スーパーソルガム :いくつかのメキシコ熱帯地域 での有益な代替案として

「スーパーソルガム : いくつかのメキシコ熱帯地域
での有益な代替案としてのスイートソルガム」
ガルシア=ベルベル・アブラハム、ラミレス=バレンシア・フランシスコ・ハビエル、サントス
コイ=パディージャ・アルマンド
メキシコ農畜水産農村開発省
国立農牧林業研究所
地域研究センター太平洋岸・中央地区
テコマン州コリマ試験栽培場
2016 年 11 月
技術指導パンフレット第15号
ISBN: 978-607-37-0711-4
著作権登録番号:03-2016-120712010700-01
-1-
メキシコ農畜水産農村開発省(SAGARPA)(学位省略、以下同)
ホセ・エドゥアルド・カルサダ・ロビロサ
農畜水産農村開発省大臣
ホルヘ・アルマンド・ナルバエス・ナルバエス
農務次官
メリ・ロメロ・セリス
農村開発次官
リカルド・アギラル・カスティージョ
食糧・競争力強化次官
カルロス・サラサール・プレシアード
SAGARPA コリマ州代表
国立農牧林業研究所 (INIFAP)
ルイス・フェルナンド・フローレス・ルイ
所長
ラウル・ヘラルド・オバンド・ロドリゲス
研究・革新・マッチング調整員
ホルヘ・ファハルド・グエル
計画開発調整員
エドゥアルド・フランシスコ・ベルテラメ・バルキン
管理システム調整員
エリサ・コンセプション・エルゲサバル・ダビラ
法務部員
地域研究センター太平洋岸・中央支部 (CIRPAC)
ホセ・アントニオ・レンテリーア・フローレス
センター長
ホルヘ・アルマンド・ボニージャ・カルデナス
研究部長
ミゲル・メンデス・ゴンサレス
管理部長
イサク・ビスカイノ・バルガス
コリマ州調整マッチング局長
テコマン試験圃場本部担当者
-2-
「スーパーソルガム:いくつかのメキシコ熱帯地域での有益な代替案としてのスイートソ
ルガム」
ガルシア・ベルベル・アブラハム 1
ラミレス・バレンシア・フランシスコ・ハビエル 2
サントスコイ・パディージャ・アルマンド 2
1. INIFAP テコマン試験栽培場研究員
2. アースノート社技術顧問
国立農牧林業研究所
地域研究センター太平洋岸・中央支部
テコマン試験栽培場研究
メキシコ コリマ州テコマン
2016 年 11 月 技術指導パンフレット第 15 号
「スーパーソルガム:いくつかのメキシコ熱帯地域での有益な代替案としてのスイートソ
ルガム」
この印刷物の一部または全体を当局により書面での事前許可を得ずに複製、電子的手法、
機械的方法、コピー、登録そのほかの方法での送信利用は認められていません。
コピーライト
メキシコ農畜水産農村開発食料省
郵便番号 04010 メキシコ連邦特区コヨアカン区サンタカタリナ地区プログレソ通5<
電話:
(55)3971-8700; 01 800 088 22 22
www.inifap.gob.mx
E メール [email protected]
初版 2016 年 11 月
メキシコ国内出版
ISBN: 978-607-37-0711-4
著作権登録番号:03-2016-120712010700-01
技術指導用パンフレット 第 15 号
テコマン試験栽培場
コリマ‐マンサニージョ街道 35km 地点
-3-
私書箱第 88 号
郵便番号 28100 メキシコ・コリマ州テコマン
Tel/Fax 01 800 088 22 22 内線 84328
この印刷物は、グアダラハラ市アメリカナ地区リベルター通 1457 番プロメテオ印刷出版社
2016 年 11 月に印刷を終了したものです。
印刷部数 10100 部
本出版物の正式な引用は下記の通り:
ガルシア=ベルベル A;ラミレス=バレンシア・F・J;サントスコイ=パディージャ・A
2016年
「スーパーソルガム:いくつかのメキシコ熱帯地域での有益な代替案として
のスイートソルガム」INIFAP, CIRPAC テコマン試験圃場
号。メキシコ・コリマ州テコマン。37P
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技術指導パンフレット第 15
目次
ページ
はじめに ……………………………………………………………………………………1
植物の反応 …………………………………………………………………………………4
スイートソルガム「スーパーソルガム」の様々な活用法 ……………………………10
飼料生産
……………………………………………………………………………………11
バイオエタノール生産 ………………………………………………………………………14
農学的管理
農地準備 ……………………………………………………………………………………16
播種 …………………………………………………………………………………………18
品種 …………………………………………………………………………………………18
灌漑 …………………………………………………………………………………………20
栄養 …………………………………………………………………………………………21
肥料 …………………………………………………………………………………………23
雑草の管理 …………………………………………………………………………………24
害虫の管理 …………………………………………………………………………………26
病害の管理 …………………………………………………………………………………31
収穫 …………………………………………………………………………………………32
生産性 ………………………………………………………………………………………33
-5-
図表の目次
表
ページ
表 1. 2015 年テコマン試験栽培場でのスイートソルガム一番草品種別高さ評価。春夏期…5
表 2. 2015 年テコマン試験栽培場スイートソルガム収穫量、トウモロコシ、サトウキビとの
