資料第113B-2-3号 東京電力株式会社 東通原子力発電所 平常運転時における 一般公衆の受ける線量について 平成22年9月 原子力安全・保安院 目 次 1. 概 要................................................................................................................ 1 2. 気体廃棄物の年間放出量 ................................................................................... 2 3. 液体廃棄物の年間放出量 ................................................................................... 5 4. 線量の計算......................................................................................................... 6 5. 線量の評価結果 ............................................................................................... 12 1.概 要 東通原子力発電所の平常運転時における環境への放射性物質の放出に伴う一般 公衆の受ける線量が、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」 に定める線量目標値(50μSv/y)を満足することを確認するために、線量評価を行 っている。 放射性物質の環境への放出量及び一般公衆の受ける線量の計算は、「発電用軽水 型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」 (以下「線量評価指針」という。) 及び「発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針」に従って行っている。 1 2.気体廃棄物の年間放出量 (1) 放出量の計算方法 気体廃棄物の年間放出量は、原子炉施設の稼働率を 80%、炉心燃料から冷却 材への全希ガス漏えい率(以下「全希ガス漏えい率」という。 )fについて、年 間平均を想定した 30 分減衰換算値で 3.7×109Bq/s とし、放出経路ごとに「線 量評価指針」に従い以下により計算している。(以下の計算では、全希ガス漏え い率を無次元の値として用いている。) a.蒸気式空気抽出器排ガス中及び起動停止用蒸気式空気抽出器排ガス中の希 ガス及びよう素 (a) 復水器から蒸気式空気抽出器及び起動停止用蒸気式空気抽出器(以下、 これらを「空気抽出器」という。)に移行する希ガス及びよう素の割合は、 それぞれ 100%及び1%としている。 (b) 空気抽出器排ガスの減衰に用いられる気体廃棄物処理系活性炭式希ガス ホールドアップ装置の希ガスの保持時間は、キセノン 30 日間、クリプト ン 40 時間としている。 (c) 空気抽出器排ガス中に含まれるよう素は、気体廃棄物処理系活性炭式希 ガスホールドアップ装置により十分に減衰するので無視している。 b.復水器真空ポンプの運転による排ガス中の希ガス及びよう素 (a) 復水器真空ポンプの運転による排ガス中の希ガスの年間放出量は、1.25 ×104Bq に全希ガス漏えい率(3.7×109)を乗じた値とし、放出回数は、 年間5回としている。この場合、放出希ガスの実効エネルギは、減衰時 間を 12 時間として計算した希ガスの核種組成から求めている。 (b) 復水器真空ポンプの運転による排ガス中のよう素-131 及びよう素- 133 の年間放出量は、ともに 0.4Bq に全希ガス漏えい率(3.7×109)を 乗じた値とし、放出回数は、年間5回としている。 c.換気空調系から放出される希ガス及びよう素 (a) 希ガスの放出量は、第1表の係数に炉心燃料からの希ガス各核種の漏え い率(Bq/s)を乗じて計算している。 この場合、放出希ガスの実効エネルギは、減衰時間を 30 分として計算し た希ガスの核種組成から求めている。 2 (b) よう素の放出量は、第1表の数値に冷却材中のよう素-131 及びよう素 -133 の濃度(Bq/g)を乗じた値としている。 d.定期検査時に放出されるよう素-131 定期検査時のよう素-131 の放出量は、2Bq に全希ガス漏えい率(3.7×109) を乗じた値としている。 (2) 希ガス及びよう素の放出量 a.希ガスの放出量 希ガスの放出量及び実効エネルギの計算結果を第2表に示す。 b.よう素の放出量 よう素の放出量の計算結果を第3表に示す。 第1表 換気空調系における放射性希ガス及び放射性よう素の漏えい係数 換気空調系 核 種 希ガス 原 子 炉 建 屋 タービン建屋 原 子 炉 区 域 1×10-3 1×10-3 ※ 廃棄物処理建屋 1×10-3 ※ よう素 131I 0.3(g/s) 0.6(g/s) 0.2(g/s) 133I 0.2(g/s) 0.2(g/s) 0.03(g/s) ※133Xe、135Xe、135mXe以外の核種は無視する。 