沈黙の魔道士 壱 基本設定とバックグラウンド概要 1.舞台設定 時は大正~昭和へ移った、関東大震災から約三年後の 1927 年 1 月、帝都・東京からス タートである。場合によっては、現地からのスタートでも問題は無い。 知り合いである生物学者【新山 龍虎】から、秋田県田沢湖に生息する【クニマス】のサ ンプルを採取・捕獲してきて欲しいとの依頼を受け現地へ向かう。 探索者たちは、その東北の僻地にて怪異に遭遇してしまう。 ~~~メモ~~~ ダオロスの召喚は宇宙的に重要な時間まで待つ必要がある。この場合、宇宙的時間を推し 量るのに使う天体はポン彗星を使う事とする。 探索者の最終手段(どうしても探索に行き詰まった時) 新山龍虎から手渡される、アヘン入りのチョコレートが一欠けらずつ、探索者に配られる。 新山曰く「疲れたらコレを食べてから眠りなさい。疲れたときって言うのは、必要なとき よ」 このチョコレートを食べて眠りについた探索者は、ドリームランド入り口の【炎の洞窟】 の神官の下で、新山龍虎と 3R だけ問答する事ができる。 夢の描写としては、非常に鮮明な夢を見る。眼下には七十段の階段があり、下りきると巨 大な炎が燃え盛る洞窟が見えてくる。その洞窟の内部には、ひげを生やした 2 人の賢人風 の人物が立ちこちらを見ていた。このとき初めて、探索者達は自身が裸である事に気付く。 2 人の賢人風の人物に促され、奥の孔雀石で出来たテーブルへと促される。そこには探索 者達が着たいと思っていた服が置いてあり、テーブルの奥では新山龍虎が紅茶を飲んでい た。といった雰囲気だろう。 ~~~~~~~~~~~~~~~ ナシュト「しかし風変わりなヤツも居たものじゃ。お主みたいなのがこのような者たちと 好んで接するとはのぉ」 新山龍虎「対価や礼儀は、どんな所でも大切な事じゃなくって?勿論、どんな相手でも」 ~~~~~~~~~~~~~~~ 2.注意点 このシナリオの重要点は【救援が来るのに時間がかかる事】【連絡手段が絶たれる事】 【東北地方特有の寒さとも戦わなければいけない事】【過疎地特有の物資不足】の四点を 念頭に入れてシナリオを進める必要がある。 今回の場合の NPC の救援は、新山龍虎氏の【帝都から秋田までの旅費支給】と【角館町で の宿の確保】程度である。 しかしならが、集まったプレイヤーの装備や収入等が貧弱であると見受けられた場合、最 低限の防寒対策と食料程度は持たせてやっても良いだろう。(※また、場合によっては NPC を一人程度投入しても問題ないだろう) ただし、新山龍虎からの武器の支給は一切無い。また、武器を所持できる探索者も 1~2 程度が望ましい。あまりにも探索者が強すぎると判断できる際には、クマや野犬といった 動物を登場させて武器を弱体化させるのもよいだろう。この戦闘イベントは、探索者の武 器弱体化が目的であり、探索者が死んでしまう事になることはあまりに不本意であり最も 好ましくない状況であるという事をここであらかじめ注意喚起として述べておく。 しかしながら戦闘技能持ちの探索者もパーティーの中には最低一人は必要である。この場 合推奨される戦闘技能は<弓>または<ライフル>が理想である。 近接戦闘技能を保有する探索者が多くいた場合、召喚されるクリーチャーを増やしてし まっても問題は無いだろう。 また、救済 NPC を登場させる場合は有能かつ強力な救済 NPC を登場させない事が望ましい。 救済 NPC の性別はどちらでも構わないが、女性 NPC を登場させるのも一興かもしれない。 3.登場する主要 NPC・クリーチャー ハオン=ドル(年齢不詳) ~ハイパーボリアの魔術師~ 人類の出現以前から生きている強力な魔術師で、原初の覚醒の世界にあったハイパーボリ アの地からやってきた。 彼は故郷を追い出された正体不明の種族の一人である。 ハオン=ドルは、ウボ=サスラが守護するという『旧神の鍵』と呼ばれる石版を覗き帰還し た唯一の魔道士であるが、彼はそれ以降の生涯光と空を恐れるようになった。また、多く の魔術師のように、彼自身の魔道書を残したとされる記録もある。 数ある資料から察するに、ハオン=ドルはエイボンと同等かそれ以上の魔術師であると 言っても過言ではないかもしれない。 彼の身長は 2.4 メートルという長身であり普通の人間より痩せて見える。しかしながら、 身に纏うローブが体を大きく見せていた為もあり、大正時代当時の地方民からみれば、そ の存在は『鬼』と呼称されるのに相応しいであろう。 彼はヘビ人間とかかわりがある。 覚醒の世界に来る前には月のドリームランド・ムーンビーストの都市の付近に住んでいた が、【浅草十二階】の事件発生当時、人知れず覚醒の世界へと足を踏み入れていた。 覚醒の世界へとやってきた彼が行おうとする行動は再び地球を支配する事である。 その為の第一段階として、【ダオロス】との契約を結び、過去と未来の世界を視覚的・感 覚的に感知する能力を手に入れようと目論む。その召喚に必要な行動とし、人の少ない過 疎地にて【ズ=チェ=クォン】の召喚を行う。過疎地へと身を潜めたのは、自身の存在を 知るものの目を逃れ、安全に準備をする為であった。 STR:14 DEX:14 INT:20 アイディア:99 CON:12 APP:09 POW:25 幸 運:99 SIZ:13 SAN:0 EDU:16 知 識:80 H P:13 M P:25 回避:28 ダメージボーナス:+1D4 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [技能] 天文学:70% クトゥルフ神話:75% 隠れる:50% 聞き耳:75% 忍び歩き:75% オカルト:95% 目星:70% アクロ語:75% 英語:60% 日本語:25% ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [呪文] <黒い仔山羊の召喚/従属> <無形の落とし子の召喚/従属> ※彼は他にもグレート・オールド・ワンと交渉する為の呪文を知っているかもしれないし、 その他の従属させる呪文も知っているかもしれない。 ↓以下オリジナル取得呪文案 <ナーク=ティトの障壁の創造> <**魔術師の催眠術(<支配>基準)> 他 1D6 の任意の召喚/従属の呪文または KP が適切であると判断するもの ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 かぎ爪:35% ダメージ:1D3+1D4 *噛み付き:40% ダメージ:1D3+1+1D4+POT13 ・防具 *1 ポイントのうろこ ・所持品 イオドの書(アクロ語) ダオロス像(土星にて入手) *ヘビの姿の場合のみ適用 **呪文をかける方法や消費コスト、手順は支配に順ずる。対象に出来るのは人間のみであ り、継続時間は掛けた側の任意である。POW 対抗により抵抗する事が出来るが、失敗した 場合は従属される。この呪文は<精神分析>を三回成功させる事により解除できる。従属さ れた者が自らに<精神分析>を施す事は不可能である。また、掛けられた人間の STR は呪文 の効果が続いている間は二倍に上昇し、素手による攻撃を行った場合、与えたダメージの 半分の値が自らに反動として返ってくる。また、呪文を掛けられている間の記憶は一切無 い状態となる。 (※ここに記載されているステータスは、今回のシナリオで使用する必要最低限の技能の みであり、一部加筆・削除が施されております。この人物に関する詳しいステータスは 【ラブクラフトの幻夢郷】を参照してほしい) ハオン=ドルの無形の落とし子 STR:26 DEX:18 INT:14 アイデア:70 CON:10 APP:- POW:18 幸 運:90 SIZ:20 SAN:- EDU:- 知 識:H P:15 M P:18 回避:36 ダメージボーナス:+2D6 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [技能] 隠れる:50% 忍び歩き:50% [呪文] <破壊>※呪文取得は任意 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 ムチ 90% ダメージ:1d6 または組み付き 触肢 60% ダメージ:+2D6 打突 20% ダメージ:2d6(どちらか大きいほう) 噛み付き 30% ダメージ:特殊 ・防具 物理的な武器からは影響を受けない。魔力を付与されている武器であっても影響を受けな い。 呪文は影響を与える。また火、化学薬品などの影響も受ける。 [正気度喪失] 1/1D10 ハオン=ドルの黒い仔山羊 STR:44 DEX:17 INT:14 アイデア:70 CON:18 APP:- POW:23 幸 運:99 SIZ:44 SAN:- EDU:- 知 識:H P:31 M P:23 回避:34 ダメージボーナス:+4D6 ―――――――――――――――――――――――――― [技能] 忍び歩き:60% 森の中に隠れる:80% [呪文](INT/2=7) <シュブ=ニグラスの招来/退散> <**魔術師の催眠術(<支配>基準)> <破壊> 他 4 つ ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 触手:80% ダメージ:db+1D3 の STR の吸収 踏みつけ:40% ダメージ:2D6+db ・防具 黒い仔山羊の体は地球上の物質で出来てはいないので、火器による攻撃に成功した場合に は、どんな火器でも 1 ポイントのダメージしか与えない。ただし火器の貫通の場合には 2 ポイントのダメージを与える。(中略) また、熱、爆風、腐食、電気、毒などによってダメージを与えようとするようなタイプの 攻撃は全く効果が無い。 [正気度喪失] 1D3/1D10 **呪文をかける方法や消費コスト、手順は支配に順ずる。対象に出来るのは人間のみであ り、継続時間は掛けた側の任意である。POW 対抗により抵抗する事が出来るが、失敗した 場合は従属される。この呪文は<精神分析>を三回成功させる事により解除できる。従属さ れた者が自らに<精神分析>を施す事は不可能である。また、掛けられた人間の STR は呪文 の効果が続いている間は二倍に上昇し、素手による攻撃を行った場合、与えたダメージの 半分の値が自らに反動として返ってくる。また、呪文を掛けられている間の記憶は一切無 い状態となる。 新山 龍虎(63) 職業:女性生物学者 ~人間臭いニャルラトテップ~ 今回の事件の発端となった人物。当時の日本では珍しい女性生物学者である。 今回本人は探索者達が怪異に巻き込まれる事なんて全く知らない。 岩手県出身であり、35 歳の時に夫は病死している。息子が成人し教師になったのをきっ かけに再び教鞭を振るう事になる。50 代のある時、チベットへ研究の為に海を渡ったが、 その後消息を絶つ事になる。 この時、本物の新山龍虎氏は事故で亡くなっている。後に帰国した新山龍虎はニャルラト テップである。 見た目が年齢に伴わないのはその為である。 今回彼女が探索者にクニマス捕獲を依頼したのは、単純な彼女の興味からのみに他ならな い。現在は帝都の大学に研究室を構えるが、本拠地は盛岡である。本拠地の方は、現在息 子が所有している。 奇抜で一見突拍子もない生物学的見識を持ち、性別が女性という事も相まって世間からの 評価は【知識の無い根拠】として扱われてしまっている。しかし実のところは、非常に高 度な生物学知識を保有している。 見た目がかなり胡散臭い。 STR:12 DEX:18 INT:86 アイデア:100 CON:19 APP:18 POW:100 幸 運:5D10+50 SIZ:11 SAN:00 EDU:28 知 識:100 H P:15 M P:100 回避:36 ダメージボーナス:0 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [技能] あらゆる武器の扱い:100% これ以外の技能値は、その他言語を含み 75~95%の間で対処する事とする。 ただし、<信用>は 60%に留めておく事とする。 KP 次第で技能値を 00~40%に制限する事も可である。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 その時の気分次第 ・防具 基本的に持ち合わせない ・所持品 場合によりけり [呪文] 望む呪文全て [正気度喪失] 人間の見た目での彼女を見て正気度は喪失しない 石川 みやこ(30) 角館町の旅館の女将 新山龍虎が角館町の旅館で手配したの旅館の女将さん。色白秋田美人さん。 因みに彼女は新山龍虎とは知り合いであるが、彼女の正体までは知らない。 話上手な探索者には、もしかしたら田沢湖に引っ越してきた人物の話をしてくれるかもし れない。 STR:08 DEX:09 INT:15 アイデア:75 CON:13 APP:14 POW:09 幸 運:45 SIZ:09 SAN:45 EDU:19 知 識:95 H P:11 M P:09 回避:18 ダメージボーナス:0 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [技能] 言いくるめ:65% 聞き耳:75% 信用:65% 心理学:75% 製作(料理):75% 説得:65% 目星:55% 博物学:60% 経理:60% 精神分析:51% 志村 清二(56) クニマス漁師 今回調査の協力を承諾してくれたクニマス漁師。話から従軍歴があるような事をほのめか してる。 角館町から現地まではこの人物が連れて行ってくれる。 田沢湖湖畔に、冬の期間使用する専用の小屋を持っている。 因みにではあるが、ハオン=ドルの提案を承諾し湖畔のエンジンを改良した人物がこの人 である。 親友に工藤甚左衛門がいる。 STR:12 DEX:09 INT:13 アイデア:65 CON:14 APP:08(10-02) POW:10 幸 運:50 SIZ:10 SAN:50/99 EDU:19(17+02) 知 識:95 H P:12 M P:10 回避:18 ダメージボーナス:0 ―――――――――――――――――――――――――― [技能] 職業技能 応急手当:80% 機械修理:70% 製作(国鱒塩引き):76% 追跡:50% 博物学:80% ライフル:89% 投擲:50% 目星:60% 製作(網):75% 重機械操縦:26% 電気修理:15% ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 改造田村銃 ダメージ:1d8+1d6+3 1/2R 80m 装弾数:5 発 耐久度:10 故障:96 ・防具 鹿革製ジャケット+みの(装甲値 1P、寒冷時の耐久が*6) 工藤 甚左衛門(56) 山の猟師 田沢湖湖畔にて猟師をして生計を立てている志村清二の親友。志村が改造したサイレンの 整備・点検を主に行っている。 冬の時期は鹿を撃ち、革や肉を提供したりしてくれている。 STR:14 DEX:10 INT:15 アイデア:75 CON:12 APP:07(09-02) POW:09 幸 運:45 SIZ:10 SAN:45/99 EDU:17(15+02) 知 識:85 H P:11 M P:10 回避:20 ダメージボーナス:0 ―――――――――――――――――――――――――― [技能] 職業技能 応急手当:70% 機械修理:70% 追跡:80% ライフル:89% 博物学:80% ナビゲート:60% 目星:75% 生物学:51% 重機械操縦:27% 電気修理:25% ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 改造田村銃 ダメージ:1d8+1d6+3 1/2R 80m 装弾数:5 発 耐久度:10 故障:96 or 十三年式田村銃 ダメージ:1d8+1d6+3 1/3R 80m 装弾数:1 発 耐久度:12 故障: 00 ・防具 鹿革製ジャケット+みの(装甲値 1P、寒冷時の耐久が*6) 4.シナリオ全体像 新山龍虎の個人的な研究の為に過疎地に訪れた探索者たちは、現地にて突然の地震と急激 な気温の低下から異常事態である事を察知する。予兆を感じ取れようとそうでなくても、 現地へ赴き、クニマスの捕獲を行おうと思った段階で探索者たちは今後起こりうる怪異に 立ち向かい、強力な魔術師と戦わなければならない。 このシナリオで一番大切にするべき事は【理不尽にも怪異に巻き込まれた不運な探索者】 を、導入でいかに創造するよう誘導するところにある。 今回舞台として選択した『秋田県 田沢湖』は、大正時代当時は漁業で幾らばかりか発展 はしていたものの、帝都で普及してきた車や電話、娯楽はおろか電気すら危うい土地で あった。季節も冬とあり、夜は当然ながら、昼間でも、閉ざされた山を越えての脱出は自 殺行為そのものである。シナリオの途中で脱出を計る探索者が居た場合は、山野を彷徨わ せる前に、この土地の厳しさをまず伝えるべきである。 そして今回登場するハイパーボリアの魔術師『ハオン=ドル』は、【浅草十二階】以後に 人目を避けてこの地までやってきた狡猾かつ強力な魔術師であるが、仲間を持っていない 彼はチームプレイで撃破する事が可能である。逆を言えば、単独での撃破を行おうとする ならば容赦はしなくても良いという事である。 土地や気象条件も相まって相当厳しい内容が予測されるが、ヒントを確実に出してやれば 全員が生還してクリアをする事が出来るシナリオである。 この場合の冒頭で登場する新山龍虎であるが、時代のはるか先を行く知識と見識、年齢に 合わない容姿も相まって、名前から勘の良いプレイヤーであれば彼女の正体に気付いてく れるだろう。 彼女の正体はどうであれ、NPC の救援がほぼ一切無い条件を作り、窮屈ではなくスリリン グな内容になるように心がけるべきである。 5.脚注 クニマス 資源のある高級魚であったため、専属の漁師が居た。クニマス漁は一年中行われ、刳り船 (丸木船)を使用していた。漁法は刺し網漁法(魚の回遊ポイントに定置網を仕掛けて魚 の頭が網の隙間に入るようにする漁法)で、夏は深部に、冬は浅く網を下ろしていた。 クニマスの長期輸送に耐えうる加工がなされた史料も存在しており、「国鱒塩引き」が一 般的であったとの事である。干物・粕漬けなどの加工も施されていた。 当時の伝承によると、クニマスの産卵時期は冬であったと記録されている。(2012 年 2 月 に NHK 取材班が撮影に成功している)しかしながら、一年を通して産卵期がある等、未知 の部分が多い種である。 2013 現在、この種は環境省レッドリストでは野生絶滅種の認定を受けた種である。 ポン彗星 正式名称:ポンス・ヴィネッケ彗星 周期六年余りの木製族小彗星。1858 年 3 月 9 日、フリードリヒ・ヴィネッケが発見。6 月 のうしかい座流星群の母体であると考えられる彗星である。1921 年 6 月にも出現し、6 等 星級の明るさで世間に注目された。 出現の前後において流星群が発生するとされているが、真偽の程は定かではない(※要出 展) アメリカ製発動機 大正 5 年にアメリカで製造された発動機(エンジン)。 製造メーカー:Fairbanks Morse 機種名:Z 出力:20 馬力 機関総重量:およそ 3t 機関分類:焼玉機関(グローエンジン) 機関燃料:軽油 当時のこのタイプのエンジン機関は、小規模な定置動力や小型船舶等の需要に好適で、始 動に時間がかかりある程度熟練を要するという難点こそあるが、取り扱いや整備に際して ディーゼルエンジン程の高度な技術も要さなかった為、第二次世界大戦以前の日本では広 く普及していた。安価な重油を使用しても動いたのも、普及の要員の一つであろう。 ポンポン音がなる船のあのエンジンである。 これはフィクションではあるが、手動で音を鳴らすサイレンとこのエンジンを組み合わせ て使えば、一定時間鳴らす事はできたであろう。 燃費効率に関してはそこまで良いとはいえなかったようである。 現に経済性に優れ効率の良い小型ディーゼルエンジンの発達に伴い、1950 年以降、この 型のエンジンは世界的に廃れていった。 6.魔術師・ハオン=ドルの目論み 帝都で幻夢境への扉が開かれた際、密かに覚醒の世界へ侵入してきた。 彼はまず、その土地に少しでも馴染む為に日本語を習得している。 しかしながら、帝都では人目も会ったため、英語を話し欧米人のように装った。 人目を避けるように帝都を離れ、東北地方へと逃れた。 出羽の国・秋田の山中に身を潜めつつ、少しずつ日本語を習得し土地に馴染んでゆく。 少しずつ土地に浸透していった彼は、異常を知らせる為であると、発動機にサイレンをつ ける改造を施すように進言する。 事実、この効果は土地の者にも非常に好評であった(特に山野の熊避けの効果である)。 ヘビ人間と共に覚醒の世界へとやってきたハオン=ドルだったが、護衛として引き連れて きたヘビ人間は、寒さによって死んでしまった。 しかしながら彼らのもたらした知識は、ハオン=ドル自身大いに役に立っていた(日本語 技能取得理由)。 ※※※ここまで三年間(またはそれまで)のバックグラウンド一例※※※ 周囲を小高い山に囲まれた田沢湖は、音の反響に非常に大きな役割を果たした。 取り付けたサイレンには、既に気付かれないような細工が施されており、回転翼と振動板 のちょっとした細工で音が変化するようになっていた事は誰の知るよしは無かった。 彼の進言に従った時点で、既に事態は手遅れとなっていた。 あとは刻を待ち、ズ=チェ=クォンのもたらす【真の闇】の中で召喚するべく神格【ダオロ ス】を待つべくのみとなった。 7.取得アーカイブ 魔道書【イオドの書:アクロ語版】 中身を読み解く事は、恐らくどの探索者にも出来る事では無いだろう。この中身によって、 神格【ズ=チェ=クォン】と【ダオロス】の存在が明らかになる。 なお、ダオロスの召喚儀式の概要とズ=チェ=クォンからの防護障壁である【ナーク=ティ トの障壁の創造】は、書の巻末に増やされたページにハオン=ドル自身の手で書き綴られ ている。 【ナーク=ティトの障壁の創造】の呪文は書き綴られた時期が新しいらしく、こちらに関 しては英語で概要が書かれている。 名も無きヘビ人間の日誌【日本語・英語】 B5 版程度の大きさの革装丁の日誌。何の革で出来ているのかは不明である。 ハオン=ドルが引き連れたヘビ人間の手記が書かれている。 アクロ語版イオドの書の訳注の一部が書かれている。と同時に、プレーンの五芒星につい ても僅かながら触れられている。 ハオン=ドルの目論見と、その実行法が記されている。 この日誌を入手するか否かで難易度が劇的に変化するだろう。 魔道書【ハオン=ドルの教え】 シナリオ進行時現在にハオン=ドルが取得・使用する呪文が記載されている。 これによって、ハオン=ドルへの対処方がでてくるだろう。 言語:英語 研究し理解する為に平均 30 週 1D8/2D8 神話技能に+10% 詳細と概要:不明 取得できる呪文:<ヘビ人間との接触> <神格との接触/ツァトゥグァ> <黒い仔山羊の召 喚/従属> <無形の落とし子の召喚/従属> <ショゴスの召喚/従属> 読み解くと、<魔術師の催眠術>に対する解呪法が記載されている。 以上で基本的なシナリオの概要は終了である。 ※※※以下シナリオ進行※※※ 弐 シナリオ【沈黙の魔道士】 0.探索者の創造について 理想的とされる探索者はなんと言っても【大学教授】をベースにした探索者である。 しかしながら NPC 新山龍虎の性質と年齢上、友好関係は非常に幅広かった事は想像に難く ないかもしれない。 犯罪者や狂信者、活動家といった人脈も存在していたと思われる。同じ理由で、政治家や 資本家ともコネはありそうだが、今回のシナリオでは除外する事とする。 年齢層も幅広くとって問題は無いだろう。 1.新山龍虎の依頼 帝都のカフェー、または彼女自身の研究室に招かれたといった導入が入りやすいと思われ る。 「突然呼び出したりして申し訳ないわね」 悪びれる素振りも見せず、この言葉を皮切りに依頼の内容を伝える。 「こんな具合でお願いしたいんだけど……」 粗方説明し終わった辺りで、女学生や大学生、同僚を登場させて忙しそうな雰囲気を醸し 出し新山を退場させる。 ここまでには秋田県行きまでの夜行列車の切符と調査の為の準備資金を手渡しておく事と する。また、クニマスについて少し話を交えるのも良いだろう。 探索者の英語技能に不安を感じたら、去り際にチョコレートを手渡すといいだろう。 「疲れたらコレを食べてから眠りなさい。疲れたときって言うのは、必要なときよ。皆で 仲良く食べるのよ♪」 「あぁ、そう言えば今年は 1927 年だったわね」 「田舎は帝都と違って眩しくないからね。綺麗な流星が見れるといいわね」 そういっていそいそと乱入者に連行されて新山を退場させる。 ここで探索者たちに新山から、または KP から現地の気候が非常に厳しい旨を必ず伝える 事。(防寒対策を行って向かった場合、吹雪の中での探索行時にて三時間外に居た場合は CON*6、防寒対策が不足しているだろうと感じた場合は CON*5 からのスタートとする。詳 しくは後に記述する。) また、バックグラウンド説明として 1926 年 11 月 12 日の水平社による爆破陰謀事件を引 用し、上野駅での警備が厳しくなっている旨を伝え武器の所持を制限するのが良いだろう。 この制限は序盤における無意味な戦闘の予防と、探索者を無駄に強化させない狙いがある。 ここで拳銃以外の武装を持つ探索者(ライフル・拳銃・可能であれば日本刀類)は武装を 没収される。 あまりにも探索者が渋るようであれば、特高を一人登場させても良い。どちらにせよ、探 索者が過剰武装をしないように心がけるべきである。 武装調整と探索準備が整ったら、夜行列車にて移動となる。 ※注意~新山龍虎のチョコレート このチョコレートにはアヘンが含まれており、食べて三十分もすると幻覚を見始め、一時 間もすると意識が朦朧としてくる。 探索者の一人または一人以外が興味本位からこのチョコレートを食べた場合はドリームラ ンドの入り口である『炎の洞窟』へ行けなかった事にする事とする。情報提供の性質上、 全員、または一人づつが炎の洞窟にて新山龍虎からヒントをもらえる。問答としては 3R ほどである。 余談ではあるが、炎の洞窟へ向かわせず何らかの副次効果を持たせるのも良いだろう。効 果の一例をシナリオの最後に記載する。 2.秋田県角館町へ 大正~昭和にかけての秋田の交通事情 秋田のような地方でも、タクシーは普及していた。この場合フィクションという事を前提 とし、運賃は市内 2~4 円距離によっては 8 円程度に収める事とする。 また、料金の高いタクシーに代わり、人力車もある。雪国の特色として、冬季は箱雪箱 (はこぞり)もある。乗車賃は一里(約 3.93km)で 10 銭だった。 