証券取引所の国際的再編・統合に関する理論分析

SFC
-SWP-2006-A-002
券取 引所 の 国際的 再編 ・統合 に
関す る理論分析
2006年
秋学期
AUTUMN
塚 越 博 基 総合政策学部 3年
小林龍一良 総合政策学部 4年
岡 部 光 明 研 究プロジェクト
慶應義 塾 大 学 湘 南 藤 沢 学 会
証
「
研 究会」優秀論文推薦 の ことば
塚 越博基 君 と小林 龍一良君 による共著 論文 「
証 券取 引所 の国際 的再 編 ・統合 に関す る理
論分析」は 、近年 目立つ主要 国証券取 引所 の国際 的な業務 提携な い し合併 とい う新 しい動
きを まず概 観 してい る。次 いで、そ う した動 きを もた らす 要 因を解 明す るた め4つ の主 体
(企業、投 資家、証券 会社、証券 取 引所)を 考慮 した理 論モデル を構築 し、そ れ を操作 す
る ことによって幾 つかの要因 を理論的 に導 出して いる。
現象 を抽 象化す る 力、厳密 な論理展 開、そ して 上
一応納得 のゆく結論 の導 出な ど、学部 学
生の レベル を超越 した独創的 な論文 とな って いる。モデル 構築 の上で 改善で き る余地が 残
されては いるが、 こう した面で のモデル分析 は学界で も まだ全 く見 当た らず 、 きわ めて 斬
新 かつ独 創 的な論文 にな って いる。 このような論文 を生 み 出す ことがで きる学 生がSFC
に在 籍す ることをSFCは
大 いに誇 って よいで あろう。
慶應義塾大学 総合政策学部教授
岡部光明
証 券取 引所 の 国際 的再 編 ・統 合 に 関 する理 論 分析
総合政策学部3年
塚越博基
総合政策学部4年
小林 龍一 良
岡部光明研究会研究報告書
2006年
度 秋 学 期(2007年2月
改 定)
本 稿 作 成 に あ た っ て は 丁 寧 で 親 切 な ご指 導 を して くだ さ っ た 岡 部 光 明 教 授(慶應
大 学 総 合 政 策 学 部)に
深 く感 謝 し た い 。 ま た 研 究 報 告 会 議(2007年1月20日
義塾
、21日)
に お い て 有 益 な議 論 を 交 わ す こ と の で き た 岡 部 研 究 会 の メ ン バ ー に も感 謝 し た い 。有 益
な ア ドバ イ ス を く だ さ っ た 岡 部 研 究 会OBの
千 野 剛 司 さ ん(東
京 証 券 取 引 所)に
もこ の
場 を借 りて 改 め て 感 謝 の 意 を 表 し た い 。本 論 文 は イ ン タ ー ネ ッ ト上 に お い て も全 文 ア ク
セ ス お よ び ダ ウ ン ロ ー ド可 能 で あ る 。(http://web.
電 子 メ ー ル ア ド レス
塚 越sO4568ht@sfc.
keio.
sfc.ke io. ac. j p/-okabe/paper/)
ac. lp、 小 林sO4529rk@sfc.
keio.
ac. jp
概要
現在 世界 各国の証券取引所 が国際化戦略 を加速 させ ている。具体 的 にはニ ュー ヨー ク
証券取引所 を運営す るNYSEグ
年の年末 か ら2007年
ル ープがユ ーロネクス トと合併す る ことに加 え、2006
の年初 にかけてNASDAQが
を実施 した。東京証券取引所 もNYSEグ
意 したほか、2007年2月23日
ロ ン ドン証券取引所 に敵対 的T0B
ルー プと2007年1月31日
に戦略的提携 に合
にはロ ン ドン証券取引所 と提携 を合 意す るに至 った。
本稿 では、まず その ような現状 を整理 し、次 いで、どの ような場合 に証券取引所 が再
編 ・統合 を選択す るか、 とい うこ とを経済学 的なアプ ローチか ら理論 分析 を行 った。ま
ず グローバル化 の進展 に より世界 の証券市場 において統合が進展 してい ることを述べ 、
特 に統合 によって、証券取引 に関連す る各種 の情報 コス トが削減 で きる ことが重要であ
るこ とに言及 した。次 いで、一つの理論モ デルを構成 し、そ こでは、投 資家、企業、証
券会社、証券取 引所 とい った4つ の経済 主体 を想 定 した。ここで分析 対象 とした再編 ・
統合の形態 は、(i)投 資家が異 なる証券 取引所 に上場 してい る企 業 に対 して、証券会社
を通 じて取引が で きる ようになる、(i)企 業 は統合前 と同 じように自分が属 してい る市
場 における証券取引所 にのみ上場 してい る、(血)証券取引所同士が証券会社 を通 じて投
資家 に提供す る情報 や、その情報 を提供す る体系 や取 引所運営 システムの2つ におい て
提携 を行 う、の3つ 全 て を満 たすケースであ る。そ して、①投資 家の期待利 潤最大化 、
②企 業の費用最小化 お よび利潤 最大化 、③金 融市場(社債お よび株 式市場)の均衡条件 、
の3つ
を考慮 した上 で再編 ・統合前 の証券取 引所 の利潤 を導 き出 した。また、再編 ・統
合 が なされた後 について も同様 に証券取引所 の利潤 を導 き出 し、統合前後 で比較 する こ
とによ り、どの ような場合 に証券取引所が再編 ・統合 を選択す るイ ンセ ンテ ィブ を持 つ
か を分析 した。
以上 の結果、次の2つ が明 らか になった。①証券 取引所 の利潤最 大化 とい う観 点か ら
見 れば、お互いの証券市場 の規模(有価証券取引総額)は、統合 の是非 に影響 を及ぼ さな
い。② 以下 に述べ る3つ の条件 を満 たす場合 に証券取引所 は統合 の インセ ンテ ィブを持
つ:(a)統 合す るこ とで双方の市場 における証券取引額 の和が増 える と予想 される場合 、
(b)情 報 関係 収入(有価証 券取引 に伴 う手 数料 収入)が証券取引所 における情報 や システ
ム体系 の限界費用 よ りも多 い場合 、お よび(c)証券会社か ら得 る取引参加料金が株式発行
数 や社債発行額 の増加 関数であ る場合。 この分析の結果、1998年
のユ ーロ導入後 に欧
州 圏で急速 に証券取 引所 の統合 が進 んだ理 由が理解で きる。
キ ー ワ ー ド:証 券 取 引 所 の 再 編 ・統 合 、 証 券 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 、 情 報 関 係 収 入 、 取 引
参 加料 金
目次
1
は じめ に
1
第1章
市 場 の グロー バ ル 化
1.2金
融 市 場 の定 義
2
券 の定 義
1
1.1証
代 以 降 の 金 融 市 場 の発 達 とグ ロー バ ル 市 場 の 誕 生
4
1.31970年
6
1.4金
融 市 場 が グ ロー バ ル 化 す ることの 特 長
7
第2章
証券取 引所の歴史 と機能
7
券 取 引所 の歴 史
2.2証
券 取 引所 の役 割
2.3世
界 の主 要 証 券 取 引所
2.4統
合 に よ るメリット
2.5統
合 に よ るデ メリット
2.6証
券 取 引所 再編 の状 況
7
2.1証
9
0
1
1
1
2
1
証券取 引所の再編 ・
統合 に関する理論分析
合 前 の金 融 市 場 モデ ル
3.3統
合 後 の金 融 市 場 モデ ル
7
2
3.2統
7
1
デル の全 体 像
3
1
3.1モ
3
1
第3章
1
3
3.4統 合前後 の証券取 引所の利潤 の比較
3
3
3.5イ
ン プ リケ ー シ ョン
5
3
第4章
結論と残された研究課題
5
3
論
4.2残
され た 研 究 課 題
5
3
4.1結
7
3
参考文献
・1
・1
は じめ に
現在世界各 国の証券取 引所 が国際化 戦略 を加速 させ ている。具体 的にはニュー ヨー ク
証券取引所 を運営す るNYSEグ
ループがユー ロネクス トと合併す る ことに加 え、2006
年の年末か ら2007年 の年初 にか けてNAsDAQが
ロン ドン証券 取引所 に敵対 的ToBを
実施 した。日本 の 中心的市場で ある東京証券取引所 もNYSEグ
日に戦略的提携 に合意 したほか、同年2月23日
ルー-プと2007年1月31
にはロ ン ドン証券取 引所 とも提 携 を合
意す るに至 った。もちろん他 の欧州やア ジアの有力証券取引所 も生 き残 りをかけて合併
や提携の交渉段 階に次 々 と入 っている。本稿 は 「なぜ いま各国 の証券取 引所が統合 の動
きを急速 に進 めているのか」とい う疑問 に対 して理論的 にひ とつ の回答 を与 え ようとす
る試みで ある。
本稿の構成 は以下 の通 りである。第一章で は、証券お よび金融市場 の基礎知識 を整理
し、次 いで近年進行 しつつある金融市場の グローバ ル化 の意義 を概観 す る。第二章で は、
証券取引所 とそれ を取 り巻 く関係 主体 について整理 をす る とともに、世界 の証券取引所
の概要お よび現在起 きている証券取 引所 の再編 ・統合 に関す る最新情報 を整理す る。第
三章で は、証券取引所 が他 の証券取 引所 と統合す る条件 を、理論 モデル を構築す る こと
によって分析 し明 らかにす る。最後 の第四章で は結論 と今後の課題 を述べ る。
第一章
市 場 のグロー バル 化
第一章 は本稿 における基礎部分 である。まず具体 的 に有価証券、金融市場 な どを整理
し、1970年 代 か ら進行 してい る市場 の グローバ ル化 を概観す る。
1.1証 券の定義
証券 取引所 に取 りかか る前 に まず証券 の定義 をす る。そ もそ も証券 とは よく耳 にす る
1
言葉 であ るが実 際に正確 な定義 を理解 してい る人 は少 ない。法学 的に証券 は 「
有価証券」
と 「証拠証券」に区分 される。証拠 証券 は単 に一定の事実 を証明す る もの とされている
10
他方、有価証券 は広義 と狭義 の概念 に分 け られ る。広 義の概念 は 「
財 産的権利 の経 済
的な内容 を表す証券 を指 し、具体 的 には商 品証券 、物財証 券、貨幣証券、資本証券」な
どである。狭義 の概念 は 「証券市場 で取引対象 となる資本証券」 を指 し、詳細 は証券取
引法 で定 め られている。証券市場 において扱 われる証券 は狭義 の有価 証券 だ と考 えて良
いo
図1ー1
証 券 の分 類
預 金証 書 一 手形 、小 切 手な ど貨 幣謂 求権 証券
商 品証 券 一 船荷 証券 。 倉撮 湿券 な ど財貨 請求 権 証券
有価証券
資本証 券 一 株 券、債 券 な ど投資 に伴 う諸権利 講 求権 証券
その他
一 土 地の権 利 書、 ゴルフ会 員証 な ど
証券
証拠証券
預 金証書 、 倦用 証書 、 受取証 書
(注)証 券 広 報 セ ン タ ー(2006)よ
1.2金
り著 者 作 成 。
融 市場 の 定義
