287号 - 結核予防会

9月24日〜30日
結核予防週間
全国一斉複十字シール運動街頭キャンペーン開催!!
結核予防会では、
9月23日
(秋分の日)
を中心に、
結核・複十字シール運動について広く一般の方々
に知ってもらうため、全国各地でキャンペーンを
実施する予定です(各都道府県での実施内容は
p6〜8に掲載)
。
今年も「結核と闘うシール坊や」のキャラク
ターグッズを多数取りそろえ、本部・支部一丸と
なって結核制圧の機運を盛り上げます!
写真:過去2年間のキャンペーンより
奈良
静岡
2002年キャンペーングッズ
2002年キャンペーングッズ
トレーナー
Tシャツ
のぼり・たすき
( 左から時 計 回り)携 帯ストラップ、キャンペーン
カード(カレンダー付き/結核予防婦人会作成)、
複十字シール運動リーフレット、応急バン
風船
募金箱
Message
結核予防週間にあたって
遠藤
弘良
えんどう
ひろよし
厚生労働省健康局結核感染症課長
この度8月30日付で,厚生労働省健康局結核感染症課長
に就任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
本年も9月24日から30日までの「結核予防週間」が始ま
観できない状況にあります。そのため,今後とも結核の状
況に対して,十分に注意を払って見守っていくとともに,
結核の制圧への新たな努力が必要とされています。
ります。この期間中は都道府県や結核予防会等関係団体と
厚生労働省は,新しい結核対策を探るため,平成12年度
協力して,各種普及啓発事業を展開しております。本年度
に結核緊急実態調査を実施しました。その結果を踏まえ中
のスローガンは「結核制圧への新しい歩みを始めよう」と
長期的な視野から,結核対策の見直しのための検討を厚生
定め,今までの結核対策の見直しを進め,新しい結核対策
科学審議会感染症分科会結核部会にて行い,部会報告「結
を推進することによって,21世紀半ばまでに結核を制圧す
核対策の包括的見直しに関する提言」により,集団的・一
るという目標に向かって前進していくことをスローガンと
律的な結核対策から個別的・リスク別対策への大きな方向
致しました。
転換を含む提言が行われたところであります。今後,この
我が国の結核の現状は,かつて国民病として恐れられ,
国をあげて対策を行ってきた結果,大幅な改善を遂げてま
提言を踏まえて,現在の結核対策を前進させることとして
おります。
いりました。しかしながら,ここ数年を見ると今なお年間
しかしながら,引き続き結核対策を推進していくうえで,
約4万人の新規患者が発生し,約3千人が亡くなっている
国民一人一人の理解と協力が必要不可欠であります。この
など,依然として,罹患率,死亡率ともに先進諸国の中で
結核予防週間を機会に国民の結核に対する関心が大いに高
も最も高い状況にあります。さらに平成9年からは,それ
まり,今世紀半ばまでに,結核制圧が結実するよう共に歩
まで,30年以上減少を続けてきた新規登録患者数及び罹患
みを進めましょう。
率が増加に転じたため,平成11年7月には「結核緊急事態
宣言」を行い,結核対策の重要性の再認識を図ることとし
ました。その結果,平成12年からは罹患率が再び減少に転
じたものの,改善傾向が定着したものかどうかは,なお楽
目 次
■メッセージ 結核予防週間にあたって
1
遠藤 弘良
■ツ反・BCGに関するQ&A〜予測される制度改正までの対応〜
2
■結核予防週間特集
実施要領 ・ 優良市町村表彰 ・けいりん号伝達式
3
結核予防週間に寄せて −結核制圧に向けての大団結を−
4
森
亨
平成14年度結核予防週間実施予定行事
6
■ずいひつ おもと
9
北見篤四郎
■今後の健診のあり方を探る Vol.9
健診事業のあり方検討委員会進捗状況 増山 英則
10
■特対事業
福島県県北保健所 症例検討会,モデル診査会公開研修会
12
本田あゆみ
■DOTS
全国に広がる院内DOTS 〜アンケート調査から〜
14
小林 典子
複十字病院 院内DOTS患者対象アンケート
16
齊藤ゆき子
■カンボジア国の結核実態調査に参加して
〜放射線技師の立場から〜
中野
静男
18
■動き出したアフガニスタンの結核対策
復興後の協力に関する調査 ・ 協議報告
20
須知 雅史
■結核国際研修40周年記念セミナー
22
大菅 克知
■第8回 Wolfheze Workshop on TB Control in Europe
に参加して
24
大森 正子
■国際連携と民間機関の活用 〜バングラデシュでの2つの試み〜
25
石川 信克
■第14回国際エイズ会議に出席して
26
島尾 忠男
■思い出の人を偲んで 〜朽木五郎作先生 島尾 忠男
28
■第3回アドボカシー勉強会報告 −効果的な広報活動とは−
30
市川 雄司
▽マスコミ資料(結核・たばこ・肺がん関係)
21・27
▽予防会だより
31
〔表 紙〕結核予防週間ポスター(竹下景子&シール坊や)
〔カット〕佐藤奈津江
09/2002 複十字 No.287
1
ツ反・BCGに関する Q & A
〜予測される制度改正までの対応〜
厚生科学審議会感染症分科会結核部会の提言を受け,厚生労働
省では現在制度改正に向けて検討を進めているところです。
ツベルクリン反応検査(以下「ツ反検査」)・BCG接種に
関する制度改正については,一部が前倒しで実施されることと
なり,現場でいろいろな疑問やとまどいが予想されます。制度
改正までの過渡期に一般の人々からの質問にどのような説明を
すればいいのか,Q&Aのかたちでまとめました。
Q1
なぜ小中学校のツ反・BCG
が廃止されるのですか。
0〜14歳の結核罹患率(人口10
万対)は1962年の205.1から2000
年には1.2まで著しく低下,それに
伴い小1・中1のツ反検査のスクリ
ーニングを用いた健康診断は,患者
発見率が極めて低くなっていました。
また,BCG再接種の医学的効果は
明らかになっておらず,再接種によ
る強いツ反により不必要な予防内服・
精密検査を実施していたり,その後
の接触者健診等での結核感染の診断
の妨げになったり,という弊害もあ
りました。そこで,これまでの一律
的な対策をハイリスク個人に対する
精密検査,地域での接触者健診の強
化,といった対策にシフトするとい
うことで,廃止する方向で検討が進
められています。
A
Q2
これまで患者発見率が低い
のに小1・中1にツ反検査を
実施していたのはなぜですか?
これまで入学時のツ反検査は,
結核患者・既感染者を選び精密検
査にまわすためのふるいわけ健診
としての目的と同時に,乳幼児で
のBCG接種漏れ者対策(技術評
価)
,という意味合いで行われてき
ました。今回は健診としての効率
の低下と,BCG再接種の有効性
が証明されていないこと,たとえ
効果があったとしてもその程度は
ごくわずかで,制度の廃止によっ
てたとえこの部分が失われても,
他の面での対策(接触者健診・ハ
イリスク者への対応)を強化すれ
ばその程度のロスはカバーできる
と考えて廃止の方向を決めたのです。
A
Q3
乳幼児に対するBCGは効
果があるのですか。
乳児の結核感染者の発病率は50%,
1〜5歳でも約25%と大変高く,発病
しても多くは無症状(3/4)であり
ながら,初期肺結核症で無治療の場
合の予後は死亡率23.9%,1年以内に
90%が死亡,というデータも出てい
ます。乳幼児にはそのリスクの高さ
から,BCG接種をできるだけ早い
時期に,確実に実施する必要がある
のです。初回BCG接種をすると結
核の発病率はしなかった場合の4分
の1になり,特に乳児で深刻な問題に
なる髄膜炎や粟粒結核にも有効であ
ることが証明されています。
A
Q4
乳幼児に対してこれまでツ反
検査を実施して陰性者のみ
にBCG接種をしていたのに,今回乳
児に対してはツ反検査を省いて直接B
CG接種をすること
(直接接種)になっ
たのはなぜですか。
BCG接種に先立つツ反検査によ
って起こる偽の陽性のために接種の
機会が失われる者が出るのを防いで,
接種率を向上させることができるこ
と,ツ反検査実施にかかる時間・労
力が節約できることが期待されます。
ただし,結核に感染していた児に直
接接種をすると「コッホ現象」とい
う強い局所反応が見られますが,そ
れほど激烈な反応ではないので心配
は要りません。むしろこれにより感
染の有無を探ることもできると考え
られます。もちろん接種に先立って
家族歴などを綿密に聞いて,感染の
機会がありそうな場合には直接接種
はできません。また対象年齢は生後
3〜6カ月(遅くとも12カ月)まで
と考えられます。
A
Q5
ツ反・BCGに関する制度が
改正されるのはいつですか。
小1・中1のツ反検査・BCG接
種については,平成15年4月から政
令により廃止することを検討中です。
乳幼児のBCG直接接種については,
平成16年4月を目途としている結核
予防法改正を経て実施する方向で検
討されています。今年度からBCG
接種を受ける乳幼児では接種の機会
が1度きりとなりますので,接種率
及び接種技術を確実なものにする必
要がますます大きくなりました。こ
のため新たな制度では1歳6カ月健診,
3歳児健診等でBCG接種状況を確
認すること,針痕の確認で接種技術
の評価をすることなどを検討してい
ます。
A
Q6
BCG接種を受けた子供のお
母さんから「うちの子は針の
痕が残っていないのでもう1度接種し
たいのですが」と相談があった場合,
どう答えればいいでしょうか。
痕が残っていないからといって,
必ずしも免疫がないということでは
ありませんので,再接種を勧めるこ
とはしないでください。ただし,そ
ういった例は銘記しておき,接種技
術の評価につなげることが重要です。
針痕の確認は,本人家族に結果を知
らせるためではなく,行政側でデー
タとして蓄積し,技術向上のために
役立てる性質のものです。
A
Q7
4歳までにBCG接種を受け
損なった5歳の子供がいて,
小中学校でのBCG再接種が来年度
からなくなることになった場合,今後こ
の子がBCG接種を受ける機会はない
のでしょうか。
小学校入学時でBCG接種歴の
確認はしますが,接種歴がなくて
もその際には接種しません。ただし,
この子が明らかな結核感染のリス
クにさらされる場合(例えば,親
の転勤で途上国に移住するなど)
には,当然自主的に接種を受ける
ことを勧められることが好ましい
と思われます。
A
文責
2
09/2002 複十字 No.287
編集部
平成14年度結核予防週間実施要領
9月24日
(火)〜30日
(月)
標語「結核制圧への新しい歩みを始めよう」
1 趣 旨
我が国の結核事情は、
かつて多くの人々の命が奪い去られた時代には想像もできなかったほどの大幅な改善を遂げてきた。
しかしながら、
我が国の結核の現状は、
ここ数年を見ると年間約4万人の新規患者が発生し、
約3千人が亡くなっているなど、
罹患率、
死亡率は先進
諸国の中で最も高い状況にある。
さらに平成9年からは、
それまで30年以上減少を続けてきた新規登録患者数及び罹患率が増加に転じたため、
厚生
省では平成11年7月に「結核緊急事態宣言」を行い、
その後、
平成12年には罹患率が減少しているものの、
依然として「緊急事態宣言」前と同水準で
推移している。そのため、
今後ともわが国の結核の状況に対しては十分に注意を払っていくべきであり、
関係団体、
地方自治体及び関係省庁には、
様々
な結核問題に対し各種対策を推進していただいているところであるが、
結核制圧のためには今後なお一層の努力が期待されているところである。
現在のわが国では、
旧世紀になしえなかった結核制圧に向けて、
結核対策の見直しを進めているところであるが、
新しい結核対策を推進してい
く上で、
国民一人一人の理解と協力が必要不可欠である。結核予防週間を機会に国民の結核に対する関心を大いに高めるとともに、
結核に関す
る知識を深め、
結核対策の推進に一丸となって取り組む気運を高めることを趣旨とするものである。
2 主 催
厚生労働省、都道府県、政令市、特別区、社団法人日本医師会、財
団法人結核予防会、社団法人全国結核予防婦人団体連絡協議会
及び財団法人健康・体力づくり事業財団
3 後 援
文部科学省、
日本放送協会、
社団法人日本新聞協会、
社団法人日本
民間放送連盟、
財団法人日本学校保健会、
社団法人国民健康保険
中央会、健康保険組合連合会、社団法人生命保険協会、全国地域
婦人団体連絡協議会、社団法人全国地区衛生組織連合会、社団
法人日本放射線技師会及び社団法人日本看護協会
4 実施期間
平成14年9月24日
(火)から9月30日
(月)
まで
5 重点目標
(1) 結核予防法(昭和26年法律第96号)の制定から半世紀が経過
した今、
旧世紀における結核対策の見直しを行い、結核制圧に向
けての新たなる結核対策の推進を図る。
(2) 国民の結核に対する正しい理解を得るため、地域の団体組織
等を通じて、
より一層の普及啓発を図る。
6 結核予防週間の標語
「結核制圧への新しい歩みを始めよう」
その他実施機関によって適宜作成するものとする。
7 実施行事等
(1)結核予防週間の周知(各主催団体)
結核予防週間のポスターを作成し、
関係各機関へ配布するほか、
電車・バス内での広告、懸垂幕、電光掲示板等により国民一般に
対して結核予防週間の周知を図る。
(2)結核対策推進優良市町村の表彰(財団法人結核予防会)
結核対策の推進を図るため、結核対策全般にわたって優良な
第45回胸部検診車「けいりん号」完成伝達式
成 績をおさめている市町村に対し、財団法人結核予防会総裁表
彰を行う。
(3)資料の配布(各主催団体)
結核に対する関心を高めるため、関係各機関等に結核予防の
ためのポスター、
リーフレット等を配布する。
(4)講習会等の開催(各主催団体)
結核予防活動を推進するため、社団法人全国結核予防婦人団
体連絡協議会を中心とした地区組織の拡充強化を図るとともに、
各地において講演会、
講習会、
パネル展等を開催する。
(5)児童・生徒への結核の知識の普及(各自治体)
結核の正しい知識を児童・生徒に普及するため、全国の小中高
等学校において学級活動、学校行事等を通じて指導するよう、文
部科学省の後援により呼びかける。
(6)街頭健康診断等の実施(各自治体)
結核予防週間の周知と国民一般の結核に対する関心を喚起す
るため、街頭健康診断を行うほか、結核予防を周知する語句の入
った風船、
広報ポケットティッシュ等を手渡すなどして結核予防思想
の普及を図る。
(7)報道機関等との連携(各主催団体)
全国の主要な報道機関にリーフレット等の広報資料を配付し、
結
核予防週間の周知、
行事の取材等を依頼する。
広報誌、関係機関誌等に結核予防に関する記事が掲載される
よう積極的に依頼する。
(8)その他
上記のほか、各地域で適宜結核予防週間の趣旨に沿った行事
を行う。
(例) 一日保健所長、
各種集会の開催、
標語の募集等
第46回結核対策推進優良市町村表彰式
平成14年9月25日
(水)
9:55〜10:55
於、
ホテルオークラ オークルーム
結核予防会に対し、
日本自転車振興会から「結核検診車の整備事業」
の一環として補助金が交付され、
自己資金を加え、
胸部検診車「けいりん号」
9台を製作、各地で活動することになりました。当伝達式では、総裁秋篠宮
妃殿下から各受配支部に授鍵が行われます。
平成14年9月25日
(水)11:10〜11:45
於、
ホテルオークラ エメラルドルーム
結核対策全般にわたって優秀な成績を修めた2市10町5村に対して、
総
裁秋篠宮妃殿下より、表彰状授与が行われます。なお、被表彰市町村代
表者は、午後2時から皇居において、天皇皇后両陛下の拝謁を賜ることと
なっております。
結核対策推進優良市町村一覧
けいりん号配車先一覧
北海道支部
大阪府支部
埼玉県支部
岡山県支部
新潟県支部
山口県支部
静岡県支部
佐賀県支部
三重県支部
都道府県名
市町村名
都道府県名
市町村名
北海道
宮城県
山形県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
長野県
洞爺村
北上町
真室川町
牛久市
藤岡町
箕郷町
宮代町
千葉市
長谷村
新潟県
富山県
岐阜県
岡山県
香川県
愛媛県
熊本県
宮崎県
山古志村
大門町
御嵩町
哲多町
三野町
柳谷村
産山村
野尻町
09/2002 複十字 No.287
3
TB
9月24日〜30日 結核予防週間
結核制圧への新しい歩みを始めよう
WEEK
結核予防週間に寄せて
−結核制圧に向けての大団結を−
結核研究所長
森
亨
はずみのついた世界の結核予防運動
DOTS戦略で突破口を開いた世界の結核対策運動
は,このところその勢いをいよいよ強めてとどまると
ころを知らない感がある。WHOを中心に世界の官民
の結核対策・開発援助機関を糾合した運動体として発
足したストップ結核パートナーシップは,2000年の世
界結核対策閣僚会議(オランダ)を経て,2001年の第
1回パートナーシップ・フォーラムをもって正式にそ
の出航を全世界に向けて宣言した。このほどその決意
表明プラス行動指針ともいうべき「ストップ結核世界
プラン」を発表した(写真)。この文書は,WHOは
もとより世界銀行,米国国際開発庁,世界銀行,ソロ
ス財団などがいわば認知したものである。
これと並行して先進国による途上国の結核対策への
援助がますます盛んになっている。そのきわめつけが,
昨年事実上発足した
世界エイズ・結核・
マラリア対策基金であ
る。米国,日本など
の政府とビル・ゲイ
ツ財団など民間の出
資で,現在までの基
金の規模は20億ドル
(2400億円)に達し
ており,これまで既
に60件(アジアでは
中国,北朝鮮,モン
ストップ結核世界プラン
ゴルなど)に対して
4
09/2002 複十字 No.287
700億円を拠出している(エイズに6割,結核には16
%)。少し前に発足した世界抗結核薬機構(DOTS
を実践する国や団体に対して良質の抗結核薬を無償で
供与する)の活動,さらに米国,英国などによる二国
間協力への投資の増加などとあわせて,少なくともモ
ノに関する限り世界の結核対策は景色が一変したとい
える。もちろんモノだけでは何もできないし,腐敗に
ついても警戒しなければならないが,結核はじめ感染
症に対するこれまでにない世界的な意思の高まりであ
ることはまちがいない。このようにして世界は「患者
の70%を発見し,その85%を治癒する」というゴール
の2005年達成に向けてひた走っている。
巻き返しに成功した米国
先進国として結核逆転増加の辛酸を味わった米国は,
90年代に対策・研究を含むあらゆる面で猛烈な巻き返
しを図り,それにがっちり成功したように見える。最
近CDC(疾病予防管理センター)は「米国低罹患率
州における結核根絶への進歩」という文書を発行し,
結核罹患率は92年の10.5(人口10万対)から00年まで
8年間連続して低下し続けて5.8にまでほぼ半減した
こと,00年には22州で罹患率は3.5以下(米国結核根
絶審議会が結核低まん延の定義として00年に向けて掲
げた暫定目標)を達成したことを述べている。そして,
上記審議会は89年に出した「米国結核早期根絶計画」
の改訂を求めている由である。事実上の勝利宣言であ
ろう。そればかりか,余勢を駆って世界的に「再興感
染症結核」のアドボカシーを広め,いうならば世界戦
略に乗り出した感がある。オランダ結核予防会などは,
米国国際援助局の予算で途上国への技術協力事業を請
け負っている。
このまま続くか,日本の改善傾向?
