第 5 章(政治システム)の重要用語 ①大統領制 国家元首を国民の直接

第 5 章(政治システム)の重要用語
①大統領制
国家元首を国民の直接選挙により選出する政治システムのことで、日本など議会により首
相を選出する議院内閣制に対立する概念。議院内閣制に比べ、立法府と行政府それぞれの
独立性が高いという点で、権力分立がより徹底された政体。
②連邦共和制(複合的共和制)
君主をもたず(その意味で共和制)、各州の独立性を認め、その連合体として中央政府を位
置づける政体。
③抑制均衡の理論
立法、行政、司法の3権力が、それぞれ独立性をもって相互の権力を牽制し合うことによ
って国家権力の乱用や暴走が防がれるという考え方。アメリカでは、建国、憲法制定時に、
連邦政府の必要性を訴えるフェデラリストたちによって提唱され、これが今日に至るアメ
リカ政治の基本原則となっている。
④アジェンダ・セッティング
大統領が、行政府の長として、自身の望む政策課題やその優先順位づけを積極的にアピー
ルすることにより、政策形成過程、とりわけ議会との関係においてイニシアティブをとる
力能のこと。
⑤政治任命制度
行政機関の高官(日本で言えば各省庁の局長クラスまで、約 3000 人)を大統領が任命する
という人事制度。このことが、行政機関内部における大統領の地位の高さ、官僚機構の流
動性を担保している。
⑥現代大統領制
19 世紀までの大統領が、政治において象徴的役割を担うにとどまる「弱い」存在であった
のに対し、20 世紀、とりわけフランクリン・D・.ルーズベルト以降、行政国家化の進展と
大統領の政策形成へのイニシアティブの強化により、大統領が政策形成過程において強力
な権限を有するようになった今日の政治制度のことを指す。
⑦分割政府
大統領の所属政党と議会の多数党とが異なる政治状態のこと。一般に分割政府においては、
党派間対立の激しい政策課題に関して合意形成が行いにくく、立法過程が滞る傾向が強く
なるといわれる。近年では、1995 年以降のクリントン政権期(第 104~106 議会)、2009
年以降の G.W.ブッシュ政権期(第 110 議会)、2010 年以降現在までのオバマ政権期(第 112
議会)が分割政府であった(→⑭「統一政府」も参照)。
⑧保守主義
一般に保守主義とは、前近代的な伝統的な考え方や制度を重視する政治的立場のことを指
すが、近代以前の歴史をもたないアメリカにおいては、前近代的な守るべき伝統をもたな
い。そのため、アメリカの保守主義は、建国時の自由主義や民主主義を擁護するという点
では対立するリベラリズムと理念を共有した自由主義の一分派であり、自由主義を伝統と
した上で、個人の自由や競争を重視し、これに対する政府の介入を最小限に抑えようとす
る政治的立場のことを指す(→⑨「リベラリズム」も参照)。
⑨リベラリズム
自由と民主主義の擁護という根本理念においては保守主義と立場を同じくしつつも、自由
や民主主義を保証するためには政府による積極的な介入が必要だとする政治的立場。具体
的には、ニューディール以降の政府の介入政策や社会保障プログラムを積極的に擁護し、
その維持・発展を志向する(→⑧「保守主義」も参照)。
⑩大きな政府
経済・社会は自由放任に委ねていたのでは市場の失敗を招く結果となりうまくいかないと
考え、政府による積極的な介入が必要であるとする考え方、政策。具体的には、大恐慌へ
の対策として実施されたニューディール政策による、景気対策としての公共事業、社会保
障の拡充などがある(→⑫「小さな政府」も参照)。
⑪ニューディール連合
1929 年に端を発する大恐慌に対して、1932 年大統領選挙で勝利したフランクリン・D・ル
ーズベルトは、大規模公共事業、社会保障の拡充など、経済・社会への政府の積極的な介
入を行い、これらはニューディール政策と総称された。こうしたニューディール政策を遂
行したルーズベルトやそれを継承した民主党の政治的支持母体となった階層、集団がニュ
ーディール連合である。具体的には、都市部の労働者、製造業者、移民や黒人、南部の白
人、さらには戦後アメリカの中核的産業となった大規模製造業の経営者や労働組合など、
多様な階層、集団から構成されていた。
⑫小さな政府
政府の経済・社会や個人の自由に対する介入をなくし、市場の自由に委ねるべきだという
考え方、政策。1980 年代にレーガン政権によって打ち出された経済政策がその典型である。
レーガン政権は、当時の経済停滞の原因がニューディール政策以来採用されてきた「大き
な政府」にあるとしてこれを批判し、大規模減税や社会保障支出の削減、規制緩和などの
実施を通じて政府介入を排して経済活動を市場に委ねることで経済成長が実現できるとし
た(→⑩「大きな政府」も参照)。
⑬アメリカとの契約
ニュート・ギングリッチ(1995~98 年下院議長)率いる保守派が主導権を握った共和党が、
長年下院議会を支配してきた民主党から多数派の地位を奪還するために、1994 年の議会中
間選挙において掲げた選挙公約、政策スローガンのこと。個人の自由、小さな政府など 5
つの理念と、均衡予算、減税、福祉削減、国防強化など 10 個の具体的な政策からなる。こ
の公約を掲げて中間選挙で勝利し、上下両院で多数派を奪還した議会共和党は、下院議長
となったギングリッチを中心に「アメリカとの契約」の実現をめざし、当時のクリントン
政権と激しく対立した。
⑭統一政府
大統領の所属する政党と議会の多数党とが同じ政治状況のこと。分割政府の逆。一般に統
一政府のもとでは、大統領は、立法過程を制する議会との円滑な関係に依拠して、自身の
望む政策課題を遂行しやすいとされる。近年では、1993~94 年までのクリントン政権期(第
103 議会)、2001~06 年までのG・W・ブッシュ政権期(第 107~109 議会)、2009~10 年
までのオバマ政権期(第 111 議会)が、統一政府の状態であった(→⑦「分割政府」も参
照)。