次 に金融 市場 を概観 する2。金融市場 とは貸 し手か ら借 り手 に対 して資金 の移動 が行
1証 券広 報 セ ン ター(2006)
2金 融市 場 に加 え て 、金 融 シス テ ム の構 成 要 素 と して 金 融機 関 、金 融 市 場 が 含 まれ る 。 また そ れ らは いず
れ も法 律 、 規 制 、慣 行 な ど を反 映 して 出 来 上 が って い る。 した が って 金 融 シス テ ムの 形 態 は 国 に よ りまた
時 代 に よ り大 き く異 な った もの と な る(岡 部1999)。 しか しな が ら、 金融 シ ス テ ム の構 成 要 素 は基 本 的 に
(1:リ ス ク分 担 、2:流
動性 提 供 、3:情
報 の 集 積 ・伝 導 機 能)で あ る こ とは 変 わ りな く、 制 度 的差 異
が 近 年 の 市 場 統 合 を阻 害 す る決 定 要 因 で ない こ とが わ か る。ち な み に 現在 最 も進 ん で い る 避SEユ ー ロ ネ ク
ス トの合 併 案 件 にお い て は 、 制 度 的 差 異 は交 渉 の 段 階 で 解 決 され て い くだ ろ う と玉 虫 色 に され て い る。
(2006年12月20現
在)
2
われる場 である。取引 の場 において資金不足主体 は、債務の履行 ない し義務 の履行 を確
約 した証券 や株式 のいず れか を発行 し、資金の受領 と引 き換 えに資金 の貸 し手 に引 き渡
す(岡 部1999)。 金融市場 の概 念 も広義の金融市場 と狭義の金融市場 に分 ける ことが で
きる。
図2上2
広義 、狭 義の金融市場
(注)岡 部(1999)、
証 券 市 場(2006)を
参 考 に著 者 作 成
広義 の証券市場 の概念 を 日本 に適用 する と、円貨 を対 象 とす る市場 とそれ以外 の市場
に分 け られる。円貨 を対 象 とする市場 は、1:相
対 型取引市場 と2:市
場型取引市場 に
区別 で きる。相対型取 引市場 は貸 出市場、貯 金市場 な ど戦後 日本の高度成長 を支 えて き
た メインバ ンク を中心 とす る取 引形態 であ る。一方市場型取引市場 は短期金融市場 と長
期金融市場 に分 け られる。インターバ ンク市 場や オー プン市場 などが短期 金融市場 にあ
た り、今 回我 々が取 り扱 う証券市場 は もう一方の長期金融市場 にあたる。これ を構成 す
る債券 市場お よび株 式市場 を有 す るのが東京証券 取引所 を代表 とす る証券取 引所で あ
る。
3
それ以外 の代表 的な市場 として金融派生 商品市場 が挙 げ られ る。金融派生商 品市場 と
しては シカゴ商品取 引所(CB0T)や
ユ ー ロネ クス トHFFEな
どが有名 である。 しか
し本稿 において は現在 最 も再編 ・統合が激 しい長期金融市場のみ を対象 とす る。
1.31970年
代 以 降 の 金 融 市 場 の 発 達 とグ ロー バ ル 市 場 の誕 生3
1.3.1債 券 市 場 の グ ロ ー バ ル 化
債 券 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 は1970年
か ら1980年
代 にか けて 始 ま っ た。 これ は国 際 企
業 の 社 債 発 行 者 が 投 資 銀 行 の 力 を借 りて 進 め た もの で あ る 。債 券 の グ ロ ー バ ル 化 が 始 ま
っ た 初 期 の 段 階 で は各 国 の 会 計 基 準 、 格 付 け 方 法 、 情 報 源 、規 制 、 税 シ ス テ ム 、 金 融 産
業 の 構 造 、文 化 な ど が 違 い 投 資 家 の 選 好 や 収 益 期 待 の 違 い が 大 きか っ た 。 し か し そ の よ
う な 市 場 成 長 の 障 害 を 克 服 した の がIT革
命 と呼 ば れ る 情 報 通 信 革 命 で あ る 。
情 報 技 術 の 発 達 に よ り、市 場 の 不 完 備 性 は 急 速 に 消 滅 し よ う と し て い る 。各 国 間 の 情
報 源 、 リ ス ク ア セ ス メ ン ト、投 資 手 続 き な ど の 差 が な く な る に っ れ て 、 海 外 で の 起 債 が
国 内 の 発 行 よ り も有 利 に な る 機 会 が 減 っ た4。 こ れ は 発 行 市 場 の 地 域 格 差 が 消 滅 しっ つ
あ る こ と を示 し て い る 。一 方 流 通 市 場 に お い て い ま だ に 市 場 の ア ノ マ リ ー(変 則 性)が
存 在 し 、 裁 定 取 引(ア
ー ビ トラ ー ジ)の 機 会 が あ る 。 そ の 意 味 に お い て 、 グ ロ ー バ ル な
投 資 家 が 流 通 市 場 に ア クセ ス で き る環 境 が 形 作 られ始 め て い る こ と に関 して は納 得 が
い くだ ろ う 。特 に 欧 州 、 ア ジ ア に お け る 債 券 市 場 は 統 合 過 程 に あ る(欧 州 に お け る債 券
市 場 は ユ ー ロ の 誕 生 で ほ ぼ 完 全 に 統 合 し た)。
3本節 は ロ ー エ ル(1999P29)を
参 考 に してい る。
4例 え ば ソニ ー は初 め て の債 券 発 行 をス イス で 行 っ た。 こ れ は ス イ ス を含 め ヨ ー ロ ツパ 各 国が 格 付 け を重
視 して い な か っ た た め 、安 い金 利 で債 券 の発 行 が 可 能 に な っ た か らで あ る。 しか し、 グ ロ ーバ ル化 が進 む
につ れ て リス ク ア セ ス メ ン トや投 資 手 続 きが 同一 に な り、急 速 に金 利 差 は消 滅 しつつ あ る。
4
1.32株
式 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 と そ の 阻 害 要 因5
株 式 為 替 や 債 券 に 比 べ 、株 式 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 は 遅 れ て い る 。た と え 同 じ業 界 で 同
格 の 法 人 で も株 式 が 取 引 さ れ て い る 国 家 に よ っ て 株 式 の 価 格 の レベ ル に は 大 き な 差 が
存 在 す る 。 株 式 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 が 遅 れ た 理 由 は 株 式 独 自 の 特 性 に よ る もの で あ る 。
通 貨 や 政 府 債 券 と 違 い 、 株 式 の 評 価 は そ の 対 象 企 業 の 置 か れ て い る 独 特 な状 況 に よ る 。
そ し て 客 観 的 な 指 標 の み で は 企 業 そ の もの の 価 値 を 計 る こ と は 難 し く、ま た 取 引 額 は 市
場 規 模 に 比 べ て 小 さ い 。加 え て株 式 を 買 うべ き か ど う か の 調 査 費 や 手 数 料 が 債 券 と比 べ
て 高 い と い う こ と も指 摘 で き る 。
ま た 株 式 市 場 に お い て は投 資 を 決 断 す る の に 必 要 な 、一 貫 性 の あ る 情 報 源 が 存 在 し な
い 。 さ ら に米 英 な ど 一 部 の 金 融 が 発 達 し た 国 家 を 除 け ば 、数 多 くの 国 家 に お け る 株 式 市
場 は イ ン サ イ ダ ー 市 場 で あ る 。株 式 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 が 進 む に つ れ て 、 ロ ー カ ル 市 場
で イ ン サ イ ダ ー で は な い 国 際 投 資 家 は エ ー ジ ェ ン ト6を雇 い 、 そ の エ ー ジ ェ ン トを 通 じ
て株 式 を売 買 す る よ うに な っ て きて い る。
図1-3
自 由化 され た市 場 の 自己増 殖 の プ ロセ ス
阻置 ■
『
■
規制 された毒場
口
自由化 され た市 場
(注)著 者作 成
5本 節 は ロ ー エ ル(1999P34
,35)を 参 考 に して い る。
6こ れ は 主 に投 資 信 託 な ど ロ ー カ ル に密 着 し、情 報 優 位 に あ る株 の 取 引 業 者 を指 す 。
5
株 式 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 は 始 ま っ た ば か りで あ る に もか か わ らず 、自 由 化 さ れ た 市 場
と そ の 市 場 を 求 め る 資 金 は 着 実 に 規 制 さ れ た 市 場 を 自 由 化 さ れ た 市 場 へ と変 化 さ せ て
い る 。第 二 章 以 降 に お い て 説 明 さ れ る 証 券 取 引 所 の 統 合 も こ の 影 響 を 非 常 に 大 き く受 け
て い る こ とは 言 う まで も ない 。
株 式 市 場 の グ ロ ー バ ル 化 もIT革
命 か ら非 常 に大 き な 影 響 を受 け て い る と言 わ れ る7。事 実 、
近 年 世 界 中 の 投 資 家 が 優 良 な 国 家 の 株 式 を買 い 漁 る 現 象 が 世 界 中 で 散 見 さ れ て い る 。 ま た
高 度 な金 融 技 術 を武 器 に ヘ ッ ジ フ ァ ン ドな どが お 金 を っ ぎ込 み 、 国 家 の 経 済 を破 綻 させ て
し ま う よ う な現 象 さ え発 生 して い る8。
1.4金
融 市 場 が グ ロー バ ル 化 す ることの 特 長
こ れ ま で 債 券 市 場 お よ び 株 式 市 場 が グ ロ ー バ ル 化 さ れ て き た こ と を述 べ た が 、そ もそ
も グ ロ ー バ ル 化 さ れ た 市 場 は ど の よ う な 特 長 を持 つ の か ま と め て み た い 。グ ロ ー バ ル 市
場 の 定 義 は 多 岐 に 渡 る が 、 ロ ー エ ル に よ る と以 下 の6点
表1-1グ
ロ ーバ ル市 場 の特 性
(注)ロ
7日 経 新 聞(2007年1月21日)
8白 井(2001)
に集 約 され る 。
。
6
ー エ ル(1999)。
IT革
命 に よ っ て 先 進 国 に お い て 「5.金融 上 の 規 制 が な い こ と」 以 外 の 部 分 は 満 た さ
れ よ う と し て い る 。金 融 上 の 規 制 も 昨 今 の 欧 州 に お け る 金 融 改 革 な ど を 参 照 す る とい ず
れ 廃 止 さ れ て い く だ ろ う と予 期 で き る9。
第 二 章 証 券 取 引 所 の歴 史 と機 能
