1V/m
高周波
ミナ球を基準に校正して,テフロン球の比誘電率 2.0
2.0 を精度
を精度 発振器
発振器
ミナ球を基準に校正して,テフロン球の比誘電率
高周波
ミナ球を基準に校正して,テフロン球の比誘電率 2.0 を精度 波長λm
発振器
高周波
高周波
波長λm
強度と比誘電率の一意の関係を利用し,既知の高周波放射電界中に置いた誘電体試料の散乱
電圧計
電圧計
高周波
2%で推定できている。システム例を図
2
に示す。
波長λm
2%で推定できている。システム例を図
2
に示す。
電圧計
3.むすび
2%で推定できている。システム例を図 2 に示す。
波電界を計測してその誘電率を非接触で簡便に推定できる。本法では,試料の寸法が信号波長
図22 測定システム例
測定システム例
図
高周波に対する誘電率の様々な評価法が考案されているがそれぞれの方法には長短がある。
図 2 測定システム例
に対し小さくて良く,また分極を考慮すれば様々な試料形状に対応できる実用的な特徴を持つ。
3.むすび
3.むすび
本研究で提案する電磁波の再放射を利用する方法は,高周波電界中の誘電体からの再放射波強
3.むすび
高周波に対する誘電率の様々な評価法が考案されているがそれぞれの方法には長短がある。
度と比誘電率の一意の関係を利用し,既知の高周波放射電界中に置いた誘電体試料の散乱波電
高周波に対する誘電率の様々な評価法が考案されているがそれぞれの方法には長短がある。
高周波に対する誘電率の様々な評価法が考案されているがそれぞれの方法には長短がある。
参考文献
[1] T. Komakine, T. Kurosawa, K. Miyanaga H. and Inoue, “A Novel Estimation Method
界を計測してその誘電率を非接触で簡便に推定できる。本法では,試料の寸法が信号波長に対
本研究で提案する電磁波の再放射を利用する方法は,高周波電界中の誘電体からの再放射波
本研究で提案する電磁波の再放射を利用する方法は,高周波電界中の誘電体からの再放射波
本研究で提案する電磁波の再放射を利用する方法は,高周波電界中の誘電体からの再放射波
ofし小さくて良く,また分極を考慮すれば様々な試料形状に対応できる実用的な特徴を持つ。
Dielectric
Permittivity by using Scattered Waves”, IEEJ Trans. FM, vol.131, no.4 (2011).
強度と比誘電率の一意の関係を利用し,既知の高周波放射電界中に置いた誘電体試料の散乱
強度と比誘電率の一意の関係を利用し,既知の高周波放射電界中に置いた誘電体試料の散乱
強度と比誘電率の一意の関係を利用し,既知の高周波放射電界中に置いた誘電体試料の散乱
波電界を計測してその誘電率を非接触で簡便に推定できる。本法では,試料の寸法が信号波長
波電界を計測してその誘電率を非接触で簡便に推定できる。本法では,試料の寸法が信号波長
参 波電界を計測してその誘電率を非接触で簡便に推定できる。本法では,試料の寸法が信号波長
考 文 献 [1] T. Komakine, T. Kurosawa, K. Miyanaga and H. Inoue,“A Novel Estimation
に対し小さくて良く,また分極を考慮すれば様々な試料形状に対応できる実用的な特徴を持つ。
に対し小さくて良く,また分極を考慮すれば様々な試料形状に対応できる実用的な特徴を持つ。
に対し小さくて良く,また分極を考慮すれば様々な試料形状に対応できる実用的な特徴を持つ。
Method of Dielectric Permittivity by using Scattered Waves”
, IEEJ Trans. FM, vol.131, no.4(2011)
.
S
SS
S
参考文献 [1]
[1] T.
T. Komakine,
Komakine, T.
T. Kurosawa,
Kurosawa, K.
K. Miyanaga
Miyanaga H.
H. and
and Inoue,
Inoue, “A
“ANovel
Novel Estimation
Estimation Method
Method
参考文献
参考文献
[1] T. Komakine, T. Kurosawa, K. Miyanaga H. and Inoue, “A Novel Estimation Method
of Dielectric
Dielectric Permittivity
Permittivity by
by using
using Scattered
ScatteredWaves”,
Waves”,
IEEJTrans.
Trans. FM,
FM, vol.131,
vol.131, no.4
no.4 (2011).
(2011).
of
―
50 ― IEEJ
of Dielectric Permittivity by using Scattered Waves”, IEEJ Trans. FM, vol.131, no.4 (2011).
エネルギー粒子線照射による物質特性改質効果の理論
研究紹介
自然科学系 金田 保則
研究テーマ
エネルギー粒子線照射による物質特性改質効果の理論
1.はじめに
研究者名
自然科学系 金田 保則
高エネルギーイオンビーム照射が固体物性に及ぼす効果、とりわけ磁性体の特性変化に関して
象は最初SQUIDによるマクロな磁化測定により見出さ
最初 SQUID によるマクロな磁化測定により見出され、
れ,さらにSPring8の円偏光X線を用いた硬X線磁気円
さらに SPring8 の円偏光X線を用いた硬X線磁気円2
2色性(XMCD)の測定でも観測された。1:1合金であ
色性(XMCD)の測定でも観測された。1:1 合金である
るFe0.50Rh0.50に対する照射での低温でのXMCDのスペ
Fe0.50Rh0.50 に対する照射での低温での XMCD のスペク
クトル形状は,もともと低温で強磁性を示す鉄原子過
トル形状は、もともと低温で強磁性を示す鉄原子過剰の
剰の合金Fe
0.55Rh0.45のF相で得られるスペクトルと類似
合金 Fe0.55Rh0.45 の F 相で得られるスペクトルと類似で
であることが判明している。この結果は,イオン照射
により生じた格子系の乱れが,AF相を不安定化させた
あることが判明している。この結果は、イオン照射によ
ものと理解できるが,そのAF相不安定化を発現する機
り生じた格子系の乱れが、AF 相を不安定化させたもの
構の詳細は簡単には理解できない。
と理解できるが、その AF 相不安定化を発現する機構の
詳細は簡単には理解できない。
2.研究方法
ここではFeRhへの照射による磁気特性変化に関する理論的な解析として,照射により形成さ
2.研究方法
れる欠陥構造として,FeおよびRh原子のサイト交換を,第一段階としての欠陥構造モデルとし
ここでは FeRh への照射による磁気特性変化に関する理論的な解析として、照射により形成さ
て取り上げた(次ページ右上図)
。欠陥構造に由来する電子状態の変化を第一原理的な計算で求
め,強磁性相と反強磁性相,各相の磁気的エネルギーの比較や,欠陥付近の各原子に付随した
れる欠陥構造として、Fe および Rh 原子のサイト交換を、第一段階としての欠陥構造モデルとし
磁気モーメントの分布状況を,規則系のものと比較する。これにより,照射による磁気特性変
化についての電子論的な描像を得ようとするものである。
― 51 ―
研 究 紹 介
は、磁気保持力の低下などの照射によるダメージ・劣化を議論したものが多い。一般的に、材料
1.はじめに
高エネルギーイオンビーム照射が固体物性に及ぼす効果,とりわけ磁性体の特性変化に関し
に対するイオン照射では、時間・空間において確率論的な物質への作用が働いているとの考えが
ては,磁気保持力の低下などの照射によるダメージ・劣化を議論したものが多い。一般的に,
あり、この確率論から来る曖昧さ・不確定性が、物質の構造・特性変化に対する理解を曖昧なも
材料に対するイオン照射では,時間・空間において確率論的な物質への作用が働いているとの
のにし、照射された材料全体の平均的な特性が低下することのみを見ることにより、イオンビー
考えがあり,この確率論から来る曖昧さ・不確定性が,物質の構造・特性変化に対する理解を
ム照射は劣化・特性低下を与えるだけという、ネガティブなイメージが持たれている。
曖昧なものにし,照射された材料全体の平均的な特性が低下することのみを見ることにより,
実際に、イオン照射により原子配置の乱れが生じるが、そこに生じている乱れは熱力学的準安
イオンビーム照射は劣化
・特性低下を与えるだけという,ネガティブなイメージが持たれている。
定状態に相当し、基本的な点欠陥(原子空孔や格子間原子など)やその複合体・集合体として乱
実際に,イオン照射により原子配置の乱れが生じるが,そこに生じている乱れは熱力学的準
安定状態に相当し,基本的な点欠陥(原子空孔や格子間原子など)やその複合体・集合体とし
れを理解することは可能である。電子顕微鏡を用いた、実空間での原子配置・転位の観察はもち
て乱れを理解することは可能である。電子顕微鏡を用いた,実空間での原子配置・転位の観察
ろんのこと、純銅内の欠陥構造を熱的アニールによる電気抵抗の変化を通して欠陥構造の回復過
はもちろんのこと,純銅内の欠陥構造を熱的アニールによる電気抵抗の変化を通して欠陥構造
程として理解した例などは有名である。また、アルカリハライド結晶中の色中心は、可視領域の
の回復過程として理解した例などは有名である。また,アルカリハライド結晶中の色中心は,
波長の光を吸収する格子欠陥であるが、これに対する電子論的な理解、すなわち欠陥は電子・ホ
