2013年度 岐阜経済大学 学内ゼミナール大会 参加論文

2013年度 岐阜経済大学
学内ゼミナール大会 参加論文
ゼミ名 大野ゼミナール
テーマ 地域スポーツの普及・振興における総合型地域スポーツクラブの可能性
―岐阜県の事例から―
代表者 大川 翔子
参加者 荒木 菜帆 稲益 圭一 井野 勝喜 上間 寛 大塚 友紀 岡本 悠幹
奥山ありさ 加納 貴子 小﨑 愛美 佐々木 愛乃 佐藤 優光
西村 理絵 比嘉 京介 比嘉 恵太 八幡 燿平 山田 義人 横井 聖
目次
Ⅰ 課題
Ⅱ 日本のスポーツ実施率の現状と問題点
Ⅲ 地域スポーツにおける総合型地域スポーツクラブの可能性
Ⅳ 岐阜県の総合型地域スポーツクラブの事例紹介
Ⅴ 総合型地域スポーツクラブの問題点と提言
Ⅵ 結論
Ⅰ 課題
ゼミ活動の中で学習をしたり調査をしていく中で現在スポーツの実施率は下がってい
ることがわかった。そこでスポーツ経営をゼミのテーマとする大野ゼミの皆でこの約1
年でどうすれば実施率があがるかを考えた。
そこで我々は総合型地域スポーツクラブが地域のスポーツの実施率を高める可能性を
秘めている存在ではないかと思い、総合型地域スポーツクラブの視点から地域のスポー
ツの普及・振興、地域の活性化について考える。本報告では、地域の中でも我々が生活
する岐阜に焦点を当てて考えたい。日本のスポーツの実施率や、総合型地域スポーツク
ラブがスポーツや地域に果たす役割、岐阜県の総合型地域スポーツクラブへ実際にヒア
リングすることなどにより、理論と実態の両側面から、総合型地域スポーツクラブが地
域スポーツや地域に果たす役割について考えたい。
Ⅱ 日本のスポーツ実施率の現状と問題点
日本のスポーツ実施率の現状、
アテネオリンピックで日本は世界の強豪国と肩を並べ、
「スポーツ先進国」と呼ぶに足る競技力を発揮した。このため、日本のスポーツ実施率
が上がったと考えられる。しかし、スポーツ環境の豊かさは、国際大会のメダル数には
必ずしも比例しない。日本の人口の半分以下のフランス、約 1/6 のオーストラリア、1/10
以下のスウェーデンは、オリンピックのメダル獲得数の対人口比で日本を大きく上回る
と共に、運動・スポーツ実施率も日本より高い。少なくともこれらの国々と比べれば、
日本はまだ「スポーツ先進国」とは言えないのかもしれない。
次に、全国・岐阜県のスポーツ実施率の現状、
「過去 1 年間に全く行っていない」が
岐阜県 32.57%で全国平均 29.52%である。
「年 1 回以上実施」が岐阜県 67.43%で全国
平均 70.48%である。
「週 1 回以上の実施」が岐阜県 52.00%で全国平均 52.84%である。
「アクティブスポーツ人口」が岐阜県 14.86%で 16.04%である。※アクティブスポーツ
人口とは週 2 回以上、1 回 30 分以上、主観的運動強度「ややきつい」以上のことである。
次に、岐阜県のスポーツ実施率の現状、
「この 1 年間に運動、スポーツをした」は 66.5%
となっており、内容としては「ウォーキング」が 71.4%と最も高くなっている。運動・
スポーツをした目的として、
「健康・体力づくり」が 69.6%と最も高く、次いで「運動
不足解消」が 62.5%となっている。スポーツ実施率とは、週に 1 日以上の運動・スポー
ツ実施者の割合(週 3 日以上の実施者数+週に 1~2 日の実施者数)÷有効回答者×100
である。
次に、スポーツ実施率について述べる。平成 12 年 9 月告示「スポーツ振興基本計画」
において 10 年間で達成すべき目標の一つとして「1 週間に 1 日、成人がスポーツを実施
する率を 50%にする」の達成とあるが、本調査では、男女の平均が 21%(H22 健康部
実施の調査では 34.2%)とまだまだ低い水準が問題点である。
Ⅲ 地域スポーツにおける総合型地域スポーツクラブの可能性
「総合型」とは、次の 3 つの特徴を包含(ほうがん)していることを指している。
1.
