豪ドルの対円相場の考え方と今後の見通し

Column
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「投資のヒント」
2013年10月30日
豪ドルの対円相場の考え方と今後の見通し
●米国債務上限問題が決着し、今後の豪ドル・円相場は、①米ドル・円相場の動向と②オーストラリア景気の回復がカギを握る。
●米ドル・円相場は、日銀による異次元の金融緩和とFRBによる量的金融緩和縮小により、米ドル高・円安の基調は継続へ。
●豪ドル・米ドル相場は、政権交代に伴う内需回復期待と豪ドル高への警戒感から一定範囲内での推移となる見込み。
●豪ドルの対円相場は、米ドル高・円安基調にサポートされ、緩やかな豪ドル高・円安が進展すると予想される。
 豪ドル・円相場を米ドルを中心に考える
2013年の豪ドルの対円相場は、4月11日の1豪ドル=
105.28円をピークに下落基調に転じ、8月7日には1豪ド
ル=86.86円の年初来安値を付けました。その後、豪ド
ルは対円で上昇傾向にあり、足元では1豪ドル=94円
台まで回復しました(図1)。
こうした豪ドルの対円相場の動きを把握するためには、
豪ドル・円相場は基軸通貨である米ドルを中心に「米ド
ル・円レート」と「豪ドル・米ドルレート」の組み合わせ
よって決まっていることを理解することが重要です。
仮に現在、1米ドル=100円、1豪ドル=0.95米ドルであ
ると仮定すると、豪ドルの対円相場は100(米ドル/円)
×0.95(豪ドル/米ドル)=95円と計算することができま
す(図2)。
(図1)オーストラリアの対円・米ドル相場と米ドル・円の推移
110
(2012年1月2日~2013年10月22日、日次)
(円)
豪ドル高・円安
米ドル高・円安
105
100
豪ドル安・円高
米ドル安・円高
95
90
85
(米ドル)
1.10
80
豪ドル・米ドルレート(②)
75
10月16日
米国債務上限
引き上げ合意
豪ドル高
米ドル安
0.90
9月7日 豪総選挙
12/7
1.00
13/1
0.85
13/7
(年/月)
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
(図2)豪ドルの対円相場(クロス円レート)の関係
※1米ドル=100円、1豪ドル=0.95米ドルの場合
円安
米ドル高
円高
米ドル安
米ドル・円レート(1米ドル=○円)
豪ドル高
米ドル安
豪ドル・
米ドルレート
( 豪ドル=○米ドル)
この関係を4月以降の為替市場の動きに当てはめて
みると、米ドル・円相場は概ね1米ドル=100円前後の
横ばいで推移してきたことから、4月以降の豪ドルの対
円相場は、主に豪ドルの対米ドルでの変動によって大
きく左右されてきたと言うことができます。
この背景としては、5月22日のバーナンキFRB(米連
邦準備制度理事会)議長の言及を契機に米国量的金
融緩和の早期縮小への懸念が高まったことや、10月に
は米国債務上限問題が浮上したことなど、過去数ヵ月
は米国の金融・財政政策が豪ドル相場に大きく影響し
た局面だったと言えます。
しかし、9月17-18日のFOMC(連邦公開市場委員会)
での量的金融緩和の縮小見送りや、10月16日の米国
債務上限の引き上げ合意などを受けて、豪ドル・円相
場をとりまく市場環境も変化しつつあります。次頁以降、
2014年に向けた豪ドルの対円相場の行方を占う上で、
①米ドル・円相場の市場環境と、②豪ドル・米ドル相場
の市場環境、について解説します。
12/1
1.05
0.95
5月22日
バーナンキFRB議長
量的金融緩和の縮小に言及
豪ドル安
米ドル高
 4月以降の豪ドル・円相場の変動要因
米ドル・円レート(①)
豪ドル・円レート
(①×②)
1
豪ドル安
米ドル高
110
105
100
95
90
85
1.05
115.5
110.3
105.0
99.8
94.5
89.3
1.03
112.8
107.6
102.5
97.4
92.3
87.1
1.00
110.0
105.0
100.0
95.0
90.0
85.0
0.98
107.3
102.4
97.5
92.6
87.8
82.9
0.95
104.5
99.8
95.0
90.3
85.5
80.8
0.93
101.8
97.1
92.5
87.9
83.3
78.6
0.90
99.0
94.5
90.0
85.5
81.0
76.5
0.88
96.3
91.9
87.5
83.1
78.8
74.4
0.85
93.5
89.3
85.0
80.8
76.5
72.3
豪ドル・円レート(1豪ドル=○円)
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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(図3)米ドル・円レートと日米の中央銀行の
バランスシート格差の推移
(2007年1月1日~2013年10月22日、日次)
 米ドル・円相場は2014年も円安傾向へ
まず、米ドル・円相場の市場環境に関しては、2012年12
月の第2次安倍政権の発足以降、日銀による積極的な量
的金融緩和が米ドル高・円安を促す要因となっています。
図3は日米中央銀行のバランスシート格差(GDP比)と米
ドル・円相場の関係を比較したグラフです。2011年までは、
日銀と比較してFRBがより積極的な量的金融緩和を行っ
てきたことから、日米中央銀行のバランスシート格差が縮
小し、これに連動するように円高・米ドル安基調が続いて
きました。
しかし、2013年に入ると日米の金融政策の方向性に大き
な変化が生まれています。米国では、米国景気の回復に
伴って、FRBは量的金融緩和の縮小を検討し始め、来年
以降、量的金融緩和は緩やかに縮小に向かうとみられて
います。一方、日本では、3月20日の黒田日銀総裁の就任
後、「異次元の金融緩和」政策が採られ、デフレ脱却に向
けて積極的な緩和策が継続される見込みです。
こうした日米の金融政策の方向性の違いから、2014年
