ヨルダン・ウムカイスの野鳥 Wild bird of Umm Qais in Jordan ――コウノトリに会いたい―― ―― I Like Storks ―― ボランティア 富 田 富 喜 夫 【はじめに】 昨年一昨年と、楓門祭において私のヨルダンの野鳥についての発表の機会がありません でした。今年は最初から時間設定をお願いしました。そうでないと皆さんの(本当は私の) 一番楽しい時間がなくなってしまうから・・・・。 10 分という短い時間ですが、難しい 話が続いた後です、一休みしてください。 今回はコウノトリを中心に、写真を見ていただこうと思います。 【コウノトリに会える】 ヨルダンに行くときの一つの楽しみは、コウノトリに会えることです。コウノトリは世 界で 17 種、日本では 2 種が観察されています。1970 年代に日本産のコウノトリは絶滅し、 現在は大陸から渡って来るコウノトリが時々観察されています。兵庫県豊岡市ではロシア からコウノトリを借り受け人工繁殖を試みており、今では 100 羽近くまで増えていて、近 年は、このコウノトリを放鳥し、野性に戻す努力がされています。地元では、 『コウちゃん』 と言って大切に見守り親しまれています。 今年のヨルダンのコウノトリはどうだったのでしょうか? 【写真を見てください】 写真 1 この写真はこの会で何度もお見せしている写真で す。最初の年に撮った写真で、いわゆる鳥柱といい ます。大型の鳥が羽ばたきをしないで上昇気流に乗 って渦を巻きながら上空に上って行きます。ざっと 数えて 500 羽以上の大群です。 写真1:鳥 柱 写真 2 鳥の名前は「シュバシコウ」 (コウノトリ科 コウノトリ属)と言います。日本のコウノトリと同 じ仲間です。 写真 2:シュバシコウ 写真 3 もっと拡大します。特徴として嘴が赤いことが分 かります。それで嘴が赤いコウノトリで「シュバシコ ウ」と言う日本名がついています。では日本のコウノ トリを見ていただきましょう。 写真 3:シュバシコウ 写真 4 兵庫県の豊岡で現在 100 羽近いコウノトリが飼育 されています。日本産のコウノトリは絶滅し、ここ で飼育されているのはロシアから借りたものが増え ているからです。大陸にいたコウノトリが同じコウ ノトリだったから良かったのです。違いが分かりま すか? 嘴の色を見てください。黒色です。 最近では、放鳥もはじまっていますが渡りを知ら 写真 4:豊岡で飼育中のコウノトリ ないコウノトリです。時々大陸からも渡って来ます。 写真 5 この写真も鳥柱ですが、先ほどのとは少し違いま す。見た瞬間に「変だな?」と思いました。飛んで いるコウノトリは黒く見えます。ところが数羽白く 見えるのがいます。拡大してみます。と、 写真 5: 鳥 柱 写真 6 上の鳥が明らかに黒いのが分かります。日本名で は「ナベコウ」(コウノトリ科コウノトリ属)と言う 名の鳥の仲間です。その下に先ほど紹介した「シュバ シコウ」が飛んでいるので、色の違いでわかるでしょ う。 写真 6:黒と白のコウノトリたち 写真 7 次の写真を見てください。右の鳥は頭から首にか けて青いのに気づきます。1 年目の若鳥です。親鳥 に混ざってアフリカの越冬地に向かって飛んでいく ところです。無事に帰ってくると良いのですが、渡 りの途中で弱い固体は淘汰されていきます。 写真7: 若 鳥 写真 8 今度はヨルダンの鳥ではありません。この鳥を見 たくてタイに出かけました。タイのアユタヤに向か う途中にタマサート大学があるのですが、そのそば の田んぼや湿地にたくさんいました。この鳥は街灯 の上にとまっていました。「スキハシコウ」(コウノ トリ科スキハシコウ属)と言います。名前の由来は 嘴を見ると分かります。嘴がきちんと合わさらない で隙間ができています。この田んぼにいる 5 センチ 写真 8:スキハシコウの仲間 もある大きなタニシを捕って食べるのに大変便利な 嘴をしています。嘴に挟んでも落ちないのです。 写真 9 もう 1 枚「スキハシコウ」を見てください。 樹上に留まる姿です。写真 7 は街灯の上でした。 写真 10 (松本先生撮影) 今年会った一番うれしい鳥の写真です。 ウムカイス在住の大学院生の平山さんが、発掘中 に「この声の鳥は何ですか?」と言うので、そちらを 写真 9:樹上のスキハシコウ 見ると黒い鳥の一団が北側の崖を上ってきました。 『クオークオー』と鳴きながら 1 列になって飛んで きます。ウムカイスでコウノトリ属以外の大型の鳥 を初めて見ました。