可視領域の波長の光を吸収する格子欠陥であるが,これに対する電子論的な理解,すなわち欠
ールの捕獲中心となり、この中心での電子の束縛励起状態が関与して特徴的な光の吸収が起こる、
陥は電子・ホールの捕獲中心となり,この中心での電子の束縛励起状態が関与して特徴的な光
という基本的な理解も行われている。一方、磁性と欠陥の関わりについては、非磁性金属中にお
の吸収が起こる,という基本的な理解も行われている。一方,磁性と欠陥の関わりについては,
ける磁性不純物の効果、いわゆる近藤効果が一つの有名な例としてあげられるが、磁性体に対す
非磁性金属中における磁性不純物の効果,いわゆる近藤効果が一つの有名な例としてあげられ
るが,磁性体に対する照射効果は先にあげたような特性劣化が,残念ながら主だった例でしか
る照射効果は先にあげたような特性劣化が、残念ながら主だった例でしかない。
ない。
ここで着目する FeRh 合金系では、イオン照射による磁性の変化について次の様な実験的観測
ここで着目するFeRh合金系では,イオン照射による磁性の変化について次の様な実験的観測
が行われてきた。規則合金 FeRh は B2 型の結晶構造を持ち、310K で反強磁性(AF)から強磁性(F)
が行われてきた。規則合金FeRhはB2型の結晶構造を持ち,310Kで反強磁性(AF)から強磁性
への磁気転移を示す(左図)。この合金に高エネルギー
(F)への磁気転移を示す(右図)
。この合金に高エネル
イオン照射を施すことにより、低温での
AF 相は不安定
ギーイオン照射を施すことにより,低温でのAF相は不
化し F 相が安定となる事が見出されている。この現象は
安定化しF相が安定となる事が見出されている。この現
て取り上げた(右図)。欠陥構造に由来する電子状態の変化を第一原理的な
計算にはProjector
Augmented Wave(PAW)法(VASPパッケー
計算で求め、強磁性相と反強磁性相、各相の磁気的エネルギーの比較や、
て取り上げた(右図)
。欠陥構造に由来する電子状態の変化を第一原理的な
ジによるもの)を用いた。ただし,用いた擬ポテンシャルに関して
欠陥付近の各原子に付随した磁気モーメントの分布状況を、規則系のもの
計算で求め、強磁性相と反強磁性相、各相の磁気的エネルギーの比較や、
の有効性は未検証であり今後の課題である。FLMTO法やFLAPW
と比較する。これにより、照射による磁気特性変化についての電子論的な
欠陥付近の各原子に付随した磁気モーメントの分布状況を、規則系のもの
法の様な全電子計算が望まれる。計算は密度汎関数法の範囲内のも
描像を得ようとするものである。
と比較する。これにより、照射による磁気特性変化についての電子論的な
のであり,電子相関交換相互作用に対しては,一般化密度勾配近似
計算には
Projector Augmented Wave (PAW)法(VASP パッケージによる
描像を得ようとするものである。
を用いた。また,計算では周期境界条件を用いており,スーパーセ
もの)を用いた。ただし、用いた擬ポテンシャルに関しての有効性は未検証
計算には
Projector Augmented Wave (PAW)法(VASP パッケージによる
ル内の原子数は16個である。今後,さらに大きなセルをとった計算
であり今後の課題である。FLMTO
法や FLAPW 法の様な全電子計算が望
が必要である。その他,詳細については紙面の都合上省略する。
もの)を用いた。ただし、用いた擬ポテンシャルに関しての有効性は未検証
研 究 紹 介
まれる。計算は密度汎関数法の範囲内のものであり、電子相関交換相互作
であり今後の課題である。FLMTO 法や FLAPW 法の様な全電子計算が望
3.結果と結論
用に対しては、一般化密度勾配近似を用いた。また、計算では周期境界条
まれる。計算は密度汎関数法の範囲内のものであり、電子相関交換相互作
計算結果をまとめたのが右の図である。横軸が格子定数,縦軸が
件を用いており、スーパーセル内の原子数は16個である。今後、さらに
用に対しては、一般化密度勾配近似を用いた。また、計算では周期境界条
FeRh 1ユニット当たりの(全)エネルギーで,NM, F, AF と書か
大きなセルをとった計算が必要である。その他、詳細については紙面の都
件を用いており、スーパーセル内の原子数は16個である。今後、さらに
れた実線がそれぞれ非磁性,強磁性,反強磁性状態でのエネルギー
合上省略する。
大きなセルをとった計算が必要である。その他、詳細については紙面の都
変化を示している。白抜きの四角および三角は,それぞれ反強磁性
状態に欠陥を導入したもの,強磁性状態に欠陥を導入したもので,
合上省略する。
欠陥を導入した場合強磁性相の方が安定化し
3.結果と結論
ているのがわかる。
計算結果をまとめたのが右の図である。
横軸が格子
3.結果と結論
計算結果を詳細に解析したところ,次の様
定数、縦軸が
FeRh 1 ユニット当たりの(全)エネル
計算結果をまとめたのが右の図である。
横軸が格子
な結果が得られた。サイト交換型欠陥の周囲
ギーで、NM,
F, FeRh
AF と書かれた実線がそれぞれ非磁
定数、縦軸が
1 ユニット当たりの(全)エネル
では,短距離のFeペアが存在するため,局所
性、強磁性、反強磁性状態でのエネルギー変化を示し
ギーで、NM,
F, AF と書かれた実線がそれぞれ非磁
的には強磁性的スピン配置が安定化しやすい。
ている。白抜きの四角および三角は、それぞれ反強磁
性、強磁性、反強磁性状態でのエネルギー変化を示し
しかし欠陥濃度が低い間は,強磁性的長距離
性状態に欠陥を導入したもの、
強磁性状態に欠陥を導
秩序を形成する前にFeペアの一方の磁気モー
ている。白抜きの四角および三角は、それぞれ反強磁
メントを抑制するように電子系の再配置・緩
入したもので、
欠陥を導入した場合強磁性相の方が安
性状態に欠陥を導入したもの、
強磁性状態に欠陥を導
和が起こり,大局的なAF構造がそのまま保持
定化しているのがわかる。
入したもので、欠陥を導入した場合強磁性相の方が安
される。欠陥濃度の増加とともに,電子系の
計算結果を詳細に解析したところ、
次の様な結果が
定化しているのがわかる。
再配置に必要なエネルギー密度も増加し,あ
得られた。サイト交換型欠陥の周囲では、短距離の
計算結果を詳細に解析したところ、
次の様な結果が
る欠陥濃度に達するとF相が安定となる,とい
Fe 得られた。サイト交換型欠陥の周囲では、短距離の
ペアが存在するため、局所的には強磁性的スピン
うのがF相安定化のメカニズムである。
配置が安定化しやすい。しかし欠陥濃度が低い間は、
ここでは,FeRhの磁性が欠陥の存在によっ
Fe ペアが存在するため、局所的には強磁性的スピン
てどう変わるかの一例を見た。照射による磁気特性の変化は,これ以外にも非磁性のCeO
強磁性的長距離秩序を形成する前に
Fe ペアの一方の
2で顕
配置が安定化しやすい。しかし欠陥濃度が低い間は、
著にみられている。今後,磁気特性と欠陥構造との間の関係を明らかにしながら,新たな物質
磁気モーメントを抑制するように電子系の再配置・緩和が起こり、大局的な
AF 構造がそのまま
強磁性的長距離秩序を形成する前に Fe ペアの一方の
開発・特性改質の研究を進める予定である。
保持される。欠陥濃度の増加とともに、電子系の再配置に必要なエネルギー密度も増加し、ある
磁気モーメントを抑制するように電子系の再配置・緩和が起こり、大局的な AF 構造がそのまま
本研究の一部は,大阪府立大学の岩瀬彰宏氏との共同研究によるものである。
欠陥濃度に達すると
F 相が安定となる、というのが F 相安定化のメカニズムである。
保持される。欠陥濃度の増加とともに、電子系の再配置に必要なエネルギー密度も増加し、ある
ここでは、FeRh
の磁性が欠陥の存在によってどう変わるかの一例を見た。照射による磁気特
欠陥濃度に達すると
(参考文献) F 相が安定となる、というのが F 相安定化のメカニズムである。
性の変化は、これ以外にも非磁性の
CeO2K.で顕著にみられている。今後、磁気特性と欠陥構造と
ここでは、FeRh
の磁性が欠陥の存在によってどう変わるかの一例を見た。照射による磁気特
K. Shimizu, S. Kosugi,
Y. Tahara,
Yasunaga, Y. Kaneta, N. Ishikawa, F. Hori, T. Matsui, and A.
の間の関係を明らかにしながら、新たな物質開発・特性改質の研究を進める予定である。
Iwase:
Nucl.
Inst.
and
Meth.
in
Phys.
Res. B 286(2012)291-294.
性の変化は、これ以外にも非磁性の CeO2 で顕著にみられている。今後、磁気特性と欠陥構造と
Y. Kaneta, S. Ishino, Y. Chen, S. Iwata, and A. Iwase: Jpn. J. of Appl. Phys. 50(2011)185803.
本研究の一部は、大阪府立大学の岩瀬彰宏氏との共同研究によるものである。
の間の関係を明らかにしながら、新たな物質開発・特性改質の研究を進める予定である。
本研究の一部は、大阪府立大学の岩瀬彰宏氏との共同研究によるものである。
(参考文献)
K. (参考文献)
Shimizu, S. Kosugi, Y. Tahara, K. Yasunaga, Y. Kaneta, N. Ishikawa, F. Hori, T. Matsui,
andK.A.Shimizu,
Iwase: Nucl.
Inst. and
Meth. inK.
Phys.
