平成17年度 事業報告書 自 平成17年 4月 1日 至 平成18年 3月31日 財団法人 日本生物科学研究所 平成17年度事業報告書 平成 17年度事業として、家畜、家禽および伴侶動物における種々の病原微生物と 各種疾病について、病理学的、免疫学的、分子生物学的見地より研究を進めてきた。 また、医薬及び農薬等の化学物質の安全性試験、実験動物に関する研究及び調査、さ らに国をはじめとする公共機関などからの種々の受託研究を行ってきた。これらの研 究ならびに調査を通して得られた成果は、関連学会、専門誌、 「日生研たより」、ホー ムページを通して社会に普及すべく努めた。当研究所で蓄積されてきた研究、技術を 移転すべく、国内外より研修生を受け入れ、技術協力に努めた。 以下に、事業、運営及び管理について概況を報告する。 事業の概要 1.研究および調査 本年度に計画された研究課題は30題で、基礎研究20題、開発研究10題であった。外 部からの受託研究として、環境省より2件、農林水産省より1件、動物衛生研究所より 2件、経済産業省からの1件等を実施した。研究補助金は文部科学省より1件あった。 大学との共同研究は3件であった。 2.研究成果の発表および刊行 2−1.口頭発表(29件) ウイルス性神経壊死症に対する不活化ワクチンの有効性(有効投与量の検討) 山下浩史 1)、森広一郎 2)、田中真二 3)、黒田丹 4)、中井敏博 5) 1)愛媛県水産試験場、2)水産総合研究センター・上浦栽培漁業センター、3)三重県科 学技術振興センター、4)日本生物科学研究所、5)広島大学 平成 17 年度日本魚病学会大会(2005 年) 要旨:【目的】マハタのウイルス性神経壊死症は種苗期のみならず養成期においても 発生し,本種の養殖を行う上で最大の脅威となっている。前報では、ホルマリン不活 化ウイルスを注射したマハタは、ウイルス中和抗体を産生するとともに実験感染およ び野外感染に対して充分な防御能を獲得することを報告した。本報では、本不活化ワ クチンの有効投与量について検討した。【方法】ベーノダウイルス SGEhi00 株ホルマ リン不活化液(108.3TCID50/ml)を原液として、HBSS を用いてその 10 倍希釈液、100 倍希釈液を作製した。平均魚体重 53g のマハタの腹腔内にワクチン液をそれぞれ 0.1ml 注射免疫した。対照区には HBSS を同量注射した。免疫 20 日後および 70 日後に ワクチン株による攻撃試験(筋肉内注射)を行うとともに、免疫 20、35、49 および 70 日後に各区 5 尾ずつから採血してウイルス中和抗体価を測定した。 【結果】免疫 20 5.8 4.8 日後の感染試験(攻撃量:10 、10 TCID50/尾)ではワクチン原液注射区のみが、ま た免疫 70 日後では(104.3、103.3 TCID50/尾)、原液および 10 倍希釈液注射区が対照区 と比較して死亡率が有意に低かった。免疫後 20 日から 70 日の間、中和抗体価は、原 液注射区が平均 1:1000∼1:1600 で推移した。10 倍希釈液注射区では、やや低く平均 1:300∼1:400 で推移し、100 倍希釈液注射区ではさらに低く(1:200 以下)かつ検出 されない個体も見られた。これらのことから、本ワクチンの最小有効投与量は不活化 前ウイルス量として 106.3TCID50/尾と推定された。 リアルタイム PCR 法によるイリドウイルスの定量 堤 信幸、黒田 丹、星 澄夫、長井伸也 日本生物科学研究所 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨:【背景】イリドウイルス(RSIV)感染症は、主要養殖魚種で大きな被害をもたら す重要疾病である。今回、RSIV 不活化ワクチン中の抗原量の測定を代替できる方法と してリアルタイム PCR(rPCR)法を応用したので報告する。 【材料と方法】検査材料:単 層を形成したイサキ鰭由来細胞(GF 細胞)に RSIV 5F 株を接種して 25℃で 21 日間培 養し、経時的に採材したウイルス培養液。ウイルス培養液に終濃度 0.1%v/v となる ようホルマリンを添加し、4℃で 12 日以上感作した不活化ウイルス液。不活化ウイル ス液をリン酸緩衝食塩水希釈した試作ワクチンおよび市販の RSIV 不活化ワクチン。 rPCR 法:検査材料から DNA 抽出を行い、SYBR Premix Ex Taq および Roche 社製 LightCycler を用いて rPCR 反応を行った。感染価の測定は、GF 細胞を用いた TCID50 法によった。【結果と考察】ウイルス培養液を材料としたとき、rPCR 法によるウイル ス量の測定結果は、感染価と有意に相関した。ホルマリン不活化ウイルス液では、若 干感度は低下するものの、培養液と同様に定量が可能であった。試作ワクチンおよび 市販ワクチンについても含有されるウイルス DNA の定量が可能であった。本 rPCR 法 は、不活化ワクチン中のウイルス抗原量の測定を代替する方法として応用可能である と考えられた。 イヌパルボウイルスに対する中和モノクローナル抗体の解析 山元 哲 1)、清水輝夫 2)、藤野 美由紀 1)、細川朋子 1)、勝俣 淳 1)、加藤 塁 2)、長谷 川篤彦 2)、岩田 晃 1) 1)日本生物科学研究所、2)日本大学 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨: 【目的】抗体遺伝子の塩基配列の解析により、マウス抗体の相補性決定領域(CDR) がかなり正確に推定できるようになった。モノクローナル抗体(mAb)については抗原 側のエピトープのアミノ酸配列や種々の生物活性が詳細に調べられているが、mAb 側 についてはあまり解析されてこなかった。我々は、イヌパルボウイルス(CPV)に対す るマウス mAb を作出し、その性状を調べ、CDR のアミノ酸配列と比較した。 【材料と方 法】精製 CPV を抗原とし、マウスに免疫して得られた脾臓細胞より、ハイブリドーマ を作出した。スクリーニングは感染細胞を用いた間接蛍光抗体法および精製抗原を用 いた ELISA で行った。得られた 6 種の mAb のうち、3 クローンが IgG1 であり、残りは IgG2a、IgG2b、IgA であった。6 クローンすべての L 鎖(κ鎖)と IgA を除く 5 つの H 鎖の可変領域を 5’RACE 法でクローニングし、塩基配列を決定した。【結果】既知の 遺伝情報より CDR を推定し、塩基配列の相同性を比較したところ、3 種類に分かれ、 A(4 クローン)、B(1 クローン)、C(1クローン)とした。A と C の 5 クローンは CPV に対して中和活性を持ち、B は中和活性、HI 活性を示さなかった。ウエスタンブロッ ティングで反応したのは B クローンのみで、他は反応性を持たなかった。A は精製抗 原を結合したラテックスを凝集したが、C クローンは凝集しなかった。 【考察】以上に より、CDR のアミノ酸配列と抗体の活性には相関があることが示された。抗体の性状 と CDR のアミノ酸配列との関連を明らかにし、CDR のエピトープとの結合性に関する 情報を得ることで、より高性能の mAb を遺伝子工学的に設計する基盤となると期待さ れる。 動物用狂犬病ワクチンの2回注射法による抗体応答及び安全性 ○江副伸介 1)、山口幸雄 1)、河合透 1)、安田博美 2)、山中盛正 2)、瀧川義康 3)、西條加須江 3)、 久米勝巳 3)、新田清彦 4)、天野健一 4)、大森崇司 5)、土屋耕太郎 5)、草薙公一 5) 1)化血研、2)京都微研、3) 北研、4)松研、5)日生研 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨: 【目的】2004 年 11 月に施行された「犬等の輸出入検疫規則」に示されたわが国 の動物用狂犬病ワクチン(以下、ワクチン)2 回注射法による抗体応答及び安全性を 5施設で確認した。【材料及び方法】有効性は、犬及び猫に1回又は4週間隔で2回 注射後の血清についてワクチン株に対する中和抗体価(以下、中和抗体価)を5施設 で測定し、犬血清の FAVN 法による国際単位(IU/mL)を畜産生物科学安全研究所に依 頼し確認した。安全性は、犬又は猫に 1 用量又は 10 用量を複数回注射し主に臨床所 見で確認した。【結果】犬血清の中和抗体価及び FAVN 国際単位の幾何平均値は、1 回 注射後 1 か月目ではそれぞれ 192 倍及び 2.6IU/mL、6 か月目では 76 倍及び 1.0IU/mL、 2 回注射後 1 か月目では 1,655 倍及び 15.9IU/mL、6 か月目では 285 倍及び 4.7IU/mL であった。猫血清の中和抗体価は、1 回注射後 6 か月目では 470 倍、2 回注射後 6 か 月目では 2,048 倍であった。犬血清の中和抗体価と国際単位は相関し、中和抗体価 4 倍では OIE の推奨する抗体価 0.5IU/mL 以上を示す血清の割合は 0%、8 倍では 20%、 16 倍では 83%、32 倍では 92%、64 倍では 94%、128 倍以上では 100%であった。犬 及び猫に 10 用量を 2 回以上注射しても臨床上の異常は認められなかった。 【考察】わ が国の動物用狂犬病ワクチンは 1 回注射でも 0.5IU/mL 以上の中和抗体を誘導するこ とを確認した。また、「犬等の輸出入検疫規則」に示された4週間隔 2 回注射ではブ ースター効果により抗体価はさらに上昇し、安全性も確認できた。中和抗体価 16 倍 ∼32 倍が 0.5IU/mL に相当すると考えられた。 イヌ免疫グロブリンG cDNAのバキュロウィルスによる発現 清水輝夫 1)、藤野美由紀 2)、岩田 晃 2)、細川朋子 2)、勝俣 淳 2)、山元 哲 2) 1)日本大学、2)日本生物科学研究所 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨:【目的】イヌ免疫グロブリン(Ig)遺伝子の塩基配列は報告されているが、組 換え蛋白質の発現については報告がない。そこでイヌ IgG cDNA をクローニングし、 バキュロウイルスベクターを用いて発現させた。【材料と方法】イヌの脾臓から抽出 した RNA を鋳型として、γ鎖および L 鎖の一部の塩基配列情報を基にプライマーを設 計した。RT-PCR 法を行ってγ鎖 cDNA、κ鎖とλ鎖 CL ドメイン、および 5’RACE 法を 用いて VL ドメイン cDNA をクローニングし、バキュロウイルスを用いて組換え蛋白を 発現させ、抗イヌ Ig 抗血清を用いてウエスタンブロッティングを行った。 【結果と考 察】γ鎖では 4 クローンが得られ、474 もしくは 468 個のアミノ酸をコードし、クロ ーン間でのアミノ酸配列の相同性は 85.7∼98.8%であった。CH ドメインの比較ではヒ ト、マウスとの相同性はそれぞれ 64.1∼71.0%、61.6∼63.0%であった。κ鎖 cDNA は 242 個のアミノ酸をコードし、ヒト、マウスのそれとの相同性はそれぞれ 58.9%、 57.9%であった。λ鎖 cDNA は 231 個のアミノ酸をコードし、ヒト、マウスのそれと の相同性はそれぞれ 84.8%、73.3%であった。組換えバキュロウイルス感染細胞およ び培養上清にγ鎖、κ鎖と思われる約 52、27kDa の 2 本のバンドが観察され、非還元 状態では、約 150kDa のバンドが観察されたことからヘテロ 4 量体と考えられた。ま た、この組換え蛋白がプロテイン A と結合することも確認した。発現させた組換え IgG は塩基配列の相同性から Tang らのサブタイプ B、また抗体との反応性では Bethyl laboratory 社の IgG2 に相当するものであった。 豚丹毒菌各血清型及びその他のエリシペロトリックス属菌由来、表層防御抗原の配列 比較 トーホー、長井伸也 日本生物科学研究所 第 140 回日本獣医学会(2005 年) 要旨:【緒言】豚丹毒菌(Er)は、菌体表面に分子量 65-70kDa の防御抗原(Spa) をもつことが知られている。Spa は Er の 16 血清型のうち 11 に存在するが、残りの 5 血清型については不明であった。本研究では、すべての Er 血清型と、これに加え てその他のエリシペロトリックス属菌(血清型 18)に Spa が存在することを見出し、 その配列比較から、Spa を 3 つのバリアントグループに分類した。 【材料と方法】 Er 各血清型参照株から、種々のプライマーを用いて Spa 遺伝子を PCR 増幅し、クロー ニング後、全塩基配列を決定した。予測されるアミノ酸配列から、各血清型菌由来 Spa タンパクの構造を比較・解析した。 【結果】推定アミノ酸配列より、血清型 5、8、 12、15、16、17 及びN由来の Spa は、既報にある血清型 1a、1b 及び 2 型の SpaA と 95%以上の相同性を示した。血清型 4、6、11、19、及び 21 由来の Spa は、SpaA と 60%程度の相同性しか示さないものの、互いには 95%以上の高い相同性を示した (SpaB)。その他のエリシペロトリックス属菌種である血清型 18 由来の Spa は、 SpaA 及び SpaB に対して、いずれも 60%程度の低い相同性しか示さなかった(SpaC)。 【考察】Er 及びその他のエリシペロトリックス属菌には、三種類の Spa バリアント グループが存在することが明らかになった。各 Spa を機能ドメイン別に解析したとこ ろ、N末端近傍のシグナル領域及びC末端近傍のリピードユニットでは各分子間での 相同性は高度であった。一方、防御抗原性に関与するとされる中間領域の相同性は低 く、各 Spa の感染防御能に差があることが示唆された。 その他のエリシペロトリックス属菌由来表層防御抗原(SpaC)の免疫原性 トーホー、染野修一、長井伸也 日本生物科学研究所 第 140 回日本獣医学会(2005 年) 要旨:【緒言】先に、豚丹毒菌(Er)の表層防御抗原(Spa)が3つのバリアントグ ループに分かれることを報告した。そこで、どの Spa がワクチンの成分として適して いるか調べるため、組換え大腸菌により発現した各 Spa タンパクを免疫し、Er の攻 撃に対する防御効果を調べた。 【材料と方法】1.マウスを用いた交差防御試験: 40μ gの SpaA、B または C タンパクでそれぞれ 2 回免疫し、各免疫マウスを血清型 1a、 2、6 及び 18 菌で攻撃を行ない、交差防御効果を調べた。2. SpaC 由来C末端領域欠 損タンパク(SpaCΔC)の免疫原性:大腸菌における発現効率を上昇させる目的で、 SpaCΔC タンパクを作出し、その免疫原性をマウス及び豚で調べた。マウスでは 40 μgの SpaCΔC で 2 回免疫し、血清型 1a、6 及び 18 菌で攻撃を行なった。豚では 200μg の SpaCΔC で 2 回免疫し、血清型 1a 菌で攻撃を行ない、生死及び豚丹毒症 の発症抑制程度から防御効果を調べた。 【結果】マウスを用いた交差防御試験により、 その他のエリシペロトリックス属菌(血清型 18)由来の SpaC が、最も高度な交差 防御効果をもつことが判明した。SpaC 全長のタンパクの大腸菌における発現レベル は低かったが、C末端から 238 アミノ酸を欠失させた SpaCΔC タンパクの発現量は 高度であった。マウス及び豚における攻撃試験成績から、SpaCΔC タンパクは、全 長の SpaC と同等以上の感染防御能を示すことが明らかになった。【考察】今回作出 した SpaCΔC タンパクは大腸菌内で良好に発現し、これを免疫した豚では Er 強毒 株の攻撃に対して高度な防御効果を示したことから、Er 対策用ワクチンの成分とし て有用であると考えられた。 マイクロエマルジョンをアジュバントとした豚萎縮性鼻炎不活化ワクチンの臨床試 験 染野修一、小川勝巳、江成健一、長井伸也 日本生物科学研究所 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨:【緒言】アルミニウムゲルアジュバントは安全性は高いが、免疫惹起能は中等 度である。一方、オイルアジュバントは免疫惹起能は高度だが、接種反応が強く、注 射局所に長く遺残する難点がある。マイクロエマルジョン(ME)アジュバントは、少 量のオイル成分と免疫賦活性のある界面活性剤とを高速でホモジナイズした微粒子 からなり、高度の安全性と免疫原性をあわせもつとされる。本アジュバントを豚萎縮 性鼻炎(AR)ワクチンに応用し、その安全性と有効性につき野外豚を用いて検討した。 【材料と方法】ワクチン抗原: Bordetella bronchiseptica (Bb)不活化菌体と Pasteurella multocida トキソイド(Pm-T)。試験農場:AR 発生歴がある 2 農場。試験 方法:繁殖候補豚 152 頭を使用。試作ワクチンを妊娠期間中に 1∼2 か月間隔で 2 回 注射(初産用法試験群、66 頭)、1 か月間隔で 2 回及び分娩前 2∼4 週に追加注射(経 産用法試験群、17 頭)、並びに同一の抗原を含む市販アルミニウムゲルワクチンを各 用法と同プログラムで注射(初産用法対照群、52 頭;経産用法対照群、17 頭)。【結 果】各試験群、対照群に一般臨床症状、分娩状況及び注射局所において異常は無く、 本ワクチンの安全性が確認された。A農場の初乳の Bb 凝集価(幾何平均値)は、試 験群初産で 5,120、経産で 31,042、対照群初産で 1,280、経産で 8,128 であった。