術者目線のオリジナル3Dムービー作成・供覧システムの開発

術者目線のオリジナル3Dムービー作成・供覧システムの開発
発表者:
須永昌代1)
共同研究者:
小原由紀2),大塚紘未2),木下淳博1)
所属:
東京医科歯科大学
1)
図書館情報メディア機構,2)歯学部
〒113-8510 東京都文京区湯島 1-5-45 TEL:03-5803-5307 FAX:03-5803-0379 E-mail: [email protected]
1.はじめに
現在、歯学教育における講義、実習では、ビデオ等
HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)方式を採用し、
術者が見ているままを録画できるように工夫した。
の動画が多用されている。しかし、映像の多くは撮影
②カメラ部:小型軽量であり、オートフォーカス機能
者の目線でのカメラ映像となっており、術者の目線で
を有し、フットペダルでのズーム・ワイド調整が可能
撮影されたビデオは少ない。術者目線の映像を撮影で
など、術者への負担の軽減を目指した。
きれば、術者が見ている映像そのものを多数の学生に
③その他の構成:PC(Dell Precision WorkStation
同時に視聴させることができ、術者の目線で体験させ
た症例を学生同士で討論させることもできる。術者目
線の映像を撮影するための装置として、拡大鏡やヘッ
ドセット等にカメラを取り付けた装置は市販されてい
るが、従来の製品では術者が撮影中の画像そのものを
確認しながら撮影することはできない。また、歯学教
育では、学習の対象物(器具、歯、模型、縫合の手技
等)を学生に立体的に把握させたいことが多いが、ス
ライドや通常のビデオでは奥行きを表現できないため、
T3500 CPU Xeon W3540, WindowsXP Pro 4GB,HDD 250G,
1TB×2)、Graphics(NVIDIA 製 Quadro FX580×2)、
Video capture(Blackmagic design 製 Intensity Pro
×2)、8 インチ液晶モニタ(ZENARC 製 805TSV タッ
チパネル付き×2)、プロジェクタ(ソリッドレイ研究
所社製 Sight 3D U27)、ラック(KIC 製 プロジェクタ
カート(PJ-W 改))
3D ムービーを多人数の学生に見せたい、また移動先
手技の実演が必須となる。しかし、全ての手技を学生
で簡単に使用したいことから、3D プロジェクタとシャ
全員に至近距離で見せることや、教員が教育用にオリ
ッターメガネの組み合わせを採用した。録画・再生に
ジナルの 3D ムービーを撮影することは困難である。
必要な機材一式をラックに収納するオールインワン方
そこで、術者目線の 3D ムービーを簡単に撮影でき、
式にすることで、講義室、実習室、診療室など、場所
講義室の多数の学生に供覧できる装置の開発と活用が
を選ばず使用でき、録画・再生、供覧が可能となった。
歯学教育において有効と考え、術者目線のオリジナル
2-2. システムの使用方法
3D ムービー作成・供覧システムを開発した。また、撮
【録画】術者はヘッドマウントディスプレイを装着し、
影したムービーを学生、教員に評価させて、教材コン
術者目線の立体映像は、そのまま PC に録画される。こ
テンツに応用する可能性を検討した。
のとき、術者は視線をはずすことなく、収録されてい
る画像を確認できており、2つのモニタには、左右そ
2.開発したシステムの概要
開発にあたって、以下の通り目標を設定した。
れぞれのカメラの映像が映し出され、同時に wmv 形式
で録画される。
a.経験豊富な術者の目線での 3D 映像撮影ができる。
b.映像の専門家でない歯学部教員が簡単に編集できる。
c.準備と操作が簡単である(オールインワン方式)。
術者目線映像の録画
