P37

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threo-及 び erythro-3-(aryldimethylsilyl)-2-butyl 3,5-dinitrobenzoates
のソ ル ボ リシ ス 反 応 遷 移 状 態の 電 荷 分 散
(高知大理・九大先導研)○香川哲也・加藤秀之・藤山亮治・藤尾瑞枝
Charge Dispersion in Solvolysis Transition State of threo- and erythro-3-(aryldimethyl silyl)-2-butyl
3,5-dinitrobenzoates
1)
Faculty of Science, Kochi Univ., Institute for Materials Chemistry and Engineering,Kyushu Univ.2)
Tetsuya KAGAWA, 1) Hideyuki KATO, 1) Ryoji FUJIYAMA1), and Mizue FUJIO2)
【 序 】 β - ケ イ 素 基 関 与 の あ る β - ケ イ 素 化 合 物 threo- 及 び erythro-3-(aryldimethylsilyl)-2-butyl
3,5-dinitrobenzoates のソルボリシス反応速度を Tsuno-Fujio 式( log(k/k80E) = mcYOTs +mΔYΔ )による溶媒効
果解析から、threo-と erythro-異性体間での電荷分散の程度に違いを見つけた。この原因を調べるため
p-MeO、m-CF3 置換体について異性体間での電荷分散の程度を調べた。さらに ab initio 計算を用いて、
これらの置換基または構造間での各部位の電荷の違いについて検討したので報告する。
【結果・考察】反応速度は電気伝導度法を用いて Ethanol-H2 O 系、Acetone-H2O 系、Methanol-H2O 系、
TFE-H2O 系について測定した。これらのソルボリシス反応速度に Winstein-Grunwald 式 ( log(k/k80E) =
mcYOTs)を適応すると、各溶媒間で分散が見られた。一方、Tsuno-Fujio 式に適応すると単一直線となった。
mc , mΔから反応中心の電荷の大きさ m (= 0.51mΔ + mc)と非局在化の程度 MΔ(= 0.51mΔ/ m)を求めた
(Table1)(erythro -m-CF3 体は良い直線相関が得られていない)。
Table1.!Correlation Analysis of threo- and erythro- (Aryldimethylsilyl)-2-butyl 3,5-dinitrobenzoates
by Eq: log(k /k 80E) = m cY OTs + m ÄY Ä at 55"
Substratea)
X
n
mc
mÄ
m b)
M Äc)
R
Me
Me
H
p -MeO
14
0.21±0.07
0.53±0.11
0.48
0.56
0.995
H
15
0.27±0.06
0.54±0.10
0.55
0.50
0.996
m -CF3
13
-0.01±0.21
0.76±0.38
0.40
0.96
0.864
p -MeO
13
0.26±0.05
0.45±0.09
0.49
0.47
0.994
H
14
0.31±0.05
0.36±0.08
0.49
0.37
0.997
m -CF3 15
0.16±0.09 0.67±0.13
threoa) ODNBz= OC(=O)Ph-3,5-(NO2)2. b) m = 0.51m Ä+m c. c) MÄ= 0.51m Ä/m .
0.50
0.68
0.993
ODNBz
Si
X
Me
H
Me
erythroMe
Me
H
ODNBz
Si
X
Me
Me
H
m 値は erythro 体では 0.48(p-MeO)、
0.55(H)、
0.40(m-CF3)、threo 体では 0.49(p-MeO)、
0.49(H)、
0.50(m-CF3)
であり、この系において置換基によって m 値はほとんど変化しないと考えられる。MΔ値は erythro 体で
は 0.56(p-MeO)、0.50(H)、0.96(m-CF3)、threo 体では 0.47(p-MeO)、0.37(H)、0.68(m-CF3)であった。MΔ
値は H< p-MeO < m-CF3 であり、また threo 体より erythro 体方が大きいことがわかる。一方、60E の速
度定数と置換基定数σ 0 を用いたハメットプロットは、erythro 体では反応定数ρ=-1.8(直線相関
R=0.996)が得られ、threo 体ではρ=-1.6(R=0.999)が得られた。電子吸引基はカチオンを不安定化さ
せるため、ケイ素基全体の電荷量とも考えられる(MΔ値)は小さくなると予想されるが、erythro-と threo
体ともに H、p-MeO より m-CF3 の方が大きくなった。実験結果について非局在化の程度を電荷から検討
するために、ab initio 計算 (B3LYP/6-31G*) を用いて中性とカチオンの電荷を計算した。β-ケイ素の非
局在化をケイ素基全体の電荷(ΔArSi)の移動として見積もった。計算結果からΔArSi は erythro 体では
0.521(p-MeO)、0.500(H)、0.804(m-CF3 )となり、threo 体では 0.539(p-MeO)、0.525(H)、0.714(m-CF3 )
となった。得られた計算結果ΔArSi と実験結果 M Δ の傾向が一致したことより、この系において
Tsuno-Fujio 式がβ‐ケイ素基による電荷の非局在化を定量的に評価していると推定される。
電子吸引基によって MΔが増加した原因については現在検討中である。
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