第一章 において証券市場 の位 置づ け と重要性 を観 て きた。第二章 において、証券市場
の起源、役割 、世界 にどの ような証券取引市場が存在す るか概観す る。
2.1証
券 取 引 所 の 歴 史 ¶o
証 券 取 引 所 を 検 証 す る に あ た り、 まず 証 券 取 引 所 の 歴 史 か ら始 め る 。証 券 の 始 ま りは
中 世 後 期 の イ タ リ ア の 都 市 国 家 に お け る 国 債 の 発 行 と さ れ る 。発 行 さ れ た 国 債 は 自然 発
生 的 に取 引 さ れ る よ う に な り、国 債 取 引 市 場 が 形 成 さ れ た 。 ヨ ー ロ ッパ は 他 地 域 に先 駆
け て 経 済 が 発 達 し た が 、15世
紀 以 降 、 民 族 国 家 間 で の 対 立 が 激 し く な り、 そ の 戦 費 を
賄 う た め の 国 債 発 行 が 活 発 に な っ た 。こ の よ う な 戦 費 の 調 達 を 目 的 に し た 国 債 発 行 が 活
発 に な り、 定 期 的 に債 券 取 引 を 行 う 「場 所 」 と し て の 証 券 取 引 所 の 創 設 が 求 め られ た 。
1531年
、 ベ ル ギ ー の ア ン トワ ー プ に 世 界 初 の 証 券 取 引 所 が 誕 生 し た の に 続 き、 オ ラ ン
ダ 、 フ ラ ン ス 、 ドイ ツ 、 イ ギ リス 、 ア メ リ カ な どで 次 々 と証 券 取 引 所 が 誕 生 した 。
2.2証
券 取 引 所 の役 割
次 に 証 券 取 引 所 の 役 割 を 、 マ ク ロ 的 な視 点 、 セ ミマ ク ロ 的 な 視 点 か ら分 解 す る 。 マ ク
ロ 的 な 視 点 に お い て 証 券 取 引 所 が 果 た す 役 割 は3つ
9佐 藤(2005)。
10証
券 広 報 セ ン タ ー(2006)
7
あ る 。1.企 業 や 国 、各 種 機 関 が 長 期
的 安 定 的 な 資 金 を 調 達 す る 場 を提 供 す る 、2.個 人 を は じめ 各 種 の 機 関 投 資 家 が 資 産 を運
用 す る 場 を提 供 す る 、3.金 融 当 局 が 経 済 の 安 定 的 成 長 を は か る た め の 金 融 コ ン トロ ー ル
の 場 を提 供 す る 。 こ の3点
が 指 摘 さ れ て い る11。 確 か に こ れ は マ ク ロ 的 か つ 経 済 全 体 の
中 で 証 券 取 引 所 が 果 た す 役 割 を 説 明 して い る が 、 包 括 的 定 義 で あ る と は 言 い 難 い 。
一 方 、 機 能 的 視 点 か ら は 証 券 取 引 所 を6つ
の 機 能 に 分 け 定 義 す る こ と が で き る12。 つ
ま り証 券 取 引 所 が1.決 済 機 能 、2.資 源 配 分 機 能 、3.流 動 性 の 提 供 機 能 、4.リ ス ク管 理 機
能 、5.価 格 情 報 の 提 供 機 能 、6.イ ン セ ン テ ィ ブ 問 題 の 解 決 機 能 の 、6つ
の機 能 で構 成
さ れ て い る 。 こ の 機 能 的 視 点 は 、証 券 取 引 所 の 機 能 や 役 割 を 過 不 足 な く含 ん で お り妥 当
性 が あ る。
実 際 に 証 券 取 引 所 の 概 要 を 見 て も同 じ こ とが 言 及 で き る 。図2.1に
お い て は主 な証 券
会 社 に 関 係 す る 市 場 参 加 者 と 証 券 会 社 の 主 な 機 能 が あ げ ら れ て い る 。こ の 機 能 の 中 で 特
に 重 要 と言 え る の が 決 済 機 能 と 情 報 部 門 が 重 要 で あ り、証 券 会 社 が 担 う6つ
で そ れ に 合 致 す る の が1.決
済 機 瀧 と5価
図2-1
上場 会社1
1よ欄
格 情 報 の提 供 機 能 で あ る。
証 券 取 引所 の概 要
i嚇
取蠣
1・報・・
ダー
難 轍 供斜1
金
尋輔1自
保管 」
主購 酬1漏
蹄 取彌 職 能1
その他(欄 綱)湘
蟄
レ
翻 者
量
(注)大阪 証 券 取 引 所(2006)よ
11山 一 証 券 経 済 研 究 所(1997)
12宇 佐 美(2007)
8
り著 者 作 成 。
の機 能 の 中
2.3世
界 の 主 要 証 券 取 引所
世 界 の 主 要 な証 券 取 引 所 を 表 に し た の が 以 下 の 表2-1で
の キ ー プ レ ー ヤ ー と な っ て い る の は 以 下6つ
1.東 京 証 券 取 引 所 は1878年
券 取 引 量 を誇 る 。2006年
あ る 。現 在 証 券 取 引 所 の 再 編
の証券取引所 である。
に 設 立 さ れ た 。 上 場 企 業 数 は2374社
で 世 界 第2位
の証
に い わ ゆ る 「ラ イ ブ ドア ・シ ョ ッ ク 」 に よ り、 シ ス テ ム 処 理
能 力 が 限 界 近 く に 達 し取 引 が 停 止 し た 。今 後 こ の よ う な こ とが 起 き な い よ う に 、次 世 代
シ ス テ ム の 開発 に力 を入 れ る。
2.ニ ュ ー ヨ ー ク 証 券 取 引 所 は1792年
第1位
に 設 立 さ れ た(略
称 はNYS
E)。 NYSEは
世界
の 取 引 量 を誇 り、 非 常 に 上 場 規 準 が 厳 しい こ と で 有 名 で あ る 。
3.NYS
Eの
ラ イ バ ル で あ る 米 国 のNASDAQは1971年
の 主 催 で 開 設 さ れ た 世 界 最 大 の 新 興(ベ
ソ フ トや グ ー グ ル な ど先 進 的 なIT企
に 全 米 証 券 業 協 会(NAsD)
ン チ ャ ー)企 業 向 け 株 式 市 場 で あ る 。 マ イ ク ロ
業 が 上 場 して お り取 引 額 ラ ン キ ン グ で は 世 界3位
である。
4.英 国 の ロ ン ドン 証 券 取 引 所 は 取 引 額 ラ ン キ ン グ で 世 界 第4位
一 時 は 業 績 不 振 に 苦 しん だ が
の証 券 取 引 所 で あ る。
、現 在 は 上 場 会 社 を グ ロ ー バ ル に募 集 す る な ど して 急 速 に
業 績 を改 善 して き て い る 。
5.ド イ ツ 証 券 取 引 所 は ドイ ツ に お い て 最 も取 引 量 の 多 い フ ラ ン ク フ ル ト証 券 取 引 所 、
先 物 取 引 市 場 と して ユ ー レ ッ ク ス を 所 有 し て い る 。当 証 券 取 引 所 は 他 の 証 券 取 引 所 と の
提 携 交 渉 に も積 極 的 で あ る が 、 未 だ に 有 力 な 提 携 相 手 は 見 っ か っ て い な い13。
6.ユ ー ロ ネ ク ス トは パ リ証 券 取 引 所 、 ア ム ス テ ル ダ ム 証 券 取 引 所 、 ブ リ ュ ッ セ ル 証 券
取 引 所 の3つ
の 証 券 取 引 所 が 合 併 し2000年
取 引 所 のLIFFEを
に 誕 生 した 。 ま た2002年
に ロ ン ドン証 券
合 併 し、 有 力 な 派 生 商 品 取 引 市 場 も抱 え る よ う に な っ た(同
ル トガ ル の リ ス ボ ン取 引 所 と も提 携)。2007年3月
にNYSEと
年 にポ
統 合 す る こ とに よ って
13ロ ン ドン証券取引所 と ドイツ証券取 引所 の間では、1998年 か ら2000年9月 にかけての汎欧州証券取引
所計画や2004年 以降の買収提案 など、数回 に渡 って提携や合併 の協議が な されて きた(宇 佐見2007)
9
NYSEユ
ー ロ ネ ク ス トと い う世 界 最 大 の 証 券 取 引 所 に な る 。
表2-1
NYSE
東京
(日本)
(米 国)
各国証券取 引所 の概 要
NASDAQ
ドイ ツ
ユ ー ロ ネ クス ト
(ド イ ツ)
(仏 、 白 、蘭 、 葡)
London
(米 国)
(英 国)
設立年
1878年
1792年
1971年
1801年
1585年
2000年
上場企業数
2374社
2181社
3151社
3189社
758社
1225社
4626
13945
3559
3370
1412
3192
2699
9136
5179
3155
1197
1688
上 場 企 業 の 時価
総 額(10
億
USD)
年 間 取 引 高(10
億USD)
組織形態
株式会社
株 式会社
株 式 会社
株式会社
株 式 会社
(公開2006)
(公開2002)
(公開2001)
(公開2001)
(公開2001)
株 式 会 社14
(非 公 開)
(注)World Federation of Exchanges(2006)お よび宇佐見(2007)を参考 に著者作成。
上 記 の 表 に お い て 注 目 す べ き は 証 券 取 引 所 の 組 織 形 態 で あ る 。2000年
初 頭 に、 公 営 組
織 や 会 員 組 織 と い う 組 織 形 態 を取 っ て い た 証 券 取 引 所 が 急 速 に株 式 会 社 化 し た(フ ェ ー
ズ1)。
こ れ は 証 券 取 引 所 と い う経 済 イ ン フ ラ を 維 持 し 、 取 引 シ ス テ ム を 向 上 させ る た
め に 「巨 額 の 資 金 」 が 必 要 に な っ た こ とが 最 た る 理 由 で あ る 。 既 に 東 京 証 券 取 引 所 を 除
く主 要 な 証 券 取 引 所 は 株 式 公 開 を終 え 、現 在 は 証 券 取 引 所 が 株 式 会 社 で あ る こ と を 前 提
に ど の よ う に生 き残 っ て い くか を模 索 して い る段 階(フ
2.4統
ェ ー ズ2)で
あ る。
合 によるメリツト
本 節 に お い て 、 証 券 取 引 所 、 証 券 会 社 、 政 府 、投 資 家 、発 行 元 の 企 業 の 統 合 に 関 す る
メ リ ツ ト ・デ メ リ ツ トを検 証 す る 。
2.4.1
証券取引所
ま ず 証 券 取 引 所 の 統 合 に よ る メ リ ッ トを検 証 す る 。証 券 取 引 所 が 統 合 す る こ と に よ っ
14東 京 証 券取 引所 は2009年
を 目安 に公 開 を 目指 してい る。
10
て得 られ るメリッ トは① 上場 商品の多様化、② 経営拠点 の共有 に よる合 理化 、③ システ
ムの集約 ・標準化 、④ 時差等 を利用 した相互補完 、⑤市場規模 の拡大 である。特 に③ の
シス テムの集約 ・標準 化 は重要 だ。市場 の グローバ ル化 に よって証券 市場 の過 当競争 が
加速 し、市場参加者が求め る証券市場 の市場 イ ンフラが非常 に高度 になっている。東 京
