中国では急速な経済成長とともに、1億人 とも2億人とも言われる富裕層が沿海部を中 心に誕生しました。彼らの消費意欲は高く、 昨今では自動車、住宅といった高額の耐久財 の需要も大きく伸びています。特に住宅への 関心は高く、住宅・住宅関連商品市場は大き く広がっています。そのような状況下、衛生 機器メーカーとして独自の営業戦略で着実に シェアを伸ばしてるのが東陶 (北九州市) です。 国内外のメーカーが価格競争にしのぎを削る 中国市場で、価格競争に与することなく、富裕層をターゲットに徹底した高級路線を 展開し、中国での 「TOTO」 ブランドを確立しています。現在では年間2∼3百万個と 言われる高級衛生機器市場でトップシェアを誇ります。 今回は、同社の大連現地法人「東陶機器(大連)有限公司」を訪問し、松田総経理(社 長)にこれまでのご苦労や中国ビジネスに関するアドバイスなどをお伺い致しました。 大連 進出企業インタビュー Q:貴社 (東陶) の中国事業についてお聞かせ下さい。 A:当社では、中国事業を環太平洋地域戦略の一環と位置付け、拡大する中国市場で のリーディングカンパニーを標榜しています。北京に東陶 (中国) 有限公司を設立 し中国事業を統括するとともに、営業権を集約し、中国国内での販売は全て同社 を通じて行っています。中国各地に設立した現地法人 (工場) は統括会社の傘下に あり、製造に特化しています。我が東陶 (大連) もそのひとつです。 Q:東陶(大連)の現況についてお聞かせ下さい。 A:当社は、1994年に東陶(日本)の中国 国内3番目の工場として設立しました。 100%日本独資(東陶中国75%、三井物 産25%)企業で、主に水栓金具を製造し ております。 当初は中国の低コストを利用した東陶 (日本)向けのOEM工場としてスタート しましたが、現在では生産品の約50% が中国国内向けになっています。中国市 場の拡大もあり、お陰様で業績は順調に 推移しております。 ● 1● 工場内部 Q:進出地として大連を選定 された理由をお聞かせ下 さい。 A:当時進出地を選定するに あたって、いくつかの候 補地を調査しました。中 でも大連は、① 日本と地 理的に近く、海運の面で 非常に便利なこと、② イ ンフラが整備されていた こと、③ 非常に親日的な 工場外観 土地柄で、市政府から熱 心に勧誘頂いたこと、④ 日本語の出来る優秀な人材が多いことなどを総合的に 判断し、当地に決定いたしました。 Q:業務でご苦労されていることは? A:保税 (免税扱い) で輸入した原材料の管理について、非常に神経を使います。保税 の原材料は、それによって製造された製品を輸出することが前提となりますので、 正当に輸出が行われているか、当局は厳しく監視します。 また、現地従業員の意識改革、これも大きな課題です。言われたこと、自分の仕 事はきちんとこなすのですが、例えば工場の通路にゴミが落ちていても、なかな か自分から拾おうとはしない、「それは掃除のおばさんがすること」 となるわけで す。ひとりひとりのちょっとした心掛けで職場が綺麗になり、みんなが気持ちよ く仕事ができる、こういった意識を育てて行くには、粘り強く指導していく必要 があります。ある意味で非常に日本的な感覚ですが、良いものはどんどん取り入 れて行くつもりです。 Q:総経理の大連の印象をお聞かせ下さい。 A:とにかく日本人にとって違和感のない街というのが私の感想です。気候や食べ物 などは言うまでもなく、レストランなどでも一通り日本語が通用しますし、日本 が街に根ざしているといった印象です。 Q:話題は変わりますが、今回のSARSについてどのような感想をお持ちですか? A:我々のところ (大連) では大したこともなく、「ほっとしている」 というのが正直な 感想です。ただ、騒ぎの間は、工場の消毒、従業員の検温、マスクの着用など 色々と大変でした。また、当社は入寮者については全て外出禁止としていた手前、 責任者 (私) 自らゴルフに出かける訳にもいかず、私にとってはそれが最も辛かっ たでしょうか (笑)。ただ、中国ビジネスには疫病というリスクもあると強く認識 できたという点で、良い教訓になったと思っています。 ● 2● Q:今後の事業目標をお聞かせ下さい。 A:とにかく、事業の拡大を図って行きた いとの強い思いがあります。そのため には、中国市場のニーズに合った新商 品を積極的に投入し、大連については、 主力の水栓金具で中国におけるリーデ ィングカンパニーの地位を確立したい と思っております。 Q:中国ビジネスに対するアドバイスを 松田総経理(当日は熱心にご説明頂きました。) お願いします。 A:私は物作りの立場で中国にやって来て おりますので、そういう視点から若干申し上げますと、今後中国に進出するメー カーは、いかにして良い部材を国内で調達できるかが、競争に勝ち残っていくた めの鍵になるでしょう。そのためには自分で足を運び、自分の目で見て、外注メ ーカーなり納入業者なりを確保しなければいけません。同時に、業者を選ぶとい ったスタンスではなく、業者を育てるといった感覚で付き合っていくことも大切 だと思います。 インタビューを終えて いつもながらのジョークを交えてのインタビューでしたが、お話をお伺いして強く 感じたのが、松田総経理は中国での生活、勤務に対して、ポジティブシンキングだと いうことです。 お仕事の傍ら、福岡県人会の会長を務められるなど、ご多忙の身ににも関わらず、 インタビューに応じて頂きまして、本当にありがとうございました。今後の益々のご 活躍並びに、東陶 (大連) の発展を心より祈念いたします。 《会社概要》 東陶機器(大連)有限公司 総経理 松田 良介 大連市経済技術開発区東北二街17号 TEL 0411(762)4383 資 本 金 ● 3● FAX 0411(762)4376 18.91億円 事業内容 水栓金具、衛生機器関連製品・部品の製造、輸入他 従 業 員 日本人7名、現地スタッフ635名(2003年4月現在)
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