場合によっては乗り合い馬車や舟運も存在していた(こちらの料金は 15 銭程だろう)。 岩手県から秋田への鉄道 盛曲線(現・JR 田沢湖線):盛岡-大曲間の開通は戦後になってからである。 大曲-角館間の開通は 1921 年、生保内軽便線として開通している。 田沢湖へ鉄道が敷設されるのは、秋田県内・盛岡からの沿線のどちらも戦後になってから である。 横黒線(現・JR 北上線):1924 年には黒沢尻(現・北上)駅-横手駅まで開通していた。 奥羽北線(後に奥羽本線):1905 年には大曲-横手間が開通している。奥羽北線は 1909 年 【国有鉄道線路名称制定】後は奥羽本線と路線が改定されている。 飛行機を使用して秋田へ(大正-昭和) 秋田県北部沿岸の能代町(現・能代市)までであれば、陸軍飛行場が大正 10 年には既に 存在していた。 とは言え、単純に広大な草原(東雲原)であった為、飛行機の離着陸に最適であるとした 程度であった。本格的に整備が開始されるのは大正 11 年陸軍各務原飛行隊が耐寒飛行試 験を実施した辺りであろう。 本格的に東雲原に飛行場が設置されるのは昭和 15 年 12 月の事である。 (参考:能代飛行場) 大正-昭和初期における田沢湖へのルート 東北本線より北上し、黒沢尻駅にて乗り換え、横黒線(現・北上線)で横手まで向かう。 ここで再び乗り換えを行い、奥羽本線より大曲まで向かう。大曲で再び乗り換えを行い、 盛曲線(現・JR 田沢湖線)を使い角館駅へ向かう。 また、軍に顔が利く人物であれば、能代町へ飛行機にて輸送してくれるかもしれない。こ の場合の路線としては、奥羽本線・能代駅から大曲駅まで南下し、盛曲線へ乗り換えて角 館駅まで向かうルートが考えられる。 この場合、輸送に携わった飛行隊員は調査に同行しない。 上記を歴史的背景として考慮し、探索者たちを秋田県角館まで連れて行く事とする。 この場合、陸路ではなく空路を選択した場合、もしかしたら探索者たちの武装制限が駅に 比べて若干緩くなってしまう可能性もある。 その点を考慮しつつ、探索者を角館まで送るようにするべきである。 3.旅館の女将 角館町の旅館で探索者たちを一泊させ、翌朝に田沢湖まで足を運ばせる。 なお、駅から旅館に向かうとき、または時刻が夕方になったあたりで探索者全員に<聞き 耳>ロールを行わせる 聞き耳ロールに成功した者は、遠くからサイレンの音が聞こえる事がわかる。この段階で はサイレンに異常は全く無い。 余談ではあるが、角館から田沢湖までの直線距離は約 18km ほどであるので、おそらくほ んの少ししか聞こえてこないだろう。気象条件を考慮すると、この日の天候は晴れである。 サイレンの音を聞かせた後、探索者達を宿へと誘導する。 ここで漁師、志村清二と対面させ新山龍虎から話を聞いている旨と、現地までの移動は馬 車で向かう事を伝える。 「帝都の偉~い大学先生たちかぁ~。いやぁ、この老体戸惑うばかりでございますな」 志村と明日の事について話した後、探索者がもっと何かしらの情報を欲しがっているよう であれば、旅館の女将、石川みやこを登場させても良いだろう。 彼女からは以下の話が聞ける(この話の切り出しは、あまり不自然にならないように考慮 する事)。 ・「去年の秋頃、外国の方とそのご友人の思しき方々がこちらに来られた事が御座いまし た。」 ・「外国人の方は『葉恩』さま、と名乗られておりました」 ※友人の名前は今回は出さなくても良い。仮名として出すとすると、それぞれ男性名一人、 女性名二人が妥当だろう。 ・「ご友人と申される方は、それは帝都のハイカラな雰囲気で、こちらにご宿泊した際に 角館の名勝についてお話させていただきました。」(ヘビ人間が社交的な様相であったよ うに見せかけていた事を示唆させる) ・「外国人の方は……顔はよく覚えておりませんが、お顔まですっぽり隠れる外套(ロー ブの事)を身に着けておられ、こんな事を言ってしまうのは誠に失礼と存じますが、少々 不気味に思えました。」 ・「外国人のお方は日本語がそれほど達者ではなかったのか、ご友人と共になにか本を 使って日本語を習って居られました。」 ↓本について ・「はぁ……そうで御座いますね……私もよく存じ上げない代物で御座いました。非常に 古い本であるのでしょうか、装丁は非常に痛んでいたように記憶しております。」 ・「半月程ご滞在された後、外国人の方が田沢湖へ居を構えると申され、それ以来こちら へは着て居られません。」 ・「田沢湖へ居られる漁師の方々が、最初は確かに不気味と思ったが話してみると悪い人 間ではない、と申しておられたのを小耳に挟みました」 ・「なんでも、湖畔の機械を改良して熊避け用のサイレンの製作を提案し、熊や野犬に襲 われる仲間が少なくなったと申しておりました。」 ・「今年の冬に入って、顔見知りの猟師の方にその方のお話をお伺いしたところ、ご友人 の姿を最近見かけなくなった、とお聞きいたしました。」 ↓猟師の聞いた理由 ・「なんでも、三人は仕事の都合もあってか帝都へお戻りになられた、と話したそうで す」 ・「あ、そうそう、それから少し経った吹雪の後だったと思われます」 ・「山で奇妙な生き物の死骸を見たと言う猟師がおりました。何でも、全身がヘビのよう な鱗に覆われた生き物の死骸だったと話しておりました」 ・「猟師の間では、『八郎様だ』とか『辰子姫だ』とかで湖畔の神社へ御神体として奉納 した、とお聞きいたしました』 最後の件は、ハオン=ドルが引き連れてきたヘビ人間の事であるが、変異が解けた後の様 相やその土地に纏わる伝説から、地元の者が全く違う解釈をしてしまった事を示唆してい る。 もしこの猟師と直接話をしたいと考える探索者が居た場合、この旅館に適当な猟師を登場 させると良い。その人物とは違うが、話の内容をそこそこ詳しく話してあげると良いかも しれない。また、ここで猟師を登場させる一つの内容として、翌日の天気を聞くのも良い だろう。 「あすたかぁ?まぁ~あすたの天気ば日ィ出てる内ァ大丈夫だべさ。だども、日がとっぷ り暮れた辺りから吹雪になるすけ。早ぐ切り上げで戻ってくるべス~」 「志村さんの漁か!じゃっ!あんだ達もお目が高いなぁ~。だば安心だすけ。いい人とっ 捕まえたなぁ~」 猟師の話では、志村清二という人物は腕は確かである事である。 「なぁに、志村も馬鹿じゃあねぇ。先生方も吹雪に捕まる前にゃあ宿に戻ってこられるだ ろうよ」 この雑談の中で、湖周辺に小屋を構える地元民は、吹雪に備えてごく少人数しか湖周辺に いない事を伝えておく。 猟師と女将さん、そして漁師・志村清二と話をし、この日は終わりとなる。 4.クニマス漁 翌朝、朝食を済ませた一行は漁へと出発する。時刻は 7~8 時までの時間が妥当だろう。 志村が手綱を握る馬車が、田沢湖へ向けて走ってゆく。 田沢湖へは現在の地図の西側から向かう。2013 年現在使用されている東側の道路は、こ の当時開通していない事としその部分は山とする。 田沢湖へ向かう道は、山の斜面を削った西側の道一本のみとなる。 「吹雪ん時こんな道ァ通りたかねぇな。まァ、そうなる前にゃあ先生方を町に送るさね」 小春日和の山道を進むと、周囲を山で囲まれた田沢湖が見えてくる。時計を確認すると、 時刻は正午を少し過ぎた辺りである。神社付近に二、三軒小屋が見受けられる。探索者が 昨日の夕方に聞いたサイレンについて志村に尋ねると、工藤はこのような形で答えてくれ る。 「あぁ、アレか。それはほれ、そこに山道があるだろ。その山をずうっと登った所、そこ の上だな。木が無いところあるだろう。あスこがサイレン小屋になってる。」 丁度その説明をしたところで、志村の親友である工藤甚左衛門がその山道から降りてくる のを見る事ができる。 ここで志村が工藤に、今夜はどうするのかを聞くと、工藤は湖畔に残る旨を志村に話す。 「あの外人さんも、吹雪ン中一人じゃあ寂しかろうよ」 ここで見られた神社の中に件のヘビ人間が祭られているが、今調べようとすると志村や工 藤に怒られてしまう。 ここで神社について少し触れると、比較的こじんまりとした神社で扉には錠が掛けられて いる。鍵はボロボロに錆びた簡単な南京錠である為、<鍵開け>技能を持った探索者であれ ば針金程度で簡単に開ける事が出来るだろう。また、適切な道具があれば錠を壊して中の ヘビ人間を調べる事が出来る。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ もしここで中を覗きたいと言った探索者が居た場合、<信用>・<説得>・<言いくるめ>を許 可しても良い。錠をあけないと言う前提で、少しだけ中を覗く事が出来る。 中は薄暗く、奥に何かが座っているような影がぼんやりと見える。が、それが人なのか何 なのかまでは解らない。ただ静かにそこに鎮座しているという事がわかった。 中を覗いた探索者の中に<目星>ロールをしたいと言う者が居るかもしれない。その場合は 振らせてしまって問題は無いだろう。 ここで<目星>にてスペシャル or クリティカルを出した探索者が居た場合、中に居る者の 膝に当たる部分に本のような者が見えた事にしてやってもよい。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 神社を調べた場合の詳しい内容は後述とする。 田沢湖の入り口から南側から回るように向かい、『河童淵』と呼ばれるところから志村の 船が出される。 ここまでの移動は馬車での移動となる。 【ここで得られる重要な情報】 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 漁の準備を志村と手伝う事も可能だが、ここで手伝いを行っていない探索者全員に<目星> を振らせる。 成功した者は、志村や他の漁師が漁で使う刳り船(丸木船)とは明らかに形状が異なるイ カダを発見できる。 -------------------------------------------------------------------------------そのイカダは、丸太を縄で縛り、人が乗るであろう部分に丁寧に板張りされたものである 事が近づくとわかる。大きさは人が 4 人ほど座って乗れるくらいの大きさであり、イカダ の中央には黒い五芒星形のような図形が施されており、それらは多数の黒い可塑性の切片 から形成されていた。 -------------------------------------------------------------------------------もし探索者の中で<地質学>に成功した探索者が居た場合、この物質が黒曜石を粘土にして 固めた物質である事がわかる。 硬い物質となっているらしく、ナイフの刃では壊れそうになさそうである事がわかる。 しかし、ダイヤモンドと同じく、定められた一定方向から強い衝撃を与えると砕けそうで ある事もわかる。 ※黒曜石のモース硬度は 5 であり、本来はナイフで何とか傷をつけれるくらいの硬さであ る。しかしながら地球産の黒曜石では無い為、固まった時の硬度が上昇している。高温に さらす事で、この鉱物を再び粘土状にする事が出来るが現段階では不可能である。 この奇妙な図形は【プレーンの五芒星】と呼ばれるアーティファクトであり、召喚したダ オロスを五芒星の範囲内に閉じ込めておくものである。この五芒星については<クトゥル フ神話技能>のロールに成功すると判明できる。 <オカルト>でもある程度までなら判別できる事にしても良いかもしれない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ここで探索者たちが五芒星について時間をかけてもう少し調べたいと見受けられた場合、 または壊そうと試みた場合志村から漁の催促が来る。それでも尚且つ壊そうと奮起する探 索者をみて志村が近づき壊さないで欲しいと声をかける。 「そいつを壊さねぇでけねか、『葉恩』さんの大事なものだんだ」 「なんでも、魔よけだとか湖の安全を願ってこさえて下さったもんなんだ。この通り… …」 不安を抱える探索者も中にはいるかもしれない。だが、漁を行う時間も限られている為、 探索者一行は志村の乗る船とそれをサポートする船の二艘の船で漁へと出る。 5.怪異・暗黒の沈黙の到来 網を下ろし、各々雑談やおやつの時間に浸るものもいるだろう。準備や漁の作業により、 時計を確認すると時刻はもうじき 15 時になるところである。 ここでそれぞれの船の乗船人数と位置を確認すると、志村側には二人・もう一方の船には 三人乗る事となる。 この時、三人の探索者が乗る側には網が置かれ、志村が指示した位置で停止する。ここで 志村が網の片方を持ち、二人を乗せたままさらに沖へと進む。丁度二艘の船を基点として 網を伸ばす様なイメージとなる。 つまり、志村を含む二人の探索者が乗る船は、探索者三人の乗る船より沖側であるという 事である。 しばらく網を張り魚が掛かるのを待ち、時刻は 15 時半を過ぎた辺りとなる。 志村の指示のもと、網を引き上げると岩魚やウグイといった魚は確かに掛かっていたが、 肝心のクニマスの姿は見当たらなかった(<生物学>や<博物学>の技能を持った探索者が居 た場合、ロールさせても良い。また、探索者一名を代表として出し、<幸運>をロールさせ、 成功した場合、クニマスが二匹掛かっていた事にしても良い)。 この時、志村がもう一度網を仕掛けるか帰るかの選択肢を出す。<博物学>技能を持ってい る探索者が居た場合、日没近くから天気が崩れそうだといった事がわかってもよい(ロー ルを行うか否かは探索者に任せる事とする)。 