証券取 引所 な どの大規模 な取 引所 は数 百億 円規模 の シス テム投 資 を求 め られ ているが
流動性が さ らに流動性 を生 む状況 の中、資金規模 の優劣 が証券取 引所 の優劣 につ ながる
状態 になってい る。
2.4.2
証券会社
証券会社 は証券取引所 と投資家 をつな ぐ役割 を担 っている。市場統 合 によって考 え ら
れるメ リッ トは3つ 存在す る。第1に 証券 会社 が投資 で きる企業 数が増加する ことがあ
げ られる。例 えば、証券取引所Aの
証券取引所Bの
会員で ある証券会社が証券取引所Aと
上場株式 を購 入で きる可能性が高い。第2に
統合 を した
証券 取引所 が統合 した こ
とに よ り、証券取引所 の運営 コス トの合理化 が図 られ、結 果的 に証券 会社 が今 まで よ り
安 い コス トで証券取引所 を利用 出来 る可能性 が大 きい。第3に1、2の
効果 によって証
券会社 の運営費が安 くな り、結果 的 に顧客 の増加 が予想 で きる。
2.4.3政
府
証券取 引所 の再編 問題 はその証券取引所が位置す る国家 に とって も重要 な意味 を持 つ。
も し市場参加者 に魅力 的な市場 を構 築で きた場合 「自国経 済の発展」 が期待 で きる。
2.4.4
発行元の企 業
取 引所 において株式 の取引量 が増加 す るの に伴 い、上場企 業の株 式の取引 も活発化す る。
2.5統
合 によるデ メリツト
統 合 に よ る デ メ リ ッ トは 以 下 の3点
が 考 え ら れ る 。① 寡 占 が 進 む こ と に よ っ て の 市 場
参 加 者 の 取 引 費 用 増 加 、② 中 小 の 証 券 取 引 所 が 消 滅 し、商 品 の 多 様 性 が 失 わ れ る 可 能 性 、
11
③証券 取引所 間の競 争 に負 け た国家 の証 券業 が衰退 す る可能性 が挙 げ られる。
2.6証
券取 引所 再編 の状 況
最後 に(図2-3)で
あげ た世界 の主要 な証 券取引所 が どの よ うな形 で再編 ・統合 を し
よう としてい るのか を概観 す る。現在 東京証 券取 引所 は2009年
場 に備 えて、独 自の システ ムを開発 、NYSEと
度 に予定 され る株 式上
の資 本業務提 携 に備 えて独 自の企 業価 値
を高 めている。 ニュー ヨー ク証券取 引所 はユ ーロ ネクス トと2007年3月
しNYSEユ
を 目処 に統合
ーロネ クス トとい う証券取 引所 に変貌 を遂 げ る。ナス ダ ツクは ロ ン ドン証券
市場 の株式 を29%取 得 し、敵対 的TOBを
仕掛 けたが失敗 に終 わ った。今 後の戦 略が期
待 される。ロ ン ドン証 券市場 は独 自に市 場価値 の向上 を目指 し、東京証券 取引所 とも提
携 に合 意 した。ドイツ証券取 引所 は統 合や提携 先 を探 すが 目下迷 走 中 とい う感 は否め な
いo
図2-3
現 在 の 状 況(2007年2月28日
(注)著 者 作 成 。
12
現 在)
第3章
証 券 取 引 所 の 再 編 ・統 合 に 関 す る理 論 分 析
本 章 で は 、あ る 証 券 取 引 所 が 他 の 証 券 取 引 所 と統 合 し た 場 合 の 金 融 市 場 の 理 論 モ デ ル
を構 築 し 、 ど の よ う な 場 合 に証 券 取 引 所 が 統 合 を 選 択 す る か を 分 析 す る 。
まず 、3.1で
は モ デ ル の 全 体 像 を 述 べ 、3.2に
お い て 統 合 前 の 金 融 市 場 モ デ ル を構 築
し 、3.3で は 統 合 後 の 金 融 市 場 モ デ ル を 構 築 す る 。3.4で
は 、32と3.3で
構 築 した モ デ
ル を用 い 、統 合 前 後 の 証 券 取 引 所 の 利 潤 を 比 較 し 、 ど の よ う な と き に 証 券 取 引 所 が 統 合
を選 択 す る イ ン セ ン テ ィ ブ を 持 つ か を 分 析 す る 。 最 後 に 、3.5に お い て 、 モ デ ル か ら得
ら れ た イ ン プ リケ ー シ ョ ン を 述 べ る 。
3.1モ
デル の全 体 像
(1)従
来 の金 融 市 場 の 理論 分 析
本 稿 の モ デ ル は 、 植 田(2006)を 参 考 に し た 。植 田(2006)は 金 融 面 を 重 視 した マ ク ロ 経
済 モ デ ル を 構 築 し 、金 融 的 要 因 が ど の よ う に マ ク ロ 経 済 に 影 響 を 与 え る か とい う こ と を
分 析 し て い る 。 そ の モ デ ル に お け る 経 済 主 体 は 中 央 銀 行 、市 中 銀 行 、企 業 、家 計 の4つ
で あ る 。 植 田(2006)が
そ う で あ る よ う に 、従 来 の 金 融 市 場 の 理 論 分 析 に お い て は 、 投 資
家 と企 業 が モ デ ル 分 析 の 中 心 で あ り、投 資 家 の 投 資 の あ り方 や 企 業 の 資 金 調 達 の あ り方
等 を 考 察 す る こ と が 金 融 市 場 の モ デ ル 分 析 の 中 心 で あ っ た 。 し か し 、1章 で 述 べ た と お
り、現 実 の 金 融 市 場 に お い て は 、証 券 会 社 や 証 券 取 引 所 も大 き な 役 割 を担 っ て い る 。証
券 取 引 所 の 再 編 統 合 を 考 え る 際 に は 、こ れ らの ア ク タ ー を 考 慮 し な い と適 切 な 分 析 が で
き な い 。よ っ て 、本 稿 の 理 論 分 析 に お い て は 、企 業 、投 資 家 の2つ
証 券 取 引 所 を新 た に 加 え 、4つ
の 主 体 に 、証 券 会 社 、
の 経 済 主 体 を想 定 した16。 な お 、 投 資 家 と企 業 の 関 数 設
16本 稿 の よ うに金 融市 場 の モ デ ル に証 券 取 引 所 等 を組 み 込 み 、金 融 市 場 を全 体 的 に見 渡 した理 論 分 析 は ほ
とん ど見 当 た らな い 。 しか し、 証 券 取 引 所 の 内 部 の 組 織 形 態 につ い て理 論 分 析 を行 っ た もの と して千 野
(2006)が 挙 げ られ る 。 千 野(2006)は 証 券 取 引 所 の 役 割 をマ ー ケ ツ ト部 門 と管 理 規 制 部 門 の2つ に 分 け 、 こ
れ らの部 門 を どの よ うな 形 態 に組 織 す べ きか 、 契 約 理 論 を用 い て分 析 して い る。 詳 し くは千 野(2006)を 参
照 の こ と。
13
定 は植 田(2006)を 参考 に したが、① 証券取引所 に関す る利潤 関数 を設定 した こと②証券
会社 に関す る利 潤関数 を設定 した こ と③ 異 なる2つ の証券市 場 を想 定 し、それぞれの証
券市場 にお ける企業 や投 資家、証券 会社 の動 きを考慮 に入れ なが ら、証券取 引所 の再
編 ・統合 を議論 した ことが本稿 のオ リジナルであ る。
(2)各
経済主体の行動の説明
i)企 業
本 モデル においては、企 業 は社債 や株 式 を用 いて資金調達 をす る と想定す る。企業の
資金調 達の方法 と して銀行 か らの借 入等 も考 えられるが、本モ デル は主 に証券市場 に焦
点 を当てているため、これ をモデルか ら除外 した。企 業は内部留保 、社債発行 、新規株
式発行 の3つ の資金調達手段 を用い る もの とす る。これ らか ら調達 した資金の予算制約
の下 に、企業 は費用最小化 お よび利潤最大化す る ような投資 を行 うとする。
i)投 資家
投資家 は、自分 の資 産 を①株式②社債③ その他 の資産 に投資 する もの とする。その他
の資産 は、社債 や株式以外 の資産 である と定義す る。投資家 が株式 や債券 を魅力 的な投
資対象 と感 じなかった場合 に この資産 に多 く投資す る もの とす る。
ih)証券会社17
証券会社の業務主要 な業務 として米澤編(2006)は 、①有価証券 の発行 ・引受業務② 有
価証券の募集 ・
分売業務③有価証券 の委託売買業務④有価証券 の 自己売買 業務 の4つ を
挙 げてい る。① の発行 ・引受業務 とは、証券の発行主体であ る企業 に対 して、証券 を発
行す るまでサポー トを行 う業務(オ リジネー ター業務)と、証券会社が新規発行証券 を一
括 して肩代 わ りし、当該証券が外部の投資家 に売却 され るまでの価 格変動 リス ク等 を負
担す る業務(ア ンダー ライ ター業務)の2つ の業務 の ことである。②の募集 ・分売業務 と
は、企業 の依頼 に よ り、新規発行証券の外部投資家 に対す る募集 ・売出 を行 う業務 の こ
17こ
の 項 目 の 内 容 は 米 澤 編(2006)に
多 くを依 存 して い る
14
。
と で あ る 。③ の 委 託 売 買 業 務 と は 、既 発 行 証 券 の 潜 在 的 な 買 い 手 と 売 り手 の 双 方 か ら売
買 注 文 を受 け 、そ の 売 買 を成 立 させ る 業 務 の こ と で あ る 。 こ の 場 合 は 、投 資 家 か ら 注 文
を 受 け 、証 券 取 引 所 を 通 じ て そ の 売 買 を成 立 させ る こ と を指 す 。④ の 自 己 売 買 業 務 と は 、
証 券 会 社 が 自 己 の 勘 定 で 行 う有 価 証 券 の 売 買 行 為 の こ と で あ る 。
こ の モ デ ル に お い て は 、証 券 会 社 は 投 資 家 と企 業 の 仲 介 的 な役 割 を 果 た す もの と 考 え 、
業 務 は 基 本4業
務 の う ち ① 、 ② 、 ③ の3つ
を 行 う も の とす る 。
iv)証 券 取 引 所
東 京 証 券 取 引 所(2006)(図3-1参
照)に よ る と 、2005年
営 業 収 益 の 構 成 比 は 、取 引 参 加 料 金 が42.1%、
12.6%18、 証 券 決 済 関 係 収 入 が17.8%、
図
3-1
度 にお け る東 京 証 券 取 引 所 の
上 場 関 係 収 入 が20.4%、
そ の 他 が7%と
情報関係収入が
な って い る。
東京証券取引所 の営業収益(2005年 度)
営業収益
そρ穂の 霧 業収 盤
2毒5脈 万F董暮毒
69,893百
システム翻 発 ・
鋸漏 網 蕉収 入
2轟2騙 珊 鍼
万円
取 §継 加 料 金
凝 券決 演蜀 懸収 入
29■443胃蔭円 醗 睾
12,474肖万円 鐸 馨
上 焔 腿鯉
憐報劇 係級 入
6ゴ8偲
召写跨 獄 藻
注;購成続』
二・i勾
殿薪3幣を臨罐荘葬、、,で