比較。春夏期一番草。………………………………………………………………………………6
表 3. 2015 年テコマン試験栽培場でのスイートソルガム各品種における Brix 値。春夏期一
番草。………………………………………………………………………………………………7
表 4. 収穫量(2 番草)2015 年テコマン試験栽培場。春夏期。……………………………8
表 5. 2015 年テコマン試験栽培場スーパーソルガム交雑種の Brix 値とその主用途。2 番草。
………………………………………………………………………………………………………9
表 6. ソルガムサイレージの栄養成分%、コーンサイレージとの比較……………………12
表 7. スーパーソルガム飼料青刈りまたはサイレージとコーンサイレージの栄養成分。2015
年ハリスコ州アカティック………………………………………………………………………14
表 8. メキシコ国内の複数地域で得られたソルガム品種試験栽培の結果…………………20
図
図 1. スーパーソルガムの利用スキーム………………………………………………………10
図 2. スイートソルガム収穫物のサイレージ資料としての活用……………………………13
図 3.播種を行うための良質な土壌を保証するための砕土…………………………………17
図 4. 秋冬期での畝の奥での播種………………………………………………………………18
図 5. 播種前の肥料の準備………………………………………………………………………23
図 6. スイートソルガム生育中の重要な期間での雑草………………………………………24
図 7. 適切な施肥をおこなったスイートソルガムの圃場……………………………………25
図 8. ガジーナ・シエガの幼虫…………………………………………………………………27
図 9. ヨトウガ幼虫………………………………………………………………………………28
図 10. 農薬使用後のヨトウガの様子……………………………………………………………28
図 11.スイートソルガムに発生したキイロアブラムシ………………………………………30
図 12.キイロアブラムシ対策の殺虫剤散布……………………………………………………30
図 13. テコマン試験栽培場におけるスイートソルガム収穫量の図。2015 年春夏期………34
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「スーパーソルガム:いくつかのメキシコ熱帯地域での有益な代替案としてのスイートソ
ルガム」
はじめに
スイートソルガム[Sorghum bicolor (L.) Moench] は従来より収益性の良い作物である。そ
してエタノール生産用原料として、減少していく化石燃料の代替燃料として、このイネ科
植物の栽培に当てられた農地面積は増加している。一方、石油の消費により発生する高い
汚染レベルから、より汚染の少ないエネルギー源を探すことが義務づけられている。エタ
ノールは最も利用が多いバイオ燃料で、世界消費の 90%に相当する。
(2009 年、Bueno 他
研究)SAGARPA の開発プログラムでは、エタノール生産用作物としてサトウキビ、テン
サイ、スイートソルガムと 3 作物が推奨されている。スイートソルガムについてはメキシ
コの農業地域すべてが栽培可能エリアとされている。
(2009 年 SAGARPA)しかしながら、
より多くの収穫量が望めるのは海抜 1000m 以下である。
(2007 年 CENTA)この植物は特
別な取扱を必要とせず、従来種のソルガムと異なり、ハイブリッドストレスに強く(2005
年テッソ他研究を 2011 年アルバラードが引用)、サトウキビ栽培で必要とされる水の量の 9
分の1の量の消費ですむ。
(1962 年 Bielski を 2010 年モンテスが引用)さらに、高温、水
害、塩性土壌、アルミニウム含有量の高い酸性土壌(2009 年アルモダレス&ハディ)など
にも強い。スイートソルガムは生長が早く、播種後 60 日で 3.1 メートルに達する品種もあ
る。
(2015 年ガルシア)C4 型光合成植物であるため、水分、二酸化炭素、養分の利用効率
が良い(2011 年チャック‐エルナンデス他)。この理由から、水分要求が低く、空気中の
CO2 レベルの高さから、未来の植物と考えられている。
(2012 年 Serna-Saldívar 他研究、
2003 年 Keeley と Rundel を引用 )さらに、この植物は茎に糖分を多く蓄えられ、食用、
飼料用、燃料用、繊維としても利用できる。
(2010 年 Ashok 他)したがってエタノール生
産用にサトウキビやトウモロコシの替わりに利用することが可能である。
限界耕作地、または地質が悪化した土地では水が不足しやすい特徴がある。それは植物の
生長や、栄養分の供給を妨げる。このような土地では、水や風による浸食や、塩化、土壌
の硬化、ひび割れなどの問題がよく見られる。また、酸化、アルカリ化、冠水などが起こ
る場所もある。(INEGI, 2007)
スイートソルガムは、その生長の早さや水分利用効率の高さ、肥料要求度の低さ、幅広い
適応性(2007 年 Prasad 他)バイオ燃料収穫用の他の作物と比較しても利点がある。この
利点の中には水の要求度があるが、スイートソルガムは1栽培サイクルにつき 4,000m3 の
水を必要とするのに対し、サトウキビは 36,000m3 必要である。(1962 年 Bieleski 研究)
スイートソルガムはバイオ燃料向け作物の中で、食用作物が生き残れないような環境条件
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でも耐性がある。これは経済的利益が少ない土地で生産性を上げる機会を生み出すことに
もつがなる。
(2008 年 FAO)
