今日のお話し シェルターでの衛生管理 • シェルターメディシン • 予防医療 • シェルターでの衛生管理 University of California, Davis Department of Epidemiology 田中 亜紀 群の全体像 群管理 • 群としての全体像を把握する • 1個体への執着は厳禁(個体管理をしない!) • 群全体を踏まえた大きな視野で判断 • 個々の重篤度と群全体の重篤度は別問題 • 個々の管理が改善 • 疾患伝搬を断ち切る • シェルターでは治療困難な重症例を防ぐ シェルターメディシン=総合医療 災害時医療 疫学 行動学 感染症管理 動物の管理/ エンリッチメント 収容数↓ 健康な動物 譲渡数↑ 市民の安全 早期不妊手術 動物虐待 • 猫も犬もシェルターでの問題 ほとんどがストレスが原因 施設の設計 病院内 も同じ 栄養 衛生管理 シェルターとは動物にとって ストレス 一杯 *家族を離れたストレス *知らない所に入れられるストレス *知らない人に世話されるストレス *他の動物がいる *うるさい *ご飯が違う *寝床が違う *逃げたいけど逃げれないストレス 感染症のリスクファクター • • • • • • 動物の出入りが激しい 過密 違う年齢の動物 感染症への感受性の異なる動物 ストレス ワクチン接種不足/ワクチンの防御反応不足 完璧な隔離 • 感染症が発生して・・・ 感染症管理を始めるには • 交通整理 ー人、物、空気の流れ 健康な動物→感染の可能性のある動物 ー動物の区分分け 譲渡可能動物 所有者不明動物 感染の疑いのある動物 罹患動物 予防が最善の治療 • シェルター内の動物間 • 動物と人 • 人と物、器具、物品 • 病原体を減らす • 病原体に打ち勝つ体 疾患の三角関係 宿主;猫 要注意感染症 • ストレス • ワクチン状態 • 正常な防御機構 • 年齢 • その他の身体状態 環境 • ストレス • 感染性因子の量 伝搬経路を断ち切る 病原体 • 毒性 • 感染方法 • 相互作用 • 猫 FVR -結膜炎、鼻水、くしゃみ、 流涎、口内炎 ジステンパーウイルス感染症 猫汎白血球減少症 -下痢、嘔吐、突然死 -発咳、鼻水、神経症状 • 犬 パルボウイルス感染症 -重篤な下痢や嘔吐 ケンネルコフ -発咳 真菌症(人にもうつる) -円形脱毛 病源体 ウイルスのエンベロープ 病気を起こす微生物 • ウイルス(エンベロープあり、なし) 生物と無生物の間 • 細菌(マイコプラズマ、グラム±球菌/桿菌など) • 原虫(コクシジウム、ジアルジアなど) • スピロヘータ(レプトスピラなど) • 真菌(皮膚糸状菌、クリプトコッカス) • プリオン(蛋白質) ・ヘルペスウイルス ・カリシウイルス ・インフルエンザウイルス ・FIVウイルス ・パルボウイルス 細菌 原虫 マイコプラズマ グラム陽性球菌 グラム陰性桿菌 芽胞菌 真菌 コクシジウム ジアルジア 感染症対策 -衛生管理ー 病原体の量を減らす ↓↓↓ ストレス、栄養不良、ワクチン状態が不安定な 動物達を感染症から守る 病原体の侵入経路 • 新しく入ってきた動物 • キャリアー、リード、ベッド、ブランケット • 人(手、衣類)→スタッフ/ボランティア 適切な手段を選ぶ 適切な使い方 動物と人の両方に安全 殺菌方法 • 環境中での生存能力、消毒薬に対する感受性 殺菌効果を最適にするためには、適切な消毒方 法を選ぶことが大事!! • シェルターでは機械的方法と化学的方法 機械的殺菌方法 • 熱、乾燥、紫外線、放射線 • 熱や乾燥=効果的だが猫カリシには効かない • 熱 乾熱(炎、焼烙) 湿熱(オートクレーブ、蒸気)=効果的、 短時間 • ほとんどの栄養細菌、ウイルス:70℃で死滅(パ ルボはさらに高温が必要) • 芽胞菌:121℃で15分 機械的殺菌 • 直射日光や紫外線(UV):ウイルス、マイコプ ラズマ、細菌、真菌 • 天井にUV灯:飛沫感染因子の減少に効果 化学的殺菌 ー良い殺菌剤ー • • • • • • • • 広域スペクトルの殺菌剤 有機物質があっても効果的 様々な環境下で効果的(温度、pH) 他の化学物質と相性が良い(洗剤など) 安全域が高い 腐食性がない 染色性がない 安価 殺菌剤を選ぶ時 • • • • • 対象とする病原体 殺菌剤の特徴 左右される環境要因 利用目的 人と動物に対する安全性、有害作用 シェルターでの衛生管理 プログラムに重要 シェルターでよく使われている消毒薬 殺菌剤を使う時 • 何に効くか ーほとんどの栄養細菌、エンベロープありウイ ルス(エンベロープなしウイルス、真菌、マイコプラズマ、芽胞は 耐性が強い) • 濃度によって、静菌 (微生物の成長を抑制) or 殺菌(微生物を完全に破壊) • 濃度↑ー効果↑ー有害性↑ • 濃度↓ー効果なし • 接触時間(通常10から30分間) • 有機物(排泄物、血液、分泌物など)-特に塩素 • 消毒をする面(凸凹、キズ、穴、木材など) • 