さて,日本に目を戻すと,結核罹患率は96年の後の
逆転上昇を経て,99年をピークに低下傾向に戻り,最
近の発表によれば01年も前年に続けてかなりクリアー
な減少傾向を示した。その詳しい分析は本誌No.288
(平成14年11月号)に譲るが,罹患率は新基準で見て,
人口10万対32.4(98年),34.6(99年),31.0(00年),
27.9(01年)と,2年連続10%減である。これは我々
にとってたいへん喜ばしいことである。しかしそもそ
もこの数年間の思わしくない傾向の原因と我々が考え
ている要因,すなわち 1 人口高齢化による高齢者結核
の増加とここからの結核伝播, 2 医学的・社会経済的
結核弱者への偏在傾向,が解消したり,それらへの対
策が成功したわけではない。だからこの「改善」につ
いて手放しで喜ぶことはできない。むしろ少し長い目
で見て96年から01年までの罹患率の変化は年3.5%程
度の減であり,これは80年頃からの緩やかな低下傾向
に戻っただけのことなのかも知れない。のど元過ぎて
熱さを忘れることのないように引き続き注意深く観察
を続け,必要な対策を進めなければならない。
新しい対策の具体化と確立に向けて
この3月に出された厚生科学審議会感染症分科会結
核部会の報告「結核対策の包括的見直しに関する提言」
は,近い将来の結核予防法の改正を含めて,新しい時
代の結核対策の姿についての考え方を述べている。そ
の一部分は学校健診(ツベルクリン反応検査)やBC
G再接種の廃止という形で03年度から実施の方向が打
ち出されている。しかし本来これらのこれまでの方策
の「間引き」的なものはそれだけで行われるべきもの
でなく,その補完策と一体となった,新しい体系とし
て施行されるべきものであることを忘れてはなるまい。
つまり,改訂は対策の力点を予防から治療へ,集団的
対応から個別的対応へとシフトさせつつ,しかも全般的
に対策効果を高める(例えば罹患率低下を加速する)
ことをねらっているのである。これがきちんと受け止
められないと,既に早くも疑問を投げかけられたよう
に「緊急事態だなんて言っておきながらなぜ間引きな
の?」ということになる。
さて,そこで問題はスクラップ&ビルドのビルドの
方である。特に大きい部分として医療の向上という課
題がある。米国ではこれに対する回答がDOTSであ
った。最近の消息では,ノルウェーでもすべての患者
に直接服薬指導をするという新しい要綱が承認された
由である。医療制度の違いからこれを直ちに日本に適
用することはできないとしても,実効上これに近いこ
とをすべきであり,そうしなければ治療の強化のスロー
ガンは単なるリップサービスとなろう。すでに大阪市
ではホームレスでない治療継続困難者に対する個別服
薬指導が「ふれあいDOTS」として,また新宿保健
所でも同様のサービスが行われている。結核治療を主
治医と患者の契約関係だけに委ねることなく,公の責
任で治癒を見届けるために積極的に介入すること,そ
のためのシステムづくりがどうしても必要である。
よりよい改革実践のための大団結を
これを核として,またこれを支えるために,薬剤の
安定供給(昨年業界から陳情が出されたように,主要
な抗結核薬が原価割れのため供給が維持できないとか,
キノロン剤のような世界的に用いられている薬剤が日
本では正式には結核患者に使えないといった事態の回
避),患者に優しい入院治療の確保,ルーチンの治療
評価が正確に行われること,権威ある治療・診断の診
査が行われて合理的な治療や入退院が行われること,
などの条件も整えられる必要がある。これを可能にす
るのが,国・自治体の結核対策への確固たる姿勢であ
る。米国で行われたように,結核予防会はじめ関係団
体・機関の大団結Coalitionが,このような行政の姿勢
を注意深く監視し,強く後押しすることが今後ますます
重要になると思う。これには10年前に立ち上げたことの
ある「結核半減運動協議会」,そして最近の「全国結核
対策推進協議会」の活動の経験を生かすべきであろう。
この改訂が日本の結核の自然史を変更するものにな
るか,これまでの惰性のコースをたどるだけのものに
終始するか,我々は10年後に審判される選択をいま迫
られているといえる。
09/2002 複十字 No.287
5
平成14年度結核予防週間実施予定行事
(複十字シール運動キャンペーン)
*写真は昨年の実施模様
北海道
①9月下旬 札幌市中心部にて北海道健康をまもる婦人団体連
合会街頭募金 ②9月下旬 札幌市中心部にて札幌市健康をま
もる婦人のつどい街頭募金 ③9/24〜30中央区、
手稲区、
西区、
厚別区、北区等で街頭募金 ④各保健所等による「健康まつり」
実施時、
パネル・ビデオを貸し出し、
募金活動を実施
青 森
①9/24〜25青森市内のショッピングセンター等4カ所にて街頭募金・
無料結核健診 ②9/2青森市内の繁華街(新町通り)にて街頭
パレード
岩 手
①9/23北上市内(地元婦人会と調整中)
にて街頭募金、無料結
核健診(予定)、普及啓発グッズの配布等の実施 ②健診会場
及び市町村健康まつり等での普及啓発グッズ配布等
宮 城
①9/23藤崎「アネックスおおまち」にて宮婦連健康を守る母の会
による街頭募金、無料健康相談(血管年齢測定、血圧測定等)
②8/14角田市民まつりにて角田市婦人会による街頭募金 ③8月
〜9月 県内小中学校に「結核マンガ」配布
秋 田
①9/1秋田駅前アゴラ広場にて、
支部職員、
結核予防婦人会県連
正副会長及び地区連合会の正副会長と秋田市周辺地区の会員
に協力頂いて、街頭募金を行う。会場となる広場には、検診車や
募金での寄贈車・パネル展示等を行い、募金者には着ぐるみと撮
ったポラロイド写真を差し上げる。その他、
市内3カ所の電光ニュー
スでのPR、
看板やのぼりの設置、
新聞広告、
パンフレット・リーフレッ
ト等のちらしの配布を行う
②7/14湯沢市のグランドホテルにて
「秋田県ボランティア祭」に参加し、
パネル展示やちらしの配布を行
い、参集者への啓発普及を図る ③9/14イオンショッピングセンタ
ー
(市内大型スーパー)
にて「健康チェック&ケアフェスタ」を開催し、
医療看護職員による無料健康相談や、各種の無料健診、運動能
力測定などを行い、
あわせてパネル、
ポスター等の展示とちらしや
ティッシュ、
カットバン等の配布を行い、買物に訪れる県民に対し結
核撲滅を訴え、
その啓蒙に努める
山 形
①9/23県内主要市の繁華街等にて普及啓発用パンフレットの配布、
街頭募金(「がん征圧・結核撲滅街頭キャンペーン」として実施)
②週間中、次のような受診勧奨及び予防週間の周知 1)支部事
務局及び5カ所の検診センターに横断幕を掲示 2)検診車・公用
車等にステッカー貼付 3)職員名札に周知媒体添付 4)テレビス
ポット放映 5)新聞広報
福 島
① 9/24前後、
福島市・郡山市他にてリーフレット・ティッシュ等配布、
街
頭募金 ② 9月中、
地方主要新聞2紙に結核予防週間広告掲載
茨 城
①9/24JR水戸駅、
JR土浦駅、
JR日立駅にて街頭キャンペーンを実
施し、
県・婦人会とともにパンフレットを配布する
栃 木
①9/23 11:00〜13:00宇都宮オリオン通り献血ルーム前にてキャン
ペーン
(街頭募金、
パネル展示、広報資材配布) ②9/24〜30テ
レビスポットCM(15秒・1日6回) ③9/24とちぎテレビ「朝生とちぎ」
にて予防週間について放送 ④9/24〜30ラジオによる広報(20秒・
1日1回) ⑤9/24〜30電光掲示板1日あたり192本(32本×6カ所・
1回10秒)
6
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群 馬
①9/22 群馬県庁舎内にて支部・婦人会共同で街頭キャンペーン
②9/1〜30 太田市他県内6カ所にて街頭電光掲示板に予防週間
のスローガンを流す ③9/21〜30 JR高崎駅ビル電光掲示板に
予防週間のスローガンを流す
埼 玉
①9/23JR浦和駅にて、県・婦人会と共にパンフレット等を配布し、
街頭募金を実施 ②9/24〜30 さいたま新都心駅に4カ所設置の
電光掲示板にてスローガン等の掲示、
県庁本庁舎に懸垂幕の掲示、
JR大宮駅コンコース及びさいたま市庁舎に横断幕の掲示、
ステッカー
を検診車に貼り、
県内を巡回
千 葉
①9/23JR千葉駅構内にキャンペーン用ポスターを掲示(9/24〜30)
するとともに、
同駅前にて千葉県連合婦人会と合同で広報ビラ、
パン
フレット、
応急バン等結核予防会グッズの配布及び街頭募金
東 京
①9/23 13:00〜15:00 渋谷ハチ公前にてキャンペーン。街頭募
金、
街頭アンケート、
広報資材(シール運動リーフレット、
結核予防カー
ド、
シールぼうや携帯ストラップ、
ポケットカレンダー、
風船)配布、
キャ
ラクターと子供の触れ合いコーナー、
シール運動の歌「小さなシー
ルに大きな愛を」
ミニコンサート、
クイズ大会、
無料健康相談、
パネル
展示等。
神奈川
①9/28 11:00〜13:00 JR桜木町駅前にて、
婦人会と合同で街頭
募金、パンフレット配布 ②9/22〜26かながわ県民センター展示
場にて結核・複十字シールパネル展
山 梨
①9/24甲府駅前にてリーフレット・ポケットティッシュの配布並びに
募金活動
長 野
①9/23 11:00〜12:30 長野駅周辺及び東西自由通路Cゾーン内
にて、結核予防婦人会と事業団職員合同で結核予防パンフレット
の配布、街頭募金、保健師による無料健康相談 ②9/24〜30検
診車(胸部・循環器)に垂れ幕をつけPRを行う ③9/23地方新
聞紙上に結核予防週間(結核の現状)
とシール運動について掲
載し、
PR
新 潟
①9/26新潟市民プラザで実施される「結核フォーラム」にて応急バ
ン、
ちらし等配布し、
募金を呼びかける
②「新潟市民健康福祉
まつり」にて応急バン、
ちらし等配布し、
募金を呼びかける
(日程未定)
富 山
①9/23フューチャーシティーファボーレ
(婦中町)
にて、
富山県結核
予防婦人会と共同で結核の啓発普及事業及び複十字シール
募金活動を行う。作芸人磨心による街頭パフォーマンスを実施
②9/1〜30とやま健康パークにて、
がん予防健康展の開催にあわ
せ複十字シール募金活動を行う ③9/28〜29高岡市ふれあい福
祉センターにて、
がん予防健康展の開催にあわせ複十字シール募
金活動を行う。その他、民間のスーパーマーケットに複十字シール
運動ポスター及び禁煙ポスター等の掲示をし、
結核予防の啓発普
及を行う。
石 川
①9/22 14:00〜15:00金沢市香林坊大和デパート前にて、
県・婦人会
と共にパンフレット・風船等配布し街頭募金を行う
(がん征圧月間啓
発活動と併せて実施) ②9/1〜11/30路線バス50台に広告掲示
〔岩手〕
FM岩手がキャンペーン会場から結核予
防週間スペシャル番組を生放送。
1時間にわたり
結核予防を呼びかけました
福
〔東京〕結核と闘うシール坊やのキャラクター
ショー
井
①9/24福井駅前にて結核予防パンフレット等の配布とあわせて街
頭啓発をキャンペーンとして行う。
また、
婦人団体協議会加入団体
が各地域にてキャンペーンを実施する
(日程未定) ②10/3福井
商工会議所国際ホールにて結核予防研修会の開催。講演「高齢
者の結核」
(予定)
静 岡
①9/28静岡県呉服町青葉イベント広場、静岡駅コンコースにて婦
人会・県と合同で街頭キャンペーン ②9/27県総合社会福祉会
館7階大ホールにて静岡県結核予防大会、結核予防功労者の表
彰、
記念講演
愛 知
①9/24〜30垂れ幕の掲揚
岐 阜
①9/28「いきいき健康・福祉・美容フェア&メッセinぎふ」会場でキャ
ンペーン。健康づくりポスターコンクールの表彰式を実施(県図書館、
ショッピングセンター「マーサ」等に展示) ②9/25前後、毎日新聞
朝刊に結核予防の普及啓発の新聞広告を掲載 ③9/15岐阜ラ
ジオ「すこやかモーニング」にて予防週間の告知
三 重
①9/8松阪市文化会館にて、
市の行う健康フェスティバルに合わせ、
婦人会と共に結核予防パンフレット、風船、
ボールペン等を配布す
ると共に募金活動を行う。併せて医師、保健師による結核無料相
談を行う
②9/24〜30 1)各保健所・市町村に本部製作ポスタ
ー・ちらし配布 2)各保健所、
当センターに懸垂幕を掲揚 3)教育委
員会を通じ、県内小中高校へ本部製作ポスター・広報資料配布
4)全検診車にポスター掲示 5)伊勢新聞に広告掲載
滋 賀
①9/22 15:00〜17:00滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール・中ホールに
てレイカディア・シルバーフォーラム
(シルバーファッションデザインコンテ
スト)
においてボーイスカウト・ガールスカウトと合同で街頭募金を予定。
西武大津ショッピングセンターにおいてボーイスカウト・ガールスカウト
と合同で街頭募金を予定 ②9/24JR大津駅前(8:00〜9:00)、
JR
草津駅前(8:00〜9:00)、JR近江八幡駅前(17:00〜18:00)
におい
て婦人会と合同で街頭募金を予定 ③9/28 10:30〜13:30大津
管内:ジャスコ
(西大津)、草津管内:エイスクエア
(草津市)、水口
管内:平和堂(水口)、八日市管内:サティ
(近江八幡)、彦根管内:
アルプラザ(彦根市)、長浜管内:ジャスコ
(長浜市)、今津管内:平
和堂(安曇川町)
にて、高校生ボランティアと合同で街頭募金を予
定 ④9/24〜26 9:30〜16:30びわこ競艇場内で婦人会と合同で
街頭募金を予定。※すべて調整中
京 都
①9/17 10:00〜11:30京都駅前にて街頭募金、
無料結核健診、
啓発
資材の配布等
(予定) ②9/11京都アスニー
(京都市中京区)
にて「結
核の予防とがんを考えるつどい」講演(予定) ③9/24〜10/2京都
府内各地にて保健所と地域の婦人会共同で街頭啓発・募金活動
〔三重〕松阪市主催の「健康フェスティバル」会
場で。悪天候にも関わらず多くの来場者があり
ました
大 阪
①9/26泉南郡田尻町内にて募金箱・のぼり・たすきにより、
リーフレ
ット・カードの配布。街頭広報にて運動を展開する ②9/26泉南
郡田尻町総合保健福祉センター「ふれ愛センター」にて「結核予
防推進大会」を大阪エイフボランタリーネットワークと共催、
大阪府・
大阪市・堺市・東大阪市・田尻町の後援により研修の伝達講習や
クイズでの結核の普及啓発を行う ③9/26田尻町内、9月中に堺
市内で街頭無料健診を実施。胸部検診車を配置し、風船・ポケッ
トティッシュ・リーフレットを町民に配布し、
広報及び普及啓発を行う
④9/24〜30大阪府下にて繁華街マルビルの電光掲示、地方新
聞掲載、
ポスター・リーフレット・パンフレットの配布、懸垂幕等による
広報・普及啓発を行う
兵 庫
①予防週間中県内各地で婦人会員による街頭募金 ②9/1〜
30当支部、兵庫県立健康センター、兵庫県庁それぞれの壁面に
懸垂幕、横断幕による普及啓発(年に1度は健康診断 結核予
防週間9月24日〜30日) ③9/24〜26山陽電鉄車内中吊り
ポスターによる普及啓発 ④9/24〜30神戸市営地下鉄全駅
( 1 6 駅 )、神戸電鉄各駅(10駅)にてポスターによる普及啓発
⑤10/6神戸市北区しあわせの村にて結核無料健診(神戸市保
健所と合同)、
街頭募金活動
奈 良
①9/23近鉄・JR奈良駅を中心とした県内主要駅、
百貨店、
ショッピ
ングセンター計30カ所にて街頭募金(リーフレット・グッズの配布、
呼
びかけ)
(奈良県健康を守る婦人の会が実施) ②9/24〜30県
下6カ所にてパンフレット・グッズの配布、街頭無料健診の実施(胸
部X線間接撮影、
血圧測定、
健康相談)
和歌山
①9/23JR和歌山駅前にて県・婦人会と共にパンフレット、
あぶらと
り紙等を配布し併せて街頭募金を行う。
鳥 取
①9/23 10:30〜12:00 東部地区・・・ジャスコ鳥取北店前、
中部
地区・・・パープルタウン前、西部地区・・・ジャスコ日吉津店前にて
キャンペーンを開催。鳥取県健康を守る婦人の会と共同でパンフ
レット、
風船等を広報媒体として、
結核予防意識を啓発するとともに、
街頭募金を実施する ②予防週間中、鳥取県健康会館(予定)
にて結核予防事業功労者感謝状贈呈
島 根
①9/24 松江市、
浜田市駅前にて県・婦人会と共に街頭募金、
リーフ
レット・ボールペン等を1500部配布
岡 山
①9/23 ジャスコ津山店にてリーフレット、
応急バン、
風船等を配布
して街頭募金。パネル・X線写真等の展示、
胸部・骨等の無料健診、
無料健康相談を実施 ②9/24〜30厚生町クリニック建物に懸垂
幕の掲示と胸部無料健診の実施
広 島
①9/23 11:00〜12:00広島アンデルセン北側(本通り側)
にて応急
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7
平成14年度結核予防週間実施予定行事
〔大阪〕結核予防推進大会を開催。全員参加
のクイズでのひとコマ
〔高知〕430名もの受診者が訪れた無料健診
バン、
リーフレットを広く一般に宣伝用として配布し、募金協力者に
は複十字シール(小型)
も併せて配布する ②9/24〜30広島県
健康福祉センター1階エントランスホールにてポスター掲示、
パンフ
レット配布 ③9/24〜30広島市中区八丁堀にてC-Visionによる
文字広告 ④9/24〜12/24広島県庁正面玄関ロビーに複十字シ