スイートソルガムの茎は、砂糖が多く含まれていることから最も活用できる部位である。
エタノール生産や家畜の飼料としての利用の他にも、スイートソルガムは様々な活用方法
がある。砂糖生産、紙のパルプ生産用バガス、合板製造、たい肥やバイオガスの生成など
である。
(1995 年 Belayachi と Delmas 研究を 1995 年 Negro 研究で引用)サトウキビと
比較すると、単位面積当たりで同量またはそれを上回る量のバイオマス量を生産するため
に必要な時間が短い。サトウキビでは環境と品種によって 11 か月から 17 か月が必要なの
に対し、スイートソルガムは 3.5 から 4 か月だけなのである。(2009 年 Bueno 他研究)ま
たコリマ州テコマンでのスイートソルガム生産性試験で得られたデータもある。
(2015 年ガ
ルシア)
SAGARPA はその「バイオエネルギー原料の持続可能な生産と科学技術発展のプログラム」
の中で、第一段階としてハリスコ州グアダラハラの都市部でガソリンに混合用として年間
176 百万リットルのエタノールを生産できるだけのバイオマスの生産量が必要で、第二段階
ではヌエボレオン州モンテレイとメキシコシティーの地区での供給を賄う量として、年間
約 630 百万リットルが必要とされている。(2009 年 SAGARPA)
植物の反応
スーパーソルガムの生長は一日 6.4cm にも至る。このことはバイオマス生産の効率を上げ
るとともに、飼料生産またはバイオエタノール生産用原料として活用できる効率の良い植
物の選択肢となる。
次の表で、テコマン試験栽培場において行われた、いくつかのソルガムについての商業用
利用前の評価における生育状況を正確に説明する。
表 1. 2015 年テコマン試験栽培場でのスイートソルガム一番草品種別高さ評価。春夏期
品種
一日当たりの
植物高さm(播種
生長㎝
後 81 日の穂に基
づく)
SE19
6.4
5.18
SE34
5.5
4.43
SE1
5.3
4.30
SE23
3.9
3.17
SE24
4.1
3.31
SE5
5.3
4.29
-8-
SE30
4.6
3.75
SE16
5.5
4.45
青刈りまたはバイオマス生産は、飼料用またはエタノール生産目的での栽培においては、
非常に重要である。年に何回もの収穫が可能なため、トウモロコシに比べ収益性が大きく
優れている。またその生長の早さにより、一回ごとの収穫量で比較しても優位な場合があ
る。
表 2. 2015 年テコマン試験栽培場スイートソルガム収穫量、トウモロコシ、サトウキビとの
比較。春夏期一番草
収 穫 量
金 額 ペ ソ /ha
生産コスト
利益
t/ha
*
ペソ/ha+
ペソ/ha
SE19
171
64,980
22,300
42,680
SE34
166
63,080
22,300
40,780
SE1
145
55,100
22,300
32,800
SE23
169
64,220
22,300
41,920
SE24
173
65,740
22,300
43,440
SE5
139
52,820
22,300
30,520
SE30
185
70,300
22,300
48,000
SE16
188
71,440
22,300
49,140
トウモロコシ
65
20,140
16,800
7,900
サトウキビ
120
50,000
26,000
24,000
品種
* トン当たり 380 ペソ
+ 収穫までのコスト
スイートソルガムとトウモロコシの収益性を比較分析すると、トウモロコシは単位面積当
たりの収穫量において魅力が劣る。これに加え、スイートソルガムは収穫後もまた芽が生
えて栽培が可能なため(トウモロコシでは不可能)この 2 回目の生長期が生産者にとって
追加のチャンスとなる。
収穫物の品質は可溶性固形物の含量(Brix 度)と関連する。これは作物から得られる砂糖
の量を示す数値です。上の表に上げられている品種の中には、この基準で受け入れられる
値を示しているものもあり、エタノール生産用の原料として活用するのに良い品質だとい
える。
-9-
表 3. 2015 年テコマン試験栽培場でのスイートソルガム各品種における Brix 値。春夏期一
番草。
品種
BRIX 度
用途
SE19
13.5
飼料
SE34
16.0
エタノール
SE1
19.2
エタノール
SE23
5.0
飼料
SE24
16.2
エタノール
SE5
8.5
飼料
SE30
20.1
エタノール
2 回目の収穫では、初回よりも収穫量は落ちるものの、生産性はトウモロコシと比較しても
遜色ない。これに対しては、一番草の収穫後、新たに播種を行うことで、最小限の追加投
資で土地面積当たりの生産性が向上することになる
表 4. 収穫量(2 番草)2015 年テコマン試験栽培場。春夏期。
収 穫 量
金 額 ペ ソ /ha
生産コスト
t/ha
*
ペソ/ha+
ペソ/ha
SE19
64.2 a’
24,396
10,700
13,696
SE34
42.3 c
16,074
10,700
5,374
SE1
40.3 c
15,314
10,700
4,614
SE23
46.4 c
17,632
10,700
6,932
SE24
48.0 bc
18,240
10,700
7,540
SE5
37.0 d
14,060
10,700
3,360
SE30
63.0 a
23,940
10,700
13,240
SE16
53.3 b
20,254
10,700
9,554
トウモロコシ
53.0
20,140
16,800
3,340
品種
利益
* トン当たり 380 ペソ
+ 収穫までのコスト
サトウキビの 1 回の生長サイクルは、スイートソルガムの 3 回のサイクルよりも、トウモ
ロコシの2サイクルよりも長く、その単位面積当たりの 1 年間の収益性は少ないことが考
えられる。それはサトウキビという作物は、成長スピードがスイートソルガムより遅く、