Pm-T の平均 ELISA 値は試験群で順に 1.52 及び 2.00 以上、対照群では順に 0.98 及び 1.73 であった。試験群で見られた高値の抗体は、産子にも移行した。B 農場も A 農場と同 じ傾向であった。 【考察】ME を用いた AR ワクチンは、安全で、かつ高度な抗体応答を 惹起することが確認された。 動物用ワクチン開発の現状と将来に向けての課題 長井伸也 日本生物科学研究所 平成 17 年度馬防疫検討会「馬感染症研究会」特別講演(2005 年) 要旨:抗生物質の多用による薬剤耐性菌の出現、人と動物の地球規模での激しい移動 に伴う感染症のグローバル化、畜産の高効率・高度集約的構造変化に伴う感染症の複 雑化、地球環境の激変による新しい病原体の出現、食の安全・安心と人獣共通感染症 対策への関心の高まり等から、動物用ワクチンに対する期待はますます高まっている。 一方、バイオテクノロジーの著しい進歩は、動物用ワクチンに革命的変化をもたらし ている。病原体を分子レベルで解析することにより、ワクチン成分となる重要な抗原 を比較的容易に得ることが可能となり、宿主側の感染防御機構の理解は、新しい免疫 賦活剤の開発へと結びついている。我々は 1998 年、動物用ワクチンとして国産初と なる遺伝子組換えタンパク質を利用した豚胸膜肺炎ワクチンを開発した。引き続いて 2003 年、このワクチンに豚マイコプラズマ抗原を混合し、世界で最初となる豚マイコ プラズマ症と豚胸膜肺炎の混合ワクチンを開発した。現在、これらのワクチンは豚呼 吸器複合感染症の制御のために国内で広く利用されている。また最近、前者のワクチ ンは、韓国、台湾で販売承認を取得し、後者のワクチンは、ヨーロッパ、アジアの数 カ国で臨床試験を行なっており、今後諸外国への普及動向も注目される。本講演では これらのワクチンの特長についても若干解説したい。続いて、動物用ワクチンの将来 像について述べたい。ワクチンの投与方法は、現在、鶏用生ワクチンの一部を除いて、 ほとんどが注射適用である。家畜飼養戸数が減少し、一戸当たりの飼養頭羽数が著し く増加する中、ワクチン投与に係る手間と労力は多大である。鶏肉用種において普及 が進んでいる卵内接種法は新しい投与法として注目される。機械を用いてワクチンを 鶏胚に注射することにより、投与を大幅に省力化できるとともに、孵化後早期の感染 を防御できるというメリットがある。今後は、他にもドラッグデリバリーシステムを 用いた経口投与型ワクチン、植物体内に抗原を発現させる飼料ワクチン等のユニーク な投与形態のものが実用化されてゆくだろう。動物用ワクチンの使用目的も、動物を 疾病から守るという本来の目的は当然のことながら、人をとりまく環境に免疫という 防波堤を与え、人間社会への病原体の侵襲を防ぐという目的のワクチンも増加すると 予想される。古くは狂犬病ワクチン、最近では鶏サルモネラワクチンがその範疇にあ る。今後、鶏のカンピロバクター、牛の大腸菌 O157 やクリプトスポリジウム、豚の E 型肝炎ウイルス、馬や鳥のウエストナイルウイルス等に対するワクチンの開発が期待 される。鳥インフルエンザワクチンは、昨年、数品目の外国製品が承認されたが、さ らに免疫力を高めた国産ワクチンが数年後には実用化される見通しである。現在、日 本の動物用ワクチンの開発・製造・検定にかかわる技術や製品自体の品質は世界最高 水準にあると思われる。さらなる技術的進歩と、各国の規制当局間での調和がなされ れば、日本の動物用ワクチンが、世界の家畜防疫や公衆衛生に寄与できる時代もそう 遠いことではないと予想される。 動物用ワクチンの開発 長井伸也 日本生物科学研究所 特定領域研究「感染の成立と宿主応答の分子基盤」細菌領域若手部会(2005 年) 要旨:抗生物質の多用による薬剤耐性菌の出現、人と動物の地球規模での激しい移動 に伴う感染症のグローバル化、畜産の高効率・高度集約的構造変化に伴う感染症の複 雑化、地球環境の激変による新しい病原体の出現、食の安全・安心と人獣共通感染症 対策への関心の高まり等から、動物用ワクチンに対する期待はますます高まっている。 一方、バイオテクノロジーの著しい進歩は、動物用ワクチンに革命的変化をもたらし ている。病原体を分子レベルで解析することにより、ワクチン成分となる重要な抗原 を比較的容易に得ることが可能となり、宿主側の感染防御機構の理解は、新しい免疫 賦活剤の開発へと結びついている。我々は 1998 年、動物用ワクチンとして国産初と なる遺伝子組換えタンパク質を利用した豚胸膜肺炎ワクチンを開発した。引き続いて 2003 年、このワクチンに豚マイコプラズマ抗原を混合し、世界で初となる豚マイコプ ラズマ症と豚胸膜肺炎の混合ワクチンを開発した。現在、これらのワクチンは豚呼吸 器複合感染症の制御のために国内で広く利用されている。また最近、前者のワクチン は、韓国、台湾で販売承認を取得し、後者のワクチンは、ヨーロッパ、アジアの数カ 国で臨床試験を行なっており、今後諸外国への普及動向も注目される。本演題ではこ れらワクチンの特長についても若干解説したい。動物用ワクチンの使用目的も、動物 を疾病から守るという本来の目的は当然のことながら、人をとりまく環境に免疫とい う防波堤を与え、人間社会への病原体の侵襲を防ぐという目的のワクチンも今後増加 すると予想される。古くは狂犬病ワクチン、最近では鶏サルモネラワクチンがその範 疇にある。今後、鶏のカンピロバクター、牛の大腸菌 O157 やクリプトスポリジウム、 豚の E 型肝炎ウイルス、馬や鳥のウエストナイルウイルス等に対するワクチンの開発 が期待される。鳥インフルエンザワクチンは、昨年、数品目の外国製品が承認された が、さらに免疫力を高めた国産ワクチンが数年後には実用化される見通しである。現 在、日本の動物用ワクチンの開発・製造・検定にかかわる技術や製品自体の品質は世 界最高水準にあると思われる。さらなる技術的進歩と、各国の規制当局間での調整が なされれば、今後、日本の動物用ワクチンが世界の家畜防疫や公衆衛生に寄与できる 時代もそう遠いことではないと予想される。 最近話題の豚病 ‒豚丹毒と豚増殖性腸炎について 長井伸也 日本生物科学研究所 平成 17 年度 病性鑑定研修会 -動物衛生研究所(2005 年) 要旨:豚丹毒は、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae:Er と略)の感染によっ ておこる豚の伝染病であり、その発生に伴う経済的被害は多大である。本病は病型に よって急性型(敗血症)、亜急性型(蕁麻疹)及び慢性型(心内膜炎、関節炎、リン パ節炎等)に大別される。本菌は広い宿主域を持ち、豚以外にも陸棲及び水棲の哺乳 類、並びに鳥類にも感染する。人に感染した場合は類丹毒と呼ばれる皮膚疾患をもた らし、公衆衛生面からも重要な疾病である。本病の制御のため、我が国では古くから 生ワクチンが利用されてきたが、1998 年から不活化ワクチンも使用可能となった。両 ワクチンの特長とその効果的な利用方法について解説したい。Er の病原性にかかわる 重要な分子として、Spa と呼ばれる菌体表層に存在する防御抗原がある。我々は、Er 各血清型菌由来 Spa の塩基配列を分析し、A、B 及び C の 3 つのグループに分類できる ことを示した。このうち、18 型菌の産生する SpaC は最も広範な防御能を示すことか ら、今後、Er を含む多種混合不活化ワクチンを開発する上で重要な成分となるだろう。 豚増殖性腸炎は、偏性細胞内寄生性細菌 Lawsonia intracellularis(Li と略)を原 因とし、遠位小腸及び近位大腸の粘膜の過形成による肥厚を特徴とする豚疾病である。 特に回腸に病変が多発することから回腸炎(イリティス)という名称もよく用いられ る。本病は肥育末期の豚あるいは繁殖候補豚に発生し出血性の下痢を伴って急死する 急性型と、離乳期から肥育期にかけ下痢や軟便が持続して増体重が低下する慢性型の、 二つの病型に分類される。本病は世界各国の養豚地帯に発生し、我が国においても既 に 90%以上の農場に浸潤しているとされる。Li は 1995 年に命名された新菌種で、そ の分離は極めて困難であり、未だ人工培地での増殖には成功していない。このため、 世界で分離された株数は 15 に満たず、病原性を含め、本菌の性状には不明な点が多 い。本講演では、最近報告された本菌の細菌学的性状とともに、診断法及び海外で開 発されたワクチンの情報についても述べたい。 家畜におけるサルモネラ症とその対策 永野哲司 日本生物科学研究所 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨:家畜伝染病予防法により届出伝染病に指定されているウシ、ブタ及びニワトリ のサルモネラ症は、ウシでは Salmonella Typhimurium 及び S. Dublin、ブタでは S. Choleraesuis 及び S. Typhimurium、ニワトリでは S. Enteritidis 及び S. Typhimurium を主原因とする。また、それら以外の血清型を原因とした症例の発生報告も少なくな い。家畜にサルモネラ症を引き起こす血清型の多くは、ヒトの急性胃腸炎事例からも 分離されていることから、肉や卵などの畜産食品のサルモネラ汚染とヒトのサルモネ ラ症との関係が、公衆衛生上重要な問題として提起されてきた。すなわち、家畜のサ ルモネラ感染は、生産性に影響を与える家畜疾病としてのみならず、食品である畜産 物の安全・安心にかかわる重要な関心事項にもなっている。家畜衛生週報にある届出 伝染病発生調査によると、2004 年の家畜のサルモネラ症の発生は、ウシでは 93 戸 530 頭、ブタでは 68 戸 403 頭、ニワトリでは 4 戸 59 羽であった。しかしながら、これら は有症の発生事例の届出数であり、不顕性感染事例は含まれない。実際にはどれほど 存在するか想像もつかないサルモネラに不顕性感染した動物は、他の個体への感染源 となって汚染を拡大するだけでなく、生産される畜産物に菌が付着することによって 食品汚染の原因ともなる。従って、家畜のサルモネラ感染対策においては、顕性感染 の発生の制御はもちろんのことながら、不顕性に感染している保菌動物に対する対策 もこれに勝るとも劣らず重要な課題である。家畜のサルモネラ症対策として、一般的 に抗生物質の投与が行われるが、多用すると耐性菌の出現を誘発するという問題もあ り、不用意に投与することは避けるべきである。さらに、保菌動物の摘発・隔離・淘 汰、環境の徹底した洗浄・消毒といった衛生対策の向上により農場の清浄化を目指す 必要があるが、一度サルモネラが侵入すると一般的な衛生対策のみで完全に菌を排除 することは極めて困難とされている。そのため、対策の基本は、まず第一に農場に菌 を侵襲させないことである。すなわち、導入する動物の検疫、畜舎環境を含めた定期 的な微生物モニタリング、ヒトの出入制限や着衣交換等によるバイオセキュリティー の強化、清掃・消毒の徹底、媒介動物の駆除および生菌剤の投与等が重点項目となる。 ワクチン接種もその項目のひとつである。我が国では、ウシ及びニワトリ用のサルモ ネラワクチンは利用可能となったが、ブタ用ワクチンはいまだ利用できない。ニワト リ用ワクチンは、ニワトリのサルモネラ症を予防することよりも、むしろ腸管内に定 着するサルモネラの菌数を低減することにより、鶏卵へのサルモネラの移行を防ぐこ とを目的としている。統計をみる限りでは、ニワトリ用ワクチンの普及に伴いヒトの S. Enteritidis による食中毒の発生数は減少傾向にあるようにみえるが、いまだ S. Enteritidis の浸潤のある農場も認められることから、今後、さらなる徹底した対策 を実施してゆく必要がある。家畜のサルモネラ症対策は、安全かつ安心できる畜産物 を生産する上での根幹となることから、引き続き様々な対策を総合的かつ徹底的に実 施してゆくことが不可欠である。 Eimeria brunetti の浸潤状況調査と病原性試験 川原史也、大永博資、長井伸也 日本生物科学研究所 第 140 回日本獣医学会(2005 年) 要旨:【緒言】Eimeria brunetti (Eb) は、従来、わが国にはほとんど浸潤がないと されていた。今回、国内の種鶏場における調査から、本原虫の浸潤が拡大している傾 向が示されたので報告する。 【材料と方法】2004 年から 2005 年にかけて、国内 7 カ所 の種鶏場から採取した糞便材料を検査した。常法によりオーシストを分離し、Eb 特異 的 PCR 法により同定を行なった。病原性試験には、1 群 10 羽の 3 週齢 SPF 鶏を用い、 1 羽あたり 3×104 個(低用量)または 3×105 個(高用量)の分離株オーシストを投 与し、8 日間臨床症状を観察した。投与後 8 日に剖検し、腸管の肉眼病変を観察し、 一部は病理組織学的検査も行なった。 【結果】調査した野外の種鶏場 7 農場のうち、5 農場が Eb 陽性であった。感染実験では両投与量群とも、投与後 4 日から 8 日に血液 を混じた水様∼粘液状の下痢を呈し、低用量群で 1 羽、高用量群で 2 羽が死亡した。 糞便中のオーシスト数は、投与後 7 日をピークとし、両群とも約 3×105 個/g であっ た。投与後 7 日間における平均増体率では、非投与対照群を 1 とした時、低用量群で 0.22、高用量群で-0.13 と、顕著な増体の低下が認められた。腸管の病理組織学的検 査において、回腸、盲腸および直腸の粘膜上皮内で Eb が多量に増殖した像が観察さ れた。【考察】今回、Eb が高率に分離されたことから、わが国において本原虫の浸潤 が拡大傾向にあることが明らかになった。Eb は鶏に対して強い病原性を示した。この ことから、今後、わが国の鶏コクシジウム症における本原虫の病原学的意義が注目さ れるところである。 鶏コクシジウム症と生ワクチンによる対策 川原史也 日本生物科学研究所 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨:鶏コクシジウム症は、Eimeria 属原虫の寄生による鶏の腸炎を主体とする疾病 である。ブロイラーとその種鶏などの平飼い鶏に多発し、育成率、飼料要求率および 産卵率などを悪化させるため、産業上非常に重要視されている。現在、鶏寄生種とし て 9 種類の Eimeria 属原虫が報告されているが、そのうち感染による被害が問題とな るのは、E. acervulina、E. brunetti、E. maxima、E. necatrix および E. tenella の 5 種類が主体である。本病は、糞便中に排泄されるオーシストにより感染が広がる ため、対策としてオーシストの汚染と拡散を極力排除するための良好な衛生管理が求 められる。しかしながら、現在の集約的な養鶏形態において、鶏コクシジウム原虫の 汚染を衛生管理だけで制御することは不可能であるのが実状であり、通常は飼料中に コクシジウム予防剤を添加することにより、疾病の発生を抑制しているところである。 予防剤は優れた有効性、安全性を有するうえに低コストであるため、現在の予防対策 の中心的役割を果たしているが、最近、耐性株の出現の問題や薬剤に頼らない食品生 産を求める消費者ニーズの高まりなどから、その代替法が希求されている。EU 諸国で は世界に先駆け、飼料中への予防剤の添加を大幅に制限する方針が打ち出されている。 この予防剤の代替法として注目を集めているのが、コクシジウム生ワクチンである。 コクシジウム原虫に感染した鶏が強固な免疫を獲得する現象は古くから明らかにさ れていたため、計画的に鶏にコクシジウムを感染させて免疫を付与する手段として生 ワクチンが開発されてきた。最初に製品化されたのは、野外分離株を継代して得たオ ーシストを含有する非弱毒タイプの生ワクチンであったが、その後、より安全性を高 めた弱毒タイプの生ワクチンが開発されるようになった。コクシジウムの弱毒化は、 早熟性を有するオーシストを作出する方法が主流である。早熟化した弱毒株の特徴と して、弱毒性状が安定しており病原性の復帰がないこと、投与動物に種特異的な免疫 を付与できることがあげられ、生ワクチン用株として適した性状を有する。日本にお いては、現在 3 製品の鶏コクシジウム生ワクチンが承認および販売され、主要な 5 種 のコクシジウムのうち 4 種については生ワクチンで対応が可能となった。鶏コクシ弱 毒 3 価生ワクチン(TAM)は、初生から 6 日齢の平飼い鶏を対象とし、E. acervulina、 E. maxima および E. tenella の早熟化弱毒株のオーシストを主成分としている。鶏コ クシ弱毒生ワクチン(Neca)は 3 日齢から4週齢の平飼い鶏を対象とし、E. necatrix の早熟化弱毒株のオーシストを主成分としている。我が国においても、抗生物質や化 学合成薬剤に頼らずに鶏を生産する取り組みが盛んになってきているため、これらの 生ワクチンの使用量は急速に伸びている。E. brunetti は従来、日本にはほとんど存 在しない種と考えられてきた。ところが近年、日本各地の農場からの分離例が増加し ており、本種の全国的な浸潤が伺われる。実際にコクシジウム症の発症事例に関与し ている事例も散見されているため、新規 E. brunetti 用生ワクチンの開発が望まれる。 離乳ミニブタを用いた Isospora suis の実験感染 平 健介、川原史也、長井伸也 日本生物科学研究所 第 141 回日本獣医学会(2006 年) 要旨: 【背景】Isospora suis の感染は哺乳豚に発生する下痢症の一因である。本虫の 哺乳豚における寄生率は高いが、その感染源は明らかにされていない。