の米ドル・円相場は引き続き米ドル高・円安圧力が高まり
やすい環境が続くと考えられます。
 中長期的にはシェール革命が米ドルの支持要因
(円)
(GDP比、%)
20
135
米ドル/円レート(左軸)
日銀とFRBのバランスシート格差(日銀-FRB、右軸)
125
17.5
115
15
105
12.5
95
10
米ドル高・円安
85
7.5
米ドル安・円高
75
5
07
08
09
10
11
12
13
(年)
※バランスシートは9月13日時点、週次
(出所)IMF「世界経済見通し2013年10月」およびBloombergのデータを
基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
(図4)シェール革命による米国経済の構造変化(イメージ図)
また、中長期的には、米国におけるシェール革命が米
シェール革命
ドルを支える要因となると考えられます。
(シェールガス・オイル生産増)
米国ではシェール革命に伴って、様々な経済構造の
変化が生まれると期待されています。まず、シェール革
エネルギー
生産量の増加
エネルギー
コスト減少
エネルギー
自給率向上
企業収益改善
個人消費増加
エネルギー輸入
中東依存度低下
貿易収支改善
税収拡大
国防費削減
命の直接的な影響としては、シェールガス/シェールオ
イルの生産増加は、米国のエネルギー自給率の向上を
通じて、貿易収支の改善に繋がると見込まれます。
また、安価なシェールガスはエネルギーコストの減少
をもたらし、企業収益の改善や個人消費の増加などに
も波及することが期待されています。米国景気の回復
による税収拡大や、エネルギー輸入の中東依存度低下
財政赤字削減
による国防費削減などの要因は、財政赤字の削減にも
寄与すると考えられます。
シェール革命による直接的・間接的な波及効果により、
「双子の赤字」改善期待、強い米国の復活
米国の「双子の赤字」問題への改善期待は、中長期的
に米ドルをサポートすると見込まれます(図4)。
米ドル高要因
※上記は一般的な傾向を述べたイメージ図であり、米国経済の構造
変化のすべてを表したものではありません。
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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 今後はオーストラリア景気の回復が豪ドルの
下支え役に
(図5)オーストラリアの消費者信頼感指数と
企業信頼感指数の推移
(2007年1月~2013年10月、月次)
一方、豪ドル・米ドル相場の市場環境については、米国
金融・財政政策への懸念が後退する中で、今後はオースト
(中立=0)
30.0
(中立=100)
130
ラリアの内需回復が豪ドルをサポートする要因となると期
待されます。
120
20.0
110
10.0
100
0.0
オーストラリアでは、9月7日の総選挙において保守連合
による政権交代が実現し、9月18日に発足したアボット政権
によって企業活動の活性化やインフラ投資が推進される期
待感が高まっています。与党・保守連合は伝統的に産業界
との関係が深く、炭素税・資源税の撤廃や法人税引き下げ
90
-10.0
80
-20.0
などによる企業活動の活性化を目指した政策への転換を
公約として掲げています。実際、新政権への政策期待など
から、オーストラリアの企業信頼感指数は9月に12.3と2010
年4月以来となる高水準へ上昇しました(図5)。
70
また、政権交代による政治的不透明感の解消や、過去の
RBA(オーストラリア準備銀行)による利下げによる家計バ
ランスシートの改善効果などから、消費者心理の改善傾向
にあります。9月の消費者信頼感指数は110.6と2010年12
月以来の高水準をつけました。過去では、消費者心理の改
-30.0
消費者信頼感指数(左軸)
企業信頼感指数(右軸)
60
-40.0
07
08
09
10
11
12
13
※企業信頼感指数は2013年9月まで
(出所)ウェストパック銀行/メルボルン研究所、ナショナルオーストラリア
銀行(NAB)のデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント
作成
善が実際の個人消費の回復に繋がるまでにおよそ6か月
程度の時間差を伴う傾向があり、2013年後半から2014年
にかけて、消費者心理の回復が個人消費や設備投資・雇
用などの実体経済の回復に波及することが期待されます
(図6)オーストラリアの内需回復のプロセス(イメージ図)
政権交代による
不透明感の解消
RBAの利下げによる
家計バランスシート改善
(図6)。
 2014年に向けた豪ドルの対円相場の見通し
住宅価格・株価上昇
債務負担軽減
消費者心理の改善
以上、豪ドルの対円相場の環境を、米ドル・円と豪ド
ル・米ドルの環境に分けて考えてみました。米ドル・円
個人消費回復
や米国量的金融緩和の縮小などから米ドル高・円安基
調が続くと思われます。一方、豪ドルと米ドルの関係か
らは、オーストラリアの内需回復は今後の豪ドルの下
企業マインド回復
支え役となると見込まれるものの、早過ぎる豪ドル高は
オーストラリア景気の回復の勢いを抑える要因にもなり
えることから、豪ドルの米ドル相場は当面横ばいで推
内需回復の好循環
相場は2014年以降も、日銀による異次元の金融緩和
雇用者増
設備投資回復
移するものと考えられます。
その意味で、2014年に向けた豪ドルの対円相場(クロ
ス円レート)は、豪ドル・米ドル相場よりも米ドル・円相
※上記は一般的な傾向を述べたイメージ図であり、内需回復のすべて
を表したものではありません。
場の方向性により左右されやすくなると見込まれ、緩や
かな豪ドル高・円安基調が続くと予想されます。
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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