規駐 ・ム 蟻 マ
(注)東 京 証 券 取 引 所(2006)よ
こ れ らの う ち 始 め の3つ
入
饗4爆
設77演万臼 讐 講
り引 用 。
が 証 券 取 引 所 の 収 入 の 大 部 分 を 占 め て い る の で 、モ デ ル で 扱
18取 引 参 加 料 金 とは 、 取 引 参 加 者(主 に証 券 会 社)か ら有 価 証 券 の 売 買 代 金 ・数 量 ・注 文 件 数 に応 じて 、 証
券 取 引 所 に支 払 わ れ る 料 金 の こ とで あ る。
上 場 関 係 収 入 とは 上 場 会 社 か ら証 券 取 引 所 に支 払 わ れ る料 金 を総 称 した もので あ る。 主 に、 新 規 上 場 手
数 料(新 規 上 場 会 社 が 上 場 を 申請 す る際 に支 払 う手 数 料)、 新 株 発 行 料(上 場 会 社 が 増 資 す る際 に支 払 う手 数
料)、 年 間上 場 料(時 価 総 額 に応 じて支 払 う手 数 料)か ら構 成 さ れ る。
情 報 関 係 収 入 と は、 情 報 ベ ン ダ ー等 か ら支 払 わ れ る相 場 情 報 の提 供 料 の こ とで あ る。
詳 細 は東 京 証 券 取 引 所(2006)を 参 照 の こ と。
15
う証券取引所 は この3つ の収 入 を得 ている と仮 定 し、証券 関係 決済収入 は除外す る19。
次 に証券取引所 のコス トを検討す る。東京証券取引所(2006)に よる と、2005年 度 の
東京証券取引所の営業費用 は地代 や人件費 を除 くと、システム維持 ・運営 費が大 きなウ
ェイ トを占め る20。そ こで、本稿 では証券取 引所 の コス トは システム維持 ・管理 に必 要
な費用 のみ とす る。
東京証券 取引所 の収益 とコス トを考慮 し、本モ デルでの証券取 引所 の役割 は、大 き く
分 けて①証券 取引 の場 を証券会社 や企業 に提 供す る こと② 市場 の動向 や企 業 に関す る
ものな ど様 々 なデー タを、証券会社 を通 じて投資家 に提供 する こと、の2点 とす る。な
お、モデル を単純化 す るため企 業が新規上場す るケ ース は考 えず、このモデルにおける
企 業は全 て証券取 引所 に上場 してい るもの とす る。
(3)統
合後 の証券取 引所 に関す る仮定
本稿 におい ては、お互い異 なる性質の市場(以下 、投資 家、企業、証券 取引所 、証券
会社 の4つ
の経済 主体 が行動 をする場 を単 に市場 と呼ぶ)に属す る2つ
の証券取引所 の
統合 を考 える。また、モデルの単純化 のため、本分析 にお ける統合 とは、①投資家が異
なる市場 の証券取 引所 に上場 してい る企 業 に対 して、証券会社 を通 じて取引が で きる よ
うになる こと、② 企業 は統合前 と同 じように自分が属 してい る市場 にお ける証券取引所
にのみ上場 してい るとい うこと、③ 証券取引所 同士の シス テムの提携 を行 うこ と、の3
っ全 て を満たす行為 をあ らわす もの とす る。
証 券取引所 は社会 のイ ンフラス トラクチ ャーで あるが株 式会社 の形態 を とってい る
ので、自己の利益 を最大化 する ような行動 を とる と仮 定 し、統合前 より統合後 の方 の利
潤 が高 くなる場合 は統合 を選択 す ると考 える。
19東 京証 券 取 引所(2006)に よる と、証 券 決 済 関係 収 入 は 日本 証 券 ク リア リ ン グ機構 が 行 う債 務 引 受 業 等 に
関す る収 入 お よび 、 日本 証 券 決 済が 行 う有 価 証 券 の保 管 ・受 渡 業 務 に 関す る収 入 か ら構 成 され る 。本 分 析
に お い て は 決 済 や清 算 の あ り方 は議 論 の本 質 か ら外 れ る の で 、 この収 入 は対 象 か ら除外 す る 。
20東 京証 券 取 引所(2006)に よる と、営 業 費 用 は346億9900万
円 で あ る 。そ こか ら人件 費 、不 動 産 貸借 料 、
減 価 償 却 費 を除 く と148億1000万
円 に な る 。 そ の費 用 の うち 、 シス テ ム維 持 ・運営 費 は107億200万
円
を 占 め る。 こ こか ら シス テ ム維 持 ・運 営 費 は証 券 取 引所 の費 用 に大 きな ウェ イ トを占 め る と判 断 で きる 。
16
(4)分
析の大 まかな流 れ
本稿 の分析 は以 下のステ ップで行 う。
ステ ップ1統
合前 における4主 体 の関数 を構 築する。
ス テ ツプ2
企業 の費用最小化 問題 を解 く。
ス テ ップ3
金融市場(社債お よび株式)の均 衡条件 を求 める。
ス テ ップ4
前段階 か ら得 られた条件 を用 い証券 取引所 の利 潤 を求め る。
ス テ ツプ5統
合後の4主 体 の関数 を構 築す る。
ス テ ップ6
統合前 と同 じ要領で統合後 の証券取 引所 の利潤 を求め る。
ス テ ップ7
統合前後の証券取引所の利潤 を比較 し、条件 を導 く。
ステ ップ3に おける金融市場 の均 衡条件 とは、企業が発行 する社債 や株式 の発行 額 と投
資家 が投 資す る額 が等 しくなるこ とであ る。
以 降、2.2で はステ ツプ1か
らス テ ップ4を 扱 い、2.3で はステ ップ5,6を 扱 う。そ
して、2.4で ステ ップ7に 基づ き統合前後 を比較 し、最後 にモデルか ら得 られたイ ンプ
リケーシ ョンを述べ る。
3.2統 合前の金融 市場モデル
(1)企
業の関数 の構築21(ステ ップ1)
まず企業 に関す る関数 を設定す る。この関数の設定の手順 は以下の通 りであ る。まず
①期待利 潤 を最大化す る ような投資 関数 を設定 し、次 に②企 業の予 算制約式 を立 て、最
後 に③企 業の費用関数 を設定す る。
ま ず ・ 投 資 関 数 を設 定 す る 。 投 資1か
ら の 予 想 収 益 の 流 列 を9ノ(ノ=1,2,…,η)と
その割 引現在価値 は以下の よ うに表す こ とがで きる。
21企 業 にお け る関 数 構 築 は植 田(2006)を 参 考 に した 。
17
し、
Σ9・=9
(式・)
ノ=1{1+i+ρ(L)}ノ
gは1期
i+ρ(L)
当 た りの 平 均 予 想 収 益 を 表 し、iは 利 子 率 を 表 す 。 ρ は リ ス ク プ レ ミ ア ム を 表
し、 そ れ は 企 業 の 既 存 債 務Lの
増 加 関 数 とす る 。 ま た 、9は
投 資1、
現 行 利 潤 率22ア 、
将 来 期 待 θに 次 の よ う に 依 存 す る と仮 定 す る 。
9=9(1,r,ε)
91>0,
式1と
式2に
gπ<0,
よ り投 資1は
9
g,>0,
g1,>0,
g,>0,
g1,>0
以 下 の 式(利 潤)を 最 大 に す る よ う に 決 定 さ れ る 。
9(1,r,ε)
-丹=
i+ρ(L)・
式3を1に
(式2)
23
ー、Pl
(式3)
i+ρ(五)
つ い て 解 け ば 、 次 の 投 資 関 数 を 得 る 。24
1=(ろ
(式4)
θ,i,五)
十 十 -
一
下 の 添 え 字 は1を 各 変 数 で 偏 微 分 し た と き の 符 号 を 表 す 。 つ ま り、1は 現 行 利 潤 率7、
将 来 期 待 θに 関 し て 増 加 関 数 で あ り、 利 子 率iと 既 存 負 債Lに
次 に 企 業 の 予 算 制 約 式 を 設 定 す る 。 企 業 は 式4で
内 部 留 保 、社 債 発 行 、新 規 株 式 発 行 の3つ
保1Vは
関 して減 少 関 数 で あ る。
得 ら れ た 投 資 に必 要 な資 金 と して 、
の 資 金 調 達 手 段 を用 い る も の と す る 。 内 部 留
、 利 潤 か ら債 務 利 払 い を 差 し引 い た 値 に 内 部 留 保 率 乃 を か け た 水 準 で あ る か ら
以 下 の よ う に 表 す こ とが で き る 。
!V=(rPK-i.1
L)
1)は 消 費 財 と投 資 財 の 共 通 価 格 、Kは
(式5)
資 本 ス トツ ク 、 i-1は 前 の 期 の 利 子 率 を表 す 。 式
22現 行 利 潤 率 とは 植 田(2006)の 定 義 式 に よれ ば、 生 産 過 程 に投 入 した 前 貸 し資 本 に 対 す る 剰 余価 値 の 比率
を表 す もの で あ る 。
239ノ は9を1で
一 階 偏微 分 した こ と を意 味 す る。 また 、91ノ は9を1で
一 階偏 微 分 した こ と を意 味 す
る。 そ して 、9z,は9を1と
アで 交 差偏 微 分 した こ と を意 味 す る 。
24投 資 関 数 の 導 き出 しは議 論 の 本 質 と離 れ る の で省 略 す る が 、式3を
18
偏 微 分 す れ ば 求 め る こ とが で きる 。
5を 用 い る と 、企 業 の 資 金 調 達 に お け る 予 算 制 約 式 は 以 下 の よ う に 表 せ る こ とが で き る 。
、P1(7,ε,i,」
乙)=乃(zPK-i-l
、Pθ
は 株 価 、ESは
Z)+・Pε(万s-E)+(ーL4-Z)
(式6)
総 株 式 発 行 残 高 、Eは 既 存 株 式 発 行 数 を 表 す 。っ ま り、 、Pθ(ES-E)は
新 規 株 式 発 行 の 際 に 生 じ る 費 用 で あ る と い え る 。ま た 、L4は 社 債 の 総 借 入 残 高 を 表 す 。
つ ま り、 ガ ーZは 社 債 を 新 規 発 行 し た 際 に 企 業 に 生 じる 費 用 を表 して い る 。
こ の モ デ ル で は 、証 券 会 社 や 証 券 取 引 所 も 主 体 に含 め て い る の で 、企 業 が 新 規 に株 式
や 社 債 を発 行 す る 場 合 に は 、そ れ に伴 い コ ス トδ が 発 生 す る と仮 定 す る 。そ の 式 は 以 下
の よ う にな る 。
δ ・=δ(Es,L4,ア,ε)
δ8、>0,
δレ>0,
(式7)
δ1<0,
δ,<0
下の条件式 はδの変数が変化す る とδが どう変化す るか を表 してい る。株式発 行ESや
社債残高 ガ が増加す る と、証券 会社 への手数料等 の費用 を生 じさせ る25。現行利潤率r
や将 来期待 θが増加す る と企業 がス ムーズ に市場 か ら資金調 達 を発 生す る と考 え られ
るので、ここで はそ れ らが増加す る とコス トが減少す る と考 える。
最後 に企業 の費用 関数 を設定す る。これ までの想 定か ら企 業が資本の調達 を行 う際の
費用 は以下の ように表す ことがで きる。
C=(1一
乃)(濫