因みに志村の意見では、安全に帰りたいのであれば今から引き返した方がいいかもしれな いだろうとの事だ。 「空が怪しくなってきたな……あと一度くらいなら漁は出来るだろうが、安全に戻るのも 手だぞ?」 時刻は 15 時 45 分を回ろうとした辺りだろう。陸に上がれば山の陰が出来るほどだろう。 そんな相談をしていた探索者に、昨日聞こえたサイレンが湖全体に鳴り響いた。 ここで昨日聞き耳に成功した探索者には<アイディア>をロールさせる。昨日<聞き耳>でス ペシャル or クリティカルを出した探索者はその特典としてロール無しで情報を提供して 良いだろう。 <アイディア>成功者と<聞き耳>クリ or スペ探索者は、サイレンの音が昨日と違う事が解 る。 「確かに……いつものサイレンの音では無いな」 そう話す志村はさらに続ける。 「点検にしては今するのはおかしい」 「熊が出たにしてもなぁ……田沢湖にいるのは恐らく俺と工藤と葉恩さんだけだ。わざわ ざ鳴らす必要も……」 この時、用心深い探索者が居た時は<目星>を振らせてあげても良い。ロールに成功すると、 イカダのあった停泊所の辺りに黒いローブを来た人物が立っている事に気付ける。 「しかも、今日のは異常に長いな」 そう志村が話すと同時に地鳴りが聞こえ、周囲の気温が明らかに低下してくる。防寒対策 を行っている探索者にはまだ影響は無いが、明らかに空気が変わった事はわかる。 そんな時である。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 湖が一瞬暗くなったかと思った。 そう思った時、足元から黒い何かがにじみ出てきた。そう表現する以外、言葉は出てこな かった。 湖から浮かんだそれは、瞬く間に周囲に真っ暗な闇をもたらした。 そして、全員の目から光が消えると同時に、目の中に沢山の畳針を突き刺されるような鋭 く耐え難い痛みが襲ってきた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 湖から突如として出てきた闇の正体は【ズ=チェ=クォン】である。タイミング悪く、沖 あいに出ていた探索者達の船はあっという間に飲み込まれてしまう(この時、サイレン小 屋からこの湖の光景を見ていた工藤の SAN チェックも行う。それか KP の判断で正気度を 10~20 失わせても良い)。 ここで探索者達全員に 1/1D10 の SAN チェックを行わせる。その後、暗闇から脱出するま でをラウンド進行をとる事とし、その都度 SAN チェックを行わせる。その時の SAN 減少は 0/1 とする。この時、探索者の SAN 値を 20%以上失わせないよう注意する事である。万が 一 SAN 減少が 20%を超えた場合、湖に落ちるように仕向けてやると良い。 ここで気温が下がり湖の異変に気付けた探索者が、志村の船から別の船に乗り移る、また は志村の船に乗り移ると言い出すかもしれない。その時は<DEX*5>ロールを行わせても良 いだろう。しかし周囲が暗黒に包まれてしまった場合、乗り移れずに湖に落ちてしまう。 <DEX*5>ロール失敗時も同様である。 ただし、暗黒に包まれる前に乗り移りを試みて失敗した探索者は、最初の 1/1D10 の SAN チェックを後に回しても構わない。しかし、ラウンドが進行しうっかり SAN 値を 20%以上 失った場合は、痛みに耐え切れず目をえぐり出してしまうだろう。 片目を失った探索者は、後の視力に依存する判定が-15%減少してしまう。 ここで永久的狂気に侵されてしまうか、不定の狂気に陥るか、または片目をえぐり出すだ けで済ませるかは KP の判断に任せる事とする。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 目の痛みに耐え切れなかった志村は、そのまま自らの目をえぐり出してしまう。 グチョッと言う音が立て続けに二回聞こえたと思ったら、何かが水に落ちる音がした。そ れから、志村の声は聞こえなくなってしまった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ なんとかして暗黒から抜け出そうと試みる者が居るかもしれないだろう。その際は<聞き 耳>をロールさせてやると良い。成功した者は音の方向から岸がどちらの方向かわかった 事にしてよい。視力が失われた状態で、かつ異常な状態で混乱状態に陥っている際に船を 動かす場合は<DEX*5>ロールを行わせる事とする。また、何とか船によじ登れた探索者が 居るかも知れないが、暗黒に包まれた周囲は異常に気温が低くなっており凍えそうなほど である。水に落ちてしまった探索者はラウンド進行時の SAN チェックと同時に<CON*5> ロールも行わせるようにする。<CON*5>ロールに失敗した場合、耐久が 1 ポイント減少す る。 混乱の中、なんとかもがいている内、ふっつりとサイレンの音が止む。それと同時に周囲 に光が戻り始め、探索者達は暗黒から解放される。それと同時に、目からすぅっと痛みが 引いて行くのが実感できる。 時計の針は 15 時 50 分になろうとしていた。 6.吹雪からの避難 岸に着いた時刻は 16 時を少し回ったあたりだろう。空からは雪が舞い始め風も少しずつ 強くなってきた。 なんとか出発地点である【河童淵】へ戻った探索者達だったが、船を停泊させていた所の 近くに居た馬車が見当たらない事に気付く。 また、異変前に用心深く<目星>を振っていた探索者は、先ほどまであったイカダが消えて いる事に気付ける。 それに気付き周囲を見回しても、イカダはどこにも見当たらない事が解る。また、誰か 立っていたという事で<追跡>を試みようにも、イカダのあった所で足跡が途切れている事 が解る。この事から、停泊所に立っていた謎の人物が闇が出てきた時にイカダで移動した のではないかというのが<アイディア>で推理できる(この部分は PC の判断に任せても良 い)。 馬車が元あった場所を見ると、車は壊れ、馬は逃げ出してしまった事が伺える。雪道に残 る馬が暴れまわった形跡がなまなましく残っているだけだった。 探索者に残された移動手段は徒歩しかなくなった。 ここで探索者が残ると宣言した場合、付近に漁の為に使っているのだろう小屋を発見でき た事にしても良い。 徒歩で移動し、志村の小屋まで向かっても良い。この場合の移動時間は約二時間前後とす る。というのも、山が崩れており、道の状態が非常に悪いからである。 ここで停泊所の小屋と志村の小屋の両方のパターンを記載しておく。 ※※※それぞれの小屋で入手できるもの※※※ 停泊所近くの小屋 中は必要最低限の物しかないが、一晩を明かす分には苦労しなさそうである事が入って直 ぐにわかる。小屋の中央には囲炉裏があり、三人分の布団が部屋の隅にある。 <目星>または小屋の状態を推理するに値できると思われる技能でロールして成功した場合、 ごく最近この小屋が使われた形跡が見られると解る。囲炉裏の傍らには、異常に古びた本 が一冊落ちている。 【ここで得られる重要なアーカイブ】 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 魔道書【イオドの書:アクロ語版】 探索者が<考古学>を持っていたら、この本の文字が現在得られている言語以外の未知の言 語である事がわかる(ロールさせても良いが、失敗した場合は単純に見知らぬ言語である 程度でしかわからない)。 中身を読み解く事は、恐らくどの探索者にも出来る事では無いだろう。しかしこの中身に よって、神格【ズ=チェ=クォン】と【ダオロス】の存在が明らかになる。なお、<古書修 復>系技能が合った場合、【ヴォルヴァドス】についても触れられている事がわかるよう になっても良いだろう(ところどころページが抜け落ち、破けたページが破かれたページ に挟まれた状態である)。 読み解く為のアーカイブは後に登場する。それを発見した時、本の言語がアクロ語だと解 る。また、ハオン=ドルが取得した呪文が載っているかもしれない(こちらも技能に依存 させても良い)。 なお、ダオロスの召喚儀式の概要とズ=チェ=クォンからの防護障壁である【ナーク=ティ トの障壁の創造】は、書の巻末に増やされたページにハオン=ドル自身の手で書き綴られ ている。 【ナーク=ティトの障壁の創造】の呪文は書き綴られた時期が新しいらしく、こちらに関 しては英語で概要が書かれている。<英語>と<INT*3>ロールに成功した場合、こちらの呪 文が習得できる。 志村の小屋 探索者達が来た西側の山道、神社が湖の近くにあるそのほとりにある。到着する頃には とっぷりと日は暮れてしまってるだろう。この頃には風も雪も強くなり、本格的に吹雪き だしているだろう。道中、探索者に二回程<CON*6>ロールを行わせる。なお、湖に落ちた 探索者には<CON*4>でロールさせる事とする。他の探索者がその者に何か適切な行動を 取った場合、ロールを<CON*5>に上昇させても良い。 小屋の中は漁の道具が殆どだが、改造された猟銃が一丁ここで入手できる。弾丸は 1d6+10 である。これ以外に入手する術は殆ど無いかもしれない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 改造田村銃 ダメージ:1d8+1d6+3 1/2R 80m 装弾数:5 発 耐久度:10 故障:96 この田村銃は、志村が工藤にと改造したもので、眼鏡が付けられてある。しかしながら装 弾数を上げた代わりに耐久度が減少しているので、受け流しや銃で攻撃を受ける際には注 意が必要である。 因みに、この改造銃はここで入手した場合、工藤と後に戦闘になった際に入手する事が出 来なくなる。すなわち、このシナリオでは一丁しか登場しない銃である。 ここで探索者がこの銃を入手しなかった場合、後の工藤の戦闘の際、工藤がこの銃を使用 する。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ また、情報提供として必要と判断した場合、ここでアクロ語版イオドの書を出現させても 良い。 こちらの小屋も停泊所近くの小屋とほぼ同じ作りだが、若干広く作られており布団の数も 充分にある。また、一週間は食料に困らないくらいの保存食がある事がわかる。 この小屋を探索するに当たり、<目星>に成功した場合【田沢湖周辺の地図】と【つるは し】が入手できる。 ________________________________________________________________________________ 小屋の選択の時、可能な限り分断させないようにしてやるべきである。分断しても構わな いと言う場合はそれでも問題は無い。 探索者達がある程度一息付いたところで、全員に<聞き耳>を振らせる。小屋が分かれた場 合、戦闘技能持ちの探索者の方を優先で振らせてやると良いだろう。 <聞き耳>ロールに成功すると、吹雪の音に紛れて幽かにうめき声の様なモノが聞こえてく る。失敗した場合、または声が聞こえた上で無視した場合、翌朝外に出たとき冷たくなっ た志村が近くで倒れているのを発見する事になる(SAN チェックが発生する)。 声に気付き、様子を見に外へでると、吹雪の中を彷徨う志村の姿がそこにある。 両目は無くなっており、血が涙のように頬を伝っている。 両手の指は凍傷で黒くなり始めてしまっている。 冷たい外気と吹雪で、濡れていた服は凍りつき、立っているのがやっとである。 中に退避させてやり<医学>か<応急手当>を試みる探索者が居るだろう。その場合はロール させてやっても問題は無い。どちらにせよ手遅れである事以外解らないだろう。 介抱してくれる探索者の意図を察してか、弱り果てた志村は殺してくれと懇願するだろう。 この後の志村の処遇をどうするかは探索者次第である。因みに<医学>と<応急手当>ロール 成功の報酬としては、衰弱しきっており翌朝には息を引き取るであろう事しか解らない。 ここで志村が死亡した場合の SAN チェックは 1/1d3+1 とする。 7.ダオロスの囁き 探索者達が眠ると宣言したら、全員に<POW*4>ロールを行わせる。 このロールに成功した者は、奇妙な夢を見、声を聞く。 -------------------------------------------------------------------------------そこは闇だった。それ以外に形容する言葉は無かった。 人間としての視覚は、そこには存在していなかった。 しかし、不思議と神経は最大限まで研ぎ澄まされ、闇の中でも何かを【視る】事は出来た。 それは、薄い何かだった。しかし角度を変えると、それは途端に立体的になり、凹凸まで 確認できた。 闇に紛れて、無数の棒状のものがそれを形作っていた。 人間の話す言葉ではない声が聞こえた。 「箒星の到来と共に我が眼(まなこ)与えん」 「願うならば、箒星の流れに耳を傾け、我が到来を待たれよ」 「真の闇の召喚を我が招来の証の試練として汝に命ず」 「像を持ち闇を呼ぶ者こそ、我が眼を持つべき者に相応しき事かな・・・・・・」 この時、イメージとして聞こえる声と輪郭のそれが、平面と立体の狭間から視えるもので あり、止と動のゆらぎから聞こえてきた声だと直感した。 その無数の棒を視ていると、目のような何かがこちらを覗き込んだ。 -------------------------------------------------------------------------------奇妙な夢を見ていた探索者はここで目が覚める。