思わず『ツルだ!』と叫んでい ました。 日本の「クロヅル」 (アジアクロヅル)と似ていま すが、 「ヨーロッパクロヅル」 (ツル科ツル属)です。 鹿児島県出水市に、ツルの越冬地がありますが、そ こには毎年来ているようです。私も見に行きました 写真 10:ヨーロッパクロヅル が見られませんでした。 写真 11 (松本先生撮影) コウノトリとツルの違いはどこにあるのでしょ うか。 ① この写真のように、ツルの仲間は移動の時に 編隊を組みます。コウノトリは、ばらばらに 飛んでいきます。 ② ツルは鳴きますがコウノトリの鳴き声は聞い 写真 11:ヨーロッパクロヅルの編隊 たことがありません。コウノトリは嘴を打ち 合わせて音を出します。 ③ 写真 8 のようにコウノトリは樹の上などに とまったり巣を作ったりしますが、ツルは地 上に巣を作ります。 この 3 点でツルとコウノトリの違いが分かりま す。よくタンチョウヅルが樹上に留まっている絵が ありますが、コウノトリとの混同でしょう。 余談ですが、昔、タンチョウは日本中にいて渡り 写 真 12: ア カ ゲ ラ 類 もしていましたが、現在北海道にいるタンチョウは 渡りを知りません。 写真 12 ここからは、ちょっと面白い写真を見てもらいま しょう。キツツキの仲間を見てください。 アカゲラ類のオスです。日本のアカゲラとの違い は頭部が白く見えます。大きさなどはほぼ同じです。 23cm 位です。 写真 13:アカゲラ類のメス 写真 13 アカゲラ類のメスです。オスと同じで頭部が白く 感じます。オス、メス共に頬から背中に伸びる黒い 線が短いようです。 写真 14 アカゲラ類のオス(左)とメス(右)の違いを見てく ださい。お気づきでしょうか。頭の後ろが赤いほう 写真 14:アカゲラ類のオスとメス がオスです。腹部の赤いところは共通です。 写真 15 アカゲラ類の写真でもう一つ面白い写真がありま す。望遠で鳥を探していたら偶然木の枝を行くカメ レオンを見つけました。 きれいな、葉の色と同じ緑色をしています。 写真 16 写真 15:緑色のカメレオン するとそこへアカゲラ類が飛んできて留まりまし た。そしてカメレオンを見て固まってしまいました。 両者とも数分間動きませんでした。どういう気持ち だったのでしょうか。聞いてみたいですね。 写真 17 皆さんが良く知っているシジュウカラは日本のど こでも見られる可愛い小鳥です。この鳥もシジュウ カラの仲間です。日本のシジュウカラの腹部は、真 っ白という感じです。 写 真 16: お 見 合 い 中 ? この写真では見て分かるように腹部の色は綺麗な 黄色です。 「キバラシジュウカラ」と言います。鳴き 声も少し違い、ヨルダンのシジュウカラは色気?が あります。胸のネクタイ模様は同じです。 写真 18 この鳥は「ヤツガシラ」(ヤツガシラ科ヤツガシラ 属)と言います。現地名で『ホドホド』と言います。 鳴き声から名前がついています。昭和 45 年に初め 写真 17:キバラシジュウカラ てインドで姿を見ました。その時はキツツキの仲間 と現地の人に教わりました。キツツキにしてはよく 地面に降りてえさを探していたので、変だと思って いました。ヨルダンには普通に見られるので驚きま した。ディズニー漫画のウッドペッカーに似ていま す。 日本名の「ヤツガシラ」と言う名前は、興奮した りすると頭頂のとんがった部分が 8 つに逆立ちする ところから来ています。世界中でこの仲間は一種と 写真 18:ヤ ツ ガ シ ラ いう珍しい鳥です。日本では迷鳥です。 【ま と め】 今年は 10 月 15 日、4 羽のシュバシコウの幼鳥が上るのを確認しました。しかしその数は あまりに少なく、何百といたコウノトリたちはどこへ行ってしまったのでしょう。渡りの 中継地が変わったのか、コースが変わったのか、時期が変わったのか、いずれにしてもコ ウノトリたちに何か変化があったのだろうと思います。 その代わりに、ウムカイスでヨーロッパクロヅル 26 羽を見ることができました。ヨルダ ン川やヤルムーク川に探鳥に行きたいものです。 コウノトリは世界中に 17 種(6 属 17 種)います。全部見たいと思うのですが、アフリカ や南米には簡単に行けそうにありません。機会があれば行って見てみたいと思っています。 これからも可愛い、綺麗な鳥たちとの出会いを楽しみにしています。
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