平成24年度事業報告書 自 平成24年4月 至 平成25年3月31日 一般財団法人 1日 知的財産研究所 1 事業報告書 平 成 24 年 4 月 1 日 ~ 平 成 25 年 3 月 31 日 Ⅰ.はじめに 平 成 24 年 度 は 、 知 的 財 産 研 究 所 に と っ て 、 調 査 研 究 を 軸 と し つ つ も 内外のニーズに応えるべく新たに受託したプロジェクトを実施するため に実施体制の整備・強化を進めるなど、事業基盤を拡充する 1 年であり ました。 依然として厳しい事業環境の中、当研究所は、知的財産戦略本部や経 済 産 業 省・特 許 庁 が 推 進 し て い る 知 財 イ ノ ベ ー シ ョ ン 総 合 戦 略 を 踏 ま え 、 グローバルな知財システムの構築、知財マネジメントの強化及び人材の 育成といった知的財産を活用した我が国産業の国際競争力強化という政 策に呼応する事業を精力的に進め、公益に資する研究所としての使命を 積極的に果たしてまいりました。 政府からの受託事業では、特許庁が公募した一般競争入札に積極的に 応札しました。このうち、制度問題調査研究事業では、産業構造審議会 特許制度小委員会における審議と並行した安定的な権利付与に向けた制 度に関するテーマのほか、特許出願実務、条約手続き、さらには弁理士 制度に至るまで、知財システム構築に関連する幅広い課題の調査研究を 請負うとともに、グローバルな制度調和や人材育成を目指す産業財産権 研究推進事業(海外研究者招へい、若手研究者育成、研究者派遣)を継 続して受託しました。 また、新規に企業の知財マネジメント戦略を研究する事業である知的 財産国際権利化戦略推進事業も受託し、実施してまいりました。 民間から資金提供を受けた調査研究も継続して請負い、我が国産業界 が国際標準化を推進していくための知財面における課題について調査研 究を実施し、公開シンポジウムも開催して、広く議論をするとともに一 定の方向性をまとめたところです。 2 さらに自主事業としましては、学術季刊誌「知財研フォーラム」の表 紙を一新し、内容の充実も図りました。また、内外の有識者による各種 セ ミ ナ ー の 開 催 の ほ か 、 IIP パ テ ン ト デ ー タ ベ ー ス 等 の 各 種 デ ー タ ベ ー スの提供、海外研究機関との交流、知財研図書館の運営等を引き続いて 行い、時宜にかなった情報を提供してまいりました。 特に、研究論集「岐路に立つ特許制度」については、イギリスの出版 社から英語版が出版されるに至り、海外に向けての問題提起と議論を呼 びかけたところです。 人 材 育 成 に 関 し て も 、 IIP 知 財 塾 の 継 続 実 施 に 加 え て 、 新 た に 学 生 支 援事業の開始と知財人材育成推進協議会への参画を実施し、幅広い層の 育成強化を推し進めました。 また、研究所の体制の面では、統括研究員等を職員に採用するととも に 、出 向 研 究 員 の 受 け 入 れ も 増 や し 、研 究 業 務 体 制 の 強 化 を 図 り ま し た 。 こ の よ う に 、 平 成 24 年 度 に お け る 知 的 財 産 研 究 所 は 、 我 が 国 政 府 及 び産業界のグローバル規模での知的財産を取り巻く環境変化やニーズに 対応すべく、新たな課題への挑戦や事業展開を図り、知的財産立国の一 層の推進に貢献してまいりました。 Ⅱ.決算の概況 当 研 究 所 の 平 成 24 年 度 決 算 は 、団 体 を 取 り 巻 く 環 境 の 厳 し い 中 、運 用 収 入 を 前 年 度 の 約 2.5 倍 と 大 幅 に 増 加 さ せ 、 事 業 規 模 も 約 1 億 円 拡 大 さ せる等の経営努力により、当期の損益の状況を表す当期経常増減額は 1,586 万 円 の プ ラ ス と な り 、平 成 17 年 度 以 来 の 黒 字 化 を 達 成 す る こ と が できました。 