3 第2表 放射性希ガス放出量及び実効エネルギ γ線実効エネルギ 希ガス放出率 希ガス放出量 (MeV) (Bq/s) (Bq/y) 蒸気式空 気抽出器 及び 起動停止用蒸気式空気抽出器 約 5.5×10-2 約 7.7×106 約 1.9×1014 復 水 器 真 空 ポ ン プ 約 2.5×10-1 - 約 4.6×1013 タ ー ビ ン 建 屋 約 8.2×10-1 約 3.7×106 約 9.3×1013 原子炉建屋原子炉区域 約 2.2×10-1 約 1.3×106 約 3.3×1013 廃 棄 物 処 理 建 屋 約 2.2×10-1 約 1.3×106 約 3.3×1013 - 約 4.0×1014 放 出 経 路 換気空調系 合 約 2.9×10-1 計 ※ ※連続放出の平均エネルギ 第3表 放射性よう素の放出量 131I 放 出 経 路 放 復 水 器 真 空 ポ ン プ 出 率 133I 放 出 量 放 出 率 放 出 量 (Bq/s) (Bq/y) (Bq/s) (Bq/y) ― 約 1.5×109 ― 約 1.5×109 運 転 時 約 3.5×102 約 8.9×109 約 9.7×102 約 2.5×1010 定 検 時 ― 約 7.4×109 ― ― ― 約 1.8×1010 ― 約 2.6×1010 換気空調系 合 計 4 3.液体廃棄物の年間放出量 液体廃棄物の主なものは、各建屋の機器からのドレン、各建屋の床ドレン、化学 分析室等で発生する化学廃液、保護衣類等を除染する際に生じる洗濯廃液、手洗い 時に生じる廃液等であるとしている。 液体廃棄物中の放射性物質による線量の評価を行う際には、液体廃棄物処理系の 運用の変動を考慮して液体廃棄物の年間放出量は、トリチウムを除き 3.7×109Bq、 トリチウムは 3.7×1012Bq としている。 なお、トリチウムの環境放出量については、先行炉の実績等を考慮して年間 3.7 ×1012Bq 以下と推定されている。 5 4.線量の計算 (1) 気体廃棄物中の放射性希ガスのγ線に起因する実効線量 気体廃棄物中の放射性希ガスのγ線に起因する実効線量の計算は、放射性雲か らのγ線による実効線量を対象に、放射性希ガスの年間放出量、γ線実効エネル ギ、放出源の有効高さ等を用いて行われている。 線量の計算は、主排気筒を中心として 16 方位に分割した陸側8方位の敷地境 界外について行われ、希ガスのγ線による実効線量が最大となる地点での線量を 求めている。 敷地境界外陸側8方位について希ガスのγ線による実効線量の計算結果を第 4表に示す。これによれば、陸側8方位の敷地境界外のうち、希ガスのγ線によ る実効線量が最大となるのは、主排気筒の西北西約 1,390mの敷地境界であり、 その実効線量は約 0.8μSv/y である。 第4表 計算地点の 方 位 放射性希ガスのγ線に起因する実効線量 主排気筒からの距離 希ガスのγ線に起因する (m) 実 効 線 量 ( μ Sv/y) 敷 地 約1,550 約2.5×10-1 SW 約1,820 約2.6×10-1 WSW 約1,620 約4.6×10-1 W 約1,400 約7.5×10-1 WNW 約1,390 約7.8×10-1(最大値) NW 約1,660 約5.9×10-1 NNW 約1,620 約5.5×10-1 N 約1,520 約4.2×10-1 境 SSW 界 6 (2) 液体廃棄物中に含まれる放射性物質に起因する実効線量 液体廃棄物中に含まれる放射性物質(よう素を除く。)に起因する実効線量の 計算は、放射性物質が海産物を介して人体に摂取される場合の実効線量を対象に、 放射性物質の年間放出量及び海水中における放射性物質の濃度を用いて行われ ている。 なお、海水中における放射性物質の濃度は、液体廃棄物中の放射性物質の年間 放出量、第5表の核種組成及び第6表の復水器冷却水放水口における放射性物質 の年間平均濃度を用いている。 液体廃棄物中に含まれる放射性物質(よう素を除く。)に起因する実効線量は、 約 0.4μSv/y である。 第5表 環境に放出される液体廃棄物中に含まれる放射性物質の核種組成 核種 組成(%) 核種 組成(%) 51Cr 2 89Sr 2 54Mn 40 90Sr 1 59Fe 7 131I 2 58Co 3 134Cs 5 60Co 30 137Cs 8 7 第6表 復水器冷却水放水口における放射性物質の年間平均濃度 核種 年間平均濃度(Bq/cm3) 51Cr 約3.2×10-8 54Mn 約6.4×10-7 59Fe 約1.1×10-7 58Co 約4.8×10-8 60Co 約4.8×10-7 89Sr 約3.2×10-8 90Sr 約1.6×10-8 131I 約3.2×10-8 134Cs 約8.0×10-8 137Cs 約1.3×10-7 3H 約1.6×10-3 8 (3) 放射性よう素に起因する実効線量 放射性よう素に起因する実効線量の計算は、気体廃棄物中のよう素及び液体廃 棄物中のよう素に着目し、これらが吸入、葉菜、牛乳及び海産物を介して、成人、 幼児及び乳児にそれぞれ摂取される場合の実効線量を対象に行われている。 a.気体廃棄物中に含まれる放射性よう素に起因する実効線量 よう素の年平均地上空気中濃度の計算は、気体廃棄物中のよう素の年間放出 量、放出源の有効高さ等を用いて行われている。 