バイオマスの蓄積は特定期間において少ないという結果になる。
- 10 -
Brix の数値では、2 番草で、次のような結果を示している。
表 5. 2015 年テコマン試験栽培場スーパーソルガム品種の Brix 値とその主用途。2 番草
品種
BRIX 度
主な用途
SE19
13.4
飼料
SE34
8.8
飼料
SE1
17.6
エタノール
SE23
8.8
飼料
SE24
11.9
飼料
SE5
9.3
飼料
SE30
18.3
エタノール
SE34 と SE24 の2番草の収穫では、1番草よりも Brix 値が低くなった。そのためエタノ
ール生産向けの生産性は低下したことになる。
- 11 -
スイートソルガムの様々な活用法
図1で、スイートソルガムの様々な利用方法を示す。
図1.スーパーソルガム利用図
- 12 -
飼料の生産
飼料用のスーパーソルガムは生育が早く平均 18%の粗タンパク質、78%の消化可能率であ
り栄養価が高く(ゴンサレス 2013)
、青刈り飼料、もしくはサイレージとして貯蔵したうえ
活用できる。飼料の価値を計る主な要素には繊維、タンパク質、熱量、TDN(可消化養分
総量)がある。
(2013 年ロドリゲス他、2011 年 Di marco)。また、飼料の品質に影響を与
えるそのほかの要因として留意する必要があるのは、植物の細胞壁含有量とその構成成分
である主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンである。これらの内容は細胞壁の分解
に影響を及ぼす主な要因となる。それは植物の成熟にしたがって増えていき、動物による
消化・吸収も低下するため、植物の収穫時期にも関係してくる。(2016 年 Valencia と
Chongo)
その高い生長性から、スーパーソルガムのハイブリッド種は、播種時期、農学的取り扱い、
気候条件などによっては高さ 4 メートルを超えることがある。さらに、分げつ性や芽の再
生能力も優れ、1 年に 2 回、3 回と収穫することが可能になる。
表 6 で、スーパーソルガムの栄養学的分析の結果を示す。
表 6. ソルガムサイレージの栄養成分%、コーンサイレージとの比較
成分
ドライベー
コーンサイレー
ス% (1)
ジ (2)
水分
78.25
74.00
粗タンパク質
9.86
8.00
粗脂肪
2.41
2.8
粗繊維
34.69
26.00
NDF
60.48
60.0
ADF
43.91
32.0
灰分
11.94
6.0
カルシウム
0.253
0.4
リン
0.228
0.27
(EE)
(1) グアダラハラ大学南部大学センター食物学研究室
(2) ビーフマガジン誌 飼料栄養成分表 2011 年
EE=エーテル抽出物 FDN=中性デタージェント繊維 ADF=酸性デタージェント繊維
- 13 -
図 2. スイートソルガム収穫物のサイレージ資料としての活用
収穫された飼料に含まれるタンパク質の内容は他の指標と同様に変動が大きく、作物の成
熟度合によるところが大きい。したがって、生産量と栄養価のバランスの良い適切な時期
に収穫することが重要である。一般的に、スーパーソルガムのハイブリッド種の収穫に最
適な時期は子実が乳熟期に入った時で、実が熟すのを待たないほうが良い。収穫期が遅れ
ると、穂の重みにより倒伏をもたらすリスクが出てくるため、2 回目の収穫に際し芽の再生
期間が短くなることになる。
ハリスコ州アカティックで行われた調査(2015 年ビジャレアル・アリアス研究)では、ス
ーパーソルガムの青刈り飼料、スーパーソルガムサイレージ、コーンサイレージの栄養成
分特性評価を行った。結果は表 7 に示す。
- 14 -
表 7. スーパーソルガム飼料青刈りまたはサイレージとコーンサイレージの栄養成分。2015
年ハリスコ州アカティック
飼料種類
乾
灰
タ
粗
ADF
NDF
正味エネル
乾
相対
物
分
ン
脂
%
%
ギー
物
飼料
%
%
パ
質
Mcal/kg
分
価
ク
%
解
質
率
%
%
コーンサイレージ
30.4
7.0
8.3
2.5
34.9
53.0
1.36
61.7
109
スーパーソルガム
36.1
8.5
9.4
2.7
35.3
44.9
1.35
61.4
127
24.9
8.4
10.2
1.8
36.1
47.2
1.32
60.8
120
サイレージ
スーパーソルガム
青刈り
結果を見ると、3 種類の飼料の値は似通ったものだが、粗タンパク質においてはスーパーソ
ルガムのサイレージ、青刈りともに上回り、結果相対飼料価にも反映されている。
バイオエタノール生産
ソルガムは旱魃や農業的悪条件に強い農作物である。(2011 年 Chuck-Hernandez)また多面
性のある作物で、種類としては子実性ソルガム、スイートソルガム、生体内変換されるバ
イオマス価の高いソルガムがある。
(2014 年 Cifuentes 他)でんぷんを多く含む子実をトウ
モロコシで行われているものと同様の技術を用いて変換させると、1 トン当たり 360 から
400 リットルのバイオエタノールを生産することが可能である。スイートソルガムの変換に
より、搾汁とリグノセルロース物質の量は非常に優れたものになる。
(1ヘクタール当たり
スイートソルガム収量 100 トンとして、1ヘクタール1収穫当たりバイオエタノール
13,200 リットル)(2005 年 SENER-BID-GTZ) 高バイオマス量ソルガムの新品種は、リグ
ノセルロースの技術でエタノールに変換され、ヘクタール当たり 14,800 リットルまでバイ
オエタノール生産ができる可能性がある。(2011 年 C.Chuck-Hernandez) しかしながら、
この栽培にあたっては技術的には挑戦すべきことが想定される。粉砕機の開発や、作物も
しくは発酵を促す微生物の遺伝子的技術もしくは修正、子実やバガスの前処理方法などで
