BIG BANG MAGAZINE インタビュー翻訳 Q. Yuka & Chronoship 結成のいきさつについて教えてください。 A. もともと singer-songwriter で日本でデビューしていた Yuka Funakoshi は 2003 年にコンピレー ションアルバムでインストの曲を作る機会があった。彼女はデビュー当時からインストをやりたがって いたが、日本の音楽業界はインストのアルバムはなかなかリリース出来ない状況にあった。そんな折、 目指していたインストを作る機会に出会い、一気に目指していたインストの世界をスタートさせた。 singer-songwriter 時代からのプロデューサー Shun Taguchi はもともとプログレから音楽を始めた ミュージシャンで、スタジオミュージシャンの Takashi Miyazawa も加わりユニットを結成した。 2009 年、日本でスタジオ & ツアードラマーのトップにいた Ikko Tanaka が正式にユニットに加わり Yuka & Chronoship が誕生した。 Q. ファーストアルバムが出来上がるまでの経緯についてお聞かせいただけますか? A. コンピレーションアルバムで作った最初の曲が今回のアルバムにも挿入されている「Hector」とい う曲だった。この曲が出来上がった時点で「Water Reincarnation」というコンセプトも同時に出来上 がった。地球自体がアクア・プラネットと呼ばれ、生命の起源が海であり、人体のほとんどが水で形成 されている、この水をテーマに 1 枚のアルバムを作ろうというコンセプトと共に雨〜河〜海〜雲という 水の輪廻にまつわる曲を制作し続け、約 6 年がかりで完成した。 Q. 「ウオーター・リインカーネーション」に収められている曲は、ほとんどがインストゥルメンタル の短い曲ばかりですが、何か特別な意図があってそういう選曲をしたのですか? A. はい、今回は全曲を短い楽曲に意図的に統一してあります。それには 2 つの理由があります。まず、 今回 10 曲のアルバムですが、われわれとしては 10 パートに別れた 1 曲の組曲という解釈をしており ます。短い楽曲に統一しないと 3 枚組くらいのボリュームになってしまったでしょう。 もうひとつの理由として、われわれが武器にしているライブでの演奏において、例えばイントロや中間 のインプロビゼーションをスタジオバージョンより自由な演奏をすることにより、オーディエンスに驚 いてもらい楽しんでもらいたいからです。昔、初めてピンクフロイドやイエスのライブを観た時の、あ のレコードとライブのギャップに感動した記憶が未だに鮮明に残っているからです。 Q. 「シンフォニック・プログレッシブ・ロック」というきわめて特殊なジャンルがありますが、Yuka & Chronoship は、自分たちがこのジャンルに属していると考えていますか? A. 大きい枠でプログレに属しているとは思いますが、細分化はリスナーや評論家の方々が自由に分け ていただければ良いかと思います。なぜなら、メンバーの中でも自分たちの楽曲に対してそれぞれの思 いがありますし、特に曲を作っている Yuka は音楽を作るというより、自然や地球の営みの感動をその まま音に変換する作業をしているからです。 Q. 「ウオーター・リインカーネーション」のメロディの質の高さと音楽の洗練度には驚くべきものが あります。いったいどうすれば、こんなすごい曲・演奏ができるんですか? A. お褒めいただきありがとうございます。とてもうれしいです。少しほめられすぎな気もしますが、 演奏に関してはメンバーそれぞれスタジオ & ライブミュージシャンとしてキャリアもテクニックもそれ なりにあると思います。楽曲に関しては、自然に対する Yuka の探求心と好奇心の結果だと思います。 Q. これからのプラン(方向性や活動?)について教えてください。 A. 2 枚目のアルバムを制作中で来年中にはリリースしたいです。 そして、なにより日本だけでなく是非フランスをはじめヨーロッパで演奏してみたいです。 Q. 現在のプログレ(あるいはそれ以外の)アーティストで、好きな人やグループはいますか? A. もちろんプログレに限らず他ジャンルの音楽を聴いています。ただ、現在の音楽を聴けば聴くほど、’ 70 年代のプログレやロックが完成されつくしていることに驚かされ、感動させられます。 Q. 映画や小説、音楽(昔のものでも今のものでも)で好きなものがあれば教えてください。 A. Yuka は自分の故郷の詩人 & 作家の Kenji Miyazawa や古くから故郷で語り継がれている「遠野物 語 ( 英訳:The Legends of Tono)」、そしてフランスの作曲家 Ravel に深い影響を未だに受けています。 Q. このアルバムを作るにあたって受けた、もっとも大きな音楽的影響は何ですか? A. とてもおおざっぱに表現すると、幼少期からクラシックピアノの教育を受けていた作曲の Yuka が 影響を受けた Maurice Ravel とプロデュース & アレンジ &Bass の Shun の影響を受けた Pink Floyd、 Genesis、Yes 等 70 年代プログレだと思います。 そこに Guit の Tak や Drs の Ikko の Hard Rock& フュージョン的要素が Mix されています。 Q. 話を聞いていると、このプロジェクトを仕切っているのは Yuka のように思われるのですが、彼女 と他のメンバーとの関係はどんな感じですか?メンバーの主張がぶつかり合ったりしませんか? A. メンバーの主張がぶつかり合ったりすることはまったくありません。 もちろんこのバンドはすべて Yuka の作曲によるものですが、プロデュース & アレンジは Bass の Shun がすべて行い、エンジニアを Guit の Tak が行っています。Yuka より他のメンバーの方が日本で の音楽的キャリアやアーティストとしての知名度は高く Yuka は他のメンバーに対して絶大な信頼をお いています。 われわれ自身でさえこのメンバーが集まれたことと、このお互いの信頼関係は奇跡的だと思っています。 Q. 3月の地震のことを聞くのを忘れてました。ヨーロッパでは、誰もがこの災害に関心を寄せていま す。この災害が Yuka&Chronoship にどのような影響を与えたのかについて教えてください。 A. Yuka の故郷は今回震災の津波の多大な被害を受けた岩手県です。 彼女の親戚や学校の恩師や同級生がたくさん亡くなったり家が津波に流されています。幸い Yuka の実 家は内陸だったので最悪の被害はまぬがれましたが、Yuka にとっては言葉では言い表せないショック を受けた出来事でした。 彼女は以前から故郷の市民歌を作曲したり、ふるさと大使という任務を市から任命されており、今、彼 女は仕事の合間をぬい、定期的に故郷に戻り故郷の仲間たちと復興のボランティア活動を行っています。 今回われわれは「水」をテーマに 1 枚のアルバムを作りました。 われわれの住む日本は周りを海にかこまれた島国で、太古の昔から海から恩恵を受け、それと引き替え に海へ多大な犠牲をはらってきました。われわれにとって「水」をテーマにすることは必然だと思って いますし、アルバム完成後今回の震災に遭遇したのもまたわれわれに与えられた宿命だと思っています。 今後も日本の災害だけでなく世界で起きている様々な出来事をしっかりと感じで音楽を通して伝えて行 きたいと思っています。 震災直後、フランスから 100 名を越える救助チームが直ちに震災地に駆けつけてくれました。 日本人としてフランスとフランス国民のご協力やご援助に心から感謝しております。ほんとうにありが とうございました。
© Copyright 2024 Paperzz