Res. B 286
(2012) 291-294.
S. Kosugi,
Y. Tahara,
Yasunaga,
Y. Kaneta,
N. Ishikawa, F. Hori, T. Matsui,
Y. Kaneta,
S.
Ishino,
Y.
Chen,
S.
Iwata,
and
A.
Iwase:
Jpn.
J.
of
Appl.
Phys. 50 (2011) 185803.
and A. Iwase: Nucl. Inst. and Meth. in Phys. Res. B 286 (2012)
291-294.
Y. Kaneta, S. Ishino, Y. Chen, S. Iwata, and A. Iwase: Jpn. J. of Appl. Phys. 50 (2011) 185803.
― 52 ―
研究紹介
研究テーマ
英語教育とe-learning
研究者名
人文科学系 小林 貢
2.研究方法
上 記 の 取 り 組 み に 加 え て, 平 成19年5月 に 日 本 技 術 者 教 育 認 定 機 構(JABEE : Japan
Accreditation Board for Engineering Education)に本校の本科及び専攻科の「創造工学システ
ムプログラム」が認定された。認定開始年度は平成18年度であり,同プログラムの修了要件の
一つには,
「4)TOEICスコアが400点相当の英語能力,あるいは同等の英語能力を有すること。」
がある。ちなみに上記の400点相当とは385点以上を意味し,これと同等とは,課題(英作文お
よび英語によるプレゼンテーション)を実施し,これに合格することを意味する。この修了要
件をクリアするためにALC NetAcademy2(NetAcademy改訂版)
「初中級コース プラス」は,
授業のみならず,学生が,本校の情報処理センター,図書館及び学生寮において自主学習する
ためのe-learningとして使用されてきた。
平成21年度特別教育研究経費(
「国際性の向上に関する改革推進事業」予算配分は2年間)と
して,筆者を中心とした本校の人文科学系(英語)の「国際的な情報発信のための e-learning
による人材養成プログラム」
が,
高専機構から選定された。上記プログラムの概要は,
「e-learning
による英語学習に加えて外国人による専門分野に関する講演会により,TOEICに十分対応でき
る国際的に活躍できる人材の養成を図る。そして,情報発信の推進のための外国人によるライ
ティングのプログラム『情報発信のためのLesson』の演習を行うことで,学生が国際学会等で
専門に関する発表をできるための英語力の素地を養成する。
」である。
上記プログラムの平成22年度における実施については,専攻科1年前期の応用英語Ⅰ,専攻科
1年後期の応用英語Ⅱ及び専攻科2年前期の応用英語Ⅲに全面的にALC NetAcademy2「スーパー
スタンダードコース」を導入した。そして,本科4年の電気情報工学科及び物質工学科の総合英
語Ⅰ(通年)においてライティングを指導するために,ALC NetAcademy2「ライティング基
礎コース」を導入した。それに加えて,本科5年の物質工学科の工業英語(後期)においてALC
NetAcademy2「技術英語パワーアップコース」を導入し,シラバスに基づき演習を行った。
本科4年,5年及び専攻科1年,2年の自主学習教材として,
「TOEIC(R)テスト演習2000コース」
を導入することにより,
「スーパースタンダードコース」を完了した学生のTOEICテストに対す
るモチベーションを更に高めた。これらに加えて,ネイティブの大学教員である国際養大学 助
教 Dr. Andrew Crofts 先生を講師に招聘した専門分野に関する講演会 "Biotechnology: Solving
the World's Biggest Problems"(2011年1月20日)を実施することにより,学生が国際学会等で
専門に関する発表をできるための英語力の素地を養成した。講演会については,
秋田魁新報
(2011
― 53 ―
研 究 紹 介
1.緒言
本校の英語教育においては,大学入試において英語を受験しない高等教育機関である高等専
門学校の学生の,英語学習に対するモチベーションを高める手段の一つとして英語に関する資
格試験の受験を奨励している。その経過として本校は平成11年度から平成19年度まで,9年連続
して実用英語技能検定奨励賞に選考され,平成20年度には優秀団体賞に,平成21年度には優良
団体賞に,平成22年度及び平成23年度には奨励賞に選考された。
平成13年度より英語科は,
「実践的英語コミュニケーション能力の育成を目的とする秋田高専
英語教育改善プロジェクト」として本科3年の英語の授業にTOEICの演習を導入し,平成18年
度よりTOEIC のためのe-learningとして ALC NetAcademyを使用した本科3年と専攻科1年の
英語の授業を行った。この取り組みに対してはTOEIC Newsletter 80(October,2002)及び秋田
魁新報(2006年4月26日夕刊)の記事として取り上げられ,一定の評価を受けた。
できるための英語力の素地を養成した。講演会については、秋田魁新報(2011 年 2 月 3 日)に記
事として取り上げられた。
3. 結論
e-learning による英語学習により、TOEIC スコアが向上することで、英語を使用する事象に対
年2月3日)に記事として取り上げられた。
して十分対応できるようになり、国際的に活躍しえる人材を養成できるようになるならば、また
研 究 紹 介
情報発信の推進のためにライティングのプログラムの演習を行うことで、学生が(短期留学を含
3.結論
む)留学する機会を得たり、国際学会等で専門に関する発表を出来るようになるならば、その過
e-learningによる英語学習により,TOEICスコアが向上することで,英語を使用する事象に
対して十分対応できるようになり,国際的に活躍しえる人材を養成できるようになるならば,
程自体が e-learning による英語学習の有効性を証明すると考えられる。国際教養大学 教授 Dr.
また情報発信の推進のためにライティングのプログラムの演習を行うことで,学生が(短期留
Kirby Record 先生を講師に招聘して、平成 22 年 3 月に実施した『情報発信のための Lesson』に
学を含む)留学する機会を得たり,国際学会等で専門に関する発表を出来るようになるなら
参加した学生 1 名は、リール A 技術短期大学(フランス)に短期留学し、平成 23 年度には国際学
ば,その過程自体がe-learningによる英語学習の有効性を証明すると考えられる。国際教養大
会において発表を行った。『情報発信のための Lesson』については、秋田魁新報(2010 年 4 月 8
学 教授 Dr. Kirby Record先生を講師に招聘して,平成22年3月に実施した『情報発信のための
日)に記事として取り上げられた。
Lesson』に参加した学生1名は,リールA技術短期大学(フランス)に短期留学し,平成23年度
「創造工学システムプログラム」の修了要件については、ほとんどの専攻科修了学生が上述の
には国際学会において発表を行った。
『情報発信のためのLesson』については,
秋田魁新報(2010
年4月8日)に記事として取り上げられた。
条件をクリアした。具体的には、クリアできずに課題に取り組んだ専攻科生は、平成 18 年度は
「創造工学システムプログラム」の修了要件については,ほとんどの専攻科修了学生が上述の
18
名中1名、平成 19 年度においては 28 名中 0 名、平成 20 年度は 23 名中 2 名、平成 21 年度は
条件をクリアした。具体的には,クリアできずに課題に取り組んだ専攻科生は,平成18年度は
27 名中 1 名、平成 22 年度は 25 名中 0 名、平成 23 年度は 26 名中 0 名であった。
18名中1名,平成19年度においては28名中0名,平成20年度は23名中2名,平成21年度は27名中1
それらに加えて、平成 18 年度において専攻科の評価指標である大学院における TOEIC 平均スコ
名,平成22年度は25名中0名,平成23年度は26名中0名であった。
ア 479 点を超えた専攻科生は 7 名おり、最高点は 635 点であった。平成 19 年度の大学院における
それらに加えて,平成18年度において専攻科の評価指標である大学院におけるTOEIC平均ス
TOEIC 平均スコアの 484 点を超えた専攻科生は 5 名おり、最高点は 660 点であった。平成 20 年度
コア479点を超えた専攻科生は7名おり,最高点は635点であった。平成19年度の大学院における
TOEIC平均スコアの484点を超えた専攻科生は5名おり,最高点は660点であった。平成20年度
の大学院における TOEIC 平均スコアの 491 点を超えた専攻科生は 6 名おり、最高点は 745 点であ
の大学院におけるTOEIC平均スコアの491点を超えた専攻科生は6名おり,最高点は745点であっ
った。平成 21 年度の大学院における TOEIC 平均スコアの 494 点を超えた専攻科生は 7 名おり、最
た。平成21年度の大学院におけるTOEIC平均スコアの494点を超えた専攻科生は7名おり,最高
高点は 855 点であった。平成 22 年度の大学院における TOEIC 平均スコアの 507 点を超えた専攻科
