第27号 1月16日発行

名古屋市立稲西小学校
学
校
通
信
第
稲 西 だ よ り
27
号
平成25年1月16日
一昨日、新成人となった本校卒業生七十余名が集い、稲西学区成人式が催されました。
式典では私にも祝辞を述べる機会が与えられ、次のようなメッセージを贈りました。
私のメッセージが若者たちのアンテナに届くことを願って、裏面には茨木のり子さんの
詩「汲む」を載せさせていただきました。
大人になるって、どういうこと?
わが国では「年齢二十歳をもって、成年とする」という民法の規定によって、二十歳に
なれば大人として認められることになっています。それに伴い選挙権を得たり、飲酒、喫
煙が認められたりします。しかし、それは法律上の決めごとにすぎません。さなぎが羽化
してチョウになるように、二十歳になったとたん、大人としての能力や資質が身につくわ
けではないのです。二十歳を過ぎても幼稚な人間がいる一方で、十代でもしっかりした人
間がいます。この違いはどこから生まれるのでしょうか。いったい大人になるとは、どう
いうことなのでしょうか。
あなた自身が納得できる答えを見つけてください。正解は一つではありません。この問
いかけに対する答えは、あなたの人間的な成長に伴って深められていくことと思います。
親の願い
親にとって、わが子が成長していくことは嬉しいことです。それは同時に子どもが親か
ら離れていくことであり、親にとって寂しいことです。そんな親が願っていることは、わ
が子の幸せです。
この世の中には、偽りの幸せが満ちあふれています。欲望を満たすことが幸せだと思い
込んでいる人も大勢います。コマーシャリズムに振り回されることなく、本当の幸せを見
つけてください。そのためには、「本当の幸せとは何か」と自らに問いかけることが大切
です。そして、その自問自答を繰り返すことが、あなたを幸せへと導いてくれることでし
ょう。
家族をはじめとして、皆さんと縁のある大勢の人たちが皆さんの幸せを願っています。
皆さんが幸せになることは、それらの人たちにも喜びをもたらせてくれます。どうか、本
当の幸せへの道を歩んでください。
(文責:校長
小原一臣)
汲
む
― Y・Yに ―
茨木のり子
大人になるというのは
すれっからしになるということだと
思い込んでいた少女の頃
立居振舞の美しい
発音の正確な
素敵な女の人と会いました
そのひとは私の背のびを見すかしたように
なにげない話に言いました
初々しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき
堕落が始まるのね
隠そうとしても
堕ちてゆくのを
隠せなくなった人を何人も見ました
私はどきんとし
そして深く悟りました
大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶
失語症
醜く赤くなる
なめらかでないしぐさ
子どもの悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇
柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている
きっと……
わたくしもかつてのあの人と同じぐらいの年になりました
たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです