変圧器冷却装置の交換について

H25年4月5日.
北条砂丘WF
電気主任技術者 魚住
変圧器冷却装置の交換について
(要約)
運転開始して間もなく22kV変圧器の冷却装置(Rad)が塩害に依って発錆し、著しく進行して
いった。
対策として溶融亜鉛メッキのRadへの交換をしただけであるが、かなり難しい「異メーカ
ー間のRad交換」を運転開始から6年半後のH24年8月に2台(全数は9台)実施した。
そのプ
ロセスは難産であった。
1.設置場所
WFの昇圧用変圧器はタワー内設置とタワー外設置に分けられる。 塩害地区於いては,
この昇圧用変圧器はタワー内設置が極めて有効である。 しかし、最大のデメリットとしてタ
ワーの入り口開口部より変圧器が大きい事である。 即ち稀頻度ではあるが変圧器事故時はタ
ワー解体に相当する。 上記理由で、当北条砂丘WFの変圧器はタワー外設置とした。
(タワ-の耐風圧強度から開口部の大きさは制約がある)
今回交換した変圧器は海岸から 200m内、汚損区分では 0.12mg/cm*2 の重汚損である。
2.変圧器の諸元
3相
1800kVA
油入自冷式
575V/23-22-21-20kV
油量 1390ℓ
60Hz
製造=1995年6月
JEC 2200
製作者=(韓国)
3.Radの錆の進行と交換時期
塗装面の発錆はRad面で6ヶ月後に見られた。(Tr本体の塗装面よりはるかに早く)
3年後にはRadフィンから洩油が見られ、5年後には下部にオイルマットを敷き、さらに
洩油の多いもの1本のバタフライバルブを閉塞した。
Radの交換時期はWFの最終寿命(除却時期)との兼ね合いで設定したい。即ち、運転期
間中の交換は一回に留めたい。 さらに、私の寿命(北条砂丘WFの任の間)も考慮して
2~3年程度早めに交換時期を設定した。
フィン溶接部口割れ
油がポタポタ
( 1/3
)
(説明) バタフライバルブの閉塞
・変圧器の製作工場でのヒートランのデータからRad 7本の内 2本強の裕度を有している。
・バタフライバルブの閉塞の効果は殆ど見られなかった。理由としては発錆個所は多数あり、
開口部上部から下部間の大気圧のヘッド差と考えている。
4.Rad交換のコンセプト
1)変圧器の製造者での交換が通例であるが、発錆の進行からRadの品質には問題がない、
との見解を払拭することが出来なかった。 (無論、第一次要因は塩害であるが。)
で、耐塩害タイプの国産品を探す事とした。
2)22kVクラスのRadで国内製造の溶融亜鉛メッキの存在を確認し、それを選定した。
3)絶縁油は韓国製であり、補充用の絶縁油は既設と同一仕様とする事とした。
4)Radの放熱面積(あるいは油量)が既設とほぼ同等の書類にて合格とし、他の試験は一
切不要の方針とした。
洩油が進んでいない変圧器(他機器)の全景
放圧装置
Rad
7本
5.Rad交換作業
実績工程 H24 年7月30日から8月3日 (5日間/2台)
バタフライバルブの気密性の不安もあり真空引きでの作業準備をしていた。 が、予測外の
トラブルとして放圧装置の破損を考慮して真空引きを行わずにRadを外した。
Radを外した状態
上下のバタフライバルブは
気密性が良好で、一滴の洩油もなかった
( 2/3
)
Rad交換後の状態
ヘッダーの差を
アダプター(145mm)で調整
気密性が良好で、一滴の洩油もな
かった
フランジの加重負担を下げるため
CBと番木で受ける(設計時の予定)
既Rad面
〇 交換作業に関する設計は「明電舎」、Rad製作・溶融亜鉛メッキは「明電メタルマレーシア」
で行った。
〇 交換品の放熱器面積比は既設品の98.2%で「良」とした。
放熱器
高さ
mm
既設品
交換品
(参考)
放熱器
幅
mm
ヘッダー
ピッチ
枚数
本数
mm
放熱面積
m*2
1125
305
985
15
7
69.68
1080
380
900
20
4
68.48
当初の提案は
枚数21枚放熱器面積比104%であったが、枚数を1 枚減とした。
6. Rad交換が実現したポイント=明電舎見解
▲ 韓国のメーカーから欲しくても得られなかった情報
・交換後の冷却性能の評価ポイントであるタンク放熱面積と冷却器放熱面積のデータ。
〇 実現に至った最大のポイント
・韓国メーカー:冷却器フランジの取り扱い説明書の内部構造(構成)が入手できた。
・自社内
: 他社製の改造工事であり、性能を担保する設計指標が得られない状況で、
「重要ポイントを客(当WF)の了解あり」、で社内説得できた。
・ユーザー
: 当初は国内メーカー指定であったが、自社マレーシア工場で製作、沼津工場
品質保証部での品質保証の受け入れ検査する事で了解が得られた。
交
ユーザー銘板追加
換
「多謝」
後
以 上
( 3/3
)