そこで、これ を解析するための一助として、離乳直後のミニブタを用いて I. suis の感染実験を行 い、排泄オーシスト数の推移を調査した。 【方法】3 頭の 1 ヶ月齢雌ミニブタに、成熟 オーシストをそれぞれ 10,000 個(豚 A)、100,000 個(豚 B)または 1,000,000 個(豚 C)を経口投与した。さらに豚 A と C では投与後 27 日に、初回投与時と同数のオーシ ストを用いて、2 回目の投与を行った。これらの試験豚について、初回投与後 50 日ま で糞便 1g 中のオーシスト数(OPG)を毎日測定した。 【結果】投与後 5∼6 日から全頭 にオーシストの排泄がみられた。その後 OPG 値は 2∼3 回のピークを示した後減少し、 投与後 18 日には検出されなくなった。最高 OPG 値は投与後 7 日に認められ、豚 A で 1,277,500、豚 B で 288,400 および豚 C で 84,900 であった。2 回目投与後のオーシス ト排泄は認められなかった。便の性状については、全頭、全期間において異常はみら れなかった。【考察】離乳ミニブタにおけるオーシストの排泄パターンは、通常の哺 乳豚における既報のデータと類似したことから、本系が I. suis の実験感染モデルと して有用であることが示された。一般に、離乳豚における I. suis の感染性は低いと されているが、今回の成績から、野外において無症状感染した離乳豚が I. suis を排 泄し、これにより本虫による農場の汚染が拡大する可能性が示唆された。 中国新疆ウイグル自治区における家畜の各種リケッチア感染状況調査 猪熊 壽 1)、巴音査汗 2)、簡 子健 2)、玄 学南 3)、佐藤雪太 4)、壁谷英則 4)、土屋耕 太郎 5)、坂本和仁 1)、奥田 優 1)、見上 彪 4)、丸山総一 4) 1)山口大学、2)新疆農業大学、3)帯広畜産大学、4)日本大学、5)日本生物科学 研究所 第 139 回 日本獣医学会(2005 年) 要旨:【はじめに】中国は地理的にわが国の防疫上重要な隣国であるが、極めて広大 な国土を有するため、全国的な感染症発生状況等は把握されていない。とくに新疆ウ イグル自治区は畜産業を基幹とする中国最大の省であるが、人と動物の共通感染症に 関しては知見が少なく、リケッチア性疾患ついてはほとんど実態が不明である。そこ で新疆ウイグル自治区の各種リケッチア感染状況を把握するため各種家畜の血清学 的検索を行った。【材料と方法】新疆ウイグル自治区のウシ 146 頭、ヤギ 133 頭、ヒ ツジ 134 頭、ウマ 85 頭、ロバ 93 頭、ブタ 30 頭の血清を材料に、免疫蛍光抗体法に よりエールリッヒア 4 種 Anaplasma phagocytophilum 、 Ehrlichia chaffeensis 、 Ehrlichia canis、Neorickettsia ristici、および紅斑熱群リケッチア 1 種 Rickettsia japonica に対する抗体を検索した。 【結果と考察】ウシ 23 頭(15.8%)、ヤギ 6 頭(4.5%)、 ヒツジ 29 頭(21.6%)、ロバ 1 頭(1.1%)が、いずれかのエールリッヒアと抗体価 20 倍以上で反応を示した。ウシとヒツジでは 320 倍以上の高い抗体価を示すものも確認 されたが、ウマとブタでは反応するものはなかった。いっぽう、R.japonica に対し てはウシ 9 頭(6.2%)、ヤギ 15 頭(11.3%)、ヒツジ 8 頭(6.0%)、ウマ 3 頭(3.5%)、 ロバ 1 頭(1.1%)が抗体価 20 倍以上で反応したが、極端に高い抗体価を示すものは なかった。今回の調査により、リケッチア性病原体が新疆ウイグル地区の家畜に感染 していることが示唆されたが、これらの病原体は地理的変異が大きく、陽性検体は今 回抗原として用いた病原体の近縁種に感染している可能性も否定できないため、今後 分子生物学的な検索が必要と考えられた。 中国新疆地域におけるウマ・ロババベシア原虫感染症の疫学調査 玄 学南 1)、 五十嵐郁男 1)、巴音査汗 2)、簡 子健 2)、猪熊 壽 3)、土屋耕太郎 4)、 森田幸雄 5)、佐藤雪太 6)、壁谷英則 6)、森友忠昭 6)、見上 彪 6)、丸山総一 6) 1)帯広畜産大学、2)新疆農大、3)山口大学、4)日本生物科学研究所、5)群馬県、 6)日本大学 第 139 回 日本獣医学会(2005 年) 要旨:【はじめに】新疆ウイグル自治区は畜産業を基幹産業とする中国で最大の省(全 国土面積の約 1/6 を占める)である。地理的にはユーラシア大陸の中央に位置し、モ ンゴル、ロシア、インド、パキスタン、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、ア フガニスタンなど計8ケ国と国境を接している。中国西部地域及び中央アジアにおけ る動物住血原虫感染症の疫学調査の一環として新疆地域のウマ・ロババベシア原虫感 染症の疫学調査を行った。【材料と方法】新疆ウイグル自治区の北部に位置するアル タイ地区、西北部に位置するイリ地区及び西部に位置するカシュガル地区から計 155 頭のウマ血清と 93 頭のロバ血清を採集し、バベシア原虫抗体検索に供試した。B.equi に対する抗体測定には組換え EMA2 を抗原とした ELISA 法を、また、B.caballi に対 する抗体測定には組換え BC48 を抗原とした ELISA 法を用いた。【結果と考察】ウマ の B.equi と B.caballi 抗体陽性率はそれぞれ 58.7%と 58.0%であった。また、ロ バの B.equi と B.caballi 抗体陽性率はそれぞれ 9.6%と 38.7%であった。ウマの 感染率がロバの感染率より高いのは、前者が後者より放牧される機会が多いことにも 起因すると考えられた。これらの結果より、ウマ・ロババベシア感染症が新疆地域に 広く浸潤・蔓延していることが示唆された。 馬ピロプラズマ病抗体測定用 ELISA の評価 安斉 了 1)、五十嵐郁男 2)、土屋耕太郎 3)、片山芳也 1)、衛藤真理子 4)、杉本千尋 2)、 熊田 健 5)、神尾次彦 6)、明石博臣 7) 1)JRA 競走馬総合研究所、2)帯広畜産大学、3)日本生物科学研究所、4)動物検疫所、 5)動物医薬品検査所、6)動物衛生研究所、7)東京大学 第 140 回 日本獣医学会(2005 年) 要旨:【目的】馬ピロプラズマ病(T.equi および B.caballi 感染症)の血清診断法 については、OIE マニュアルに「国際取引に指定された方法」として CF と IFA が記載 され、わが国の輸入検査では CF が用いられているが、CF 抗原は馬に原虫を接種して 作製しなければならず、多大な経費を要する。本研究では、わが国で開発された複数 の ELISA 法について比較試験を行い、CF や IFA のスクリーニング検査としての実用性 を評価した。【方法】血清には、非感染馬血清 195 検体、実験感染馬経過とその希釈 血清 374 検体および輸入検疫摘発馬血清 35 検体の計 604 検体を供試した。T.equi 抗体の測定には、EMA-1 ELISA、EMA-2 ELISA および EMA-2 ELISA の反復性と検出 感度(OD 値)を改良した EMA-2 ELISA 変法の 3 種類の ELISA 法ならびに CF と IFA を用いた。B.caballi 抗体の測定には、dNF4 ELISA、peptide#19 ELISA、P48 ELISA および P48 ELISA の反復性を改良した P48 ELISA 変法の 4 種類の ELISA 法ならびに CF と IFA を用いた。【結果】T.equi 抗体測定 ELISA では、EMA-2 ELISA が最も診断 感度と特異性に優れた方法であった。EMA-2 ELISA 変法もオリジナル法に比べ僅かに 診断感度の低下が認められただけであった。B.caballi 抗体測定 ELISA では、P48 ELISA とその変法が最も診断感度と特異性に優れた方法であった。結論として、EMA-2 ELISA、P48 ELISA およびそれらの変法は、輸入検疫における CF もしくは IFA のスク リーニング検査に用いることが可能と考えられた。 キニジンの血漿中での動態 北条隆男、斎藤敏樹 日本生物科学研究所 第 32 回トキシコロジー学会学術年会(2005 年) 要旨:【背景と目的】一般に薬物は血漿タンパクに結合していない遊離型だけが組織 間を移行し、薬効や毒性に関与する。したがって、血漿中での薬物の遊離型濃度の把 握は非常に重要 である。多くの薬物はアルブミンに結合しやすいが、塩基性薬物の 中には alpha-1 acid glycoprotein(AGP)に強く結合するものがある。AGP は容量が 小さく感染症や炎症などにより血中濃度が増加することが知られている。よっ て、 その変化が AGP に高親和性の薬物の動態に大きく影響する可能性がある。今回、塩基 性薬物として quinidine(QN)を選択し、数種の動物を用 いて QN の血漿中動態と血 漿中 AGP 濃度との関連を調べた。 【方法】血漿中に既知の濃度の QN を添加し、限外濾 過法により遊離型濃度を HPLC で測定した。結合型濃度は算出した。【結果と考察】 Scatchard plots の結果、どの動物種においても結合型濃度と遊離型にたいする結合 型の比の関係は 2 相性を示した。非線形最小二乗法により結合動態パラメーターを 求 め、血漿中 QN の動態をシミュレーションした。その結果、QN の動態は種によって大 きく異なることが示された。さらに、AGP 濃度を変化させた場合、遊離型濃度の変化 も動物種により異なることが示された。よって、AGP に親和性の高い薬物において、 動物種間の薬効、毒性を比較する際、血漿中総濃度のみを 考慮するとその評価を誤 る可能性があることが考えられた。 mRNA expression of estrogen receptor α and β, cytochrome P450 17αhydroxylase, cytochrome P450 aromatase, anti-Müllerian hormone, and androgen receptor in developing gonads of Japanese quail Keigo Nakamura1), Kazumoto Shibuya1), Noboru Saitou2), Kiyoshi Shimada2), Takuya Hirai1) and Tetsuo Nunoya1) 1) Nippon Institute for Biological Science, 2) Nagoya University The 8th Annual Meeting of Japan Society of Endocrine Disruptors Research (2005) Abstract:Adverse effects of endocrine disrupting chemicals (EDCs) in wildlife species and humans have attracted considerable attention during recent years. However, there have been few studies on physiological mechanisms of the effects of EDCs in birds. Certain birds are top of predators in marine and limnic environments and these oviparous species have the potential of high sensitivity to environmental pollutants because of their unique sexual differentiation and reproduction system. Japanese quail (Coturnix japonica) is recommended as the preferred test species in avian reproduction tests by US EPA and OECD. However, there are few reports on the molecular biological profiles during the development and differentiation of gonads in Japanese quail. Therefore, before establishing the assessment of EDC impact in quail, the basic study on the molecular profiles seems essential in relation to embryonic and posthatching quail. In the present study, we investigated mRNA expression of sex hormone and steroidogenic enzymes in developing gonads of Japanese quail. The left gonads of male and female Japanese quail (WE strain) were collected at 16 days of incubation and 3, 7 and 14 days after hatching and used in the study. mRNA levels of cytochrome P450 17αhydroxylase (P450c17), cytochrome P450 aromatase (P450arom), anti-Müllerian hormone (AMH), estrogen receptor (ER) α, β, and androgen receptor (AR) in the gonads were assessed using real time PCR. Specific primers for each gene were designed according to their mRNA sequences of Japanese quail. P450c17 mRNA expression in both male and female gonads increased from 16 days of incubation to 14 days after hatching. P450arom mRNA expression in females was markedly higher than that in males at 16 days of incubation and 3, 7 and 14 days after hatching. AMH mRNA expression in males was significantly higher than that in females at 16 days of incubation, whereas the expression in males decreased after hatching. ERα mRNA was highly expressed not only in females but also in males at 16 days of incubation. ERβ mRNA expression in females was higher than that in males at 16 days of incubation and 3, 7 and 14 days after hatching. There were no specific changes of AR mRNA expression in male or female gonads during observation periods. These results characterized mRNA expression of P450c17, P450arom, AMH, ERα, β, and AR in the developing gonads of Japanese quail. These observations may provide basic information for establishing the assessment method of EDC impact in Japanese quail. 体細胞クローンミニブタの効率的作出法の確立 黒目麻由子 1)、石川孝之 2)、富井 亮 1)、比留間克己 1)、上野 智 1), 齋藤 仁 1)、坂本裕二 2) 、新海久夫 2)、矢澤 肇 2)、近藤 亮 1)、田中千陽 1)、大塚 貴 1)、長嶋比呂志 1) 1)明治大学、2)日本生物科学研究所 第 98 回日本繁殖生物学会大会(2005 年) 要旨:【目的】遺伝的背景の斉一なクローンミニブタの医学・薬学領域研究への応用 に期待がもたれる。本研究は、家畜ブタの体細胞核移植技術をミニブタに適用するた めの条件設立並びに、クローンミニブタの効率的生産法の確立を目的とした。 【方法】 屠場由来卵巣より採取した卵を体外成熟しレシピエント卵子を作製した。ミニブタ胎 仔(NIBS 系雄雌)由来の初代培養繊維芽細胞を核ドナー細胞に用いた。核移植には電 気融合法を用い、移植後 1∼1.5 時間に電気的活性化刺激を加えた。