点は855点であった。平成22年度の大学院におけるTOEIC平均スコアの507点を超えた専攻科生
生は 7 名おり、最高点は『情報発信のための Lesson』に参加した学生の 720 点であった。平成 23
は7名おり,最高点は『情報発信のためのLesson』に参加した学生の720点であった。平成23年
年度においては基準が大学院 4 年の平均スコアに変更となり、平均スコア 593 点を超えた専攻科
度においては基準が大学院4年の平均スコアに変更となり,平均スコア593点を超えた専攻科生
生は 1 名で、最高点は 620 点であった。プロジェクトの成果については、平成 23 年度に高専改革
は1名で,最高点は620点であった。プロジェクトの成果については,平成23年度に高専改革推
推進経費事例発表会(於:鹿児島大学)において発表し、
『文部科学時報 3 月号』に掲載された。
進経費事例発表会(於:鹿児島大学)において発表し,
『文部科学時報3月号』に掲載された。
『文部科学時報3月号』
(2012年3月10日)
(左)及び秋田魁新報 2011年2月3日
記事(右)
『文部科学時報
3 月号』
(2012
年 3 月 10 日)(左)及び秋田魁新報
2011 年 2 月 3 日
記事(右)
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卒業研究テーマ一覧
平成23年度
卒業研究テーマ一覧(平成23年度)
■機械工学科
卒 業 研 究 テ ー マ 名
担当教員名
工作機械の加工空間内で発生している空気流の数値解析
今 田 良 徳
爪チャックの回転による発熱に関する研究
今 田 良 徳
加速度センサ、ジャイロセンサを用いた腕動作の研究
宮 脇 和 人
車載搭載用リフターの評価
宮 脇 和 人
剣道の動作解析
宮 脇 和 人
圧電素子を用いた精密位置決め
宮 脇 和 人
平面と曲面からなる二次元柱の強制対流熱伝達
土 田 一
水平環状隙間内に置かれた円管の沸騰熱伝達
土 田 一
向流移動層内の粒子挙動に及ぼす炉下部排出構造の影響
一 田 守 政
向流移動層内の温度分布に及ぼす炉下部排出構造の影響
一 田 守 政
単結晶シリコンの研磨加工プロセスに関する研究(1)
~砥粒材質が加工特性に及ぼす影響~
落 合 雄 二
単結晶シリコンの研磨加工プロセスに関する研究(2)
~定盤材質が加工特性に及ぼす影響~
落 合 雄 二
加熱自由噴流の測定(U0=3m/s, Δθ=40℃の場合)
渡 部 英 昭
超伝導ヘリウム中の膜沸騰時における蒸気膜挙動の考察
野 澤 正 和
パルス管冷凍機の作動流体の挙動と冷凍性能の関連性
野 澤 正 和
温度分布を制御可能な凍結外科用クライオプロープの開発
野 澤 正 和
角筒深絞り成形の解析
大 上 哲 郎
円筒深絞り成形の解析
大 上 哲 郎
風音防止装置の研究
茂 木 良 平
超音波流量計を用いた酸素濃度計
茂 木 良 平
超音波流量計を用いた酸素濃度計における流れの影響について
茂 木 良 平
超音波流量計を用いた酸素濃度計における気体以外の伝播時間について
茂 木 良 平
リカンベント自転車を用いたFESサイクリングユニットの設計製作
小 林 義 和
FESサイクリングユニットの改良と評価
小 林 義 和
腕の伸展・屈曲運動のためのリハビリマウス装置の開発
木 澤 悟
非接触センサを用いた歩行周期推定システムの開発
木 澤 悟
回転型2リンク倒立振子の安定化制御に関する研究
木 澤 悟
― 56 ―
卒業研究テーマ一覧(平成23年度)
■電気情報工学科
卒 業 研 究 テ ー マ 名
担当教員名
次世代半導体SiCの分子動力学法による特性評価
成 田 章
分子動力学法による超イオン導電体(CaF2)のシミュレーション
-原子数の効果-
成 田 章
熱平衡状態におけるGaP半導体内電子分布に関する基礎的研究
上 林 一 彦
熱平衡状態におけるSi半導体内電子分布に関する基礎的研究
上 林 一 彦
実空間グリッドによる水素型人工原子の一電子軌道の計算
上 田 学
ミリ波帯誘電体レンズの製作とその収束特性
田 中 将 樹
焦電型素子によるミリ波検出器の試作
田 中 将 樹
添加量を増加させたカーボンナノチューブ複合材料の試作
田 中 将 樹
フォトニック結晶構造による負の屈折現象のFDTD解析
田 中 将 樹
校内ナビゲーションのための電波強度による位置推定方式
平 石 広 典
在室者位置予測システムのためのフィジカルインターフェイスの設計
平 石 広 典
二輪倒立ロボットのための強化学習による制御方式
平 石 広 典
交流チョッパ式単相UPSにおける昇圧チョッパの実験的検証
安 東 至
交流チョッパ式単相UPSにおける降圧チョッパの実験的検証
安 東 至
インバータ直流部の電流検出によるPMモータ制御
安 東 至
インターリーブ式DC-DCコンバータのソフトスイッチング制御
安 東 至
誘導電動機のトルク速度特性計測システムの構築
山 崎 博 之
片持ち梁型力センサの設計及び試作
山 崎 博 之
小型DCモータの各種定数の算定法に関する研究
山 崎 博 之
表面磁石型発電機と駆動DCモータに関する基礎検討
髙 橋 身 佳
ブラシレスモータの基本特性の測定
髙 橋 身 佳
希土類永久磁石モータのインピーダンスに関する実験的研究
髙 橋 身 佳
表面磁石型モータの大容量化バランス設計法に関する研究
髙 橋 身 佳
GM計数管と放射性同位元素を用いた放射線防護のための放射線基礎特性評価
坂 本 文 人
Javaアプレットを用いた電磁放射現象のリアル タイムシミュレータの開発
坂 本 文 人
POV-Rayを用いた爆発のレンダリングのため基礎検討
竹 下 大 樹
H8マイコンを組み込んだチェスボードを用いたチェス支援システムの開発
竹 下 大 樹
Flashを活用した1年生電気基礎用e-Learning教材の開発
伊 藤 桂 一
騒音下における音声の明瞭度向上に関する基礎研究
大 島 静 夫
ピッチ知覚における優位耳の発生機構に関する基礎研究
大 島 静 夫
― 57 ―
卒 業 研 究 テ ー マ 名
担当教員名
電気的特性によるPt/Mo/4H-SiC(0001)接触界面に関する研究
浅 野 清 光
水素利用クリーンエネルギーシステムに関する研究-燃料電池車用高圧水
素容器の開発-
浅 野 清 光
色素増感フレキシブル太陽電池の宇宙への応用に関する研究
浅 野 清 光
導波管スロットアンテナに誘電体球を装荷した場合の効果について
宮 田 克 正
円形パッチ平面アンテナの放射特性改善に関する実験的研究
宮 田 克 正
Xバンド導波管回路素子の整合に関する実験的研究
宮 田 克 正
― 58 ―
卒業研究テーマ一覧(平成23年度)
■物質工学科
卒 業 研 究 テ ー マ 名
担当教員名
光殺菌に及ぼす過酸化水素添加の影響
船 山 齊
光フェントン反応を用いた光殺菌
船 山 齊
回分式循環型光殺菌装置の光殺菌特性
船 山 齊
防カビ効果のある充填材の開発
野 坂 肇
鉄(Ⅲ)イオン還元細菌による銀イオンの回収
野 坂 肇
無電解ニッケルめっきの触媒の検討
野 坂 肇
鉛をベースとした新しいアノード材の開発
野 坂 肇
酸化チタン含有ゼオライトの合成
佐 藤 恒 之
おからの機能化
佐 藤 恒 之
綿を分解する担子菌の探索
上 松 仁
新規木質サイレージに関わる基礎研究
上 松 仁
イネ Starch branching enzyme の構造と機能
伊 藤 浩 之
植物における傷害誘導性転写因子の機能解明
伊 藤 浩 之
植物 Rubisco タンパク質の合成制御機構の解明
伊 藤 浩 之
酸化グラフェンの熱的還元
石 塚 眞 治
ヒドラジンを用いた酸化グラフェンの化学的還元
石 塚 眞 治
アセトキシル基を有するアルコールの効果的なベンゾイル化反応
横 山 保 夫
臭化サマリウム
(II)
を用いた2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基の脱保護
における化学選択性の検討
横 山 保 夫
天然物骨格に存在するベンゾイル基の選択的脱保護法の開発
横 山 保 夫
CHPナノゲルによる新規酵素安定化システム
榊 秀 次 郎
MPCポリマーと酵母との相互作用
榊 秀 次 郎
酵素配合高分子フィルム(酵素フィルム)
榊 秀 次 郎
機能性高分子を用いた新規酵素安定化システムの構築
榊 秀 次 郎
導電性の銅ペースト材料の調製
西 野 智 路
酸化亜鉛微粒子の合成に対する反応条件の影響
西 野 智 路
硫化亜鉛膜の調製
西 野 智 路
硝酸コバルト溶液中でのポリピロール自己組織化膜電極の分極挙動の検討
丸 山 耕 一
液晶電気光学素子の複屈折の観測
丸 山 耕 一
人工アルミノケイ酸塩の高純度化および熱特性に関する研究
野 中 利瀬弘
溶融飛灰含有硫黄の形態変化に及ぼす共存元素の影響
野 中 利瀬弘
― 59 ―
卒 業 研 究 テ ー マ 名
担当教員名
鉄酸化細菌の透析培養法
佐 藤 彰 彦
キラル希土類ルイス酸触媒を用いたβ-ケトエステルの不斉塩素化反応の開発
鈴 木 祥 子
キラルルイス酸を用いた光学活性アミノアルコールの触媒的合成
―アミン求核剤によるエポキシ開環反応―
鈴 木 祥 子
― 60 ―
卒業研究テーマ一覧(平成23年度)
■環境都市工学科
卒 業 研 究 テ ー マ 名
担当教員名
東日本における降雨特性の経年変化とその特徴について
佐 藤 悟
衛星画像を構成する輝度分布の特徴とその利用について
