Acid-fast bacillus

感染と防御・第12回
代表的な細菌感染症-1
グラム陽性菌による感染症の例として、
ブドウ球菌感染症、ボツリヌス症、結核
などについて解説する。
抗酸菌とは?
抗酸菌は、結核菌群、非定型抗酸菌群(非結核性
抗酸菌群)、レプラ菌に分けられる。
結核菌
牛型結核菌
結核菌群
アフリカ型結核菌
ネズミ結核菌
M.avium
非定型抗酸菌
M.intracellulare
(非結核性抗酸菌)
M.kansasiiなど
レプラ菌(らい菌) M.leprae
抗酸菌の細胞壁
脂質や糖脂質が細胞壁に多量に含まれる
通常の染色には、難染色性を示す
抗酸染色により染色される
結核菌
結核菌は偏性好気性の細胞内寄生性細菌で、抗
生物質・消毒薬・酸・アルカリ・乾燥に対して
抵抗性を示す。
酸素がないと増殖できません。
Mycobacteriumtuberculosis
一旦染まると、脱色されにくい。
Acid-fastbacillus
(桿菌)
(抗酸)
結核菌の培養
結核菌は人工培地で培養可能だが、増殖速度が
遅く培養検査の結果を見るには4 8週間必要。
生育速度がきわめて遅い(遅発育性)
結核菌の細胞内寄生
結核菌はマクロファージに寄生する。
結核菌の感染様式
結核菌は飛沫核感染する。咳で飛散した飛
沫が乾燥して水分を失った状態を飛沫核と
呼び、これを吸い込むことで感染する。
人工培地で培養可能
1回の分裂に約15時間かかる(遅発育性)
飛沫感染と飛沫核感染
飛沫核は長時間空気中を浮遊する
5μm以下
結核
結核は死に至る感染症で、感染症予防法の二類
感染症に指定されている。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
飛沫核
細菌感染症では、結核とジフテリアだけが二類
です。
5μm以上
国民病といわれていた
飛沫
1m
結核
肺結核の症状
結核は主に結核菌によって引き起こされる感染
症。肺結核(85%以上)と肺外結核に分類される。
長期潜伏期間と肉芽腫炎症が特徴的である。
肺結核の症状は持続性の咳(2週間以上)・痰
微熱
(血痰)・胸痛・微熱・体重減少など。
微熱
咳(持続性)
肺外結核
体重減少
胸痛
潜伏期間が長い
痰(血痰)
肺結核(85%以上)
&
肉芽腫炎症から乾酪壊死が起こる
結核菌に対する宿主防衛機構-1
マクロファージとヘルパーT細胞を中心とする
細胞性免疫が結核菌に対抗する(細胞性免疫)。
結核菌
貪食
結核菌に対する宿主防衛機構-2
肉芽腫(granuloma)は、マクロファージとT細胞
が結核菌を封じ込める際に形成される。
CD4+T細胞(Th1)
活性化
TT
(MHCII-抗原提示)
リソソーム
融合
反応性窒素化合物
NO,NO2,HNO3
TT
φφ
TT
封じ込め
φφ
結核菌包囲網
TT
TT
TT
φφ
φφ
TT
TT
φφ
活性化
(IFN-γなどを分泌)
φφ
TT
φφ
φφ
TT
φφ
TT
TT
マクロファージ
結核菌の増殖と乾酪壊死
結核感染により生じた肉芽腫内の壊死を乾酪壊
死という。
免疫系の働きが不十分だと結核菌が増殖する
肉芽腫内部が壊死する(乾酪壊死)
TT
TT
TT
TT
結核菌の発見者
ロベルト・コッホが結核菌を発見した。
WHOはコッホが結核菌発見を公表した3月24
日を「世界結核デイ」と定ている
最も感染者が多い感染症の1つ
壊死部分は細胞形態が無く、チーズのように見えます。
世界全人口の1/3にあたる約20億人が結核
菌に既感染で、有病者は920万人、年間死亡者は
170万人である(2006年)。
国内の結核患者数
結核の予防・診断・治療
日本は先進国の中で結核患者の発生率が高く、
平成19年度で約6万人の患者が登録されている。
他の先進国と比較して患者数が多い
結核とエイズ
エイズ患者の結核集団感染は、国際的に深刻な
事態となっている。
結核になる
AIDSになると
結核の診断法
結核は、胸部X線検査、ツベルクリン反応検査、
喀痰検査などにより診断する。
ツベルクリン反応
ツベルクリン反応
免疫記憶細胞による炎症反応
現在感染中
or
感染経験有
既感染者
未感染者
ツベルクリン反応は、結核感染者が結核菌
由来の抗原に対して示す免疫反応。
結核菌の成分を皮下注射する