胚移植のレシピ エントには妊娠雌を用いた。妊娠 25∼40 日齢の個体に 0.3mg 合成 PGF2αと 250 IU eCG を投与し発情同期化を行った。[実験1]単為発生卵を発情同期化条件の異なるレシ ピエントに移植し、受胎の有無を調べた。hCG 投与後 2 日目(day1) および 3 日目(day2) のレシピエントブタに活性化後 1 日目および 2 日目の胚を移植し、22 日後に胎仔を確 認した。[実験2]核移植胚の体外発生能および移植後のクローン産仔への発達を調 べた。【結果】[実験1]1 日目胚/day1レシピエント、2 日目胚/day1レシピエン ト、2 日目胚/day2レシピエントといういずれの条件においても受胎が成立した。移 植胚の胎仔への発達率は 15∼27%(6/40∼15/56)であった。[実験2]核移植胚の胚盤 胞への発達率は、雌雄の核ドナー細胞それぞれについて 13.6% (9/66)および 14.3% (14/98)であった。また、合計 11 頭のレシピエントに、それぞれ 60∼110 個の核移植 胚を移植した結果、8 頭(73%)が妊娠し、合計 14 頭(1.4% 14/1021)のクローン産仔が 得られた。本研究で確立した方法により高効率でクローンミニブタの作出が可能であ ることが示された。 Syngenic model としてのレポーター遺伝子トランスジェニッククローンミニブタの生産 長嶋比呂志 1)、黒目麻由子 1)、石川孝之 2)、上野 智 1)、富井 亮 1)、嶋田 新 1)、勝 俣 淳 2)、矢澤 肇 2)、布谷鉄夫 2) 1)明治大学、2)日本生物科学研究所 第5回日本再生医療学会(2006 年) 要旨:【目的】初代培養細胞からのクローンミニブタ作出、ならびにレポーター遺伝 子として EGFP 遺伝子を導入したトランスジェニック(tg) ・クローンミニブタの生産 を目的とした。 【方法】30日齢の NIBS 系ミニブタ雌胎仔より初代培養繊維芽細胞を 樹立し、体細胞核移植の核ドナー細胞に用いた。同時に、この細胞の一部に EGFP 遺 伝子をリポフェクション法によって導入し、選択培養の後、核移植に用いた。肉豚の 卵巣より得た卵を体外成熟させてレシピエント卵を調製し、既報の方法に従ってクロ ーン胚の作製および移植を行った。得られた tg・クローン産仔の体組織ならびにそれ らから樹立した初代培養細胞の GFP 発現を確認した。【結果】クローン胚 331 個を 3 頭のレシピエントに移植した結果、全頭が妊娠し、4 頭のクローン産仔が得られた。 tg・クローン胚 591 個を移植した 5 頭のレシピントの内3頭が妊娠し、10 頭の産仔が 得られた。これらの心臓、肝臓、腎臓、肺、筋肉などの組織並びにその初代培養細胞 において、GFP 発現が確認された。以上の結果から、体細胞核移植によって、クロー ンミニブタのみならず、それらと syngenic な、トランスジェニック・クローンミニ ブタの作出が可能なことが示された。 キメラを介した筋ジストロフィー症ニワトリ再生の試み 藤原 哲1,2)、水谷 誠1)、上田 進1)、布谷鉄夫1)、小野珠乙2)、鏡味 裕2) 1)日本生物科学研究所、 2)信州大学 第52回日本実験動物学会総会(2005年) 要旨: 【目的】ニワトリ筋ジストロフィーは40年以上前からその存在が知られている。 いくつ かの ニワトリ 筋ジストロフィー 発症系 が確立され、その系の一つにNew Hampshire種の413系(NH-413)と呼ばれる系が存在する。現在、NH-413系は福山型筋ジ ストロフィーに相当すると考えられているが、分子生物学的手法による疾患遺伝子の 同定は未だ明らかにされていない。そこで、我々は、(財)日本生物科学研究所で確 立された白色レグホン(L-M系)とNH-413系を用いてキメラを作成し、筋ジストロフ ィー症ニワトリの発生遺伝子工学的作出を試みた。【材料及び方法】材料には白色レ グホン受精卵(L-M系)をレシピエントとし、NH-413系受精卵(筋ジストロフィー症) をドナーとした。作出方法としては、レシピエント受精卵にUV照射後、胚盤葉明域中 央部の一部を取り除いた後、そこへドナー細胞(胚盤葉明域中央部)を移植し、キメ ラを作出した。作出したキメラのうちドナー由来の表現型(羽毛色)を発現している 個体をキメラと判定した。[結果]作出したキメラ個体は、孵化直後表現型および行動 による判定は困難であった。しかし、孵化後4日齢以降羽装に変化が認められ、2週齢 頃には首を傾ける行動、片側の羽が挙がりにくいなどの行動異常が認められた。以後、 観察を進めたがその他顕著な行動異常は認められなかった。NH-413系のように羽が硬 直するといった症状(フリップテスト陽性)は現れなかったが、行動異常は現在も認 められている。【考察】今回の実験では、外観によるニワトリ筋ジストロフィー症の 発症は認められなかった。しかし、行動異常を示したことから筋ジストロフィー遺伝 子の関与が考えられた。そこで、NH-413系との人工授精を行ない、後代から筋ジスト ロフィー症を発症する個体の作出を試みている。もし、後代に筋ジストロフィーを示 す個体が出現したならば、新たな実験動物生産法として有用ではないかと示唆される。 発生工学的手法を用いた筋ジストロフィー症ニワトリの再生 藤原 哲1,2)、小野珠乙2)、鏡味 裕2) 1)日本生物科学研究所、 2)信州大学 日本畜産学会 第105回大会(2005年) 要旨: 【目的】ニワトリ筋ジストロフィーは40年以上前からその存在が知られており、 今までに多くのニワトリ筋ジストロフィー発症系が確立されてきた。その一つにNew Hampshire種の413系(NH-413)と呼ばれる筋ジストロフィー発症系が存在する。現在、 NH-413系は候補として福山型筋ジストロフィーを発症するということが判明してい る。しかし、分子生物学的手法による筋ジストロフィー遺伝子の同定は現在に至るも 明らかにされていない。そこで、我々は、(財)日本生物科学研究所で確立された白 色レグホン(L-M系)とNH-413系を用いてキメラを作成し、筋ジストロフィー症ニワ トリの発生工学的作出を試みた。【材料及び方法】材料には白色レグホン受精卵(L-M 系)をレシピエントとし、NH-413系受精卵(筋ジストロフィー症系)をドナーとした。 レシピエント受精卵の胚盤葉明域中央部の一部を物理的に除去後、そこへドナーより 採取した胚盤葉明域中央部細胞をインジェクションし、NH-413系由来のキメラニワト リを作出した。作出したキメラのうちドナー由来の表現型(羽毛色)を発している個 体をキメラとした。また、NH-413系と作出キメラの人工授精を行った。【結果】孵化 直後のキメラ個体は、表現型、行動による筋ジストロフィー症発症などの特性は確認 できなかった。しかし、孵化後4日齢以降羽装にドナー由来の羽装が認められ、2週齢 頃には首を傾ける行動、片側の羽が挙がりにくいといった行動異常が確認できた。そ の後、観察を継続したが顕著な行動異常は確認できなかった。NH-413系のように羽が 硬直するといった症状(フリップテスト陽性)は出現しなかったが、行動異常は現在 も続いている。また、NH-413系と作出キメラの人工授精後の雛は、すべてドナー由来 の羽装を確認できた。【考察】今回の研究では、作出キメラニワトリにおいて筋ジス トロフィー症の発症は確認できなかったが、行動異常を示したことから筋ジストロフ ィー遺伝子の関与が考えられた。また、後代から筋ジストロフィー症を発症する個体 の作出を試みたところ、全ての雛においてドナー由来の羽装を示したものの、筋ジス トロフィーの発症は、現在のところ確認できていない。今後、表現型と筋ジストロフ ィー遺伝子の関連性を詳細に分析する必要がある。 ニワトリ幹細胞の培養と分化制御 鏡味 裕1)、虫鹿友規1)、臼井文武1)、山本耕裕1)、藤原 哲2)、渡部理恵1)、田上貴寛3)、 松原悠子4)、小野珠乙1) 1)信州大学、2)日本生物科学研究所、3)畜産草地研究所、4)農業生物研究所 日本畜産学会 第105回大会(2005) 要旨:【目的】ニワトリ初期胚から得られた幹細胞または始原生殖細胞をin vitroで 培養する。こうして多能性を保持する培養細胞系を樹立する。この培養細胞の発生分 化を制御し生殖細胞や各種の臓器、器官の再生を試みる。【方法】放卵直後の胚盤葉 明域中央部から幹細胞または始原生殖細胞を採取する。これらの細胞を多能性を保持 したまま培養する。培養後の細胞の多能性を検定する。また、幹細胞をドナーとしレ シピエントに顕微注入する。操作胚を全胚培養系で培養しキメラ個体の作出を試みる。 こうして得られたキメラにおいて、ドナー細胞の生殖細胞や臓器、器官への発生再生 の可否を検定する。【結果】培養した幹細胞は多能性を保持したまま増殖した。特に 培養液にニワトリ由来のサイトカイン(SCF)を添加した場合にはその増殖が顕著で あった。また、キメラを作出した場合、生殖細胞系譜へと発生再生したのみならず各 種の臓器や器官として発生再生する可能性が示唆された。【結論】初期胚由来の幹細 胞または始原生殖細胞をin vitroで多能性を保持したまま培養することが可能となっ た。これらの成果は今後、遺伝子導入ニワトリの作出におけるベクター細胞としての 活用や臓器。器官の再生に有用であろうと思われた。 ニホンウズラ連鎖地図に対する機能遺伝子のマッピング 日根ノ谷智子1)、笹崎晋史1)、林 邦忠1)、矢澤 肇2)、藤原 哲2)、万年英之1) 1)神戸大学、2)日本生物科学研究所 日本動物遺伝育種学会大会 第6回大会(2005) 要旨:【目的】本研究室ではこれまでニホンウズラの詳細な連鎖地図構築のため、AFLP 法を用いてフレームワークマップの作成を行ってきた。しかしAFLPマーカーは染色体 情報を持たないため、各連鎖群と染色体との関係を明らかにするために、機能遺伝子 マーカーなど情報を有するマーカーの位置付けが必要とされる。そこで本研究ではニ ワトリ全ゲノム情報を用いて作成した機能遺伝子マーカーをニホンウズラに適用し、 AFLPマーカーにより構築された連鎖地図上へのマッピングを試みた。【方法】ニワト リ全ゲノム情報を用いて機能遺伝子のexon部分にプライマーを設計し、ニホンウズラ 基準家系(Kobe-NIBS)に適用した。増幅が認められたものに対して、PCR-RFLP法や シーケンスにより多型を探索した。多型が検出されたものについては、戻し交雑(BC) 個体50個体でPCR-RFLP法を用いてタイピングし、連鎖地図上へ位置付けた。連鎖解析 には解析プログラムMapmanager QTXb11を使用し,LOD score3の閾値で連鎖群を作成 した。 【結果】ニワトリマクロ染色体(GGA1∼GGA8)における152個の機能遺伝子につ いてプライマーを作成しPCR増幅を行ったところ、121個(79.6%)で増幅が確認され た。そのうち雌親由来の多型が検出されたものは52個存在した。これらについてBC 50 個体を用いてタイピングしマッピングを行った結果、2つのマーカーを除く全てのマ ーカーが連鎖地図上に位置付けられ、ニワトリ染色体との比較をとることができた。 ニワトリ染色体とニホンウズラ連鎖地図の比較においては、機能遺伝子の順序におい て多少の逆位が観察されたものの、いずれの連鎖群においても高い相同性が確認され た。これらの結果は、ニワトリ、ニホンウズラ間での染色体の強い類似性を示してお り、これら連鎖群をCJA1∼CJA8と名付けた。 F2家系を用いたニワトリ筋ジストロフィー原因遺伝子の探索 丸瀬英明1)、松本大和1)、吉澤奏子1)、藤原 哲2)、市原伸恒3)、菊池建機4)、万年英之1) 1)神戸大学、2)日本生物科学研究所、3)麻布大学、4)国立精神神経センター 日本畜産学会 第106回大会(2005) 要旨:【目的】筋ジストロフィーはニワトリにおいても発症が確認されているが、そ の原因遺伝子は不明である。これまでの研究からその原因遺伝子はニワトリ第2染色 体q腕の約120.5Mb∼124.5Mbの領域に位置することが示されている。本研究ではこの 候補領域をさらに絞込むため、F2家系を新たに作成しハプロタイプ分析を行った。 【方 法】F2家系における表現型は、組織染色法およびcreatine kinaseとpyruvate kinase の酵素活性により判定した。候補領域における新たなマーカーを開発するため、家系 両親間においてマイクロサテライトマーカーなどの多型を探索した。【結果】合計23 マーカーにおいて家系両親間に多型が認められ、これらマーカーを用いてF2 238個体 でタイピングを行った。マーカー情報と筋ジストロフィー表現型判定の結果からハプ ロタイプ分析を行った所、ニワトリ第2染色体q腕のおよそ122Mb∼123Mbの間、約1Mb の領域でニワトリ筋ジストロフィー表現型判定とマーカーの型が一致した。これによ り、この領域に位置する7遺伝子が本疾患原因候補遺伝子と示唆された。 ニワトリ-ニホンウズラ間における比較染色体地図の構築 笹崎晋史1)、日根ノ谷智子1)、林 邦忠1)、藤原 哲2)、万年英之1) 1)神戸大学、2)日本生物科学研究所 日本畜産学会 第106回大会(2005) 要旨: 【目的】本研究室ではこれまでニホンウズラの詳細な連鎖地図構築のため、AFLP 法を用いてフレームワークマップの作成を行った。しかし、各連鎖群と染色体との関 係を明らかにするためには、情報を有するマーカーの位置付けが必要とされる。そこ で本研究では機能遺伝子マーカー及びマイクロサテライト(MS)マーカーをニホンウ ズラに適用し、AFLP マーカーにより構築された連鎖地図上へのマッピングを試みた。 【方法】機能遺伝子マーカーについては、ニワトリ全ゲノム情報を用いて機能遺伝子 のイントロン部分を増幅するようにプライマーを設計し、シーケンスにより多型を探 索した。MS マーカーについては、Kayang ら(2002)により報告されている 102 個の ウズラ MS を適用した。多型が検出されたものについては、戻し交雑(BC) 個体 50 個 体を用いてタイピングし、ウズラ連鎖地図上へ位置付けた。 【結果】合計 57 個の機能 遺伝子、28 個の MS について連鎖地図に位置付けた。これら 85 個のマーカーを用いて、 ニワトリ染色体とニホンウズラ連鎖地図を比較したところ、多少の逆位が観察された ものの、ニワトリ染色体 1-8 に対応するウズラ連鎖群において高い相同性が確認され た。従って、これら連鎖群をウズラ染色体 CJA1-8 と名付けた。 分子量の異なる IA-2βの切断部位および細胞内局在の解析 竹山夏実 1), 2)、川上登美子 2)、佐伯圭一 2)、松本芳嗣 2)、小野寺節 2) 1)日本生物科学研究所 2) 東京大学 第 140 回日本獣医学会(2005 年) 要旨:【背景・目的】IA-2βは、蛋白チロシン脱リン酸化酵素ファミリーに分類され る膜一回貫通型蛋白質である。膵島β細胞のインスリン分泌顆粒膜に存在し、インス リン分泌に関与している。マウス IA-2βは、アミノ酸部位 413-414 において切断され、 60 kDa で発現する分子と考えられている。しかし演者らは、マウス脳において 60 kDa 以外にも 64, 71 kDa の IA-2βが存在することを明らかにし、第 136 回獣医学会で発表 した。3 つの IA-2βを分子量に従い IA-2β60, IA-2β64, IA-2β71 とし、本研究ではこ れら分子量の異なる IA-2βが生じる原因を明らかにすることを目的とした。【材料・ 方法】マウス脳に発現する IA-2β60, IA-2β64, IA-2β71 および膵島β細胞株 MIN6 の IA-2β60 を免疫沈降法により精製し、エドマン法を用いて N 末端アミノ酸配列を決 定した。また、ショ糖密度勾配遠心法により細胞内小器官を分画し、分泌顆粒マーカ ーIA-2、シナプス顆粒マーカーsynaptophysin を用いて IA-2βが存在する細胞内小器官 を推定した。 【結果・考察】マウス脳 IA-2β71, IA-2β64, IA-2β60 の N 末端アミノ酸 5 残基は、SEQPE, APELW, EVQPS であり、それぞれアミノ酸 414, 464, 489 からの配 列に一致した。また、MIN6 の IA-2β60 の N 末端は、脳の IA-2β60 と同一アミノ酸 489 であった。413-414 で切断される分子は IA-2β60 ではなく IA-2β71 であることが 初めて明らかになった。マウス脳組織のショ糖密度勾配遠心法により IA-2β60 はシ ナプス顆粒画分に、IA-2β71, IA-2β64 は分泌顆粒画分に分画された。このことから、 IA-2βは分子量に応じて 2 つの異なる調節性分泌顆粒膜に存在し、機能する分子であ ることが示唆された。また、これらの調節性分泌顆粒が有する切断酵素の種類により、 IA-2βが異なる切断を受けると考えられた。 2−2.誌上発表(17件) Infectivity of porcine circovirus 1 and circovirus 2 in primary porcine hepatocyte and kidney cell cultures Hirai T., Nunoya T., Ihara T., Saitoh T., Shibuya K. and Nakamura K. Nippon Institute for Biological Science The Journal of Veterinary Medical Science. 