な お 、平 成 24 年 度 決 算 で は 、会 計 士 の ア ド バ イ ス に 従 い 、一 般 企 業 と 同様の時価評価を取り入れたため、基本財産の資金を運用している債券 の時価評価額の変動に伴う損益が計上されることになりましたが、当研 究所は、原則、債券を満期まで保有することとしていますので、期の途 3 中での債券の時価評価額の変動は、基本的には、実害が生じるものでは ありません。 当研究所といたしましては、今後とも、事業収入の増加、費用の節減 に努め、健全な経営を目指していく所存です。 Ⅲ.各種事業の実施状況 平 成 24 年 度 は 、当 研 究 所 は 知 的 財 産 制 度 及 び そ の 活 用 の 一 層 の 発 展 に 貢献するために、多岐の分野にわたって制度問題に関する調査研究を行 うとともに、国際的な研究協力の推進を目指した産業財産権研究推進事 業、知的財産に関する情報の収集・提供並びにセミナー等の諸事業、さ らには新たに企業の国際競争力強化に資するグローバル知財戦略の調査 研究も実施しました。これらの事業の概要は、以下のとおりです。 1.知的財産調査研究事業 平 成 24 年 度 は 、 特 許 庁 か ら ① ~ ⑧ の 8 テ ー マ の 制 度 問 題 の 調 査 研 究 及び統計の分析調査を請負うとともに、今年度より海外を含めた知的財 産戦略を幅広く調査・分析し、その結果を発信する委託事業⑨も新規に 実施しました。 さらに、民間資金による自主的な調査研究として、⑩の調査研究も昨 年に引き続き実施しました。 (特許庁からの請負事業) ① 「今後の弁理士制度の在り方に関する調査研究」 ② 「 PCT 国 際 出 願 制 度 に お け る 手 続 の 課 題 に 関 す る 調 査 研 究 」 ③ 「マドリッド協定議定書の利用における手続の課題に関する調査研 究」 ④ 「安定的な権利付与に向けた制度に関する調査研究」 ⑤ 「適切なタイミングでの権利取得のための特許制度の在り方に関す る調査研究」 ⑥ 「 平 成 24 年 度 我 が 国 に お け る 産 業 財 産 権 の 出 願 行 動 等 に 起 因 す る 経 済成長に関する分析調査」 4 ⑦ 「特許性判断におけるクレーム解釈に関する調査研究」 ⑧ 「我が国の知財人材育成制度の現状に関する調査研究」 (特許庁からの新受託事業) ⑨ 「知的財産国際権利化戦略推進事業」 (ⅰ)グローバル知財戦略会議事業 (ⅱ)グローバルな知財戦略に関する調査研究事業 ・テーマ1「知財資源の調達戦略」 ・テーマ2「知的財産の権利化デザイン戦略」 ・テーマ3「知的財産の権利化実行戦略」 ・テーマ4「知財創造人財の確保・管理戦略」 ・テーマ5「国際標準化戦略と融合した知財戦略」 (民間からの請負事業) ⑩ 「標準規格必須特許の権利行使に関わる調査研究(Ⅱ)」 これらの研究の成果については、さっそく産業構造審議会特許小委員 会での検討資料として用いられたほか、今年度の知的財産戦略本部専門 調査会における論点整理や知的財産政策ビジョンの検討の中で活用され、 また委員からも参考にすべき旨の指摘がなされています。 2.海外との交流事業 当研究所は、我が国と諸外国の知的財産権制度の比較研究を行い、国 際的に調和した制度の在り方を明らかにするとともに、各国の制度に精 通した専門人材を育成することを目的に、知的財産権分野の研究者の招 へいと海外の主要な研究機関との交流を図る事業を行ってきており、平 成 24 年 度 も 引 き 続 き 実 施 し ま し た 。 (1)研究者招へい事業(特許庁受託事業) 平成 9 年度から始まるこの研究者招へい事業で来日された学者は、計 72 名 に も 達 し ま し た 。