現金・当座預金 - javascriptなどを使った簡単なアプリを作っています。

4-1 現金の範囲
それでは現金・当座預金について学習していきます。まず、皆さんが普段使う紙幣や硬貨はもちろん現金として扱う
事は言うまでもありませんが、簿記では「いつでも現金化できる証書などの紙」も現金として扱います。
「いつでも現金
化できる証書などの紙」のことを「通貨代用証券」
(つうかだいようしょうけん)と言います。
通貨代用証券には次のようなものがあります。
当座預金からお金を引き出した時の紙。銀行に提示することで現金化できます。
このあと学習します。
郵便局で取り組んだ為替証書のことです。受取人は、これを郵便局に持ってい
くと、証書と引き替えにいつでも現金化することができます。
購入した株式の配当金として受け取る領収書。銀行や郵便局に提示する事で現
金化できます。第6章で学習します。
公社債とは、国や地方公共団体、事業会社などが一般投資家から資金を調達す
るために発行する有価証券です。券面から切り取って利息の支払いを受けるこ
とができ、すぐに現金化できます。これも第6章で学習します。
・ 他人振り出し小切手
・ 郵便為替証書
・ 株式配当金領収書
・ 期限の到来した公社債の利札
これらを全て現金とみなします。
紙幣・硬貨
・通常扱う現金の事
通貨代用証券
・ 他人振り出し小切手
・ 郵便為替証書
・ 株式配当金領収書
・ 期限の到来した公社債の利札
〔例〕
得意先A店への売掛金 50,000 円を郵便為替証書で受け取った。
(借方)現 金 50,000
(貸方)売掛金 50,000
郵便為替証書は上記の通り、いつでも現金化できるので、現金を貰った事として扱います。
「郵便為替証書」という勘
定は使いませんので、注意しましょう。他の「小切手」や「利札」などについても同様です。
4-2 当座預金・小切手
簿記3級で「預金」と言えば、当座預金(とうざよきん)の事を指す事が多いです。当座預金は企業が様々な支払い
をするときなどに用いられる口座です。通常の普通預金や定期預金とは違い、利子が付きません。あくまで決済用とい
う事なんですね。
◆小切手とは
小切手とは、当座預金からお金を引き出す時に用いられる用紙の事です。必要事項を記入し、小切手を作成します。
作成した小切手を支払いする企業に渡し、その企業が受け取った小切手を銀行に提示する事によって代金の決済が完了
します。小切手を作成して相手企業に渡すことを「小切手を振り出す」と言います。小切手を使うメリットとしては、
現金を持ち歩くリスクがない事などが挙げられます。
小切手を使った支払いの流れ
1.商品の仕入れ
仕入先A店
当店
3.小切手による支払い
4.銀行への提示
2.小切手の作成
6.支払い
A店取引銀行
当店取引銀行
5.引き落としなどの手続き
1. 商品を仕入れたので、代金を支払わなければなりません。
2. 支払う額に応じた小切手を作成します。
(この時点では作成しただけで、実際にお金を受け取ったり、銀行から引き出したりすることはありせん)
3. 小切手を相手企業に渡します。
(小切手を振り出すと言います)
4. 相手企業が受け取った小切手を銀行に提示します。
5. お互いの取引銀行が、当座預金から引き落としや相手企業への支払いなどの手続きを行ってくれます。
注 意
このように、実際の引き落としは相手企業が銀行に支払い提示を行った時ですが、相手企業がいつ銀行に行くの
かは振り出した人には分かりません。よって振り出した時点で「引き落としがあったもの」とみなして仕訳を行い
ます。
小切手を使った取引の仕訳で注意点ですが、振り出した人にとっては当座預金の減少となりますが、受け取った側の
人にとっては現金の増加になります。最初に説明したように他人振り出しの小切手は現金として扱いましたね。
例で確認しましょう。
支払った側の仕訳はこのようになります。