一i-IL)(ES-E)+δ(E・,L・,ろ
θ)+(gES+9矛)+{i+ρ(Z)}(ガ
ーZ)
(式8)
右 辺 第 、項 は 、C=(1上
の(zPK-i-1五)が
株 主 一 人 当 た りの 配 当 金 を示 し てv・る こ とか
25こ れ にっ い て は 、 証 券 会 社 お よ び証 券 取 引 所 の 関 数 を設 定 す る際 に後 述 す る。
19
E
ら、新 規発行株式発行 による配当総 額の増 加分 を表 してい る といえる。第3項 は、上場
企業が企業 に支払 う上場関係収入 を表す26。この費用関数が式6の 予算制約の下で最小
化 されるよ うに企業 はESと ガ を選択す る。なお、この最適化問題 はステ ツプ2に おい
て述べ る。
(2)投
資家の関数構 築27(ステ ツプ1)
ここでは投資 家の関数 を設定す る。家計 は富 〃 を社 債、株式 またはその資産 に投 資
す る もの とす る。家計が証券 に投資す る際 には、証券会社 に対 し手数料 とい う形で情報
提供料28を支払 うもの とす る。 したが って家計 の資産制約式 は以下の よ うに表せ る。
研=ガ+PθES+ガ(ノ)+v(ノ)
(式9)
4項 目のv(ノ)は証券 会社 に支払 う情報手 数料 を表す。ノは証券取引所が提供 している情
報や証券 取引所の シス テムを表す変数で ある(以降 、ノを単 に情報 と呼ぶ)。つ ま り、証
券 取引所 のシステムや情 報の質が充実 され た ら、手数料 は増 加す る もの と考 える29。3
項 目はその他 の資産への投資額 を表す。投資家 は証券市場が 自分 に とって魅力 的 と感 じ
られない場合 、つ ま り証券 取引所 の システ ムや情報が充実 してい ない場合 は証券以外の
もの に投資 す る もの と仮定す る。 この ような背景 か らガ(ノ)はノに対 す る減少 関数、つ
ま り璽
く 。で あ る と す る 。 こ こ で 、 陶
撚
要 素 の 一 部 を 研1と し て 式 、。の よ う 碇
ψ
義 する。
レ
グ=L4+PεES
(式10)
ここでは ガ は投 資家が投資す る証券 の額 を表 してい る。投資家 の各証券 の構 成率 を考
慮 する と以下 の ような式 を与 える ことがで きる。
26詳 細 は証 券 取 引所 に お け る 関数 を設 定 す る際 に述 べ る。
27投 資 家 にお け る 関 数 も、企 業 の場 合 と同様 に植 田(2006)を 参 考 に した 。
28こ の 点 に つ い て も、詳 細 は証 券 取 引所 に お け る 関 数 を設定 す る 際 に述 べ る 。
29投 資 家 は証 券 会 社 に情 報 手 数 料 を支 払 っ て い る の に 関 わ らず 、そ の 関数 の変 数 は証 券 取 引所 の行 動 に依
存 す る点 は、 証 券 会 社 に お け る 関数 を設 定 す る際 に詳 述 す る。 ま た 、情 報 手 数 料 の 関数 の詳 しい性 質 もそ
こ で述 べ る。
20
α(i,ろε,ノ)研'=L4
(式11)
(1-α)(i,ろθ,ノ)〃.=PθES
α は証 券投資 の中 に占め る社債 の割合 を表 す。 α は利子率 、現行利潤 率、将来期待 、
情報 で表 される関数であ るとする30。
(3)証
券会社 の関数構築(ス テ ップ1)
次 に証券会社 の関数 を設定 する。このモデル において、証券 会社 は①発 行 ・引受業務
② 募集 ・
分 売業務③委 託売買業務の3つ の業務 を行 うとい うことは前節 述べ た とお りで
あ る。しか し、議論 を単 純化 す るため証券会社の利 益 は企業が支払 うコス トδの一部 の
みであ る とす る。この仮定 を設 けて も、証券会社が3つ の業務 を行 うとい う仮定 には何
も影響 を与 えない。次 にその理 由 を証券 会社 の業務 それぞれ につ いて述べ る。
まず、① の発行 ・引受 業務 にっい て述べ る。発行 ・引受 業務 は前節 で述べ た とお り、
企 業の資金調達手段 である証券 が発行 され、投 資家 に売買 され るまで の過程 をサ ポー ト
す る業務で ある。つ ま り、この業務 は証券会社が企業 に対 して行 う業務 である といえ る。
それ を考慮す る と企業が支払 うコス トδの一部 は証券 会社 に配分 される必要があ る。し
か し、証券会社 は証券取引所 を通 じて売買 する際 に、証券取引所 に対 して取引参加料金
を支払わ なけれ ばな らない。この料金 は前節述べ た とお り、証券取引所の利益の 中で重
要な位 置 を占め る。つ ま り、企業 か ら支払 われ るコス トδは証券会社 と証券取引所 に分
配 され る と考 えるのが 自然で ある。なお、どの程度分 配 され るか は証券取引所 の取引参
加料 金の規定 に依存す る。
次 に、② の募集 ・分売業務 と③ の委託売買業務 について述べ る。募 集 ・分 売業務 は新
規発行証券 を外 部投 資家へ募集 し、売 り出す業務 であ り、委 託売買業務 は投 資家か ら注
文 を受 け、証券取 引所 を通 じてその売買 を成立 させ る業務 である ことは前節述べ た。こ
30植 田(2006)に お い て は これ らの変 数鯖 報 は 本稿 の オ リ ジナ ル な概 念 で あ る ため 説 明 は さ れ て い な い)に
つ い て も細 か い仮 定 が 設 け られ て い る が 、本 分 析 にお い て は議 論 の 本 質 か ら外 れ る た め、 詳 しい説 明 は省
略 す る。 詳 し くは植 田(2006)を 参照 の こ と。
21
れ らの業務 は証券会社が投資家 に対 して行 う業務 である。証券 会社 が投 資家 に対 して募
集 を し、その結果投資家が証券会社 に売買注文 をし、その売買 を証券 取引所 において成
立 させ る とい う一連の行動 を考 える と、これ ら2つ の業務 は まとめて考 えることがで き
る といえる。この一連の業務 においては、証券会社が投資家 に情報 を提供 してい ると考
える ことがで きる。投資家 は証券取引所 において直接 的に証券 の売買 を売 り出す ことが
で きな く、さらに証券会社 か ら得 られる情報 を下 に投資行動 を行 ってい ると考 え られる。
投資家が得 る情報 は証券市場 の動 向 に関す る情 報 を証券会社 か ら得 られる と考 える と、
投資家 は証券 会社 に対 して、証券 の代金 にプラス して情報料金 を証券会社 に払 うといえ
る。 しか し、証券会社 は証券取 引所 の情報 を下 に投資家 に対 し、情報 を提供 している と
考 えるこ とがで きるので、この情報提供料 は投資家か ら証券会社 を通 じて、証券取引所
に流れ る ものであ る として も自然で ある。本分析 にお いては、情報提供 に関す る証券会
社の利潤 はゼ ロ と仮 定す る と、この料金 は証券会社の利潤 には考慮す る必要が な くなる。
以上の ことを踏 まえる と証券会社の利潤 は以下の ように表す こ とが で きる。
π』(1「 ρ)δ(ES,.L4,7,θ)
(式12)
なお、 ρ は証券取引所 に対す る投資家の コス トの配分率 を表す。
(4)証
券取 引所 の関数構 築(ステ ップ1)
ス テ ップ1の 最終段 階 として、証券取引所 につ いての関数 を構築す る。前節で述べた
通 り、証券取引所 の利潤 は取引参加料金 、上場関係 収入、情報 関係収入 の3つ で成 り立
ってい ると仮定 す る。
上場関係収 入 は証券 取引所 に上場 してい る企 業が証券 取引所 に支払 う料 金であ る。こ
こでは議論 を単純化 す るため に、企業が発 行 してい る株式量や社債の発行額 に対 して上
場関係 収入は線形 的 に比例す るもの とす る。
情報関係収入 は(2)や(3)においてすで に述 べた とお り、投資家が証券会社 を通 じて証
券 取引所 に支払 う情 報関係料 金であ る。また前節で述べ た とお り、証券取引所 の コス ト
22
は 情 報 に 関 連 す る コ ス トで あ る と仮 定 す る 。
以 上 の 議 論 を 踏 ま え る と証 券 取 引 所 の 利 潤 は 以 下 の よ う に 表 す こ と が で き る 。
π=ρ(δ(ES,L`,7,θ)+(gES+9'ガ)+v(ノ)ーc(ノ)
vノ>0,cノ>0,
上 の 式 の1項
v∬<0,
目 は 取 引 参 加 料 金 、2項
(式13)
cガ>0
目 は 上 場 手 数 料 、3項
証 券 取 引 所 の コ ス トで あ る 。な お 、下 の 式 の1項
目 な ら び に2項
れ ば 情 報 提 供 料 や コ ス トが 増 加 す る こ と を 表 し て い る 。3項
報 の 量 お よ び 質 は 逓 減 す る と い う こ と を2階
目 は 情 報 提 供 料 、4項
目は
目は情 報 の料 が 増 加 す
目 は 、投 資 家 が 得 ら れ る 情
微 分 の 概 念 で 表 して お り、4項 目 は証 券 取
引 所 が 提 供 す る 情 報 の 量 お よ び 質 を増 や そ う と す れ ば 、コ ス トは 逓 増 す る こ と を2階
微
分 の 概 念 を用 い て 表 して い る 。
(5)企
業 の 費 用 最 小 化 問 題(ス テ ッ プ2)
こ こ で は 、企 業 の 費 用 関 数 で あ る 式8を
式6の
よう な資 金 調 達 の 制 約 の 下 で 最小 化 す
る。
C-(1ー
の(zPK-'-1」
乙)(ES-E)+δ(ES,ガ,7,θ)+(gE・+91五
・)+{i+ρ(Z)}(L・-Z)E
(式8)(再
P1(r,θ,i,L)=戻
乃PK-i.、
Z)+Pθ(ES-E)+(が
一Z)
(式6)(再
掲)
掲)
こ れ は ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法 を 用 い て 解 く。 ま ず 、 こ の 場 合 の ラ グ ラ ン ジ ュ 関 数 は
以 下 の よ うに な る。
五=(1一
乃)(z月(-i-1L)(E・-E)+δ(E・,ガ,r,θ)+(gE・+9'め+{i+ρ(Z)}(L・-Z)
E
+λ{・P1(7,θ,i,五)一
乃硬K-i-IZ)-Pθ(ES-E)一(L叱Z)}
(式14)
23
こ の 式 の1階
条 件 は 以 下 の よ う にな る。 λは ラ グ ラ ン ジ ュ乗 数 を表 す 。
轟=(1一
∂L
乃)(学 らL)+謬+9-漉=0
∂δ
-
泌=∂ ガ+9鴇
ρ(L)一
λ=0
嘉=…-z)=乃(ハPK-i-I
(式15)
L)+飽(が-E)+(ガ-z)
こ こ で 、本 分 析 に お い て モ デ ル を単 純 化 す る た め の 仮 定 を 設 け る 。企 業 は 資 金 調 達 方