単一のスポーツ種目だけでなく、複数の種目が用意されている。
(例・野球、サッカー、卓球、ソフトボール、バスケット、バドミントン、水泳等)
2.
地域の誰もが年齢、興味・関心、技術・技能レベルなどに応じて、いつまでも活動
できる。(子どもから高齢者まで、初心者からトップレベルの競技者まで)
障害者を含み子どもからお年寄りまで、また、初心者からトップレベルの競技者ま
で、そして、楽しみ志向の人から競技志向の人まで、地域住民の皆さんの誰もが集
い、それぞれが年齢、興味・関心、体力、技術・技能レベルなどに応じて活動でき
る。
3. 質の高い指導者がいて、個々のスポーツニーズに応じた指導が行われる。
4. 活動拠点となるスポーツ施設を持ち、定期的・継続的なスポーツ活動を行うことが
できる。
5. 地域住民が主体的に運営する。スポーツ活動だけでなく、できれば文化的活動も準
備されている。
6. 総合型地域スポーツクラブの主役は「地域」の住民の皆さんである。すなわち、
「地
域」の皆さんが各地域でそれぞれ育み、発展させていくのが総合型地域スポーツク
ラブである。
したがって、「地域」とは、一般的に拠点となる施設を中心として、会員が自転車等
で無理なく日常的に集うことのできる範囲になる。
総合型地域スポーツクラブとは、このような「地域」における「総合型」のスポーツ
クラブです。誰もが行いたいスポーツを自由に選択できるとともに、各種のイベントな
どいろいろな形で楽しむことのできる身近な場である。言い換えると、内輪で楽しむ「私
益」ではなく、地域住民に開かれた「公益」を目指した、経営意識を有する非営利的な
組織である。
したがって、
クラブ育成には次のような基本認識のもとに取り組むことが必要になる。
総合型地域スポーツクラブは、こうした多様性を持ち、日常的に活動の拠点となる施設
を中心に、会員である地域住民個々人のニーズに応じた活動が質の高い指導者のもとに
行えるスポーツクラブである。
Ⅳ 岐阜県の総合型地域スポーツクラブの事例紹介
ここで岐阜県における実際の総合型地域スポーツクラブの経営についての現状を紹介
する。調査にあたっては、クラブの関係者へのヒアリングを行った。
① NPO 法人 FC ヴィオーラ
NPO 法人 FC ヴィオーラは、1997 年に創立し、2006 年に NPO 法人化した。事務所
は大垣市昼飯町にあり、活動拠点は青墓多目的グラウンド、青墓小学校、赤坂小学校な
どがある。会員数は 150 名程で、
『スポーツを愛する全ての人が、いい環境でスポーツ
ができること』を理念としている。
活動内容は、サッカー、未就学児のボール遊び、芝ヨガ、ノルディックウォーキング、
グラウンドゴルフなどがある。サッカーには、キッズの部、小学生の部、中学生の部、
社会人の部がある。会費の使い道は、グラウンドの維持費、選手の登録料と保険料、大
会や遠征の交通費、指導者への謝礼などである。
活動内容のほかに、様々なことを体験して、たくさんの刺激を受けて、身体・精神・
創造性・判断力・社会性を育てていくことを目標として、カレー会・餅つき大会・魚つ
かみ取りなどの取り組みを行っている。
また、
グラウンドへの感謝の気持ちを大事にし、
グラウンドに対して何をしなければならないかを伝える為に、自分たちのグラウンドは
自分たちの手で整備をしている。
FC ヴィオーラの強みは、芝生のグラウンドを持っているため、子供たちがケガを恐
れることなく、伸び伸びとプレーすることができることがある。また、人間育成を目的
とし、勝つことだけにこだわっていないため、気軽に入りやすい環境であるということ
である。問題点は、指導者不足、資金不足、会員が増えないことなどがある。経営上の
課題としては、資金不足のためクラブハウスのようなものがないことや、中学へ入学後
に FC ヴィオーラで活動を続ける人数が友人関係などにより多い年度と少ない年度があ
ることである。
