教職研修課の調査報告 - 鹿児島県総合教育センター

教職研修課の調査報告
〔
研
究
主
題
〕
教職員のニーズを踏まえた効果的・効率的な研修の構築に関する研究Ⅱ
~フレッシュ研修における学校での指導体制の在り方~
1
調査目的
平成22・23年度の調査研究においては,当教育センターで実施している悉皆研修の経験年次別研修
の研修内容と教職員のニーズとは概ね整合性があることが分かった。
平成24・25年度は,学び続ける教師を育成する上で,初任校における研修は重要な位置を占めるこ
とから,フレッシュ研修(初任校研修)に焦点を当てる。
具体的には,フレッシュ研修を実施している学校の状況を把握し,効果的な校内指導体制を紹介す
ることで,校内研修の充実を目指す。
フレッシュ研修(初任校研修)の更なる充実
校内における指導体制の在り方を提示
〔現状・課題〕
〈方向性〉
一貫した校内指導体制(3年間)の確立
1年目
170時間
2年目
3年目
研究授業研 研究授業研
修(5時間) 修(5時間)
課題研修
(5日)
指導体制等
の把握と分析
・巡回訪問
・研修報告書
など
効果的な
指導事例
等の収集
とまとめ
効果的な
指導体制
等の紹介
資料作成
成果の
還元と
活用
研修機会の拡大
〈研修対象者〉
3年経過後の研究と修養の実践
短期研修講座
自主研究団体
校内研修 など
資質能力の向上
学び続ける教師像
2 調査方法と対象
(1) 平成24・25年度悉皆研修におけるアンケート
・ 新任校長・教頭研修対象者
・ 経験者教頭研修対象者
・ パワーアップ研修対象者
・ ステップアップ研修対象者
(2) 巡回訪問
面談(管理職,初任者等),表簿等確認,授業参観等
・ 平成22~25年度採用のフレッシュ研修対象者(鹿児島市を除く)
3
調査項目
校内における研修
・ 実施状況及び成果
・ 今後の課題と具体的改善策
全校体制の確立,指導教員等による指導の状況,指導用資料の収集・保管の状況
指導記録簿,研修日誌記入の状況
・ 対象者の状況(授業参観・面談等を含む)
・ 初任校研修についての意見や要望
・ その他
4 調査結果
(1) 平成24・25年度悉皆研修におけるアンケートより
Q 新規採用教員については,本県ではフレッシュ研修(初任校研修)として,3年間にわたっ
て研修に取り組んでいます。フレッシュ研修を実施することによって,対象者の資質や能力は
向上していると思われますか。
【管理職研修】
(※ ○:成果・効果,△:課題・要望)
○
初任者研修が初任校研修として,3年間の継続的研修になり,初任者にとって有意義な研
修に改善されたと思う。
「3年間の研修」という自覚を本人を含め全職員がもつ必要がある。
初任校でじっくりと,しっかり育てていきたい。
○ フレッシュ研修は有意義で必要な研修である。日々の研修にしっかり取り組むことによっ
て職責感が増し,指導力も向上していく。初任者が配置されたことで他の教師にも良い影響
を与え,学校全体が活性化した。
○ 研修計画や報告を詳細に,成果物の確認もすることで,研修される先生方の自覚も高まっ
ている。実施とその確認で,研修の意義が深まる。
○ 指導力向上・職務への情熱の喚起を行うために必要な研修である。また,自校だけの研修
ではなく,同年代がもつ他の課題等を共有することで,学校の向上につながるだけでなく,
県全体の教育力の向上が図れる機会にもなる。
○ 多くの時間や予算を必要とするが,継続して実施してもらいたい。自分自身の経験でも,
この研修で多くのものを学び,そして,同じ時期に採用された良きライバルを見ることで多
くの刺激を得ることができる。
△ 各地域ごとに,特に初任者のネットワークづくりを援助できる方策があると良い。
△ 若い教員には,授業に関する指導技術もさることながら,児童生徒との接し方や職員,保
護者,地域等とのコミュニケーションの取り方などを十分に身に付けてほしい。
【経験年次別研修】
○
(※
○:成果・効果,△:課題・要望)
初任の時は,仕事や学校,生徒に慣れることで精一杯の時であるが,忙しい中での研修も
大切である。それは,初任者研修の指導や資料,先生方からの言葉の意味が実感をもって理