時刻は午前 2 時 25 分になろうとしてい る辺りである。 夢を見た探索者はここで 1d6/1d12 の SAN チェックを行う。この SAN チェックによる一時 的狂気は、この日は眠れなくなってしまう事とする。または志村がどのような状態であれ 同じ小屋の中であった場合、志村は既に亡くなっている為、その亡骸を貪りだす狂気でも 構わない。探索者が自ら狂気の症状を選んでも構わない。 夢を見た探索者の中に<クトゥルフ神話技能>を持つ探索者が居た場合、ロールをさせても 構わない。成功した場合、夢に出てきたそれが【ダオロス】であると解る。 また同じように<天文学>を持つ探索者がいた場合、こちらもロールさせて構わない。成功 すると、1921 年に到来した【ポンス・ヴィネッケ彗星(通称:ポン彗星)】が今年また 現れると言う事が解ってもよい。 こうして、探索者達の夜は明ける。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ポンス・ヴィネッケ彗星 周期六年余りの木製族小彗星。1858 年 3 月 9 日、フリードリヒ・ヴィネッケが発見。6 月 のうしかい座流星群の母体であると考えられる彗星である。1921 年 6 月にも出現し、6 等 星級の明るさで世間に注目された。 出現の前後において流星群が発生するとされている。周期や出現時期としては 5~8 月が 妥当であると思われるが、今回は少し周期を早めて出現させる事とする。 ダオロスは、この彗星の周期を宇宙的時間と判断し、自身の像を持ち闇で召喚を待つもの の前に顕現しようとしている。 なお、この時期にこの彗星が出現するとなると、タイムスケジュールとしては 午前 5 時:南東 午前 7 時:南中 午前 9 時:南西 となるだろう(うしかい座を基準とする)。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 8.吹雪の田沢湖 夜が開け外へ出ると、外は吹雪となっている。空は曇り、吹きつける雪が小屋に引っ付い ている。山超えを試みようとする探索者がいた場合、今山を超えるのは危険であると示唆 させた方が良い。田沢湖の周囲を回ってみようとする事ですら、寒さでたちまち凍えてし まいそうな天候である。田沢湖の周囲を探索したいと考えるのであれば、実行させて構わ ない。 田沢湖の現在の周囲の状況 湖の周囲を回り、脱出ルートを探すものが居るだろう。 田沢湖の周辺を回ると、道としてある程度整備されていたところは崩れ落ち、まるで地震 があったかのように山が崩落している部分さえある。その為、道の状態は非常に悪くなっ ており、半周するだけでも 4 時間は掛かるだろう。また降り積もる雪で積雪も増してゆき、 歩行が次第に困難になってゆく。 小屋を遠く離れ湖の周囲を探索する場合、2 時間経過した時に<CON*5>ロールを行わせる。 ロール失敗で耐久を 1 ポイント減少させる。 その後は、吹雪を避けれそうな場所で休めずに継続して外に居た場合、一時間毎に <CON*4>のロールとなる。なお、吹雪から避難せずに連続して耐久を 25%失った探索者は、 凍傷により APP・CON・STR のいずれかを 1 ポイント失う。 吹雪により失った耐久力は、暖かくした場所で 1 時間待機する事で回復する。また、適切 な処置を行えたと判断できた場合は耐久力を回復させても良い。この場合で失った耐久力 は、通常の<医学>や<応急手当>では回復できない事とする。しかし、この時失った APP・ CON・STR は、<医学>で回復させる事ができるかもしれない。 神社の中を見る 前日に調べられなかった神社を探索する機会の一つかもしれない。探索者の中に<鍵開け> の技能を持つ探索者が居た場合、道具さえあれば開けられる事とする(針金やまち針数本 でも可能)。ただし、道具が無い場合は<鍵開け>のロールは出来ない。 この時、志村の小屋を探索して【つるはし】を入手した探索者がいた場合、錠を壊す事が 出来る。また、拳銃を持つ探索者が居た場合も同じく錠を壊す事も可能だろう。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ つるはし(杖) 初期技能値:25 ダメージ:2D4+2+db(貫通可能) 1/1R 耐久:8 入手条件:志村・工藤の小屋を探索 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 社の扉を開けると、薄暗くひんやりした奥にそれは鎮座していた。 低温が幸いして腐臭はしなかったものの明らかにそれは死んでいた。 ヘビの頭を持つそれには人間の手足が生えており、全身は鱗で覆われていた。 その様は、洋服の裾から覗かせる腕の部分からそれが解った。 目は乾燥からか少しシワ枯れ始めており、だらしなく開いた口からは二股に分かれた長い 舌がはみ出ていた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 遺体とは言え、ヘビ人間を見た探索者はここで 0/1d6 の SAN チェックを行う。 【ここで得られる重要なアーカイブ】 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 名も無きヘビ人間の日誌【日本語・英語】 B5 版程度の大きさの革装丁の日誌。何の革で出来ているのかは<生物学>でロールしても 不明である。 ハオン=ドルが引き連れたヘビ人間の手記が書かれている。 アクロ語版イオドの書の訳注の一部が書かれている。同時に、プレーンの五芒星について も僅かながら触れられている。 ハオン=ドルの目論見と、その実行法が記されている。 日誌部分は日本語だが、それ以外の部分は英語と一部アクロ語で記されている。 補足:日誌の内容は改変しても問題ない。後にハオン=ドルと共に戦闘させるか、探索者 達と共闘させるかは KP の判断に任せる事とする。今回の例は、ヘビ人間がハオン=ドル の元から逃げ去った内容とする。ここでの筆者の生死判断は、この内容を用いる KP に依 存させる事とする。今回は、このヘビ人間が生存している事とする。 ---------------------------------------- ヘビ人間の日誌 年月日不明 あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめ も やゐゆゑよ らりるれろ わ を ん がぎぐげご にほんごのれんしゅう に にっきおつけることにする 以下他愛も無い日常の内容 年月日不明 ハオン=ドル様が私の元へ来て日本語を教えて欲しいと言った。 近々、覚醒の世界への門が開かれると言っていた。 報酬は何がいいかと聞いてきたので、私も覚醒の世界へいっしょに連れて行って欲しいと 願い出た。 ハオン様はにっこり笑って承諾してくれた。 年不明 天蝎宮(scorpio-10 月 24 日~11 月 22 日辺り) 私の先祖の故郷への門が開かれた。私の同胞から話を聞いたハオン様の決断は早かった。 同胞二人を引きつれ、ハオン様は門をくぐった。 私の肌では、少しひんやりする空気だったが、それが何故か懐かしく思えた。 それは私の中に流れる先祖の血が、そう思わせたのかもしれない。 しかし私が聞いていたヴァルーシアの土地の様相とは違っていた。 しかしハオン様はこの事を知っていた様子だった。 この御方の尋々な見識と広大な洞察力は日本語で表現すると【舌をまく】といった表現に 値する。 いつかヴァルーシアに帰る為と、先祖より伝えられた秘術で人間の形をとる事にした。 自身の性別に順ずる為なのか、人間の雌の体格に慣れるのは少し時間が掛かりそうだ。 一九二六年十一月 この醜い姿に少しずつ馴れて来た自分がどうももどかしい。 他を欺く為とは言え、出来ればこの姿でいる必要の無い土地へ向かいたい。 しかし、人間にはこの姿の方が好まれるらしく、ぶつかってきた人間の雄が私の懐に金と 手紙を忍ばせた。 お陰でしんぶんとやら書物を手にする事ができた。新しく何かを学ぶ事が出来る事が嬉し かった。 ハオン様や他の同胞の提案で、明日北へ向かう事になった。この土地では目立ちすぎるら しい。 一九二六年十一月頃 この土地の機械は、私が居た土地と比べるとわりと進んでいるようだった。 それと引き換えに、私やハオン様の使われる術を使う者はほとんど見当たらない。 きかんしゃと呼ばれる乗り物に乗り着いたこの土地はさらに冷たい風が吹いていた。 私は昨日の手紙を思い出し、お邪魔した宿で開いて見てみた。 中身は恋文だった。 私は申し訳無く思いながらも、それを火へ入れた。 一九二六年十一月頃 ここの土地の言葉は、同じ日本語と思えない程難解で聞き取り難かった。 だが、彼らの言葉の Nuance から私達に害意が無い事がわかった。 土地は厳しいが人は優しい。しかし、ハオン様はなぜこの様な人々と共存を望まれないの だろうか。 一九二六年十一月頃 ハオン様の言語の習得力は、目を見張るものがあった。 既にこの土地の方と交渉をし、住居も構える運びとなった。 人里から離れた湖のほとりに家を構えると言った。 そこなら、堅苦しいこの格好でなくても大丈夫だろうと申し下さった。 一九二六年十二月四日 同胞が、寒さに耐え切れず亡くなった。 一九二六年十二月十日 ハオン様は近頃、星を見る時間が多くなったように思う。 まるで何かを待っているようだ。 一九二六年十二月二一日 準備は整ったとハオン様は言った。 いつかの日に遭遇したウボ=サスラの子を召喚し、その暗闇の中でダオロスと契約を結ぶ のだという。 ハオン様の目が、いつになく恐ろしく感じた。 翌朝、私は同胞と共にここから去る決意をした。 ---------------------------------------- 手記はここで終わっている。探索者の中に<英語>技能が 60%以上持つ者が居た場合、日 誌の終盤付近にアクロ語を英訳する時の法則が英語で記述されている。これにより、【イ オドの書】をアクロ語から英訳 or 日本語に翻訳する事が出来る。その際、本全体を英訳 or 日本語訳にするには<考古学>または<人類学>の技能とこの日誌が必要であり、かつ 55(翻訳 34+アクロ語補正 21)週かかる。 正直な話、今の探索者にはそんな時間も用意も全く無い状態の為、本全体を翻訳する事は 無謀である。 しかし、<英語>技能を所持する探索者が<図書館>ロールに成功した時、アクロ語版イオド の書の一部から抜粋して訳する事を許可しても良い。<図書館>の代わりにイオドの書に対 して<目星>を振っても良いだろう。 どちらにしても、魔道書の劣化具合とハオン=ドルが重点的に読んでいたであろうページ がどこかが解った事にすれば、その部分の翻訳を行う事は少ない時間でも可能である。 ここでその部分の翻訳作業に費やす時間を算出する為に<英語>と<図書館>をロールさせる。 万が一探索者が<考古学>や<人類学>のどちらか、または両方持っていたら補正を加えても 良い。この作業は共同で行う事が出来る。 補足:ここで以下の分を正確に翻訳するのに要する時間を 2 時間とする。 <考古学>と<人類学>のそれぞれを所持していた場合、片方に付き 30 分の翻訳時間短縮の ボ-ナスを設けても良い。(それぞれをロールさせて、失敗したら 15 分といった形でも よい) <図書館>をロールさせ、日誌から適切な翻訳文を構築させる為の手際を判断させる(成功 一人に付き、10 分短縮できる)。 最後に<英語>をロールさせ、翻訳に適切なアクロ語を取捨選択、適切に日本語訳できるか 判断させる(一人につき 15 分短縮できる)。 ここで<図書館>と<英語>のロールの際、スペシャル or クリティカルが出た場合、短縮時 間を二倍にさせても良い。 →例:翻訳するには約 2 時間(120 分)程かかりそうだという事がわかった。 この場に居合わせた探索者は 3 人居り、幸いにも<人類学>を 21%持つ探索者が居た。 その探索者がロールをしたいとの事で KP はロールをさせた。ロール結果は 53 だったので 15 分の短縮となった。これで必要時間は 105 分となった。 KP が翻訳に協力も可能だと言ったため、三人は協力して翻訳作業に取り掛かる事とした。 全員が<図書館>をロールした結果、一人が成功し時間はさらに 10 分縮まった。 最後に<英語>を全員がロールすると、二人が成功し、一人は 02 でクリティカルだった。 クリティカル報酬として短縮時間が倍になりさらに 45 分時間が縮まった。 この結果から、翻訳に必要な時間は 50 分に縮まった。 ※協力翻訳の注意※:協力して翻訳させた場合、翻訳に必要な時間は 10 分より短くはな らない。この 1 点のみ注意してロールさせるようにする事。 ここでイオドの書をアクロ語→英訳→日本語訳と直して行くと以下の文が翻訳される。 -------------------------------------------------------------------------------隠された世界や他の星より到来した強大な旧支配者の一員ではない。 このものこそ、最後の破滅、劫初の夜の不滅の空虚にして沈黙だからである。 大地が死に、生命が消え、星たちが暗くなるとき、彼のものがふたたび立ちあがり、支配 地を広げる。 生命や陽光とはいっさいかかわりがなく、深淵の闇と永遠の沈黙を好むがゆえである。 