シナリオ 『絶望の偽母』

シナリオ 『絶望の偽母』
古い友人に誘われ、訪れた離島での驚くべき光景に、探索者たちは……?
番犬人
「また子供が攫われたか。
この悪事だけは、絶対に見逃すわけにはいかない
そして容赦もしない。」
"More children taken.This is an evil we will track
without mercy."
Magic The Gathering 《絶望の偽母 / Forlorn Pseudamma》
カード内フレイバーテキストより
◆0:目次
◆0:目次
◆1:はじめに
◆2:シナリオ背景
◆3:登場NPC
◆4:シナリオの導入
◆5:ギミック
◆6:島のデータ
◆7:事件勃発
◆8:エンディング分岐
◆9:おわりに
◆1:はじめに
・シナリオ総評
どうあがいても絶望で陰鬱なクトゥルフを目指したものである。
・基本データ
シナリオ分類:閉鎖された島の中で怪異に遭遇し、解決を図る
舞台:現代日本、島根県にある隠岐諸島の一つ
探索者:3~4人を想定、探索者同士の関係は自由。
・推奨技能
重機械操作、ナビゲート、心理学、精神分析、人類学、地質学、歴史、オカルト
目星、図書館、追跡、博物学、言いくるめ、値切りなど。
本シナリオの改変等は自由に行っていただいて構わない。
改変を行わない場合、探索者のロストが極めて発生しやすい。
また、このような 赤枠 で改変ポイントやキーパリングのヒントを提示させていただく。
◆2:シナリオ背景
飛鳥時代。この島に飛来したグレート・オールドワン、意思持つ結晶体:Q'yth-Az(クィス・アズ)。
その脅威を退けるため、無名の陰陽師が外なる神、豊穣の母神:Shub-Niggurathを招来。
数多の犠牲と生贄をはらむも、Q'yth-Azは地中奥深くに封印されることになる。
時は進み現代。この島の資源調査にやってきた一団が地中にいるQ'yth-Azを発見。
封印されていても圧倒的な力を持つQ'yth-Azは、調査団を支配し始める。
だが調査団に属する一人の女性が、決死の覚悟でQ'yth-Azのコアを破壊。
しかしその女性以外は、Q'yth-Azに道連れに支配された上に結晶化されてしまい
女性もショックにより正気を保てなくなる。
無事に島を脱出するも、Q'yth-Azに魅入られてしまった女性。
その後は逆にQ'yth-Azの再生に努め、Q'yth-Azの悲願を果たすために人生を捧げることに。
Q'yth-Azの悲願は『人類の一元化による救済』である。
女性はQ'yth-Azの一部を水晶資源として輸出し、生活を送り出すとともに、
同時に少しずつ世界中にQ'yth-Azをばらまいていく。
水晶資源は、携帯電話やパソコン、そのほか一部のガラスにも使われており、
現代社会を支える資源の一つである。
Q'yth-Azの一部は形を変え、長い年月をかけて世界中に拡散していく。
拡散したQ'yth-Azは、持ち主に対し精神感応を行い、飛鳥島に導いていく。
この時対象にしているのは、俗に言うブラック企業に勤め、精神を病んでいる人間たち。
そういった人間を"救済する"ために、飛鳥島に導き、
Q'yth-Az自身の拡散をさせるために、最終的には同化して勢力を増やすために、
Q'yth-Azはゆっくりと勢力を広げていく。
女性はそのための監督として、立ち合い協力しているに過ぎない。
結局なところ、一方的なエゴの押しつけにより、今回の物語に発展する。
以下の 紫網掛け部分 は、より細かく設定した裏背景である。
時間が無ければ、読み飛ばしていただいても構わない。
★飛鳥時代編
飛鳥時代(崇峻天皇5年(592年)から和銅3年(710年)の出来事)。
かつて隠岐諸島の一つにて、豊穣を願うわずかな人々がいた。
豊穣を願うだけならば、実にありきたりな話ではあるのだが、
ある日、空から輝くもの(Q'yth-Az)が島に直撃し、無数の死者と環境変異をもたらす。
潤沢な鉱物資源(Q'yth-Az)を手に入れたが、その反面、土が痩せ植物が育たず、
また当時は水晶を加工する術も薄かったことから、人々はより飢餓にあえぐことになる。
島の人間はこれを契機に、一人の女陰陽師を頼った。
女陰陽師は新月の力を集める水晶の鏡台(ムーンレンズ)を作り上げ、
神降ろしの儀を執行し、豊穣の母神:Shub-Niggurathを招来した。
この時、招来用に作られたのが"水晶の櫛"であり、
またこの儀式のために、亡くなった無数の人間の血を利用している。
招来されたShub-Niggurathの力(門の創造)により、Q'yth-Azはさらに地下深く埋没した。
しかし陰陽師の予想を遥かに超えるShub-Niggurathの所業により、
島の人間は生贄となり壊滅。島も一晩にして、森の黒山羊(現在の森の木々)に覆われてしまう。
唯一、生き残った女陰陽師。
彼女が生き残った理由は、櫛の効力によりShub-Niggurathに従属していたためである。
Shub-Niggurathは自分の崇拝者に対しては甘い。
女陰陽師は責任を取るため、この島を忌み島として周囲に広めて、余計な干渉を防ぎ、
Q'yth-AzやShub-Niggurathをむやみに起こさないように、と島に残る。
そのまま、その生涯をQ'yth-Azの研究に費やすこととした。
この研究を通じて、Q'yth-Azがまた活性する可能性がありうること、
そうなった場合、コアを破壊すれば、ということを残して没する。
もっとも情報の多くは、後に現れる喜佐見 志紀(以下、シキ)の手によって葬られている。
★現代採掘編
それから1300年近く、何もない無人島として放置され、国が管理してきたのだが、
2006年。当時の資料を追いかけて、飛鳥時代に起こった出来事の一部を知った
山口県の調査会社:株式会社やまぐちマテリアル、による
資源調査団5名が上陸を果たす。これには重要NPC:シキを含む。
目的は鉱物資源ではあるが、調査団はこれがQ'yth-Azであることを知らない一般人であった。
島にはほぼ当時のまま、女陰陽師の使用した術式も残されており、彼らもすぐに発見する。
とはいえ信心深くない彼らは、軽視してそのまま地下調査に移行し、水晶の櫛も発見。
鉱物資源の証拠の一つということで一同喜びつつ、唯一女性だったシキが所持しておく。
このときから既に調査団の正気が失われつつあった。
ついに一同は地下深くで水晶の塊(Q'yth-Az)と遭遇し、喜びに沸く。
しかしこの時、地下調査により使用していた強い光(多数のヘッドライトなど)にQ'yth-Azが反応。
Q'yth-Azは急激に膨張し、調査団一団を精神感応で支配し、取り込もうとする。
一人、また一人と、次々に鉱物化していく調査団。
このときシキが窮地を脱するために、Q'yth-Azのコアと思しき箇所をつるはしで破壊。