結核菌由来の抗原
免疫記憶
ツベルクリン
反応
無
有
陽性
陰性
結核予防ワクチン
BCG(弱毒化牛型結核菌)は、結核予防ワク
チンとして世界的に用いられている。
既感染者は強い炎症反応を示す
既に結核菌に感染している場合、結核菌への反
応性が高まった免疫細胞(感作T細胞)が存在
するため、強い炎症反応を起こす。
結核の治療
薬剤耐性結核の出現を防ぐため、抗生物質の4
剤併用投与により治療する。
BCGはカルメットとゲランによって作られた
弱毒化牛型結核菌
イソニアジド
細胞壁合成阻害
エタンブトール
BCGを接種することで結核菌に対する免疫が
得られる。
(またはストレプトマイシン)
細胞壁合成阻害
薬剤耐性結核菌
超多剤薬剤耐性結核菌(XDR−TB)は、結核
治療を困難にし、人類の新たな脅威となってい
る。
結核菌は多剤薬剤耐性化しやすい
抗生物質の不適切使用が耐性菌を生む
ピラジナミド
細胞膜破壊
ATP合成阻害
リファンピシン
RNA合成阻害
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌はヒトの表皮に常在する細菌で、
様々なタイプの毒素を産生する。
耐塩性(7.5
15%NaCl)
ブドウ球菌属で最も病原性が強い
XDR-TB:extensivelydrug-resistanttuberculosis
直接服薬確認療法
様々な毒素を産生します。
耐性菌の出現を防止するため、直接服薬確認療
法(DOTS)により、服薬状況を把握している。
DirectlyObservedTreatmentShortCourse
黄色ブドウ球菌感染症
黄色ブドウ球菌は、皮膚疾患・肺炎・敗血症な
どの感染症を引き起こす。
感染型と毒素食中毒型がある
傷口などから侵入し、組織内で増殖
毒素で血球を破壊し敗血症を引き起こす
赤血球破壊:α毒素・β毒素、白血球破壊:ロイコシジンなど
黄色ブドウ球菌食中毒
黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンは、嘔吐・
腹痛・下痢などの症状を引き起こす。
ヒトや環境中から製品・食品などに混入
嘔吐・腹痛・下痢
耐熱性エンテロトキシン
黄色ブドウ球菌の耐熱性毒素は、加熱調理で不
活化せず、食中毒を起こす危険性がある。
菌体外にエンテロトキシンを分泌する
100℃・30分の加熱で失活しない
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、多剤
薬剤耐性の院内感染起因菌として重要である。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
MRSAに有効な治療薬は、バンコマイシンなど一
部の抗生物質に限定される。
様々な抗生物質に抵抗性を示す
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌
βラクタム系、マクロライド系、テトラサイクリン系など
様々な抗菌剤に耐性
カテーテルから侵入することもある
バンコマイシン耐性になったMRSAの存在が治療
を困難にしている。
バンコマイシン耐性腸球菌から水平伝播
メチシリン耐性+バンコマイシン耐性
芽胞(内生胞子)
芽胞は、熱や有機溶媒などに抵抗性を持ち、長
期間休眠状態を保つことができる。
ボツリヌス毒素
ボツリヌス毒素は神経を麻痺させる。死亡例の
多くは呼吸困難である。
ボツリヌス毒素は神経細胞に作用し、弛緩性麻
痺などを引き越す
ボツリヌス菌
ボツリヌス菌は土壌中に生息する偏性嫌気性菌。
Clostridiumbotulinum
破傷風毒素に似た作用を持ちます。
乳児ボツリヌス症
栄養細胞は外毒素(タンパク質毒素)をつくります。
ボツリヌス食中毒
ボツリヌス食中毒は、ボツリヌス菌や、ボツリ
ヌス毒素の経口摂取により引き起こされる。
食物などと共に口から芽胞が入り、消化管内
で発芽すると、毒素をつくりボツリヌス食中
毒を起こします。
食物中で増殖したボツリヌス菌が毒素をつく
り、それを経口摂取することで発症する場合
もあります。
ボツリヌス食中毒
ボツリヌス菌の芽胞は耐熱性であり、加熱調理
後に残存する恐れがある。
毒素:85℃5分以上
芽胞:120℃10分以上