2001 41 No. DECEMBER (財) 国際労働財団 〒101- 0051 東京都千代田区神田神保町3−23−2錦明ビル5F TEL.03−3288−4188 FAX.03−3288−4155 URL:http://www.jilaf.or.jp E-mail:[email protected] ネパールNTUC/JILAF非正規学校・ ワークショップ開催 【94年から始まったJILAFの ネパール児童労働学校プロジェクト】 ネパールには6 才から14才までの児童で正 規の学校に行けない児童が数十万人いるとい う。それらの児童の多くは、親の貧困・無知ゆ 近い3 つの地域では、昨年、日本外務省の「草の るための意見交換を行って、学校運営をスムー 根無償援助」を得て校舎が建設されるまでにい ズに行うためである。各学校関係者から、次年 たっている。地元から深く感謝されており、他 度開校計画についてもそこで確認される。 の地域でも学校建設の要請が行われている。 【正規学校へ編入の努力】 【現場の教師からの熱い要望と期待】 今回のワークショップでも極めて熱心な討論 非正規の学校プロジェクトは、親の様々な理 が行われた。特に現場の教師からは、現場なら 絨毯工場、ホテルなどで過酷な労働に就き、農 由で正規の初等教育学校に行けない児童を対 ではの、様々な期待と要望が表明された。例え 業労働、家事労働を強いられている。ストリー 象にしているため、先ず親の説得から始めなけ ば、開校期間を9 ヶ月から12ヶ月に延長してほ ればならない。開校期間は毎 しいとか、支給されるユニフォームのサイズが 年9 月から翌年5 月までの9 ヶ月 児童によっては合わないので地方に任せてほし 間で、一日約4 時間、正規の学 いとか、冬場の通学のためのセーターを支給し 校と同じ内容で基礎的な読み てほしい、ズボンを支給してほしい、机や椅子 書き、算術、またある学校では の整備をしてほしいなどの要望であった。また、 英語教育、家庭科の教育、音 教師の手当てを上げてほしい、学校建設を増や 楽、ピクニックも行われている。 してほしい、学校教育と職業訓練を結びつけて 教材、文房具、ユニフォーム、 ほしいなどの要望も出された。これらの要望は、 えに売買の対象になって隷属労働を強制され、 ▲ ワークショップ参加者全員で ト・チルドレンも多数存在する。ネパール政府 靴なども支給され、児童が学校に通う嬉しさ、楽 今後JILAFとNTUCで検討していくことになる。 は義務教育制度を課し、また最近「児童労働撲 しさ、誇らしさを知ってもらうことも重視してい ワークショップの最後に、過去1 年間で最も 滅」に関するILO第182号条約を批准し、児童 る。終了後は、親の理解を得て、正規の学校に 優秀な学校と教師に対する表彰が行われた。 労働を10年以内に撲滅すると宣言しているが、 編入する努力が払われている。そのための親の 各参加者から、非正規学校プロジェクトに対す 現実は上記のような児童労働が広範・大量に放 意識向上運動も、教師を含めた関係者の大きな 任され たままになってい る。国 際 労 働 財 団 課題となっている。 (J L IA F)がそのような児童を対象に非正規の学 校プロジェクトを開始したのは7 年前の1994 【学校運営ワークショップ開催】 学校閉校期間の毎年8 月に、NTUCの担当者、 年からであった。ネパールのICFTU加盟組織の NTUC地域組織の責任者、学校の教師を集めて ネパール労働組合会議(NTUC)の強い要請で 学校運営ワークショップを開催している。今年 開始したプロジェクトで、全国に12校を開設し も8月22日∼24日の3 日間、JILAFからの2 名 た。いずれの学校も極めて小規模で、学童の数 を含めた約45名が出席して、カトマンズ郊外の は1 校あたり約50名。教室としてNTUCの地域 ラリットプールで開催された。過去1 年間の実 事務所ビルの一室を借り、運営は教師の選定を 績(正規学校編入児童数の実績を含む)、カリキ るJILAFの支援に感謝の気持ちが述べられ、あ 含めてNTUCがその地方組織および地方行政 ュラム、児童の生活、親との関係など直面した わせて今後も継続してほしい旨の熱い期待が表 府の協力を得て行っている。首都カトマンズに 問題点を報告し合い、それら諸問題点を解決す 明された。 ▲ バクタプール校授業風景 ──➊ 日・韓労使関係セミナー開催 ―労働時間短縮問題をテーマに― 【KOILAF/JILAF共催初セミナー】 政府関係機関、研究機関、マスコミなど、 2001年10月10日、ソウル市内のホテ さまざまな分野にわたった。 (後援:韓国 ルで韓国国際労働財団(KOILAF)および日 労働部、韓国労働組合総連盟、日本労働組 本国際労働財団(JILAF)主催の労使関係に 合総連合会、韓国経営者総協会。) 関するセミナーが開催された。 長(元金属労協議長)、佐藤勝美副理事長 現状を踏まえて、韓国で近年、関心を集め (元労働省労働基準局長)、韓国側から趙 ている労働時間短縮問題に焦点をあてな 千福韓国労働組合総連盟事務総長、李源 がら、マクロおよびミクロの両視点から現 徳韓国労働研究院長と各専門分野を代表 在の課題を分析し、将来展望を探るもの する人選であった。 参加者からは多くの質問が提起され、 【韓国各界より80余名が参加】 ともあれ、韓国労働研究院の李院長に 講師は日本側からJILAFの得本輝人理事 本セミナーは、両国における労使関係の であった。 うに思われる。 予定の終了時刻を大幅に超える盛況であ ▲ 熱心に聞き入る参加者たち セミナー開催に当たっては日・韓の政労 った。得本理事長へのインタビューも含 よると、時短については2000年、労使政 使各団体から幅広い協力を取りつけるこ め、テレビ局の取材もあり、労働問題に で基本合意に至っており、現在、各論の議 対する関心の深さ、日本の経験を参考に 論に入っている段階である。2001年中に したいという熱意がうかがわれるセミナ は具体的実施方法、施行時期等詳細につ ーであった。 いても合意に達し、2002年から段階的に 【週40時間制をめざして】 とりわけ、週40時間に向けての労働時 施行されるとの見通しである。 【深まる日韓交流】 間短縮問題は、韓国では労使政の原則的 10月8 日未明、米国のアフガニスタン な合意がなされているとはいえ、様々な 攻撃が始まった。治安上の問題も懸念さ 問題が残っていることも指摘されており、 れたが、予定どおりセミナーを開催するこ 日本の取り組みについてホットな議論が交 とができ、参加者の足にも大きな影響が とができ、時代のニーズに即応したもの わされた。日本が、政労使の努力のもとに、 出なかったことは幸いであった。本セミ であったことから、80名を超える多数の 多様な関連施策を行いながら実現した40 ナーが韓国国内で一定の評価を得たこと、 参加を得た。参加者は各界から集まり、労 時間制を、韓国がどのように達成しようと セミナーを通して日韓の絆がさらに深まっ 働組合、日系企業、韓国企業、経営者団体、 しているのか、その道程は平坦ではないよ たことを確信した。 ▲ 講演風景 神 保 帳 JIMBOCHO ナマステ・ネパール! て、運営の経験交流を行う会合に出席す ステ」 と挨拶されると、 「ジィもガンバラネ るためであった。ここには、地方労組の バ」 とついホロリとさせられた。 私達がカトマンズを訪れたのは8 月の 幹部、学校運営の担当者、それに教師た 今回の旅では、NTUC (ネパール労働 末だった。街は赤いサリーに着飾った女 ちが集まっていたのだが、その多くは女 組合会議) のバスネット書記長が自ら軽自 性たちであふれており、さながら街中が 性であった。今年の「ベスト・ティーチャ 動車を運転して行動を共にしてくれた。 花園のようだった。聞けば、これは女性 ー」 に選ばれたのは、とても感じのいい若 彼に連れられて、デューバ首相、コイララ がお寺参りをするお祭りの時だと知らさ い女性だった。 前首相、教育大臣らのお歴々にお会いし れた。 カトマンズ近郊の、彼女の出身地のセ て、JILAFプロジェクトへの支援をお願い 今回の旅は、JILAFがネパール全土の ンターを訪れた。休日にも関わらず集ま した。バスネットさんとは政治的な仲間 12箇所で支援しているNFE(非公式教育) ってくれた生徒たちの目はキラキラと輝 である彼らからは、心強い支援の言葉を センターの関係者がカトマンズに集まっ いていた。小さな両手を合わせて 「ナマ 貰うことができた。 ❷── (山田 記) JILAF NEWS LETTER 「ザンビアを担うJILAF招聘者」 回 廊 1998年6月19日の夜、私は、ザンビア行きの英国 (UPND)の候補として立候補する予定であり、現在、活 穐山 一樹 P R O F I L 航空に搭乗するためロンドン・ガトウィック空港内を歩 発な選挙活動を行っている。リアトによれば、選挙活動 いていた。突然、背後から「ブラザー・アキヤマ」と呼ぶ は順調に進んでおり、当選する可能性は高い。