作業効率の決め手「システム化」

「せいび」誌 2008 年 4 月号掲載
作業効率の決め手「システム化」
作業が思うほど上手く行かない、現場作業者の清掃方法にバラツキがある、効率化を計
りたいなどの場合、思い切って作業のシステム化をしてしまうと上手く行くケースが見ら
れます。今回はシステム化について述べて行きましょう。
システム化の考え方
システム化の考え方は以下のような手順になります。
1.正しいメンテナンス方法の把握
2.メンテナンス上の制約の確認
3.物理的力と化学的力の効率の良い使い方の検討
正しいメンテナンス方法の把握
メンテナンスをシステム化する場合、正しいメンテナンス方法をしっかりと把握する事
が重要であるのは言を待ちません。メンテナンスには使用箇所・素材によってそれぞれ特
徴が異なります。床管理であった場合、ワックスを塗布している場所ではワックスの特性
を十分に把握し、汚れ(この場合は主に土砂になりますが)の除去をどうやって効率的に
行うかが問題になるでしょう。またカーペットでは当然のことながら、タフテッドカーペ
ットやウィルトンカーペットのメンテナンス方法と今流行りのタイルカーペットではメン
テナンス方法も微妙に異なります。石床でも、大理石や花崗岩と陶器・磁器タイル、セラ
ミックタイルではメンテナンス方法が異なってしまいます。トイレのメンテナンス方法も
やはり、他とは違ったものですし、ステンレスのメンテナンス方法やガラスのメンテナン
ス方法もそれぞれ異なります。正しいメンテナンス方法を把握し、実施すれば作業効率や
美観が向上することは間違いありません。勿論皆様はプロですので、ほとんどの事項は理
解しておられるでしょうが、システム化を契機として、もう一度再確認をしてみることも
大いに有用でしょう。
メンテナンス上の制約の確認
メンテナンスには
1.予算
2.時間
3.時間帯
4.人数
5.その他
など様々な制約があります。予算や人数をたっぷり使え、好きな時に好きなだけメンテ
ナンスをするなどと言う夢のような状況は滅多にありませんので、その制約の上で、ベス
トの方法を模索することが非常に大切になります。
物理的力と化学的力の効率良い使い方の検討
汚れを取る為には、物理的力と化学的力を上手く組み合わせる事が重要です。物理的力
の代表は機械化です。その作業が機械化できる場合は機械化してしまった方が宜しいでし
ょう。作業効率が大幅にアップするはずです(但し新しい発明品のようなものは本当に有
効かを確認する必要がありますが)。その次には器具の検討も必要でしょう。例えば、タオ
ルとマイクロクロスでは作業効率が随分異なりますし、米国ではここ数年、マイクロモッ
プが大流行りで、作業効率が大幅にアップすると言われています。また、日本では自在箒
が主に使われていますが、世界的にはダストモップ(写真)が主流で効果、
効率ともに通常の床では大きく異なります。機械、器具の見直しをする
ことで作業が随分楽になることがあります。
化学的力とは洗剤の選択のことです。日本では残念ながら、清掃をする際に、水拭きが
主流になっているケースを見受けますが、これでは化学的な力を借りる事は出来ません。
洗剤を上手く使いこなすには「正しい所に 正しい洗剤 正しい希釈で」が基本です。プ
ロ用の洗剤はおおむね使用範囲は狭く、その代り効果が高いものがそろっていますので、
作業目的、作業効果を十分に把握し、正しい洗剤を選ぶように心がけましょう。
メンテナンス目的の確認
次にメンテナンスの目的を確認しましょう。目的としては
1.作業効率
2.美観
3.消臭
4.衛生性
などが挙げられます。システム化をするのですから、これらがどれも十分に加味されてい
れば言う事はありませんが、主たる目的を再確認することはとても大切です。メンテナン
ス目的を再確認せずにシステム化だけ急いでしまうと、自分たちが思っていたような効果
が挙げられず、期待はずれになってしまいます。尤も、作業の仕方がバラバラでメンテナ
ンスを標準化しようと言う場合にはこの限りではありません。
作業効率を上げる事が目的の場合は上記の物理的力と化学的力の再確認が重要です。美
観が重要な場合、洗剤の正しい選択と、ステンレスや木部の場合などは、ひょっとしたら
保護膜タイプの洗剤を使用すると、美観向上に役立つことがあります。消臭が目的の場合、