68 (2): 179-182, 2006. Abstract:Infectivity of porcine circovirus (PCV) 1 and PCV2 was examined in primary porcine hepatocyte culture by comparing that of PCV in primary kidney cell culture. The virus titer of PCV2-infected hepatocyte cultures was higher than that of the PCV1-infected hepatocyte cultures and the PCV-infected kidney cell cultures. The number of virus-positive cells was most abundant in PCV2-infected hepatocyte cultures as determined by immunohistochemistry and/or in situ hybridization. The results of our data suggest that PCV2 preferably infects cultured hepatocytes as observed in the liver of pigs with postweaning multisystemic wasting syndrome. Contamination of a specific-pathogen-free rat breeding colony with human parainfluenzavirus type 3 Miyata H.1), Kanazawa T.1), Shibuya K.2) and Hino S.3) 1)University of Occupational and Environmental Health, 2)Nippon Institute for Biological Science, 3)Tottori University Journal of General Virology, 86: 733-741, 2005. Abstract: Routine antibody surveillance for Sendai virus in a breeding colony suggested viral invasion into laboratory rats. A more specific haemagglutination-inhibition test implied that the agent was related closely to Human parainfluenza virus type 3 (hPIV3), rather than Sendai virus. To isolate this virus, Vero cells were inoculated with lung homogenates of 30 young animals from the colony. One of the cultures became positive at the second passage by RT-PCR directed to the hPIV3 NP and L genes. Cytopathic effect with cell fusion was observed at the third passage. The HN gene of this virus (KK24) had >93 o/o similarity to those of other hPIV3 isolates, suggesting a human origin of KK24. Experimental intranasal inoculation of KK24 into SD rats showed virus replication in the lungs at 3-5 days post-infection (p.i.). Pathological examination of the lungs at day 5 p.i. indicated a moderate detachment, degradation and apoptosis of bronchial epitheliocytes with peribronchial mononuclear infiltrations. At day 7 p.i., these changes became less prominent, and no lesions were apparent at day 10 p.i. or later. The infected rats seroconverted at day 7 p.i. On the contrary, none of the 30 experimentally infected ICR mice showed any pathological lesions in their lungs, despite seroconversion at 7 days p.i. These results suggest that hPIV3 can invade rat colonies and has a moderate and transient pathogenicity in rats. This is the first report of non-experimental hPIV3 infection in laboratory rats, unexpectedly detected by antibody screening for Sendai virus. Field basis evaluation of Eimeria necatrix-specific enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) for Its utility in detecting antibodies elicited by vaccination in chickens Onaga H., Kawahara F., Umeda K. and Nagai S. Nippon Institute for Biological Science The Journal of Veterinary Medical Science, 67(9): 947-949, (2005) Abstract: Eimeria necatrix-specific ELISA, using a recombinant antigen(the cDNA-clone NP19 expressing protein),was utilized to detect antibodies against E. necatrix in breeder pullet flocks that had previously received an attenuated live vaccine to E. necatrix. Vaccinated flocks were discriminated significantly from non-vaccinated flocks by their antibody titers and antibody positive rates at 30-55 days post-vaccination. In addition, E. necatrix-oocysts were confirmed in fecal samples of vaccinated flocks using PCR in the case where the antibody positive rates rose. These findings implied that the vaccination prompted repeated infections, and consequently the chickens generated antibodies and secured their protection against virulent field-E. necatrix. Therefore, the ELISA was suggested to be a useful tool to estimate the immune state of chickens as a result of vaccination with a live E. necatrix-vaccine. Comparative evaluation of sex reversal effects of natural and synthetic estrogens in sex reversal test using F1(AWE x WE) Japanese quail embryos. Shibuya K., Mizutani M., Sato K., Itabashi M. and Nunoya T. Nippon Institute for Biological Science Journal of Poultry Science 42: 119-129, 2005. Abstract: Sex reversal effects of 17 beta-estradiol (E2), diethylstilbestrol (DES) and ethynylestradiol (EE2) on male gonads in F1(AWE x WE) Japanese quail (Corturnix japonica) embryos were comparatively evaluated in a newly developed in vivo screening model called as the sex reversal test. Male and female offspring of F1(AWE x WE) Japanese quail exhibit exactly wild and albino plumage colors, respectively, ruled by a criss-cross inheritance. The natural and synthetic estrogens were injected into egg white just before the incubation. At 16 days of incubation, embryos were subjected by a complete necropsy and their gonads were grossly observed and examined histopathologically and morphometrically. Grossly, genetic sex confirmed by plumage colors coincided completely with external sex phenotype of the gonads in all embryos of the control group and E2 and DES-treated groups. However, several male embryos with wild plumage in the EE2 2000 ng group possessed an ovary-like gonad in the left side and a vestigial right gonad. Histopathologically, E2, DES and EE2 exposures induced a dose-dependent sex reversal effect, i.e. ovotestis develpment, in the left testis. The left testes showing an ovary-like morphology in the EE2 2000 ng group consisted of the most of area replaced with ovarian tissue and the small area of remaining testicular cords. The incidence and morphometric analysis of the ovotestis revealed that the order of potency of sex reversal effect in Japanese quail embryos was EE2 > DES > E2. E2, DES and EE2 exposures induced no noticeable changes in the ovaries of any embryos. The present study suggests that the sex reversal test using F1(AWE x WE) Japanese quail embryo is possible to evaluate feminization effects of endocrine disrupting chemicals with estrogenic activities in avian male embryos. Vitellogenin detection and chick pathology are useful endpoints to evaluate endocrine disrupting effects in avian one-generation reproduction study. Shibuya K.1), Wada M.2), Mizutani M.1), Sato K.1), Itabashi M.1) and Sakamoto T.3) 1) Nippon Institute for Biological Science, 2) Tokyo Medical and Dental University, 3) Trans Genic Environmental Toxicology and Chemistry 24: 1654-1666, 2005. Abstract: To investigate additional endpoints for screening of endocrine disruptors in birds, effects of 17 beta-estradiol (E2) on one-generation reproduction in the Japanese quail (Coturnix japonica) were assessed. Pairs of the 10-week-old Japanese quail were fed a low phytoestrogen diet containing E2 at 0 (control), 10, 100, and 1000 ppm for 6 weeks. In the E2 100 and 1000 ppm groups, the parental quail represented marked toxic changes including high mortality, decreased food consumption, decreased gonad weights, gross and histologic toxic changes in the reproductive and other organs, and inhibition of the reproduction. However, no adverse effects were observed in the parental quail of the E2 10 ppm group. In the parental males, serum vitellogenin (VTG) concentrations were significantly increased in the E2 10 ppm group, disclosing that serum VTG concentration is one of highly sensitive endpoints for evaluating estrogenic endocrine activities. In the E2 10 ppm group, number of eggs laid, number of eggs with abnormalities, eggshell strength and thickness, fertility, early and late viabilities of embryos, normal hatchling rate, and clinical signs, mortality, viability, and body weight of chicks at 14 days of age were not affected. However, histopathology of the chicks in the E2 10 ppm group revealed meaningful morphological changes in the reproductive organs, such as cystic dilatation of seminiferous tubules and