シカ肉の調理方法が食味および嗜好に及ぼす影響

食品科学教育協議会
平 成 28 年 度 研 究 会
シカ肉の調理方法が食味および嗜好に及ぼす影響
徳島文理大学短期大学部生活科学科食物専攻
松下
純子
坂井真奈美
徳島県において、野生のシカによる農業被害が拡大し、社会問題となっている。全
国的にも同様の被害が確認され、各都道府県において対策が取られているのが現状で
ある。この被害を防ぐためには、防護柵、忌避剤、捕獲などがあるが、シカを絶滅さ
せずに、さらには急激な増加にも至らず、持続可能な地産地消の制度を構築するため
の方策が必要となる。県ではシカの捕獲から加工、新たな商品化、流通システムを含
め た 6 次 産 業 化 を 視 野 に 入 れ て い る 。 今 回 は 、「 有 害 鳥 獣 」 で あ る シ カ の 有 効 な 活 用 法
として食肉を取り上げた。このうち、シカ肉の調理方法が食味および嗜好に及ぼす影
響について検討した。
シ カ 肉 は 一 般 的 に 「 臭 み が あ る 」「 硬 い 」 と 言 わ れ て い る た め 、 調 理 方 法 と の 関 連 性
が高く、効果的な調理法を検証する必要がある。まず、すでに料理献立として提供さ
れている、シカ肉料理の食味調査を行った。部位および料理法が異なるシカ肉料理 4
種を喫食し、アンケート用紙により硬さ、かみ切りやすさ、肉の状態などについて回
答 を 求 め た 。臭 み を 抜 く た め の 下 処 理 が な さ れ て お り 、油 で 揚 げ る 調 理 方 法 や 煮 物( 汁
物)が高評価であった。
次いで、下処理の種類がシカ肉の食感、嗜好に及ぼす影響を検討した。下処理法は
和風を 3 種、洋風を 3 種、合計 6 種類の肉を用意し、ホットプレートにより加熱した
ものを官能評価した。評価項目はテクスチャー、味、香り、総合評価とした。濃口醤
油、清酒、しょうがを用いることで、臭みを減らす効果があることが示された。
さらに、調理方法のひとつとして真空調理がシカ肉の食べやすさと嗜好性に及ぼす
影響を検討した。下処理として、塩味、塩味と油、醤油味を設定し、真空包装後にス
チ ー ム コ ン ベ ク シ ョ ン オ ー ブ ン で 加 熱 し た 。加 熱 終 了 後 、ブ ラ ス ト チ ラ ー に て 急 冷 し 、
0 ℃ の 冷 蔵 庫 に て 1 晩 保 存 し た 。再 加 熱 は 、蒸 し 加 熱 に よ り 中 心 温 度 75 度 1 分 以 上 と
し、これを試料として提供した。このうち 2 種についてはさらにフライパンで焼き目
を つ け 、合 計 5 種 類 の 肉 に つ い て 官 能 評 価 し た 。項 目 は 、下 処 理 の 検 討 と 同 じ と し た 。
シカ肉は脂質が少ないことが長所であるが、肉が締まっていて油が少なくパサつく食
感が短所となっている、真空調理により、やわらかくしっとりとした食感を得ること
が推測された。