バイオ洗剤をメインに考える事になるでしょうし、衛生性が目的の場合、除菌洗剤をメイ
ンに考える事になる訳です。
作業毎のシステム化
システム化には以下のようなものがあります。
床管理、トイレ清掃、客室清掃(ホテルなどの場合)、オフィスビルの日常清掃・・・など
になります。ここでは弊社がこれまで何度か述べてきたトイレ清掃のシステム化を述べて
行きましょう。
例)ⅠA駅のトイレ 臭いが問題 スケジュールとしては 1 日 1 回のトイレ清掃で悪臭を
取りたい。悪臭は男子トイレと女子トイレで便器は和便
対策)この場合、臭いが問題であること、消臭効果を長引かせる必要があるので、バイ
オ洗剤を主力に考える事になります。臭いの元は男子トイレは小便器、女子トイレは和便
の床ですので、便器の内側にはバイオボウルを使用し、床を拭く際にはエコライザーを使
用することにします。その他の部分は美観をそれほど重視していないようで、洗剤のコス
トを考えて、NABC(ナバック=トイレの中性洗剤)は薄めて使う事にします。
トイレ用具は以下のようになります
1.バイオボウル
2.NABC(ナバック)1:4 希釈液
3.エコライザー
4.ボウルスワッブ
5.ユーティリティキット
6.ガラスクリーナー1:64希釈
7.赤タオル(便器用)
8.白タオル(その他用)
9.マイクロクロス(鏡用)
10. 白パッド(スポンジ)
11. バケツ
12. モップ
13. 箒
14. チリ取り
15. フラワークリン
上記の10までをひとまとめにしてしまいます(弊社製キャリーオール=写真)
その他をまとめて、カートに載せてしまいます(写真)。
いつも用具のある場所を一定にしておくために、用具の置く場所を決めておくと便利です。
慣れない人や交代で作業者が変わる場合は清掃のポイントを描いたシール(図)をカートに
取り付けておきます。希釈する洗剤はいつも一定の場所に置き、希釈用タンクで希釈して
おき、作業者がいつでも取り出せるようにしておきます。
小便器を清掃する場合 ①水を流します
.
⑥水
を流
しま
す
②.バイオボウルを M 字を ③.最初の一回だけ、 ④リム(便器の角の部分) ⑤.全体をコスリます。必要で
描くように塗布します ボウルスワップに塗布します は良くコスリます あれば目皿にも塗布します 例)Ⅱ オフィスビルのトイレで作業者が集まらず、作業効率をあげたい。
この場合、洗剤の力を借りて、作業を効率化することにします。トイレで一番時間の掛る
便器の内側にバイオボウルを使用し、その他の部分はNABC(ナバック)の原液を使用
します。床に関しては悪臭がありませんので、NABCをスプレーし、水拭きすることに
します。バイオボウルは非常に効果がありますので、トイレ内の清掃を 2 日毎にします。
トイレ用具
1.バイオボウル
2.NABC(ナバック)
3.ボウルスワッブ
4.ユーティリティキット
5.ガラスクリーナー1:64希釈
6.赤タオル(便器用)
7.白タオル(その他用)
8.マイクロクロス(鏡用)
9.白パッド(スポンジ)
10. バケツ
11. モップ
12. 箒
13. チリ取り
14. フラワークリン
その他、病院の例、ホテルの例など、挙げればきりがありませんが、病院では衛生性を中
心にしたシステム作り、ホテルでは美観向上と清掃箇所が様々に及ぶため、洗剤の絞り込
みなどが重要になります。
ともあれ、システム化は非常に有効です。作るまでは少し面倒ですが、作業が統一される
だけでなく、作業者が無駄な工夫をする余地を排除し、純粋にメンテナンス技術の向上の
みに集中することが可能です。上手いシステムを組めば、作業効率や効果が目に見えて違
ってくるので、モチベーションも向上します。最初にシステム化をされる場合、手慣れた
メーカーや資材業者さんに相談すると良いでしょう。弊社と取引のある資材業者でこうし
た作業に手慣れている人もいます。勿論弊社にご相談下さることが一番うれしい事は言う
までもありません。
さて、3 ヶ月にわたって連載をさせて頂きました。この間の情報が、皆様のお役に立てば
幸甚です。メンテナンスは非常に論理的なもので、理屈の通ったメンテナンス方法は大き
な成果をもたらすものと確信しています。また誌上に手お会いできることを楽しみにして
います。