increased interstitial cells in the testis and decreased theca cells in the ovary. The present study suggests that serum VTG concentration in the parental quail and histopathology of reproductive organs in the offspring are sensitive endpoints and are useful as additional endpoints in the avian one-generation reproduction test using the Japanese quail for evaluating estrogenic endocrine disrupting effects. A gravimetric simplified method for nucleated marrow cell counting using an injection needle Saitoh T.1), Fang L.2) and Matsumoto K.2) 1)Nippon Institute for Biological Science, 2)Shinshu University The Journal of Toxicological Sciences, 30(3), 261-264 (2005) Abstract: A simplified gravimetric marrow cell counting method for rats is proposed for a regular screening method. After fresh bone marrow was aspirated by an injection needle, the marrow cells were suspended in carbonate buffered saline. The nucleated marrow cell count (NMC) was measured by an automated multi-blood cell analyzer. When this gravimetric method was applied to rats, the NMC of the left and right femurs had essentially identical values due to careful handling. The NMC at 4 to 10 weeks of age in male and female Crj:CD(SD)IGS rats was 2.72 to 1.96 and 2.75 to 1.98 (´106 counts/mg), respectively. More useful information for evaluation could be obtained by using this gravimetric method in addition to myelogram examination. However, some difficulties with this method include low NMC due to blood contamination and variation of NMC due to handling. Therefore, the utility of this gravimetric method for screening will be clarified by the accumulation of the data on myelotoxicity studies with this method. Cloning of canine toll-like receptor 9 and its expression in dog tissues Hashimoto M.1), Asahina Y.1), Sano J.2), Kano R.1), Moritomo T.1) and Hasegawa A.1) 1) Nihon University School of Veterinary Medicine, 2) Nippon Institute for B iological Science Veterinary Immunology and Immunopathology. 106:159-163. 2005 Abstract: Toll-like receptor 9 (TLR9) is activated by bacterial DNA and induces production of inflammatory cytokines. In this study, canine TLR9 cDNA was cloned and sequenced. Further, the expression of TLR9 mRNA was investigated in canine tissues. The full-length cDNA for the canine TLR9 gene was 3419bp encoding 1032 amino acids. The similarity of canine TLR9 with those of cat, cattle, human, mouse and pig was 90, 84.3, 83.6, 76.3 and 85.2% at the nucleotide level, and 90.5, 82.7, 81.4, 74.8 and 85.7% at the amino acid level. By reverse transcription-polymerase chain reaction (RT-PCR) analysis, canine TLR9 mRNA was detected in venous blood mononuclear cells and lymph node and weakly in spleen, whereas it was not detected in kidney, liver, pancreas, lung, small intestine, large intestine, heart, skin, muscle, stomach and bladder. High expression of Bcl-xL in delayed apoptosis of canine neutrophils induced by lipopolysaccharide Sano J.1), Oguma K.2), Kano R.2), Yazawa M.3), Tsujimoto H.3) and Hasegawa A.2) 1) Nippon Institute for Biological Science, 2) Nihon University School of Veterinary Medicine, 3) University of Tokyo Research in Veterinary Science. 78:183-187.2005 Abstract: The expression of Bcl-2 family members, Bcl-xL, Bcl-2, Mcl-1 and Bax was investigated in delayed apoptosis of canine neutrophils induced by lipopolysaccharide (LPS). Apoptotic cell rates in neutrophils stimulated by LPS (100 ng/ml) were measured at 24 h incubation by TUNEL assay. The incidence of apoptotic neutrophils stimulated by LPS at 24 h incubation was 17.0+/-2% and that in non-stimulated neutrophils was 29.9+/-3%. By real-time quantitative PCR analysis, it was indicated that Bcl-xL and Bax levels in canine neutrophils were significantly affected by LPS stimulation. The levels of Bcl-xL, Bcl-2, Mcl-1 and Bax transcripts at 9 h incubation in neutrophils stimulated by LPS (100 ng/ml) were increased by about 80.4-, 1.9-, 1.4- and 5.3-folds, in comparison to those in non-stimulated neutrophils, respectively. These results indicated that Bcl-xL was proved have an important role in the inhibition of canine neutrophil apoptosis by LPS. Effect of antineoplastic drugs on the expression of Bcl-2 and Bcl-xL genes in the feline T-cell leukemia cell line Sano J.1), Nagafuchi S.2), Yamazaki J.2), Oguma K.2), Kano R.2) and Hasegawa A.2) 1) Nippon Institute for Biological Science, 2) Nihon University Research in Veterinary Science. 79:197-201. 2005 Abstract: The Bcl-2 gene is the first member of a rapidly expanding family of genes that regulate apoptosis. Bcl-2 has been shown to repress cell death triggered by a diverse array of stimuli including chemotherapy and gamma-irradiation. Chemotherapy of feline lymphoma is generally carried out with antineoplastic drugs, which are reported to induce apoptosis in tumor cells. However, the precise apoptotic signals, induced by chemotherapeutic drugs against feline tumors have not been fully characterized. Therefore, we have evaluated the expression of Bcl-2 and Bcl-xL in FT-1 upon in vitro treatment with these drugs. In the present study, full length of feline Bcl-xL gene was sequenced, and the expressions of Bcl-2 and Bcl-xL mRNAs in feline lymphoma cell line (FT-1) cultured with doxorubicin, prednisolone or vincristine were investigated. Feline Bcl-xL clone was 1163 base pairs in length and encoded 233 amino acids. The predicted amino acid sequence was 99.1%, 98.7%, 96.1%, 97.4%, 97.0% and 97.9% homologous to predicted Bcl-xL of dog, human, mouse, pig, rat and sheep, respectively. The levels of Bcl-2 transcripts at 24h incubation in FT-1 stimulated with doxorubicin (0.3mug/ml), prednisolone (0.2mug/ml) and vincristine (5ng/ml) were increased to about 41.0-, 62.0- and 11.1-fold to those in non-stimulated FT-1, respectively. On the other hand, the level of Bcl-xL transcripts at 24h incubation in FT-1 stimulated by doxorubicin and prednisolone were significantly increased about 4.2- and 5.8-folds to the controls and inducible level of Bcl-xL by vincristine was decreased about 0.35-folds. In vitro effect of recombinant human granulocyte colony-stimulating factor on canine neutrophil apoptosis Oguma K.1), Sano J.2), Kano R.1), Watari T.1), Moritomo T.1) and Hasegawa A.1) 1) Nihon University, 2) Nippon Institute for Biological Science Veterinary Immunology and Immunopathology. 108:307-314. 2005 Abstract: Apoptosis is essential in eliminating neutrophils (polymorphonuclear leukocytes: PMNs) in animals. The suppression of PMN apoptosis is believed to be beneficial in eradicating pathogens and is implicated in the pathogenesis of human inflammatory diseases. In the present study, canine PMNs were stimulated with recombinant human granulocyte colony-stimulating factor (rhG-CSF) to investigate the in vitro effect on the apoptosis of canine PMNs. Apoptotic cell rates were assessed by flow cytometry in relation to the ability of PMNs to produce reactive oxygen species (ROS). Canine PMN apoptosis was markedly suppressed by rhG-CSF treatment, in association with the retention of the PMN ability to produce ROS. The addition of cycloheximide abolished this suppression by rhG-CSF. Moreover, canine PMNs, which were stimulated by rhG-CSF, expressed high levels of anti-apoptotic mcl-1 gene mRNA, as quantified by real-time polymerase chain reaction method. The results suggest that PMNs, stimulated by G-CSF, could work effectively over a longer period to eliminate pathogens, and that the prolongation of the PMN life-span might occasionally aggravate tissue injuries in dogs. In addition, the suppression of PMN apoptosis seems to be mediated by the induction of anti-apoptotic mcl-1 gene expression. In vitro effect of recombinant human tumor necrosis factor-alpha on canine neutrophil apoptosis Oguma K.1), Sano J., Kano R., Watari T. and Hasegawa A. 1) Nihon University, 2) Nippon Institute for Biological Science Research in Veterinary Science. 