Q'yth-Azもその時の最後の力で、道連れに残った調査団を支配し、同化。
コア破壊者であるシキだけをQ'yth-Azは認めて残し、ほかの調査団は残らず鉱物化させる。
無事だったのはシキだけとなった。
この時のショックで、彼女は永久発狂しQ'yth-Azに完全に魅了してしまう。
調査団は全員、地下の落盤事故で亡くなったことにされ
既にQ'yth-Azに魅入られていたシキも会社を辞め、隠岐島に転居することに。
Q'yth-Azもコアを破壊されて活動停止していたが、シキが再生のために尽力する。
そこで改めてQ'yth-Azの能力を知り、Q'yth-Azの素晴らしさを広めるため、
悩める人々を救う活動を開始することとなった。
★シナリオ背景 現代収集編
シキが鉱物の輸出業を通じて世界中にばらまき始める。
結晶体は、加工され形を変える(携帯電話やパソコンなどの日用品)こともあったが、
これはむしろQ'yth-Azにとっては好都合であった。
Q'yth-Azは結晶体であれば、距離に関わらず干渉することができ、
多くの人間に触れる機会がある方が、むしろ好ましいのだ。
結晶体に触れる人間の精神を読み取り、干渉させ、自分の手駒として隠岐島によこさせた。
自分の分身を輸出させるために、Q'yth-Azは人間を支配し、自分をばらまかせ、
寿命などで動かなくなった人間は取り込んで結晶化させた。
この事業が本格的に開始されたのは、結晶の流通が軌道に乗った2011年以後。
シキが国から島の権利を正式に買い取ったのも同時期。
ブラック企業などから社員が失踪(=飛鳥島に移動)し始めたのも、これぐらいになる。
ブラック企業側が訴え出ていないのは、シキから個別に資金援助(Q'yth-Az)があったことと、
企業側もかなり後ろめたいところがあったから。
シキのやっていることは広義にとればヘッドハンティングに過ぎない。
なお、Q'yth-Azのやっていることに悪意は全くなく、
1300年ぶりに干渉してきた人間:シキが献身的に再生しようとした影響も受け、
むしろ世界平和のために、と人間のためにこのようなことをしてきた。
一方的なエゴの押し付けであることには、何も変わらないのだが。
その一方で、Q'yth-Azの復活の気配を感じた森の黒山羊たちは
血樽をかき集め、水晶台に注ぎ、Shub-Niggurathを招来する準備を整える。
しかしその多くはQ'yth-Azによって駆逐されており、
残りは人間が招来するだけ、という段階まで進んだところで、今回探索者たちが来訪する。
◆3:登場NPC
大きく分けて3人。必要に応じて、NPCを追加しても構わない。
・喜佐見 志紀(きさみ しき)、世界の救済を願う島の管理人
・森本 牧人(もりもと まきと)、探索者の古い友人にして、精神を崩壊したもの
・甲斐 敏夫(かい としお)、島に取材にやってくる一般のジャーナリスト
・喜佐見 志紀(きさみ しき)
性別♀ 職業:離島の管理人(元大企業の幹部) 年齢:42
STR:9 DEX:9 INT:15 HP:10
CON:7 APP:14 POW:16 MP:16
SIZ:12 SAN:0 EDU:15 db:0
===================================
説得:81%
法律:50%
信用:65%
値切り:55%
心理学:84%
水泳:45%
博物学:50%
オカルト:55%
芸術(料理):45%
他の技能(英語):68%
経理:72%
神話技能:50%
===================================
[持ち物]
※水晶の櫛を紛失している他は、何も持たない。
[呪文]
従属の契り(※オリジナル呪文)
[プロフィール]
飛鳥島調査団のメンバーの一人。
現在は国から飛鳥島の所有権を買い取り、島の管理人を勤めて輸出業で暮らしている。
かつては圧倒的なカリスマを誇り、バリバリのキャリアウーマンであったが、
今は母親のように振る舞い、救われぬ人々を救い上げる仕事をする。
Q'yth-Azのことを「櫛神様」と呼び、島民たちにも促している。
世界の救済のため活動をつづけ、いよいよ時が来た、と決意。
ちょうどそのタイミングで島民の一人:森本から探索者たちを呼んでも良いかと尋ねられ、
折角だから誘ってあげなさい、と、探索者たちが巻き込まれるきっかけを作る。
彼女はQ'yth-Azに感化され、Q'yth-Azの願いを果たすために、
ついに世界全土のQ'yth-Azを目覚めさせる計画を果たす。
特徴として、彼女はお願い事は何でも聞いてしまう、というものがあり、
彼女に対する交渉技能は、もはや意味をなさない。これも狂人の影響。
Q'yth-Azと敵対するような態度を見せても、シキは笑顔のまま対応する。
例えコアを破壊されたとしても、長期的には再生されることを見越して
探索者たちに敵対するような態度を取らない。アドバイスさえ行う。
黒幕的存在。キーパーは、シキは母親のように優しく、常に優雅にふるまわせること。
尋ねられたことは、自分がどんなに不利になることでも、知っていることは正直に答え、
逆にプレイヤーへの猜疑心を煽ること。
シナリオタイトルの《絶望の偽母》は、彼女のことも指す。
なお、知らないことや出来ないことも、それはそのまま素直に開示すること。
・森本 牧人(もりもと まきと)
性別♂ 職業:水晶採掘(元サラリーマン、営業担当) 年齢:29
STR:13 DEX:14 INT:5 HP:13
CON:13 APP:9 POW:22 MP:22
SIZ:13 SAN:15 EDU:13 db:+1d4
===================================
言いくるめ:60%
回避:56%
値切り:25%
機械修理:40%
変装:31%
隠す:50%
跳躍:50%
目星:50%
隠れる:60%
聞き耳:50%
忍び歩き:60%
===================================
[持ち物]
採掘用の工具一式、精神安定薬(未使用分)、[壊れた携帯電話]
※[ ]でくくられている持ち物は、Q'yth-Azの干渉を受ける結晶体属性を持つ。
[プロフィール]
探索者たちの知り合いの元サラリーマン。
人付き合いは決して悪くないが、根が臆病者で繊細。
ブラック企業勤めの激務により精神を病み、薬(精神安定剤)にも頼る荒んだ生活をしていた。
シナリオ開始時から数えて半年前。あらゆる物事に対して絶望していたところ、
携帯電話(内臓のクォーツ)を通じてQ'yth-Azの精神感応に誘われ、飛鳥島に。
島にやってきた当初は寮の自室で引きこもっていただけだったが、
Q'yth-Azから多大な影響をも受け、幼児退行。(INT低下、POW上昇)
次第にQ'yth-Az、並びにシキに心酔するようになり、幼児退行こそ果たしたが、
今は心から幸せに飛鳥島で暮らしている。現在では水晶採掘を担当。