仕入先A店への買掛金 50,000 円を小切手で支払った。
(借方)買掛金 50,000
(貸方)当座預金 50,000
では受け取った側の仕訳をみてみましょう。
得意先A店への売掛金 50,000 円を小切手で受け取った。
(借方)現 金 50,000
(貸方)売掛金 50,000
となります。支払う側なのか、受け取る側なのかで小切手の処理が変わってきますので、間違えないように注意しまし
ょう。分からなくなったらそれぞれの立場になって考えてみましょう。
また、受け取った小切手を銀行で換金した後、直ちに当座預金に預け入れる場合もあります。
得意先A店への売掛金 50,000 円を小切手で受け取り、直ちに当座預金に預け入れた。
(借方)現
金 50,000
当座預金 50,000
(貸方)売 掛 金50,000
現
金 50,000
この場合、受け取った小切手を直ちに当座預金に預け入れているので、以下のようにまとめて行ったものと考えること
もできます。
(借方)現
金 50,000
当座預金 50,000
(貸方)売 掛 金50,000
現
金 50,000
(借方)当座預金 50,000
(貸方)売 掛 金50,000
つまり、受け取った現金はすぐに預け入れているので、現金の勘定の借方と貸方を相殺して、最初からなかったものと
して考えることもできます。
補 足
小切手に関する問題は今後の学習の中で頻繁に登場しますし、試験の問題文の中でも何度も聞かれますので、ここ
でしっかり覚えてください。受け取った側と支払った側の勘定科目を間違えないようにしましょう。
◆自己振出し小切手とは
小切手は受け取ったからといって必ずしも銀行に提示して支払いを受けなければならないとは限りません。小切手を
受け取った会社は、受け取った小切手を会社の支払いに当てる事もあります。それを受け取った会社もまた同様に支払
いに当てる事ができます。それが回り回ってきて、当店振出しの小切手を当店が受け取るといったケースも考えられま
す。これを自己振出し小切手と言います。小切手は世の中をグルグル巡回しているんですね。
〔例〕
得意先A店への売掛金 30,000 円の代金を、当店が以前に振り出していた小切手で受け取った。
この場合、当店が以前小切手を振出した時に当座預金を減少させる仕訳を行っていたハズですが、結局どの企業も銀
行に支払呈示をしなかったので、実際には当座預金の残高が減少しなかった事になります。よって、減少させた当座預
金の金額を元に戻す仕訳になります。
(借方)当座預金 30,000
(貸方)売 掛 金30,000
このようになります。ただ、実務でこのような取引はあまり発生しないので、自己振出し小切手を仕訳することは少な
いと思いますが、知識として知っておいてください。
4-3 当座借越
当座預金を開設して、実際に使用したとします。そして小切手を受け取った会社が銀行に支払い提示を行った時に、
支払う側の当座預金残高が不足していた場合はどうなるのでしょうか。もちろん、受取人にはお金が払われませんし、
支払う側も大きな信用損失になります。これが6ヶ月の間で2回あると、銀行取引停止処分などの重い罰が課せられま
す。こういった事を避けるためにも、当座預金が不足していても一定の範囲で銀行が立て替えて払ってくれるように、
あらかじめ契約をしておきます。これを当座借越契約(とうざかりこしけいやく)と言い、立て替えてもらった部分を
当座借越と言います。当座借越は一種の借金に当たります。
1.商品の仕入れ
仕入先A店
当店
3.小切手による支払い
4.銀行への提示
2.小切手の作成
7.支払い
5.引き落とし
A店取引銀行
当店取引銀行
6.残高不足のため、足りない分を銀行が立て替え
当座借越の処理の仕方には2つの勘定を使って処理する方法と、1つの勘定だけで処理する方法があります。
◆2つの勘定を使う方法