ール募金箱を設置し、広く一般に募金協力を予定 ⑤9/24〜30
広島県健康福祉センター4階健康指導センターにてビデオ「結核
ってどんな病気?」を上映
山 口
①9/23サンパーク小野田(小野田市)正面玄関前にて、婦人会
小野田支部と合同で街頭募金、風船等を配布してキャンペーンを
行う
徳 島
①9/23JR徳島駅前にて街頭募金、
結核無料健診を実施するほか、
パンフレット等を配布 ②9/24〜30徳島県支部建物壁面に懸垂
幕の掲示
香 川
①9/23高松駅前広場にて、
婦人会と共にちらし、
応急バン、
メモ帳
を配布し、
街頭募金
愛 媛
①9/23松山市大街道アーケード内 三越松山店にてパネル展示、
パンフレット配布、
街頭募金 ②9/30フジグラン松山にて無料健診
(結核・肺がん・喀痰検査)、
パンフレット等の普及啓発資料の配布
③9/27フジグラン新居浜にて無料健診(結核・肺がん・喀痰検査)、
パンフレット等の普及啓発資料の配布 ④9/30パルティフジ北宇
和島店にて無料健診(結核・肺がん・喀痰検査)、
パンフレット等の
普及啓発資料の配布
高 知
①9/23高知大丸百貨店周辺にて無料健康相談、
街頭募金、
啓発
用ちらし・風船・ティッシュ・携帯ストラップ等配布、
パネル展示による
キャンペーンを高知県健康づくり婦人会連合会と共催で実施。さ
らにその模様をRKC高知放送「テレビ伝言版」にてPR ②9/28
当支部中央健診センターにて無料健診(結核・胃・子宮・乳腺)
③8〜9月 TVスポットCM、
ラジオ、
新聞、
機関紙等によるPR活動
④当支部に予防週間懸垂幕掲示
福 岡
①9/23正午〜午後5時 博多大丸エルガーラ・パサージュ広場にて、
福岡県結核予防婦人会、
福岡市健康を守る婦人会、
結核予防会
職員による街頭キャンペーン。普及啓発パンフレット・応急バン・小型
シール2,000部配布、街頭募金、結核予防ミニ講演(ステージにて
TVアナウンサーと医師による質疑応答及びクイズ形式)、
無料健診
(血圧、体脂肪、骨密度測定、健康相談)、福引き
(景品500個)、
風船500個、
シール運動ビデオ放映、
パネル展示、
エレクトーン演奏
②9/20 8時 KBCテレビ「アサデス」の30秒PRコーナーに出演。
結核予防週間、全国一斉複十字シール運動キャンペーンのPR
③9/23 14時 博多大丸エルガーラ・パサージュ広場にて、
KBC
8
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〔沖縄〕婦人会の踊りでにぎやかにPR
ラジオカー「ひまわり号」でのイベント会場生中継。キャンペーンの
PR ④9月中旬 ニュース
「リビング福岡」40万部、
「リビング北九州」
20万部に予防週間、
シール運動のPR掲載 ⑤8/2〜9/18の22日間、
88回(1試合4回)、
福岡ドーム野球試合時に大型スクリーンビジョン
(縦10m、横35m)で予防週間、
キャンペーン、
シール運動のPR
⑥9/23〜30 結核予防センターにて懸垂幕掲示 ⑦福岡県内郵便
局(710局)及び西日本銀行本店・支店(150店)
にて8/1〜12/31「複
十字シール運動」ポスター・パンフレットの掲示と配置、
9/23〜30「結
核予防週間」ポスターの掲示 ⑧9〜10月 福岡市各保健所7カ所
にてシール運動ポスターの掲示、
「結核の常識」パンフレット、
シール
運動パンフレット、
応急バン、
小型シールの配布、
募金のお願い
佐 賀
①9/24〜30懸垂幕の掲揚
長 崎
①予防週間中、県庁所在地他数カ所で風船・パンフレット等配布、
街頭募金 ②長崎市内路面電車にポスターの中吊り ③予防週
間中、
県内4新聞に広告掲載
熊 本
①9/23熊本下通りアーケードにて街頭募金、
リーフレット、
パンフレット
等の配布、
パネル展示、
結核無料健診 ②9/18テレビ熊本番組「医
療あれこれ」にて予防週間、
結核予防についての啓発 ③9/23熊
本日日新聞に啓発広告掲載(定期健診受診と病院受診のすすめ)
大 分
①大分市健康祭り会場にて普及啓発カード、
リーフレット、応急バ
ン等配布(日程未定) ②9/24〜30 結核検診車に横断幕の掲示
③9月中 新聞に結核予防週間広告掲載
宮 崎
①9/5宮崎山形屋デパート前にてパンフレット、記念品等の配布
②9/24〜30県庁庁舎、
宮崎山形屋デパート、
検診車に懸垂幕・横
断幕の掲示 ③9/1〜30宮崎交通バス
(60台)及び検診車(17台)
の後部ウインドウに啓発内容の入った広告板を掲示 ④9/1〜30
のいずれかに宮崎日日・朝日・毎日・読売・西日本の各新聞に広告
を掲載 ⑤9/1・8・15 UMKテレビ「いきいきサンデー」において、
結核予防週間について取り上げる ⑥9/24〜30「世界の結核展」
をテーマにパネル展示 ⑦9/1〜30各健診場所にて受診者に応
急バン等を配布
鹿児島
①9/23西鹿児島駅前広場にて、
ちらし等の啓発資料を配布しな
がら街頭募金を行う ②9/24〜30県内全域のバス・JR線等の公
共交通機関に啓発用ポスターを掲示する
沖 縄
①9/23那覇市泉崎、牧志デパート パレットくもじイベント広場、沖
縄三越前にて複十字シール街頭募金(県・婦人会・支部)、無料
街頭健診、
ちらし、
パンフレット、風船、応急バンの配布 ②9/24〜
30県庁ロビー、支部ロビー、各保健所(6カ所)
にパネル展示、資料
配布(ちらし、
パンフレット、
応急バン)、
ビデオ放映、
結核相談
おもと
ずいひつ おも
結核予防会茨城県支部肺がん検診研究委員
水戸市保健センター嘱託
(秩父宮妃記念結核予防功労賞第5回受賞者)
北見
篤四郎
「舞子獅子」
昭和47年に贈られた「青海波」の3代目
もと
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9
健
健診事業のあり方検討委員会進捗状況
Vol.9
結核予防会健診事業のあり方検討委員会
会長代行
第一健康相談所診療部長
増山
去る7月25日に第6回健診事業のあり方検討委員会が開かれ,
能性が高い。また,健康増進法の動きの中で,今回保健管
前回(第5回,4月26日開催)より討議されていた健診事業の
理指導料が算定できるようになり,特定疾患の縛りはあるが,
今後の具体的展開について活発な議論が交わされた。あわせて
今後この方向への健診参画が重要となる。健診データ集積
今年3月,沖縄での全国支部長会議で承認された本会健診事業
の条件整備とあわせ,本会本部と支部が連携して活用でき
のあり方の総論論議 1)を受けて,各論の問題が検討された。
るシステムを将来的に提示したい。また,草川委員(三重
方向性としては大きく2つあり,1つは厚生科学審議会
感染症分科会結核部会の「結核対策の包括的見直しに関す
県支部副理事長)より紹介された地域診断的手法も健診に
取り込む必要がある。
る提言」2) の中のハイリスク層,デインジャー層の健診の定
(3)健診の事後指導のあり方については,今や集団の基準
期化等に伴うもの,今1つは今後実行すべき総合健診の具
値で個人のデータを論じる時代ではなくなり,集団で扱う
体的取り組みである。各々プロジェクトリーダーの下,10
という色彩が強い健診ながら,個別を主体とする情報提供,
数項目にわたる検討課題(表 目標となる課題と問題点〈事
保健指導がますます重要となってきている。このことにつ
務局素案〉)3)
いては,個人の基準値に基づく経年変化の判定ロジックを
があるが,そのうち(1)これからの結核健診
の進め方,(2)健診情報の活用,(3)健診の事後指導のあり方
の3点が重点課題として早急に検討されることとなった。
提示できるようにしたい。
なお,上記は第7回の検討委員会(10月開催予定)で詰め,
(1)これからの結核健診の進め方については,表の中の検
11月21日の保健事業運営協議会でさらに全国支部のお知恵
討事項「高危険群に対する健診のあり方」①〜⑨の各項目
を拝借し,来年3月に開催する結核予防全国大会で,これ
につき,健診の有効性,費用対効果,周囲への感染防止,
までの検討結果と残された課題を報告する予定である。
採算性等を考慮して,健診方法を提示したい。
文献
1) 増山英則;胸部健診の動向と今後の総合健診のあり方,日本医
事新報,2002年3月23日号,p44-49
2) 厚生科学審議会感染症分科会結核部会報告 結核対策の包括的
見直しに関する提言,2002年3月20日
3) 第6回健診事業のあり方検討委員会資料,結予発第439号
(2)健診情報の活用については,新委員となった聖マリア
ンナ医科大学吉田教授より説明があった「生活習慣病予防
のための地域職域連携保健活動検討会報告書」にある健康
手帳の作成が,今後の健診の一次予防指導の主体になる可
表 目標となる課題と問題点 (事務局素案)
検討事項
胸部健診における具体的な取組
高危険群に対する健診のあり方
1高齢者収容施設入所者及びデイケ
アなどに通所する者
プロジェクト
目標となる課題と問題点
参考資料等
・「結核検診の現状と課題」(結核77巻4号)
・新結核用語事典(予防会)
A班(増山代行)
*増田委員
西井委員
大森委員
(平成14年5月15日作成)
*具体的な実施方法,健常者に対する健診 ・千葉県支部での実施例の確認
との相異点の明示,特別に必要な装備, ・全国老人保健施設協会等関係団体の意見聴取
健診業務の経済性等を明示し,対応策を
提示する。
*採算が取れるための料金設定と費用負担
の方策を検討する。
同上
・東京都,熊本県が特対事業で実施内容の確認
・精神病院協会等関係団体の意見聴取
同上
・大阪支部,川崎市,横浜市,名古屋市等の
実施内容の確認
・「複十字」第282号12〜13頁
・「大阪市の結核の現状」(平13.3)
同上
・新宿保健所,渋谷診療所(城北分室)等の実
績確認
5零細事業者及びその家族
同上
・滋賀県支部の雇用創設補助事業の実績確認
6 入国後3年以内や日本語学校に通
同上
・「外国人結核問題ワークショップ」の実績確認
2精神病院,矯正施設など集団生活
が長く行われる可能性の高い者
3ホームレス,日雇い労働者,特定
結核高蔓延地域の住民
4簡易宿泊施設,サウナ等に居住し
ている者
学する在日外国人
10
英則
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検討事項
プロジェクト
目標となる課題と問題点
7結核患者との濃厚接触者
個別の対応策を検討する。
8 その他知事が必要と認める集団に
同上
参考資料等
属する者
9デインジャー・グループ
同上
・結核集団感染(予防会)35〜38頁
胸部健診の手法
*増田委員
西井委員
*平成15年4月以降,ツ反・BCGの廃止 *平成13年度の胸部健診実績分析の確認
の可能性,見直し後の結核対策の施行, *肺癌学会の対応の確認(平成14年7月第17
回日本肺癌学会,11月第18回肺癌集検セ
定期外健診の定期化という方向の中で
ミナー開催)
の節目健診としてのCT健診の位置付
けと体系化を提示する。
*肺がん健診との関連性を明確化する。
*CT検診の料金設定と財源問題の提示
*CT搭載検診車の配備計画と資金調達
方法の提示
フィルム読影技能者養成認定制
度の創設
*増山代行
中野静男
ツ反判定技能者養成認定制度の
創設
*増山代行
三枝美穂子
*現在行われている学会の技能者認定制 *結核予防会におけるX線フィルム読影件
数,処理の実態等を調査する。
度を参考に対象人員,研修期間,費用積
*支部の意見を聞く。
算等を予測し,制度創設を提案する。
*厚生労働省,医師会,結核病学会等関
連学会の承認が得られるかどうかを確
認する。
*結核予防会におけるツ反の件数,処理の
*制度の実際の運用方法を提示する。
実態等を調査する。
*支部の意見を聞く。
人間ドック等総合健診のあり方
*国内基盤技術調査報告書―予防医療に関す
る調査―(ヒューマンサイエンス振興財団)
*人間ドックの本(日本病院会)
B班(橋本委員)
一次予防を主とする健診の進
め方
*鈴木委員
橋本委員
*診療所機能を持つ健診機関に一次予防 *診療所機能を持つ支部の業務内容の確認
の方向を明示する。
(先のアンケート結果)
*健診事業の中で生活習慣病管理指導料を *健保連「健康」平13.6〜7号
取るための条件整備等の具体策の提示
*生活習慣病指導管理料の施設基準
*開業医等一般医療機関との棲み分けの
検討
個人データの経年管理の方法
*中園委員
草川委員
吉田委員
*EBMのはっきりしている検査項目の *支部における個人情報の管理方法の実態
特定
調査
*フォーマットの設定とデータ保存方法 *「FBD FORUM 2001」(SRL宝函別冊)
の確定
健診情報の全国的な集積・解析と B班(橋本委員)
活用方法
「個人基準値」による生活指導
体系の構築
*中園委員
草川委員
吉田委員
内村和広
*健康増進法案
*EBMのある疾病について「個人基準値」
による一次予防の取り組み方を提示す
る。
*健診事業の上で生活指導への結びつき
をどのように体系化すればよいかを検
討する。
*「EBD FORUM 2001」
*Guide to clinical preventive services
(second), Report of theU.S,Preventive
Services Task Force (1989, Lippincott
Williams &Wilkins)
*菅沼源二「日健診誌」2.20,1976
健診データ集積のための条件
整備
*吉田委員
中園委員
大森委員
内村和広
*健診結果データの報告例の統一化に向 *関係団体による様式の統一化の協議
*「よぼう医学」(平13.5.15,予防医学事
けての関係団体との調整
業中央会東京都支部)
*支部からのFDによるデータ提出の検討
*健診結果データの精度保証の仕組みの
検討
生活指導のための標準的な問
診事項の提示
*山下委員
三枝美穂子
岩渕英子
山内祐子
*「個人基準値」による生活指導体系の構 *「個別健康教育指導者マニュアル」(保健同
築と連動する内容でフォーマットを提
人社,コレステロール,高血圧,耐糖能
示する。
異常)
健診情報の管理
個人情報の開示のあり方
B班(橋本委員)
*個人情報の保護に関する法律案
*橋本委員
吉田達也
*受診者に対する情報開示のあり方を提 *カルテ等の診療情報の活用に関する検討
会報告書(平10)
示する。
*受診者の診断・治療に利用するための医療
機関への情報提供のあり方を提示する。
*市町村,事業主等健診実施主体への情
報提供のあり方を提示する。
健診機関と医療機関との連携
吉田委員
*健診結果に基づく要治療者に対する医 *国内基盤技術調査報告書
療機関の紹介と健診情報の活用のルー *支部における医療機関との連携の実態を
調査する。
ル化を提示する。
*病院の地域連携室の普及状況
*診療報酬適用の拡大案を提示する。
健診のリスク管理の問題
増山代行
健診業務における針刺し事故,胸部読影 *「ヘルスケア・リスクマネジメント」
(中島・児玉,医学書院)
見落とし等に対するリスク管理のあり方
を提示する。
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11
福島県県北保健所
福島
症例検討会,モデル診査会公開研修会
福島県県北保健福祉事務所
(福島県県北保健所)
医療薬事グループ 感染症予防チーム
主任保健技師
本田 あゆみ
本事業開催の経緯
福島県県北保健福祉事務所管内は,福島県の北部に
位置し,人口約52万人で,2市13町2村から成ってい
る。この地域は,県庁所在地である福島市を中心に,
経済,教育,文化,医療等の分野においても高次の都
市機能が集積している地域である。
結核指標について平成13年の登録状況(表1)を見
ると,新登録患者数は過去5年間ほぼ横ばいだが,喀
痰塗抹陽性患者数は増加傾向にあり,そのうち60歳以
上が約9割を占めているのが特徴である。
表1 福島県県北保健所管内結核の動向
H9 H10 H11 H12 H13
新登録患者数(人)
喀痰塗抹陽性肺結核罹患率(人口10万対)
125 115 194 128 121
9.6
5.2
9.2
7.9
7.3
新登録患者中60歳以上割合(%)
67.1 67.2 73.7 75.0 81.8
喀痰塗抹陽性患者中60歳以上割合(%)
64.9 62.1 62.8 69.2 89.5
当所では,結核対策特別促進事業(特対事業)とし
て,長年,医師を対象とした講演会形式の研修会を実
施していたが,目覚ましい指標の改善が見られず,そ
の企画内容を再検討する時期が来ていた。折しも全国
の保健所で症例検討会やモデル診査会が開催され,成
果が得られている報告を見て,当所でも実施を検討し
た結果,適正医療の普及と患者管理の徹底,結核診査
協議会(以下診査会という)の役割を地域にアピール
することを目的として,平成12年度は症例検討会,平
成13年度はモデル診査会を開催した。
思われた。その反省を踏まえ,今回の目的は,あくま
で「適正医療の普及」と「患者管理の徹底」の2点に
絞り,これに関連した症例を当所が選択し,主治医に
了解を得ることとした。
本事業の開催に当たっては,関係機関,特に医師への
周知を十分に行うことが重要であった。そのために,ま
ず実施要領を綿密に作成した上で診査会委員に諮った
ところ,ぜひ実施するようにと積極的な回答があった。
診査会の後押しが本事業実施のための推進力となった。
また,主治医に理解を求めるため主立った医療機関を
訪問し,説明を行ったところ,どの主治医も協力的で,
当所が選定した事例の提供についても快諾してくれた。