法 を決 定 す る 際 に 、現 行 利 潤 率 や 株 価 、利 子 率 等 の 情 報 を 所 与 の もの と し て 、株 式 発 行
数 、お よ び 社 債 の 発 行 額 を 決 定 す る も の と す る 。っ ま り、こ の 関 数 に お い て は 、ESと
ガ
の み 変 数 扱 い で そ の 他 は 定 数 扱 い とす る 。
式15は
定 数 の 種 類 が 多 い の で3つ
の 式 そ れ ぞ れ に お い て 単 純 化 を行 う。
上 段 の 式 に お い て 、(1-乃)(濫-i-1L)+9=1と
E
お く.そ うす る と上 段 の 式 は 以 下 の よ
う に変形 で き る。
∂L
∂δ
-んPθ=0
∂ES
∂ES
中 段 の 式 に お い て 、9璽+'+ρ(L)=〃2と
(式16)
お く。 そ うす る と 中 段 の 式 は 以 下 の よ う に 変 形
で きる。
∂L
∂δ
∂L・=諺+吻 ーλ=0
下 段 の 式 に お い て 、 ・P1-乃(置PK-i
(式17)
-1 L)+・PθE+L=た
と お く。そ うす る と下 段 の 式 は 以
下 の よ う に変 形 で きる。
嘉=・⇔P融 面
式16お
よ び 式17に
∂δ
(式・8)
お け る λ を 消 去 す る と以 下 の よ う に な る 。
∂δ
1+∂E・-Pθ@+証)=0
(式19)
24
=1+
また
、 式18を
変 形 す る と 、1)θ=
ん_」乙4
と な る か ら、 こ れ を 式19に
代 入 し、 変 形 す る
ES
と以 下 の よ う に な る 。
昭s+畷+(ガ-一
(式20)に
ガーん)詮0
お い て 、 ガ ー ん 一L・ と お く 。 ま た 、 並
(式20)
一並
辺=∂
δ
であるか ら、式20
は以下の ように変形で きる。
∂δ=一 配LLL辺
ZES+ES
∂.ES
∂L'
こ の よ う な 式 の 形 式 で あ れ ば 、 式21の
(式2、)
よ う な偏 微 分 方 程 式 は 変 数 分 離 法31を 用 い て
解 くこ とが で きる。
ここで・ 沼S+ES謬=一
一
認=唄
αは定数32)とお くと・以下の よ う㈱
・
導 き出せ る。
謬 一-1+渉・ 認 … 弓
ま た 、全 微 分 の 概 念 を用 い る と 、4δ=
(式22)
∂δガ+並
ES
副 であるから、この両辺を
∂
積分
す る こ と で δ を 求 め る こ とが で き る 。全 微 分 の 式 の 両 辺 を積 分 す る と 以 下 の よ う に な る 。
δ(ES,L1)一∫(-1+評s+∫(-海+副
=-ES+α1・glES卜
な お 、C響 は 定 数 を 表 す 。 式23に
∂z
31ノ(㌦)=9(悔)の
∂z
∫(㌦)=9(瑚=α(α
醒L'+α1・glL1+C'
ガ ーん=刀
δ(Es,五)=-沼s+α1・glEsl一
(式23)
を代 入 す る と、 以 下 の よ う に な る 。
醒(L6一 ん一
・gl五4一ん1+C'
(式24)
∂z
形 の偏微 分方程式 を解 く方法の こ とを指 す・ この よ うな形の方程式の胎
∂z
は定数)とお き・ポP(嶋
∂z
可=9(刺
と表 し・それぞれ を積
分 す る こ とで 解 を求 め る こ とが で きる。詳 細 は寺 田 ・坂 田 ・曽 布 川(2000)お よ び河 村(1997)を 参 照 の こ と。
32式21の
左 辺 は 変 数ESの み の 関 数 で あ り、右 辺 は変 数 が1⊃4の み の 関数 で あ る 。これ ら2つ の 変 数 は そ
れ ぞ れ 独 立 に 自 由 に変 化 す る変 数 で あ る か ら、式21が 成 り立 つ には この 式 の 値 が どの 変 数 に もよ ら ない 定
数 に な る必 要 が あ る。 そ の ため 、 こ の よ うに定 数 を用 い て置 き換 え を行 った 。 詳 細 は川 村(1997)を 参 照 。
25
∂匹。
(6)金
融市場 の均衡(ス テ ップ3)
前節 におい て述べた とお り、金融市場 の均衡条件 とは、企業 が発行 す る社債 や株式 の
発行額 と投資家が投資す る額が等 し くなる ことである。ここで は社債 と株式 とい う2種
類 の資産 を対象 に しているので、社債市場 と株式市場 のそれぞれの均衡式 を求める。
まず 、社債市場の均 衡条件 を求め る。社債 市場の均 衡条件 とは、投 資家 による社 債の
需 要 と企業が発行す る ことに よる社債 の供給 が等 し くなる条件 であ る。 これは式10と
式11よ
り以 下の ように表せ る。
α(耳LL(ノ)-v(ノ))=ガ
(式25)
また、株式市場 の均 衡条件 も、社債市場 と同 じく株 式の需要 と供給 が等 しくなる条件で
あ る。 この条件 も社債 同様 、式10と
式11よ
り以下 の ように表せ る。
(1ーα)(研-ガ(ノ)-v(ノ))=PθES
(7)証
(式26)
券 取 引 所 の 利 潤 を 求 め る(ス テ ツ プ4)
こ れ ま で の 結 果 を 踏 ま え る と証 券 取 引 所 の 利 潤 は 以 下 の よ う に な る 。
π=1ア
δ(ES,」 乙4)+gES+9'L4+V(ノ)-C(ノ)
一(1-α)(躍-五(ノ)〒v(ノ))(-ρ1+9)+α(研-で(ノ)-v(ノ))(-配+の
」Pθ
+α1・9(1-α)(㌦(ノ)一
ゆ+α1・glα(〃
ー で(ノ)-v(ノ))-ん1+磁+・+v(ノ)一
・(ノ)
(式27)
こ こ で 、 定 数 を ま と め て-1ワ1+9=9,
一〃汁9」9'と
置 き換 え て 式27を
書 き換 え る
と以 下 の よ う に な る 。(式28)
π=
((1一 α)9+Pθ
α の(躍-L(ノ)-v(ノ))
+α109
(1-α)(〃 ㌧L串(ノ)-v(ノ)
Pθ
Pθ
+〃 沈+C'+v(ノ)-c(ノ)
26
+α1・glα(研
一・
乙(ノ)-・ レ(ノ))一 ん」
3.3統
合 後 の金 融 市 場 モ デル
(1)統
合 後 の4主
体 の 関 数 の 構 築(ス テ ッ プ5)
こ こ か ら は 異 な る 証 券 市 場 を管 轄 す る 証 券 取 引 所 が 統 合 す る 場 合 を 考 え る 。
まず は 企 業 を考 え る 。2.1で
述 べ た と お り、 企 業 は 統 合 前 と 同 じ よ う に 自分 が 属 し て
い る 市 場 に お け る 証 券 取 引 所 に の み 上 場 す る と い う こ と を 仮 定 す る 。 そ の た め 、2.2の
場 合 と ほ と ん ど 変 わ る こ と は な い 。 ま ず 、 予 算 制 約 式 は 以 下 の 通 りに な る 。
君11(㌔ θ1,i1,Z1)=乃1¢
こ の 式 は 、 統 合 前 に お け る(式6)と
君K1ーi.1」
五1)+、Pθ1(E'-El)+(4ーL1)
(式29)
ほ と ん ど変 わ っ て い な い 。 表 記 が 変 わ っ て い る の は
添 え 字 の 部 分 で あ る 。以 降 、各 主 体 が 所 属 して い る 市 場 を 市 場1と
市 場2と
の 式 は そ の 主 体 が 所 属 し て い る 市 場 の 添 え 字 を つ け る も の とす る 。 式29を
と こ れ は 、市 場1に
関 数 は(式8)の
C1=(1一
し、各 主 体
例 に挙 げ る
所 属 し て い る 企 業 の 予 算 制 約 式 で あ る と い え る 。 ま た 、企 業 の 費 用
よ う に お くこ とが で き以 下 の よ う に表 す こ と が で き る 。
乃1)(ろ
君Kl-たLIL1)(E'-El…(E',五
El
一)+(91E'+9寄)+{il+ρ(1Z)}(4ーZl)
(式30)
こ の 場 合 の 企 業 の 費 用 最 小 化 問 題 は 、2.2の 場 合 と同 じ よ う に 求 め れ ば よ い の で 、 そ の
結 果 は 以 下 の よ う に 表 せ る 。 な お 、2.2で 用 い た 様 々 な仮 定 は こ こ で も全 て 用 い る 。
δ(E',L、)=-11E-1・giEfl-醒1(4一
ん1)+α11・ 幽
一 ん11+C1'(式3・)
次 に、投資家 を考 える。統 合後のモデル において統合前のそれ と比べた変化 が著 しい
のは、証券取引所 とこれか ら扱 う投資家 であ る。投資家 に とって証券取引所 の統合は投
資行動 に大 きな影響 を与 える。市場1と 市場2の 証券取引所 が統合す る ことに よって、
市場1に
所属 してい る投資家 は、市場1の
企業 の証券 だけで な く、市場2の
27
企業の証
券 を 自 由 に 売 買 で き る よ う に な る 。 こ の モ デ ル で は 議 論 を 単 純 化 す る た め 、統 合 後 の 投
資 家 が 保 有 す る ポ ー トフ ォ リ オ は 市 場 ポ ー トフ ォ リ オ で あ る と仮 定 す る 。市 場 ポ ー トフ
ォ リ オ と は 、全 て の 証 券 を そ の 時 価 の 比 率 で 保 有 す る よ う な ポ ー トフ ォ リ オ の こ とで あ
る33。 こ れ を 統 合 後 の 投 資 家 に 当 て は め る と 、 市 場1に
場 し て い る 証 券 と市 場2に
所 属 す る 投 資 家 は 、 市 場1に
上
上 場 して い る 証 券 の 全 て を そ の 時 価 の 比 率 で 保 有 す る とい
う こ とで あ る 。 こ の よ う な 仮 定 は 少 々 強 引 に 見 え る が 、市 場 ポ ー トフ ォ リ オ の 概 念 と本
稿 の モ デ ル は あ る 程 度 の 整 合 性 が あ る と考 え ら れ る 。 市 場 ポ ー ト フ ォ リ オ の 概 念 は
CAPM(資
本 資 産 評 価 モ デ ル:Capital
概 念 で あ る 。CAPMに
Asset
Pricing
Model)34に
お い て 用 い られ て い る
お い て は 、 均 衡 状 態 に お い て は 投 資 家 の 保 有 す る ポ ー トフ ォ リ
オ は 市 場 ポ ー トフ ォ リ オ の 構 成 と等 し く な る と い う 仮 定 を お い て い る 。 ま た 、CAPM
に は2つ
の 重 要 な 前 提 が 存 在 す る 。1つ
目 は 「全 て の 投 資 家 は 、期 待 収 益 率 、 リ ス ク 資
産 、 相 関 に つ い て 同 じ予 測 を し 、 同 じ構 成 の ポ ー トフ ォ リ オ を保 有 す る 」 こ とで 、2っ