キーパーは彼を幼児のように振る舞わせ、島の異様さを彼を通じて演出すること。
またINTが低下していることもあり、難しい話は理解できず、覚えておらず、
「ぼく、わからない」などとひらがなを多量に用いて幼さを押し出すと良いだろう。
純真無垢で嘘もつかない素直な子ども、とみなして振る舞わせればよい。
『幼児退行している』というファクターを満たすなら、差し替えは自由である。
・甲斐 敏夫(かい としお)
性別♂ 職業:フリーのジャーナリスト 年齢:32
STR:10 DEX:9 INT:14 HP:15
CON:14 APP:12 POW:11 MP:11
SIZ:15 SAN:55 EDU:17 DB:+1d4
――――――――――――――――――――――――――
言いくるめ:75%
写真術:50%
心理学:45%
説得:55%
図書館:65%
他の言語(英語):71%
歴史:60%
薬学:31%
ライフル:50%
隠す:45%
オカルト:30%
経理:40%
――――――――――――――――――――――――――
[持ち物]
ショルダーバッグ
手帳、財布、身分証明書、名刺、[携帯電話]、[一眼レフ]
※[ ]でくくられている持ち物は、Q'yth-Azの干渉を受ける結晶体属性を持つ。
[プロフィール]
フリージャーナリスト、主に軍事方面に詳しく世界各地を飛び回っている。
人情には厚いが、スクープを掴むことにも情熱を注ぎ、自ら危険な場所へも向かうことも。
甲斐はとあるブラック企業(森本が勤めていたそれとは別の)を取材した際に
飛鳥島に逃げ込んだという社員がいるから連れ帰ってほしいという依頼を受けている。
(この社員は既にQ'yth-Azによって同化している、適当な設定をして構わない。)
飄々とした性格で、つかみどころがないように見えるものの
Q'yth-Az、並びに行方不明になった社員について調べていく。
自由枠。キーパーは彼を探索者らしく振る舞わせるのが良いだろう。
そのため、このNPCについてはロールプレイしやすいキャラクターに
差し替えてしまっても、さほど問題はない。
プレイヤーの活躍を奪うようなキャラクターでなければ、好きに設定してよいだろう。
◆4:シナリオの導入
・あらすじ
探索者の元に、知り合いの会社員:森本 牧人(もりもと まきと)からの手紙が届く。
中には旅券と、ひどく乱雑な文字で綴られた便箋。
文面は島根の離島に遊びに来い、という内容であり
どこか不思議に思いつつ、都合の付いた一行は船で向かうことにする。
その島に到着したとき、出迎えてくれた女性が……?
あらすじは、募集用のページでも上記のまま使って頂いて構わない。
探索者を旅行に誘導する意味で、夏休みなどの季節にすると良いだろう。
本シナリオは2016年としておくが、日記などの整合性を合わせられるなら改変自由。
・時間配分目標
導入パート:90分、手紙受け取りからシキから櫛の話を聞くまで。
探索パート:180分、昼間2回の探索と夜1回の探索のシーンまで。
解決パート:180分、起床後の異変から最後の探索、そして決着まで。
予備:60分、時間がかかりそうなパートに充てること。
・シナリオの導入 -手紙を受け取る-
探索者たちの下に、知り合いの会社員:森本から手紙が届く。
手紙の中には、便箋、写真、旅券が一式揃えられており
便箋を読むと、ひどく読みにくい文字で、こう書かれている。
『[探索者の名字]くん(ちゃん) お元気ですか? ぼくは元気です。』
『いま、ぼくは島ねにあるあすか島というところでくらしています。』
『島のみんなは親せつで、楽しいば所です、一ど、あそびにきてください。』
『みんなとぜひ、やりたいこともあります。』
旅券は、島根県:隠岐諸島にある飛鳥島への船のチケット、と、
そこに行くまでの必要な公共機関の交通費が納められている。
写真は、島の様子が撮影されたもので、全部で二枚。
1:ひなびた牧場をバックに、のどかで緑豊かな光景が広がっている。
2:寮をバックに、森本が島民と共に小さな石(水晶の鉱石)を笑顔で持っている。
探索者は、森本の手紙での変わりようが心配になったか、
あるいは純粋に旅行を楽しむ目的で、各々荷物をまとめて飛鳥島に向かうことにする。
この時点で、各探索者につき一度だけ技能ロールを許可する。
手紙についてでも良いし、写真でも良い。島そのものについて調査させても良い。
0:技能失敗でも共通で伝達すること
とても買い物が出来そうな場所とは思えない未開の地だとわかる。
荷物はこの時点で"固定"になることを必ず伝える。
そしてキーパーはこの時、各探索者の持ち物をチェックし、
"クォーツ体を含む"持ち物の数をチェックしておくこと。1つにつき1カウント。
◆カウントに引っかかる持ち物の例
携帯電話、パソコンなどの液晶画面を含むであろうもの。
腕時計、メガネ、カメラ、あるいはガラスを含むであろうもの。
アーティファクトを含めた宝石類やアクセサリ類。
財布や身分証明書はカウントしなくても問題ないものとする。
このカウントは、後に紹介する◆5:ギミックの2番目に影響が出てくる。
1:手紙に対する【精神分析】、【心理学】など
文字こそ読みにくいが、身体の方に問題があるようには見えない。
明らかに幼児退行している。心に深い傷でも負って療養中なのだろうか、と思う。
2:写真に対する【目星】スペシャル以上 or 【写真術】
写真に写っているのが、ただの石ころではなく水晶の鉱石だと気づく。
写っている人物については、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
3:旅券に対する【経理】 (*2でもよい)
旅券や旅費は適切な額に思える。森本の計算能力は落ちていないのか
もしくは別にこれらの手配をした人間がいるのでは、と思う。
4:インターネットレベルでの【図書館】や【コンピュータ】
飛鳥島というのは、確かに島根県にある隠岐諸島のひとつだと出てくる。
自然豊かな島で、5年ほど前までは無人島で国が管理していたことだけ出てくる。
それ以外の情報は皆無である。
他にもオカルトでの噂話や、地質学・ナビゲートなどで島の構造を把握したいと
宣言するプレイヤーも現れるだろう。そういった場合はあとで渡すはずの
情報を先渡しするようにキーパリングしていけばよいだろう。
本シナリオに限らず、情報は制限をかけるよりは、大量に渡すぐらいの方がよろしい。
・シナリオの導入 -乗船-
手紙を受け取った際の処理が終わった時点で、シーンをスキップし、
島根の某所にある港の小型船まで、探索者たちが全員移動したシーンとする。
乗船するのは、乗組員を除けば、NPCの甲斐 敏夫である。
10数人乗りの小さな船で、島に向けて移動中。
出向前に名前の確認ということで、点呼を行わせて、
NPCを含めて、名前だけは最初からお互い知っていて良いことにする。