② いけだスポーツクラブ
池田スポーツクラブは、
岐阜県揖斐郡池田町にあり平成18 年2 月 19 日に設立された。
NPO 法人認定されたのは、平成 19 年 4 月 16 日である。年会費は、1000 円である。ク
ラブ概要としては、健康な生活を送るためには運動が欠かすことができない。総合型地
域スポーツクラブでは、子供たちのスポーツクラブに力を注ぐとともにさまざまなスポ
ーツが気軽に、いつでも、だれでも、いつまでも楽しめるようにしている。取組として
は、バランスボール、いすビックス教室、ノルディックウォーキング、ヨーガ教室、フ
リースポーツクラブ、初めてのジャズヒップホップダンス教室、ストレッチ、ウォーキ
ング教室、ベビーヨーガ教室である。
強みとしては、いろんなスポーツができる。利点としては、人間関係でコミュニケー
ションを大切にしていて名札などをつけて、自己紹介、あいさつを大切にしていること
である。
問題としては、会員のニーズにこたえるのが難しいことである。最後に経営上の課題
として、資産が十分ではないため会員費を上げざるを得ないことがあることがも課題と
してあげられる。
③ 西濃インビクタス
このクラブの経営理念は、NPO 法人としての目的が、
「自分のために楽しく真剣に取
り組むスポーツ」を通じて、西濃地域の未来を担う子供達に優しさと強さと創造性を育
む「巣作り」の場を提供することで「スポーツマンのこころ」を持った世界に通用する
人間を育成し、ゆとりある地域社会の実現と個性ある地域文化の創出に寄与することを
目的に活動している。
活動内容は、子供のためのスポーツシューレ、障碍児者のスポーツ教室がある。場所
は、岐阜経済大学にある。設立は、2002 年で入会費は 1500 円、年会費は小学生が 2000
円、大人が 3000 円になる。
クラブの特徴として、スポーツマンのこころというオリジナルの育成方針がある。岐
阜経済大学の中にあり学生が中心となって活動できる。障碍者スポーツ指導委員の資格
を持った経験豊富で専門的なスタッフがいる。
個性を大事にしているので、
一人一人に、
合わせた柔軟な対応が行える。
また、問題点は、大学と連携をとっているので大学とのつながりがなくなると経験状
況が厳しくなること、スポーツの種類が少なくマンネリ化していることや、ボランティ
アの多くが学生のため専門性にかけている点などが挙げられる。
この問題に対する具体的な対策としては、連携をとっている面で学生の指導力の向上を
目指し成長の場であることをアピールする。マンネリ化しているところは、サッカー部
以外のクラブからもボランティアを募集したりなど外部からも協力を得る。専門性につ
いては、大学にあるクラブの指導者に積極的な参加をお願いする。
これらをまとめた結果、インビクタスはスポーツを通じた人間教育に重点を置いて、
文武両道と自発的行動能力の育成を目指しているクラブで、岐阜経済大学という場所を
利用できるため、安定きて経営でき学生がボランティアとして協力して行うため、人件
費が削減し運営できるというプラスポイントがある。学生に成長の場を提供し、学生中
心としたスポーツクラブである。
④ ごうどスポーツクラブ
クラブ設立の経緯としては、各都道府県に文部科学省から市町村に地域総合型スポー
ツクラブを設立するように指示があったのが始まりとなっている。これは、他のスポー
ツクラブも同様だ。文部科学省のホームページを見てみると、平成7年度から15年度
までの9年間地域のコミュニティの役割を担うスポーツクラブづくりに向けた先導的な
モデル事業として、地域住民の自主的な運営を目指す「総合型地域スポーツクラブ育成
モデル事業」を実施してきた。と記載されている。
私たちのイメージとしては自分たちで集まって非営利団体のように作られたと思って
いたが、国からの指示ということを知りとても驚いた。
ごうどスポーツクラブにはサポーターというものがある。サポーターとは神戸町にあ
