市中肺炎の診療 呼吸器科 澤部俊之 第44回地域医療フォーラム 肺炎とは 肺実質の急性、慢性の感染性炎症をさし、発熱をはじめとする 自覚症状、炎症を示す検査所見、胸部レントゲン写真上の新しい 浸潤影などにより診断される。 診断は 急性呼吸器感染症としての自他覚所見に加えて、胸部レントゲン 写真あるいは胸部CT写真等の画像検査で急性に新たに出現したと 考えられる浸潤影が認められるものを肺炎とする。 市中肺炎とは 一般社会生活を送っている人に見られる肺炎であり、健全な社会 生活を営んでいる健康人に多いが、高齢者あるいは種々の基礎疾患 を有している人々も含まれる。入院中の患者に合併する院内肺炎と 対をなす概念である。 成人市中肺炎診療の基本的考え方 日本呼吸器学会 2000 成人市中肺炎診療の基本的考え方 2000年3月に日本呼吸器学会より発表 ↓ 成人市中肺炎診療ガイドライン 2005年10月に日本呼吸器学会より改訂発表予定 (日本呼吸器学会ホームページでポケット版のdraft公表) 診断 症状 画像 原因微生物 重症度 治療 症例 別府医療センター呼吸器内科 平成16年6月〜平成17年5月(1年間) 入院患者274例中 市中肺炎36例(13.1%) 男性26例 女性10例 17歳〜92歳 平均59.2歳 17歳〜29歳 30歳〜49歳 50歳〜69歳 70歳〜92歳 6例 5例 10例 15例 別府医療センター呼吸器内科 呼吸器感染症の診断手順 全身症状(発熱、頭痛、倦怠感、など) 局所症状(咳、痰、胸痛、呼吸困難) 感染症はあるか? 画像診断(胸部X線写真、CT) 局所症状、身体所見、内視鏡 部位はどこか? 病原微生物の検出 血清抗体価の上昇 病原微生物は何か? 診断 急性上気道炎、急性気管・気管支炎、慢性気道感染症、肺炎、特殊な肺炎、胸膜炎 重症度の判定 患者背景因子 重症度判定基準 性、年齢、臓器障害、防御機能 治療法の選択 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 市中肺炎の症状 80歳以上と50歳未満の肺炎患者における主症状の差異(症状の重複あり) 発熱 悪寒 咳 痰 血痰 呼吸困難 喘鳴 胸痛 そのほか の痛み 意識障害 ショック 倦怠感 ほか 食思不振 消化器症状 80歳以上 (57肺炎) 40 34 27 0 10 1 1 4 3 7 50歳未満 (51肺炎) 45 35 17 6 3 10 2 0 1 1 計 (108肺炎) 85 69 54 6 13 11 3 4 4 8 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 別府医療センター呼吸器内科 市中肺炎の画像 肺炎のX線パターン 大葉性肺炎 X線 所見 区域性陰影 胸水 air bronchogram CT 所見 air bronchogram を伴った均等性陰影 気管支肺炎 間質性肺炎 融合性巣状陰影 (おもに肺底部) 網状小結節性パターン 肺胞性結節 細気管支中心性結節 (おもに肺門周囲) スリガラス状陰影 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 肺胞性肺炎と間質性肺炎のX線学的特徴と原因微生物 病変の場 肺胞性肺炎 間質性肺炎 炎症の場と 陰影の成立要件 肺胞腔内(滲出液が充満) →滲出液がX線を遮断 肺胞壁(細胞浸潤と浮腫) →残存肺胞はX線を遮断 陰影の性状と広 がり 濃厚な均等陰影 局在性 (小葉性,区域性,大葉性) 微細粒状影(スリガラス様) 多くは両側広範囲 (一部は区域性) Airbronchogram あり なし 陰影の融合 起こりやすい 起こらない 発症から陰影の 出現までの時間 短い 比較的長い (間質性陰影の把握は困難) 原因微生物 各種細菌(嫌気性菌を含む) 真菌 細菌・真菌以外の微生物(肺炎マイコプラズマ,ク ラミジア,ニューモシスティス・カリニ,サイトメガロウ イルス) 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 肺胞性パターンと間質性パターンの比較 肺胞性パターン 分布 病変の局在 陰影の形態 陰影の辺縁 融合傾向 陰影の変化 エアブロンコグラム 主な疾患 間質性パターン 限局性,多発性 細葉,二次小葉 びまん症 肺胞隔壁,気管支,肺動脈周囲,肺静脈周囲, 小葉間隔壁 線状,網状,粒状,結節状,蜂窩状 