ある。これらの改良により、メキシコの環境でこの子実性ソルガム・スィートソルガムの
バイオマスをエタノールにする技術的実現性が見えてくる。
リグノセルロースバイオマスは主としてリグニンと多糖類セルロース(六炭糖で構成され
- 15 -
る)とヘミセルロース(六炭糖とペントースが混ざったものを含む)から成る。(2009 年
Guarnizo 他) 多糖の安定性や、ペントース(五炭糖)が出芽酵母を使っても簡単には発酵
しないことから、第一世代原料からのエタノール生産と比較して、リグノセルロースバイ
オマスの利用はより複雑な工程となる。リグノセルロースバイオマスをバイオ燃料にする
ためには、始めに酸か酵素を用いて多糖を加水分解するか分解し、単純な砂糖にしなけれ
ばならない。(2009 年 Cepeda と Jaramillo) 現在そのような問題を解決するために、バイ
オテクノロジーに基づいた様々な手法が用いられる。具体的には、五炭糖を発酵できるよ
うな出芽酵母の株の開発や、五炭糖を自然な方法で発酵させることができる別の種の酵母
を利用や、セルロースやヘミセルロースを分解し単純な糖に分解できる酵素を作り出すこ
と、である。農林業副産物・その他の副産物に加えて、第二世代バイオ燃料生産用リグノ
セルロースバイオマスがある種の常緑樹や森林の樹木のようにバイオマス生産用の主要な
原料供給源となる可能性がある。(2008 年 wolfgang)
農学的取り扱い
農地の整備
先に栽培が行われていた土壌であれば、前作の残渣を組み込むのを推奨する、これにより、
今日において栽培の最大の問題となっているキイロアブラムシの付着がよりコントロール
できる。有機物質が増え、特に保水性が悪い、粗い土質の土壌において浸透性、吸収性、
保水性などの構造が向上する。これらの実施は、種子の発芽や、土壌の種類によるところ
が大きい作物の生長にとって好ましいことである。この作業は、播種の1か月前の、バラ
ンスの良い土質の土壌では水分 10%未満、粘土質の土壌では 15%未満である最適な状態で
ある時に開始しなければならない。
通気性と吸水性に優れた土塊の状況に整え、根の生長を良くするために、
耕起は心土破砕を深くまで行い、土壌を鋤き返しよくほぐすのが良い。
心土破砕は 3 年に一度行い X の文字のように斜めに交差する形で行う
のが良い。そのあと、2 回砕土すると、土壌の構造がより良いものにな
る。これらの実施は、生産者の間では一般的になっていて、コリマ州テ
コマンでのソルガムの評価において実施された試験においてこの作物
の栽培上良い結果をもたらしている。
図 3.播種を行うための
良質な土壌を保証するた
めの砕土
- 16 -
春夏期の播種では、雨季の初めもしくは一般的な
雨季である 6 月の、土壌が十分に湿る時期に行わ
れなければならない。雨季はメキシコの農業環境
区分によりそれぞれ異なるが、土壌の整備を始め
る時期を示す目安となる。秋冬期では通常播種は
11 月から1月に畝の低い部分で行われる。播種
の深さは芽が地表に出るのを妨げないように
図 4. 秋冬期での畝間への播種
2cm までになるように行う。とりわけ中間粘土
質の土壌では雨の影響により固まってしまう場
合があるので注意を要する。推奨される播種密度は発芽率にもよって異なるので、良質の
種子を使用し、畝間 70cm の際 13cm 間隔、80 ㎝の場合は 11cm 間隔で播くと、それぞれ
の条件で 1ha 当たり 109,857、113,600 となる。人の手で播種する場合でも、播種機で鎮圧
するのと同じように圧力をかけて植えるようにしなければならない。これにより、栄養分
を最大限活用し、高さ 4~5.5m という満足のいく生長が得られる。
降雨量が多く、浸水が起こる場所では、畝の背に種子がとどまるように播種機を調整する
のが良い。手で播く場合もやはり畝の背に植えるようにすること。
発芽後の生長率を良くするためには、土壌が「来た土」として知られる「ちょうど良い」
タイミングに播種が行われることである。ヘクタール当たりの種子の量は5~6㎏である。
品種
推奨される品種について話すにあたっては、この植物の生長と収穫には環境要因が大きく
影響することを考慮しなければならない。このことから、このソルガムは異なる環境下で
どの程度の反応があるかを知ることが重要である。様々に異なる環境の中での生長の度合
を決める鍵は、最適な品種を選ぶことである。この品種の収穫に際しては、生産性が低下
するので次のサイクルで種子を使用してはならない。種子コストと比べて収量が大きく下
がるのであれば、これは不利になる。次の図で、現時点までに INIFAP で検証され、専門
の会社により入手できるソルガムの種類について紹介する。
(表8)
気候
品種
青刈り収量
用途
Ton/ha
Aw1 wig,
SE19
171
エタノール/飼料
Aw2 wig
SE23
169
エタノール/飼料
(冬季乾燥熱帯)
SE24
173
飼料
Ac w1
SE1
145
飼料
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(温暖)
SE30
185
飼料
表 8. メキシコ国内の複数地域での播種に推奨されるソルガム品種
灌漑
灌漑は降水量が少ない、もしくは年間降水量 500mm 以下の気候の変動が激しい土地で有効
である。降雨があり簡単には土壌が乾かないので、灌漑は雨季には軽くて良い。初期成育
期には水分の分散により種子に水分が届くようにし、発芽する箇所が水に浸らないように
する。そうでないと、外皮が固くなり発芽が難しくなる。栽培が安定したら、土壌の浸食
や植物に蓄積された栄養分の流出を防ぐために、散水は「水路式」であれば植物の線に沿
って行わないように土に供給すること、
栄養
スイートソルガムは、他の大多数の野菜と同様に、主として根から栄養分を吸収する。こ