しかしその時が来たるまえに、彼のものを地表に呼びだすことは可能であり、西の大洋の 岸に住む褐色の民が、遙か地底の彼のものが棲まうところに届く深い音色の音と古代の呪 文によって、これをおこなう力を有している。 しかし斯様な召喚には大なる危険があり、その時が来たるまえに彼のものが死と夜を広め ぬようにしなければならない。 光のなかに闇をもたらすからである。彼のものの訪れとともに、すべての生命、すべての 音、すべての動きが果てる。 彼のものは食の時に来たることもあり、名前をもたざるも、褐色の民はズシャコンとして 知る。 以下ダオロスの召喚儀式の概要をかいつまんだ内容 彼の神、次元の狭間に住まう。名を××××(ダオロス)と謂ふ。 彼の神を招き、契りを結ばん刻、刻の果をも見通す眼(まなこ)授けり。 侮ずる事無きよう。 彼の神黒の五芒星の内に封じず契りを結ばん者、虚無の彼方へ誘われん事疑い無き事。 軽んずる事無きよう。 又此の神、虚無の刻に忠実故、天文の働きに耳を貸す事惜しむ事無き様。 さすれば此の神、自らを模す虚像より舞い降り、知慧持つ賢人に眼(まなこ)分けん。 此の神、真の暗黒を好む故、真の沈黙の召喚も怠る事無き様。 -------------------------------------------------------------------------------伏字の部分は<英語>ロールでスペシャル or クリティカルが出た場合に登場させても良い。 この伏せ字の部分は、後の神社探索の際に出てきた日誌と照らし合わせれば自動的に判別 できる。また、後の日誌の登場の際の<英語>ロールに成功した場合にも、召喚儀式の概要 と障壁創造の呪文を習得できる機会を与えても良い。逆も同じである。 -------------------------------------------------------------------------------この内容により、昨日の現象の正体が【ズシャコン(ズ=チェ=クォン)】と呼ばれる邪 神であると解る、ただし翻訳した事で正気度が喪失する。 ここでの正気度喪失は 2/2D3 が妥当だろう。今回は斜め読みである為、<クトゥルフ神話 技能>の上昇は+03%となる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 社内部で見つかるものは、日誌とヘビ人間の遺体で以上となる。 ここで探索者がヘビ人間の遺体に対して<クトゥルフ神話技能>を振った場合、この遺体の 正体と性別がわかった事にして良い。 また、ヘビ人間に対して<オカルト>や<人類学>でロールした場合、この異形の遺体が角館 の女将が言っていた『辰子姫』とは全く異なる事がわかった事にしても良いだろう。 <生物学>でロールすると、ヘビの生態から推理できた事とし、この異形の者の性別が判明 しても良いかもしれない。 工藤の小屋 志村の小屋から少し離れたところに工藤の小屋があるが、中はもぬけの空であり、保存食 や猟銃の類は見つからない。 しかし<目星>に成功すると、志村の小屋で見つけたものと同じ田沢湖周辺の地図が見つか る。山のところどころに×しるしや鉛筆で円が書かれたりしているが、湖のほとりに一箇 所だけ○がつけられているのが見て取れる。 サイレン小屋 昨日、志村が言っていた小屋へ訪れると、小さな小屋の側に布が被せられた何かがあった。 布をめくる(取る)と、中には発動機の回転よって音が発生するサイレンがある。 探索者がこの段階にて<機械修理>で発動機を故障させても、工藤がサイレン発動前に同じ く<機械修理>で直してしまう。 この段階で、物理的に壊そうと躍起になる探索者も居るかもしれないが、ハンマーやかな てこといったような比較的重量のある道具で叩き壊さない限り、この発動機は工藤が同じ く直してしまう。 <キック>や<拳>なんて、当然のように全く意味すらなさないだろう。同じ意味合いで、< 拳銃>、<ライフル>、<弓>も同様に弾を消費するだけで終わってしまう。 ただし、志村の小屋で見つけたつるはしだけは例外で、つるはしが壊れて使えなくなる事 と引き換えに、こちらで破壊を試みた場合はこの日はサイレンが鳴らない。しかしこの程 度の破壊では一日もあれば修理されてしまう事に気付かせてやると良いだろう。 そうなった時、小屋を調べる探索者が恐らく出てくるだろう。 もし先に破壊を試みた探索者が居た場合、音に気付き中から工藤が姿を現し戦闘になる。 小屋への侵入を先に行った場合、ほんの少し様相は変化する。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 探索者が小屋を開けると、中は非常にこじんまりとしていた。 中の座敷には保存食が食い散らかされており、その中央に工藤が胡坐をかいて座っていた。 体を前後にゆっくり揺らしているだけだったが、探索者が入ってくる事に気付くと、傍ら に置いてあった猟銃を手に取りそれをこちらへ向けた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ここで工藤との戦闘に突入する。 先につるはしでサイレンの破壊を試みた場合、小屋の中から発砲される。この時サイレン の破壊に関わった探索者全員に<幸運>を振らせる。失敗し尚且つ出目が最も高かった探索 者は銃弾が当たり、3 ポイントの耐久力を失う。先に<幸運>で失敗した探索者にもう一度 <幸運>を振らせ、失敗した場合は兆弾で 1 ポイントの耐久力を失う。この時小屋から出て きた工藤は、弾の装填を完了した状態で登場する。 -------------------------------------------------------------------------------工藤 甚左衛門 ~従属状態の猟師~ STR:28 DEX:10 INT:15 アイデア:75 CON:12 APP:07(09-02) POW:09 幸 運:45 SIZ:10 SAN:45/99 EDU:17(15+02) 知 識:85 H P:11 M P:10 回避:20 ダメージボーナス:+1D6 ―――――――――――――――――――――――――― [技能] 職業技能 応急手当:70% 機械修理:70% 追跡:80% ライフル:89% 博物学:80% ナビゲート:60% 目星:75% 生物学:51% 重機械操縦:27% 電気修理:25% ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 改造田村銃 ダメージ:1d8+1d6+3 1/2R 80m 装弾数:5 発 耐久度:10 故障:96 or 十三年式田村銃 ダメージ:1d8+1d6+3 1/3R 80m 装弾数:1 発 耐久度:12 故障: 00 +予備弾 4 発 ・防具 鹿革製ジャケット+みの(装甲値 1P、寒冷時の耐久が*6) [状態] **魔術師の催眠術(<支配>基準)による従属状態 **継続時間は黒い仔山羊が付近に居座る限りである。この呪文は<精神分析>を三回成功さ せる事により解除できる。従属された者が自らに<精神分析>を施す事は不可能である。ま た、掛けられた人間の STR は呪文の効果が続いている間は二倍に上昇し、素手による攻撃 を行った場合、与えたダメージの半分の値が自らに反動として返ってくる。また、呪文を 掛けられている間の記憶は一切無い状態となる。 -------------------------------------------------------------------------------戦闘の途中で工藤が気絶、または素手による攻撃で片腕を負傷した場合や探索者が工藤に 対し<精神分析>を試みた段階のいずれかで黒い仔山羊が戦闘に介入してくる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 小屋の裏手でバキバキと音が鳴ったと思うと、森の奥からのっそりと大木がこちらに向 かってくるのが解った。 しかし木と形容するには色がドス黒く、枝だと思っていたものは各々が紐のようにうねっ ていた。 木の幹だと思ったそれは、その木のようなものが歩く為の足になっており、その足はまる で動物の蹄のようだった。 体だと思われる所からはシワの寄った幾つもの大きな口があり、そこからは緑色の液体が 滴り落ちていた。 -------------------------------------------------------------------------------ハオン=ドルの黒い仔山羊 STR:44 DEX:17 INT:14 アイデア:70 CON:18 APP:- POW:23 幸 運:99 SIZ:44 SAN:- EDU:- 知 識:H P:31 M P:23 回避:34 ダメージボーナス:+4D6 ―――――――――――――――――――――――――― [技能] 忍び歩き:60% 森の中に隠れる:80% [呪文](INT/2=7) <シュブ=ニグラスの招来/退散> <破壊> <**魔術師の催眠術(<支配>基準)> 他4つ ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 触手:80% ダメージ:db+1D3 の STR の吸収 踏みつけ:40% ダメージ:2D6+db ・防具 黒い仔山羊の体は地球上の物質で出来てはいないので、火器による攻撃に成功した場合に は、どんな火器でも 1 ポイントのダメージしか与えない。ただし火器の貫通の場合には 2 ポイントのダメージを与える。(中略) また、熱、爆風、腐食、電気、毒などによってダメージを与えようとするようなタイプの 攻撃は全く効果が無い。 [正気度喪失] 1D3/1D10 **呪文をかける方法や消費コスト、手順は支配に順ずる。対象に出来るのは人間のみであ り、継続時間は掛けた側の任意である。POW 対抗により抵抗する事が出来るが、失敗した 場合は従属される。この呪文は<精神分析>を三回成功させる事により解除できる。従属さ れた者が自らに<精神分析>を施す事は不可能である。また、掛けられた人間の STR は呪文 の効果が続いている間は二倍に上昇し、素手による攻撃を行った場合、与えたダメージの 半分の値が自らに反動として返ってくる。また、呪文を掛けられている間の記憶は一切無 い状態となる。一度の呪文で従属させる事が出来るのは一人だけである。 -------------------------------------------------------------------------------ここでの戦闘の場合、可能な限り探索者を全滅させないように心がけるようにして欲しい。 理想とする状態は、探索者を気絶させたりして戦闘不能にさせたり、戦闘に向かない探索 者を 1~2 人連れ去るのが良いだろう。 最も望ましいのは、探索者が一刻も早くここから退散する事である。 探索者が退散しようとしない場合、仔山羊は容赦無く攻撃をしてくるだろう。 いずれにしても、ここで黒い仔山羊と戦闘を行う事は不毛と言える。 連れ去られた探索者は、翌日にこのサイレン小屋を訪れた際に工藤と同じ状態で発見され る。その時、黒い仔山羊によって従属させられた探索者と戦闘になるだろう。 ハオン=ドルの小屋 工藤の小屋にあった地図を見て、探索者がここに向かう事があるだろう。 志村の小屋からここまでは、約 3 時間の所にある。仮に停泊所の小屋からこちらに向かっ た場合、道のりとしては 1 時間半の場所にある。 周囲は真っ白い雪に覆われているが、春や夏にはここが田畑であるというのがわかる。 小屋は一見簡素な作りに見えるが、よくよく観察すると丁寧な作りになっている。 入る前に<聞き耳>をすると、中には『人』が居ないのか物音は聞こえてこない。 探索者が中へ入ると、人が居た形跡が見受けられる。 中は畳になっており、人が 4 人は悠々と過ごせそうな空間になっており中央には囲炉裏が あった。手を近づけると、今朝までは火がついていたかの様にほんのりと暖かかった。 壁には誰が使っていたかは解らないが、和弓とカケ(鹿革製の手を保護する弓道用具)・ 胸当てがあり、矢も 1D10+5 本入手できる。 そんな部屋の隅には、畳の空間には不釣合いな椅子と机があり本が一冊置いてある。 本のタイトルは【ハオン=ドルの教え】とある。 言語は<英語>で書かれており、ハオン=ドルが習得した神話生物の召喚式や従属の方法が 記されている。これにより、ハオン=ドルが現在取得している呪文がわかり対処の幅が利 くだろう。 また、<目星>に成功すると、床下の収納口の入り口を発見できる。 【ここで得られる重要なアーカイブ】 -------------------------------------------------------------------------------ハオン=ドルの教え 言語:アクロ語(一部英語) 研究し理解する為に平均 30 週 1D8/2D8 神話技能に +10% 詳細と概要:この魔道書の基本言語はアクロ語である。ハオン=ドルの取得した魔術や ツァトゥグァ信仰の内容について言及している。 英語の部分は<魔術師の催眠術>について触れられている。 取得できる呪文:<ヘビ人間との接触> <神格との接触/ツァトゥグァ> <黒い仔山羊の召 喚/従属> <無形の落とし子の召喚/従属> <ショゴスの召喚/従属> ※以下の内容は呪文<魔術師の催眠術>についてである。