欧 米 や 中 国 を は じ め と す る 世 界 各 国 か ら 大 学 教 授 や国立研究所研究員のほか、裁判官、検事、行政官や弁護士といった実 務家まで、諸外国における知財分野の第一線で活躍されている専門家が 当 研 究 所 で 研 究 交 流 を し て き て お り ま す 。当 研 究 所 の ホ ー ム ペ ー ジ で は 、 これら招へい研究員の方々の専門分野や業績について、順次、紹介して 5 おります。 平 成 24 年 度 に つ い て は 、 以 下 の 5 名 の 研 究 者 を 招 へ い ( ① は 中 期 、 ②~⑤は短期)し、当研究所にて研究活動に従事させるとともに、研究 員との交流を図りました。 ① ヤ ン・ガ ン ミ ン 氏( 中 国 重 慶 第 五 中 級 人 民 法 院・知 識 産 権 審 判 廷 廷 長) 「中国と日本における知的財産をめぐる紛争解決のための裁判制 度とその仕組みに関する比較研究-中国における知的財産専門裁 判所の創設」 ② ニ ュ エ ン・テ ィ・フ ォ ン 氏( ベ ト ナ ム 科 学 技 術 省・特 許 技 術 活 用 機 構長補佐) 「日本における特許活用及び産業界への技術移転の促進の経験と、 日本とベトナムの大学及び産業界における特許活用のための適切 な仕組みの整備」 ③ ヤ ン・ア ン リ・バ ジ ア 氏( ス ト ラ ス ブ ー ル・ロ ベ ー ル・シ ュ ー マ ン 大学法学部講師) 「商標はなぜ保護されるのか?欧州と日本における商標の機能の 問題についての比較研究」 ④ 畑中 麻 子 氏( ス ト ラ ス ブ ー ル・ロ ベ ー ル・シ ュ ー マ ン 大 学 知 的 財 産国際研究センター博士課程) 「 商 標 権 侵 害 に 係 る イ ン タ ー ネ ッ ト・サ ー ビ ス・プ ロ バ イ ダ の 責 任 に関する欧州と日本の比較研究」 ⑤ ス テ ラ・パ ド バ ー ニ 氏( ヤ コ バ ッ チ & パ ー ト ナ ー ズ・ミ ラ ノ 事 務 所 弁護士) 「デザイン-模倣品に対して過小評価されている対抗手段」 なお、③のヤン・アンリ・バジア氏は、帰国後、当研究所での研究成 果も踏まえた商標の機能に関する論文で、ストラスブール大学私法分野 に お け る 2011-2012 年 の 最 優 秀 博 士 論 文 を 受 賞 さ れ ま し た 。 (2)海外研究機関等との交流 当 研 究 所 は 、14 の 海 外 研 究 機 関 と 研 究 交 流 協 定 を 締 結 し て お り 、こ れ ら の 協 定 に よ り 、平 成 24 年 度 も 研 究 情 報 の 交 換 や 実 績 の 共 有 な ど を 介 し 、 6 当研究所の研究活動を発展させました。 ま た 、平 成 24 年 度 は 、6 月 4~ 15 日 の 間 、米 国・イ リ ノ イ 大 学 知 的 財 産・技術法プログラム長のジェイ・P・ケサン教授ら 2 名が当研究所に 滞在し、日米の無効審判制度の現状や課題等について研究を行い、関係 機 関 と の 意 見 交 換 や セ ミ ナ ー を 行 い ま し た 。ケ サ ン 教 授 は 、平 成 15 年 度 の 当 研 究 所 の 招 へ い 研 究 員 で も あ り ま す が 、 昨 年 8 月 か ら は USPTO に お いて長官直属の客員研究員として、改正特許法関係の研究に従事されて います。 3.人材育成事業 (1)研究者育成事業(特許庁受託事業) 平 成 24 年 度 は 、以 下 の 5 名 の 特 別 研 究 員 を 当 研 究 所 に て 採 用 し 、研 究 活動に従事させました。 ① 井 手 李 咲 氏( 前・知 的 財 産 研 究 所 特 別 研 究 員 、青 山 学 院 大 学 大 学 院法学研究科博士後期課程) 「地域ブランド育成における商標法の在り方に関する考察」 ② 稲見 裕介氏(前・総合研究開発機構研究調査部主任研究員) 「特許制度を補完する望ましい特許買取り制度の研究」 ③ 佐 藤 育 己 氏( 神 戸 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 博 士 課 程 後 期 課 程 単 位 取 得退学) 「知的財産担保の準拠法に関する調査・研究」 ④ 露 木 美 幸 氏( 前・知 的 財 産 研 究 所 特 別 研 究 員 、金 沢 工 業 大 学 大 学 院工学研究科修士課程) 「多様化する間接侵害に対応する解決法理の構築に向けた一考察」 ⑤ 靏 岡 聡 史 氏( 前・知 的 財 産 研 究 所 特 別 研 究 員 、慶 應 義 塾 大 学 大 学 院法学研究科博士課程単位取得退学) 「国際社会における近代日本の産業財産権政策-パリ条約加盟と 日清・日露戦争-」 (2)専門家派遣事業(特許庁受託事業) 平 成 24 年 度 は 、以 下 の 2 名 を 海 外 の 研 究 機 関 に 派 遣 し 、研 究 さ せ ま した。 7 ① 前田 健氏(神戸大学大学院法学研究科准教授) 「進歩性要件による特許の「質」のコントロールの研究」 派遣先研究機関:米国・スタンフォード大学ロースクール ② 山 内 勇 氏( 前・文 部 科 学 省 科 学 技 術 政 策 研 究 所 第 2 研 究 グ ル ー プ 研究員) 「産業の発展に寄与する効率的な特許審査プロセスの在り方に関 する研究」 派遣先研究機関:豪州・メルボルン大学豪州知的財産研究所 ( 3 ) IIP 知 財 塾 知的財産制度の現場を踏まえた制度・運用等の在り方について大所高 所 の 立 場 か ら 提 言 で き る 人 材 を 育 成 す る こ と を 目 的 と し て 、平 成 17 年 よ り 「 IIP 知 財 塾 」 を 開 講 し て い ま す 。 平 成 24 年 度 は 第 6 期 知 財 塾 を 開 講 し 、 企 業 ・ 弁 護 士 ・ 弁 理 士 の 各 界 か ら 計 15 名 が 塾 生 と し て 、 ま た 特 許 庁 及 び 最 高 裁 判 所 の 協 力 を 得 て 、 4 名の審査官及び 3 名の判事がオブザーバーとして参加し、以下の 4 テー マについて講師の指導のもと、研修を行いました。 ① 特許侵害訴訟における営業秘密の開示と保護 ② 新興国進出時の知財リスク及び対応策の研究 ③ 知財リスクの予見性向上を軸とした特許制度改善の提案 ④ 製造サプライチェーンにおける供給者の技術基盤の保全について -技術のコモディティ化の中で生き残るために- な お 、 平 成 25 年 5 月 21 日 ( 火 ) に は 、 第 6 期 塾 生 の 成 果 報 告 会 を 開 催しました。 (4)学生支援事業 平 成 24 年 度 よ り 、 新 た に 知 的 財 産 を 学 ん で い る 学 生 及 び 大 学 院 生 に 対 す る 支 援 事 業 を 開 始 し ま し た 。平 成 24 年 度 は 7 名 の 登 録 が あ り 、こ れ らの学生及び大学院生に対して季刊誌を無償配布し、特別価格にてセミ ナー参加の機会を提供する等、知的財産に関する学習の支援を実施しま した。 8 (5)知財人材育成推進協議会への参画 平 成 24 年 度 よ り 、 「 知 的 財 産 進 計 画 2012」を 受 け て 拡 充 し た「 知 的 財 産人材育成推進協議会」に新たな会員として参画し、オープンセミナー の開催や次期知的財産推進計画に向けた提言等、協議会の活動に参加し ました。 4.調査研究に関連する諸事業の実施 (1)情報検索システムの提供 知的財産に関する下記のデータベースを当研究所ホームページ上で 公開し、情報の提供を行いました。 ① 蔵書・論文データベース 研究資料として、知的財産に関する書籍及び論文の蓄積に努めてい ま す 。 平 成 14 年 度 か ら 外 部 に 公 開 し て き た こ の デ ー タ ベ ー ス に 、 平 成 24 年 度 も 引 き 続 き 研 究 資 料 の 蓄 積 ・ 整 理 を 行 い 、 平 成 25 年 3 月 末 現 在 の デ ー タ 件 数 は 図 書 、 雑 誌 論 文 等 60,259 件 と な っ て い ま す 。 ② 知的財産研究所パテントデータベース 特許制度の経済学的見地からの研究支援を目的として、整理標準化 データを基に作成した特許制度の計量分析用のデータベースである 知 的 財 産 研 究 所 パ テ ン ト デ ー タ ベ ー ス を 平 成 17 年 11 月 よ り ホ ー ム ペ ージで公開しています。 平 成 24 年 度 は 、 平 成 23 年 度 作 成 分 の 整 理 標 準 化 デ ー タ ま で を 取 り こんだデータベースへの更新のための準備作業を行いました。 (2)知的財産に関する情報の収集・提供 国内外の知的財産に関する最新情報・論説をまとめ、冊子及び電子媒 体にて提供しました。 ① 海外情報の収集及び提供 海外の知的財産に関する文献等の収集を行うとともに、当研究所 のワシントン事務所を通じて入手した米国の情報を整理し、随時、 賛助会員に電子メールで配信しました。 ② 「知財研フォーラム」 季刊誌「知財研フォーラム」を発行し、最近の知的財産を巡る国 9 内外の動向についての情報を提供するとともに、当研究所の研究報 告会などに関する活動状況を紹介しています。 平 成 24 年 度 は 、 表 紙 の デ ザ イ ン を 一 新 し た 「 知 財 研 フ ォ ー ラ ム 」 を各季に計 4 巻発行し、次のような特集記事を掲載しました。 2012 年 春 号 ( 89 号 ) 「 知 財 マ ネ ジ メ ン ト 人 材 育 成 」 2012 年 夏 号 ( 90 号 ) 「 標 準 必 須 特 許 の 在 り 方 を 問 う 」 2012 年 秋 号( 91 号 )「 デ ザ イ ン・ブ ラ ン ド を 中 心 と し た グ ロ ー バ ルな知財保護戦略」 2013 年 冬 号 ( 92 号 ) 「 新 た な 新 興 国 の 知 財 リ ス ク 対 策 」 ③ 知的財産研究所紀要 平 成 23 年 度 に 実 施 し た 各 調 査 研 究 の 要 約( 日 本 語 、英 語 )を 取 り まとめた知的財産研究所紀要を作成し、ホームページに掲載すると ともに、英文紀要を印刷して海外の関係機関に配布し、研究成果の 海外への普及を図りました。 ま た 、平 成 24 年 度 に 実 施 し た 調 査 研 究 に つ き ま し て も 、掲 載 準 備 を開始しました。 ④ 知的財産研究所研究論集(叢書) 平 成 21 年 3 月 に 発 行 し た「 岐 路 に 立 つ 特 許 制 度 」を 一 部 改 訂 し た 英 訳 版 ( The Future of the Patent System) が 完 成 し 、 平 成 24 年 12 月 に 英 国 の 出 版 社 よ り 刊 行 さ れ ま し た 。 ⑤ CD-ROM 調 査 研 究 の 成 果 の 普 及 を 図 る た め 、 研 究 成 果 を ま と め た CD-ROM を 作成し、頒布しました。 5.セミナー、シンポジウム、成果報告会等の開催 調査研究及び国際共同研究等の研究成果の普及を図るとともに、国内 外の知的財産に関するトップレベルの有識者を招いた最新情報の提供を 目 的 と し て 、平 成 24 年 度 も 、以 下 の セ ミ ナ ー 、シ ン ポ ジ ウ ム 、成 果 報 告 会等を開催しました。 (1)セミナー ① 国 際 セ ミ ナ ー「 米 国 特 許 法 の 現 状 と 課 題 に つ い て ~ 昨 年 9 月 に 成 立 し た 改 正 特 許 法 : AIA( America Invents Act) を 中 心 と し て ~ 」 10 日 時 : 平 成 24 年 6 月 14 日 ( 木 ) 14: 00~ 17: 00 講師:ジェイ・P・ケサン 氏(イリノイ大学知的財産・技術法プ ログラム教授) ② 国際セミナー「米国の特許訴訟における損害賠償」 日 時 : 平 成 24 年 6 月 28 日 ( 木 ) 14:00~ 16:00 講師:ポール・T・マイケルジョン 氏(ドーシィ&ホイットニー 法律事務所 パートナー 弁護士) ③ 知 財 研 セ ミ ナ ー「 イ ン ド に お け る 知 財 権 ラ イ セ ン ス と 営 業 秘 密 保 護 の実態」 日 時 : 平 成 24 年 7 月 12 日 ( 木 ) 14:00~ 16:00 講師:豊崎 玲子 氏(豊崎国際特許商標事務所 弁理士) ④ 知 財 研 セ ミ ナ ー「 知 的 財 産 権 訴 訟 に お け る 訴 訟 進 行 の 実 際 -中間 判決の利用・時機に後れた攻撃防御方法却下の運用を含めて-」 日 時 : 平 成 24 年 10 月 12 日 ( 金 ) 14:00~ 16:00 講 師:三 村 量 一 氏( 長 島・大 野・常 松 法 律 事 務 所 パ ー ト ナ ー 弁 護士) ⑤ 知財研セミナー「ロシアの知的財産制度の概要と運用状況」 日 時 : 平 成 24 年 12 月 13 日 ( 木 ) 15:00~ 17:00 講師:黒瀬 雅志 氏(協和特許法律事務所 弁理士) ⑥ 国際セミナー「欧州単一特許制度について」 日 時 : 平 成 25 年 1 月 25 日 ( 金 ) 15:00~ 17:00 講師:ヨハン・ピッツ 氏(フォシウス&パートナー パートナー 弁護士) なお、当研究所は、日本弁理士会から継続研修に関する外部機関とし て認定されており、上記のセミナー③~⑥は、継続研修における外部機 関研修として実施しました。 (2)シンポジウム 平 成 23 年 度 に 実 施 し た 調 査 研 究 の う ち 、 平 成 24 年 度 も 継 続 し て 調 査 研究を実施することとなったテーマについて研究開始前にシンポジウム を開催し、広く専門家及び一般の方々と意見交換を行い、議論を深めま 11 した。 「標準規格必須特許の権利行使に関するシンポジウム」 日 時 : 平 成 24 年 8 月 2 日 ( 木 ) 14: 00~ 17:00 場所:日経カンファレンスルーム 講師:長岡 貞男 氏(一橋大学イノベーション研究センター教授) 他 (3)調査研究成果報告会 平 成 24 年 度 に お い て は 、 当 研 究 所 が 平 成 23 年 度 に 実 施 し た 調 査 研 究 の成果を賛助会員の方々に提供するため、以下の成果報告会を開催しま した。 「 平 成 23 年 度 調 査 研 究 に 関 す る 成 果 報 告 会 」( 賛 助 会 員 向 け ) 日 時 : 平 成 24 年 5 月 23 日 ( 水 ) 13: 15~ 18:00 場所:知的財産研究所会議室 内容: ① 特許微生物寄託機関の業務運用の在り方に関する調査研究 ② 発明の特別な技術的特徴を変更する補正及び発明の単一性の要 件に関する調査研究 ③ 国際協定への加盟に向けた意匠制度の在り方に関する調査研究 (ヘ ー グ 協 定 、 ロ カ ル ノ 協 定 ) ④ デジタル社会におけるデザイン保護に即した意匠制度の在り方 に関する調査研究 ⑤ 商標審決取消訴訟における取引の実情に関する調査研究 ⑥ 商 標 法 に お け る 認 証 ・証 明 マ ー ク の 保 護 の 在 り 方 に 関 す る 調 査 研究 ⑦ 未 登 録 の 技 術 ・ブ ラ ン ド の 保 護 の 在 り 方 に 関 す る 調 査 研 究 ⑧ 我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセン ス及び秘密管理等に関する調査研究 な お 、 平 成 24 年 度 に 実 施 し た 調 査 研 究 の 成 果 報 告 会 は 、 賛 助 会 員 に 加え、アンケート調査にご協力いただいた皆さまもお礼の意味も込めて ご 招 待 し 、 平 成 25 年 4 月 23 日 ( 火 ) に 開 催 し ま し た 。 