80:162-166. 2006 Abstract: Neutrophils (polymorphonuclear leukocytes: PMNs) are essential for the host defense against various infections and are often injurious to the host, causing inflammatory diseases where tumor necrosis factor-alpha (TNF-alpha) is suggested to play an important role. Since an effect of TNF-alpha on canine PMN apoptosis has not been studied, canine PMNs were stimulated with recombinant human (rh)TNF-alpha in the present study to investigate the effect of TNF-alpha on canine PMN apoptosis. PMN apoptosis and function to produce ROS were assessed by flow cytometry. Delayed apoptosis was observed in the PMNs treated with rhTNF-alpha at 100 ng/ml, accompanied by retention of capability to produce ROS. However, PMN apoptosis was accelerated by rhTNF-alpha combined with cycloheximide. Therefore, it is indicated that TNF-alpha is able to activate anti- and pro-apoptotic pathways in PMNs and that the inhibition of PMN apoptosis by TNF-alpha requires protein synthesis in the PMNs. Construction of a genetic linkage map of Japanese quail (Coturnix japonica) based on AFLP and microsatellite markers Kikuchi S.1), Fujima D.1), Sasazaki S.1), Tsuji S.1), Mizutani M.2), Fujiwara A.2) and Mannen H.1) 1)Kobe University, 2)Nippon Institute for Biological Science Animal Genetics.36:227-231.2005 Abstract: The Japanese quail (Coturnix japonica) is a notably valuable egg and meat producer but has also been used as a laboratory animal. In the present study, we constructed a Japanese quail linkage map with 1735 polymorphic AFLP markers, and nine chicken microsatellite markers, as well as sex and phenotypes of two genetic diseases; a muscular disorder (LWC) and neurofilament-deficient mutant (Quv). Linkage analysis revealed 578 independent loci. The resulting linkage map contained 44 multipoint linkage groups covering 2597.8cM and an additional 218.2 cM was contained in 21 two-point linkage groups. The total map was 2816 cM in length with an average marker interval of 5.5 cM. The Quv locus was located on linkage group 5, but linkage was not found between the LWC locus and any of the markers. Comparative mapping with chicken using orthologous markers revealed chromosomal assignments of the quail linkage group 1 to chicken chromosome 2 (GGA2), 5 to GGA22, 2 to GGA5, 8 to GGA7, 27 to GGA11, 29 to GGA1 and 45 to GGA4. Development and mapping of microsatellite markers derived from cDNA in Japanese quail (Coturnix japonica) Mannen H.1), Murata K.1), Kikuchi S.1), Fujima D.1), Sasazaki S.1), Fujiwara A.2) and Tsuji S.1) 1)Kobe University, 2)Nippon Institute for Biological Science The Journal of Poultry Science 42:263-271. 2005 Abstract: The objective of this work was to develop polymorphic microsatellite markers derived from Japanese quail embryonic and cardiac cDNA libraries and to locate these markers on Kobe-NIBS Japanese quail (KNQ) linkage map constructed mainly by AFLP markers in previous study. Of the 86 positive clones, 51 clones were unique and identified as genes or ESTs by BLAST searches, and 25 from 51 clones were possible to design the PCR primers after partial sequencing. Only six markers were polymorphic and used by linkage analysis in KNQ resource family. These markers were mapped on four linkage groups, JQG 1, JQG 9, JQG 19 and JQG 66, and then these linkage groups were assigned to chromosome of Japanese quail, CJA 2, CJA 14, CJA 17 and CJA 23, respectively. These markers derived from cDNA are useful and powerful tool, and contribute to the comparative map between Japanese quail and the other species. Mapping of EST markers with cDNA-AFLP method in Japanese quail (Coturnix japonica) Sasazaki S.1), Hinenoya T.1), Fujima D.1), Kikuchi S.1), Fujiwara A.1) and Mannen H.1) 1)Kobe University, 2)Nippon Institute for Biological Science Animal Science Journal 77:42-46. 2006 Abstract: In order to develop a comparative map between chicken and quail, we identified orthologous gene markers based on chicken genomic sequences and localized them on the Japanese quail Kobe-NIBS linkage map, which had been constructed previously with primarily AFLPs. After sequencing the intron regions of 168 genes located on chicken chromosomes 1 to 8, polymorphisms among Kobe-NIBS quail family parents were detected in 51 genes. These orthologous markers were mapped on eight Japanese quail linkage groups, and allowed comparison of Japanese quail linkage groups to chicken macrochromosomes. Locations of the genes and their orders were quite similar between the two species except within a previously reported inversion on quail chromosome 2. Therefore, we propose that the respective quail linkage groups are macrochromosomes and designated as quail chromosomes CJA 1 to 8. Serological evidence of infection of Anaplasma and Ehrlichia in domestic animals in Xinjiang Uygur Autonomous Region area, China Chahan B.1), Jian Z.1), Xuan X.2), Sato Y.3), Kabeya H.3), Tuchiya K.4), Itamoto K.5), Okuda M.5), Mikami T.3), Maruyama S.3) and Inokuma H.2). 1) Xingjiang Agricultural University, 2) Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine, 3) Nihon University, 4) Nippon institute for Biological Science, 5) Yamaguchi University Veterinary Parasitology 134:273-278, 2005 Abstract: Serological methods were utilized to detect Anaplasma and Ehrlichia infection in domestic animals in Xinjiang Uygur Autonomous Region, China. By using an indirect immunofluorescence assay (IFA), antibodies that reacted with Anaplasma phagocytophilum and Ehrlichia chaffeensis were detected mainly in ruminants kept on pastureland in Altai, Ili and Kashgar area. Antibody titers up to 1:320 were recorded. These results indicate that ruminants kept in these areas may be infected with some species of Anaplasma and Ehrlichia. ワクチン効果に影響を及ぼす種々な要因(1) 土屋耕太郎 日本生物科学研究所 東獣ジャーナル、475: 12-14. 2006. 要旨:ワクチンは、長い歴史の中でその有効性が不動のものとなった感染症への対抗 手段である。ワクチン効果の基礎である防御免疫機構は、大きく非特異的応答抗原特 異的な液性および細胞性免疫に分けられる。近年は非特異的応答と特異応答を橋渡し する自然免疫および特異免疫を増強するサイトカインの意義に関する知見が集積さ れてきている。また、粘膜は微生物の侵入門戸であり、ここには全身の免疫系とはあ る程度独立した粘膜免疫系が存在する。ワクチンは大きく生ワクチンと不活化ワクチ ンを代表とする非増殖型ワクチンに分類することができ、それぞれ優位な点、不利な 点がある。生ワクチンは被接種動物の体内でワクチン株が増殖するので、野外株が感 染したときと同じく有効性の高い液性および細胞性免疫の両者が誘導されるが、ワク チン株に残存しているかもしれない病原性の発揮や免疫抑制状態の誘導、病原性の復 帰、持続感染、胎児への病原性、あるいは免疫抑制状態にある動物への病原性の発現 等の可能性が否定できない点で不利である。不活化ワクチンを代表とする非増殖型ワ クチンの優位な点および不利な点は生ワクチンのそれらと逆の関係になる。不活化ワ クチンの最も優位な点は、増殖性因子(生ワクチン株)を含まないことによる安全性 である。それぞれのワクチンの特徴を理解することはワクチンの選択に役立つ。個々 のワクチン開発は、有意な点を維持発展させるとともに不利な点を克服するように開 発の努力がなされている。 ワクチン効果に影響を及ぼす種々な要因(2) 土屋耕太郎 日本生物科学研究所 東獣ジャーナル、477: 10-11. 2006. 要旨:新しい病原因子が見つかるたびに単味ワクチンが開発され利用できるようにな る。すると、ワクチン接種が頻繁になるので、医療上および経済上の理由からワクチ ンの投与回数を減らす必要が出てくる。このような理由から混合ワクチンが開発され てきた。混合ワクチンは、単味ワクチンでの安全性と有効性が確認されたからといっ て単純に各成分を混合したワクチンではなく、混合する時点で成分の分量、安全性、 有効性などを再度検討して開発される。複数の抗原成分を混合し、その数が増えると “抗原間の競合(Antigenic competition)”が起こり、それぞれの成分を単味ワク チンとして投与した場合に比べて免疫応答が低下する場合がある。一つの混合ワクチ ン内ではこの競合を回避するように慎重にデザインされている。ワクチン投与経路に はそれぞれの特徴があり、注意点がある。皮下注射、筋肉内注射はごく一般的に用い られている投与経路である。経口投与は鶏ではウイルス感染症のワクチン投与経路と して良く用いられている。近年、鶏胚に対して鶏卵接種法が用いられ、大幅な省力化 が図られている。 2−3.著書、他(2件) 犬のウイルス性腸炎: 犬コロナウイルス病 土屋耕太郎(分担執筆、望月雅美監修) 日本生物科学研究所 獣医学臨床シリーズ 20 「犬、猫および愛玩動物のウイルス病」(学窓社、2005) 狂犬病 土屋耕太郎(分担執筆、望月雅美監修) 日本生物科学研究所 獣医学臨床シリーズ20 「犬、猫および愛玩動物のウイルス病」(学窓社、2005) 2-4.特許 平成 17 年度特許出願状況(18.3.31 現在) 区 国内 国外(USA) 分 件 数 特許登録済 3(0) カッコ内は平成 17 年度中に登録または 審査請求中 7(2) 実施した件数 出願公開中 14(1) 特許登録中 1 審査中 1 (EPC) 特許登録中 2 * (EPC)猫顆粒球コロニー刺激因子(イギリス、フランス、ドイツ)に登録 2-5.学術広報 (1) 日生研たより 当所の事業内容を広く世の中に発信する媒体として発行している。