次年度のモデル診査会については,前年度の症例検討
会が非常に好評だったため,開催についてはスムーズだ
った。しかし,充実した診査に向けて菌検査等情報収
集も丁寧に行わなければならないので,新規以外の申請
書は早目に提出してもらうよう協力を要請したり,保健
師同士の協力体制を採って,短期間で調査することがで
きるよう工夫した。モデル診査会は,実際の申請書を使
用するため,診査会間近に申請書の提出が集中し,短期
間で準備しなければならないことが大変だった。
症例検討会の実際
選定基準により当所が選定した8例について,結核
予防会の先生方を助言者として検討した。事例紹介は
主治医が行い,1事例10分で検討することとした。短
時間で効率的に検討するために,あらかじめ事例にど
こが問題なのかタイトルを付け,主治医にはその事例
の検討ポイントを紹介の最後で強調してもらった。
また,X線フィルムについては,会場前方にシャウ
カステンを設置し,自由に観察することができるよう
にするとともに,デジタルカメラで撮影したフィルム
をパワーポイントに取り込んでスクリーンに映し,事例
紹介時に効果的に使用することができるよう工夫した。
本事業開催に向けて
症例検討会に向けて最初に実施したことは,目的と
事例の選定基準の明確化だった。過去にも症例検討会
を開催した実績があるが,医師に事例の選定をお願い
すると,医療側の問題事例が多く,行政上の対策に結び
つけにくい検討会となってしまうことが多かったように
12
09/2002 複十字 No.287
症例検討会の様子
表2 適正医療普及率の推移
(単位 %)
H 9 H10 H11 H12 H13
2カ所でフィルムを映すことで,参加者はより見やす
くなったようである。
モデル診査会の実際
新登録肺結核
※
PZAを含む4剤処方の割合
34.2 58.3 47.2
喀痰塗抹陽性
(再掲 80歳以下の割合)※
45.2 84.0 65.2
初回治療患者
通常,非公開で実施している診査会をモデル的に開
催し,結核予防会の先生方を助言者として,公開研修
会とした。実際の診査会の場面を会場で再現し,10件
の診査を行った。
診査会は原則非公開のため,申請者のプライバシーの
保護については,十分配慮した。また,参加者には個人
情報を削除した申請書と登録票のコピーを資料として配
付し,診査会終了後回収した。フィルムは前回同様2カ
所で映したが,名前・医療機関名等は削除した。
主治医や診査会委員,助言者の間で服薬確認の徹底
や治療期間,薬剤選択,菌陰性事例の診断根拠等につ
いて活発な意見交換がなされた。
年末活動性
I
INH・RFPを含まない処方の割合
23.7 13.3 22.9 13.5
肺結核患者
INH単独処方の割合
13.0
6.7
5.9
5.6
7.8
0
12.2 12.8 12.4 10.0
平均全結核患者治療期間 (月数)
※平成13年度は肝機能障害や免疫不全によりPZAを服用できない患者がいた
ため、普及率が低下している。
表3 患者管理の改善状況
H 9 H10 H11 H12 H13
年末活動性全結核患者・治療期間2年以上の割合
(%) 13.1
8.1
肺結核喀痰塗抹陽性初回治療患者総数(人)
本事業開催の成果
7.5
3.7
3.9
41
36
36
同
情報不明(%)
23.8
8.6
0
同
治療成功・その他(%)
100 78.1 73.5
同
死亡(%)
0
同
失敗・脱落・中断(%)
0
0 20.6
9.4
5.9
今後の展望
適正医療普及率の推移(表2)及び患者管理の改善
状況(表3)を見ると,12年,13年と改善してきてい
るのが分かる。また,地域の先生方から診査会に対し,
診断・治療に関する質問が寄せられるようになったこ
とも成果と言える。
さらに,保健師が診査会に向けて情報収集を行う,
量と質が高まったことも挙げたい。診査会までに初発
患者調査を終了し,それに基づき,申請者のあらゆる
情報が掲載された一覧(表4)を作成し,診査会開催
前に所内で事前診査を行い,不足している情報のチェ
ックを行ったり,互いに申請書の診査ポイントを確認
し合うようになった。診査会を活性化させるためには,
保健師の情報収集能力を高めることが第一であること
を,私たち1人1人が認識したことが最も大きな成果
だったとも考えられる。
この2年間,出席してくれた先生方が,自らの症例
として診断や治療について考えられる,参加型の研修
会にこだわって特対事業を実施してきたが,診査会委
員や地域の先生方にも大変好評で,本事業の継続実施
を望む声も多いので,症例検討会については,年1回,
定例的に開催することとした。また,これからは,申
請書を待つだけの診査会ではなく,結核患者の発生状
況,対策上お願いしたいこと,最新情報等結核に関す
る様々な情報を診査会から発信していきたいと考えて
いる。結核対策の拠点としての保健所や診査会の様々
な機能を,地域に対して発揮しながら,今後さらなる
指標の改善を目指していきたい。
最後に,本事業の実施に当たって御助言をいただい
た,豊田市保健所の皆様に深く感謝いたします。
表4 結核モデル診査協議会申請者一覧
受付
申請
菌
検
査
年齢
病名
性別
3回連続塗抹 培養 同定 感受性
34条 79
肺結核 −
H13.12.7 初回 男性
−
−
34条 85
肺結核
H13.12.7 継続 女性
2
1
1. TN
2. TS
3. TK
34条
78
2
肺結核
4
34条 77
肺結核
H13.12.13 継続 女性
4
H13.12.12 初回 女性
4. HK
5.YM
35条
69
H13.12.13 初回 男性
肺結核
6
4w PCR
−
+
+
PCR 耐性
+
なし
未
実施
1
1
+
未
未
PCR 耐性
+
なし
PCR
+
未
検体
使用
薬剤
喀痰
H・R・E
気管支洗浄
・
喀痰
H・E
なし
吸引痰
H・R・E
0×0
喀痰
H・R・E
喀痰
H・R・E・
Z
ツ反
12×11
19×15
0×0
22×15
12×10
診査の
ポイント
診断までの経過
H13.6 月に住民検診で要精検。
3 剤でよいか
自覚症状もなく忙しいので未受診。
役場からの勧奨で11月受診。
H6.に 3 剤治療。H13.2 月よ
り発熱、咳出現。気管支洗浄液で 治療継続の
G 2 号。その後の喀痰でG 2 号の 必要性
ため3月より治療開始。
H13.12月風邪症状あり。その後
救急入院、挿管、人工呼吸器装着。
吸引痰でG 4 号。その後死亡。
H13.6 月に悪寒出現。その後、 3 剤治療の
救急搬送され胸部XPで浸潤影あ 場合、治療
り。喀痰からもG 4 号検出。
終了の時期
H13.5 月癌性腹膜炎のため入院
し化学療法開始。入院時胸部XP
石灰像があったが呼吸器症状なし。
11月から全身倦怠感、12月に胸
部XP、CTで空洞あり。喀痰か
らもG6号検出。
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13
Use
Use DOTS
DOTS More
More Widely
Widely
結核研究所対策支援部 保健看護学科長
「一番達成しやすい結核対策は院内DOTSでした。
看護師は,患者様にいいと分かると対応がはやい。
根は奉仕の心という看護理念が生かされていると感
じます」。院内DOTSを積極的に進めている病院
の医師からいただいたメールの一文です。
「結核の感染の鎖を断ち切るのは治療であり,治
療こそが最善の予防」。1993年,WHOは世界非常
事態宣言の中で,治療の重要性を世界に訴えました。
わが国でも発見した結核患者を確実に治すための方
策として,2000年に「日本版21世紀型DOTS戦略」
が発表され,院内DOTSに取り組む病院が増えて
きました。
昨年,当学科では院内DOTSの現状を明らかに
するため,アンケート調査を実施しました(「保健
婦の結核展望」77号に掲載)。今年度もアンケート
調査を行い,改善が進む院内DOTSの状況を把握
しましたので,報告いたします。
全国416病院へアンケートを実施
2002年5月,結核病床を有する全国416病院の看護
部長及び結核病棟の看護師長宛にFAXにてアンケー
ト調査を実施しました。佐賀県を除く46都道府県210
病院から返信が寄せられ,回収率は50%でした。
服薬支援への取り組み
210病院から結核病棟閉鎖や休床中の14病院を除い
た196病院に,院内独自で取り組んでいる服薬支援の
方法について聞きました。約6割の病院がパンフレッ
トやビデオを用いた院内教育を実施していると回答が
ありました。毎日の服薬を記録する「服薬ノート」を
活用している病院は約1割でした。
今回の調査では,128病院74%が院内DOTSの対象
を高齢者や副作用等で服薬が困難な「一部患者」に限
定し,入院中の「全患者」への院内DOTS実施は46
病院26%に留まりました。
方法:看護者が抗結核薬をベッドサイドまで配薬して,
患者が薬を飲み込むのを確認する方法が92%と大半を
占めました。
回数:不規則治療を防ぐ手段として,1日「1回」の抗
結核薬の同時服薬が推奨されてきましたが,その割合
は昨年同様16%と低調です。「3回以上」と答えた割
合が最も多く74%でした。しかし,入院患者全員に院
内DOTSを実施している病院では,一部の患者を対
象とした病院に比べて「1回」服薬の割合が高い傾向
にありました( 図1)。
期間:退院するまでの「入院全期間」を通して院内D
OTSを実施しているのは89病院51%,入院開始から
「一定期間」を決めて実施は34病院20%,「特に期間
を決めていない」は48病院28%でした。「入院全期間」
または「一定期間」のように期間を決めて実施してい
る割合は,入院患者全員に院内DOTSを実施してい
る病院の71%に比べ,一部患者を対象にした病院では
41%と少ない傾向が見られました。
「一定期間」と答えた施設にその期間を尋ねた結果,
「1カ月」15(44%),「2週間」7(21%),「2
カ月」6(18%),「1週間」4(12%),以下「3週間」
「3カ月」でした。
図1 対象別に見た院内DOTSの 1日の服薬回数
1回
38%
入院中の全患
者に実施
14
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3 回以上
52%
4% 6%
1〜2 回
2回
院内DOTSの内容
対象:196病院のうち,46都道府県174病院が院内DO
TSを実施していると答えました。「日本版21世紀型
DOTS戦略」では,入院中のすべての喀痰塗抹陽性患
者への対面服薬確認を重要なポイントに挙げています。
小林 典子
入院中の一部 1回
5% 4%
の患者に実施 8%
0
10 20
2〜3 回
3 回以上
83%
30 40 50 60 70 80 90 100
(%)
表1 院内DOTSへの意見
メリット
デメリット
1 確実な服薬で治療効果が上がる(61)
1 患者のプライドを傷つけ信頼関係を損ねる(26)
2 コミュニケーションが保たれ,信頼関係が深まる(11)
2 依頼心が増し,自立の妨げになる(18)
3 薬に対する患者の意識が高まる(9)
3 時間的,人的労力を要する (15)
4 服薬の習慣が身につく(6)
4 服薬の習慣が身につかない(4)
5 薬の副作用が早期に発見できる(6)
5 薬に敏感になりすぎる (1)
6 耐性菌の早期発見(5)
6 一回量が多いため高齢者は苦痛(1)
DOTSに関わる職員:「医師・看護師・薬剤師」の
3職種が院内DOTSに関わっていると答えた病院が
最も多く65病院37%,「看護師」のみ48病院28%,
「医師・看護師」及び「看護師・薬剤師」のそれぞれ
2職種が同じ29病院17%でした。
DOTSへの意見: 61病院がメリットとして「確実な
服薬で効果が上がる」ことを挙げました。「拒薬や飲み
忘れ,廃棄等がなくなり,確実に排菌者は減っている」
等具体的な意見が多く寄せられました(表1)。
「なぜ自分だけ服薬を監視されるのかとプライドが
傷つく様子,できるだけ他の患者のいないところで服
薬確認をしている」「信用できないのかと迫られ,看
護側に精神的な負担がある」という意見は,一部患者
を対象とした病院に多く見られましたが,これらはす
べて今後メリットに転換していけると思われます。
保健所との協力:196病院に退院後の服薬支援に関す
る保健所との協力体制について聞きました(図2)。定
期的に会議を開いてDOTS推進に努めている施設は
13自治体24病院(12%)で,昨年の11自治体16病院を
上回りました。
退院後の服薬継続が難しいと思われる患者について
「個々に保健所に連絡している」と答えた病院が78と多
く,40%を占めました。「特に保健所と協力・連携はな
い」と答えた病院も74で38%でしたが,「保健所との協
力体制は必要。今後,連携を進めたい」と記載されたも
のが多く見られました。
成功の鍵は「全患者」を対象にすること
今回の調査で,入院中の「全患者」を対象にした病院
の多くで,「1日1回の服薬確認」が,「入院全期間中
あるいは一定の期間」,「看護師・医師・薬剤師」によ
って実施され,「保健所との協力体制」の下で,退院後
図2 退院後の服薬支援について保健所と協力していますか
その他
12(6%)
特にしていない
74(38%)
未記入
8(4%)
DOTS推進のための
会議を定期的に開催
24(12%)
服薬継続が困難な患者
について個々に連絡
78(40%)
の服薬が継続されていました。デメリットに挙げられ
た「信頼関係」「自立」「服薬習慣」に関しても,
「全患者」を対象にすることで改善されると思われま
す。「全患者」への実施は,院内DOTSを成功させ
る大きな要因です。
今回の調査結果は「保健師・看護師の結核展望79号」
に掲載し,結果を希望する病院にはFAXにて回答い
たしました。結核研究所保健看護学科の研修では,結
核予防会複十字病院をはじめ,国立療養所南横浜病
院,国立療養所東京病院,国立療養所千葉東病院,大
阪府立羽曳野病院,神奈川県立循環器呼吸器病セン
ターから看護師の方々を講師に招き,院内DOTSの
実際について紹介しています。「すべての結核患者の
治療を成功させる」という同じ目標のもとに,看護師
と保健師さらに病院と保健所の連携を深めていきたい
と思います。
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Use
Use DOTS
DOTS More
More Widely
Widely
複十字病院4A病棟看護師長
齊藤 ゆき子
(研究班) 梅崎美雪・津島律子・
小檜山祐子・金沢富子・渡辺契子
調査項目と結果
① 入院中と外来通院中の服薬率(表1)
② 結核に関する知識(表2)
③ 治療中断率(表3)
考察
はじめに
当院では平成12年に,多剤耐性結核,排菌患者の
隔離病棟として改修工事を行った。これにより,空
気浄化システムを持った厳重な隔離病棟(4B病棟
42床)と平圧独立換気のゆるい隔離病棟(4A病棟
49床)で,排菌陽性結核患者は4B病棟に入院,化
学療法開始後薬剤感性のある患者は2〜3週間で4
A病棟に転棟する機能別の病棟体制となった。これ
を機に平成12年11月よりDOTSを導入。入院患者
全員の院内DOTSを開始した。4B病棟は看護師
が薬を管理する管理配薬で,4A病棟は服薬困難や
自己管理が不十分な人を除き,患者が薬を管理し個
々の薬箱に薬と処方箋控えを入れておき,患者自身
が薬を準備し,退院までDOTSを実施する方法で
ある。
DOTS開始後1年が経過した昨年の11月,DOT
S開始前と開始後の評価をする為,アンケート調査
を行った。院内DOTSがどのように受け止められ,
退院後在宅での服薬状況にどのような影響を与えた
かについての結果を,今年4月に開催された日本結
核病学会総会で報告したが,今回アンケート結果の
一部を報告する。
表 1では,入院中の服薬率に差がなく「DOTS後
が100%になっていないのは変だ」と思われがちであ
るが,「服用しなかった理由」を比較すると明らか
に違っている。「全部は飲まなかった」と回答した
DOTS前の4.9%,DOTS後の5.4%を100%で表し
比較してみると,DOTS前の理由では,「副作用」
が60%で「入院中の飲み忘れ」が20%見られる。DO
TS後は全員が「副作用」と回答しており,これは医師
の指示による一時休薬であり問題ないと考える。
表1 服薬率の比較
DOTS前 DOTS後
入院中 100%服薬率(%)
95.1
94.6
4.9
5.4
うち「副作用で服薬しなかった」(%)
60
100
うち「飲み忘れた」(%)
20
0
86
100
14
0
11.1
0
45
0
「全部は飲まなかった」(%)
通院中 100%服薬率(%)
「全部は飲まなかった」(%)
うち「副作用で服薬しなかった」(%)
うち「飲み忘れた」(%)
表2 結核に関する知識
アンケート調査の対象と方法
調査の対象は,結核初回治療患者で,DOTS開始
前の平成10年11月〜11年10月の1年間に4A・4B病
棟に入院した患者163人と,DOTS開始後の平成12
年11月〜13年10月の1年間に4A病棟に入院した患者
101人の計264人へ,郵送文書によるアンケート調査用
紙を発送した。返信数はDOTS前61通(37%),D
OTS後55通(54%)であった。
16
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DOTS前 DOTS後
平均ポイント
(6点満点)
4.2