12 (4)招へい研究者成果報告会(特許庁受託事業) 平 成 24 年 度 に お い て は 、 以 下 の 招 へ い 研 究 者 成 果 報 告 会 を 開 催 し ま した。 ① ニュエン・ティ・フォン氏 日 時 : 平 成 24 年 8 月 13 日 ( 月 ) 15:00~ 17:00 内 容 :「 日 本 に お け る 特 許 活 用 及 び 産 業 界 へ の 技 術 移 転 の 促 進 の 経 験 と 、日 本 と ベ ト ナ ム の 大 学 及 び 産 業 界 に お け る 特 許 活 用 の ための適切な仕組みの整備」 ② ヤン・アンリ・バジア氏 日 時 : 平 成 24 年 8 月 29 日 ( 水 ) 15:00~ 17:00 内 容: 「商標はなぜ保護されるのか?欧州と日本における商標の機能 の問題についての比較研究」 ③ ヤン・ガンミン氏、畑中 麻子氏 日 時 : 平 成 25 年 1 月 30 日 ( 水 ) 14:00~ 17:00 内 容: 「中国と日本における知的財産をめぐる紛争解決のための裁判 制度とその仕組みに関する比較研究―中国における知的財産 専門裁判所の創設」 「商標権侵害に係るインターネット・サービス・プロバイダの 責任に関する欧州と日本の比較研究」 ④ ステラ・パドバーニ氏 日 時 : 平 成 25 年 3 月 15 日 ( 金 ) 15:00~ 17:00 内 容 :「 デ ザ イ ン - 模 倣 品 に 対 し て 過 小 評 価 さ れ て い る 対 抗 手 段 」 (5)特別研究員の中間報告会、研究成果報告会(特許庁受託事業) 平 成 24 年 度 に お い て は 、 以 下 の 特 別 研 究 員 の 中 間 報 告 会 、 研 究 成 果 報告会を開催しました。 ① 中間報告会 日 時 : 平 成 24 年 10 月 19 日 ( 金 ) 11:00~ 17:10 ② 研究成果報告会 日 時 : 平 成 25 年 3 月 8 日 ( 金 ) 10:00~ 16:40 場所:日経カンファレンスルーム 内容: 13 ・井手 李咲氏 「地域ブランド育成における商標法の在り方に関する考察」 ・稲見 裕介氏 「特許制度を補完する望ましい特許買取り制度の研究」 ・佐藤 育己氏 「知的財産担保の準拠法に関する調査・研究」 ・露木 美幸氏 「多様化する侵害形態に対応する解決法理の構築に向けた一考察」 ・靏岡 聡史氏 「国際社会における近代日本の産業財産権政策-パリ条約加盟と 日清・日露戦争-」 (6)専門家派遣の研究成果報告会(特許庁受託事業) 平 成 24 年 度 に お い て は 、 以 下 の 専 門 家 派 遣 の 研 究 成 果 報 告 会 を 開 催 しました。 日 時 : 平 成 24 年 6 月 8 日 ( 金 ) 16:00~ 17:00 場所:学士会館 内容: ・小嶋 崇弘氏 「米国商標法における混同概念の拡張について」 6.ピア・トゥ・パテント事業 ピ ア ・ ト ゥ ・ パ テ ン ト (P to P)は 、 公 衆 参 加 に よ る 特 許 権 の 質 の 向 上 を目的として、特定の特許出願をホームページ上に公開し、広く技術者 や研究者をはじめとする公衆から出願発明に対する情報の提供や意見を 募るものです。 こ れ ま で 本 事 業 の た め の シ ス テ ム 構 築 を 行 っ て き ま し た が 、 平 成 25 年 2 月から当研究所ホームページ上で運用試行を開始し、このシステム が特許権の質的向上に資する補助的制度として根付くかどうかの検証を しております。 14 Ⅳ.