日本獣医病理学会主催の獣 医病理学研修会の記録、研究成果の公表、論説、関連情報のレビューおよび技術協力活動の紹介 等、最新の情報を中心に編集され、都道府県の家畜衛生関係機関など国内 864 カ所、国外 38 カ 所、合計 902 カ所の機関と個人へ隔月毎に無償で 1,127 部を配布した。なお、平成 18 年 1 月発 行の第 52 巻 1 号より A4 版、カラー印刷とし、装いも新たに内容の充実を目指している。 (2) ホームページ 平成 10 年度より、(社)中央畜産会の畜産情報ネットワーク(LIN)に「NIBS ホームペー ジ」を開設させていただき、当所の理念と共に事業の進捗状況を発信している。また、 「日生研た より」の発行にあわせてその内容も掲載し、いつでも閲覧できるようにしている。 3.学会および研究会活動 3-1.第 141 回日本獣医学会春季学術集会の司宰 平成 17 年 3 月 18 日から 4 日間、つくば市のつくば国際会議場で、日本獣医師会と日本獣医学 会との初めての連携大会として本学術集会を司宰し、上田 進(当所理事長)が大会長を務めた。 前半の 3 日間が日本獣医師会 3 学会、後半の 3 日間を日本獣医学会企画とし、中 2 日間に両学 会の共同企画プログラムが実施された。獣医学会の参加登録者は 1,260 名 であった。共同企画による記念講演、教育講演のほか基礎から臨床にわたる多分野でシンポジウ ム、ポスター発表が行われ、参加者は両学会のプログラムを聴講できた。また、3 月 19 日(日)午 後には秋篠宮親王殿下のご臨席を仰ぎ、 『家畜化の考え方−鶏の事例から』と題された記念講演が 行われた。また、司宰機関の企画としてポスター発表を対象に「ベストプレゼンテーション賞」 を設定し、合計 10 名を選考して副賞つきで表彰した。 3-2.学会および研究会 当所の研究員(常勤の主任研究員、研究員、副研究員)は、平成 18 年 3 月 31 日現在、下表に示した とおり、35 の学会に延べ 113 名、9 研究会に延べ 20 名が所属している。これら学会および研究会に は研究員を積極的に参加させ、研究成果を公表させたほか関連分野の最新情報を収集させて研究進展 への動機付けを高め、研究者の育成に努めた。 また、研究員は学会および研究会の理事、監事、評議員等の役員として会の運営に参加する共 に、当所は賛助会員または団体会員として 21 の学会・研究会等の運営に協力した。 平成 17 年度 研究員が所属する学会・研究会等一覧 学会又は研究会名 日本獣医学会 日本産業動物獣医学会 日本ウイルス学会 日本細菌学会 日本実験動物学会 日本病理学会 日本獣医病理学会 日本毒性病理学会 日本分子生物学会 日本生化学会 所属数 32 16 4 3 5 2 5 6 3 1 学会又は研究会名 繁殖生物学会 日本動物細胞工学会 日本ウマ科学会 日本畜産学会 万国家禽学会 日本魚病学会 日本バイオインフォマティクス学会 日本家禽学会 動物遺伝育種学会 環境ホルモン学会 所属数 1 3 1 1 1 3 1 2 1 3 日本ワクチン学会 日本免疫学会 日本インターフェロンサイトカイン学会 獣医疫学会 日本比較免疫学会 日本寄生虫学会 日本動物原虫病学会 日本動物実験代替法学会 日本先天異常学会 比較眼科学会 日本疾患モデル学会 日本トキシコロジー学会 日本薬物動態学会 1 1 2 3 1 1 1 1 1 1 1 2 1 日本家畜衛生学会 日本癌学会 1 1 豚病研究会 鶏病研究会 DNA チップ技術研究会 獣医免疫研究会 日本医用ミニブタ研究会 動物サイトカイン研究会 関東 QAM 研究会 日本 QA 研究会 医薬品等ウイルス安全性研究 会 4 8 1 2 1 1 1 1 1 3-3. 所内の研究会等 (1)第一研究会 第一研究会は所内の第一研究会運営委員会の運営により毎月 1 回定期的に開催し、各研究担当 者が研究課題についての進捗状況および成果を発表した。また、研究員は各種学会および研究会 で発表する講演内容を本会の予演会で紹介し、事前にチェックを受け発表に備えた。学会および 研究会等に参加した研究員には、会での最新情報や概要を報告させた。 (2)第二研究会 第二研究会は所内の第二研究会運営委員会の運営により開催し、各分野の先端的な研究や現場 の問題点についてそれぞれの専門家を講師として招聘し情報を提供してもらうもので、公開セミ ナーとして実施している。本年度は下記の 4 件を実施した。 第 1 回(平成 17 年 6 月 24 日) 「わが国における重要な馬のウイルス感染症と防疫」 日本中央競馬会 競走馬総合研究所栃木支所 上席研究役 今川 浩 先生 第 2 回(平成 17 年 9 月 15 日) 「レトロウイルスによる AIDS および白血病発症機構の解明」 理化学研究所 分子ウイルス学研究ユニット ユニットリーダー 間 陽子 先生 第 3 回(平成 18 年 1 月 12 日) 「創薬の研究開発の早期におけるアウトソーシングの現状」 マリオ研究所 代表 松澤利明 先生 第 4 回(平成 18 年 3 月 24 日) 「高病原性鳥インフルエンザ発生原因の究明と防疫対応」 農林漁業金融公庫 技術参与 寺門誠致 先生 「世界における鳥インフルエンザの現状」 OIE 名誉顧問 小澤義博 先生 (3)研究推進会議 各研究課題の関係者(主任研究員、プロジェクトリーダー、研究担当者、研究補助員)を定期 的に集めて生データについての問題点や方向性などを検討し、研究推進を図った。 (4)抄読会 原則として週 1 回、研究員が持ち回りで専門誌に掲載された学術論文を紹介し、広く知識の吸 収に努めた。 (5) 英語教室 原則として週 1 回、米国人講師による英語会話教室を開講し、研究員の語学力向上を図った。 4.研修および技術協力等 4-1.研修および見学の受け入れ 以下に示したとおり、国内の 9 機関から合計 109 名、海外からは JICA を通じて 8 名の研修・ 見学者を受け入れた。 (1)北海道立畜産試験場(1 名) :豚の細菌感染症に関する血清学的診断技術 (2)大阪府環境農林水産部(1 名) :豚の細菌感染症に関する血清学的診断技術 (3)農事組合法人セイメイファーム(1 名) :鶏の原虫感染症に関する検査技術 (4)日本大学生物資源科学部(インターシップ 3 名):魚病診断および対策 (5)静岡県中部家畜保健衛生所(1 名):病原体の分離・培養、細胞培養及び血清学的 診断技術 (6)中部飼料株式会社研究技術部(1 名):豚のウイルス感染症に関する血清学的 診断技術 (7)農林水産省動物衛生検査所(1 名) :馬の感染症に関する血清学的診断技術 (8)国際協力機構(研修員 8 名)(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科) :動物の感染症対策 (9)日本獣医畜産大学(33 名づつ 3 回):研究所業務の研修および研究室見学 (10)高知県西部家畜保健衛生所(1 名) :豚の慢性感染症の診断、予防法 4-2.研修受講 研究員等の知識・技術能力向上のため、所外で開催されたセミナー、シンポジウム、研究会、 研修会、講習会等に延べ 20 名を受講させた。 (1)医薬安全性研究会(3 名) (2)第 6 回日本トキシコロジー学会講習会(2 名) (3)医薬品開発の為の統計解析講習会 (2 名) (4) 第 11 回 GLP 研修会(4 名) (5) 第 6 回日本毒性病理学会教育セミナー(1 名) (6) 第 18 回日本毒性病理学スライドコンファランス(2 名) (7) 日本豚病研究会第 67 回研究集会(3 名) (8)遺伝子組換え生物に関わる法令研修会(1 名) (9)馬感染症研究会(2 名) 4−3.研究材料の譲渡 大学、試験場、家畜保健衛生所等の 14 機関からの要請に応じて以下の微生物株、抗血清等 42 件の研究材料を譲渡した。 (1)広島大学大学院生物圏科学研究科生物生産学部: 魚類由来細胞株 1 種類 (2)東京大学大学院農学生命科学研究科応用免疫学研究室: 疾病診断用ウイルス 1 株 (3)日本獣医畜産大学獣医学部獣医寄生虫学研究室: 疾病診断用原虫 1 株 (4)北海道立畜産試験場: 疾病診断用精製抗原 4 種類、疾病診断用陽性・陰性参照血清及び酵素 標識抗体各 4 種類 (5)北海道立畜産試験場: 疾病診断用細菌 2 株及び疾病診断用陽性及び陰性参照血清各 2 種類 (6)大阪府南部家畜保健衛生所:疾病診断用精製抗原 2 種類、疾病診断用陽性及 び陰性参照血清酵素標識抗体各 2 種類 (7)東京都芝浦食肉衛生検査所: 疾病診断用細菌 1 株 (8)エス・エム・シー株式会社:疾病診断用精製抗原 1 種類、疾病診断用陽性及び陰性参照血清 各 1 種類 (9)東京大学大学院医学系研究科:疾病診断用細菌 1 株、疾病診断用参照抗血清 1 種類 (10)東京大学大学院農学生命科学研究科:疾病診断用モノクローナル抗体 1 種類 (11) 北海道大学大学院獣医学研究科: 実験動物免疫用不活化ワクチン 1 種類 (12) 京都大学大学院農学研究科: 研究用ウイルス 1 株 (13) 東京大学大学院農学生命科学研究科: 疾病診断用陽性参照血清 1 種類 (14) 東京都家畜保健衛生所: 疾病診断用細菌 1 株 4-4.研究材料の譲受 当所からの分与願いに基づき、大学、研究機関、家畜保健衛生所など以下 10 機関から微生物株 等 13 件の研究材料を譲受した。 (1)宮崎大学農学部獣医学科:豚感染症例由来野外分離菌 1 株 (2)愛媛県水産試験場: 魚感染症例由来野外分離ウイルス 1 株 (3)佐賀県中部家畜保健衛生所:牛感染症例由来野外分離菌 3 株 (4)日本動物用医薬品協会: 野外分離菌 1 株 (5)千葉県衛生研究所: 豚感染症例由来野外分離ウイルス 1 株 (6)栃木県県央家畜保健衛生所: ウイルス分離用細胞 1 株 (7)鳥取大学農学部獣医学科: 病原体に対する抗血清 1 種類 (8)帯広畜産大学原虫病研究センター: 牛感染症例由来野外分離原虫 2 株 (9)日本大学生物資源科学部: 豚感染症例由来野外分離ウイルス 1 株 (10)岩手県南部家畜保健衛生所: 牛感染症例由来野外分離菌 1 株 5.講師等の派遣 以下に示した通り、国内 34 機関で開催された研究会、研修会、業績発表会、講習会等に研究員 を講師、助言者、審査員等として派遣した。 (1)京都府ブロイラー協議会: 講演会講師 (2)岐阜大学応用生物学部:第 8 回岐阜シンポジウム講師 (3)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所:平成 17 年度鶏病事例検討会運営委員 (4)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所九州支所:第 62 回九州・山口病性鑑定 協議会助言者 (5)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所九州支所: 第 9 回九州・山口・沖縄病 理事例研修会助言者 (6)日本中央競馬会馬事部防疫課: 平成 17 年度馬事防疫検討会委員 (7)東海畜産学会: 平成 17 年度東海畜産学会シンポジウム講師 (8) 特定領域研究 細菌領域若手部会研究会:講師 (9) 東京大学医科学研究所: 第 13 回国際ウイルス学会講師 (10) 東京大学農学部: 非常勤講師 (11) 農林水産省消費・安全局: 家畜衛生研修会(病性鑑定・細菌部門)講師 (12) 日本大学生物資源科学部獣医学科魚病学:特別講義講師 (13) 日本大学生物資源科学部獣医学科獣医免疫学:特別講義講師 (14) 日本学術振興会: 第 9 回日印合同科学評議会委員 (15) 鶏病研究会徳島県支部: 講演会助言者、特別講演講師 (16) 鶏病研究会宮崎県支部: 平成 17 年度九州地区鶏病技術研修会助言者 (17) 鶏病研究会岡山県支部: 中国四国地区鶏病技術研修会助言者 (18) 島原養鶏協会: 鶏病予防対策研修会講師 (19) 福岡県農政部: 福岡県家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (20) 長崎県畜産課: 長崎県家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (21) 佐賀県生産振興部: 佐賀県家畜衛生技術研究業績発表会助言者・審査員 (22) 大分県農林水産部: 大分県家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (23) 宮崎県農政水産部: 宮崎県家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (24) 群馬県農業局畜産課: 群馬県家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (25) 山梨県農政部: 山梨県家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (26) 東京都家畜保健衛生所: 東京都家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (27) 徳島県農林水産部: 徳島県畜産関係者業績発表会助言者・審査員 (28) 佐賀県知事: 九州ブロック 家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (29) 鳥取県農林水産部: 中国四国ブロック家畜保健衛生業績発表会助言者・審査員 (30) 日本実験動物協会: 一級技術師資格認定試験官 (31) 日本実験動物協会: 二級技術師資格認定試験官 (32) 日本実験動物協会: 通信教育小委員会委員 (33) 日本実験動物協会: 実験用ミニ豚等普及促進企画検討小委員会委員 6.外部組織・委員会・学会等の役員 以下に示した通り、外部組織・委員会・学会等の監事、理事、評議員、委員、専門家等として それらの運営等に協力した。 (1) 内閣府:食品安全委員会プリオン専門調査会委員 (2) 農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所:動物衛生高度研究施設」安全監視委 員会委員 (3) 農林水産技術会議特定産業技術研究支援センター: 選考評価委員 (4) 農林水産省農林水産先端技術産業振興センター:評議員 (5)厚生労働省: 牛海綿状脳症(BSE))の検査に係わる専門家会議委員 (6) 麻布獣医学園: 評議員 (7) 国際協力機構: ベトナム国立獣医学研究所強化計画国内委員 (8) 理化学研究所: 和光動物実験委員会審査委員 (9) 農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所: 鶏病事例検討会 運営委員 (10) 農水技術情報協会: 平成17年度先端技術を活用した農林水産研究高度化事業専門委員 (11) 日本獣医学会:監事、評議員(4名) (12) 日本獣医病理学専門家協会:理事 (13) 日本獣医病理学会:理事、評議員 (14) 日本毒性病理学会:監事、評議員 (15) 日本細菌学会:シンポジウム企画調整委員会委員 (16) 日本実験動物学会:評議員 (17) 鶏 病 研 究 会 :理 事 、 会誌 編 集 委員 、 専 門委 員 (18) 日 本 ウ マ 科 学会 : 評 議員 (19) 日 本 獣 医 師 会: 職 域 別部 会 ・ 会報 編 集 委員 (20) 比 較 眼 科 学 会: 理 事 (21) 日 本 家 畜 衛 生学 会 : 理事 (22) 豚 病 研 究 会 :監 事 7.病性鑑定 研究部、病理室および企画学術部において鶏及び豚の、合計 88 件、448 頭羽数について病性鑑定を実 施した。 動物種 病性鑑定件数 頭羽数 43 199 頭羽数には病原体検索・同 豚 45 249 定数を含む。 その他 0 0 合計 88 448 鶏 備 考 8.実験動物の維持 実験動物部では、ミニブタ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ニワトリ及びウズラの7種の 動物について、29 系統の実験動物を維持・管理した。 実験動物名 ミニブタ ネコ ウサギ 系 統 名 NIBS系 Taiwan S-e系 NIBS系SPF 合計系統数 2 1 JW-NIBS(SPF) JWY-NIBS(近交系) 3 JWF-NIBS(Furless) モルモット ハートレイ系 No.2系 2 ハムスター AGP(近交系) ACN(近交系) 4 CBN(近交系) GN(近交系) WL-M/O系SPF ニワトリ GSN/1系 Line-M 系SPF YL系 BM-C 413系 8 GSP(MHC:B21) PNP(MHC:B1) ニホンウズラ WE系SPF QUB系 LWC系 AWE系 Quv系 RWN系 9 ほか3系統 9.日生研奨励賞の授与 本年度、日生研奨励賞選考委員会から授賞候補者の推薦はなく、授与はいたしませんでした。 ※日生研奨励賞 次の方々より受けた研究奨励目的の寄付金を原資に優れた研究業績をあげた所員の個人またはチーム に奨励賞を授与している。 氏 名 受入れ年月日 1 荒井 研 平成 2年 6月26日 2 高村 禮 平成 5年12月14日 3 林 曻 平成 6年 2月21日 4 倉益茂實 平成 8年 7月31日 5 田島正典 平成12年11月16日 10.試験研究棟の建設 実験動物領域の新たな社会的要請に対応できるよう附属実験動物研究所(山梨県 北杜市小淵沢町)に先端的研究を行える設備・器具を備えた試験研究棟を建設した。
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