5.1
表3 治療中断率
DOTS前 DOTS後
(163人中)
(101人中)
治療中断率(中断者数)
3.1%(5人)3.0%(3人)
※中断者はDOTS前・後ともに全員アンケート非回答者
通院中の服薬率では,DOTS後は全員が「薬を全
部服薬できた」と回答し飲み忘れは見られないが,D
OTS前で全部服用できたのは86%で,「全部は飲ま
なかった」と回答した14%を100%で表して見ると
「飲み忘れ」が45%と多くを占めている。
DOTS前は「この患者なら大丈夫」という不確実
な前提で患者に薬を管理させていた。症状が落ち着け
ば薬を忘れやすいのが人間であり「飲んだつもりだっ
たが,残薬があった」「なんとなく忘れた」と回答し
ているということは,入院中の服薬管理を患者に一任
した従来の服薬方法は誤りであると言えよう。退院後
の継続服薬も不十分となり,中断や薬剤耐性を生む結
果になっていたと考えられる。
DOTS後の患者に飲み忘れがないことは,院内DO
TSにより服薬が習慣化し,看護師や薬剤師の関わりで,
結核薬への理解が深まり良い結果が得られたと考える。
表 2 は,結核の知識を質問し点数化してみるとDO
TS後が高い。これは,DOTSで看護師と対面する
ことによりコミュニケーションが形成され,看護師の
DOTS教育が根づいている結果ではないか思う。
表 3 の治療中断率は,アンケート回答者には両群と
も中断者は見られなかったが,返信のない非回答者
148人(DOTS前102人,DOTS後46人)のカルテ
調査をすると,DOTS前の患者に5人,DOTS後
マスク自動販売機
4階ホールに設置してあり,
面会者用はN95マスク(200
円)を,患者用はサージカルマ
スク(70円)を販売している
4B病棟でのDOTS方法
(管理薬)
与薬車で配薬
の患者に3人の中断者がいることが分かった。それぞ
れに中断者がいたことから,ケースに合わせた服薬継
続の支援が絶対に必要であると考えられる。
まとめと課題
・院内DOTS後群は,薬の飲み忘れは見られず服薬
の自己管理が習慣付けられ,患者の結核の知識が高ま
っている。
・院内DOTSは治療成功に重要であり,退院後の服
薬支援は継続して行う必要がある。
・DOTSカンファレンスを開催し病院と保健所の連
携を強めることが今後の課題である。
おわりに
当院ではDOTSカンファレンスを6月より近隣保
健所の参加を得てスタートさせた。思いはひとつ,治
療中断せず無事服薬完了となるよう地域の保健所と連
携し,入院中から退院後までの患者支援を行うことに
ある。それには,互いに協力し理解し合うことが大切
ではないだろうか。人としての基本を忘れず前進して
行きたいと思う。
最後に,今回の研究で結核研究所の木村もりよ先生,
山下武子部長のご指導を頂き,ご協力頂いた皆様に深
謝致します。
4A病棟のDOTS方法
(自己管理薬)
一斉放送でシートから薬を出
し,準備された薬を処方箋控え
で確認している場面。薬を確認
後飲み込むまで見届ける
4B病棟でのDOTS方法
(管理薬)
患者さんが薬を飲み込むま
で見届ける
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カンボジア国の結核実態調査に参加して
〜放射線技師の立場から〜
結核研究所対策支援部 放射線学科長
中野 静男
今回,カンボジア国の結核実態調査の開始にあたっ
て,平成14年4月18日から3週間,国立結核センター
(以後CENATと記す)に出張したので報告する。
CENATでは結核実態調査の出陣式ならぬ
"Launching Workshop of National TB Prevalence
Survey"があり,JICAカンボジア国結核対策プロ
ジェクト小野崎チーフアドバイザーから"Implementing
Processes of the National TB Prevalence Survey"の
講演があった。その後,暑い中庭にてパーティが開か
れ,職員も大勢参加し和やかな雰囲気の中で,これか
ら始まる実態調査の成功を期した。
全国結核実態調査
カンボジアの結核事情は表のように世界最悪の水準
にあり,またHIV感染(都市部では結核患者の約10
%)との関係でも全国的に結核がまん延している状況
である。このような状況の下,WHO,世界銀行,J
ICA等の援助でカンボジア国の結核実態調査が行わ
れることになった。
調査方法は0〜10歳については問診,BCG瘢痕の
有無の調査とツベルクリン反応検査を行う。10歳以上
については問診,胸部X線撮影(現像・読影)を行い
結核性の有所見者と自覚症状のある者に喀痰検査を行
うものである。この実態調査は今年12月半ばまで全国
42カ所で実施される。
表
世界の結核罹患率の推計(2000年)
国名
ジンバブエ
高
ま カンボジア
ん 南アフリカ
延 ケニア
国
モザンビーク
低 スウェーデン
ま アメリカ
ん ノルウェー
延
国 カナダ
オーストラリア
日 本
全世界
人口
(千人)
全結核罹患率
(10万対)
塗抹陽性罹患率
(10万対)
12,627
13,104
43,309
30,669
18,292
584
572
526
484
433
234
256
214
201
180
8,842
283,230
4,469
30,757
19,138
127,096
6,053,531
5.1
5.4
5.9
6.6
8.0
36.1
144
2.3
2.3
2.7
2.9
3.6
16.3
63
(資料 WHO Report 2002 : WHO Global Tuberculosis Control)
18
09/2002 複十字 No.287
結核実態調査の出陣式後のCENAT中庭でのパーティ。左から筆者、小野崎チー
フアドバイザー、CENAT所長。
コンポンスプー省アオラル郡
実態調査のスタートとなったコンポンスプー省アオ
ラル郡(Kampong Speu Aoral)は,首都プノンペン
と港町シアヌークビルを結ぶ国道4号線からさらに田
舎道に入る。途端に道は悪くなりジープに乗っている
と「腹の皮がよじれる」と表現した方がいいぐらいジ
ープは大きく激しく揺れた。道路は途中何カ所か急に
低くなる所があり雨季になるとそこは川になるとのこ
と。また,道路沿いに "地雷危険"のドクロマークの標
識もあった。これを見たのが「ああ,今,カンボジア
にいるんだ!」と感じた時でもある。省都コンポンス
プーから健診場所アオラルまで60キロ,2時間かかっ
た。我々JICAプロジェクトチームは宿舎がコンポ
ンスプーだったため,この道を4日間通った。
アオラル郡での健診
実態調査対象地区になっている全国42カ所中,32カ
所は検診車の入れない所であり,コンポンスプー省ア
オラル郡もその地区に含まれる。この村には電気,水
道もなくX線装置等の電源はすべて発電機で対応した。
健診前日の準備はCENATスタッフと一緒に高床式家
屋の1階に携帯型X線装置,簡易暗室(稼働中は室内
温度36℃)に自動現像機をセッティングした。
健診対象者はあらかじめピックアップされており,
また健診前段階でのアナウンスも行き届いていたため
受診状況は大変よく健診場は連日にぎわった。今回は,
例えば健診対象家族が全員受診すると家族の最後の人
に反物をプレゼントするとか,子供さんのツベルクリ
ン注射の所では「かっぱえびせん」を配るなど受診率
向上に努めていた。受診者の中で子供さんの肺炎が見
のみで周囲は解放状態である。したがって,放射線被ば
くについてはキッチリと押さえておくことが重要と考
え,線量計で被ばく線量の測定を行った。その結果,
日本の基準から見ても問題のないことが確認できた。
受診者の中で子供さんの肺炎が見つかり、アドバイスをしているところ。
つかり適切なアドバイスをする場面もあった。
また,胸部写真で空洞所見のある女性は町の医療機関
で治療中とのこと,今まで100万リエル=250ドル払った
そうである。ちなみにカンボジア国の公務員の給料は月
10ドル,縫製工場の最低賃金は月40ドル,建設現場の最
低賃金は1日1.5ドルと聞いている。したがって,この
女性は公務員給料の25カ月分の大変な金額を支払ったこ
とになる。
帰国後小野崎チーフアドバイザーからいただいたア
オラル郡での健診結果(仮集計)は,健診対象者が
726名,受診率は15歳未満が96%,15歳以上が92%で
あった。そして胸部写真での有所見者は10%,喀痰検
査を行った人は18%(胸部有所見+有症状),塗抹陽
性者は2人でいずれも有症状者であった。
高床式住宅の下で胸部写真を撮っているところ。携帯型X線装置で放射線防護は
衝立1枚だけ。放射線防護上から漏洩線量測定は行い、安全を確認している。
おわりに
今回,結核実態調査の現場に立ち会い,X線撮影部
門が大きな問題もなく運営できたことを確認すること
ができた。これは前回の出張時(平成13年9月)にフ
ィールドでの作業を想定しCENAT中庭で訓練した成
果であると言える。
そもそも検診車が入れないような村で発電機を廻し
携帯型X線装置,簡易自動現像機を使い健診をしたこ
とは,日本でも前例のないことである。
実は,カンボジアでの実態調査の話が持ち上がった
時,電気や水道もない村でどうやって胸部写真を撮影
するのか ……と危惧したが,ヒントは意外なところに
あった。先の阪神淡路大震災を教訓に某業者が考えた
「災害時緊急時現像処理セット」だった。それがこう
してカンボジアの結核実態調査の胸部撮影システムとし
て現実に威力を発揮し,このような形で同調査にかかわ
ることができた私としても,感慨深いものがある。
撮影され現像されたX線フィルムはすぐその場で読影され、結核性有所見者
は喀痰検査を実施する。
胸部撮影部門
健診初日は大勢の人が集まり,かなり早いペースでの
撮影となった。途中フィルム枚数で60枚ぐらいになった
頃写真画質の劣化が出始め,現像液の交換を指示した。
この原因は実態調査で世銀から入る予定の自動現像機用
の現像液が間に合わず(この件は知らされていなかっ
た)別の現像液を使用していたためと分かった。
放射線被ばくについては,携帯型X線装置の設置場所
が民家の高床式住宅の1階部分で,防護衝立は1枚ある
くみ上げ式の井戸の前で。右のおばあさんは暑いので体を拭いており、左の女性
は昼食の食器を洗おうとしているところ。後ろに見える家は一般的な家の造り。
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19
動き出したアフガニスタンの結核対策
復興後の協力に関する調査・協議報告
5月19日〜6月2日
結核研究所国際協力部副部長
須知
雅史
内戦によって破壊された市街。弾痕も生々しいこのような建物が街中いたる所で見受けられる。
はじめに
結核対策の現状
5月19日,国連機でアフガニスタンのカブールに到
着,6月2日までJICA派遣専門家としてアフガニ
スタンの結核対策に対する協力について調査・協議し
てきたので報告する。
アフガニスタンの紛争後の復興において,先方は結
核対策分野における協力を日本側に強く要請した。そ
の理由は,1970年代に日本による技術協力プロジェク
トの経験があること,当時無償資金協力により国立結
核研究所(NTI:NTPの中央機関,建物が破壊さ
れたため現在は市中心部の施設を間借り中)を建設し
たこと,多くの日本人専門家が派遣され,加えて多く
のアフガニスタン人医師が日本で研修を受けているな
ど人的交流があることなどが挙げられよう。そこで,
今回の派遣は,内戦により破壊されたNTIの修復と,
協力の内容をどうするかということが焦点となった。
アフガニスタンにおける結核対策の最も大きな特徴
は,国家結核対策(NTP)組織が非常に脆弱で,大
小のNGOがそれぞれの地域において独自に活動して
いる点である。カブール市内では,スイスのNGOで
あるMRDAIRに支援された間借り中のNTIの1診断・
治療センターと5つの治療センター,そしてドイツの
NGOであるGMSの2診断・治療センターと5治療
センターが,DOTS戦略に従った結核対策を実施し
ている。しかし,NTIはNTP組織の中央機関とし
ての後述される機能を有さないのが現状である。また,
結核治療はそれぞれの専用外来で実施されているなど,
一般医療への統合が遅れている。
アフガニスタンの結核状況(2000年)
人口:約2,200万人
推定年間全結核患者発生数(罹患率):
7万人(人口10万対321),
世界第22位(結核高負担国)
推定年間塗抹陽性結核患者発生数(罹患率):
3.1万人(人口10万対144)
DOTSにアクセスできる人口の割合:
首都カブールを中心に15%
*内戦により約300ある郡の半数以上で公的保健施設が
破壊され、 それら地域では医療へのアクセスが困難
WHO Report 2002より
20
09/2002 複十字 No.287
破壊されたNTI内部。タイルや窓枠,電線などはすべて略奪され
ているが,建物の構造自体は修復に耐えられるという。
今後の協力の方向性
日本の協力は,NTPに対する技術的支援に絞って
実施されるべきであろう。つまり,NTPの中央機関
としての機能確立への支援,特に 1)対策の監督,評
価,2)サーベイランス機能,3)資機材供給システム,
4)喀痰塗抹検査要員を含む対策要員の研修,5)喀痰
塗抹精度管理システムなどの構築への技術的支援と,
6)それらを通じてのDOTS地域の拡大への支援であ
る。そのために破壊されたNTIを修復し,1)NTP
機能強化の場の確保,2)研修用検査室,講義室,将来
の結核リファレンス検査室を持った結核と他の感染症
のための研修センター,そして 3)併設されている外
来施設は,結核の診断・治療機能を持つがNTPとは
別管理の一般診療所の機能を持つということが,アフ
ガニスタン側,NGOなどと合意された。今後の協力
は,先にも述べたNTIでのNTP活動への支援とい
うことになる。この領域は,WHOも協力の計画であ
り,今後緊密な調整が必要となる。
ドイツNGOの結核外来の男性用待合室。DOTを待っている。
おわりに
以上のように,アフガニスタンのNTPはその組織・
活動とも歩み始めたばかりであり,特にNTPとして
の調整機能,リーダーシップが求められている。今後
は,JICAによる技術協力プロジェクトも開始され
る予定であり,20年に及ぶ紛争後の復興に日本が少し
でもお手伝いできることを期待したい。
市内のプラスチック用品の市場。イラン製のプラスチック製脱衣か
ごを購入。
マスコミ資料
結核
●7/5 産 国立木更津工業高専で3月頃男子学生が結核と診
断され入院,同校生徒126人が感染し,予防内服。
●7/8 毎 文科省は学校での結核対策見直しのための有識者
による検討会を設置。9月までに最終報告を提言する予定。
●7/29 産 8月下旬から南アで開かれるヨハネスブルクサミ
ットに向け,8月6日都内で「保健に関するタイプⅡ会合」を開
催。エイズ・結核・マラリア予防と途上国の保健プロジェクト取
りまとめに向け日本が主導的役割を果たす方針。
●7/28 中国 JICA研修員として結核対策を学ぶため来日し
たアフガンの医師2人が27日,広島の平和記念公園を訪れた。
●8/2 薬 厚生科学審議会感染症分科会が7月26日開かれ,
結核予防法改正を視野に入れ具体策を検討していくことを厚労省
に求めた。また,あわせて結核部会も開かれ,文科省より「学校
における結核対策に関する協力者会議」の討議内容について報告が
あった。施策の詳細は森研究班でたたき台を作成する予定。
●8/7 毎 ヨハネスブルクサミットを前に都内で「保健に関
するタイプⅡ会合」が開催され,日本,南ア等20カ国やEU,W
HOなど国際機関の代表らが出席。「世界エイズ・結核・マラリア
対策基金」の強化や政府とNGO,国際機関との協力の仕組み作
りなどが議論された。
●8/14 毎 WHOの推計によると中国で新たに発生する結核
患者は年間136万人。山西省忻州市でも薬代が払えず治療中断す
る患者が多く,同市の結核罹患率は90年の人口10万対444から00
年には474に増加。
●8/14 西日本 福岡県で県立病院改革。結核病院として戦後
設置された4病院を民間委譲する考え。そのうち,現在結核病床
があるのは2病院のみ。
●8/21 産 ヨハネスブルクサミットを前に,「世界エイズ・
結核・マラリア対策基金」への拠出を,これまでの2億ドルから
年間5億ドルの継続的拠出へと増額することを政府に求めるキャ
ンペーンが始まった。呼びかけ人はアフリカ日本協議会代表林達
雄氏ら8人。
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21
結核国際研修40
結核国際研修
結核国際研修40周年記念セミナー
40周年記念セミナー
周年記念セミナー
7月16日〜18日/バンコク(タイ国)
結核研究所国際協力部国際研修科長
大菅
克知
7人のアジアの若き医師たちが岩崎龍郎所長を囲
んだ一葉の写真が残っている。1963年,結核研究所
における第1回結核国際研修の記念写真である。あ
れから40年。現在までに1,700名の発展途上国の医
療関係者が国際研修を卒業し,清瀬から世界に飛び
立っていった。
結核国際研修の変遷
岩崎所長以下そうそうたるメンバーを有した結核研
究所の国際研修は,高度経済成長の始まりとともに国
際協力事業団(JICA,当時はOTCA)の委託を受
け開始された。日本人のための結核研修の英語版とし
て始まった国際研修の目的は,解剖学,病理学,レン
トゲン読影を中心とした6カ月にわたる結核病学の習
