Title Author(s) Journal URL 内耳のmelaninに関する形態学的・生化学的研究 井上, 敬子 東京女子医科大学雑誌, 62(8):710-711, 1992 http://hdl.handle.net/10470/8269 Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database. http://ir.twmu.ac.jp/dspace/ 106 (40) イ ウエ ケイ コ 氏名(生年月日) 井上敬子(昭和3 本 籍 学位の種類 博士(医学) 学位授与の番号 乙第!204号 学位授与の日付 平成3年9月20日 学位授与の要件 学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者) 学位論文題目 論文審査委員 内耳のmelaninに関する形態学的・生化学的研究 (主査)教授 石井 哲夫 (副査)教授 肥田野 信,重田 帝子 論 文 内 容 の 要 旨 目的 よび膨大部に密に分布し膨大部の上皮内には認められ 内耳の膜迷路にはmelaninが分布しているが,その ず膜迷路周囲に軟骨様組織があり,膜迷路と上皮の間 意義は不明である.本研究では系統発生学的に,ヒト, に距離を隔てて認められた. モルモット,カエル,フナの内耳を比較し,さらにモ 有色モルモット内耳のmelaninはeumelaninが優 ルモットにおける内耳のmelaninの生化学的分析を 行いmelanin色素の特性をみた.これらより内耳にお 位であり,白色モルモットではeumelaninは,有色モ ルモットの0.3%で少量であった. けるmelanlnの内耳機能に及ぼす影響を文献的に検 考察 討した. 神経堤由来のmelanocyteはフナからカエル,モル 対象および方法 モット,ヒトまでの広範な系統発生段階の動物の内耳 (1)ヒト側頭骨を脱灰後セロイジン包埋し内耳組織 に存在することが観察された.特にヒトにおいてはそ 切片を作製し,hematoxylin-eosin染色後光学顕微鏡 の存在部位が蝸牛軸,血管条,卵形嚢,内リンパ嚢, 下に観察を行った.哺乳類としてモルモット4匹,両 膨大部のdark cellの下部であった.これらは蝸牛,前 生類として食用ガエル10匹,硬骨魚類としてフナ10匹 庭,半規管のいずれの部位にもmelaninの機能的な意 を用いた,これらをホルマリン固定後,surface prepa- 義を期待しえる部位であり,melaninの生化学的特性 rationで内耳膜迷路のmelaninの分布状態と形態を から,以前より内耳機能との関連性が検討されてきた. 顕微鏡下に観察した. カエル,フナでは膨大部,半規管ともに軟骨様組織 (2)melaninの分析定量は,有色雑種モルモットと を隔てて存在し,ヒト,モルモットのように内リンパ 黒色雑種モルモットを合計8匹,ハートレー系モル 腔に直接接触するという所見は認められなかった.し モット5匹を用いた.卵形嚢および膨大部の膜迷路を たがってmelaninが, melanocyte内のmelanosonle 採取し,eumelaninとpheomelaninを高速液体クロマ の中に含まれるカテコールアミンを周囲に遊離して, トグラフィーにて分析定量した. 直接内耳の上皮内器官に作用するという理論はカエ 結果 ル,フナに関しては成立たないことが予測された. melaninは,ヒトでは蝸牛軸と蝸牛前庭階内側壁に 結論 多く,次いで骨ラセン板,血管条,卵形嚢,膨大部, 内耳に存在するmelaninが,内耳機能に対し積極的 半規管にみられた.膨大部の上皮内リンパ腔に接して な働きがあるかどうかを系統発生的観点から検討し 認めた.モルモットでは膨大部と卵形嚢の耳石器付近 た.系統的にはより原始的であるフナ,カエルでは直 に密に分布し,膨大部の上皮内に認め,ヒトと同様に 接内耳に影響することは考えにくいが,ヒトでは機能 内リンパ腔に接していた,カエル・フナでは,総脚お 的に意義があることが推測される. 一710一 107 論 文 審 査 の 要 旨 本論文はヒトを始めとする哺乳類内耳膜迷路中に存在するメラ亭ンの生理学的意義を系統発生学的に光学 顕微鏡のレベルで研究したものである.まず,モルモット内耳のメラニンを生化学的に分析したところ eumelanin優位の皮膚メラニンと同じタイプであることが判明した.淡水魚やカエルではメラニン細胞は感覚 上皮と隔った部位に分布しておりメラニン細胞の内耳機能への関与を示唆する所見は得られなかった.ヒトや モルモットでは血管条・暗細胞など内耳液代謝に係わる部位の上皮直下に存在が認められ何らかの生理的意義 があるものと推測した. 主論文公表誌 Res Jpn 18:172-174(1987)石井哲夫,高山 内耳のmelaninに関する形態学的・生化学的研究 幹子,井上敬子 東京女子医科大学雑誌 第61巻 第5号 5)カエルの鼓膜とその周辺.Ear Res Jpn 19: 430-438頁(平成3年5月25日発行) 83-85(1988)井上敬子,高山幹子,石井哲夫 副論文公表雑誌 6)内耳におけるメラニンの分布と分析.耳鼻臨床 8(補):1-8(1986)石井哲夫,井上敬子,高山 1)モルモット内耳のメラニンに関する生化学的特 幹子,伊藤祥輔 性.Ear Res Jpn 16:68-71(1985)井上敬子, 伊藤祥輔,木村悦子,鍋島みどり,高山幹子, 7)膜迷路の厚さに関する比較解剖学的研究.Equi- 石井哲夫 1ibrium Res 2(Suppl):69-75(1987)石井哲 夫,高山幹子,山本信和,井上敬子 2)諸動物の内耳におけるメラニン細胞の分布. Ear Res Jpn 17:365-368(1986)井上敬子, 8)膜迷路の力学的特性.厚生省特定疾患前庭機能 高山幹子,石井哲夫 異常調査研究班研究報告書:39-41(1987)石井 哲夫,山本信和,高山幹子,井上敬子 3)Mambranous labyrinth of fresh water行sh (Carrdsius),Ear Res Jpn 18:169471(1987) 9)Waardenburg症候群. JOHNS 1(6): 高山幹子,石井哲夫,井上敬子 681-684(1985)高山幹子,井上敬子,石井哲夫 4)膜迷路のメラニソー毛皮色素との関係一.Ear 711
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