2-1. システムの構成
①HMD(ヘッド・マウント・
ディスプレイ)部:処置やデモ
を行っている術者が、視線を外
さずに撮影映像を確認できる
ようにするため、撮影時は両眼
社団法人 私立大学情報教育協会
平成22年度 教育改革ICT戦略大会
術者目線映像
【再
再生・供覧】収録した左
左右それぞれの
の映像を、3DD 用
が分かりやす
係(奥行き)
係
すいかもしれ
れません。
プロジェクタで
で、スクリー
ーンに投影する。シャッタ
ター
・理
理解に効果的
的だと思う。
式 3D メガネを
をかけて見ることで、3D ムービーとし
して
【悪
悪い評価・改
改善点】
視聴
聴することが
ができる。
・長
長く見ている
ると、目がとても疲れると
と思いました
た。
・画
画面の端がと
とても見づらく視界に違和
和感があった
た。
・2
2D でよいと思
思った。片目
目の方が見やすかった。
③教
教員による評
評価(無記名):自由記述
述
【良
良い評価・改
改善点】
・今
今回の映像で
ではあまり立
立体感を感じることができ
きな
かったが、内
か
内容によっては通常のビデ
デオ視聴に比
比べ
役に立つ教材
役
材となると思う。
(プロービングのよう
うな
並行移動する
並
る動作よりも窩洞形成など
どの奥行きの
のあ
(写真は
は学生への供覧
覧時のイメージ
ジ写真です)
3.対
対象と方法
試
試作した術者
者目線 3D ムー
ービーを歯学
学科 4 年生 51 名、
および教員 5 名に供覧し、
名
映像とシステ
テムの評価を
を質
紙調査によっ
って行った。
問紙
る処置)
る
・同
同じ 3D 映像を
を多数の学生
生に体験させるためには有
有効
だと思う。
だ
・何
何でも、では
はなく 3D に適
適するコンテンツを選んで
で活
用すれば有効
用
効だと思う。
・講
講義や実習の
の中で最も効
効果的なポイントで活用す
する
4.評
評価結果
①学
学生による評
評価(無記名)
とよい。
と
・慣
慣れるのに時
時間がかかった。長時間の
の視聴はつら
らい。
5.考
考察
術者目線の
術
3 ムービーは
3D
は、新たな教材
材コンテンツ
ツと
して
て、概ね良好
好な評価を得
得た。しかし、
、長時間の視
視聴
は困難であるこ
こと、実際に
に至近距離で見
見学できるの
のな
良いことなど
どから、コンテ
テンツの内容
容を
らばその方が良
「術
術者目線」や「立体視」が
が効果的な内
内容、たとえば
ば、
複根
根歯・窩洞の
の立体構造の
の把握、熟練者
者の手技に絞
絞る
など、教育効果
果の高い活用
用方法の検討が
が必要だと思
思わ
れた
た。
今後の展望
6.今
今後は、
今
リア
アルタイム 3D 映像による遠
遠隔講義シス
ステ
ムの
の開発、3D スーパーイン
ス
ンポーズ機能を使ったリア
アル
タイ
イム 3D マンツーマン指導
導システムの
の開発、コンテ
テン
ツの
の規格化と e ラーニング
グシステムとの連携を進め
めた
い。
。
②学
学生による評
評価(無記名):自由記述
述
【良
良い評価】
・プ
プローブが手
手前に接近す
する感じが、とてもわかり
りや
す
すかった。
・立
立体的にとら
らえる歯冠修
修復には役立つ
つと思った。
・口腔外科など
どの分野では
は、活用できるのではない
いで
し
しょうか。手
手術などを視
視覚教材で見る
るとき、前後
後関
社団法人 私立大学情報教育協会
平成22年度 教育改革ICT戦略大会
7.謝
謝辞
本取組は、文
本
文部科学省の
の大学教育・学
学生支援推進
進事
業【テーマ A】大学教育推進
進プログラム
ム(平成 21~
~23
年度
度)による補
補助を受けて
ております。
本内容は、第
本
第 29 回日本
本歯科医学教育
育学会学術大
大会
(平
平成 22 年 7 月 23 日:盛
盛岡)にて発表
表しました。