甲斐は、この時点で明確な目的を持っている。(ブラック企業の社員探し)
話を振れば、カメラを見せつつジャーナリストであり、仕事であることはあっさりと白状する。
ただし目的に関しては『信用問題に関わる』 などとして伏せさせておき、
正体が不明瞭なように演出する。
【言いくるめ】や【信用】を振らせて甲斐の目的について簡単に話させても良い。
『島の取材は確かにあるんだが、ま、ちょっと"探し物"もあってな……。』
『悪いが、流石にこれ以上は言えねえよ。それこそ俺がこの業界で仕事できなくなる』
職種ベースが【ジャーナリストの探索者】であれば、知識で彼の経歴について教えても良い。
探索者同士が知り合いじゃない場合の、自己紹介シーンと捉えて頂いて構わない。
もちろん、探索者同士が知り合いであれば、そのまま挨拶をさせて問題ない。
ここでは一緒に乗り込むNPCの簡単な顔合わせでしかないので、
あまりこのシーンに時間をかけるべきではない。
・シナリオの導入 -飛鳥島到着-
島に到着した時点で、◆5:ギミック にあるギミック1を発生させる。
POW25と対抗ロールを行わせ、処理をすること。これはNPCの甲斐も行うこと。
このギミック発動により、この島に違和感を覚えさせるきっかけを作りだし、
甲斐も、この現象については知らない一般人サイドだと仄めかしておく。
ギミック1の処理が完了したタイミングで、島の管理人である喜佐見 志紀(以下、シキ)が
心配そうに声をかけさせ、誘導する。
ここではシキの自己紹介と、他の島民の船にコンテナ(中身はQ'yth-Azの水晶)を
積みこむ指示をさせること。
特にコンテナは、探索者たちが島を脱出するときの選択をした時の伏線にもなる。
シキは尋ねられれば、正直に回答する。しかし実態は狂人ではある。
例えばコンテナの中身であれば、正直に水晶だと回答するだけであるし、
もし後に島民たちの様子がおかしいと尋ねれば、
『どなたかがご迷惑をお掛けしたのであれば、代わりに謝りますが……?』 と返すだろう。
時間管理に不安があるならば早々に切り上げ、そうでなければ多少会話をした後、
森本がいる"寮"まで探索者たちを案内する。他に宿泊施設が無いので、甲斐も同伴する。
この案内時に、飛鳥島に何があるかを描写していくこと。
1:起伏の激しい広野、ウシやブタなどが放牧されている。
2:うっそうと茂る森、まるで人の手が入っていないように見える。
3:寮、3階建てのシンプルな建物。森の傍に併設されている。
4:水晶採掘現場、森に囲まれた一角にある地底に続く穴。重機も数機存在する。
寮に到着後、シキは探索者たちが宿泊できる空き部屋をあてがう。
この割り振りは適当で構わないし、探索者同士好きに決めさせても良い。
甲斐や森本らと同室したいのであれば、それは受け入れても問題ない。
部屋の割り振り後、改めて探索者を集合させ、シキが森本を呼び出し合流させる。
この時の森本は既に幼児退行した後であり、昔はこんな人間じゃなかったと明示する。
【心理学】や【精神分析】があるならば、森本が演技ではなく心から楽しそうにしていると、
伝えて良いだろう。
最後にシキから、夕食までは好きに島を見てもらって構わないことを探索者に伝え
"水晶の櫛"を今朝から失くしてしまったことも合わせて伝えてくる。
『島民の誰かのいたずらかもしれないが、見つけたら持ってきてほしい』 という具合である。
シキは夕食の準備、森本は探索者に同伴しようとする。
甲斐は森や採掘場に向かわせておけば良いだろう。
導入はここまでになる。そのまま◆6:島のデータを参考にしつつ、
日中に各々の探索者2回まで、探索を行わせる。
◆5:ギミック
ギミック1:Q'yth-Azの精神感応
発生条件:島に初めて到着する、日付が変わる、採掘場に出入りする
このシナリオで用意していない呪文を使用する、のいずれかを満たす。
処理内容:POW25と対抗が発生する。抵抗に対する結果は以下の通り
対抗に成功する。何も起こらない。何も感じない。
対抗に失敗する。以下の描写を入れて、SAN減少と神話技能付与を行う。
キィーン……キィーンとひどく澄んだ金属音が頭に響く。
まるで新しい音楽のようにも聞こえてくるが、どこか恐ろしくも心地よい。
それはすぐに終わるが、言い知れぬ感覚に立ちくらみぐらいは覚えるだろう。
固定でSAN1d[X]点減少、即座に同値の神話技能を獲得する。
Xはこのギミック1を受けた回数に等しい。
キーパーは、誰に何回このギミックを行ったか、記録すること。
ギミック2:Q'yth-Azとの同調
発生条件:技能で致命的失敗(ファンブル)が発生、"水晶の櫛"を正しく手にしなかった、
採掘場でヒト型の水晶の塊を初めて見た、のいずれかを満たす。
処理内容:以下の通り、描写の後でPOW上昇、INTとMP減少を行う。
頭の中に声が響いてくる、
『つらい』『しんでしまいたい』『もういやだ』『くるしい』と悲壮に満ちた感情と
『いっしょになろう』『おかえり』『みんながいる』『ここにいるよ』と優しい呼びかけと
二つの混在したノイズを聞き取る。そのノイズは貴方の脳を甘く狂わせ、溶かす。
POWが1d[持ち物数]点上昇、同値のINTが減少、MP1d6+[持ち物数]点減少
後にQ'yth-Az遭遇した際は、上昇したPOWに等しい点数のSAN減少が発生する。
このギミックではMPは0以下にならず、POW上昇によるMP回復は無いものとする。
持ち物数とは『その探索者がクォーツ体を持つ道具の持ち込んだ数』である。
例えば全部で3つであれば、その探索者は1d3のPOW上昇と、出目に等しいINTの減少。
そしてMPを1d6+3減少させること。
なお、MPは日付が変わったタイミングで全回復させると良い。
パラメータ変化を伴うが、これは後の呪文行使用のコストに充ててもらう意味もある。
管理が難しいのであれば、ギミック1と2の内容を混ぜても良いし、
致命的失敗のギミックを2ではなく1にしても良い。数値も変更して頂いて構わない。
◆6:島のデータ
島の名前:
所属:
飛鳥島(あすかじま)、隠岐(おき)諸島のひとつ。
島根県
※隠岐諸島は実在するが、飛鳥島は実在しない架空の島である。
総人口:
58人(シキや森本といった固有名詞NPCを含む)
年齢層は20~40歳代と、比較的若く、未成年はゼロ。女性のほうが少ない。
12km程度
直線15km(海)
1日に1回(貨物も含む)
週4シフト制、10:00~18:00、残業なし、途中昼休み1回。
島の全周:
最寄りの島:
定期便:
基本労働時間:
1:起伏の激しい広野
気持ちの良い潮風が吹きすさぶ、見晴らしの良い農場である。
乳牛、肉牛、豚、羊、ニワトリを数頭ずつ放牧しており
プチトマト、ラッキョウ、ダイズ、カボチャ、トウモロコシなどの畑もある。
・畑に対して【博物学】、【地質学】など
いずれも塩に対して強いとされる農作物である。
しかし森の木々はそうは見えないのに、妙に生き生きしているように見える。
→森の木々には黒山羊が混在しているためである。
この農場には屠殺処理場の小屋もある。近づくだけでえげつない死臭が鼻を衝く。
島民が仕事しており、探索者は中に入ることはできないが、
ここの島民に質問したり、軽く中を見渡すことぐらいはできる。
・小屋の中を【目星】など
畜肉の他、処理用の器具、血樽や吊るされた皮が整然としているが、
妙に血樽の数が少ないことに気が付く。
なお、この島民は血樽が減っていることに、INT低下の影響でそもそも気づいていない。
牧場で【追跡】を行うことで(それが櫛を探す目的であっても)、
森の方向にかけて、大きな羊と思しきのヒヅメが行き来している様子がわかる。
→森の黒山羊が、夜中に血樽を強奪してムーンレンズに注いでいる証拠。
牧場では水晶の櫛も見つかる。【目星】や【追跡】で判定して構わない。
水晶の櫛のデータは以下の通り。
◆AF 水晶の櫛
島民のいたずらにより牧場に隠された、水晶でできた小さな櫛。
近年のアルバムを見てもわかるが、シキは基本的にこの櫛を頭につけている。
かつて女陰陽師がQ'yth-Azの破片を利用して生成した唯一品。
発見時に、【歴史】、【オカルト*2】、【職業:古物研究家の知識】で判定させる。
道に落ちている櫛を拾うことは「苦と死を拾う」ことにつながり、
縁起が悪いことと忌み嫌われる。
どうしても拾わなくてはならない時は、"足で踏んでから"拾うのが良いとされる。
贈答品などで相手に送る際も、忌み言葉を避けるため"かんざし"と呼称する。
取得時に足で踏まなかった場合は、◆5:ギミックの2つ目を適用すること。
この櫛を拾う上記の知識については、一般的なものである。
もし技能に失敗したとしても、プレイヤーが上記のことを知っており、
正しく対処したのであれば、ギミック2は発動させなくて構わない。
拾った後でよく見ると、小さく古代文字が刻まれている。
これには【目星】の半分、または【目星】マイナス20点に成功する必要がある。
この【目星】は1点以上の神話技能を有していないと、挑戦ができない。
成功することで、POWとSANがコストである呪文だとは教える。共有も可能。
この時点では呪文であることはわかるが、内容は不明のままとしておく。
続いてINT*1を成功させると、呪文【従属の契り】を取得できる。データは以下の通り。
◆従属の契り(オリジナルの呪文)
SAN:1d6 POW:1点 詠唱時間:即時
続く次の招来の呪文にMPを費やす場合、
『付与したMP1点につき、成功率を5%にする』に置換する。
他者が供給したMPには何の影響も与えない。
続く次の呪文成功時、招来する対象に永続的な隷従を誓う。
この呪文自体の効果時間は1時間。
呪文未取得の場合でも、櫛を所持している人間であれば使用可能。
ただし櫛を手放した時点で、この呪文の効果は消える。
※POW1点消耗したタイミングで、呪文の効果は開示すること。
または『注ぎ込んだMPの点数*10』の成功率で効果だけ開示する。
※この呪文は本シナリオ内でのみ効果をもたらす。
シナリオ終了時に、この呪文は没収すること。
取得時のINTの倍数は変えて頂いて問題ないが、4以上にするのは好ましくない。
一般的な呪文取得時のINTロールは、INT*3であることが多いためだ。
もし探索者が水晶の櫛を発見できなかった場合、別の島民が発見したことにして
夜の間にシキの元に返すこと。
2:うっそうと茂る森
日光もほとんど遮られた、静かで暗く、どこか不気味な森である。
島民の姿も皆無である。
【ナビゲート】に成功することで、寮から1時間弱離れた場所にある
森の開けた空間に出る。
そこにうっすら赤黒い水晶台で出来た、直径20m程の巨大なアンテナが設置されている。
電気関係の技能があれば、これが太陽光発電に転用していることを教えても良い。
なお、赤黒いのは血樽の中身を注いだためであり、翌日さらに赤黒くなる。
続けて周囲を調べるか、【目星】に成功することで水晶台の地下に続く
鉄板のフタが見つかる。これはシキが隠したものであり、
女陰陽師のミイラが安置されている小さな石造りの洞穴に続く。
ミイラ発見により、1/1d4の正気度を失う。
この女陰陽師のミイラは、自らこの洞穴にこもり餓死しており、超自然的な死ではない。
壁面には、女陰陽師が彫った文字が綴られている。
【日本語】と【歴史】*2、または【日本語】と【考古学】*4の組み合わせロールを行う。
部分的成功である場合は通常失敗とみなし、成功時には次の二つの結果を渡す。
◆水晶台の地下の壁に刻まれた文字
"我、この地に飛来した、"輝くもの"を封じるためにやってきた陰陽師也。"
"人の身にて敵わぬ異形故、八百万の神が一柱:自然の母神を奉り、"
"母神と契りを結び、数多の贄を捧げ、招来の儀式を執り行ったもの也。"
"自然の母神、声に応え贄を全て貪り、"輝くもの"を地の底に封じ込めん。"
"我、捧げた贄も奉り、島に残り、此の言葉を残す。"
"後生に、神々との契りの証となる櫛と母神を奉る術を残さん。"
◆自然の母神の招来/退散 詠唱の代表者のみ、SAN:1d10 消費MP:任意 詠唱時間:5分
以下の条件を揃えた上で、呪文を詠唱する
1:新月の夜であること
2:特別な手法で作成された"鏡台"を用意すること
3:鏡台に非常に大量の血液を流し込むこと
招来したくば、全ての準備を整え鏡台の前にて、呪文を唱えよ。
退散したくば、かの神を見据えて、呪文を逆さに唱えよ。
※招来・退散共に最大成功率は95%とする。
※呪文未取得の人間でも、MP付与を協力することは出来るものとする。
呪文は、Shub-Niggurathの招来/退散、と同質である。
【日本語】と【歴史】*2、または【日本語】と【考古学】*4に成功時点で招来/退散は
取得出来てよい。他の人間に口伝する場合は、教わる側がINT*3のロールに成功すると
同じく呪文を取得できる。
3:寮
3階建ての木造平屋。島民が力を合わせて作り上げた唯一の施設。
ここは電化されており、供給源は備え付けの発電機のほか、森にある水晶台である。
水晶台があることを先に聞いたのであれば、森探索時の【ナビゲート】にボーナスして良い。
寮は、食堂、厨房、浴場のほかは、島民全員が住む個室があるのみ。
森本はもちろん、シキもこの寮で過ごしている。
シキ以外の個室は、ベッドと各部屋主の私物がこざっぱり置かれている程度。
シキの部屋は、手狭ではあるが他の人間の部屋に比べてモノが多い。
ベッド、クローゼットのほか、本棚、パソコン、水晶を削って作った置物などを描写する。
・本棚
『経営学の書籍』や、『社会問題に関わる書籍』のほかに『重厚なアルバム』
『島の管理データ』や『業務日記』と書かれた手書きのノートがしまわれている。