の過程において、土中に広がる根はイオン方式で栄養を吸収するので、使用する肥料の種
類は土壌の化学条件や物理的条件に関連して与えることが重要である。そのような吸収が
なされるためには、栄養分は水に溶けた状態でなければならない。水は媒体であり、植物
の優れた栄養摂取には基本的なものである。したがって散水にせよ雨水にせよ水分は肥料
の効果的な摂取のために必要不可欠なものである。
また、植物の栄養は葉からの摂取でも補われる。これは葉面施肥という。
生長のためには植物には多種様々な栄養が必要であるが、あるものは大量に必要なので大
量栄養素と呼ばれ、少量でよいものは微量栄養素と呼ばれる。大量栄養素は植物の生長過
程で全般的に必要とされるものだが、ある特定の時期に不可欠なもので、不足すると生長
に影響を及ぼすこととなる。
植物に栄養が足りなくても枯れることはないが、生長が遅くなり収量や作物の生産性にも
影響を及ぼす。
このような場合、葉の緑色が淡くなったり、葉に赤い部分が出てきたり、一見してわかる
ような症状を呈する。
通常は大量栄養素としては窒素、リン、カリの投与が推奨される。しかしながら、より適
切な栄養分の投与を行う場合には、作物の需要量と土壌から供給可能な量から適切な投与
量を決定するために、土壌分析が不可欠である。栄養が最大に流れるのは 7 葉期からにな
るが、流動性に制限があることや植物が必要とすることからリンとカリは芽の生長の最初
- 18 -
の段階から投与が必要となる。
施肥
施肥は農業を行うにおいては最も重要なものである
ので、最初の施肥は播種時に 60-90-80 の分量で、ア
ルカリ性の土壌には硫酸アンモニウム、石灰3倍量の
過リン酸石灰を使用する。酸性の土壌には、できれば
リン酸二アンモニウムや硝酸アンモニウムを使用す
る。後者を施肥するにあたっては、播種直前に調合し
なければならない。この施肥内容はコリマ州の土地に
図 5. 播種前の肥料の準備
おいて満足行く結果を示した。2 回目の施肥は、播種
の 30~35 日後、除草の際もしくは灌漑まもしくは降
雨があった直後に行う。2 回目の施肥では、海抜 800m 以上の場所では窒素・リン・カリ
120-00-00、海抜 0~800m の場所では窒 90-00-00 となり、これにより肥料を補足される。
窒素は土壌での流動性が非常に速いので、2 回に分けて与える、33%は播種時、33%は播
種 30~35 日後、残りの 34%は植物が穂ばらみ期に入った時に与える。
雑草の管理
雑草は主に栄養・水・光の吸収でソルガムと競合する。
これは播種後 40~45 日間は重要である。したがってこの
期間は雑草が無いように維持することを勧める。雑草の
管理は手作業で行っても、機械で行っても薬品で行って
も良いが、薬品が一番経済的である。
効率良く雑草管理するためには、どんな種類の雑草が残
図 6.
っているのかを確認し、そこから器具または薬剤を選ん
スイートソルガム生
育中の重要な期間での雑草
でいく。散布する除草剤は反応を避けるためにきれいな
水を使用して希釈すること、噴霧器具は機械でも背負い
式の手動タイプでも良いが適したノズルを選び適切な状
況で散布できるようにすること。雑草がはびこる前に効果的に処理するには、土壌は湿っ
ていなければならず、
『土塊』があまりないことで、適切に『カバー』ができるようになる。
トラクターは時速 8km までの速度で、トラクターの圧力は平方インチ当たり 20~40 ポン
ドの圧力になるように作業しなければならない。雑草の予防管理にはアトラジンをベース
とした製品を使用する。雑草が発生した後にはジカンバと 2,4-D(2,4 ジクロロフェノキシ酢
酸)ベースの製品を、製品の取扱説明書に示され SAGARPA により確認された分量を使用す
- 19 -
ること。
雑草管理が十分に行われなかったときは、雑草を除去し植物がより良く固定できるように
除草を行うことが望ましい。これは、播種の 30 日後、第2回目の施肥を行うときに行うの
がよい。この作業は土壌の掘り返しを防ぐために、土の水分が多い時に、できるだけ浅い
ところで行うのが良い。
図 7. 適切な施肥をおこなったスイートソルガ
ムの圃場
害虫の管理
衛生的問題(害虫または病気)に対処するには、原因となる要因は何なのか、栽培のどん
な段階にいるのか、どんな被害があったのか、その「経済的な」影響をよく知ることが必
要であり、それにより予防、制限、根絶を行うための対策を取ることができる。スーパー
ソルガムの害虫の管理には主に化学薬品が使用されるが、生態系のバランスを崩さないよ
うにするためには、害虫管理は他の方法も合わせ総合的に行われなければならない。殺虫
剤はいろいろな成分構成で商品化されているが、それぞれ異なる特徴がある。液体、粉末、
顆粒、ガスもある。どのタイプを利用するかを決めるのには、主に使用方法または利用で
きる器具によって検討する。どの殺虫剤も活性成分により構成されている。すなわち、表
面活性物質と不活性物質である。農薬を正しく扱うためには、商品説明を読み、指示を守
ることが非常に重要である。商品説明には、その商品名と、成分、有効物質(一般名)と
化学名の他、分量と使用できる栽培の種類が記載されている。いずれの殺虫剤も多かれ少
なかれ、有害である。すなわち、人間や家畜、自然動物の命にも危険を及ぼしうるもので
ある。
- 20 -
ガジーナ・シエガ(Phyllophaga sp;コガネムシの一種)
この虫は、100 種類以上あるが、ソルガムの根を食べ、蔓延の度
合によっては 1 本あたり 25 匹いることもある。植物の生長が止ま
り、萎れたり、枯れて、死んでしまう症状をもたらす。被害が深
刻な場合、根のほとんどの部分が破壊されてしまっているので、
簡単に引き抜くことができる。被害が作物の生長が進んだ段階で
起こったときは、根が弱くなることで中程度の風でも倒伏が起き
図 8.