解できるのは,その後の経験を積むことによることもあるからである。時間を経て気付くこ
とも多くある。研修を継続していくことに意味(学び)がある。
○ フレッシュ研修を通して学んだことが,今の自分の基本になっている。当時使っていた資
料を今になって読み返すこともある。
○ 経験豊富な指導教員や先輩の先生方から多くのことを学ぶことができた。やはり,先輩方
の経験に基づいた実践を学ぶことができるとともに,自分の指導を振り返ることができ,成
長させてもらった。
○ フレッシュ研修対象の先生方の様子から,研修を通して,今日の教育的動向や教育実践を
学んだり,研究授業及び授業研究で授業力を高めたりしていることが分かる。私自身の経験
からも,このような研修を通して,教師としての資質向上に努め,多くのことを子どもたち
に還元していくことが大切だと思う。
○ フレッシュ研修は,教師としての使命感,授業の在り方,子どもとの接し方,学級経営等
様々なことを多くの先生方から学ぶ貴重な機会であった。
△ フレッシュ研修について,本人の研修が深まるのは良いが,研修に関する時間が多く,学
級経営や教材研究等の時間を圧迫している。研修内容を精選し,時間的余裕をもたせること
もあって良い。
(2)
巡回訪問
管理職等との面談で出された意見
(※
○:成果・効果,△:課題・要望)
[校内指導体制]
○ 月1回「初任研だより」を発行し,フレッシュ研修の内容や研修の実施計画,現在の実施
状況等を全職員に周知している。
○ 1年目は,学習指導の核となる(指導的役割が担える)教員を同じ学年に所属させ,初任
者が授業を参観したり,何でも気軽に相談したりできる体制を整えている。
○ 拠点校指導教員は,研修計画に従って資料を作成し,本人の状況に応じた,適切な指導を
行っている。校内指導教員は,年間指導計画に沿った研修内容が確実に実施できるように,
チェックしながら研修を進め,日々の授業や学級経営の中で発生する疑問や問題点を,一緒
に考え,解決するよう努めている。また,管理職との情報交換も積極的に行い,アドバイス
を受けながら指導・助言している。
○ 指導教員が,校長,教頭及び指導教員以外の教員による初任者に対する指導を,年間指導
計画に従いそれぞれに要請し,協力を得て,円滑な運営を推進している。
○ 研究授業の学習指導案作成から,学年部や教科部が関わり,チームで検討する体制ができ
てきた。職員研修の時間を活用し,模擬授業を実施したり,全員で授業研究をしたりして,
研修を深めている。
○ 「授業参観カード」を作成し,初任研はもとより全ての教諭の授業に際しても,このカー
ドを用いて,あらかじめ授業参観の視点を示し,それぞれの授業力向上につなげている。
○ 初任研を含め,校内で研究授業を実施する場合は,教育委員会と連絡を取り,可能な限り
指導主事を派遣してもらい,指導・助言を受けている。
[保護者・地域との連携]
○ 最初の学級PTAやPTA総会において,管理職が,初任研について分かりやすく保護者
に説明し,理解と協力を得ている。
○ 初任1・2年目にPTA係を担当させ,保護者や地域の方々と接する機会を多く与えるこ
とにより,コミュニケーション能力や対応力を高める手立てをとっている。
○ 歴代の初任者は,出勤後,学校正門周辺・道路の清掃活動を自主的に行っている。毎朝多
くの葉を落とす正門横の5本のアカギの木が,初任者を育ててくれている。汗を流す初任者
に通りがかりの地域の方々が,「お疲れ様」と声を掛けてくれることが,初任者にとっては
何よりの栄養剤となっている。初任者は,地域行事にも積極的に参加している。
[2・3年目研修]
○ 初任校研修係(教務主任)は,2年目以降も積極的に関わっている。2年目の研修計画に
ついても全職員に周知を図り,参加を促している。
○ 2年目研修・3年目研修においても,研究授業研修(2年目は課題研修を含む)が位置付
けられており,「教科等指導」について,校長を中心とした全校体制で指導・助言がなされ
ている。また,短期研修や土曜講座への参加も促している。
△ 1年目研修の内容を2・3年目研修に移行できないだろうか。
[初任者が配置されたことによる効果]