佐 藤 悟
植生指標(NDVI)を利用した海岸線周辺の変化抽出とその特徴について
佐 藤 悟
明治百年通りを軸とした拠点整備の提案
恒 松 良 純
不連続景観の心理評価と物理的構成による分類の検討
恒 松 良 純
学童保育を核とした小学校の提案
恒 松 良 純
田園集落に建つ美術館の提案
恒 松 良 純
秋田県庁(明治13年)の建設経緯と建築的特徴について
角 哲
日本赤十字社秋田支部病院(大正3年)の建設経緯と建築的特徴について
角 哲
道の駅の現状と活性化方策に関する研究
折 田 仁 典
東日本大震災と防災意識に関する研究
折 田 仁 典
世界遺産白神山地を活かした藤里町の活性化に関する調査研究
折 田 仁 典
道の駅「あきた港」の整備効果に関する研究
折 田 仁 典
道央PT調査データを用いた通勤交通手段選択モデルの構築
長谷川 裕 修
米国運輸省道路交通安全局GESデータにみる米国交通事故の特徴について
長谷川 裕 修
テキストマイニング手法による東日本大震災報道の特徴抽出
長谷川 裕 修
凍結融解試験後のゴミ溶融スラグと岩ズリの混合土による強度特性
対 馬 雅 己
再構成高有機質土の繰返し圧密による強度・変形特性
対 馬 雅 己
繰返し圧密履歴を受けた再構成高有機質土の一面せん断試験によるせん断特性
対 馬 雅 己
50年以上経過した木橋の劣化に関する研究
堀 江 保
プレストレスによる木床版の一体化の研究
堀 江 保
長期曝露試験によるプレストレス木床版の緊張力変化に関する研究
堀 江 保
秋田港生物共生型実験護岸における塩分濃度及びpHの鉛直分布
増 田 周 平
馬踏川と豊川における流下および雨天にともなう水質変化
増 田 周 平
難分解性有機物による八郎湖の水質汚濁メカニズムについて
金 主 鉉
草本系バイオマスを利用した埋め立て地浸出水の窒素除去
金 主 鉉
農作廃棄物の酵素糖化とエタノール発酵特性について
金 主 鉉
コンクリート混和材としての木質焼却飛灰の水和反応特性
桜 田 良 治
らせん状アラミド繊維ロッドでせん断補強した鉄筋コンクリート梁の破壊特性
桜 田 良 治
下水管改築用プラスチック製セグメント材のアラミドケーブルによる補強効果
桜 田 良 治
― 61 ―
― 62 ―
― 63 ―
科学研究費助成事業
共同研究・受託研究 ●―――――――― RESEARCH BUDGET(2011)――――――――
寄附金(平成23年度)
●科学研究費助成事業 Grants-in-Aid-for Scientific Research
採 択 課 題 等
氏 名
学習に基づく機能的電気刺激のための
遊脚期検出システムの開発
基盤研究(C)22年度~24年度
木 澤 悟
(准教授 機械工学科)
機能的電気刺激を用いたパワーリハビリシス
テム利用時におけるバイオメカニクス的評価
基盤研究(C)22年度~24年度
宮 脇 和 人
(教授 機械工学科)
アクティブフィルタ機能を有する交流
チョッパ式高効率単相UPSの開発
基盤研究(C)21年度~23年度
安 東 至
(教授 電気情報工学科)
音節境界における分節音の有標性の序
列に関する対照言語学的考察
基盤研究(C)21年度~24年度
桑 本 裕 二
(准教授 人文科学系)
都市資源である溶融灰に含まれる金属
塩の形態解明と硫化物の高効率除去に
関する研究
若手研究(B)23年度~24年度
野 中 利瀬弘
(准教授 物質工学科)
日本製鐵広畑製鐵所の社宅街開発と広
畑の都市形成に関する研究
若手研究(B)22年度~24年度
角 哲
(准教授 環境都市工学科)
ロバート・ヘリックの田園世界―『ヘ
スペリディーズ』の抒情性と社会性―
若手研究(B)22年度~23年度
古 河 美喜子
(講師 人文科学系)
微小重力で明らかにされる超流動ヘリ
ウムの特異な膜沸騰の実相と伝熱促進
効果の解明
基盤研究(B)23年度~24年度
野 澤 正 和
(講師 機械工学科)
カンパニータウンの成立過程と空間構
成に関する国際比較研究
基盤研究(B)23年度
東北地方における地域資源の管理・利
用に関する社会史的研究:
「国有林史料」 基盤研究(B)22年度~23年度
を中心に
角 哲
(准教授 環境都市工学科)
脇 野 博
(教授 人文科学系)
小学校英語活動支援のための大学リ
ソース活用モデル構築
基盤研究(B)23年度~24年度
桑 本 裕 二
(准教授 人文科学系)
高齢者の転倒防止を目的とした座位バ
ランス能力評価・訓練装置の開発
基盤研究(C)23年度~24年度
宮 脇 和 人
(教授 機械工学科)
未利用資源のセルロース系バイオマス
を発酵原料とした有用物質生産のため
の基盤研究
基盤研究(C)23年度
上 松 仁
(教授 物質工学科)
合 計 13件 9,243(千円)
●共同研究 Joint Research
研 究 課 題
共同研究機関等
知 能 制 御 機 器 設 計 技 術 開 発 ミナトエンジニアリング(株)
氏 名
宮 脇 和 人
(教授 機械工学科)
低流速用小水力発電装置の開発研究
アキモク鉄工(株)
髙 橋 身 佳
(教授 電気情報工学科)
負荷共振周波数追従制御に基づく単相高周
波インバータの一構成法
長岡技術科学大学
安 東 至
(教授 電気情報工学科)
ニオブ酸リチウムの微細加工ひずみの光学
的検出の検討
長岡技術科学大学
丸 山 耕 一
(准教授 物質工学科)
日本海側で発生した歴史地震の調査と防災
教育教材の作成
長岡技術科学大学
角 哲
(准教授 環境都市工学科)
小水力発電システム用水車の研究
(株)遠藤設計事務所
佐 藤 悟
(教授 環境都市工学科)
粘弾性樹脂をコア材とする三層積層板の振
動減衰性能
(株)道光産業
木 澤 悟
(准教授 機械工学科)
― 64 ―
木材を微粉砕して原料とする牛の木質飼料
ペレットの研究開発
秋田県立大学
上 松 仁
(教授 物質工学科)
向流移動層内の粒子挙動に関する検討
新日本製鐵(株)
一 田 守 政
(教授 機械工学科)
小水力発電システム用発電機の研究
東北小水力発電(株)
髙 橋 身 佳
(教授 電気情報工学科)
合 計 10件 4,980(千円)
●受託研究 Trust Reserch
研 究 課 題
委 託 機 関 等
氏 名
自動車産業における生産技術の高度化に対応
した産業ロボット用硬さ試験グリッパの開発
本荘由利産業
科学技術振興財団
宮 脇 和 人
(教授 機械工学科)
地域分散型バイオエタノール生産のための
省エネ低コスト固体連続並行複発酵に関す
る技術開発
関 西 大 学
上 松 仁
(教授 物質工学科)
八 郎 湖 に お け る C O D 実 態 調 査
秋 田 県
金 主 鉉
(准教授 環境都市工学科)
選択的溶解法による新規ゼオライトの合成
日揮触媒化成(株)
佐 藤 恒 之
(教授 物質工学科)
温度分布を制御可能な凍結外科用クライオ
プローブの開発
秋 田 県
野 澤 正 和
(講師 機械工学科)
男鹿市寒風石のアルカリ成分を改質する方
法に係る実現可能性調査
秋 田 県
対 馬 雅 己
(教授 環境都市工学科)
未利用資源のセルロース系バイオマスを原料に
稲いもち病用カスガマイシンを発酵生産する放
線菌の育種と工業生産に向けての基盤研究
科学技術振興機構
上 松 仁
(教授 物質工学科)
木粉を乳酸発酵した新規木質サイレージの
製造に係る実現可能性調査
秋 田 県
上 松 仁
(教授 物質工学科)
合 計 8件 12,547(千円)
●寄附金 Contribution to Research
研 究 課 題
寄 附 者
氏 名
共 振 P F C 回 路 の 研 究
サンケン電気(株)
安 東 至
(教授 電気情報工学科)
無
三共光学工業(株)
野 中 利瀬弘
(准教授 物質工学科)
機
材
料
の
研
究
※上記の他,後援会からの寄附金等 合 計 15件 7,625(千円)
外部資金受入実績一覧(過去5年間)
単位:千円
区 分
科学研究費補助金
(助成事業)
奨
学
寄
附
金
民間との共同研究
受
託
研
合 計
究
申 請 数
採択件数
金 額
件 数
金 額
件 数
金 額
件 数
金 額
件 数
金 額
平成19年度
24
平成20年度
7
5,170
30
12,038
6
2,050
3
4,445
46
23,703
― 65 ―
25
3
14,170
30
12,123
9
4,080
5
7,484
47
37,857
平成21年度
28
6
28,920
27
14,094
7
2,020
9
10,321
49
55,355
平成22年度
28
9
9,800
28
9,520
7
2,752
12
9,637
56
31,709
平成23年度
28
7
7,800
15
7,625
10
3,680
9
13,053
41
32,158
秋田高専地域共同テクノセンター平成23年度 活動一覧
実施時期
事 業 名 等
4月26日(火)
平成23年度第1回地域共同テクノセンター専門部会開催
議題:平成23年度計画(案)/担当役割分担/その他
6月3日(金)
平成23年度第1回地域共同テクノセンター運営委員会開催
議題:平成22年度総括と平成23年度年度計画案について
平成23年度 最先端技術講演会(@秋田高専大講義室)
対象:5年生・専攻科生,産学協力会会員企業,その他一般学外者
6月10日(金) 演題:
「LED照明の概要と動向」
講師:東芝ライテック(株)取締役技術本部長 藤武浩二氏
(秋田高専主催、秋田高専産学協力会共催)