労働界 声が聞こえた。振り返って見ると、私のJ L IA F勤務時代 で志を遂げられなかったリアトは、今度は政治の世界で にJ L IA F招聘プログラムで来日したことのあるザンビ あふれ出るような野心を満たそうと考えている。補欠選 ア労働組合会議(ZCTU)のリアト会長代行(当時)が人 挙等での貢献が認められ、現在、UPNDの全国議長代 なつこい笑顔を私に向けていた。リアトは、ジュネーブ 理を務めている。UPND関係者によれば、UPNDが政 でのILO総会に出席した帰路であり、これから始まる 権を取ったあかつきには、大臣就任が有力視されている。 私のザンビア生活を心から祝福してくれた。リアトとは、 まだ、36歳と大変若いため、将来が大変楽しみである。 E あきやま かずき 日本労働組合総連合会(連合) 国際局部長 1968年生まれ、94年連合 事務局入局。同年国際労働財 団出向、97年国際政策局に 復帰。98年6 月、在ザンビ ア日本国大使館に派遣。 2001年9 月、連合国際局に 復帰。 その後の3年2 ヶ月間にわたり、友情を深めることがで ザンビアで大活躍しているJILAF招聘者は他にも多 きた。何度も自宅に招待してくれ、奥さんの手料理を い。ザンビアの民主化における最大の功労者である 振舞ってくれた。私もリアトを自宅に招待し、手料理の チルバ大統領も1989年にZCTU全国議長として カレーライスをご馳走したりした。 JILAFの招聘プログラムに参加している。今度の国会 1998年10月のZCTU大会で行われた役員選挙で、 議員選挙には、JILAF招聘者のムーンデZCTU会長代 リアトは改革派の支持を得てZCTU会長選挙に立候補 したが、僅差で現職のシャメンダに敗れた。リアト支 行もUPND候補として立候補する予定である。 ザンビアの例に見られる通り、JILAF招聘者の中に 持派は、チルバ大統領が反チルバ政権の立場を取るリ は、国家の将来を担う人材も少なくない。私はJILAF アトの会長当選を恐れ、会長選挙に介入したと信じて 勤務時代、招聘事業が大好きであった。仕事を通じ、 いるが、真相はわからない。 世界中の人と友人になれるからである。親日家にな 会長選挙に敗れたリアトは、労働組合の役職を離れ、 ってもらいたいと思いながら、招聘者のお世話をさ 現在は、今年中に実施される見込みの国会議員選挙(大 せていただいた。JILAF・OBとして招聘者がそれぞれ 統 領 選 挙も実 施 予 定 )に有 力 野 党 国 家 開 発 統 一 党 の国で活躍する姿を見ることが最大の喜びである。 研修生便り ⑮ 8 月12日、大荷物を手に、 仲間と絆深まったSILS研修 3 日目に行われた「チームワーク&リーダーシッ シンガポール・チャンギ国際空港 プ」のセッションは、最も印象深い授業の一つで に降り立った。翌日から始まるICFTU−APRO/ あった。コース開始後日が浅く、まだお互いに名 SILS/JILAF上級指導者コース(SILS研修)に 前すら覚えきれていない中、知恵を出し合い、力 参加するためである。 を合わせて1 つ1 つゲームをクリアーしていく。 ※ 第10回目となる今年は、アジア太平洋地域18 蜘蛛の巣のように張り巡らされた網をくぐる「タ ヶ国から28名が参加した。みな歳も近く、楽しい ランチュラゲーム」は最初、到底クリアーできな た。生まれて初めての経験に最初はとまどったが、 1 ヶ月になりそうだ。 いものに思えた。しかし、みんなで議論し、戦略 やがてやみつきになり、シンガポールを去る頃に を立て、協力し合うことによって見事達成。参加 は私の右手はまっ黄色になっていた。 者の心にはすでに「仲間意識」が芽生えていた。 この意識こそ、労働運動に不可欠な「連帯」の心 ことを生かしながら自国で一生懸命労働運動に ではないだろうか。 取り組んでいることと思う。そんな仲間の姿を思 さまざまな国の仲間と約1 ヶ月間生活を共に ▲ タランチュラゲーム。一番上の網をくぐる には、みんなの知恵と力が必要だ。 今、それぞれの参加者は、このコースで学んだ い浮かべると、私も頑張らなければと勇気が湧 し、お互いの文化を学ぶことができたのも収穫 いてくる。 JILAF研修生(NTT労組)鈴木麻美子 であった。インドやバングラデシュの仲間は私に、 ※若手役員を対象に、JILAF、国際自由労連アジア太平 カレーを手で食べることの楽しさを教えてくれ 洋地域組織(ICFTU-APRO) 、SILS(シンガポール大学) が協力して行っているリーダー養成研修。 ──❸ JILAF NEWS LETTER 第6回国際活動家養成コース始まる −第5回研修生は10名が卒業− 11月1 日 (木) 、JILAF会議室にて第6回国際活動家養成コースの 開講式が行われた。 英語研修をベースとして、国・内外の労働運動の知識なども習得し ていく。約1 年間に渡 本コースは労働運動の国際分野で活躍する人材を養成すること る長期研修となるが、 を目的としており、過去5 回に渡る合計41名の卒業生からも好評を 各 単 産 のご 協 力 をよ 得ている。卒業生の中には、国際関係舞台で活躍されている人も ろしくお願いしたい。 尚、第5回研修生は いる。 今回の受講者は、JILAF新スタッフ3 名の他、連合の麻生裕子さん、 10名が卒業し、11月 伊藤豊さん、NTT労組の奥田晃子さん、松田康子さん、清澤祐司さ 20日に終了式が行わ ん、UNIの森川容子さん、ゼンセン同盟の永井幸子さん、自治労の れた。これからの活躍 伊藤公一さん、全国農団労の大谷篤史さんの計12人。来年9 月まで、 に期待したい。 JILAFカレンダー ▲ 国際活動家養成コース 英語クラス風景 (2001年9月∼2001年11月) 9 月20日(木)∼9 月24日(月) 台湾 ● 招聘 ● アフリカ南部チーム 9 月6 日(木)∼9 月19日(水) ● 南米チーム 9 月20日(木)∼10月3 日(水) ● アジア女性チーム 10月4 日(木)∼10月17日(水) ● 中東チーム 10月18日(木)∼10月3 1 日(水) ● 日・韓労使関係セミナー開催 10月10日(水) 韓国 ● ILO/連合/JILAF共催アフリカワークショップへの講師派遣 イタリア 10月22日(日)∼10月26日(金) ● アジア労組研修 11月4日 (日)∼11月10日 (土) ● 総務委員会 11月9 日(金) ● 中国B チーム 11月12日 (月)∼11月23日 (金) ● 第34回理事会・評議員会11月30日 ● ロシアチーム 11月29日 (木)∼12月12日 (水) ● 海外調査 ● 現地プロジェクト ● ヨーロッパ雇用調査 (日本から専門家を派遣して実施したもののみ) ● 中国 (中華全国総工会)労使関係セミナーへの参加 中国 (日)∼11月4日 (日) 10月28日 ● 中小企業組織セミナー (土) ∼12月2 日 (日) 中国 11月24日 ● POSITIVE全国トレーナー会議、学校視察 11月25日 (日)∼12月8 日(土) ネパール 9 月1 日 (土) ∼9 月14日 (土) ジュネーブ、パリ、ベルリン、ブリュッセル ● アフリカ労働事情調査 9 月1 日 (土)∼9 月10日 (火)ケニア、ウガンダ ● 韓国雇用調査 9 月5 日 (木)∼9 月13日 (金) 韓国 ● ネパールJICAプロジェクト開催 11月17日 (土)∼11月26日 (月) ネパール ● 人材育成プログラム ● 各種会議等 ● 第6回国際活動家養成コース開講式 11月1 日 (木) ● ソーシャルアジアフォーラムへの参加 ● 第5回国際活動家養成コース終了式 11月20日 (火) IO NSIDE UT 関連組織等の人事異動のため、JILAF職員の若干の入れ替りがあった。調査広報部の稲垣佳子広報課長が自治労 へ戻られ、新たに支援事業部の明田真澄器材援助課長、調査広報部の井上木綿子広報課員を迎えた。また、本紙の 「研修生便り」でお馴染みの鈴木麻美子さんは、1 年間の研修を終了し、10月より支援事業部支援事業課員となった。 どうぞよろしくお願いします。 インサイド・アウト 世界平和が大きく揺らいでいる昨今の状況のなかで、海外の 労働組合を支援する機会を与えて頂き、身のひき締まる想いで 一杯です。その国の実情をよく理解し、そこで 暮らす人々が何を望んでいるのかを常に念頭 においた活動を行っていきたいと思います。 皆様のご指導、ご鞭撻をどうぞ宜しくお願 い致します。 支援事業部 明田 真澄(あけた ますみ) /ゼンセン同盟より出向 ❹── 出向元では、 「国際」 という言葉とは全く無縁の場所におりまし たので、今月から始まった英語の特訓に齷齪しています。これから、 国境を越えて様々な労働組合の方々と交流で きることを楽しみに、また、その中で、できるだ け多くの情報を橋渡しできたらと思います。ど うぞよろしくお願いします。 調査広報部 井上 木綿子(いのうえ ゆうこ) /自治労より出向
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