る店舗がわずかだがごうどスポーツクラブに出資をするというものである。メリットと
しては不定期に発行される会報に広告として載るということと、スポーツクラブのスタ
ッフが忘年会やスポーツクラブに必要な用品を購入したものだ。なお、現在サポーター
は49店舗参加している。
活動資金はどうしているかについてだが、大半は会員の年会費でまかなっている状態
だ。サポーターによる援助や国からの補助金などもあるが、クラブとしてはかなり苦し
い状況にある。現状としては資金不足だ。
経営上の課題としてはスポンサーがついているとは言え、年会費だけではまかなえな
い部分があり、会員をもっと増やさなくてはならないことだ。
最後に、まとめとしては NPO 法人ごうどスポーツクラブは、12 年前の設立以来、数
多くの会員を獲得しており総合型地域スポーツクラブとしては成功している面が多いが、
先ほども言ったようにまだまだ改善する点は多く残っている。
Ⅴ 総合型地域スポーツクラブの問題点と提言
次は、今までの事例を基に、総合型地域スポーツクラブが、現在抱えていると考えら
れる問題点と、その改善策の提言。
まず問題点としては、十分な資金が集まらないこと、ボランティア、専門能力のある
指導者など人手が足りないこと、年間を通じた入会者が少なく、会員不足であること、
施設が不十分であること、この 4 つが挙げられる。
この問題点は、地域の人々との関わりを深めて、克服していく必要があると考えた。
そのために出来ることは、まず大学との連携の強化である。大学と連携することで、単
位との連動などを図り、学生のボランティアを確保することが出来る。
次に広報活動の強化である。より多くの人に、スポーツクラブの活動内容を知っても
らうために、これは欠かせない。
そして既存会員との関係の強化である。新規会員ばかりに目を向けるのではなく、会
員が会員を呼ぶ仕組みづくりも取り入れる必要がある。
最後に地域でのイベント開催である。このイベントの具体例は、運動後のカレー会や
餅つき大会、スタンプラリー・景品など工夫をした山登りや、親子での自然体験などが
ある。また多くの年齢層に楽しんでもらうために、年配者向けのお花見・登山・のど自
慢大会・バスツアー、子供向けの七夕・夏祭り・秋祭り・クリスマス会、ビンゴなどの
お楽しみ会なども大切だ。このように地域の人を巻き込んで、イベントを実施していく
必要がある。
Ⅵ 結論
総合型地域スポーツクラブは地域のスポーツだけでなく、地域を活性化できる可能性
を秘めている存在である。しかしながら、その存在が地域の人々に十分に認知されてい
ないことが調査の中でわかった。
地域の人々とクラブが一体となり、地域スポーツや地域を活性化させる取り組みを行
うことで、地域スポーツや地域を良くしていける可能性を秘めている。
参考文献一覧・URL
・公益社団法人笹川スポーツ財団編・発行『スポーツ白書』
、2011 年
・NPO 法人 F.C.ヴィオーラ HP http://www.fc-viola.com/(2013 年 11 月 27 日アク
セス)
・いけだスポーツクラブ HP http://www.ogaki-tv.ne.jp/~ikedasports/(2013 年 11 月
27 日アクセス)
・公益財団法人笹川スポーツ財団 HPhttp://www.ssf.or.jp/
(2013 年 11 月 27 日アクセス)
・公益財団法人日本体育協会 HP http://www.japan-sports.or.jp/ (2013 年 11 月 27
日アクセス)
・ごうどスポーツクラブ HP http://www.godo-sc.jp/index.php(2013 年 11 月 27 日ア
クセス)
・西濃インビクタススポーツクラブ 2002HP http://s-fcgifu.jimdo.com/(2013 年 11 月
27 日アクセス)