てしまう。この害虫管理は、クロルピリホスまたはカルボフラン
ナ・シエガの幼虫
ガジー
濃度 3%~5%の顆粒状殺虫剤を利用すると効果がある。
グサノ・コゴジェーロ(Spodoptera frugiprda; ヨトウガ又はツマジロコサヨトウ)
スイートソルガム栽培で頻度も多く深刻な害虫被害は、コゴ
ジェーロ毛虫によるものである。この虫は非常に攻撃的で、
発芽期初期から、成熟期前まで作物の壊滅的な被害をもたら
す。最初は黒い頭に灰色の体の芋虫で、1 枚の葉を複数の虫
が食する。生長するにしたがって共食いし、最終的に 1 匹だ
けが生き残るが、その一匹は茶色もしくはほとんど黒の縦じ
まになる。ソルガムが 30 ㎝以上になると、この虫は先端に
隠れ、高さが 2.0~2.5m になるまでその内部を食べ続け大き
な被害をもたらす。
(2012 年 Camacho)殺虫剤により虫が
図 10. 農薬使用後のヨト
ウガの様子
死ぬと、色は黒くなる。この管理においては次の点について
注意を要する。耐性が強いので、毒物学的な観点からみて複数種類の殺虫剤を使用するこ
と。その種類としては、ピレスロイド系のシペルメトリン、有機リン酸系のクロルピリホ
ス(商品名 Lorsban480E)
、また害虫の蔓延がひどい場合には、スルホクサフロルを使用す
る。(2014 年 Rodriguez と Teran, 2009 年 Tarango) 使用量は販売元の指定通りにするよ
うに、使用前に説明書を必ず読むことが重要である。
キイロアブラムシ(ヒエノアブラムシ;Melanaphis sacchari)
この虫はソルガムに限らず主にイネ科の様々な作物に被害を及ぼすが、とりわけソルガム
を好む。牧草やセイバンモロコシなどの雑草にも生息する。この害虫は 2013 年に北東部か
らメキシコに入ってきたと考えられている。その時から、メキシコ全土に広がった。ヒエ
- 21 -
ノアブラムシによる収量の減少は被害の状態にもよるが 100%になることもある。
メキシコの北部タマウリパス州でこの害虫駆除に取り組んだが、キイロアブラムシ対策に
効果のある殺虫剤5種は次の通り。イミダクロプリド1ヘクタール当たり有効成分 105g を
散布。スルホキサフロル1ヘクタール当たり有効成分 12g、スピロテトラマト有効成分 45g、
チアメトキサム有効成分 1 ヘクタール当たり 125g、メタミドホス有効成分1ヘクタール当
たり 900g。殺虫剤は、1 葉 50 匹に至り経済的被害を招く水準に達したときに投与しなけれ
ばならない。必要であれば 20 日後 2 回目の投与も行う。殺虫剤の効果を高めるために、水
の pH 調整剤の使用も考える。分散剤の使用が必須であり、地上投与ではヘクタール当たり
最低 200 リットルの水を要する。害虫が休耕地で発生したのであれば、その場所のみに背
負い式の動力噴霧器で散布する。
図 11.スイートソルガムに発生したキイロアブラムシ
図 12.キイロアブラムシ対策の殺虫剤散布
- 22 -
病害の管理
一般的にソルガムの病害については現状、経済的被害が出ておらず薬品を使用するほどの
問題とはなっていない。多くの生産者にとってはたまたまそういう状況になっている。改
良されたソルガムは一般的に従来の病気に耐性をもっている。
熱帯半湿潤気候でのソルガム栽培における一般的な病気は次の通り。
ソルガムさび病(Puccinia sorghi)、ひょう紋病(Gloeocercospora sorghi)、灰色ひょう紋病
(Cercospora sorghi)、葉枯病(Helminthosporium sp.)、炭疽病または赤腐病(Colletotrichum
graminicola)、茎腐れ病(Fusarium sp.)、梢頭腐敗病(Fusarium moniliformis)、べと病
(Peronosclerospora sorghi)。最近は穂の病気が報告されている。麦角病もしくはソルガム
糖病(Sphacelia sp.=Clavicep Africana).
ソルガムさび病は遺伝子の改良の段階でその病気への耐性が組み込まれているため、改良
種のソルガムではまれな病気で、病気が非常に発生しやすい条件下で耐性が低い品種の場
合においてのみ発生する。多くの場合病気は従来種で起こりやすい条件があるときに発生
する。
葉枯病は収穫量に影響を及ぼすことはまれな病気で、その損害は部分亭に枯れてしまうと
いうものである。
茎の腐敗は菌類により引きおこされる病気で、品種の選定をすること、耐性のある親種の
試験をすることで対処できる。通常はその対処に農薬を使用することはない。この病気も、
他の病気と同様に、品種によりその発生原因があるので、農薬の使用はあまり意味がなく、
耐性のある品種を選ぶことほどの効果はない。
収穫
サイレージ用の収穫は、植物の水分が 68~72%の時に行わなければならない。そうでないと、
水分が多すぎることによりサイレージ製造が困難になる。
この植物は丈が高いことから、機械による収穫は問題となるようにも思えるが、2015 年春
夏期に INIFAP の指導のもと(2015 年 Villarreal と Arias)ハリスコ州のアカティックで
行われた収穫作業では、通常のトウモロコシのサイレージ収穫機で問題なく収穫が行えた。
ソルガムの収穫後は高品質の製品が得られるように、すぐにサイロに入れ固め、できる限
り空気を抜き嫌気性発酵を行う過程を開始しなければならない。
- 23 -
生産性
青刈りスイートソルガムの生産量には様々な要因が関係してくる。一般的な回答だが、土
壌・気候環境と扱い方によって変化する。スイートソルガムの生産量はヘクタール当たり
平均約 150 トンであり、
1 番草と 2 番草の収穫では 250 から 300 トンの収量にもなりうる。
青刈りトウモロコシのヘクタール当たりの平均生産量はハリスコ州においては平均 60~80
トンであり、相対的にスイートソルガムは家畜の飼料としてより優れた作物であるとわか