この場合、当座預金勘定(資産)と当座借越勘定(負債)を使います。この方法は原則的な処理の仕方です。
〔例1〕
商品 300,000 円を仕入れ、代金は小切手で支払った。尚、当座預金の預入額は 200,000 だが、当店は当座借越契約を結
んでいる。
(借方)仕
入 300,000
(貸方)当座預金 200,000
当座借越 100,000
このようになります。商品を 300,000 円仕入れたので、まず借方に 300,000 と記入します。支払いの小切手は 300,000
円で作成していますが、当座預金には 200,000 円しかありません。この場合、預け入れしている 200,000 円を全額減少
させ、残りの 100,000 円は銀行に立て替えてもらいますので、
「当座借越」の勘定を使い、立て替えてもらった 100,000
円を記入します。
〔例2〕
上記の取引の後日、当座預金に現金 150,000 円を入金した。
(借方)当座借越 100,000
当座預金 50,000
金 150,000
(貸方)現
このようになります。現金を入金したのですから貸方に「現金」を持ってきます。当座預金は当座借越で 100,000 円
の負債、言わば借金をしていますから、この分は速やかに返済せねばなりません。この場合、返済によって負債が減る
事になるので、借方に「当座借越」を持ってきます。そして、残額分が当座預金として入金されます。
転記した際のイメージ図を表すと以下のようになります。
当座預金
①
④入金したが、100,000 ③残高不足で当座借越と
②
当初の預入金額
200,000
⑤
当座借越
まず当座預金の残高
200,000 から支払う
は当座借越の返済と
なる
なった金額 100,000
当座預金に預入に
なった金額 50,000
は〔例1〕の仕訳の転記を
は〔例2〕の仕訳の転記を表しています。
こちらの方法は試験でもよく出題されますが、1つ欠点があります。それは、預け入れ額のギリギリ辺りで支払
いや入金を繰り返すと、口座の残高が「預金」の状態なのか「借越」の状態なのか判断が難しくなり、仕訳に困り
ます。よって以下のような方法もあります。
◆1つの勘定だけで処理する方法
この方法は、
「当座預金」と「当座借越」の2つを分けずに、統一して「当座」という勘定を使います。という事は、
借方が増えても減っても「当座」の勘定しか使いませんし、貸方についても同様です。そして、現在の残高が借方残高
なのか貸方残高なのかで、預金の状態なのか借越の状態なのかを判断します。勘定を1つしか使いませんので、スムー
ズな事務処理ができます。
〔例1〕
商品 300,000 円を仕入れ、代金は小切手で支払った。尚、当座預金の預入額は 200,000 だが、当店は当座借越契約を結
んでいる。
(借方)仕
入 300,000
座 300,000
(貸方)当
このようになります。貸方は当座預金の残高に関係なく、
「当座」という1つの勘定だけを記入します。
〔例2〕
上記の取引の後日、当座預金に現金 150,000 円を入金した。
(借方)当
座 150,000
金 150,000
(貸方)現
当座預金に入金した際も、残高に関係なく借方に「当座」という勘定を記入するだけです。残高を気にしなくていいの
で、仕訳の際に残高確認などの余計な手間が省け、より簡単に仕訳を行う事ができます。
転記した際のイメージ図を表すと以下のようになります。
当
①
③
当初の預入金額
200,000
当座預金に入金した金額
150,000
座
②
小切手を作成した金額
300,000
借方残高 50,000
当座勘定を使用する場合、最終的に残高が借方なのか貸方なのかで預金の状態なのか借越の状態なのかを判断します。
この場合では借方に 50,000 の残高がありますので、預金の状態になっている事が分かります。
問 題
...