平成23年度第2回地域共同テクノセンター専門部会開催
7月15日(金) 議題:地域共同テクノセンター報第9号/秋田高専研究シーズ集2011/
技術研究会の詳細(ポスター、案内送付先 その他)/その他
8月4日(木)
9月上旬
第9回全国高専テクノフォーラム
(高専機構主催:東京高専担当)
地域共同テクノセンター報第9号/秋田高専研究シーズ集2011発行
第12回技術研究会 (@テクノコミュニティ,大講義室,各科実験室)
(基調講演1件+研究室公開+特別研究成果展示+設備見学等)
9月16日(金)
*学科横断プロジェクト完了報告会
(秋田高専地域共同テクノセンター主催)
10月10-11日
(木,金)
産学交流の日&東北地区高等専門学校テクノセンター長等会議
東北地区高専持ち回り開催(担当校:一関工業高等専門学校)
11月12-13日
(土、日)
企業説明会 (@秋田高専会議室A・スカイラウンジ)
(秋田高専地域共同テクノセンター・産学協力会 共同開催)
11月17日(木)
あきた産学官連携フォーラム2011
(秋田高専、秋田大学、等共催 幹事校:秋田県立大学)
平成23年度第3回地域共同テクノセンター専門部会開催
11月21日(月) 議題:第12回技術研究会の反省/地域共同テクノセンター報第9号・
秋田高専研究シーズ集2011の改良点/あきた産学官連携フォーラムについて
知的財産権セミナー特別講演会(@秋田高専大講義室)
対象:5年生・専攻科生,産学協力会会員企業,その他一般学外者
演題:
「グローバル時代に知財を活かせる人財をいかに輩出するか」
12月15日(木)
講師:仙台高専地域イノベーションセンター
知財コーディネーター 佐々木 伸一 氏
(秋田高専地域共同テクノセンター主催)
特許相談会
秋田県知的所有権センター員による相談会の開催(適時)
産学協力会
研 修 会
(第51回)
平成23年度最先端技術講演会 共催
第52回 新任教員講演会
第53回 研修会&卒業生全体交流会(能代開催)
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実施時期
産学連携コー
ディネータ会
議及び産学官
交流プラザ
その他
事 業 名 等
事務局:秋田県企画振興部学術国際局学術振興課
テクノセンター長又は産学連携コーディネータ、企画室職員が参加
高専事業等のPR、県内情報の収集
競争的外部資金申請方法説明会 9月29日(木)
講師:秋田大学教育文化学部準教授 高樋さち子氏
― 67 ―
関連行事紹介
平成23年度最先端技術講演会:
「LED照明の概要と動向」
日 時:平成23年6月10日(金) 午後3時30分~午後5時
会 場:秋田工業高等専門学校 大講義室
講 師:東芝ライテック株式会社 取締役技術本部長 藤武 浩二 氏
題 目:「LED照明の概要と動向」
聴講者:本科5年生・専攻科生・教職員・外部関係者
講演概要等
平成23年度の最先端技術講演会は、秋田高専地域共同テクノセンター主催・秋田高専産学協
力会の共催により、講師に東芝ライテック株式会社 取締役技術本部長の藤武浩二氏を迎えて、
「LED照明の概要と動向」の演題で開催された。
本講演会は本科5年生と専攻科の授業の一環であり、当日は本校の山田宗慶校長をはじめと
する教職員、秋田高専産学協力会会員企業の方々、秋田県公設機関の方々など約250名が聴講し
た。2011年の夏は特に,東日本大震災の影響から本格的な節電に取り組む必要があったが,そ
の中で最も効果が高いと考えられるLED照明の最先端技術がテーマとあり,参加者は興味をもっ
て聴き入っていた。
以下に講演内容の概要を紹介する。
火力発電の代わりとして、環境への影響を配慮した発電方法が注目されている今、家電製品
においても、消費電力をできるだけ抑える「省エネルギー」が求められている。また日本では、
東日本大震災の影響で原子力発電が大きな被害を出しており、原子力発電自体が問題となって
いる。そのため、夏にかけて電力の需要が増え、供給が追いつかなくなることも予想されており、
ますます節電が必要とされるだろう。そこで、現在、最も注目されている家電製品が、LED照
明である。LEDとはLight Emitting Diodeの略である。今までの照明とは、発光の仕組みが全く
異なる。白熱電球やハロゲン電球はタングステンフィラメントに電流を流すことで、8割から
9割の熱とともに光を作り出している。蛍光ランプは水銀原子と電子を衝突させ、そのときに
出る紫外線が蛍光体を通り可視光となる。それらに対しLED照明は、電子と正孔がpn接合部付
近で再結合する際に出る光を利用したものである。LED照明は白熱電球と違い、熱として電力
を8割から9割もロスすることはなく、蛍光ランプと違って、水銀などの環境に有害な物質を
含まない。
LEDには、大きく分けて三つの種類がある。一つ目は砲弾型といい、一番よく見るタイプで
ある。LEDチップの周りをエポキシ樹脂で固めたものであり、その形が砲弾のような形をして
いることから、この名前がつけられた。LED信号機に用いられているのはこのタイプである。
二つ目は表面実装型(SMD)というもので、セラミックや樹脂などで成型したキャビティの中
にLEDチップを実装し、キャビティに蛍光体を分散させたエポキシやシリコンなどの樹脂を封
入する。キャビティ内側の面には反射板の機能があり、
多くの光を取り出せる構造となっている。
三つ目はチップオンボード(COB)といい、
多数のLEDチップを基盤に直接実装したものである。
ただし、三つ目のチップオンボードは一部のメーカーでしか作っていない。
LED照明には他の照明に比べて大きなメリットがふたつある。ひとつは、発光効率が高く省
電力である。これは白熱電球が10~20(lm/W)
、蛍光ランプが50~70(lm/W)であるのに対し、
LED電球は50~93(lm/W)と一番発光効率がいい。LEDの発光効率は年々すごい勢いで向上
― 68 ―
関連行事紹介
し続けており、2015年には150(lm/W)に到達するといわれている。もうひとつは長寿命であ
る。これは白熱電球の寿命が1~2(千時間)
、蛍光ランプの寿命が6~12(千時間)なのに対
し、LED電球の寿命は20~40(千時間)と非常に長い。そのため、長い間交換する手間が掛から
ない。他にも、LEDには電球色(2800K)から昼光色(6500K)まで、さまざまな色合いの光を
作り出すことができる、衝撃に強いなど多くのメリットがあり、これからの照明として大きく
期待されている。しかし、LED照明にもデメリットはある。一番の問題は、その製作コストで
ある。白熱電球が~0.1(円/lm)
、蛍光ランプが~1(円/lm)と安価だが、LED電球は5~10(円
/lm)と割高である。また、高温環境下で発光効率が低下するなどのデメリットもある。これら
のデメリットを解消し、いかにコストを安く抑えるかが、メーカー側の一番の課題であるとい
えよう。
照明は節電に大きく関係している。意外と思うかもしれないが、日本では照明による電力消
費は全体の約20%もの割合を占めている。この照明用の電力割合は、世界でも北米に次いで二
番目に大きい。一般家庭においても、エアコン、冷蔵庫に次いで大きな割合を占めている。つ
まり、照明器具の効率の良し悪しが、日本のエネルギー事情に大きく影響しているといえるのだ。
照明の歴史には、面白い特徴がある。1879年、エジソンがカーボン電球を発明したことから、
現代の照明の歴史は始まった。それから約60年後の1938年、インマンによって蛍光ランプが発
明された。そして、さらに60年ほど後の1996年、白色LEDが開発され、照明として研究されて
今に至る。このように、照明の歴史は60年ごとに、大きな変革が訪れている。
光は人に多大な影響を及ぼすと言われている。たとえば、昼光色の明かりと電球色の明かり
では体感温度が1℃も変わることが、研究によって分かっており、これによって空調の無駄遣
いを減らすことができる。また、光は脳活動の活性度にも影響するとされ、明るい青色の照明
が一番脳を覚醒させる。これを利用すれば、仕事をもっと効率的にこなすことができたり、効
率的に体を休めたりすることができる。
今回の講演はLEDの特徴や光が体に与える影響など、非常に興味のわく内容であった。講師
の藤武浩二先生はとても話が上手で、実際にLED照明を見せるなど、聴衆を飽きさせない講演
をしてくださった。また、よいLED電球を選ぶにはルクスではなくルーメンを基準にすること
など、実用的なことも知ることができた。講演終了後に学生や教員,県内企業の技術者から活
発な質疑があり,今回の講演の有意義さを象徴していた。この夏の省エネ問題を今一度真剣に
考えることができた講演会であった。
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関連行事紹介
秋田高専地域共同テクノセンター 第12回技術研究会
主 催:秋田工業高等専門学校地域共同テクノセンター
日 時:平成23年9月16日(金) 午後1時~午後6時
会 場:秋田工業高等専門学校(大講義室,地域共同テクノセンター他)
プログラム:
《専攻科特別研究のポスターセッション》 午後1時~午後6時
《研究設備等見学会》 午後1時30分~午後2時30分
《特別講演》 午後2時35分~午後3時30分
《研究発表》 午後3時40分~午後5時
1.特別講演
特別講演は,東日本大震災により危機意識が高まっている放射線をテーマとした。以下に概
要を示す。
「放射線を正しく理解する」