る。
図 13. テコマン試験栽培場におけるスイートソルガム収穫量の図。2015 年春夏期
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Wolfgang, R., 2008 web あり
- 26 -
web あり。
謝意
Super Sorghum Mexico S.A. de C.V. 社へ。このパンフレットの印刷費用負担に対して。
アースノート社へ。このプロジェクトの研究の実施に対する協力に対して。
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地域研究センター太平洋岸・中央地区(学位略)
ホセ・アントニオ・レンテリーア・フローレス
地区部長
ホルヘ・アルマンド・ボニージャ・カルデナス
研究部長
ミゲル・メンデス・ゴンサレス
管理部長
イサック・ビスカイノ・バルガス
調整・マッチング部長
テコマン試験栽培場長
研究者
テコマン試験栽培場
マリオ・オロスコ・サントス 果樹
ホセ・J・ベラスケス・モンレアル 果樹
マヌエル・シルバ・ルナ 牧草と飼料作物
アレハンドロ・ヤネス・ムニョス 反芻動物の肉
マルセリノ・アルバレス・シルバ サトウキビ
マヌエル・デ・J・ベルムデス・G バイオテクノロジー
シルビア・H・カリージョ・メドラノ 果樹
ヘオバニ・フランシスコ・セルバンテス・P サトウキビ
アブラハム・ガルシア・ベルベル トウモロコシ
カリナ・ガルシア・マリスカル バイオエネルギー
ホセ・コンセプシオン・ガルシア・P 土壌の肥沃性と栄養
アルフレッド・ゴンサレス・ソテロ 牧草と飼料作物
ロサ・マルティネス・パマッツ 土壌の肥沃性と栄養
ミゲル・A・マンサニージャ・ラミレス 果樹
ルベン・アレオラ・オルテガ 稲
エクトル・M・オリバレス・ソト 果樹
ナジェリ・S・キニョネス・イスラス バイオエネルギー
アルタグラシア・レジェス・カスティージョ サトウキビ
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編集者
情報コーディネーター
ホルヘ・アルマンド・ボニージャ・カルデナス
イサック・ビスカイノ・バルガス
技術的内容確認
編集
アブラハム・ガルシア・ベルベル
マリア・ロサリオ・ロドリゲス・ラミレス
デザイン
マルタ・アリシア・カルバリオ・ロメロ
写真
アブラハム・ガルシア・ベルベル
INIFAP コード
MX-0-310301-45-05-28-09-15
- 29 -
詳しい情報については、下記にご連絡ください。
INIFAP-地域研究センター太平洋岸・中央支部
郵便番号 44660 メキシコ・ハリスコ州・グアダラハラ市
プロビデンシア地区ロス・コロモス公園内
電話 01 800 088 22 22 内線 84704
INIFAP- CIRPAC テコマン試験栽培場
郵便番号 28100 メキシコ・コリマ州・テコマン
コリマ‐マンサニージョ街道 35km 地点
電話 01 800 088 22 22 内線 84328C、84324
- 30 -
地域研究センター太平洋岸・中央支部 (CIRPAC)
CIRPAC の管轄はメキシコの太平洋岸中央地域に位置する 4 州、コリマ、ハリスコ、ミチ
ョアカン、ナヤリトの 4 州である。この4州の面積は 154,364km²で、全国面積の 7.5%に
あたる。この地域の住民は 1223 万 5866 人(2005 年 INEGI)で、その半数はハリスコ州
の住民である。
太平洋岸・中央支部の 42.6%は牧畜に適した土地であり、34.56%は林業、22.84%は農業に
適した土地とされている。
太平洋・中央地域は、幅広い気候環境を有し、温帯半湿潤寒冷気候から、非常に温暖な熱
帯乾燥気候まで分布している。
次のページの図に、太平洋中央地域の気候分布を示す地図を表示している。
太平洋中央地域の主な産物であり CIRPAC で研究を行い技術移転を行っている作物は、ア
ボカド、メキシカンレモン、マンゴー、テキーラアガベ、鶏卵、鶏肉、トウモロコシ、乳
牛、メロン、材木用樹木、牧草作物、ソルガム、サトウキビ、肉牛、非材木用樹木、ひよ
こ豆、コプラ、肉乳牛、スイカ、バナナ、インゲン豆、パパイヤ、桃、グアバ、羊肉、と
なっている。
CIRPAC は 5 か所の戦略的試験栽培場を通じて、該当産業の需要に応じて研究、評価、技
術移転を行っています。うち 3 か所と地域事務所はハリスコ州グアダラハラに所在してい
ます。農場・試験場は次の図にその位置を示す。
- 31 -
この印刷物は、プロメテオ印刷出版社
郵便番号 44160 グアダラハラ市アメリカナ地区リベルター通 1457 番
Tel (33)38 26 27 26、38 26 27 82
印刷部数 10100 部
2016 年 11 月
メキシコ国内印刷
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INIFAP
全国の研究研究機関
地域ごとの研究センターと試験栽培場
地域リサーチセンター本部
全国専門リサーチセンター
試験栽培場
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WWW.INIFAP.GOB.MX
スイートソルガム[Sorghum bicolor (L.) Moench] は土地の悪く、肥沃でない、雨量の少な
い地域での農業に可能性のある作物です。その高いバイオマスの生産量は、一番草で 150
トンに達することもあり、相対飼料価値 127 の飼料用代替作物として可能性のある作物で
ある。また農業の重要性が高い地域では大きな経済的効果を与えうる作物である。このイ
ネ科植物の栽培をする土地は、ガソリンに替わる燃料であるエタノール生産の原料として
成長の可能性があるとみられている。
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