69 塩化ナトリウム型 ボルタ電池の正極反応 [日本学生科学賞] 北海道旭川東高等学校 高成 壯磨 指導教諭 富田 一茂 ●どんな研究なの? 電気を通す液体に2種類の金属を浸すと電池になります。本研究では塩化ナトリウム水溶液を使った 電池の反応のしくみについて調べました。寒天を使い反応を可視化することで、はじめ溶存酸素が反 応し、反応の継続には空気中から溶け込む酸素が使われていることがわかりました。 ●研究の方法 【用意するもの】 銅板、亜鉛版、リード線、筒状の容器、5%食塩水、寒天、フェノールフ タレイン溶液(アルカリ性で赤くなる試薬) ⑴ 食塩水を加熱して寒天を溶かし、そこにフェノールフタレイン溶液 を数滴加えます。 ⑵筒状の容器に⑴で作った溶液を注ぎ、放置して固めます。 ⑶寒天に銅板と亜鉛板を差し込み、リード線で直結して反応の様子 図1 を観察します(図1)。極板をさしてすぐと1日後の反応の様子を比 べてみよう。 ●研究の結果 実験開始30分後(図2) 正極の銅線全体を取り囲む ように赤くなりました。これは電解液中の溶存酸素が 反応していることを表しています。5時間後(図3)上部 の赤色が広がりました。48時間後(図4) 空気中か ら酸素が溶け込み、上部でのみ反応が起こり続けま す。下部では、反応が止まり赤色は消えてしまいまし た。 図2 図3 図4 この電池では負極の亜鉛板が溶け( Zn → Zn2+ + 2e− )、正極の銅板上で酸素が還元される( O2 + 2H 2O + 4e− → 4OH− )ことで電気が起きます。そして電池全体の反応の結果、水酸化亜鉛の沈 2 ) 殿が生じます( 2Zn + O2 + 2H 2O → 2Zn(OH) 。 寒天を使うことでイオンの拡散を押さえ、反応の様子を詳細に調べることができました。 ●研究の結論 電解液に塩化ナトリウム水溶液を用いたボルタ電池の正極では、はじめは溶存酸素が反応し、空気 中から溶け込む酸素が使われることで反応が継続していることがわかりました。 ●研究のアピールポイント/今後について 寒天、水、食塩といった身近にある安全な素材で実験ができ、また化学反応の様子をわかりやすく観 察することができます。今後、初等教育の現場において、ひとりでも多くの子供たちに科学のおもしさ を伝えることができる科学教材として利用が考えられます。 青少年のための科学の祭典 2013 全国大会 81
© Copyright 2024 Paperzz