公益目的支出計画実施事業 図書館運営事業 当研究所では、知的財産に関する研究に資し、また、知的財産制度の 普及・啓蒙を図るため、知的財産に関する図書、雑誌、研究報告書を所 蔵 ( 平 成 25 年 3 月 末 現 在 の 所 蔵 件 数 は 、 図 書 8,903 冊 、 雑 誌 78 種 、 報 告 書 1,464 冊 ) し 、 広 く 利 用 の 用 に 供 し ま し た 。 Ⅴ.総務関係 1.理事会及び評議員会 平 成 24 年 度 に お い て は 、 当 研 究 所 は 理 事 会 及 び 評 議 員 会 を 次 の と お り開催しました。 (1)理事会 第 1 回 理 事 会 ( 平 成 24 年 6 月 13 日 ) 議題 ⅰ審議事項 ① 平 成 24 年 度 事 業 計 画 修 正 ( 案 ) 及 び 予 算 修 正 ( 案 ) に つ い て ② 平 成 23 年 度 事 業 報 告 ( 案 ) 及 び 決 算 ( 案 ) に つ い て ③ 平 成 23 年 度 公 益 目 的 支 出 計 画 実 施 報 告 書 ( 案 ) に つ い て ④ 定款の変更(案)について ⑤ 平 成 24 年 度 定 時 評 議 員 会 の 招 集 に つ い て ( 案 ) ⑥ 平 成 24 年 度 第 2 回 理 事 会 の 決 議 の 省 略 に つ い て ( 案 ) ⅱ報告事項 平 成 24 年 度 業 務 執 行 状 況 に つ い て 第 2 回 理 事 会 ( 平 成 24 年 7 月 17 日 ) 定 款 第 40 条 の 規 定 に 基 づ く 決 議 の 省 略 の 方 法 に よ る 議題 業務執行理事(常務理事)の選定の件 15 第 3 回 理 事 会 ( 平 成 25 年 3 月 5 日 ) 議題 ⅰ審議事項 ① 平 成 25 年 度 事 業 計 画 ( 案 ) ② 平 成 25 年 度 予 算 ( 案 ) に つ い て ③ 規程の制定について ・基本財産管理規程(案) ⅱ報告事項 平 成 24 年 度 業 務 執 行 状 況 に つ い て ( 2 ) 理 事 候 補 選 考 委 員 会 ( 平 成 24 年 6 月 27 日 ) 議題 新任理事候補者について ( 3 ) 評 議 員 会 ( 平 成 24 年 6 月 27 日 ) 議題 ⅰ審議事項 ① 定款の変更の件 ② 平 成 23 年 度 財 務 諸 表 の 承 認 の 件 ③ 評議員の選任の件 ④ 理事の選任の件 ⅱ報告事項 ① 平 成 23 年 度 事 業 報 告 書 ② 平 成 23 年 度 公 益 目 的 支 出 計 画 実 施 報 告 書 2 . 平 成 23 年 度 公 益 目 的 支 出 計 画 実 施 報 告 書 平 成 24 年 6 月 28 日 、内 閣 府 に 平 成 23 年 度 公 益 目 的 支 出 計 画 実 施 報 告 書を提出し、受理されました。 3.賛助会員 当研究所の目的・事業活動の主旨に賛同して当研究所の事業を支援し て い た だ い て い る 賛 助 会 員 は 、平 成 24 年 度 、企 業 の 退 会 が 2 社 、大 学 の 16 退 会 が 1 校 等 あ り 、年 度 末 時 点 で 、164( 前 年 度 172)社( 人 )、183( 前 年 度 192) 口 と な り ま し た 。 4.定款の変更 当研究所定款の第 9 条(事業報告及び決算)の規定を、評議員会の承 認を得て変更しました。 5.事務局の体制 当 研 究 所 は 、平 成 24 年 度 、新 規 事 業 に 対 応 す る た め 、統 括 研 究 員 等 3 名を採用し、また、企業等から派遣していただく研究員も3名の増員を 行い、研究業務体制の強化を図りました。 6.職員の処遇 当 研 究 所 は 、 平 成 24 年 度 、 職 員 の 定 年 後 の 再 雇 用 年 齢 の 一 律 65 歳 化 等職員の処遇の改善を図りました。 以上 17
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