この呪文は取得不能である。内容 は、<英語>技能が 20%以上所持しているものであれば読み解く事ができる。 新たな魔術の創造について 私の従属させている下僕にもこの呪文は覚えさせているが、これは魔術というよりも、人 間の精神に依存させる催眠術と呼ぶ方が現段階では正しいのかもしれない。 人間の精神がいかに緩いものであるかの証明の反面、他者に影響された時の強靭さも見え るものであると考えさせられるものとなった。 人間の精神は矛盾していると実感すると同時に、一種の法則にも似た働きを見出している かのようだ。 カクノダテにて居候した時に一人の猟師に密かに試してみたが、自力ではこの従属状態は 解呪できないようだ。 しかしながら、オカミと呼ばれていた女が猟師の些細な異変に気付き簡単に解呪してし まった。 あの女は私が見ても特別なにかの魔術を習得しているようには思えない。これは明らかで ある。 あの女はその猟師に対し、ただ単純になだめているようにしか見えなかった。 今にして思えば、あれは人間が狂人に対し行う対話にも似たように感じられる。 この事を考えた時、これは魔術と呼ぶにはまだ未完成であると認めざるを得ない。 この程度で解かれてしまっては利用するには不備がある。 全く、人間の精神はなかなか侮れないものがある……こればかりは一つ賛嘆せねばなるま い。 ナーク=ティトの障壁の創造が未だ完璧に行えない今は、一つこの魔術の研究は保留とし ておく事としよう。 二柱の神との交渉が済み次第、この魔術をさらに研究するべきであろう。 人間の精神ほど、利用価値があるものは他には無いであろう。 -------------------------------------------------------------------------------ここで探索者が床下の収納口の入り口を開けると、中にはツァトゥグァの無形の落とし子 が潜んでおり探索者達に襲いかかる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 床下の収納口に潜むそれは、まるでここに来る主以外の誰かがここを開けるのを待ってい たかの様だった。床下の収納場所にみっちりと詰まるように入っていたそれは、光が差し 込んでくるのを確認したかの様にギラギラとした光を発する目を幾つも見開くと、見下ろ すあなたに一斉に目を向けた。 そして次の瞬間には体の一部を鎌首のように変形させ、杭のような歯を生やした大きな口 が、見下ろすあなたに目掛けて噛み付いてきた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ハオン=ドルの無形の落とし子 STR:26 DEX:18 INT:14 アイデア:70 CON:10 APP:- POW:18 幸 運:90 SIZ:20 SAN:- EDU:- 知 識:H P:15 M P:18 回避:36 ダメージボーナス:+2D6 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [技能] 隠れる:50% 忍び歩き:50% [呪文] <破壊(クトゥルフ神話 TRPG P277)> ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 ムチ 90% ダメージ:1d6 または組み付き 触肢 60% ダメージ:2D6 打突 20% ダメージ:2d6(どちらか大きいほう) 噛み付き 30% ダメージ:特殊 ・防具 物理的な武器からは影響を受けない。魔力を付与されている武器であっても影響を受けな い。 呪文は影響を与える。また火、化学薬品などの影響も受ける。 [正気度喪失] 1/1D10 -------------------------------------------------------------------------------本来であれば、この状況はただのデストラップである。しかしここでも探索者を不用意に 死なせてはいけない。ここで襲われた探索者に回避をさせるくらいのチャンスは与えて やってもよい。 本を入手させたら、可能な限りこの場から退散させるようにする。 探索者のアイディア次第では、この家を燃やしたり、囲炉裏の燃えカスを使って落とし子 を撃退させる事も出来るかもしれない。その場合、そちらの案も採用させても構わないが、 家を燃やす行為はあまりお勧めできない。可能な限り、探索者を家から追い出すようにす るべきである。 探索者が家の外へ出ると、落とし子はまるで巣穴を守る蛸のように家から出ようとしない。 それ以上は追ってこないことが解る。 仮に探索者が落とし子の撃退に成功すると、床下からハンマーを発見できる。 なお、このハンマーはここで入手できなくとも後に入手することができる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ハンマー(杖) 初期技能値:25 ダメージ:3D4+db 1/1R 耐久:10 入手条件:無形の落とし子撃退後の床下 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 9.凶弾 ハオン=ドルの小屋を後にした探索者が外へ出たところでその場に居合わせた全員に<聞き 耳>をさせるとよい。その時遠方から微かに銃声が聞こえてくる事が解る。失敗したとし ても、ハオン=ドルの小屋のまだ近くである為、小屋の窓ガラスが割れた事にして、小屋 に近づいた者全員が標的にされている事を示唆させると良い。 探索者が望むのであれば<アイディア>をロールさせる事も良いだろう。成功すると、窓ガ ラスは外側から割られている事がわかる。<聞き耳>にも成功していれば、その場に居合わ せている探索者全員が狙撃手の標的にされている事を理解するには、想像に難くない。 不用意に大きく動けば、その探索者が狙撃手の標的になる。ここでの目的は、探索者を小 屋へ逆戻りさせるわけではなく、移動に時間をかけさせる事が目的である。 敢えて不用意に動き、狙撃手の標的を逸らす探索者ももしかしたら居るかもしれない。凶 弾を食らった探索者は、飛んできた方向が解った事にしてもよい。 この時、ルールブック記載の射程距離より遠方からの狙撃によるものである為、ダメージ 計算は 2D6 となる。双眼鏡を所持し狙撃手の位置を確認しようとした探索者がいた場合、 狙撃手から見て探索者が東方面に居たならレンズの反射でたちまち発見されてしまう。 狙撃手が探索者を標的にする優先順位は 位置を探る>=走る・大きく動く>姿勢を低くして移動する>動かない・隠れている といった優先順位となる この銃声は、分断して他の場所の探索を当たっている探索者も、場所によっては<聞き耳> 無しでも聞く事が出来るだろう。この時、別働隊が狙撃手の位置を割り出して捜索するか もしれない。その探索者が狙撃手の近くまで来た場合、狙撃手がその探索者に向けて発砲 してくる。一撃目は必ず外す事とし、狙撃手がその探索者の頭部を狙っている事を示唆さ せてやるとよい。 それでも尚且つ追うのであれば射殺するくらいの照準で問題はない。当然だが、近づいた 事によりダメージは通常の田村銃と同じ威力の計算とする。 ここでの狙撃手の所持弾数は 10+1 発である。探索者が好戦的であった場合でも変化はな い。弾を撃ち尽くすと、狙撃手は逃げてどこかへ身を潜める。この時、発砲音から場所を 特定した探索者が足跡を発見するかもしれないが、足跡は小川で途切れ、それ以上の追跡 は出来なくなる(狙撃手は小川から別の道へ逃走した)。 それでもなお探索した場合は、そこで夕刻となり深追いはできなくなる。 また、ハオン=ドルの小屋に向かった探索者達も、志村の小屋周辺へ来た段階で夕暮れが 近くなった事にしても良い。 10.サイレン 懐中時計を持っている者がいた場合、この時の時刻は 17 時を少し過ぎた辺りである。 この段階で、もしかしたら死亡者・もしくは行方不明者が発生しているかもしれない。 吹雪は収まりつつあり、夜中になれば綺麗な夜空を覗かせるだろう。しかしながら風は依 然として強く、晴れ渡った夜空で放射冷却現状が発生、気温は-8℃となり、夜に脱出する 事は依然として無謀である。 ここで大雑把に以下二つの方法の解決策が見出されるかもしれない。 一、田沢湖から自力で脱出する 探索者が戦意を喪失し、田沢湖から脱出する事を提示し、それを実行しようとするだろう。 天候にも恵まれ、日があるうちであれば確実に可能である。 この場合を選んだ場合は通常 END となり、そのままシナリオクリアである。 たまたま田沢湖へ向かっていた猟師に保護され、そのまま町へ戻る事が出来る。その際、 あの不気味なサイレンの音と急激な気温の低下、さらに時間経過と共にひどくなる地鳴り が続きそして地震が発生する。その時田沢湖へ目を向けた探索者は、田沢湖全体が真っ黒 い闇に包まれてゆくのを目撃するだろう。 この時、その光景を目撃した探索者は全員 1D6/1D20 の SAN チェックを行う。 町に着き、その後どうするかは探索者次第である。 シナリオクリアの報酬は、死亡者・行方不明者が居ない場合は 1D8 の SAN 回復となる。 死亡者・行方不明者が居た場合は 1D6 の SAN 回復となる。 黒い仔山羊に攫われた行方不明者は、その後どうなるかは誰の与り知れる所では無いだろ うが結末としてはこうだろう。 攫われた探索者は、魔術師ハオン=ドルの手先となった後、可能な限り知識を詰め込まれ 魔術を習得し、クトゥルフ神話技能は+20%となり正気度は失われる。彼の機嫌を損なわ せる事となった場合、暗黒の中で行われる【ダオロスの召喚】の時、生け贄として捧げら れ異次元へ放りだされる。そこで探索者がどうなったのか、それはその本人にしかわから ない・・・・・・ 二、サイレンを破壊・ハオン=ドルの目論見を阻止 探索者に幾ばかりか戦意が残っており、且つハオン=ドルの目論見を阻止しようと案を提 案しながら翌日に備えるだろう。 ここでの解決案の一部をこちらに記載しておく。 解決案 1:狙撃 探索中に発見できた猟銃または武具(弓)にて遠方より狙撃を行う。障壁の耐久が失われ、 その時ズ=チェ=クォンが召喚された場合、ハオン=ドルとてこの神格の餌食となってしま う事は明らかである。 しかし彼の撃破が直接的な解決策ではない事を忘れてはならない。 解決案 2:サイレンの破壊 探索者がもし<機械修理>の技能を持っていた場合、発動機を破壊する事ができる事にして もよいだろう。また、破壊するに値できそうな武器を発見した場合は、力押しにはなって しまうが同じく発動機を破壊できる事にしてもよい。 こちらの案を実行した場合、ハオン=ドルが報復に来ることは明らかである。 ハオン=ドルとの直接対決になった場合、彼は変異すると同時に神話生物と共に探索者に 襲い掛かってくる事が予想される。当然のように、彼は容赦する事は全く無いだろう。 解決案 3:プレーンの五芒星形の無力化 儀式の直前、ハオン=ドルに気付かれないように探索者が密かにプレーンの五芒星形の形 を変えてしまえば、彼はダオロスを思い通りに召喚できずに次元の狭間へ吸い込まれてし まうだろう。しかしながら、これはハオン=ドル自身が<神話技能>を使っても見破れな かった場合にのみ神格が暴走する可能性があると言うわけであり、相手のミスを祈る事し か出来なくなるだろう。当然、五芒星の効力が失われていると知った時には、【解決案 2】同様、探索者に報復しに来る事は間違いないだろう。 解決案 4:ダオロスと契約を結ぶ CoC らしい結末といわれればそこまでではあるが、非常にリスクが高い解決策である事は 間違いない。用心深いハオン=ドルに近づき、且つズ=チェ=クォンの及ぼす盲目の影響 の恐怖に耐える必要がある。 または何とかハオン=ドルの信用を得て接近し、契約を横取りする策も可能かもしれない。 しかしながら、後者の選択の際、彼は探索者の遺体 1d2 を要求してくるかもしれない。彼 に対して、平和的な<説得>や口先だけの<言いくるめ>、人間社会の下らない<信用>は効力 をなさないであろう。 どちらにしてもこの解決案のリスクは非常に高く、成功の代償は非常に後味の良くない結 末を迎えるだろう。 加えて、契約を結んだ探索者には、望まない宇宙の真理を垣間見る事になる。正気度は失 われ、最早まともな生活を送る事は不可能となるだろう。 以上の四つの案は一例でありこれ以外にも解決案は出てくるだろう。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 以下の内容は、つるはしや<機械修理>を用いてサイレンを故障させた時の描写である。 この段階までにサイレンを故障させていなかった場合、通常通りズ=チェ=クォンは召喚 され、探索者達に甚大な被害が出る可能性がある。 眠りに就く前にあらかじめ障壁を創造しておいた場合、影響は最小限で食い止める事がで きる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 探索者達が眠りについてしばらくしてから、何かを知らせるかのようなサイレンの音が鳴 り響く。 懐中時計を確認すると時刻は明け方の 4 時を回った辺りである。 屋内に居ても、周囲に冷気が漂ってくるのが解る。加えて、水上に居た時には気付けな かった地震も感じ取られる。比較的大きな揺れであろうが建物が倒壊したり地滑りが起こ る程ではない。