○ 初任者が配置されたことにより,他の先輩教師へも良い影響を与え,全校体制の研究授業,
授業研究が実施できるようになった。また,先輩教師による示範授業も増え,初任者が学ぶ
機会も充実してきた。
○ 毎年2名ずつ初任者が配置されており,先輩が後輩を育てるシステムを中心に,全校で初
任者を育てる体制ができている。初任者を核とした「若者の輪」は,学校を活性化するとと
もに,ベテランにとっても良い刺激になっている。
5
効果的な校内指導体制(例)
(1)
校長及び教頭
・
リーダーシップの発揮
・
年間指導計画の研修項目に
応じた指導及び助言
(2)
初任者研修推進委員会(仮称)
・
学校全体としての協同的な
体制の確立
・
(3)
校務分掌組織への位置付け
指導教員等
・
年間指導計画による円滑な
運営
・
初 任者 に 対す る 指導 及び
助言
・
非常勤講師(後補充)と初任
者の連携
(4)
研修内容別関係教職員
・
(5)
6
指導教員と協力し,初任者への指導及び助言
学年部及び教科等部
・
指導的役割を担える教員が同じ学年部に所属し,身近な相談役として支援
・
指導法改善,学習指導案等の検討,助言
「学び続ける教師」となるために(例)
(1)
教育委員会
・
校内研修の充実,日常の課
題解決のための協力
(2)
自主研究グループ(教職員が
立ち上げた研究グループ)
・
模擬授業,学習指導案検討,
授業研究,研修会報告等
(3)
研究公開
・
文部科学省や教育委員会,
附属学校,各学校が行う研究
公開への参加
(4)
教育センター
・
当教育センターにおける短
期研修・土曜講座等の受講
経験年次別研修
フレッシュ
教職員研修に関する調査報告
研修
(初任校研修)
新規採用
教職研修課
養護教諭
栄養教諭研修
ステップ
アップ
職務別研修
パワー
アップ
研修
研修
(5年経験者研修)(10年経験者研修)
幼稚園
10年経験者
幼稚園
新規採用
研修
教員研修
新任校長
新任教頭
研修会
研修会
経験者教頭
研修会
園長等
運営管理
協議会
充実・改善
1
2
フレッシュ研修の研修体系
校
外
研
修
校
内
研
修
20
日
人権教育
教職員等研修
1
日
アンケート
校内指導体制
巡回訪問
170
時間
5
日
5
時間
5
1年目 2年目 時間
3年目
3
4
H24・25管理職研修
経験者教頭
新任教頭
新任校長
とても思う
そう思う
やや思う
まったく
思わない
無回答
新任校長135人 新任教頭136人 経験者教頭183人 合計454人
5
6
H24・25経験年次別研修
パワーアップ研修
ステップアップ研修
とても思う
そう思う
やや思う
まったく
思わない
無回答
パワーアップ研修572人 ステップアップ研修233人 合計805人
7
8
71
巡回訪問
校
9
10
フレッシュ研修の実施状況等
巡回訪問での調査事項
1 対象者の状況
2 全校体制
3 校外における研修の後補充
1 初任者の状況
4 指導教員等の指導状況
2 全校体制
5 研修時間
3 指導教員等による指導
6 指導用資料
4 研修内容及び指導のバランス
7 指導記録簿・研修日誌
8 校内研修に対する意見・要望
5 指導用資料
9 校外研修に対する意見・要望
6 指導記録簿・研修日誌
10 初任校研修のシステムや報告
様式等についての意見・要望
11
12
全職員への周知
全職員への周知
校内自主研究グループ
実践例
研修日程
模擬授業
研修内容
研修の
役割分担
教育論文・研究紀要
指導資料集
13
14
校内自主研究グループ
レジュメ
ワークシート
15
学習
指導案
模擬授業
板書計画
16
教育論文の提出状況(H22採用者調べ)
100%
90%
教育論文・研究紀要
教育論文・研究紀要
17
18
指導資料集
研究紀要
効果的な
19
20
全職員へ
学び続ける教師
校内指導体制(例)
の周知
校内
自主研究
グループ
教頭
校長
模擬授業
初任校研修推進委員会
指導教員等 教育委員会
研修内容別関係教職員
学年部
研究公開
チームワーク
教科等部
コミュニケーション
自主研究グループ
指導
資料集
教育論文
研究紀要
21
教育センター
学 校
初任者
保護者
地 域
22