細葉性結節,斑状 鮮明 不鮮明 少ない 多い 遅い 早い なし あり 【急性】粟粒結核,過敏性肺炎,間質性肺水腫 【急性】肺炎,肺水腫,肺出血,肺梗塞, acute respiratory distress syndrome, 【慢性】膠原病,じん肺,サルコイドーシス, (ARDS) diffuse panbronchiolitis(DPB),癌性リンパ管 【慢性】肺腫瘍,肺結核,肺胞蛋白症,肺胞 症,転移性肺腫瘍,間質性肺炎 上皮癌 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 肺胞性パターンと間質性パターンの比較 胸部レントゲン写真 肺胞性パターン 間質性パターン 別府医療センター呼吸器内科 肺胞性パターンと間質性パターンの比較 胸部CT写真 肺胞性パターン 間質性パターン 別府医療センター呼吸器内科 浸潤影の分布と広がり 36例中 1カ所 22例 上肺野 中肺野 28% 19% 6% 2カ所 8例 19% 3カ所 4例 4カ所 1例 下肺野 47% 47% 5カ所 0例 6カ所 1例 別府医療センター呼吸器内科 市中肺炎の原因微生物 病原微生物の統計学的頻度 病原微生物 市中肺炎 院内肺炎 細菌性肺炎 70~80% >90% 肺炎球菌 インフルエンザ菌 レジオネラ属 黄色ブドウ球菌 グラム陰性桿菌 嫌気性菌 マイコプラズマ クラミジア その他 5.1~75% 1.3~12% 0~16.2% 1~5.8% 4.5~10% 0~2.5% 0.5~37% 4.6~48.5% 1~2% 3~15% 6.4~10% 0~25% 10~20% 31.3~66.4% 10% まれ まれ ウイルス性肺炎 8~36% まれ インフルエンザウイルス その他 4.5~9% 2~8% 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 初期治療に役立つ微生物検査 Ⅰ.外来、ベッドサイドでも実施可能な簡便な検査 1)塗抹鏡検検査(結果が実施者の経験に左右され易い) 1グラム染色 2特殊染色 a.ヒメネス染色 (レジオネラの染色) b.Diff-Quik染色 (BALにおけるニューモシスチス・カリニ) c.ギムザ染色 (ニューモシスチス・カリニの染色) 2)抗原検査(結果が実施者の経験に左右されにくい) 1呼吸器検体を用いるもの インフルエンザウイルス(鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻咽頭吸引液) 2尿検体を用いるもの 肺炎球菌 (ICA法) レジオネラ(ICA法) Ⅱ.手技が煩雑、あるいは特定の機器、施設が必要な検査 1)塗抹鏡検検査 2)抗原検査 3)遺伝子検査 Ⅲ.培養検査 病原微生物検査のゴールデンスタンダードである 迅速性に欠けるが、菌の同定、薬剤感受性、疫学調査などに有用 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別 鑑別に用いる項目 1.年齢60歳未満 2.基礎疾患がない、あるいは、軽微 3.頑固な咳がある 4.胸部聴診上所見が乏しい 5.痰がない、あるいは、グラム染色で原因菌が証明されない 6.末梢血白血球数が 10,000/μL未満である 鑑別基準 上記6項目を使用した場合 6項目中4項目以上合致した場合 非定型肺炎疑い 6項目中3項目以下の合致 細菌性肺炎疑い この場合の非定型肺炎の感度は77.9%、特異度は93.0% 上記1から5までの5項目を使用した場合 5項目中3項目以上合致した場合 非定型肺炎疑い 5項目中2項目以下の合致 細菌性肺炎疑い この場合の非定型肺炎の感度は83.9%、特異度は87.0% 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 原因微生物 判明率14例/36例 (39%) 肺炎球菌 マイコプラズマ インフルエンザ菌 不明 クレブシエラ 黄色ブドウ球菌 緑膿菌 その他の細菌 別府医療センター呼吸器内科 市中肺炎の重症度 肺炎の重症度分類 1. 