なお、計算地点は、敷地境界外陸側8方位で気体廃棄物中に含まれるよう素 の年平均地上空気中濃度が最大となる地点(主排気筒から西北西 1,390mの地 点)としている。 吸入、葉菜及び牛乳摂取による実効線量の計算結果を第7表に示す。 これによれば、気体廃棄物中のよう素の吸入摂取、葉菜摂取及び牛乳摂取に よる年間の実効線量は、成人で約 0.03μSv/y、幼児で約 0.2μSv/y、乳児で約 0.1μSv/y である。 b.液体廃棄物中に含まれる放射性よう素に起因する実効線量 海水中のよう素濃度は、復水器冷却水放水口における濃度を用いている。 計算結果は第8表に示す。これによれば、液体廃棄物中に含まれるよう素に 起因する実効線量は、海藻類を摂取する場合、成人で約 0.0006μSv/y、幼児で 約 0.002μSv/y、乳児で約 0.002μSv/y である。 また、海藻類を摂取しない場合は、成人で約 0.0006μSv/y、幼児で約 0.001 μSv/y、乳児で約 0.001μSv/y である。 c.気体廃棄物中及び液体廃棄物中に含まれる放射性よう素を同時に摂取する 場合の実効線量 計算結果を第8表に示す。これによれば、気体廃棄物中及び液体廃棄物中に 含まれるよう素を同時に摂取する場合の実効線量は、海藻類を摂取する場合、 成人で約 0.002μSv/y、幼児で約 0.02μSv/y、乳児で約 0.02μSv/y である。 また、海藻類を摂取しない場合は、成人で約 0.03μSv/y、幼児で約 0.2μSv/y、 乳児で約 0.1μSv/y である。 9 第7表 気体廃棄物中に含まれる放射性よう素に起因する実効線量 気体廃棄物中に含まれる放射性よう素に 年 齢 グループ 起因する実効線量(μSv/y) 摂取経路 131I 133I 合 計 吸 入 約3.8×10-3 約1.1×10-3 約4.9×10-3 葉 菜 約1.2×10-2 約5.5×10-4 約1.2×10-2 牛 乳 約1.1×10-2 約2.4×10-4 約1.2×10-2 合 計 約2.7×10-2 約1.9×10-3 約2.9×10-2 吸 入 約6.9×10-3 約2.3×10-3 約9.2×10-3 葉 菜 約2.8×10-2 約1.5×10-3 約2.9×10-2 牛 乳 約1.3×10-1 約3.2×10-3 約1.4×10-1 合 計 約1.7×10-1 約7.1×10-3 約1.7×10-1 吸 入 約4.2×10-3 約1.7×10-3 約5.9×10-3 葉 菜 約2.1×10-2 約1.4×10-3 約2.2×10-2 牛 乳 約1.2×10-1 約4.0×10-4 約1.2×10-1 合 計 約1.4×10-1 約3.4×10-3 約1.4×10-1 成 人 幼 児 乳 児 注)乳児:0才~1才、 幼児:2才~4才、 成人:5才以上 (「発電用原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」より) 10 第8表 気体廃棄物中及び液体廃棄物中に含まれる放射性よう素に起因する実効線量 液体廃棄物中に含まれるよう素に起 年 齢 因する実効線量(μSv/y) 気体廃棄物中及び液体廃棄物中に含まれ るよう素を同時に摂取する場合の実効線 量(μSv/y) グループ 海藻類を摂取 海藻類を摂取 海藻類を摂取 海藻類を摂取 する場合 しない場合 する場合 しない場合 成 人 約5.7×10-4 約5.6×10-4 約2.4×10-3 約2.9×10-2 幼 児 約1.7×10-3 約1.3×10-3 約1.6×10-2 約1.8×10-1(最大値) 乳 児 約2.2×10-3 約9.9×10-4 約2.2×10-2 約1.4×10-1 注)乳児:0才~1才、 幼児:2才~4才、 成人:5才以上 (「発電用原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」より) 11 5.線量の評価結果 敷地境界外における気体廃棄物中の希ガスのγ線による実効線量、液体廃棄物中 の放射性物質(よう素を除く。)による実効線量並びに気体廃棄物中及び液体廃棄 物中に含まれるよう素を同時に摂取する場合の実効線量は、それぞれ約 0.8μSv/y、 約 0.4μSv/y 及び約 0.2μSv/y となり、合計約 1.4μSv/y である。(第9表参照) この値は、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」に示され れる線量目標値 50μSv/y を下回っており、一般公衆の受ける線量が合理的に達成 できる限り低減されると判断した。 第9表 平常運転時における一般公衆の受ける線量評価 気 体 廃 棄 物 中 液体廃棄物中に含ま 気体廃棄物中及び液体廃 の 希 ガ ス に よ れる放射性物質(よ 棄物中に含まれる放射性 る実効線量 う素を除く)に起因 よう素を同時に摂取する する実効線量 約 0.8μSv/y 合計 場合の実効線量 約 0.4μSv/y 約 0.2μSv/y 12 約 1.4μSv/y
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