自然科学系准教授 上田 学 氏
①放射線は放射性同位体から生じる
「放射線」とは高速の原子核または素粒子,
および高エネルギーの電磁波である。
放射線は不安定な原子核が壊れることにより発生する。陽子数が同じで中性子数
が異なる原子核,またはその原子核を持つ原子を「同位体(アイソトープ)
」と呼ぶ。安定な原
子核に対して,中性子数が少ない陽子過剰な原子核はエネルギーが高く不安定で,陽子が陽電
子を放出して(または電子を吸収して)中性子に変わるベータ崩壊が起こる。逆に,中性子の
多い中性子過剰な原子核では,中性子が電子を放出して陽子に変わるベータ崩壊が起こる。こ
のような原子核の崩壊におけるエネルギーの差が,電子など素粒子の運動エネルギーにかわり,
高速の荷電粒子が放出され放射線となる。
②ベクレルとシーベルト
放射線を放出する能力のことを「放射能」と呼び,Bq(べクレル)という単位で表される。
これは単位時間当たりに何個の放射性同位体が崩壊するかを示すものである。放射性同位体が単
位時間に崩壊する確率は核種に依存しているが,環境に依らず一定である。放射性同位体の半
減期はこの確率に反比例し,放射能の強さは崩壊確率と放射性同位体の個数の積で与えられる。
一方,放射線量の基本となる量は吸収線量で,単位はGy(グレイ)である。報道などでよく
耳にするSv(シーベルト)は,
生体の放射線被曝の影響を表す吸収線量の単位で,
吸収線量(Gy)
に生体への影響として放射線の種類による係数を,低線量の確率的影響の場合はさらに臓器の
種類などの補正係数を乗じて得られる。放射線の生体への主な影響は電離作用である。この作
用により,直接的または間接的にDNAが損傷を受け,生体に障害が起こる。
③放射線は自然界にも存在する
放射線は自然界にも存在し,
「環境放射能」と呼ばれている。その原因は宇宙線やウランの崩
壊系列で生じるラドンなどである。その被曝量は外部被曝と内部被曝を合わせて世界では年間
一人あたり少ないところで1mSv,多いところでは10mSvにもなり,平均では2.4mSvである。
一度に多量の放射線を被曝したとき起こる急性障害などの確定的影響に関しては科学的に意
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関連行事紹介
見の一致が得られているが,低線量放射線の確率的影響に関しては研究の難しさもあり,いま
だに議論が続いている。筆者は各自の判断の一つの資料として,この「環境放射能」が重要で
あると考える。
2.研究公開
研究発表は,学科横断型プロジェクトの研究成果報告を行った。以下に概要を示す。
「リサイクル材料と天然資源の活用技術」
環境都市工学科教授 対馬 雅己 氏
秋田市総合環境センターの溶融施設から排出されるスラグは,コンクリートの
二次製品やアスファルト舗装などの骨材に限られているため,スラグ単体での新
たな分野への進出は望めない。近年ではより有効な資源のリサイクルの観点から付加価値を付
けた新材料が注目されている。一方,秋田県内では岩石の採掘に伴って岩石のダスト,いわゆ
る岩ズリ(粒径5mm以下)が副産物として産出されるが,土木・建築資材の用途に用いられ
ることは皆無の状態である。秋田県の地場産業を活性化するためには,岩ズリの有効利用を検
討することが是非とも必要である。このような観点からリサイクル材料と天然資源の活用につ
いて地盤および路盤材料の実証試験を行った結果,道路舗装材料としての事業展開が可能となっ
た。また実証試験による試験施工をふまえ,特許技術を活用したゴミ溶融スラグによる本校の
科学技術教育棟オープンテラスの地盤改良を地元企業によって施工された。
「環境に配慮した機能性材料の創生とプロセス開発
-液相還元反応を利用した形状制御-」
物質工学科准教授 野中 利瀬弘 氏
本研究グループでは,家電などに用いられる高機能無機材料の製造プロセスに
関わる1)金属微粒子の製造法改善,2)電析工程における殺菌技術,3)洗浄
工程由来の揮発性ガスの無害化,4)金属含有廃液の再資源化技術の開発を行った。例えば4)
では,無電解メッキ(ENP)廃液のような多元系溶液を金属源として,Niの選択分離と形態制
御したナノ結晶形成を同時達成可能な化学還元プロセスの開発を目指した。ENP廃液を想定し
た反応系での液相還元実験の結果から,共存イオン種が変わることで,析出Ni粒子の平均粒径
が294-545nmの範囲でシフトすることがわかった。またリン酸系のイオン種の共存により,形
態変化が生じることを見出した。同様の還元条件をENP廃液に適用することで,比較的純度の
高い鎖状Niを回収することに成功した。これら研究成果は,需要が拡大している電磁波シール
ド膜や異方性導電膜用のフィラー製造分野への応用も期待でき,その波及効果は資源再生・材
料合成の分野において非常に高いと言える。
「環境に配慮した木橋の将来展望」
環境都市工学科教授 堀江 保 氏
現在,日本では橋梁材料として鋼材,コンクリートが一般的であるが,集成材
の登場,防腐処理技術の向上により,ここ20~30年の間に木橋が注目を浴びる
ようになってきた。現状では,同等の性能を持つコンクリート橋と比べ木橋は割高となり,普
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関連行事紹介
及するまでには至っていないが,木材を有効活用することは,森林の活性化につながり,CO2
削減等環境問題にも有効であるので,将来的には有望な材料と言える。また,日本の橋梁数の
約8割は,長さが15m未満,その平均橋長は約5mなので,短スパンの橋では木材を利用する
ことが,他の材料の有効利用にもつながる。コスト面から有利と考えられるプレストレス木床
版を対象に,屋外暴露試験を実施した。材料は集成材と,より低価格で製造できるLVLを選び,
長期間にわたり両者の緊張力を比較した。その結果,LVLは初期の緊張力低下が大きいが,再
プレストレス後の変化,また,周囲環境の影響は集成材より受けにくく,床版材料としての利
用が可能であると考えられ,今後,コスト面の問題が解決することにより木橋は普及すると考
えられる。
「ハイブリッド型情報記憶デバイスの創造にかかわる基礎研究」
物質工学科准教授 丸山 耕一 氏
本研究プロジェクトは,誘電体と磁性体を組み合わせたハイブリッド材料の新
規な情報記憶機能の発現と,その技術への応用を目標とした基礎研究であり,試
料合成手法,電気化学計測,光学計測を駆使した検討を行うことで,静的なスピン反転機構に
よる情報蓄積機能と,スピン交換力による動的なスピン配列の伝播機構による情報伝播機能の
発現を検討した。
本研究の特色として,材料の二層界面の電磁-力学特性や,強磁性転移による磁化配列の伝播
挙動などを,実験に先立って予測するシミュレーション技術を導入した点があげられる。また,
秋田高専内では実現できない実験・研究環境は,外部機関を活用して行った。秋田高専で合成
する湿式合成膜の機能性と乾式膜のそれを比較検討するために,後者の合成は,つくば市の産
業総合技術研究所のNPF(ナノプロセッシング施設)で行った。合成した試料の組成などの
化学分析を,物質・材料研究機構の材料ラボで行った。放射光光源を必要とする実験は,高エ
ネルギー加速器研究機構・放射光実験施設を活用し,アナライザー結晶を用いたX線共鳴磁気
散乱現象の観測によって,通常では検出できないナノ周期構造に起因する干渉散乱の磁気的な
寄与分を検出する方法を見出した。
3.研究設備等見学会とポスターセッション
特別講演や研究発表に先立って行われた「研究設備等見学会」では,機器分析室,X線解析室,
実習工場の合計3カ所を2班に分けて見学した。設備や研究成果の説明を通して,各部屋とも活
発な意見交換が展開された。
また,ポスターセッションの会場(テクノコミュニティー)では,専攻科特別研究24件,共
同研究1件,受託研究2件の研究紹介パネルが展示され,討論が行われた。
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地域共同テクノセンター運営委員会
委 員 長
地域共同テクノセンター長
宮 脇 和 人
副委員長
副
長
丸 山 耕 一
委
秋田大学産学連携推進機構長
齊 藤 準
秋田県企画振興部学術国際局長
秋 田 県 産 業 技 術 セ ン タ ー
技 術 イ ノ ベ ー シ ョ ン 部 長
髙 橋 訓 之
〃
DOWAセミコンダクター秋田㈱
代
表
取
締
役
中 村 良 一
〃
㈱五洋電子取締役(管理本部長)
塙 猛
〃
インスペック㈱代表取締役
菅 原 雅 史
〃
㈱ M E C A R O 代 表 取 締 役
村 上 信 博
〃
教
務
主
事
脇 野 博
〃
専
攻
科
長
堀 江 保
〃
機
長
一 田 守 政
〃
電
長
髙 橋 身 佳
〃
物
長
上 松 仁
〃
環
長
桜 田 良 治
〃
一般教科長(人文科学系)
手 島 邦 夫
〃
一般教科長(自然科学系)
吉 井 洋 二
〃
副
長
伊 藤 浩 之
〃
企
長
柴 田 広 実
員
〃
〃
セ
ン
械
気
工
情
工
工
都
科
学
学
市
セ
ー
学
報
質
境
タ
工
ン
科
学
タ
画
科
科
ー
室
佐 藤 明
地域共同テクノセンター専門部会
部 会 長
副
長
丸 山 耕 一
委
生 産 シ ス テ ム 工 学 専 攻
宮 川 豊 美
〃
副
セ
ン
タ
ー
長
環 境 シ ス テ ム 工 学 専 攻
伊 藤 浩 之
〃
機
科
小 林 義 和