得であった。専門的知識では右に出る者がいない当時
の講師陣も,英語では苦労されたようである。
2年後の65年には結核外科研修が始まり,75年に結
核菌検査研修に取って代わられるまで外科療法の伝授
が続けられた。また73年には結核のより深い理解を目
的に,結核上級者研修が追加された。この頃より臨床
結核病学から,より公衆衛生に焦点を合わせた結核疫
学,そして対策へと内容が変化していく。国際的にも
国家として結核対策に取り組むことの重要性が,よう
やく認識されつつある時期でもあった。75年には古知
新医師が研修に参加している。15年後古知氏はWHO
の結核対策を指揮し,90年代のDOTS旋風を巻き起
こすことになる。
近年の国際研修は,DOTS戦略を中心に,対策上
の問題点の分析と,それに対する解決策を活動計画に
まとめることが研修の核となり,より参加型,討議中
心へと変わっていった。94年には時代の要求に応える
べく,アジア地域エイズ専門家研修が,エイズ予防財
団の委託を受け開始された。現在結核研究所では,
22
09/2002 複十字 No.287
集団研修コースとして3つの結核研修と1つのエイズ研
修が,途上国の医療関係者を対象に実施されている。
結核国際研修40周年記念セミナー
1963年の第1回結核国際研修には2名のタイ人が参
加した。写真中央の長身男性はタビサック医師である。
以後タイからは多くの医師が参加し,2002年6月現在
で88名。これはフィリピン,インドネシアに次いで多
い。エイズ研修にもタイからは18名の参加があり,結
核研究所の国際研修を通じて,タイ国との間には深い
関係が築かれてきた。また近年タイ国はインドシナに
おいて様々な領域で中心的役割を担いつつある。
このような背景から研修40周年を記念し,タイ近隣
国からも過去の研修卒業生を招聘し,インドシナ地域
における結核対策の現状と,今後の国際研修に期待さ
れる役割について意見交換を行うことを目的に,タイ
国にて結核移動セミナーが開催された。開催にあたり,
40年間にわたりタイ国の結核対策に尽力された第1回
卒業生のタビサック事務局長,ナッダ会長らタイ結核
予防会の多大な協力を得た。
*
*
*
*
*
セミナーはタイ国バンコク市,センチュリーパーク
ホテル会議場にて7月16日〜18日の3日間開かれ,タ
イ国より胸部疾患関係者約100名に加え,カンボジア
(1名),ラオス(1名),ベトナム(2名)の近隣
国研修卒業生計4名が参加した。日本からは島尾忠男
バンコクにて40周年記念セミナー
結核予防会顧問,石川信克結核研究所副所長と筆者が参
加した。初日,2日目は胸部疾患セミナーが開かれ,
最終日が国際研修40周年記念セミナーにあてられた。
日本人3人の講演に引き続き,カンボジア,ラオス,
ベトナム,そしてタイからの過去の国際研修参加者が,
それぞれの国の結核状況と,その対策の現況と問題点
について発表した。それぞれの国が国家結核対策の下,
DOTS戦略の推進途上であるが,同じインドシナで
も各国の事情は大いに異なり,それに応じて問題点も
異なる。同じDOTS戦略でも個々の状況に応じたアプ
ローチが必要であることが強調された発表であった。
引き続き筆者は,過去40年間の結核研究所における
結核国際研修の変遷を手短に紹介し,今後の国際研修
の意義と,方向性に関する意見交換が行われた。結核
研究所は今後も研修を継続すべきかの問いに対しては,
結核は将来にわたり人々に苦しみを与え続け,大きな
問題に留まることは間違いなく,また米国での過去の
失敗に見られる如く,今後も手を抜くことは許されな
い。そのために結核研修の必要性は今後も変わること
がない」との意見が出された。また日本で行う研修の
意義に関しては,「結核研究所での研修の大きな利点
は,アジアだけでなくアフリカや南アメリカなど他の
地域からの参加者を通じて,様々な結核対策の経験か
ら多くを学ぶことができることである」との発言があ
った。「近隣国間の政治的な摩擦(タイ−ミャンマー
間,インド−パキスタン間等)が存在する現状では,
政治的,地理的に遠く離れていながら,同じアジアに
位置する日本において行われる研修が望ましい」とい
う意見もあった。また内容に関しては近年の途上国の
結核状況を反映して,「エイズに関する時間を多く割
くべきである」,とか「オペレーショナルリサーチ等,
研究を行うための能力がますます要求されてきている
ため,この分野が強化されるべきだ」等の意見が出さ
れた。また「研修内容は良いが,忙しい現代において
3カ月の期間は長すぎる」とのコメントもあった。第
1回が6カ月であったことを考えると,時代のペース
が速くなっている事実を反映して面白い。タビサック
医師の記憶では63年当時,清瀬−池袋間の電車賃は70
円(ちなみに現在は260円)であり,「古きよき時代」と
考える方も少なくないだろう。
おわりに
ODA削減の議論とともに,実のある国際協力をい
かに行うかが近年問われている。文化社会が異なり,
発展の度合いも違う諸外国への協力が,単なる技術の
移転で完結するものではないことも明らかである。そ
の中で,人作りは地味ではあるが最も大切なものの1
つである。研修や教育を通じて,現地に指導力のある
良い人材が育てば,その効果は長期間持続する。
今回の移動セミナーは結核国際研修40周年事業とし
て,近隣国より過去の研修卒業生を集め,インドシナ
地域という視点でタイにおいて開催された。政治的理
由により残念ながらミャンマー国からは出席が得られ
なかったが,ラオス,カンボジア,ベトナムからは予
定通り参加が実現し,また主催国のタイからは多くの
参加者が集まった。国際研修卒業生が各国において,
それぞれの立場で結核対策に貢献している事実は,研
修主催側として力づけられるものであり,また参加者
から得られた意見は,今後の研修を企画する上で示唆
に富むものである。今回のセミナーのように結核研究
所国際研修卒業生を集め,その国または地域の結核対
策を話し合うことは,結核対策の人的ネットワーク作
りという点で,非常に効果的と考えられる。
タイ国結核対策課長(左)と筆者
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23
第8回 Wolfheze Workshop on TB
第8回
T Control in Europe
に参加して
6月7日〜12日/オランダ
結核研究所疫学研究部 統計解析科長
会場となったBilderberg Hotel de Buunderkamp
☆ 背景 ☆
標記会議は2002年6月7日から12日まで,オランダ
の緑豊かな小さな村Wolfhezeで開かれた。この会議
は一般にWolfheze会議と呼ばれ,1990年から同じ場
所で開かれるようになったが,その背景に "WHOの
方策は基本的にはすべてに適応できるものであるが,
高まん延国を対象としたものであって,ヨーロッパの
ような低まん延国には必ずしもフィットしない場合も
ある"との西ヨーロッパ各国の考えがあった。そのた
め特に西ヨーロッパの結核対策に焦点を定めた方策を
議論する場としてWolfheze会議が開かれたが,西
ヨーロッパの結核対策は東ヨーロッパの結核対策抜き
には考えられず,この会議の参加国は次第に東ヨーロ
ッパにも拡大されるようになった。
☆ 3つの会議 ☆
約1週間にも及ぶWolfheze会議は,実は3つの会
議から成る。①National Tuberculosis Programme
Managers'
Meeting(国家結核対策担当官会議),
②Wolfheze Workshop-Plenary Meeting(Wolfheze
ワークショップ総会),③Annual meeting of Euro TB
National Correspondents(Euro TB 関係者年次会議)。
前者2つはオランダ結核予防会(KNCV),後者はフラ
ンスに本部を置くEuro TBの主催である。自分は2つ
目の会議から参加する予定であったが,1つ目の会議
が午前中まで続いたので,運良く1つ目の会議の様子
も知ることができた。
大森
正子
プ討議を通して合意を確立していくことが目的で,今
回のテーマは刑務所の結核,多剤耐性結核,薬剤耐性
サーベイランス,感染と薬剤耐性対策,検査室のQC
(精度管理)
,結核対策の管理と予算,モニタリング
システム等と多岐にわたっていた。4カ国から報告が
あったが,基本的にはDOTSをどのように拡大してき
たかという内容であった。その後WHO Euro代表が
DOTS拡大プランを報告,今後10年,2012年までに未治
療多剤耐性結核を1%以下にする,DOTSカバー率を
37%(2003年),90%(2006年)に拡大する,またヨーロッパ
51カ国のうち東ヨーロッパの16の高まん延国では罹患率
の上昇が危機的状況にあり,その16カ国の罹患率(2000
年に人口10万対90)を1990年(人口10万対40)のレベル
(半減)に下げる,という目標を確認した。
☆ Wolfheze ワークショップ総会 ☆
今年のテーマはTB/HIV Control in Europeで,まず
「アフリカから学ぶこと」と題してタンザニアからの
報告を受け,「ヨーロッパではつい最近までHIV/AIDS
は対岸の火事(アフリカの問題)と思われていたが,
特に東ヨーロッパでは98年から急増している」と危機
感を共有した。その後,1.サーベイランスと診断,
2.HIV/TBの患者管理,3.予防,4.結核とエイズ対策にお
ける協力関係,をテーマにグループ討議に入った。班
長は目的に即したアクションプランにおいてコンセン
サスを作るように求められていたが,どの班もコンセ
ンサスを作るまでには至らなかったようであった。
次に"Development of an effective European active
case-finding policy" をテーマに,IUATLDとKNCVの
参加者が,特に低まん延国が結核制圧に向けて今必要な
対策として,「患者発見,発病予防の意義」を講義形式
☆ 国家結核対策担当官会議 ☆
参加国48,参加者109名,うちオブザーバー2名(日本,
米国)
。この会はその名の通り結核対策のマネージャー
が自国の結核対策について現状と問題を報告し,グルー
24
09/2002 複十字 No.287
4グループに分かれて行われた「Fairground Workshop」。写真はドイ
ツの Dr. D.Sagebiel が参加者全員の前で「国家結核対策とエイズ対策
の協力体制について」討議グループの報告をしている光景。
で報告し,その後,エストニアから「刑務所での患者発
見」,ロシアから「やや時代遅れとなった患者発見」な
ど活動報告がなされたが,西ヨーロッパでの積極的な患
者発見方策の具体的な取り組みについての報告がなかっ
たのは残念であった。また,このテーマでは潜在的結核
感染者への発病予防は重要な課題であるが,質疑応答
で,BCGカバー率が高い東ヨーロッパでは感染者の確認
が困難であることが,問題として提起された。
☆ Euro TB関係者会議 ☆
参加国37,参加者56名。この会議は1日半の予定で開
かれたが,私は1日目だけ参加して帰国した。国を越えて
のサーベイランスシステムの確立は,まさにヨーロッパ連
合のなせる技という感がある。サーベイランス情報の疫学
的な分析はこれからというところであるが,情報収集,
解析,フィードバックの努力には頭が下がる思いである
(Euro TBホームページ http://www.eurotb.org参照)
。
今後は治療成績と薬剤感受性検査成績のモニタニングに
力を入れようとしているが,治療成績では培養陽性患者
の治療成績を重視していることが特徴で,塗抹陽性患者
については国際比較のためという位置づけにしている。
また治療成績の区分では,問題が提起されればその内容
を数年で変更することもいとわず,常に良い評価方法を
議論している姿勢はわが国でも学びたいところである。
☆ おわりに ☆
ヨーロッパの結核問題は今や東ヨーロッパの問題で
もあり,その中でもロシア語圏はいろいろな面で問題
を抱え,その対策にWHOも西ヨーロッパ各国も多く
の支援体制を敷いている。今回の会議でもロシア語圏へ
の気の使いようは英−露同時通訳の提供,議事日程・調
査用紙のロシア語版など随所に感じられた。3日間,
森に囲まれたホテルに軟禁状態ではあったが,それ以
上に刺激的でとても貴重な体験をしたという喜びのほ
うが勝っていた。最後に主催者であるKNCVの
Dr.Veenとそのスタッフに感謝いたします。
参考文献:Broekmans JF, et al.: European framework for
tuberculosis control and elimination in countries with a low
incidence. Eur Respir J 2002; 19: 765-775.
International Column
国際連携と民間機関の活用
〜バングラデシュでの2つの試み〜
結核予防会国際部長
結核研究所副所長
石川
信克
民間クリニックでのDOT
Sに来た患者さん(家から
毎日歩いて来られる)
最近バングラデシュのダッカで2つの興味ある所を訪
ねました。1つは「国際下痢疾患及び保健問題研究所
(ICDDR,B)」という機関です。下痢治療の経口補水塩を
開発したことで有名です。米国のジョンズホプキンズ大
学の人材が核になり,様々な健康問題に取り組んでいる
高レベルの研究所で,最近結核の研究を始めたこともあ
り,6月に理事会に出席しました。世界中の国から資金
援助を受けており,理事も様々な国の教授たちから成っ
ています。日本政府も多額の資金援助をしており,日本
の医師たちの感染症研究や研修フィールドともなってい
ます。単純な健康問題が山積している途上国で高レベル
の医学研究を行うには,国際的な経済支援と研究ネット
ダッカのミルプール住宅地区。都市PHCプロジェクトにより民
間クリニックが設けられ、DOTSが開始された
ワークが必須です。日本の結核研究所が今後どのような
いますが,やや商売本意で質が維持できないので,しっ
体制で国際的役割を果たすべきか,経済的支援をいかに
かりしたNGOに市の事業を委託してゆこうというもの
得てゆくか考える良い時でした。
です。このプロジェクトの総責任者は以前保健省PHC
もう1つは,ダッカ市庁にある都市プライマリーヘル
疾病対策課長を務めていたやり手のザキール・フセイン医
スケア(PHC)・プロジェクトです。これは,混迷する
師で,ダッカ市に出向し市庁内にオフィスを構えていま
途上国の都市健康問題に対して国際支援でPHCを強化
す。市内の基本的な保健への取り組みが強化されてきた
しようとするもので,アジア開発銀行などの資金援助に
ところで,DOTSもそこで拡大しようと,結核対策課も
よります。従来の市の公立クリニック以外に,私立ない
入り込んできました。従来政府機関の強化による自立促
しNGOに地域の保健サービスを任せていこうというこ
進が重要でしたが,民間機関の活用という大きなうねり
の試みには興味があります。いわゆる開業医はたくさん
があることを感じました。
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第14回国際エイズ会議に出席して
第14回国際エイズ会議に出席して
14回国際エイズ会議に出席して
7月7日〜12日/バルセロナ(スペイン)
結核予防会顧問
島尾
忠男
格差是正への動き
エイズについての世界レベルでの会議は2年ごとに
開催され,その中間には地域別の会議が開催されてい
る。第13回会議は2年前に南アフリカのダーバンで開
催された。この会議では,先進国のエイズ患者は抗エ
イズ薬の使用で死亡率が激減し,QOLも改善し,普
通の社会生活を送れる者が多くなっているのに対して,
途上国では薬価が高いため抗エイズ薬が使えず,死亡
する者が多い南北の格差が大きな問題となり,その是
正が強くアピールされた。
国際社会もこのアピールに応えた。直後に沖縄で開
かれたG8サミットでは,世界の貧困の最大原因であ
る感染症,特にエイズ,結核,マラリアに対して,協
力して立ち向かおうと言う日本の提案が採択され,そ
れを具体化するための会議が12月に再び沖縄で開催さ
れた。翌平成13年6月には,国連の特別総会が初めて
特定の疾病であるエイズを対象として開催され,エイ
ズ対策の強化とそのための国際協力の緊密化,エイズ,
結核などを対象として創設された国際保健基金への拠
出が合意された。薬価を引き下げるための交渉も製薬
会社との間で進展した。
このような背景の中で,今回の第14回会議は知識と
公約を行動に移すことをスローガンに掲げて,7月7
日から12日まで6日間,スペインのバルセロナ市で開
催された。
多彩な内容
バルセロナは10年前にオリンピックが開催されたこ
とで,日本人にもお馴染みの街である。市の西南部,
海に近いモンジュイックの丘にオリンピック競技場が
あり,その隣の室内競技場を主会場として,丘を降り
たスペイン広場近くの国際会議場などでは10の分科会
が同時並行で開催された。昼にはポスター展示への質
疑,また技能研修のワークショップも開催され,早朝
や夜にはサテライト・シンポジウムなども行われる
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09/2002 複十字 No.287
という多彩な内容であった。
最終日に閉会式に先立って会議を要約するセッショ