読み進める場合は、【図書館】のほか、【経理】や【法律】、【写真術】でも可能とする。
技能失敗した場合は、情報を半分だけ得るか、2倍時間を掛けるかを選択させる。
◆経営学の書籍、および社会問題に関わる書籍 (【経理】や【法律】など)
前者は如何にして、効率よく事業を展開するか。について記載されている。
流通ルートを確保し、世界中にまで伝達するにはどうすれば良いか、ということに
特に主眼を置かれているように見える。
後者は、日本の自殺について論じた内容が記載されている。
年間自殺数は減少しているものの、世界的に見ればトップクラスであり、
自殺の原因は様々ながら、労働環境がその一つに上げられている。
◆アルバムの写真からわかること (【写真術】など)
使い捨てカメラで撮ったのか、パッと見ではわかりにくい写真が多い。
写真の年数は2006年が最初、作業服を着たシキの他、4人の男性に囲まれている。
撮影場所は、ここ飛鳥島。またシキの雰囲気・表情が今のそれと違うように見える。
森の中に水晶の巨大な儀式台を発見した様子や、
そこから地下に続く墓室で、ミイラ発見と水晶の櫛を拾ったこと。
また別の洞窟から奥に進むと、水晶洞となっている様子がわかる。
最後に、フラッシュで完全に真っ白になった写真で、2006年の写真は終わる。
以後の写真は一気に年数が飛び、シキの頭部に水晶の櫛が存在し、
島民とともに、穏やかで優しげな笑顔を浮かべた、今のシキのそれが写っている。
◆島の管理データ (【経理】など)
島民は2011年からちらほら増え始め、現在の数字(60人前後)を境に頭打ち。
帳簿を見る限り、水晶の輸出で十二分な利益を得ており、
生活物資の輸入も問題なかった様子。
水晶の輸出は、流通ルートから世界中に広がっていることが推測され、
輸出された水晶も、ガラス戸や携帯電話やパソコンなどのモニター、など。
様々に形を変えて、世界中あらゆる場所で使われていることを示唆する。
島民が頭打ちになっているのではなく、"入れ替わり"が発生しているように見せたり、
出て行った島民がどこに消えたかを、【アイデア】などで疑問に思わせて良い。
もちろん、消えたのではなく、水晶に変化しているだけなのだが。
◆シキの日記 (【図書館】など)
※日記は非常に断片的に書かれている。
・2006年(10年前)
とある調査隊の出来事。
シキ自ら、明らかに異質だった"コア"を破壊した際、
他の隊員全員が突然、大声でわめきながら、結晶壁に特攻し、取り込まれた。
あまりにショックな出来事で、止めるどころではなかった。
この後、どうにか一人会社に戻るも、精神的なショックと責任を取らされ退職。
飛鳥島に移り住み、破壊してしまった"櫛神様"を再生させようと試みる。
我々が無暗に干渉さえしなければ、このようなことにもならなかった。
欲に目がくらんだ自分を戒めるべく、それを終生の活動とした。
(ここから"櫛神様"という表現が使われ始める。)
櫛神様の欠片は、価値のある水晶体であり汎用性が高いことが改めて判明。
当座の資金のために、櫛神様の欠片をかつてのコネを用いて流通のラインに。
・2011年(5年前)
追い詰められた日本の会社員たちが"自発的に"手伝いたいと言ってくるように。
これが櫛神様の影響であることは、すぐに理解した。
櫛神様のお力であるならばと、シキも協力を惜しもうとは思わなかった。
・2016年(今年)
5年近くかかったものの、コアの再生は順調。完了したと言っても良い。
櫛神様は確かに日本の、いや世界の苦しむ人たちを救おうとなさっている。
その"最終段階"に進むための準備は整ったと言っていい。しかし焦りは禁物だ。
・パソコン
インターネットに繋がっている、ごくありきたりなパソコン。
特別なプログラムを動かしているわけでもなく、調べ物に使っているように見える。
直近では、俗に言うブラック企業についてリストアップしていたことはわかる。
※【コンピュータ】技能を振るほど難しい内容は無い。振らせても構わない。
・水晶の置物
何を模しているのかもわからない、水晶で出来た美しい置物。
手袋越しなどでも、触れることでギミックの2つ目が発生するだけのアイテム。
【オカルト】があるなら、触れる前に危険性を教えても良いだろう。
4、採掘場
寮から10~20分ほど歩いたところにある竪穴式の採掘場。
コンテナに積まれていく大量の透き通った水晶のほか、
パワーショベルやブルドーザーなどの重機が出入りしたわだちも目立つ。
最初は森本の案内が着くと思うが、その際に中は薄暗いが、
『絶対に強い光を当ててはいけない』と注意を促す。水晶がダメになるから、とも言う。
【地質学】や【博物学】があれば、これが通常の水晶ではないと思うだろう。
・【博物学】
日本で水晶が取れるのは山梨ぐらいで、しかもこんなに多くは取れない。
確かに水晶には間違いなさそうだが、何か引っかかる。
・【地質学】
圧力や電気を流すことで性質が変わる水晶は存在するが、
光を当てるとダメになる水晶は聞いたことが無い、と思う。新種だろうか。
その後、採掘場に入り、地下を潜っていく。
採掘場の中に入った段階で、全員にギミックの1つ目を行うこと。
周囲には、きらきらと淡く輝いて発光する水晶が、埋まっているのがわかる。
水晶くずも、地面にたくさん転がっている。
これを拾う分には、森本を含めて誰も注意しないので、拾わせて良い。
採掘場の中は一種の迷路であり、しかも長い。
森本の案内があるのであれば判定は無いが、もし自力で進むとなれば
【追跡】や【ナビゲート】がないとあっという間に迷うだろうと思う。
森本には適当な行き止まりまで案内させる。
『もっと奥があるけれど、そこは持ち場じゃないので良く知らない』と言わせておくこと。
このほか、探索者に強制で【目星】の半分を降らせる。
成功者には、壁に埋まっている水晶の塊が、ヒト型のように見えることと
ギミックの2つ目を行うこと。
◆7:事件勃発
昼間に2回探索させた後は、一度寮に全員戻して夕食のシーンとする。
夕食はフレーバーに近いので、あまり時間を掛けるべきではない。
せいぜい、探索者たちの情報共有の場であり、または水晶の櫛未発見時には
シキのところに戻っていることを描写するぐらいにすると、時間節約となる。
夕食後はすっかり暗くなり、シキからも夜は危ないので外に出ないように促される。
ここからは各探索者に、寮の中に居る適当なNPC一人と会話が出来る時間だと伝える。
会話終了後、キーパーは探索者たちを自室で就寝させて、以下の順に処理を行う。
1:MPが減少している場合、全員全回復させる。
ギミック2によってPOWが上昇している場合、MPの最大値も上がっているので、
キーパーは忘れずに伝えること。
2:ギミックの一つ目を探索者全員に行い、結果に関わらず悪夢に苛ませる。
その後、全探索者は翌日の13時に起床させて、異様性を描写する。
