中国経済論

中国経済論
東京女子大学2015年
第1回
丸川知雄
中国経済を学ぶ意味
• 2010年に中国の経済規模(国内総生産=
GDP)は日本を抜いて世界第2位となりました。
では2014年には日本のGDPを100とした時、
中国のGDPはどれぐらいだったでしょうか?
①89 ②115 ③156 ④182 ⑤225
中国経済を学ぶ意味
• 世界で最もダイナミックに成長している経済である。
• しかし、中国経済はいかなる意味でも「典型的」な経済とはい
えない。①中国は世界最大の人口規模を持つ。②かつては
社会主義計画経済の体制をとっており、徐々に市場経済に
移行しつつある。
• 抽象的な経済学だけでは中国は十分に解明できず、中国独
自の制度的特徴や歴史を踏まえた分析が必要になる。
• 不完全な市場経済、腐敗の蔓延など経済学者に言わせれ
ば中国がうまく成長できるはずがない。にもかかわらず成長
しているとすれば、それは①経済学が間違っている、②中国
の成長が間違っている(ウソ)、③両者の中間(中国の成長
は経済学でそこそこ説明できる、中国の成長にはそこそこ問
題がある)
2020年以降を見据えた中国経済論
• 中国はたえざる変化と成長の途上にある。
• そのため我々の中国認識も不断の更新が必
要である。
• 本講義(私)の狙いは「2020年の時点でも有
用な中国経済の知識を授ける」こと。
日本(人)との関係
• 文明の源として学習・尊敬/後進性の象徴として軽
蔑・差別
• 東北部(満洲国)を侵略・開発、日中戦争に敗北、東
西冷戦下で大陸(中国共産党)とは対立/国交正
常化(1972年)以降は西側諸国のなかでも積極的
に援助、厚い経済交流、人的交流
• 中国崩壊論/中国脅威論
私が考える望ましい関係とは、中国の安定的発展を
促進し、そこから利益を得る関係、中国の望ましい変
化(平和的台頭)を促進するような関係
2020年の中国はどうなっているか
• 2011年に中国の製造業の付加価値額はアメリカを抜いて世
界一になった。2020年にはますます世界最大の工業国とし
ての姿を鮮明にしているであろう。
中国の圧倒的な工業生産力:
• 粗鋼 中国8.227億トン、日本1.1067億トン、アメリカ8817万
トン(2014年、日本鉄鋼連盟)
• 化学繊維 中国が世界の70%、インド6.7%(2014年、日本化
学繊維協会)
• 自動車 中国2212万台(2013年)、アメリカ1033万台(2013
年)、日本994万台(2013年)
• 中国の世界シェア パソコン98%、携帯電話56%、デジカメ
69%
• 「世界の工場」である中国の経済を解明するには、まずその
工業を理解することが重要である。本講義の主眼は中国の
工業力の解明に置かれている。
シラバス
1.中国経済2000年の歩み
2.中華人民共和国の経済成長
3.計画経済
4.計画経済と市場経済
5.労働市場1
6.労働市場2
7.財政と金融1
8.財政と金融2
9.技術1
10.技術2
11.国有企業
12.外資系企業と開放政策
13.民間企業と産業集積
14.中国の前途にある罠
到達目標
• (1)中国の現代史の基礎知識を身につける。
(2)経済の実態を理解するうえでの基本的な
着眼点と手法を知る。
(3)いろいろな産業に関する基礎知識を身に
つける。
教科書・評価方法
教科書
• 丸川知雄『現代中国経済』有斐閣、2013年
参考書
• 丸川知雄・梶谷懐『<超大国中国のゆくえ>4 経
済大国化の軋みとインパクト』東大出版会、2015年
評価方法
• 定期試験 平常点
注意事項
• 授業外での質問等は遠慮してください。
スケジュール
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•
4月10日、17日、24日
5月8日、15日、22日、29日
6月5日、12日、19日、26日
7月3日、10日、17日
試験
第1章 経済成長の過去と将来
図 1-1 中国の人口の推移(紀元1 ~2050 年)
10 000 000
千人
1 000 000
(出所)1949年以前は趙・謝『中国人口史』、1950~2008年は『中国統計年鑑』、2009年以後は国連推計http://esa.un.org/unpp/index.asp
2050
2000
1950
1900
1850
1800
1750
1700
1650
1600
1550
1500
1450
1400
1350
1300
1250
1200
1150
1100
1050
950
1000
900
850
800
750
700
650
600
550
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
10 000
0
100 000
世界最大の経済だった中国
• 紀元前4世紀頃に人口3200万人、その後秦
が中国を統一する過程で人命が失われ、
BC221年には2000万人。
• 前漢の時代に社会が安定し、AD2年に人口
5800万人。当時の世界の人口(2.26億人)の
4分の1を占めた。
• 後漢の末に内乱と疫病などで人口が激減し
1400万人程度になる。その後、10世紀に至
るまで6000万人を超えることはなかった。
宋~明
• 宋(960~1279年)の時代、長江流域で稲作
が広まり、灌漑で単収が増加、淮河上流や四
川省も開拓され、12世紀末頃、中国の人口
は1億人を突破。
• 元(1271~1368年)の時代、中原地域の荒
廃のため中国の人口は停滞。
• 明(1368~1644年)、中原地域は回復。しか
し貨幣不足と海禁のため経済は停滞。16世
紀になって南米や日本の銀が流入し、絹、綿
など商品作物生産が活発化。人口は1.5-2億
人に増加
清朝での経済発展
• 清の時代に中国の人口は1億人弱から1840年には
4.2億人に急増。
• トウモロコシ、サツマイモ、ジャガイモ、落花生など乾
いた土地でも栽培できる新大陸由来の作物が普及
し、耕地面積が拡大した。
• 清の皇帝はチベット、モンゴル、ウイグルの首長を
兼ね、清の版図は現在の中華人民共和国とモンゴ
ルを合わせた領域に拡大。