2015年8月マカオの経済について

マカオの経済について
上海駐在員事務所
藤光
雅之
『マカオ』と聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか。
セント・ポール教会跡などの観光地、それともカジノでしょうか。
後者のカジノを思い浮かべた人は多いと思います。今や本場アメリカのラスベガスを
凌ぐギャンブルのメッカとなったマカオですが、そのマカオ経済が苦境に陥っています。
マカオ政府の発表によると、2014 年のカジノ総収入は、前年比マイナス 2.6%。カジノが
自由化された 2002 年以降初めてマイナスに転じました。そして、この年の経済成長率はマ
イナス 0.4%とカジノの不振とともにマカオ経済も冷え込んでいます。
また、今年第一四半期の経済成長率は、何とマイナス 24.5%にまで急激に落ち込み、カジ
ノからの税収が全体の 80%を占めるマカオにとって危機的状況にあります。一部には、マカ
オ経済はギリシャ経済より深刻という声もあります。
何故そのようなことになったのでしょうか。以下 3 点が主な要因と考えられています。
① 中国本土の景気後退による、本土からの観光客の減少
② 汚職摘発に見られる、反腐敗闘争
③
中国政府が推奨する倹約キャンペーン
これらの要因により、マカオのカジノ収入は、2014 年 6 月より前年同月比で 12 か月連続
マイナス。更に今年 6 月は前年同月比マイナス 63.8%となるなど、歯止めがかけられない
状況です。
マカオ政府は、「長期的にはカジノ産業の発展には自信がある」と強気の発言をしていま
すが、今年 7 月より中国大陸からの観光者の滞在可能日数を 5 日から 7 日に伸ばすなど対
策に躍起になっています。
実は、この問題はマカオだけではなく、ラスベガスのカジノ業者にも影響を及ぼしてい
ます。例えば、アメリカのカジノ産業大手のラスベガス・サンズは、マカオで同社収入の
6 割を稼いでおり、マカオ経済の衰退は他国の大手企業の経営を揺るがす深刻な事態となっ
ているのです。
アメリカのラスベガスは、カジノに依存したサービスを見直し、ショッピング施設の拡
充や、ショーなどのイベントの充実、また、観光だけでなく、ビジネス需要も取り込もう
と会議場を整備するなど、「総合型リゾート施設」への転換を図っています。
マカオ経済が今後息を吹き返すためには、カジノ一辺倒の政策から、総合レジャー施設
への転換など、経済構造の改革を進める必要があるのではないでしょうか。
(28.2.9 現在)201602 広告審査済