胸部X線写真および身体所見による肺炎の重症度判定 軽症 判定項目 胸部X線写真陰影の広 がり 体温 脈拍 呼吸数 脱水 中等症 重症 5項目中3項目以上満足 1側肺の2/3以上 5項目中3項目以上満足 1側肺の1/3まで <37.5℃ <100/分 <20/分 (-) 軽症と重症のいずれにも 該当しない (-) or (+) ≧38.6℃ ≧130/分 ≧30/分 (+) *:チアノーゼや意識レベルの低下を認める症例,およびショック状態(収縮期圧90mmHg以下あるいは拡張 期圧60mmHg以下)にある症例は上記判定項目とは関係なく重症と判定する。胸部単純X線所見の分類は後 記の基準を参考とする。 成人市中肺炎診療の基本的考え方 日本呼吸器学会 2000 呼吸数 (回/分) 〜19 20〜 29 30〜 未施行 9名 10名 1名 16名 あり なし 不明 3名 9名 24名 脱水 別府医療センター呼吸器内科 肺炎の重症度分類 2. 検査成績による肺炎の重症度判定 軽症 判定項目 白血球 3項目中2項目以上満足 <10,000/mm3 CRP Pao2 <10mg/dl >70torr 中等症 重症 軽症と重症のいずれ にも該当しない 3項目中2項目以上満足 ≧20,000/mm3あるいは <4,000/mm3 ≧20mg/dl ≦60torr Spo2≦90% 成人市中肺炎診療の基本的考え方 日本呼吸器学会 2000 別府医療センター呼吸器内科 市中肺炎の重症度分類 身体所見、年齢による肺炎の重症度分類 使用する指標 1.血圧 (収縮期)90mmHg以下 2.SpO2 90%以下 (PaO2 60Torr以下) 3.BUN 21mg/dl以上または脱水あり 4.意識障害 5.男性70歳以上、女性75歳以上 重症度分類 軽 症: 上記5つの指標の何れも満足しないもの 中等症: 上記指標の1つまたは2つを有するもの 重 症: 上記指標の3つを有するもの ただし、意識障害、ショックがあれば1項目のみでも重症とする 超重症: 上記指標の4つまたは5つを有するもの 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 重症度現基準 軽症 中等症 重症 9名 9名 18名 重症度新基準案 軽症 中等症 重症 超重症 16名 12名 4名 4名 別府医療センター呼吸器内科 ICU入室率 4例/36例 11.1% →新基準案の超重症例に一致 死亡率 2例/36例 5.5% →有治療で5%、無治療で30%の死亡率とされる 胸部CT施行率 35例/36例 97.2% →いかに有用な検査かが推測される ほとんど緊急CTであり放射線科に感謝 別府医療センター呼吸器内科 合併疾患 慢性の呼吸器疾患 脳神経疾患 糖尿病 13例 5例 6例 酸素投与 15例に必要 (42%) 4例は挿管 在院日数 2日〜68日 平均16.1日 別府医療センター呼吸器内科 市中肺炎の治療 患者状態に応じた市中肺炎での第一次選択薬の処方例 患者状態 軽症肺炎 中等症 重症 処方例(代表例のみ) 経口 注射 若年者 アモキシシリン・クラブラン酸1.125~1.5g,分3~4 または セフカペン・ピボキシル300~400mg,分3 スルバクタム・アンピシリン3~6g,2分 高齢者 アモキシシリン・クラブラン酸1.125~1.5g,分3~4 または セフカペン・ピボキシル300~400mg,分3 または トスフロキサシン450~600mg,分2~3 スルバクタム・アンピシリン3~6g,2分 または セフトリアキソン1~2g,分1 若年者 トスフロキサシン450~600mg,分2~3 スルバクタム・アンピシリン3~6g,2分 または セフトリアキソン1~2g,分1 高齢者 トスフロキサシン450~600mg,分2~3 スルバクタム・アンピシリン6g,2分 または セフトリアキソン1~2g,分1 パニペネム・バタミプロン1~2g,分2~4 または セフォゾプラン2~4g,分2~4および エリスロマイシン1,500mg,分3 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 原因菌別の市中肺炎治療薬の処方例 起炎菌(耐性型) 処方例(代表例のみ) 経口 注射 肺炎球菌 (PSSP) (PRSP) アモキシシリン0.75~0.1g,分3~4 トスフロキサシン450~600mg,分2~3 または セフカペン・ピボキシル300~450mg,分3 アンピシリン2〜4g,分2 アンピシリン4g,分2または パニペネム・ベタミプロン1〜2g,分2~ 4 インフルエンザ菌 (BLPAR) (BLNAR) アモキシシリン・クラブラン酸1.125~1.5g, 分3~4 