〃
電
科
駒木根 隆 士
〃
物
科
野 中 利瀬弘
〃
環
科
井 上 誠
〃
人
文
科
学
系
桑 本 裕 二
〃
自
然
科
学
系
森 本 真 理
〃
企
長
柴 田 広 実
員
セ
ン
械
気
工
情
質
境
タ
報
学
工
工
都
画
市
ー
学
学
工
学
室
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秋田工業高等専門学校産学協力会平成23年度事業報告
事 業 名
実施月日
事 業 内 容
平成23年度
第1回役員会
平成23年5月26日
(木)
15:30~
於:ホテルメトロポリタン秋田
平成22年度事業報告・決算報告(案)及び平成23年
度事業計画・予算(案)についての審議,その他
平成23年度
定期総会
平成23年5月26日
(木)
17:00~
於:ホテルメトロポリタン秋田
平成22年度事業報告・決算報告,平成22年度会計監
査報告,平成23年度事業計画・予算の承認,その他
第51回研修会
平成23年6月10日
(金)
15:30~
(地域共同テクノ
於:秋田高専
センター共催)
テ-マ:最先端技術講演会
演 題:
「LED照明の概要と動向」
講 師:東芝ライテック㈱
取締役技術本部長 藤武 浩二 氏
出席者:約250名(企業,行政,高専教職員及び専攻科,本科学生等)
平成23年7月21日(木)
於:ホテルメトロポリタン秋田
研修会講演(防災講演会)
①「秋田県の大火と防災」
秋田高専人文科学系教授 脇野 博 氏
②「秋田県で発生した歴史地震を探り地域の防災を
考える」
秋田高専環境都市工学科准教授 水田 敏彦 氏
参加者:会員企業等8名,高専20名 計28名
平成23年8月発行
第51・52回研修会報告,平成23年度定期総会報告,
高専教員の異動等を掲載
平成23年10月16日
(日)
於:八戸高専
本校から「ザキエル&ストゥーパ」
(審査員特別賞
受賞)と「Poler&Bowler」の2チームが出場(共
に1回戦敗退)
平成23年12月発行
全日本飛行ロボコン・ロボコン東北大会報告,県内企業
説明会,あきた産学官連携フォーラムの記事等を掲載
平成24年2月16日
(木)
16:00~
於:能代工業団地交流会館
研修会講演(地区講演会)
①「スギ間伐材を微粉砕した牛のセルロース系濃厚
飼料の製造方法」
秋田高専物質工学科教授 上松 仁 氏
②「情報通信システムにおける人工知能技術の応用
について」
秋田高専電気情報工学科准教授 平石 広典 氏
参加者:会員企業等14名,高専9名 計23名
産学協力会
会 長 賞
平成24年2月29日(水)
各賞授賞式・終業式
受賞者:金田 啓佑 君(生産システム工学専攻)
会報第49号
平成24年3月発行
第53回研修会報告,著書及び学術雑誌への掲載
論文一覧,産学協力会会長賞等の記事を掲載
第52回研修会
会報第47号
ロボコン
東北地区大会
会報第48号
第53回研修会&
卒業生交流会
県内企業訪問
平成23年4月~
平成24年1月
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秋田工業高等専門学校産学協力会会員企業名簿(平成24年9月1日現在)
1 株式会社アキタ・アダマンド
28 ダイワ工業株式会社
2 秋田活版印刷株式会社
29 タルイシ機工株式会社
3 秋田指月株式会社
30 千代田興業株式会社
4 秋田十條化成株式会社
31 TDK株式会社 秋田総務部
5 秋田ジンクソリューションズ株式会社
32 東光鉄工株式会社
6 株式会社秋田新電元
33 東邦技術株式会社
7 秋田住友ベーク株式会社
34 株式会社東北機械製作所 営業本部
8 株式会社アキタ電子システムズ
35 十和田オーディオ株式会社
9 秋田ニチレキ株式会社秋田営業所
36 株式会社ナカヨ通信機開発推進本部北日本事業所
10 秋木製鋼株式会社
37 並木精密宝石株式会社 秋田工場
11 東電化工業株式会社
38 ニチレキ株式会社 秋田営業所
12 磐田電工株式会社秋田工場
39 ニット工業株式会社
13 インスペック株式会社
40 日発精密工業株式会社 横手工場
14 株式会社エイテックス
41 ニューロング秋田株式会社
15 株式会社オーエスイー
42 ニューロング技研株式会社
16 大森建設株式会社
43 日立オートモティブシステムズステアリング株式会社
17 小林工業株式会社
44 株式会社マツザワ
18 株式会社五洋電子
45 万六建設株式会社
19 株式会社沢木組
46 三菱マテリアル株式会社 秋田製錬所
20 株式会社三義
47 三菱マテリアルテクノ株式会社 秋田支店
21 株式会社山王電機製作所
48 三菱マテリアル電子化成株式会社
22 柴田工事調査株式会社
49 ミツミ電機株式会社 秋田事業所
23 JUKI電子工業株式会社
50 宮腰精機株式会社
24 株式会社菅与組
51 株式会社MECARO
25 株式会社スズキ部品秋田
52 山岡工業株式会社
26 株式会社創研コンサルタント
53 山﨑ダイカスト株式会社
27 第一三共プロファーマ株式会社 秋田工場
54 横浜電子工業株式会社
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―― あとがき ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
地域貢献を目的とした産学官連携活動
地域共同テクノセンター長 宮 脇 和 人
今年の4月から秋田高専地域共同テクノセンター長に就任した機械工学科の宮脇です。
いままで,民間企業(産)の技術者として9年間,秋田県庁(官)に公務員として15年間,高専の
教員(学)として3年間と,1人で産学官を経験した貴重な人材だと自負しております。この経験
を生かして,地域貢献を目的とした産学官連携活動を推進して行きたいと考えております。
さて,秋田工業高等専門学校 地域共同テクノセンターが設置されてから11年目を迎え,この間
に公開実験施設であるテクノラボの整備,技術研究会や各種講演会・研修会等の開催など,産学官
連携強化につながる活動を推し進めてきました。最近では特に地域企業の技術相談に力を入れて,
気軽に相談に訪れて頂く環境づくりに努めています。平成l6年度の独立行政法人への移行を契機に
設置された地域共同テクノセンター運営委員会の学外委員に有識者7名の方々を委嘱し,また産学
官民連携を実りあるものに展開するための3名からなる産学連携コーディネーターという体制も軌
道に乗ってきております。さらに,副センター長をはじめ,テクノセンター専門部会の委員もそれ
ぞれセンター運営の仕事を分担し,活発に活動しております。
最近の本校のトピックスとしては,古川元久国家戦略担当大臣が4月15日に来校されました。山
田校長との対談で高専教育の重要性を述べられた後に,宇宙開発を行っている町工場を例にとり,
「宇宙開発も町工場などの技術に支えられている。しかし,そういうところの技術は属人的に持っ
ている技術であって,今の中小零細企業のおかれている状況だと,そういう技術が伝承されなくて
消えてしまう危険性がある。そういう意味では高専等と日本の中小企業の持っている技術が教育の
システムと連携すると,経験により蓄積された技術が次の世代に伝承していくことができるように
なるのではないか。そういう意味で学校と中小企業のもっている技術の連携が,学生にとっても企
業にとっても大事なことになってくるのではないか。
」と,高専と企業の連携の必要性を示されま
した。校内の見学会では,学生の「エコレース及び飛行ロボットの活動」や教員の研究である「木
材を利用した牛の飼料開発の取り組み」
,
「医療・福祉ロボット」をじっくり見学されました。その
後8月に内閣官房 国家戦略室から日本再生戦略が発表されました。その内容は,グリーン(エネル
ギー・環境),ライフ(健康)
,農林漁業(6次産業化)の重点3分野と,担い手としての中小企業
を加えた4つのプロジェクトを中心とする内容です。いくつかの項目に関しては,本学を見学され
て古川大臣が肌身で感じた内容が日本の戦略に取り上げられているように感じました。
本テクノセンター報第10号は,平成23年度の地域共同テクノセンターの活動をまとめたものです。
本報も皆様に時節を得た適切なる情報公開や活動内容の速やかなる報告をお届けすることを目指し
て編集いたしましたが,内容の更なる充実・改善を図るために,皆様方の忌悼のないご意見,ご要
望等をお寄せいただきたくお願い申し上げます。本校の持つポテンシャリテイとシーズの紹介,企
業ニーズの具体的掘り下げなど,双方の融合を図り,そのことにより産学官民連携の実りある成果
が生まれてくるものと確信いたしております。本テクノセンター報が,その一助になれば幸いです。
今後とも,産学協力会会員をはじめとする産業界の方々,また官公庁,教育研究機関などの関連す
る方々の更なるご支援をよろしくお願い申し上げます。
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飯島
コミュニティー
センター入口
約30分
連 絡 先
秋田工業高等専門学校企画室
〒011-8511 秋田市飯島文京町1番1号
TEL 018-847-6106(直通) FAX 018-857-3191
URL http://akita-nct.jp E-mail:[email protected]
10
◎発行/平成24年11月 ◎発行者/秋田工業高等専門学校