ンが行われ,7つの専門分野ごとに,内容の総まとめが
紹介された。このように大きな会議で,同時並行して多
くの分科会が行われる場合には,適切な企画である。主
な内容を紹介すると,ワクチンの研究は現在フェーズⅠ
の段階のものが25,Ⅱまで進んだのが5,Ⅲまできた
のが2とのことである。抗エイズ薬は1日1回の投与で
すむものなど,新薬の開発は進んでいるが,根治させ
るほどのものはなく,また休薬期間を置く投与方式は
まだ臨床研究の段階であることが強調された。検査の
普及については,迅速法の採用で結果を聞きに来る者
の割合が増加し,米国では検査用自動車の活用で検査
件数が増えた例が紹介された。ハイチからはエイズ,
結核を含め種々の感染症の治療を効果的に行っている
事例が紹介された。南アでは裁判所がエイズに感染し
ている妊婦に抗エイズ薬を使えるようにする判決を出
し,政府が対応を始めている。
エイズ対策と結核対策
筆者が最も関心を持ったのは,エイズ対策と結核対
策との関連であり,WHOの結核部門とエイズ部門が
共催したサテライト・シンポジウムと,分科会のエイ
ズと結核部門に出席した感想を述べてみたい。
結核とエイズが相互に干渉し合い,発病や進展を促
進することはよく知られているが,アフリカの大部分
の国や一部のアジアの国では両疾患を併発する例が多
く見られ,双方の対策がお互いを抜きにしては語れない
段階まで来ている。そうなると,この10年間DOTS政策
を実践してきた結核の経験と実績が生きることになる。
抗結核薬を確保し全国に配布する体制の整備,標準化し
た処方で,特に治療開始後2カ月の大切な時期に,患者
が確実に服薬していることを見守るやり方,記録を整備
し,コホート調査で治療の成果を確認する方式などを結
核対策では実施してきた。この基本的な考え方はエイズ
対策を立てる際にも準用されなければならない。
これらの国では,結核患者は極めて高率にエイズにも
感染しているので,まず結核を診療しながらカウンセリ
ングを行い,患者の同意を得てエイズの検査をして,感
染者を発見することになる。免疫に重要な役割を果たし
ており,エイズ・ウイルスによって破壊されるCD4と
いうリンパ球の数を調べることによって,抗エイズ薬
による治療が必要か否かが決められる。したがって,
カウンセリングのできる職員,エイズの検査とCD4リ
ンパ球数を測定できる能力,それに抗エイズ薬を使え
る職員が加われば,結核対策の中でエイズにも対応で
きることになる。
結核対策とエイズ対策を一緒に行う難しさ
しかし,現実にはエイズに感染した者に対する結核
対策には多くの問題点がある。結核患者の治療の際に
中心となる役割を果たしているリファンピシンと抗エ
イズ薬の一部は,相互に代謝が干渉し合ってリファン
ピシンの濃度が高くなり,副作用が出る恐れがあり,
一方抗エイズ薬であるプロテアーゼ阻止剤の一部は,
濃度が低くなり効果が期待しにくくなる。したがって,
エイズの病状がよほど重くない限り,まず結核の治療
を始め,治療開始後当初2カ月の強化処方の期間終了
後は,エイズの病状が許せば結核の維持期の処方を続
けて,合わせて6カ月で結核の治療を終わり,エイズ
の病状が重ければ,維持期の結核の治療はリファンピ
シン以外の処方にして,抗エイズ薬の併用を始める。
結核を治すことがエイズの経過にも良い影響を与える。
抗エイズ薬は死亡率を低下させ,患者のQOLを改
善するのには極めて有効であり,血液中のウイルスの
量も検出できなくなるが,ウイルスはリンパ節内に生
き残っており,
現 段 階では治 療を止めてよい目途は立
たないので,いったん服薬を始めると生涯服薬を続け
ねばならない。このため,治療を担当する施設に,そ
の負担増に対応できるだけの職員や予算を手当てしな
いと,精一杯動いている結核対策の部門が負担過重で
動かなくなる恐れがある。
エイズと結核の双方に感染しているが結核を発症し
ていない者には,抗エイズ薬の適切な使用で,結核発
病の恐れが低下することが分かっている。また,結核
発病予防のためにイソニアジドの投与が有効であるが,
すでに発病している患者の振り分けが適切に行われな
いと,イソニアジドの単独使用になり,耐性発生の恐
れがある。X線検査を高い精度で行うことが難しい多
くの途上国では,実際にどのようにして患者を振り分
けるかが大きな問題になる。
おわりに
会議の最後には,米国のクリントン,南アのマンデ
ラ,両前大統領が登場し,エイズウイルス感染者の人
権を尊重し,治療に見られる格差を是正することは,
21世紀の全世界に課せられた大きな問題であると述べ,
満場の拍手喝采を浴びた。このことに全く異議はない
が,格差是正の対象に結核や予防できる小児感染症な
ども含めるべきであると考えるのは,結核専門家のひ
がみであろうか。
マスコミ資料
喫煙・肺がん
●6/10 薬 バイエル社(ドイツ)はアスピリンが大腸がん,
肺がんのリスクを減少させるという米国の2つの研究報告を紹介。
●6/13・14 毎・読,6/17 薬 厚労省は非小細胞がんを縮小
させる効果がある肺がん治療薬ゲフィニチブ(商品名イレッサ)を
スピード承認。使用は手術不能例とがん再発例に限定。
●6/14 産 WHOは2003年を目途に「たばこ対策枠組条約」
の策定作業を実施。原案には,国際的税率を定め,それより低
い税率の国に引き上げ義務を課すという条項や,世界的規模で
のたばこ自販機廃止を求める条項を含む。
●6/19 朝 禁煙補助の新たな試みとしてニコチン入りの水,
禁煙ワクチンなどが米国で発表された。
●6/21 薬 平成13年のがんによる死亡者数は30万人を突破
し,過去最高に。男性で最も多いのは肺がん。
●6/25 読 千代田区の路上禁煙条例が24日の区議会で成立,
10月1日から施行予定。
●6/26 中国 福山市は7月1日から本庁舎と3支所を完全
分煙化。
●7/9 毎・読,7/12 薬 新肺がん治療薬ゲフィニチブ
について,製造元のアストラゼネカ社は7月中旬から医療機関
へ供給,主治医の判断で使用可能に。
●7/15 薬 政府は肺がん治療薬ゲフィニチブを一般に広告
を制限する必要がある薬として指定。
●7/16 中国 広島県歯科医師会は「歯科からの禁煙支援プ
ログラム」に乗り出す。
●7/18 朝・産・読・毎 女性下着メーカーのトリンプ・イ
ンターナショナル・ジャパンは禁煙を宣言した社員に報奨金と
して3万円を支給する制度を創設。
●8/4 中国 広島県で医師や行政,企業などでつくる「禁煙支
援ネットワーク」が設立された。
●8/9 朝,産,毎,読 厚労省はじん肺患者に発症した肺がん
を,法定上労災認定の対象となる「合併症」とする法令改正を年内
に行う方針。また,じん肺患者全員対象に年1回肺がん健診を実施
する方向で,省令改正を行う。じん肺患者の肺がん発症リスクは一
般の約3.7倍。
●8/12 薬 東大医科研ヒトゲノム解析センター中村教授の研究
成果を事業化する目的で設立されたOTS社が行う肺がん,前立腺
がん,乳がんの遺伝子発現解析研究をもとに,塩野義製薬が分子標
的治療薬の開発を実施する契約が成立。
●8/21 読 プロ野球球場のうち,東京ドームなど4つのドー
ム,西武ドーム,横浜スタジアム,神戸グリーンスタジアムなどは
以前から,神宮球場は今シーズンからスタンド全面禁煙となった。
残るは広島市民球場と甲子園球場だけ。
●8/22 毎,読 昨年9月に発売された禁煙補助のニコチンガム
「ニコレット」の売り上げが7月末までに90億円に達し,約100万
人が禁煙に挑戦したと見られる。
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思い出の人を偲んで
BCG経皮接種の生みの親
くち
き
ご
ろ
さく
朽木五郎作
先生
元日本ビーシージー製造株式会社取締役
平成13年5月24日逝去 享年89歳
文:結核予防会顧問
乾燥BCGワクチンの製造に成功
昭和20年8月に日本は第二次大戦に敗れた。ほ
とんどの都市が爆撃のため焼かれ,国土は荒廃し,
毎日の食べ物にも不自由し,その中で結核は猛威
を振るっていた。結核予防会も一部の施設は被害
を受けたが,東村山の保生園と清瀬の結核研究所(結
研)は郊外にあったため戦災を免れ,結核との戦
いを続けていた。特に結研では,このような厳し
い情勢の中で世界に先駆けて昭和24年にBCGワ
クチンを凍結乾燥し,大量生産する方法の開発に
成功し,敗戦国である日本の技術が世界から注目
されることになった。
当時伝染病がまん延し,その対策として種々の
ワクチンの接種が行われていたが,敗戦後の困難
の中でワクチンによる事故が相次いで起こり,ワ
クチンの安全性の確保が緊急の課題であった。当
時のBCGワクチンは,培養して増やしたBCG
を溶媒に浮遊させて製造していたが,製造後BC
Gが生きている期間は2〜3週間であり,安全性
を確認できないまま接種していた。BCGによる
免疫は生きている菌では得られるが,BCGが死
んでしまうと,免疫はつかずに局所の反応だけは
起こるという1番困ったことになる。当時結研の
BCG研究室には,大林容二先生をチーフにして
今回ご紹介する朽木先生,岡田久先生,張仲譲さ
んなどがおられ,凍結乾燥後もBCGが生き延び
る溶媒を開発するための実験を繰り返しており,ショ
糖液を用いると,凍結乾燥後も十分な生菌が残る
28
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島尾 忠男
ワクチンの開発に成功した。この方法で製造した
ワクチンは,冷蔵庫に保存すれば長期間保存して
もBCGの生菌数はあまり減らないため,動物に
接種し,安全性を確認した上でヒトに接種するこ
とができた。
日本は昭和26年に結核予防法を制定し,本格的
に結核対策に取り組み始めたが,その中でBCG
接種は,健康診断,適正医療の普及と共に三本柱
の1つとなり,結核の予防に貢献することになった。
創立間もない結核研究所に参加
BCG接種と深いご縁のある朽木先生は,明治
44年に新潟県の長岡市で生まれ,長岡中学4年修
了で旧制の第一高等学校に入学された。当時の旧
制中学は5年制で,通常は卒業後旧制高校に進学
したが,4年修了で受験資格があり,優秀な生徒
は合格すれば旧制高校への進学が可能であった。
先生は一高から東大の医学部に進み,昭和11年に
卒業しておられる。同期には保生園長をされた御
園生圭輔先生がおられる。
卒業後伝染病研究所に入られ,半年後に神奈川県
に勤務された。しかし,当時日本軍が中国へ進攻し
ており,先生も召集を受け,陸軍軍医として昭和13
年から16年まで従軍され,帰国後16年6月に設立さ
れたばかりの結研に勤務された。ところが1カ月後
に再度召集され,1年強朝鮮で勤務の後,17年11月
に結研勤務に戻られた。昭和20年には,戦局の悪化
に伴い輸送が困難になったため,BCG製造所を
各地に分散することになり,先生は宇都宮分室を担
当されたが,22年には清瀬に戻り,BCGワクチン
の研究と製造に専念されることになった。
当時BCGワクチンやツベルクリンの製造は結研
が行っていたが,国庫補助を受けている結研が,そ
の1部門で製造した製品を販売して利益を上げてい
るのはおかしいということで,昭和27年11月に製造
部門を分離し,日本ビーシージー製造株式会社が設
立され,先生は会社に移られた。清瀬工場の検定部長,
翌28年には同社の日本BCG研究所の副所長に就任
され,BCGワクチンの研究を続けられた。
腐れ注射といって嫌われたBCG接種
昭和26年に制定された結核予防法では,30歳未
満の者は毎年ツ反応検査を受け,陰性か擬陽性の
場合にはBCGを接種することになっていた。接
種は皮内法で行われていたが,接種後治るまで長
期間かかる潰瘍ができ,瘢痕を残した。学童はB
CG接種を「腐れ注射」と呼んで嫌っており,接
種を免れようとツ反応の検査部位をこすったり,
口で吸ったりして,なんとか陽性に見せようとす
る者も多く見られた。
このような事態を解決する方策は,1つは後に
行われたように接種を特定の時期に行う定期化で
接種回数を少なく,確実な技術で接種することで
あり,もう1つは局所反応の少ない新しい接種法
の開発であった。昭和30年代には結核は未だ強く
まん延しており,接種回数の削減は話題にならなかっ
たので,局所反応の少ない接種法の開発が緊急な
課題であった。この課題に真剣に取り組まれたの
が朽木先生である。
従来から,局所反応を左右する大切な要因として,
接種の深さがあげられ,接種部位が同じ皮内でも
浅いほど局所反応が軽いことが知られていた。し
かし,皮内に浅く注射することは慣れた技術者以
外は困難であり,特に日本のように,多くの医師
が接種に参画する場合にはほとんど不可能に近い。
皮膚の表面に接種する方法としては,種痘で行
われた多刺法があるが,BCGの場合には潰瘍が
融合して大きくなるので適切ではない。皮膚にワ
クチンを塗っただけでは,皮膚の中には入ってい
かない。ワクチンを皮膚に塗った部分を浅く針で
刺せば,皮内の極めて浅い部分にワクチンが入っ
てゆくが,このようなやり方では,よほど菌量の
多い,濃いワクチンを使わないと,免疫を付与す
るのに必要な量のBCGが体内に入っていかない。
従って,経皮接種法の開発には,濃いワクチンの
製造と,適切な接種器具の開発という両方向から
の研究が必要であった。
嫌われない経皮接種の開発に成功
濃いワクチンの製造については,日本BCG研
究所の研究者との共同研究で,皮内ワクチンの160
倍も濃いワクチンの製造が可能になった。接種す
る器具については,先生は間を空けた針を円筒に
植え付け,針先を円筒の縁と同じ高さにした管針
で皮膚を圧刺する方法を開発された。針の間隔が
問題で,5ミリは空けないとお互いの反応が融合
する恐れがあり,一方接種は乳児にも行われるので,
円筒があまり大きいと実際上均等に接種しにくい
ということを考慮して,現在使われているような
9つの針を備えた管針が最後に開発された。
管針での接種が1カ所でよいのか,2カ所なのか,
初接種と再接種で同じでよいのかなど,実用化ま
でにはなお多くの研究が必要であった。どれくら
いのBCGが生体の中に入ったかは,最終的には
皮内法と経皮法を似た対象に行い,接種後同じ時
期にツ反応検査を行ってその強さを比べ,同時に
局所反応の程度を比較せねばならない。朽木先生
は種々の器具を試す動物での実験段階から,当時
BCG研究所が大宮で持っておられたフィールド
での研究まで自ら担当され,子供たちから嫌われ
ないですんでいる管針を用いる経皮法を完成された。
先生はBCG乾燥ワクチン製造技術の確立により,
昭和36年に科学技術庁長官賞を受けておられる。
筆者は昭和30年4月からの1年間のスウェーデン
留学中に,WHOのフェローとして欧米視察に回
られた先生を現地でお迎えして,ストックホルム
市内の関係施設をご案内した。また結研で集団検
診と疫学研究を担当していたので,経皮接種実用
化の段階で,研究のお手伝いをしたご縁がある。
先生は昭和34年以降,日本ビーシージー製造株
式会社の取締役としてその運営にも参画され,昭
和58年に退職。平成13年5月24日に逝去された。
享年89歳であった。
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第3
第 3 回アドボカシー勉強会報告
− 効果的な広報活動とは −
社会の認識,人々の行動が変わったかが大事なポイントに
講師
クレイグ・クラウト氏
(Mr. Kraig Klaudt)
元WHOアドボカシー担当官。
現在はエイズ・結核・マラリア
の3大感染症に関するNGO
"massive effort"で,他団体との
なります。それを評価する指標としては,結核関連予算の
増加,募金の増加,自社HPのアクセス増加などが考えら
れます。
今後の広報活動について
有名人・著名人を巻き込むことは,社会の関心を高める
には手っ取り早い方法です。
連携を強化し,企業等に働きか
例えば,アメリカではアフリカのエイズ問題について,
けて資金を獲得する,といった
著名なミュージシャンが呼びかけることで,20年以上も取り上
活動を展開中。
げられなかったものが,一気に関心が高まった,ということが
ありました。結核についても著名人が話題にすることで,大き
去る7月30日,結核予防会本部にてクラウト氏を講師に,
な社会関心を呼ぶ可能性があるのではないでしょうか。
役職員約30名参加の下,標記勉強会が開かれました。今回
日本では最近,結核を含めた保健医療関係の国家予算の
は過去2回のような講義形式ではなく,はじめに本会事業
削減が問題となっていますが,当会では関係団体との連携
部・国際部,結核研究所対策支援部の事業の現状・問題点
は取ったことはあるでしょうか。他国では必ずこのような
を発表し,それに対して講師からの所感・アドバイスをもら
問題が起きると多数の団体が集まって会議を開き,有力者
う形で進められました。
にアピールします。これはとても大事なことです。
講師のクラウト氏からは,前回(第2回勉強会)来日時
*
*
*
おわりに
に比べ,
○言葉より視覚で訴える広報資材が増えていて,効果的である。
さすがにアドボカシーの専門家であり,納得させられる
○標語・スローガンについても印象的なものが増えていてよい。
部分も多く勉強になりました。印象的だったのは,質疑応
との評価をいただいた上で,以下のようなアドバイス・
答の中で「何も予算獲得は自国政府だけとは考えず,例え
お話がありました。
*
ばアメリカ政府に求めてもいいのではないか。現にオラン
*
*
アドボカシーとは?