レポフロキサシン300~400mg,分2~3または セフカペン・ピボキシル300~450mg,分3 スルバクタム・アンピシリン3g,分2 ソフトリアキソン1〜2g,分1 モラクセラ カタラーリス アモキシシリン・クラブラン酸1.125~1.5g,分3~4 スルバクタム・アンピシリン3g,分2 クレブシエラ セフボドキシム・ブロキセチル酸200~400mg,分2 セファチアム2〜4g,分2 黄色ブドウ球菌 アモキシシリン・クラブラン酸1.125~1.5g,分3~4 スルバクタム・アンピシリン3g,分2 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 具体的処方例 病原微生物 処方例 経口 注射 マイコプラズマ クラリスロマイシン 400mg/日 アジスロマイシン 500mg/日(3日間) スバルフロキサシン 200mg/日 ミノサイクリン 初日200mg×1/日 2日目以降100mg×1/日 クラミジア クラリスロマイシン 400mg/日 ロキシスロマイシン 300mg/日 アジスロマイシン 500mg/日(3日間) スバルフロキサシン 200mg/日 ミノサイクリン 初日200mg×1/日 2日目以降100mg×1/日 レジオネラ クラリスロマイシン 400mg/日 エリスロマイシン1,000〜2,000mg/日 レボフロキサシン 300〜600mg/日 エリスロマイシン 500mg×3/日 コクシエラ・ バーネッティ クラリスロマイシン 400mg/日 ミノサイクリン 初日200mg×1/日 2日目以降100mg×1/日 インフルエンザ ウイルス オセルタミビル 150mg/日(5日間) ザナミビル 20mg/日(吸入)(5日間) 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 抗菌薬とその作用機序 抗菌薬 作用部位および機序 ペニシリン薬 細胞壁合成阻害 特徴 架橋酵素の阻害 マイコプラズマ,リケッチア,クラミジア,レジオネラには無 効 セフェム薬 細胞壁合成阻害 架橋酵素の阻害 マイコプラズマ,リケッチア,クラミジア,レジオネラには無 効 カルバペネム薬 細胞壁合成阻害 架橋酵素の阻害 マイコプラズマ,リケッチア,クラミジア,レジオネラには無 効 グリコペプチド薬 細胞壁合成阻害 架橋酵素の基質の末端と結合し,架 グラム陰性桿菌には抗菌力弱い 橋を阻害 ポリエン薬 細胞膜障害 細菌の細胞膜のエルゴステロールと 腸管吸収悪い 結合,膜を不安定化 マクロライド薬 蛋白合成阻害 リボゾーム50S亜粒子に結合 マイコプラズマ,リケッチア,クラミジア,レジオネラには有 効 細胞内・組織移行性良好 テトラサイクリン薬 蛋白合成阻害 リボゾーム30SとmRNAに結合 リケッチア,クラミジア,マイコプラズマに有効 アミノ配糖体薬 蛋白合成阻害 リボゾーム30S亜粒子に結合 嫌気性菌には無効 クロラムフェニコール 蛋白合成阻害 MRNAに結合した70Sリボゾームの ミトコンドリアでの蛋白合成も70Sリボゾームで行われる 50S亜粒子に結合 ので,選択毒性低くなる DNA gyraseの阻害 レジオネラ,クラミジア,マイコプラズマ,結核菌,非定型 キノロン薬 核酸合成阻害 抗酸菌などに有効なものあり 呼吸器病 New Approach 6 肺感染症 2002 抗菌薬使用に関する新しい考え方 耐性化対策 1. カルバペネム、ニューキノロンをエンピリック治療の 第一選択としない 2. 抗菌薬は十分量を使用し、短期間の使用を実行 3. 推奨抗菌薬は記載順の使用が望ましい。しかし、抗菌 力は記載順の後のものほど強い PK/PD (pharmacokinetics / pharmacodynamics) を考慮した抗菌薬の投与 薬剤感受性を中心とした考え方に加え、体内動態と薬剤特性を 考慮した投与法が推奨される PK/PDパラメータから抗菌薬の効果や副作用を予測 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 細菌学的効果を予測するための薬剤ごとのPK/PDパラメータ 抗菌効果 PK/PDパラメータ 抗菌薬の種類 濃度依存性殺菌作用と 長い持続効果 AUC/MIC or Peak/MIC キノロン、アミノグリコシド、 ケトライド、アムホテリシンB 時間依存性殺菌作用と 短い持続効果 Time above MIC ペニシリン、セフェム、カルバペネム クリンダマイシン、マクロライド オキサゾリジノン、フルシトシン 時間依存性殺菌作用と 長い持続効果 AUC/MIC アジスロマイシン、ストレプトグラミン テトラサイクリン、フルコナゾール 持続効果 PAE、sub-MIC effectなど 戸塚恭一.