次の一連の取引を(A)2つの勘定を用いた場合と、
(B)当座勘定を用いた場合で仕訳しなさい。
① 商品 370,000 を仕入れ、代金は小切手で支払った。尚、当座預金の残高は 250,000 であるが、当店の取引銀
行と 500,000 の当座借越契約を結んでいる。
② 得意先A店に以前売り上げていた売掛金 80,000 を小切手で受け取った。
③ 得意先B店に以前売り上げていた売掛金 100,000 を小切手で受け取り、直ちに当座預金に入金した。
④ 当座預金に 80,000 を現金で入金した。
解
答
(A)2つの勘定を用いた場合
① 仕
入 370,000
当座預金 250,000
当座借越 120,000
② 現
金 80,000
売 掛 金 80,000
③ 当座借越 100,000
売 掛 金 100,000
④ 当座借越 20,000
現
金 80,000
当座預金 60,000
(B)当座勘定を用いた場合
① 仕
入 370,000
② 現
金 80,000
③ 当
座 100,000
④ 当
座 80,000
当
座
売掛金
売掛金
現
金
370,000
80,000
100,000
80,000
4-4 現金過不足
帳簿の金額と実際の現金の金額が合わなくなる事は、実務上よくあります。そうなった場合、一番の最善策は原因解
明に務めるべきですが、どうしても原因が分からない場合もあります。しかし、その間お金が合わなくなっている帳簿
をそのままにしておくのも問題があります。このような場合は「現金過不足」
(げんきんかぶそく)という勘定を用いて、
一時的に帳簿を合わせます。お金が合わない原因解明は後からでもできますから、
「とりあえずの差額調整用の勘定」と
思ってもらうといいでしょう。
◆帳簿の残高が多い例
実際の現金を集計したところ、65,000 円であったが、帳簿の現金勘定の残高は 67,000 円であった。
この例を図で見てみましょう
67,000
65,000
分かりやすくグラフで書くと、左のような図にな
ります。この場合では、実際の現金より帳簿上の
現金の方が 2,000 円多くなっていますが、この差
額を調整しないといけません。
実際の現金
帳簿上の現金
実際の現金有高を基準にします。
67,000
差額の 2,000 を現金
過不足として処理
65,000
実際の現金
...........
このように、実際の現金の有高を基準
.
に、帳簿の額を調整しなければなりませ
ん。この場合は、帳簿の金額の方が多い
わけですから、これを実際の現金と等し
くするため、帳簿の方を減らさなければ
なりません。
帳簿上の現金
この場合、帳簿上の額を調整するために、以下の仕訳を行ないます。
(借方)現金過不足 2,000
(貸方)現
金 2,000
このように仕訳します。この仕訳によって、一時的に帳簿上の現金を減らし、実際の現金と一致させます。
◆帳簿の残高が少ない例
実際の現金を集計したところ、65,000 円であったが、帳簿の現金勘定の残高は 62,000 円であった。
65,000
62,000
実際の現金
帳簿上の現金
差額の 3,000 を現金
過不足として処理
この例でも同じように、実際の現金を基
準に帳簿の額を調整します。この場合
は、帳簿の金額の方が不足していますの
で、実際の現金と等しくするため、帳簿
の方を増加させます。
この場合も実際の現金を基準にします。
この場合も前回と同様、帳簿上の額を調整するために、以下の仕訳を行ないます。
(借方)現
金 3,000
(貸方)現金過不足 3,000
このように仕訳します。この仕訳によって、一時的に帳簿上の現金を増加させ、実際の現金と一致させます。
帳簿の残高が多い例も少ない例も、金額を一致させたらとりあえず事務作業を先に進める事ができます。相手勘定の「現
金過不足」の原因は後々判明するかもしれません。
補 足
このように「現金過不足」は借方にも貸方にも登場しますので、少々ややこしく感じるかもしれません。考え方と
しては「現金過剰」と「現金不足」を1つにまとめた勘定だと思ってください。それと、現金過不足は資産や負債
などを表している訳ではありません。あくまで一時的に用いられる勘定です。このあと学習しますが、決算の時に
は必ず処理しなくてはなりませんので、それまでの間の一時的な勘定です。
現金過不足の原因が判明した場合