ここで驚いて外へ出る探索者も居るだろう。その時、湖面に目を向けると、 周囲の暗闇よりももっと深い闇が、田沢湖を覆っている事が解る。すると間もなくして、 水上の時に感じたあの目の痛みを覚えるが、正気度を損なわせる程ではない。ズ=チェ= クォンの影響を多少受けた程度である。 この段階で探索者全員に<聞き耳>をロールさせる。 成功した場合、水上で聞いたあのサイレンの音と少し違う事がわかる。その為か、暗闇は そこまで勢力を伸ばさない事がもしかしたら解るかもしれない。 田沢湖に広がる漆黒の闇を目撃した探索者は 1D3/1D8 の正気度を失う。 そう長くない時間の後、サイレンはふっつりと鳴るのが途絶えるだろう。 -------------------------------------------------------------------------------もしかしたらここで探索者達がサイレン小屋に向かうだろう。しかしながら、明かりが充 分に確保されていない段階での戦闘は非常にリスクが高いが、向かうと言うのであれば止 める必要は無い。探索者がハンマーを所持して居た場合、サイレンを破壊する事が出来る が、その時は工藤との戦闘になる。この時にサイレン小屋へ向かうと、凍傷からか真っ黒 く壊死をした指をそのままにし、無心にサイレンを修理する工藤の姿を見る事となるだろ う。ここでの戦闘は工藤一人だけとなり、攫われた探索者が居た場合、その人物はその場 に居ない。 戦闘に際し、恐らくここで工藤を殺すか気絶させサイレンを破壊するだろうが、明け方に ハオン=ドルが黒い仔山羊と攫われた探索者と共に襲撃を仕掛けに来る。 ここで攫われていた探索者はハオン=ドルの手先となっては居るが、<精神分析>を三回成 功させればその探索者の洗脳を解く事ができる。気絶させられた場合、ハオン=ドルを撃 破しない限りは洗脳が解かれておらず目覚めと同時に探索者達に襲いかかる。 -------------------------------------------------------------------------------11.対決 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ここでの結末は【10.サイレン】にて【二、サイレンの破壊・ハオン=ドルの目論 見を阻止】する場合を選択し、且つ、夜明け前にサイレン小屋へ行かなかった場合 について記載することとする。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 夜が明けると空は晴れ間が見え、日が昇る 7 時以降ともなれば太陽も眩しく輝く事だろう。 しかし依然として風は強く、湖面には多少波が見られる。 探索者がこれまでで<天文学>のロールに成功していた場合、彗星が見られるであろう時刻 が 9 時~10 時の間である事がわかる。ハオン=ドルはその時刻付近に湖面へイカダへ出現 する。 2 時間~3 時間もあれば、探索者達が迎え撃つ準備も整うだろう。 時刻の少し前、時計を確認すると 8 時 45 分を少し過ぎた辺りでハオン=ドルはイカダで湖 面へと姿を現す。 神社から見た場合の距離は、目測で約 200M 距離がある事がわかる。 通常であれば、この距離ともなってしまえば田村銃であれば威力は 1D6+1D8 に下がり、射 撃ロールの際に-40%の補正が掛かってしまう(この補正は弓も同様である)。 しかしながら狙撃の際に<博物学>や<物理学>に成功した場合、マイナスの修正を 20%ず つ打ち消す事ができる。この場合、狙撃手と観測手に分かれた方が都合は良いだろう。 マイナス修正の打ち消しは成功者一人ではなく、技能一つにつきとする。この時、技能 ロールにてスペシャル or クリティカルが発生した場合、+05%づつの補正を加えてもよい。 また、射撃に適切であると判断した技能のロールに成功した場合にもプラスの補正を加え るべきである。 <物理学>のロールにおいては距離の計算も行う為、探索者が両目を使える事が最低条件と なる。同じように、距離を正確に測る為には両目がある事を最低条件とする。 しかし提案の内容によっては、片目が使えなくとも距離を測れる事としてもよい。 戦闘時の対処 狙撃ポジションにもよるが、仮に探索者が狙撃のみに集中した場合、サイレン小屋から見 える範囲であれば工藤が探索者達を狙撃する事になる。この時、洗脳された探索者も狙撃 に加わる事が出来る。しかしこの場合、洗脳された探索者は工藤の観測手にはならない。 洗脳探索者のライフル技能が初期値の場合、ライフル技能に 10%の補正を加える事とす る。これは、洗脳により工藤と感覚を共有する事に由来する。 この時における狙撃手の優先順位は 狙撃探索者>=サイレン破壊組>観測手>隠れる or 何もしない となる 探索者が狙撃とサイレン破壊に分断した時、サイレン破壊側に三人以上探索者が居た場合 に限り、黒い仔山羊を参戦させると良い。その時、探索者側の戦闘能力に注意し、装備や 戦闘技能に乏しさを感じた場合は登場させなくても良い。 この段階になった時、狙撃探索者には一切妨害は入らない事とする。しかしながら、洗脳 探索者がどういった行動をとるかは操作する PC に依存する(自ら洗脳を解除する事はで きない)。 戦闘における終了条件 ハオン=ドルは召喚に際しあらかじめ【ナーク=ティトの障壁の創造】を自身とイカダを囲 むように準備してある。探索者はまずこの障壁を破壊しなければならない。この障壁を破 壊する場合、障壁に対して 5 発の弾丸または矢を命中させる必要がある(ダメージロール は行わない)。 障壁が破壊され、ハオン=ドルに弾丸または矢が命中した段階で、彼は湖に落ち姿を消す。 と同時に、工藤や洗脳探索者の洗脳は解除されその場に倒れ伏し気絶する。従属されてい た黒い仔山羊も呪文が解け、サイレン小屋を破壊した後轟音と共に倒れその場で朽ち果て てしまう。 ※狙撃探索者が弾切れを起した場合※ ハオン=ドル撃破前に、探索者が万が一弾切れを起してしまった場合、工藤や洗脳探索者 がそれぞれ 5 発ずつ弾を所持している事にしても構わない。その時、タイムリミットに注 意する事。 12.決着 ハオン=ドルを撃破しサイレンを破壊した探索者達は、ようやく帰路に着く事が出来るだ ろう。魔術師を撃破した事により工藤の洗脳は解けるが、手足は酷い凍傷にみまわれてお り、命が助かるには壊死した部分の切断以外に方法は無い。猟師としては当然復帰する事 は不可能である。 イカダに乗せられ放置されているであろう、プレーンの五芒星とダオロス像の処遇は PC 達に任せる事とする。イカダはそのまま放置しても問題は無い。 イカダを回収すると、ハオン=ドルの物であろう鮮血と彼が所持していたナイフが一本落 ちている。湖に落ちた彼の生死は不明のままとなる。 しばらくすると、山道を抜けて陸軍が到着する。兵士の話では、早朝にフライトをした飛 行士から、湖上に不穏な真っ黒い影が見えた為であると説明をうける。彼らはその様子を うかがいに来た斥候隊である。また、災害発生として以下の法令を発動させても良いだろ う。この法令の詳しい概要は<法律>技能が 45%以上所持している者が居た場合、自動成 功でも構わない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 師団司令部条例(明治 21 年 5 月 12 日勅令第 27 号) 師団管区内の府県知事から「地方の静謐を維持する」ために請求を受けた場合、直ちに応 じ、後に陸軍大臣、参軍(後の参謀総長)に報告をする。また、府県知事が請求できない 場合には、師団兵力を以って便宜実施することが出来る。 (つまり、師団長の権能には、師団管区内の軍隊の統率・教育などの軍務と共に、災害出動が あったと思われる) この勅令が発動された歴史事象例: ・濃尾地震(明治 24 年) 名古屋の「第 3 師団」が、岐阜県下に「軍医数名」を、名古屋市内には歩兵第 6 連隊、 19 連隊、工兵隊を、愛知県西枇杷島郡には工兵隊を派遣して、警備救護及び消防活動に あたらせています。 ・明治三陸大津波(明治 29 年) 仙台の「第 2 師団」が、被災地に、軍医、憲兵、公平隊を派遣して、警備救護及び遺体 の捜索回収活動にあたらせています。また、海軍も「龍田」「和泉」の軍艦を派遣、沖合 いの流出遺体の捜索回収作業に従事しています。 ・関東大震災(大正 12 年) 長門が東京の救援に駆けつけるとき(救援物資を積み込むためです)、軍事機密であった 最大速度を出していたため、後をつけていたイギリスの巡洋艦に機密を暴露せざるを得な かったと言うエピソードがある。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ここで探索者達が、湖面のイカダを回収しなかった場合、アーディファクトは軍が回収し てしまう。後に探索者達がこれを譲って欲しいと願い出ても、探索者の手に渡る事は決し て無い。一度帝国陸軍の手に渡ったら、それがどうなるのかは探索者の知る所ではない。 軍の兵士に率いられ田沢湖を後にすると、道中には軍が既に平地に一個中隊ほど陣をしい いている。探索者達はそれを尻目に角館へと帰還する。 13.後日談と生還報酬 探索者がクニマスを持ち帝都へ帰還し新山の元へ訪れるだろう。または、手ぶらで新山の 元へ行く事になるかもしれない。 彼女に一連の事件のことを話しても、多少の理解は示してくれるが結局ははぐらかされて しまう。 「……ふむ……忘れなさい。それはあなた達が見た、ただの悪い夢よ」 しかし探索者の誰かが彼女に対し<心理学>を行った場合、彼女が単純に煙に巻いただけで 探索者の遭遇した悪夢について何か知っているかもしれないといった印象を持つ程度に留 まる。とは言え、新山自身は実際にこの事件には一切関わっておらず、彼女の知る所には 拠らないといった事実しかないわけではある。 新山の元を尋ねた場合、部屋を後にした探索者全員に<目星>を行わせる。 成功した探索者は、窓辺から差し込む日に照らされた新山龍虎の頭の影が、うねる巨大な 触手に見えた錯覚に陥る。その影を目撃した探索者は 1/1D4 の正気度を喪失する。 もしかしたら、先の錯覚について新山龍虎に問い正す探索者が居るかもしれない。しかし ここでその探索者は、決して一人になってはいけないのかもしれない…… 生還報酬 技能成長 クトゥルフ神話技能に+05% パターン別生還報酬例 ハオン=ドルを倒しサイレンも破壊した(犠牲者なし):1D10+1D6+3 ハオン=ドルは倒したがサイレンは破壊していない(犠牲者なし):1D10+3 ハオン=ドルを逃がしたがサイレンは破壊した(犠牲者なし):2D6+3 ハオン=ドルを倒しサイレンも破壊したが犠牲者が出た:2D8 ハオン=ドルを逃がし犠牲者も出したがサイレンは破壊した:2D6 怪異未解決状態で生還(犠牲者なし):1D8 怪異未解決状態で生還(犠牲者発生):1D6 シナリオ進行ボーナス例 アーカイブ取得ボーナス:1D3/1D4/1D6 クニマスを捕獲し新山龍虎に届けた:1D3 プレーンの五芒星の破壊・ダオロス像の破壊:1D3 ハオン=ドルの生死を確認した:1D3 後日談ボーナス 新山龍虎の正体を暴いた:1D10/1D100 の SAN チェック+成功値 30%ロール失敗で行方不明 参 あとがき ~補足~ 新山龍虎のチョコレートを一人だけ食べた状態で最後を迎えた場合、食べていない者の チョコレートの効果はシナリオクリア後に消失するが、服用したものの効果は持続する。 チョコレートの副次効果案:呪文取得<幻視> この呪文は受動呪文であり自らの意思で発動させる事が出来ない呪文である。 精神がドリームランドと覚醒の世界の狭間で浮遊状態となっている為に発生してしまう呪 いである。 解呪方法はドリームランドへ行く事、またはチョコレートの効果が切れる前に全員がシナ リオ中にチョコレートを服用する事である。 この呪いの効果は、POW*3 のロールに成功すると自身を中心に半径 500m 圏内に居るものの 感覚を 15 秒ほど共有してしまう(共有された側は POW*4 ロール成功で気付ける)。この 呪いの発動は突然発生する。 他と感覚を共有した事により、普通の人間と感覚を共有した場合は 1D3、奉仕種族と感覚 を共有した場合は 1D6~1D12 の正気度を失う(神格とは感覚を共有されない)。この正気 度喪失は、共有した者やその者の見たものにより変動する。 ~最後に……~ ここまで【沈黙の魔道士】を読んで頂きありがとうございます。 今回は 1927 年 1 月の秋田県田沢湖が時代設定と舞台としましたが、シナリオの改変次第 では、現代のどこかでも可能だと思われます。 時代設定や登場させた資料等に私の趣味による部分が非常に多く見られるかと思われます が、時代設定や舞台に応じて変化させるのも良いかもしれません。 読んでいて不備や抜けが見受けられるかもしれませんが、おおめに見ていただければ幸い です。 もし、このシナリオを私以外の誰かが行う時、その時は参加してみたいものです(笑) 繰り返しになりますが、ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。 誰かの手に渡ったとき、よりスリリングな内容になっていますように……… シナリオ作成者:S.Shiina
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