水熱法によるアルミニウム上への二酸化マンガンを 骨格とする複合酸化物触媒膜の作製 Synthesis of oxide catalyst film with MnO2 on aluminum by hydrothermal treatment 近畿大(院) ○山口 真一 近畿大理工 藤野 隆由 Shinichi Yamaguchi, Graduate school, Kinki University Takayoshi Fujino,Faculty of science and technology Kinki University 緒言 1. 2.4 ESCA および XRD による構造解析 酸化触媒能を有する物質は二酸化マンガン、酸化ルテニウ 作製した一次処理皮膜および二次処理皮膜を ESCA(X 線光 ム、五酸化バナジウムなどが挙げられるが、中でも二酸化マ 電 子 表 面 分 析 装 置 、 ESCA-850 、 島 津 製 作 所 ㈱ 製 ) お よ び ンガンは過酸化水素分解作用やダイオキシンの脱塩素反応、 XRD(薄膜 X 線回折装置、RINT2000、理化学電気㈱製)を用い 1) COD などの有害物質除去作用など幅広く利用されている 。 て構造解析を行った。 しかし、従来から粉体で使用されることが多く、その優れた 2.5 触媒能評価 性能を十分に発揮することが難しかった。そこで当研究室で マラカイトグリーン分解を分光光度計により吸光度を測定 は軽量かつ加工性に優れたアルミニウム上に高い硬度・耐食 し、光触媒能評価を行った。光源に水銀ランプ(220≦λ≦ 性を有する化成皮膜を作製し、かつその微細なベーマイト皮 420nm)を使用し、マラカイトグリーン初期濃度 3.5ppm、極 膜にナノスケールの二酸化マンガンを固着させることにより、 大波長 618 nm, 照射時間 60 分, 容量 4 cm3, サンプル面積 8×8 酸化触媒能を持つ皮膜を作製させ、取り扱い上、簡便な機能 mm2 とし、光触媒能評価を行った。 皮膜の作製を行った 2)。しかし、粉体に比べ表面積が劣るた めに活性の低下が懸念される。そこで本研究では二酸化マン 3 ガンと二酸化チタンを複合化させることによって、より一層 3.1 皮膜の構造解析結果 高活性な触媒膜を作製するとともに光触媒能を有する新たな MnO2/TiO2 複合触媒膜の作製を試みた。 実験結果および考察 一次処理において作製した皮膜の XRD 結果を Fig.2 に示し た。作製した皮膜は白色のベーマイト皮膜であることが確認 できた。二次処理において作製した皮膜の ESCA による状態 実験方法 2. 2.1 分析結果を Fig.3 に示した。644.2 eV と 659.9 eV にピークが 一次処理皮膜の作製 確認でき、二酸化マンガンのピークに比べ 1.5 eV ほど高エネ 基板には、アルミニウム板(A1085 材, 25×50×0.4 mm)を使 ルギー側にシフトしていることが確認できた。また、459.9 用し、界面活性剤を用いて脱脂処理を行った後、水熱加圧処 eV と 465.3 eV にピークが見られ、二酸化チタンのピークに 理により硝酸アルミニウム浴中で 483 K (2.0 MPa)の条件下で 比べ 1.1 eV ほど高エネルギー側にシフトしていることが確認 30 分間保持し、Fig.1 に示した簡易型オートクレーブ(ポータ できた。このことより、二酸化マンガンと二酸化チタンがカ ブルリアクターTVS-1 型、耐圧硝子工業㈱製)で水熱加圧処理 ップリングしていると推察される。 を施した。 3.2 2.2 二次処理皮膜の作製 SEM による表面観察および断面観察結果 作製した皮膜の表面観察結果を Fig.4 に示した。花弁状の 一次処理を施した皮膜を過マンガン酸カリウム、シュウ酸 ベーマイト皮膜上に約 10 mm の粒子が確認でき、さらにその チタン酸アンモニウム混合浴中で 483 K (2.0 MPa)の条件下で 粒子上に約 20 nm のナノオーダー微粒子が確認できた。この 30 分間保持し、水熱加圧処理を施した。 ことより、比表面積が増大し、高い触媒活性が期待できる。 3.3 2.3 触媒能評価結果 SEM による表面観察および断面観察 SEM(HITACHI 製 走査型電子顕微鏡 S-4800 型)を用い、 Fig.5 にマラカイトグリーンの分解による光触媒能評 3) 加速電圧を 15 kV に設定し、作製した皮膜の表面観察および 価を行った結果を示した。酸化チタン単独膜 断面観察を行った。 べ、二酸化マンガンをカップリングさせた皮膜はよ に比 り高い触媒活性が得られることが確認できた。これ は二酸化マンガンと酸化チタンをカップリングさせ Mn 2p : 644.2 eV Mn 2p : 659.9 eV ることにより、二酸化マンガンが酸化側の触媒能を Ti2p : 459.9 eV Ti2p : 465.3 eV 補い、活性が向上したものと考えられる。 まとめ 4. 1) 一次処理において硝酸アルミニウムを添加し、 y ti s n et n I 水熱加圧処理を施すことで厚膜のベーマイト皮膜を 作製することができた。 660 2) 二次処理において過マンガン酸カリウムとシュウ 655 650 645 640 635 470 Binding Energy (eV) 465 460 Binding Energy (eV) 酸チタン酸アンモニウム混合浴中で水熱加圧処理を 施すことにより、MnO2/TiO2 複合皮膜の作製に成功 Fig.3 XPS of the electron binding energy of Mn and Ti した。 on the prepared films in secondary treatment 3) 二酸化マンガンと酸化チタンを複合化させること によって、より高活性な触媒膜の作製に成功した。 参考文献 1) 山田亮一:環境触媒ハンドブック, (2001) 105. 2) 藤野隆由, 山口真一:軽金属 , (2006) 56 117 - 120 3) 特開 2005-177572 Fig.4 Scanning electron micrographs of the surface on the MnO2-boehmite films Teflon tube 0.6 ▲ Solution ● : Blank ■ : TiO2 ▲ : MnO2 /TiO2 Test peace (Al) 0.5 ▲ Fig.1 Portable reactor ▲ .s 0.4 b A ● ● ● y its n te n I ● ● Boehmite ▲ 0.3 ▲ ▲ ▲ 0.2 ● 0 ● 10 20 30 40 50 UV : Irradiation time (min) 60 Fig.5 Photocatalytic activity of prepared film 0 20 40 60 Diffraction angle (2θ/deg) 80 Fig.2 X-ray diffraction pattern of the prepared film in primary treatment 455
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