現金過不足の原因が判明した場合、現金過不足を正しい勘定に移し替える仕訳を行ないます。
◆記入漏れのパターン
現金の過剰分 5,000 の原因を調べたところ、売掛金 5,000 を現金回収した取引が記入漏れであった
(借方)現金過不足 5,000
(貸方)売掛金 5,000
となります。本来の仕訳は(借方)現金 5,000 (貸方)売掛金 5,000 です。売掛金 5,000 はそのまま貸方に記入し
ますが、借方の現金 5,000 の方は現金過不足として既に処理されてありますので、借方は現金ではなく、現金過不足と
なります。考えてみると、この仕訳の記入漏れが元で現金過不足が発生したわけですから、それを修正する形になるの
は当然ですね。
解
説
金 5,000
(貸方)売 掛 金 5,000
現金過不足の仕訳 (借方)現
金 5,000
記入漏れ発見の仕訳
現金過不足 5,000
(貸方)現金過不足 5,000
売 掛 金 5,000
本来あるべき仕訳 (借方)現
現金過不足の修正仕訳の解説ですが、現金過不足が判明した時の仕訳と、記入漏れ発見時の仕訳を見てみると、借方・
貸方の現金過不足は互いに相殺し、結局本来あるべき仕訳と同じ仕訳になっていますね。
それではもう1つ例をみてみましょう。
現金の不足の原因を調べたところ、交通費 10,000 が未記入であった。
(借方)交 通 費 10,000
(貸方)現金過不足 10,000
これも上の売掛金の例と同様に、交通費に関しては通常通りに借方にきますが、相手勘定は「現金」ではなく「現金
過不足」になります。この例は帳簿の金額より実際の金額の方が不足していたわけですが、この仕訳を行うことにより
帳簿の額を合わせるために使用していた現金過不足が解消し、帳簿が正常になります。
◆二重計上のパターン
ある仕訳が間違って2回計上されているパターンです。1回分が余計に計上されていますので、余計な分は反対仕訳を
行い取り消します。
既に計上されている現金過不足について調査した所、通信費 8,000 円が二重計上されていることがわかった。
(借方)現金過不足 8,000
(貸方)通 信 費 8,000
この場合は、通信費を1回分取り消さないといけないので反対仕訳を行ないます。こちらの場合も、既に現金過不足が
計上されてあるので、相手勘定は現金ではなく「現金過不足」となります。
◆金額の誤記入のパターン
帳簿を付けるのは人間ですから、間違って記入することもあるでしょう。誤記入が判明した時は、その勘定について間
違った金額と正しい金額の差額分を計算し、仕訳します。
既に計上されている現金過不足について調査した所、現金で支払った通信費 8,500 円が 5,800 円と誤記入されている事
がわかった。
(借方) 通 信 費 2,700
(貸方)現金過不足 2,700
本来ならば通信費 8,500 現金 8,500 のはずですが、間違って通信費 5,800 現金 5,800 と記入してしまっているの
で、差額の 2,700 円分の誤差が生じていますね。この差額を埋めるために、借方に「通信費 2,700」そして、この仕訳
が元で現金過不足が生じたわけですから、貸方に「現金過不足 2,700」と記入します。
それでも現金過不足の原因が不明な場合は
先程の「補足」でも説明しているように、現金過不足は一時的に用いられる勘定なので、ずっとそのままにしておく
事はできません。決算の時になっても原因がどうしても分からなかった場合は「雑損」
(ざつそん)または「雑益」
(ざ
つえき)として計上します。
決算
現金過不足
(原因不明の現金過剰、または不足)
雑益 or 雑損
(理由が不明確な収益・または損失)
雑損勘定は損失なので費用(増えたら借方)の項目になり、雑益は収益(増えたら貸方)の項目になります。
〔例1〕
現金 15,000 円の不足の原因を調べたところ、交通費 10,000 円が未記入と、現金で支払った通信費 9,700 円が 7,900 円
と誤記入されている事がわかった。残りは原因不明のまま決算を迎えた。
(借方) 交 通 費 10,000
通 信 費 1,800
雑
損 3,200
(貸方)現金過不足 15,000
〔例2〕
現金 12,000 の過剰の原因を調べたところ、通信費 8,000 円が二重計上されていることがわかった。また、交通費 3,000
円の記入漏れも判明した。残りは原因不明のまま決算を迎えた。
(借方) 現金過不足 12,000
交 通 費 3,000
(貸方)雑
益 7,000
通 信 費 8,000
〔例2〕は少し難しかったでしょうか。交通費の所で混乱されたら、交通費と通信費を分けて考えてください。交通費
3,000 現金過不足3,000 と仕訳して現金過不足3,000 雑益 3,000 に直してから通信費の仕訳と合体させると答えが出
ると思います。
補 足
現金過不足、雑損、雑益は試験の第5問でよく問われます。今は分からずとも今後の学習に差し支えはありませ
んが、分からなくなった時はここに戻ってもう一度学習しましょう。現金過不足は最初混乱しがちですが、
「実際の
現金有高に対して帳簿がどうなのか」と考えると、少し理解が早まると思います。
4-5 小口現金
通常、企業の取り扱うお金は多額になりますから、手元に常時備えているわけではなく、当座預金などに預け入れて
います。しかし、消耗品(事務用品など)や交通費などの少額の支払いの度に小切手を作成し、当座預金から引き出し
ていては事務作業は大変な労力になります。そのため、あらかじめ使いそうな額を手元に用意しておき、少額の支払い
に備えておきます。このことを小口現金(こぐちげんきん)といいます。
この小口現金は、1週間や1ヶ月といった単位で、あらかじめ使いそうな額を経理の方から各部署の担当に渡してお
き、受け取った各部署の担当者は、その部署の経費などに当てていきます。そして、
「何にいくら使ったか」わかるよう
期間の終りに「支払い報告書」を作成し、経理の人に提出します。経理の人は支払い報告書をチェックし、次の期間の
支払いに備えて、使用した額と同額を小口現金に補給します。これにより、期間の初めには小口現金は常に一定に保た
れ、迅速かつ安全に各部署の業務を行うことができます。
経 理
使った分だけ補充
支払い報告書提出
支払い報告書提出
使った分だけ補充
営 業 部
総 務 部
このように、小口現金が一定の金額になるように定期的に現金を補充する仕組みを「インプレスト・システム」また
は定額資金前渡法(ていがくしきんまえわたしほう)といいます。
では小口現金の一連の流れを仕訳してみましょう
〔1〕
当店はインプレスト・システムを採用しており、9月分の小口現金 80,000 を、小切手を振り出して営業部の担当者に
渡した
(借方) 小口現金 80,000
(貸方)当座預金 80,000
〔2〕
営業部が小口現金から通信費 20,000 と交通費 30,000 と消耗品 10,000 を支払った
仕訳なし
※ この時点では経理部に報告がされていませから仕訳は発生しませんので注意してください。
〔3〕
経理部は〔2〕の支払いについての報告を受けた。
(借方) 通 信 費 20,000
交 通 費 30,000
消 耗 品 10,000
(貸方)小口現金 60,000
〔4〕
経理部は小切手を振り出して小口現金を補給した
(借方) 小口現金 60,000
(貸方) 当座預金 60,000
以上のような仕訳の流れになります。小口現金については特別に難しい事はありませんが、仕訳についてはあくまで
経理部や会計係が行いますので、それらの人の目線から仕訳します。つまり、小口現金を渡した他の部署の人がどのよ
うに使おうと、報告を受けない限りは仕訳のしようがありませんので、問題文に引っかからないように注意してくださ
い。
問 題
...
次の一連の取引の仕訳をしなさい。
① 当社は当月より定額資金前渡法を採用する事にしたので、営業部の担当に小口現金 100,000 を、小切手を振り
出して渡した。
② 営業部の担当より、交通費 50,000、通信費 20,000、雑費 10,000 の支払い報告を受けた。尚、支払い金額の同
等の額を小切手を振り出して補給した。
解
答
①
小口現金 100,000
②
交通費
通信費
雑
費
小口現金
50,000
20,000
10,000
80,000
当座預金 100,000
小口現金 80,000
当座預金 80,000
or
②
交通費
通信費
雑
費
小口現金
50,000
20,000
10,000
80,000
小口現金 80,000
当座預金 80,000
②の仕訳については、借方・貸方の小口現金 80,000 同士を相殺して簡素化する事もできます。問題文に指示が
なければどちらで仕訳しても構いません。