ネパールソンギートに親しむ会が公演 インドと中国、チベットと国境を接するヒマラヤ山麓の内陸国ネパール。60 の民族、40 の言語があるというこの国を民族伝統 芸能を通じて知り、急速に衰退しつつある伝統芸能をはじめネパールの文化振興にも役立ててもらおう--日本の市民有志に よるネパールの舞踊、音楽の公演がこのほど行われました。 エキゾチックなのにどこか盆踊りの歌のように懐かしい。ネパール・ライ族の伝統音楽に 合わせて、さまざまな民族衣装を着けた出演者全員が舞台に大きな輪を描いて踊りまし た。「NEPAL in JAPAN 2004 ネパール 民の舞いとの遭遇」の公演が大円団を迎えよう としています。 1 月 31 日、小田急線で町田の次の駅、相模大野駅 近くの相模原南市民ホールが会場です。開場の午 後 1 時 30 分前から、次々とお客さんが入ってきまし た。 この公演を主催したのは「ネパールソンギート に親しむ会日本本部」。ソンギートとはネパール 語で歌と音楽、舞踊が組合わさった伝統的な大 衆芸能のこと。ネパール舞踊研究家で町田市 でネパール家庭料理と舞踊教室「天空の舞い」 を経営する岡本有子さんが代表です。岡本さん はこの公演の企画、演出、舞踊指導、出演…… と大忙しです。 出演したのは、昨年秋に公募して集まった日本 人 37 名と、これも踊りは素人の日本在住のネパ ール人 3 名。それほど広くはない岡本さんのお 店「天空の舞い」や地域の公民館などを借りて練 習をして、公演にこぎつけました。 ふだんは主婦や仕事を持っている一般市民ばか り。約 40 人全員が集まって練習することもむずかし く、少ない人は 3 回しか練習することができなかった そうです。が、舞台は待ってくれません。 公演当日も朝から本番前の最終リハーサル。多彩なネパールの民族芸能から 選んで構成した 12 の演目。岡本さんの舞踊指導にも熱が入ります。開演前「縁 あって集まったみなさんです。楽しんで演じてください」と送り出し、幕が開きまし た。 ネパールの首都カトマンズの起源に ついての伝説をもとにした無言ミュー ジカルや日本にもあった「歌垣」のよう な男女の掛け合いの歌と踊り、収穫 の喜びや自然への讃歌、女たちの踊 り……民族によってリズムや衣装、さ らに仏教、ヒンズー教、イスラム教と いった宗教性も多彩なネパールの伝 統芸能が次々と登場します。 幼い頃からモダンバレエを学んだ岡本さんが、あきたらないもの を感じて民族舞踊に転じたのは大学生のとき。バリ島でバリダン スを学んだのがきっかけでした。1985 年に初めてネパールを訪 れて、山村に伝わる伝統的な舞踊に魅せられてネパール国立大 学舞踊科に留学。多くの舞踊家にも師事して多彩な伝統芸能を 吸収しました。 現在はネパール人の夫君と日本に住み、町田市玉川学園でお店を 経営する一方、ライブ活動や大学でのネパール語講師などの活動 をする岡本さんが、ネパールソンギートに親しむ会結成を呼びかけ たのは、近代化、西欧化の波のなかでネパールでも伝統的な芸能 がどんどん忘れ去られようとしていることへの危機感でした。 「ソンギートは本来、ネパールの村々の人々にとって、 食べたり飲んだり仕事をしたりするのと同じような生活 の一部だったものです」。日本人でも素人でもその民衆 性大衆性は理解できるし、それを通じてネパールの文 化の多彩さ奥深さを知ってもらいたい。そしてネパール で伝統芸能を伝承していくための援助にもつなげたいと 願っています。 午後と夕、2 回の公演は盛況のうちに無事終了。3 名 のネパール人出演者にとっても異なる民族の芸能を演 じたのは自国の文化を知る上で新鮮な経験だったよう です。3 月末には、今回の公演の収益金の一部から伝 統芸能に欠かせない楽器やアクセサリー、衣装の布な どを寄贈するために、岡本さんをはじめ有志がネパー ルを訪ねる予定です。 ネパールソンギートに親しむ会日本本部(事務局:「天空の舞 い」03-5842-1407)主催の「NEPAL in JAPAN 2004 ネパー ル 民の舞いとの遭遇」は 2004 年 1 月 31 日、相模原南市民 ホールで行われました。
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