ダ結核予防会はアメリカ政府機関等より援助を受けている」と
聞き,なるほどこういう発想の転換が必要だと思いました。
アドボカシー(Advocacy)という言葉は一般的には馴染み
ただし,当会が置かれている現状では,クラウト氏が提
が薄い言葉かと思います。簡単に言えば,普及・広報活動を行
案した内容すべてをそのまま実施することは難しいかと思
って,政府や社会的発言力のある人たちの行動変革を起こし
われます。取り入れられるべき点も多いので,それらを実
て,政策の強化や,関連予算の増額を図っていくことです。
施しつつ,日本の現状にあった事業を実施しなければなら
当会に当てはめると,結核の国内外での現状を政府・知
識人・有名人に訴えて,国の結核関連予算を増やしたり,
ないと改めて感じた1日でした。
結核予防会事業部普及課主任
マスコミ等で有名人に自発的に訴えてもらえるよう行動変
革を起こさせることになります。
アドボカシーのポイント
大部分の団体では広報活動をどれだけ行ったか,という
段階で終了し,活動を行ってどのように人々の行動が変わ
り,それによって社会がどう変わったかまでの評価が行わ
れていません。アドボカシーでは広報活動そのものよりも,そ
の後の社会変革,行動変革が最も大事な点であることを強
調したいと思います。
また,広報活動の「目的」について,曖昧で漠然とした
ものを掲げる場合が多い。これは当会に限った問題ではな
く,ほとんどの団体に当てはまります。「目的」はそれぞれ
が達成可能なものでないと達成度も分からないため,無意味
なものになってしまいます。つまり,具体的かつ明確な目標
を定め,それを広報事業として実施したことで,どれだけ
30
09/2002 複十字 No.287
職員の発表中には複十字シール運動キャラクター
「シール坊や」が登場。大いに盛り上がった。
市川
雄司
予防会だより
臨時の全国支部事務連絡会議
開かれる
〜今後の結核対策への対応策を協議〜
7月12日/ホテル海洋(東京都)
去る6月5日,厚生科学審議会感染症分科会結核部会・
感染症部会の共同調査審議に係る合同委員会より,「乳幼児
及び小中学1年生に対するツ反検査」について,「廃止」と
する報告書が感染症分科会に提出されました(詳細につい
ては前号p.2参照)
。これを受け,本制度改正の提言のポイ
ントとその背景についての共通理解を深め,今後予想され
る結核健診制度の改正までの対応方針について協議する
●ネパール結核対策プロジェクト技術評価
及び指導実施
本会がネパール結核予防会と協力して実施している結核対
策共同モデル事業(通称ルンビニプロジェクト)の定期評価
及び指導が,7月13日から19日にかけて行われた。現地で
は,技術指導については第一健康相談所増山診療部長,業務
調整面については国際部柴土計画課員,同川越業務課員が担
当。プロジェクトの拠点であるルンビニ地区内の各ヘルスセ
ンター・ヘルスポストを訪問し,調整委員会を開催した。
●健診事業のあり方検討委員会開催
7月25日(木)午後3時より,結核予防会3階小会議室
にて,標記会議を開催した。詳細はp10〜11に掲載。
多額のご寄付を下さった方々
<指定寄付等>(敬称略)
本部 =木村美代子(複十字病院),原田武彦(新
山手病院),守屋荒夫(新山手病院)
<複十字シール募金>(敬称略)
岩手県 −岩手県医師会,ダスキン盛岡,コセキ
ため,本会では7月12日,臨時全国支部事務連絡会議を開
催しました。
まず本会仲村理事長の挨拶に次いで,厚生労働省健康局
中谷結核感染症課長が,今回の結核対策の見直しの背景,提
言の概要,ツ反・BCG接種の現状・課題・改正の方向性,
さらに今後のスケジュールに至るまでを解説されました。
次いで,結核研究所森所長が「結核対策の包括的見直し
に関する提言の解説」とする講演を行い,本提言の基本理
念,具体的な方策,各方策のあり方,行政機関・医療機関
の役割分担等,細部にわたる解説をされました。
続く午後の部では,第一健康相談所増山診療部長(本会
健診事業のあり方検討委員会会長代行)より,「結核予防
会健診事業について」と題し健診事業のあり方検討委員会
の報告があり,今年3月の全国支部長会議で承認された本
会健診事業のあり方の総論を受け,今後は①高危険群に対
する胸部健診の具体的な取り組み,②一次予防を主とする
総合健診に本会全国組織としてどのように取り組むべきか
等,各論の問題点の検討に入る旨が述べられました。また,
質疑では,京都府支部相津常務理事より,本委員会におい
て健康日本21への参画・事業化や,全支部における情報化
についても討議していただきたい旨,要望がありました。
●首都圏における排ガス規制に関する情報交換会開催
平成15年10月より,東京都の排ガス規制条例を受けて,
首都圏において同調の動きがあり,使用不可能な胸部検診
車が多数発生することが予測されるため,関係地域である
埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県の各支部間での対策や
経費などについての情報交換を行うことを目的に,8月6
日(火)午後3時より結核予防会3階小会議室にて,標記
会議が下記の内容で開催された。
参加者 埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県支部,第一健
康相談所,結核研究所,本部,日野自動車
議 題 排ガス規制に関する各支部及び本部の対策
内 容 1.関係各支部及び第一健康相談所より当面の対
策についての説明
2.日野自動車より現状と結核予防会けいりん号
に係る対策についてのコメント
3.その他意見交換
又亨,岩崎康彌,岩手医科大学医師会,特殊免疫研
東京都−カルチャペック紅茶店,内藤喜一
神奈川県−東福寺,西有寺,千歳自動車工業,
究所,北星,共立医科器械,岩手日報社,宮川慶吾,
新堀典彦,川松康作,杉山梅子,明誠教団本部,岸
遠山美知,工藤剛,佐々木小児科医院,中屋重直,
清,阿部定生,太田一江,山田精一,天笠定平,松
鈴木俊彦,八木橋伸之,高橋孝,外里克己,岩手県
尾助右衛門,真志田一義,松本喜八郎,第一産業,
町村会,久慈享和病院,藤田貞子,安井豊,橋本勢
池田重雄,元木恒雄,宝泉寺,川合寺,吉川瑞浩,
病院,岩手県保健福祉部保健衛生課,鈴木俊一,道
津,和賀診療所,岩手県国民健康保険団体連合会,
長昌寺,貴雲寺,高松寺,永明寺,浅井正枝,大槻
湯口診療所,猫塚クニエ,豊島医院
峡吏,大石恒夫,桂歌丸,門脇忠義,正畑光昭,野
盛岡営業所,東北タチバナ,夏油温泉,川嶋印刷,
山形県−安孫子貞夫,戸田和助,佐藤要輔,伊
村玲子,銚子塚建設,眞福寺,観音寺,伊藤光史,
松田建設,オガサワラ産業,陸中建設,久慈酒造,
藤政一,松澤信五,後藤完司,阿彦忠之,渡邉タケ,
渡辺泰賢,大善寺,青蓮寺,大巧寺,高橋巖,倉田
かばら建設,北上市農業協同組合,栃内病院,滝沢
後藤道,工藤正太,篠原守信,山形県接骨師会,伊
敏郎,河井郁子,枝村嘉生,宝泉寺,聖心の布教姉
中央病院,協同リース,岩手県花巻保健所,立正堂
藤組,ホンダクリオ山形,田村測量設計事務所,平
妹会本部,大貫照男,善徳寺,笹岡容子,南光寺,石
医院,大澤三郎,小野寺功,杉内愛,アイシーエス,
田電機工事,尾形サービス商会,山形建設,六椹観
川正,関東山妙力寺,常念寺,林医院,福田敦江,
岩手日野自動車,仙建工業盛岡支店,南部興行,秋
音,養源寺
寒川公衆衛生社,新善光寺
柴重機,岩手銀行,鶯宿温泉病院,日新堂,一関
栃木県−黒駒安子
滋賀県−エルクコーポレーション,滋賀県モー
09/2002 複十字 No.287
31
ターボート競走会,びわこ企業,びわこ競争労働
香川銀行,香川県信用組合,香川日野自動車,三和
徳末知夫,能沢桂子,野田照子,阿部英雄,相沢ひ
組合,びわこ競争労働組合モーターボート競走,彦根
電業,セシール,三菱化学坂出事業所,カイゲン
さ,青柳一夫,池谷太郎,石井栄城,喜多末野,中
薬剤師会,筒井五郎,浅野定弘,徳本孝司,北角
犬三,横野信隆,宮部忠冶,端章恵
京子,小川丈
高松営業所,キタムラメディカル高松営業所,コ
華・高橋,日興冷凍,飯田多美,竹内みゆき,中川
ニカメディカル高松営業所,坂出聖マルチン病院,高
千代子,白百合女子大学,三沢時江,中川悦郎,
鳥取県−岡本公男,岸田剛一,木村浩,中尾政
松赤十字病院,日立メディコ四国支店,富士フィ
古市典雄,田沢磨里子,青木栄一,幕内雅敏,浅野
和,野田敬二,牧野禮一郎,エルクコーポレーショ
ルムメディカル,宮武病院,井下病院,JA香川
楢悦,田中雅史,国際協力医学研究振興財団,佐藤
ン,山陰三菱ふそう自動車販売鳥取支店,山陰警
厚生連,香川県歯科医師会,香川県農業協同組合,香
和美,プラネット・システム・サービス,大成ネッ
備保障,島根日野自動車鳥取営業所,新川電機鳥
川県薬剤師会,香川県予防医学協会,香川県農協
ト,アーツ&クラフツ建築研究所,児島芳則,ウシ
取出張所,成和産業鳥取営業所,成和産業米子営
高松西部支部,香川県看護協会,香川県婦人団体
オマサタカ,半田屋商店,トーオン,ていしん
業所,ダスキン鳥取,田中建設,谷岡印刷,鳥取
連絡協議会,内海病院,池田内科クリニック,安
ピーアールセンター,東京商事,有紀食品,ベル
サイエンス,トリベイ,柏葉レントゲン,林薬品,
田食品工業,香川町役場,直島町役場,専修学校
モント化粧品,ギャルドユウ・エス・ピイ,宙出
福田保険事務所,富士フイルムメディカル西日本,
香川理容美容アカデミー,宇多津町役場,宇多津
版,日本メディカルセンター,冬野多久男,早川一
牧田商店,松本油店鳥取中央給油所,湊屋石油,
漁協,聖マルチンの園,財田町役場,高瀬町役場,詫
胤,辰口町連合婦人会,藤沢寿三,長坂是隆,山本
栄研化学,協和メデックス,コニカメディカル,三
間町役場,豊中町役場,アスティス,飯山町役場,
基,羽藤晴久,原あやめ,日根野妙子,福田茂,
光鳥取営業所,鳥取医療理化器械店,鳥取科学器
池田町役場,香川町役場,豊浜町役場,仁尾町役
平沢久男,本橋達朗,前田節子,松井謙介,松本元
械,鳥取銀行県庁前支店,BML鳥取営業所,日立
場,三野町役場,三豊総合病院,観音寺市室本漁
博,協同録音,山名文夫,横山宏,吉永小百合,
メディコ,伏見製薬,エバルス,日本光電中四国
協,三本松高校,志度高校,大川総合病院,白鳥
小松原秩子,小宮山笑子,佐々木紀夫,三遊亭円
東中国支社米子営業所,コニカ関西支社,山陰合
病院,津田病院,大川老人ホーム,香東園,中央
楽,実方康夫,島尾洋子,鈴木明,鈴木澄江,瀬
同銀行鳥取県庁支店
病院,多度津工業高校,多度津水産高校,藤井高
尾海造,田村市兵衛,高橋厚夫,鳥海はる子,中
岡山県−岡山県庁,岡山県警察本部,岡山県教
校,丸亀高校,多度津町役場,丸亀病院,四国学
西眞章,中嶋庄亮,西野清,野辺地恒雄,野島孝
育庁,岡山県栄養改善協議会,岡山県愛育委員連合
院大学,綾歌町役場,綾上町役場,琴南町役場,
之,鳩山安子,阿部洋子,朝倉博吉,清水会計事務
会,岡山市役所,水島中央病院,近藤病院,高見病
琴平町役場,仲南町役場,満濃町役場,綾南町役
所,安岡孝子,安養寺重夫,井出正敏,石井宣代
院,岡村一心堂病院,岡山第一病院,金田病院,落
場,岩崎病院,香川小児病院,善通寺病院,琴平
合病院,河本病院,玉野市民病院,玉野ロータリー
老人の家,弘恩苑,ミルキーウェイ,香川県警,
クラブ,鴨方町役場,笠岡市立市民病院,船穂町
北原紀子,四国医療器,百十四銀行,香川県接骨
役場,笠岡市役所,早島町役場,邑久町役場,さ
師会,四国物産,サンエー設計,三菱クリーン
とう記念病院,高梁医師会,大西医院,中谷外科
サービス,伏見製薬,西日本放送,吉田石油店,
病院,池宗病院,松田病院,倉敷シティ病院,芳
山本内科クリニック,三共高松支店
結核予防会役員人事(敬称略)
本部=〔理事を委嘱する〕森田倫史(6.25),〔理
事の委嘱を解く〕後藤武(6.24)
支部=〔支部長を委嘱する〕北海道支部立野太
刀雄(重任)(6.17),秋田県支部千葉隆(重任)
井町役場,岡山県社会保険診療報酬支払基金,金
宮崎県−川井田医院,今西器械,きよたけクリ
(7.1),〔副支部長を委嘱する〕北海道支部久世
光町役場,エルクコーポレーション,岡山エムイー
ニック,野崎病院,延岡市薬剤師会,金丸脳神経
彰彦(重任)・山本健一(重任)(6.17),秋田県支
アイ,日立メディコ,富士フィルムメディカル西日
外科病院,小田内科・循環器科,セグチメディカル
部寺田俊夫(重任)・牧野ゆり子(重任)(7.1) ,
本,岡山社会保険事務局,就実学園,新見医師会,
本部−本田厚子,軽部フジ,新都市サービス,成
山形県支部新海武久(6.28),福島県支部佐藤洋昭・
中国四国農政局,塩野義製薬,岡山県歯科医師会,
田實,岩崎睦子,大鳥ソヨ,中戸川公治,カワヅ
山口忠宏 (6.1),新潟県支部神保和男(6.1),熊本県
山之内製薬,岡山大学総務部,公立学校共済組合
アキトシ,勝美印刷,依田幸子,霞会館,渡辺宏
支部田中明(5.1),〔副支部長の委嘱を解く〕岩手県
岡山宿泊所,岡山赤十字病院玉野分院,井原市,
男,柿島フミ,田中喜八郎,土橋弘道,濱達夫,
支部小山田惠(6.30),福島県支部岡崎修吾・樽川満
トマト銀行,赤磐郡医師会病院,国民健康保険団
若井一郎,鈴木三彌,高橋敏,半田尚子,橋本安
(5.31),新潟県支部笹川勝雄(5.31),熊本県支部星子
体連合会,里庄町役場,岡山市ふれあい公社,哲
茂,赤井文彌,麻生道子,大野俊司,鈴木重行,
亘(4.30)
多町役場,トータルデザインセンター,高塚薬品,
西田貞子,櫻井正太郎,村井温,松本純治,スリー
岡山県農業協同組合中央会,エバルス,栄研化学,富
エムヘルスケア,日本ビーエックスアイ,ヤンセ
〈お詫びと訂正〉
士レビオ,バイエルメディカル,成和産業,協和
ン協和,須藤八重子,日本プロテック,スズキマ
No.286・p17
メディクス,中国銀行,社会保険岡山健康管理セ
コト,土信田良市,アサムラハジメ,渡辺孝三,東
おけるDOTSの違い」中,最下段の部分に誤り
ンター,石田立夫,岡協商事,田中商事,丸五,
京都遺族連合会,岡本榮,千代田メディカル,森
がありましたので,下記によりお詫び申し上げま
小畑内科医院,吉本医院,小谷内科・小児科医院,岡
村武雄,吉田千代子,志立託爾,外山大,伊藤真
すと共に訂正いたします。
山シティサービス,備前発条,小坂内科医院,長
聰,櫻美会宮川美和子,石津司郎,角益夫,久保
正
田医院,自由民主党岡山県支部連合会,猪原理三
知子,花園万頭,岩田達明,島林樹,松本晶彦,
郎,金光教本部,三栄鉄工,中山医院,北原産業,白
横内正利,三和三郎,草間光一,三和直子,寧波
オランダ
法的制裁
あり
(服薬拒否の場合)
病院内で個別隔離
大阪市
なし
石島診療所,千々木染料工業,人形峠原子力産業,岡
旅日同郷会,福田光,永納尚武,松山恵子,梅里
山県環境保全事業団,倉敷中央病院,江原積善会
悦康,石森宏宜,児島冨士男,関谷宣信,ハマノ
積善病院,稲葉医院,アイサワ工業,光陽,帯江
ヤケンゴ,ワタナベダイゾウ,青嶋雅子,泰忠堂
脳外科医院,原田商店,西崎内科医院,小林医院,安
三田洋二,勝又民樹,大村梅雄,今溝康彦,米倉
原良一,岡山県都市開発公社
弓子,ビービーラボラトリーズ,平川秀雄,宮下
No.286・p28 図「一世帯当たり募金額上位5支部」
英夫,宮田耕作,山岡建夫,山住美津子,横溝錠
の金額単位「万円」は「円」の誤り。お詫び申し
平,鈴木たか,田中武文,滝沢嘉信,武藤二郎,
上げますと共に訂正いたします。
香川県−高松食糧事務所,香川県教職員連盟,
香川県職員一同,香川医科大学,香川県美容学校,
平成14年9月15日 発行
複十字 2002年287号
編集兼発行人 山下 武子
発行所 財団法人結核予防会
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-3-12
電話 03(3292)9211(代)
印刷所 勝美印刷株式会社
東京都文京区小石川1-3-7
電話 03(3812)5201
結核予防会ホームページ
URL
http://www.jatahq.org
本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。
複十字シール運動
みんなの力で目指す,結核・肺がんのない社会
平成14年度複十字シール
複十字シール運動は,結核や肺がんなど,胸の病気
をなくすため100年近く続いている世界共通の募金活
動です。複十字シールを通じて集められた益金は,
研究,健診,普及活動,国際協力事業などの推進に
大きく役立っています。皆様のあたたかいご協力を,
心よりお願いいたします。
運動の輪を広げてください。シールは,はがきや,手紙や包装の封印,何にでも使えます。
問合せ:資金課 TEL03-3292-9287(直)
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表「低蔓延国オランダと大阪市に
09/2002 複十字 No.287
結核予防会の本
『結核の統計2002』
厚生労働省健康局結核感染症課監修
A4判・124頁
定価 2,940円(本体2,800円)
結核・呼吸器疾患の 1年分資料の集大成
保健衛生行政関係者はもとより、一般の医師・研究者・
学生の方にもご活用いただけます。病院はじめ看護・保健
師学校、医学系大学にはぜひ備えておきたい一冊です。
目次
■グラビア 20頁 ■資料編 13頁 ■平成13年結核発生動向調査年報集計結果
89頁 付1 全国保健所別にみた指標値の分布 付2 結核管理図 付3 都道府県別
管理図の指標・偏差値
2002年9月発行
旧題『保健婦の結核展望』
『保健師・看護師の結核展望』
第79号(2002年前期号) 定価1,785円(本体1,700円)
年度内2回(夏・年度末発行)・B5判
保健師さん,看護師さんの日常業務に役立つ結核に関する情
報を,タイムリーにお届けする雑誌です。
特集
①高齢者の結核対策Ⅱ:「結核出前講座」,「高齢者施設にお
ける結核対策マニュアル」,高齢者結核対策について老人福祉
施設長が県・保健所に望むこと,通所介護施設における結核患
者発生時の対応/特集②結核対策見直しに向けて−今やるべき
こと:対策見直しのポイント,BCG再接種廃止,変わる学校
健診,強化されるべき接触者健診/院内DOTSの現状Ⅱ(ア
ンケートから)/シリーズ院内DOTSの紹介②③/小児結核
児への服薬支援/産科における結核合併妊産婦の患者管理/結
核症を発症した小児科看護師事例/中核市の結核対策⑤栃木県
宇都宮市/沖縄の結核対策 今昔/その他
最寄りの書店・結核予防会各都道府県支部または直接下記までお申し込み下さい。
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〒204-8533
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