温度(多くの消毒薬は低温では効果↓ ベンザルコニウム 次亜塩素酸Na 細菌 (グラム陽性)+ 塩素:水 0.025% 1:200 家庭用殺菌剤 0.05% 1:100 0.1% 1:50 既にきれにしてある滑らかな平 面、医療器具、寝床 無孔材 0.16% 1:32 シェルターで見られるほとんど の病原体に効果的 0.5% 1:10 木材、コンクリートなどの多孔質 腐食性、 マイコバクテリウム 芽胞 エンベロープ有 ウイルス エンベロープ無 ウイルス 真菌 病源体量を減らす 消毒薬塗布の準備 表面の90%以上の細菌を除去 表面はお湯か洗剤で浸す • 製品によっては、少々の汚れでも単独で洗浄作 用あり • ディグリーサーは強力な洗剤 クロロヘキシジン アルコール + + + ± + + ± + - ± ± - ± ± + + ± + - + + ± ± ± + ± ± + 有機物あり 減弱 急激に減弱 減弱 減弱 減弱 石鹸/洗剤 減弱 減弱 ? 減弱 ? 適切な利用法と塗布方法 • 機械的洗浄 ー消毒薬を塗布する前に必ず肉眼的に見える 汚れを取る -有機物があると→殺菌/消毒効果↓ →消毒薬が微生物に届かない ー表面の汚れは完全に除去する (ふく、はく、こする) 衛生管理/洗浄 • • • • Trifectant/ Virkon (グラム陰性)± 塩素の濃度 次亜塩素酸Na (%) + 衛生管理/洗浄 • • • • • • 奇麗な場所から汚い場所へ 高い場所(天井)から低い場所(床)へ 通気孔、角、床の排水溝は最後 洗剤は必ずよく洗い流す 消毒薬を塗布する前に乾かす でも、シェルターではそんな時間はない・・・。 消毒/殺菌 • 消毒薬の選択は、対象とする病原体、環境要 因(pHなど) • 希釈濃度(説明書をよく読む) • 接触時間は大事!!(でも軽視されがち) ーパルボ大発生時、有機物がどうしても取れない • 接触時間が終わったら、消毒薬はよく洗い流す • 動物を入れる前に乾かす • 乾燥は大事なステップ 評価 • 環境の汚染具合を定期的に評価 消毒がちゃんと出来ていない要因 • • • • • • • 消毒薬の選択が間違っている 消毒薬の濃度が間違っている 接触時間不足 有機物質を除去できていない 他の化学物質による不活化 使い方を間違えている 乾燥しきれていない • 掃除後の床の凸凹に残った水分から採取 • 掃除した後でも完全に乾燥できなければ、病 原体はいくらでも増殖。 普段特に注意する点 ケージ • 新しい動物が最初に入る場所 -キャリアー -車両 -検査台 • 新しい動物を扱うスタッフの衣服 • 最近ワクチンを打ったばかりの動物達(2日以内) • 仔犬、仔猫、罹患動物 • ふれあい場所、ドッグラン、運動場所 動物を触らずに! 事務所、フォスターの家、屋外 • 検疫、診断検査、ワクチン接種、予防的治療で病 原体の侵入を最小限に • 汚染されてしまったら・・・・ →かなり積極的な機械洗浄 →屋外であれば、紫外線 →動物の制限(猫ヘルペスウイルス、犬インフルエン ザならば短期間 vs パルボや真菌は?) →家庭でパルボ、真菌→掃除機を一杯、蒸気洗浄 →汚染おもちゃ、ベッド、餌ボール、段ボールは廃棄 感染流行時 • 罹患動物や危険動物を同定、排除 →ジステンパー、犬インフルエンザの場合 vs →エンベロープ無しウイルス →真菌 →コクシジウム →鞭虫 流行時/後の消毒 1.キャリア状態あるいは無症候性罹患動物の同 定/治療/隔離 2.機械的殺菌 3.汚染物処理 -必ず十分に乾かす、可能ならば 直射日光 ーパルボでも十分な機械的洗浄だけで 安全な場所に 掃除した後のケー ジに立てかけたク リップボードの裏 ふれあい部屋 動物運搬用車両 まだ流行したら・・・ • 無症候性あるいはキャリア状態の個体 -FVR、パルボ(発症3日前からウイルス排泄) • 予防薬の使用も考慮 -コクシジウム • 感染していなくても病原体を隠し持っている ー犬のジアルジア 化学的殺菌(流行後) • エンベロープ無しウイルス→ 次亜塩素酸Na(5%家庭用塩素1:32)+ ペルオキシ一硫酸カリウム(Virkon) • 不明病原体→通常の消毒薬+α • 有機物が除去出来ない場合→ (Virkon、ペルオキシ一硫酸カリウム)を 24時間 まとめ • • • • 危険(曝露)個体の同定 危険区域の同定 確実な無菌化の評価 危険区域の閉鎖ーあまり意味がない・・・ *比較的脆弱な病原体には効果的→ 消毒が十分でなれば必要なし *パルボ、真菌→数週間では結局効果なし →掃除の回転が速くなるという効果はあり • 最終確認 シェルターでは • 適切な衛生管理、殺菌で感染性疾患の導入、 蔓延を防げる • 適切な洗浄方法、消毒薬、殺菌剤を選ぶ • 適切な手順、接触時間 • 人と動物の安全性
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