日本内科学会雑誌.2003;92:2189. 抗菌薬の投与スケジュールと血中濃度 1日1回 10 血中濃度 1日6回 1日2回 8 1日3回 10 8 6 6 4 4 2 2 MIC MIC 0 0 0 6 12 時間 18 24 0 6 12 18 24 時間 (戸塚恭一) 抗菌薬の使用開始時期 診断後速やかに抗菌薬の使用を開始する。かつては 受診後8時間以内の使用開始が求められていたが、 最近は4時間以内の使用開始が奨められている。 治療効果の判定時期と主な判定事項 1. 3日後の判定 初期抗菌薬の有効性の評価 (重症例は2日) 2.7日以内の判定 有効性や終了時期の評価 3.14日以内の判定 終了時期や薬剤変更の評価 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 抗菌薬投与終了時期の目安 1. 2. 感染防御機能が正常と考えられる場合 (明らかな基礎疾患が無い場合) 下記効果判定基準4項目中3項目以上を満たした場合 感染防御機能が冒されていると思われる場合 (基礎疾患がある場合) 下記判定基準4項目中3項目以上を満たした4日後 効果判定の指標と基準 1. 2. 3. 4. 解熱 (目安 37℃以下) 白血球増加の改善 (目安 正常化) CRPの改善 (目安 最高値の30%以下へ低下) 胸部X線陰影の明らかな改善 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 点滴静注から経口投与への切り替え時期 米国感染症学会のガイドライン (2003)では以下の状態になった場合に、経口薬に変更できる としている。 1) 臨床的改善 2) 薬物摂取が可能 3) 血行動態が安定 4) 胃腸管が機能 入院患者において注射薬から経口薬へのスイッチが必要か、有用か、については未だ問題が ある。 退院時の目安 一般的には抗菌薬を終了した時期と考えて良い。基礎疾患のない患者では、注射薬を内服薬 に変更して、早めに退院させることも考えうる。 米国感染症のガイドライン (2003)では 1) 解熱していない (37.8℃以上) 2) 脈拍数100/分以上 3) 呼吸数24/分以上 4) 収縮期血圧90mmHg以下 5) 酸素飽和度90%以下 6) 経口投与不可能 上記の2つ以上が残っている場合には退院できないとしている。 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 各種肺炎に対するステロイド、免疫グロブリン、G-CSFの使用 Ⅰ 細胞外増殖菌による細菌性肺炎の場合 ステロイド 抗炎症作用により、重症肺炎に対する有効性が期待される。 免疫グロブリン オプソニン化による重症肺炎への有効性の期待 G-CSF 好中球減少時 (500/ul以下)に適応 Ⅱ 細胞内増殖菌による細菌性肺炎の場合 ステロイド 抗炎症作用によるガス交換能の改善を期待 免疫グロブリン 有効性は期待できない Ⅲ マイコプラズマ、クラミジア肺炎の場合 ステロイド 重症例で有効性を期待 免疫グロブリン 有効性は期待できない Ⅳ ウイルス性肺炎の場合 ステロイド 重症例に対し短期間使用 免疫グロブリン 重症例に有効性を期待。ただし、サイトメガロウイルス肺炎では 有効性が証明されている。 細菌性肺炎にステロイドを使用する場合の注意点 1. 推定原因菌に有効な抗菌薬が使用されていること 2. 肺炎発症4日以内に使用開始のこと 3. PaO2 60Torr以下の場合 4. 