3:寮の中には探索者たちしかいないことを教え、【聞き耳】を振らせる。
・【聞き耳】
通常失敗:地面が、揺れたような気がする……? 通常成功:地下、それも採掘場の方から揺れた気がする。
決定的成功など:森の方が風も無いのにざわついているような気がする。
4:身体の半分を水晶にさせられた甲斐を登場させて、今わの際に
『さ、採掘場の奥……連れてかれ。連中、全員、そこで……!』と、
採掘場の最奥に何かがあることを伝えさせる。
これにより、0/1d6の正気度を失う。
甲斐じゃなくても、森本でも良い。シキでなければ不都合は無い。
いずれにしても『採掘場の奥に、島民全てが居る』ことを伝えることが肝心である。
なお水晶化した甲斐を調べると、その探索者も水晶化することは
【アイデア】や【オカルト】に【医学】、あるいは【神話技能】あたりで察しさせても良い。
クライマックスが近いことをプレイヤーにも教えておこう。
◆8:エンディング分岐
生き延びるには、大きく3つのルートがある。
もっとも、どの分岐にしても、Q'yth-Azそのものを完全破壊したわけではないので、
日常に帰ったとして、水晶の混じった品々を扱えるか、というと疑問は残る。
そういったエンディング描写にして締めくくり、陰鬱な終わり方をするのが良いだろう。
本シナリオのテーマである『どうあがいても絶望で陰鬱なクトゥルフ』を目指したもの。
破壊すればそれで皆が幸せになる、という改変も可能。
★ルート1:【重機械操作】技能によってQ'yth-Azのコアを18時までに破壊する。
採掘場の中を、コアのある最奥まで進む。
【ナビゲート】あるいは【追跡】で判定させること。
成否に関わらず経過時間は1時間。必要成功数は1回で良い。
最奥に向かう途中で、シキと合流させる。探索者たちが来るのを待っている。
待っているとはいえ、Q'yth-Azのコア破壊を目指すであろう探索者たちの邪魔はしない。
Q'yth-Azのコアは破壊されても構わないと本気で思っているからである。
それというのも、Q'yth-Azのコアを再生させる人間は自分である必要が無いため。
いよいよもって、キーパーは探索者たちにシキの不気味さを演出して、
もしかして罠なのでは、と誘導しても良いだろう。
最奥では、洞窟全体を覆い、なおも膨張を続けているQ'yth-Azと、
そのQ'yth-Azに向かって、自ら喜んで飛び込んでいく島民たちがいる。
後述する正気度チェックを行い、疑似的な戦闘処理に移る。
大きく言えば、移動で1ラウンド、【重機械操作】実行で1ラウンドを行ってもらう。
以下の様なA~Eまでの5つのラインで構成されたフィールドを作ると良い。
A
Q'yth-Azの初期配置
B
C
D
パワーショベル
E
探索者の初期配置
キーパーは以下のことを戦闘前に伝えること
1:各ラインの幅は"20m"程度であること
2:隣のラインを移るためには、DEX*5か
移動力*5のいずれかに成功する必要がある。
Q'yth-Azは膨張して、採掘場を揺らし
探索者を思うように動かさない。
3:Dのラインに居る探索者は、誰でも
【重機械操作】を実行できる。
技能成功時点で、コア破壊できたとみなす。
◆Q'yth-Az 知性持つ結晶体
グレート・オールドワン
STR:200 CON:95 SIZ:115 INT:15 POW:25+20d100 DEX:6 HP:105
DB:+19d6 SANc:後述参照 移動:0
[武器]
触手 90% 結晶体への変化(詳細は命中時)
射程40m、対象1d3人、回避・受け流しがマイナス40%
押しつぶし 80% DB
射程20m、対象1d3人、回避・受け流しがマイナス20%
飲み込み 自動成功 即死
同一マス侵入時に自動で使用される。回避も受け流しも不可
[装甲]
15ポイントの硬い結晶。
加えて、Q'yth-Azは毎ラウンド耐久力を1d10ポイント再生させる。
[呪文]
マインドブラスト、精神的従属、破壊、精神力吸引、支配、魅惑、恐怖の注入
[特性]
Q'yth-Az遭遇時の正気度喪失は、1d8+[N]/5d10+[N]である。
[N]は、このシナリオで上昇したPOWの点数に等しい。
Q'yth-AzのPOWは、これまでに吸収したヒトのPOWだけ上昇しており、
20d100程度、上昇させておくこと。
Q'yth-Azはラウンド終了時に自分のSIZを5d10上昇させる。
SIZが16上昇するごとにダメージボーナスを+1d6させ、
SIZが32上昇するごとに隣接のラインに膨張し、侵入する。
[動かし方]
射程外であれば、ランダムで選択した対象者に呪文を打ち込む。
呪文の速度は射撃と同じく、DEX順を無視して発動させること。
※サプリ:『マレウス・モンストロルム』ではキーザ表記されている。
◆結晶体への変化
両腕、両足、頭のいずれかに命中判定。
命中すると即座に結晶化し、ゆっくりと進行していく。
腕、または、足を用いた技能は一つで半減、二つで自動失敗、
頭部命中時は、思考系技能マイナス10・呪文使用不可。
該当箇所への攻撃は装甲4点として働く。
他にこの結晶体に触れた生物がいる場合、変化は伝播する。
(以下、KP向けの非公開情報)
シナリオ終了時、Q'yth-Azのコアが無事な場合
該当探索者は徐々に結晶化し、ロストする。
Q'yth-Azのコアが破壊されている場合
1か所につき10年治療を続けることで、完治する。
この状態を初めて見た人間はSANc 0/1d6。
コアが破壊された時点で、"コア破壊実行者以外"はQ'yth-AzとPOW対抗。
失敗で、道連れにありったけの呪文を受け、自らQ'yth-Azに突っ込み水晶化する。
コア破壊者には、他の人間を止めれば貴方も巻き込まれてしまう、と伝える。
この光景を見た探索者は、1d8/3d8の正気度を失い生還する。
またギミック2により変化したINTとPOWの増減がある場合、元に戻させても良い。
破壊実行者だけ道連れにされる、POW25+20d100ではなく、POW25と対抗させて
失敗した場合のみ生還できる。などとすれば生還難易度は下げられるだろう。
(致命的失敗でPOWが上昇しているほど、ロストし易くする)
もちろん、日記やシキなどから出す情報の整合性は取ること。
生還後、以下の様な描写を挟んで、陰鬱な締めとすると良いだろう。
貴方は、貴方だけは生き残った。
いつしかQ'yth-Azも完全に止まり、地獄のような採掘場から這い出て
波止場に止まっていた船を出し、この水晶だらけの絶望の島から脱出できた。
そうして街に帰ってきて、ふと思う。
この街は、いや世界は、島で得た情報が正しければ、
コアを破壊したとはいえ、Q'yth-Azで蔓延した世界だ。
そして、いつまたQ'yth-Azのコアが"再生"するとも限らない。
その時こそ世界中が水晶に包まれるかもしれないが、これからどう生きようか?
水晶の無い生活でも送ろうか?
水晶を使うな、と人々に叫んで回ろうか??
全てを抱えたまま、諦めて今まで通り生きていこうか???
さぁ、どうしようか?
この最後の決断をもって、この物語を終わろう。
★ルート2:Shub-Niggurath招来の術式を発動させて、かつての神話を再現する
◆6:島のデータ、うっそうと茂る森、も参照。
事件勃発した日は、新月である。
ただし日中はできないので、18時の1回のみがチャンスである。
招来の呪文に一度失敗した段階で、膨張したQ'yth-Azが地面を突き破るのを見る。
そのままありったけの呪文を叩き込み、全ての探索者を水晶化させること。
◆豊穣の母神:Shub-Niggurath
外なる神
STR:72 CON:170 SIZ:120 INT:21 POW:70 DEX:28 移動:15 HP:145
DB:+11d6 SANc:1d10/1d100 移動:15
※基本的なパラメータは、基本ルールブックのそれと同一である。
招来成功時に、【従属の契り】を使用した探索者は以下の【特性】を得る。
◆[特性] Shub-Niggurathへの永続的従属
貴方はシュブ=ニグラス、ならびにその眷属に対し
絶対的な隷従を誓った身となる。
これは呪いなどではない、貴方は自らそれを望んだのだ。
故に、自らこの従属を破棄するような思考には、絶対に到達しない。
・シュブ=ニグラス、ならびにその眷属の命令は絶対である。
どんなに理不尽な内容でも、従わねばならない。
・シュブ=ニグラス、ならびにその眷属の行動は絶対である。
彼女らから攻撃される場合、貴方は一切の行動ができない。
・シュブ=ニグラス、ならびにその眷属の威厳は絶対である。
彼女たちから受けるSANcによって永久的発狂以外の発狂を発症しない。
Shub-Niggurathは、自分の崇拝者"にのみ"甘い。
そのため招来されたとき、"【従属の契り】を経由してMPを提供しなかった"探索者を
一人残らず抹殺してから、Q'yth-Azに対して【門の創造】を用いて地中深く鎮める。
もし、採掘場に探索者が向かっていれば、この【門の創造】に巻き込まれるだろう。
Shub-Niggurathの攻撃は適当で構わない。探索者に回避させても良いが
それではいつまでもQ'yth-Azが封印されないので、全く無意味であると教えよう。
Shub-Niggurathは、自分の崇拝者"にのみ甘い"。そのため、例えば
崇拝者が値切りに成功すれば追加で一人助かる、や
先にQ'yth-Azを門の創造】で封印させ、その後のShub-Niggurathの攻撃を
探索者たちが耐えながら退散させるような展開にしても構わない。
Shub-Niggurathは、ヒトの言うことを聞く義理は全くない。
彼女もまた、絶望をもたらす偽母であるのだから。
Q'yth-Azが封印された後、Shub-Niggurathは退散せずとも自ら退散する。
生き残った探索者がいれば、★ルート1と同じように描写して締めくくる。
まず間違いなくShub-Niggurathの信者と成り下がっているだろうが。
重機械操作を持たない探索者のみでパーティが構成されている場合、
キーパーはなるべくこのルートに誘導すること
★ルート3:何もかも放棄して、島からの脱出を図る
船の操縦そのものは判定なしで構わない。島からの脱出はできる。
ただし船にある水晶のコンテナを放置したまま出発すると、
船で移動中にQ'yth-Azの呪文が直撃し、コンテナの膨張に巻き込まれ水晶化する。
放置せず、港で先に適切な技能でクレーンを操作することで、積み荷を降ろせる。
これは【重機械操作】あるいは【操縦(船舶系)】が良いだろう。
クレーンを使わず力任せにやらせても良いが、
この場合はQ'yth-Azの側も察知して、即座に呪文で探索者を壊滅させても良い。
結局このルートは、Q'yth-Azのコアが無事なままのために
脱出成功したところで世界は水晶化して破滅するので、継続できるシナリオが無くなる。
ドリームランドなどの覚醒世界でない場所であれば、継続させてもいいだろうが、
事実上の探索者のロストとなる。
世界崩壊を垣間見て、1d10/1d100の正気度を失わせても良い。
◆9:おわりに
生還:1d10
※改変せず、この難易度のまま全員生還できた場合は、特大ボーナスを与えて良いだろう。
全員が生還できた:6d6 任意の技能+1d10 POW+1
コアを破壊した探索者は、本人のみ、INTとPOWをシナリオ開始時に戻させても良い。
身体の一部が結晶化していた探索者が居る場合は、◆結晶体への変化を参照して、
適切な処理を施すこと。
呪文【従属の契り】を習得した探索者が居る場合には、没収すること。
※呪文【自然の母神の招来/退散】は、シュブ・ニグラスの招来/退散と名前を変えたうえで
持ち帰らせて良い。
シナリオ公開日:2016/4/5
シナリオ更新日:2016/4/5
シナリオ作成者:番犬人
Skype ID : bankennin
Twitter ID : bankennin