7日間以内の使用に限ること 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 肺炎の一般療法 適正な抗菌化学療法 + 環境 脱水 低アルブミン血症 安静 保温 輸液 栄養管理 (経口、経静脈) 低酸素血症 感染対策 呼吸管理 スタンダ ードプレ コーション 感染経路 別対策 基礎疾患 合併症 診断 治療 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 成人市中肺炎初期治療の基本フローチャート 肺炎の重症度 軽症 中等症 外来治療 治療の場の目安 検査結果 原因菌不明 肺炎の群別 細菌性肺炎疑い 治療の目安 外来 AMPC ABPC/BL-I 入院 ABPC/BL-I注射薬 セフェム系注射薬 カルバペネム系注射薬 超重症 入院治療 肺炎球菌尿中抗原検査 (必要によりインフルエンザ ウイルス抗原、レジオネラ抗 原検査) 検査の目安 重症 ICU治療 肺炎球菌、レジオネラ尿中抗 原検査 (必要によりインフル エンザウイルス抗原)グラム 染色 (喀痰) 培養検査 (喀痰) 肺炎球菌、レジオネラ尿中抗 原検査 (必要によりインフル エンザウイルス抗原) グラム染色 (喀痰、その他)培 養検査 (喀痰、血液) 血清検査ならびにストック 原因菌推定 非定型肺炎疑い 外来 ニューマクロライド系 ミノサイクリン (レスピラトリーキノロン) またはケトライド 入院 ミノサイクリン注射薬 マクロライド注射薬 (ニューキノロン注射薬) 肺炎球菌性肺炎 その他の細菌性肺炎 外来 AMPC (高用量経口) ABPC/BL-I (高用量経口) ケトライド (レスピラトリーキノロン) 入院 PC系注射薬 (高用量) セフェム系注射薬 カルバペネム系注射薬 (VCM注射薬) 外来 表に従う 入院 表に従う ICU治療肺炎 カルバペネム系注射薬 + ニューキノロン注射薬 or マクロライド注射薬 ミノサイクリン注射薬 成人市中肺炎診療ガイドラインのポケット版のdraft 日本呼吸器学会ホームページ 2005 ペンマリン ファーストシン ミノサイクリン ワイスタール クラリシッド ユナシンS モダシン チエナム なし ビクシリン ミノサイクリン バズクロス マキシピーム ジスロマック メロペン 使用抗生剤 クリンダシン 併用抗生剤 別府医療センター呼吸器内科 症例 17歳男性 原因 最高CRP 最高白血球 重症度 重症度新基準 在院日数 抗生剤 転帰 マイコプラズマ 4.7 4900 軽症 軽症 5日 ミノサイクリン 治癒 別府医療センター呼吸器内科 43歳女性 原因 最高CRP 最高白血球 重症度 重症度新基準 在院日数 抗生剤 転帰 マイコプラズマ 7.2 2400 軽症 軽症 5日 バズクロス 治癒 別府医療センター呼吸器内科 28歳男性 原因 最高CRP 最高白血球 重症度 重症度新基準 在院日数 抗生剤 転帰 マイコプラズマ 6.6 9700 軽症 軽症 8日 バズクロス+ ミノサイクリン 治癒 別府医療センター呼吸器内科 24歳男性 原因 最高CRP 最高白血球 抗生剤 転帰 不明 24.8 18800 モダシン+クラリシッド 治癒 気管支肺炎 重症度 重症 重症度新基準 中等症 在院日数 11日 →メロペン+クラリシッド 別府医療センター呼吸器内科 92歳男性 原因 最高CRP 最高白血球 抗生剤 転帰 細菌性 重症度 25.8 重症度新基準 16100 在院日数 メロペン→チエナム→他 死亡 嚥下性肺炎 重症 超重症 46日 別府医療センター呼吸器内科 46歳女性 原因 最高CRP 最高白血球 在院日数 抗生剤 転帰 インフルエンザ菌 BLNAR 28.2 19000 重症度 重症 20日 重症度新基準 超重症 メロペン+ミノサイクリン→バズクロス+クラリシッド→他 治癒 別府医療センター呼吸器内科 63歳女性 原因 最高CRP 最高白血球 在院日数 抗生剤 転帰 黄色ブドウ球菌 33.2 重症度 22500 重症度新基準 68日 メロペン→タゴシッド→他 治癒 重症 超重症 別府医療センター呼吸器内科 73歳女性 原因 最高CRP 最高白血球 在院日数 抗生剤 転帰 肺炎球菌 23.9 12500 8日 ユナシンS+クラリシッド 治癒 重症度 重症度新基準 重症 中等症 別府医療センター呼吸器内科 79歳男性 原因 最高CRP 最高白血球 在院日数 抗生剤 転帰 肺炎球菌 33.7 重症度 8000 重症度新基準 25日 チエナム+クラリシッド+ミノサイクリン →メロペン+ブルバトシン→他 治癒 重症 重症 別府医療センター呼吸器内科 59歳男性 原因 最高CRP 最高白血球 在院日数 抗生剤 転帰 肺炎球菌 PRSP 25.9 26000 重症度 68日 重症度新基準 パズクロス+ミノサイクリン→メロペン 治癒 重症 中等症 別府医療センター呼吸器内科
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