目 は 「投 資 家 の 個 々 の 意 思 決 定 は 市 場 価 格 に 影 響 を 及 ぼ さず 、各 経 済 主 体 は 単 に最 適 化
の 行 動 を と る 。 そ の た め 、 均 衡 点 に お い て は 、 証 券 に 対 す る 需 要 と供 給 は 一 致 す る 」 こ
とで あ る 。 こ れ ら2つ
の 前 提 は本 稿 の モ デ ル の 前 提 と 深 く関 わ る もの で あ る 。1つ 目 の
仮 定 は 、 本 稿 の モ デ ル に お い て 企 業 、投 資 家 、証 券 会 社 、証 券 取 引 所 とい っ た 経 済 主 体
を 、社 会 に 無 数 に 存 在 す る こ れ ら の 主 体 の 集 合 体 と して 捉 え て い る こ と と関 連 す る 。 こ
の よ う な モ デ ル を構 築 す る 際 に は 、CAPMの
こ の 前 提 を組 み 込 む こ と が 重 要 で あ る と
考 え ら れ る 。2つ 目 の 仮 定 は 、 本 稿 の モ デ ル に お け る 金 融 市 場 の 均 衡 が 同 値 な概 念 で あ
る と い え る 。 つ ま り、 本 稿 の モ デ ル とCAPMは
る 。 そ の た め 、CAPMで
相 互 に 関 連 し あ っ た 概 念 で あ る とい え
仮 定 さ れ て い る 市 場 ポ ー トフ ォ リ オ の 概 念 を 本 稿 の モ デ ル に
組 み 込 む こ と は そ こ ま で 的 外 れ な 仮 定 で は な い とい う こ とが 言 え る 。 ま た 、Jarrow他
編(1997)に
よ る と 、 市 場 ポ ー トフ ォ リ オ は 最 小 分 散 ポ ー トフ ォ リ オ で あ る 。 っ ま り、 市
33ボ ディ ・マー トン(2001)。
34こ こで は深入 りは しないがCAPMの
詳細 につ いてはボディ ・マ ー トン(2001)を参照の こ と。
28
場 ポ ー トフォ リオは一番 リス クが少 ない投 資方法 でかつ効 率的 フロ ンテ ィア上 に存在
す る。効率 フロ ンテ ィア上 に存在 す るポー トフォリオは全 て期待収益 率が等 しいか ら、
この仮定 を設 ける こ とで統合 後 に も投 資家 が効 率的 な投 資 を行 うこ とを表 す こ とが可
能 になる。
以上 の議論 を踏 まえると統合後 の投 資家の資産制約 は以下 の通 りにな る。
〃「,=〃1=研'12+42(ノ
こ こ で 用 い る ㎎ 、と は 、 市 場1と
、,ノ2)+v、2(ノ1,ノ2)
市 場2が
統 合 し た 場 合 に お い て ・ も と も と市 場1に
す る プ レ イ ヤ ー が 持 つ 資 産 を指 す 。 贋 、は 市 場1と
と も と市 場2に
㎎2=〃1,
(式32)
市 場2が
属
統 合 した場 合 に お い て 、 も
属 す る プ レ イ ヤ ー が 持 つ 資 産 を 指 す 。 璃2と 贋1に 関 し て は 明 ら か に ・
〃∼、=贋
が 成 立 す る 。 以 下 、 こ れ らの 添 え 字 は こ の よ う な 意 味 を有 す る 。
42(ノ 、,ノ
、),v、,(ノ、,ノ2)は統 合 し た 場 合 の 市 場1に
産 と、情 報 提 供 料 を 表 す 。こ れ らの2つ
属 す る投 資 家 が投 資 す るそ の他 の 資
は 各 証 券 取 引 所 の 情 報 に依 存 す る とす る 。な お 、
V12(ブ1,ブ2)につ い て は 、 証 券 取 引 所 が 統 合 し た と い う こ と を 考 慮 し て ・V12(ノ1・ノ2)と
v21(ノ、,ノ2)は等 しい 、 つ ま り両 市 場 に お い て 証 券 取 引 所 に 支 払 う情 報 提 供 料 は 等 しい も
の と仮 定 す る 。そ して 、 こ れ らの 仮 定 と先 ほ ど述 べ た 市 場 ポ ー トフ ォ リ オ の 観 点 を 加 え
る と 、 統 合 後 に お け る 市 場1に
属 す る 投 資 家 の 証 券 投 資 額 躍'12は 以 下 の よ う に 表 さ れ
る。
12=(躍 禦1+研,2)
〃η12躍'
1+〃 ■2
〃η
=(α1〃 ㌦+(1一α1)〃'1+α
、躍'2+(1一α,)略)㎎+誰
諾
繰1云
缶
一瑞
(式33)
次 に証券取引所 を考 える。これ も基本 的には統合前 と同 じであるが、情報提供 料 とコ
ス トの部分が若干異 なる。証券取引所 の利潤 の式 は以下の ように表せ る。
29
π12=ρ1τ1(4(Ef,Ll,汽,ε1)+(91EF+91'Ll)+V12(ノ1,ノ,)-C12σ1,ノ,)
寄>q窒<q笥>q守>q(ノ
ーL2)誌>q論<・
(式34)
式34は
基 本 的 に は 統 合 前 の 証 券 取 引 所 の 式(式13)に
基 づ い て い る 。な お 、v12(ノ1,ノ2)と
C12(ノ1,ノ2)は統 合 後 は 各 証 券 取 引 所 に つ い て 共 通 な コス ト と料 金 で あ る と仮 定 す る 。 ま
た 、 ∂2Vl2>q∂2Cl2<0は
砂1砂2
統 合 の 際 に 新 た に 追 加 し た 条 件 で あ る.第
、章 で 述 べ た
句11ガ2
とお り証 券 取 引 所 が 統 合 す る こ とで 、情 報 面 に お い て は 、 シ ス テ ム の 集 約 ・標 準 化 や 合
理 化 とい っ た メ リ ッ トが 存 在 す る 。新 た に 追 加 し た もの は こ れ を 考 慮 し た もの で 、統 合
し た 時 点 で 発 生 す る 条 件 で あ る 。 ま た 、 δ の 係 数 と し て τ1を導 入 し た 。 こ れ は 、 統 合 前
と 統 合 前 を比 較 す る し、市 場1の
証券 取 引 所 にお い て取 引 総 額 が 変化 す る こ と を考慮 し
た 定 数 で あ る 。 こ れ に っ い て は 証 券 取 引 所 の 利 潤 を 求 め る 際 に詳 述 す る 。
最 後 に証 券 会 社 を考 え る 。 基 本 的 な概 念 は全 く同 じで あ る 。 こ れ ま で の 議 論 と 式12
を踏 ま え る と以 下 の よ う な 式 が 求 め ら れ る 。
π'12=(1-1ワ1)τ1(4(E',L望,ろ,θ1)
(2)統
(式35)
合 後 の 証 券 取 引 所 の 利 潤 を 求 め る(ス テ ツ プ6)
まず 、統 合 後 の 社 債 市 場 に お け る均 衡 条 件 を 求 め る 。統 合 後 は 市 場1の
2の 投 資 家 の 両 方 が 市 場1の
投 資 家 も市 場
社 債 を 売 買 で き る よ う に な る の で 、 こ れ を考 慮 し て 式 を 組
み 立 て る 必 要 が あ る 。は じめ に 、市 場1の
投 資 家 が 市 場1の
社 債 につ い て投 資 した額 は
以 下 の よ う に な る。
㎎ 一V12(ノ1,ノ2)-L12
.
一V
1(ノ1)-V2(ノ2)-L1-L2
次 に 市 場2の
投 資 家 が 市 場1の
.
(式36)
社 債 を 購 入 し た 額 を 考 え る 。 そ の た め に は まず 、 市 場2
に 属 す る投 資 家 の 証 券 投 資 額 躍'21を 考 慮 し な け れ ば な ら な い 。 こ れ は 式33の
用 い れ ば 容 易 に導 き 出 す こ と が で き る 。 式36を
30
考 え方 を
導 き出 した 方 法 と全 く同 じ方 法 を使 う
α1〃7サ1×
と、市場2の 投資家 が市場1の 社債 について投 資 した額 は以下 の ように求 め られる。
媚 ×㎎+轟1経
以 上 よ り統 合 後 の 市 場1に
と式37を
撫-4
(式37)
お け る 社 債 市 場 の 均 衡 式 は 以 下 の よ う に な る 。 こ れ は 式36
足 し合 わ せ 、 式10と
垢 一傷(脳
式11を
考 慮 す る こ とで 求 め る こ とが で き る 。
一v1(ノ1))×
編 誇 締
皇緬{豊(式38)
社債市場 と同 じ要領で株式市場 の均衡式 を求 める ことがで きる。それ は以下の よ うにな
る。
嬬=一)(㎎-」
乙1-Vl(ノ1))×
署 超 ≒1診1織}畜
統 合 前 の 金 融 市 場 の 均 衡 条 件(式25、26)と
妻糞(式39)
統 合 後 の 金 融 市 場 の 均 衡 条 件(式38、39)
を 比 較 す る と 、 統 合 前 後 の 取 引 量 の 変 化 、 す な わ ち τ1は以 下 の 式 に な る とい え る 。
τ1』
呪
㎎+〃
一2v・2(ノ1・
ノ・)ーLl2≠ ・
∼
∼-Vl(ノ1)-V、(ノ
(式4・)
、)一五1一 五、
よ っ て こ れ ま で の 議 論 を 踏 ま え る と統 合 後 の 証 券 取 引 所 の 利 潤 は 以 下 の よ う に な る 。
π12=
〃1+贋
㎎+贋
一2v12(ノ1,ノ2)ー ・
乙12-」乙2童(㎎-L1(ノ1)-v1(ノ1))((1-α)9+Pθ
一V1(ノ1)-V、(ノ 、)-L1-L、
*
一g評
際
轟1う
-91α1(璃-1}T(ノ1)-v、(ノ
3.4統
α9「1)
Pθ
零
ホ
鴇+αbg(1-α1)(㎎ 差(ゐ一)
、…ll+帆+C1冠,(ノ1・
ノ・)-c12(ノ1・
(式41)
ノ・)
合 前 後 の証 券 取 引 所 の利 潤 の比 較
こ の 節 で は ス テ ッ プ7の
段 階 を 述 べ る 。ス テ ツ プ7に
お い て 統 合 前 後 の 証券 取 引所 の
利 潤 を比 較 し 、統 合 後 の 証 券 取 引 所 の 利 潤 が 高 く な る 条 件 、つ ま り統 合 の イ ン セ ン テ ィ
ブ が 働 く条 件 を導 き 出 す 。
ま ず 、統 合 後 と統 合 前 に つ い て 証 券 取 引 所 の 利 潤 の 差 を と る 。41式
と以 下 の よ う にな る 。
31
か ら28式
を引 く
v1(ノ1)+v2(ノ2)+」
π12一π1=
乙1+」 乙2-2vl2(ノ1,ノ2)一
璃+贋
+2αlo9
・
乙12-」 乙21
一Vl(ノ1)ーV、(ノ
、)-4-4
恥%ー2v12(ノ1・
ノ・)-L12≡
㎎
五・
』
+〃 ∼-Vl(ノ1)-V2(ノ 、)-L1一 五2
(式42)
+(Vl2(ノ1,ノ、)-C12(ノ1,ノ2))一(V1(ノ,)-Cl(ノ1))
式42が
正 に な っ た と き に 市 場1の
に は 、v,cと
証 券 取 引 所 は統 合 の イ ンセ ンテ ィ ブ を持 つ 。 この式
い っ た 抽 象 的 な 関 数 が 存 在 す る た め 、 単 純 に 式42を
計 算 す る こ とは非 常
に 困 難 で あ る 。 よ っ て 本 稿 で は 、 モ デ ル を 単 純 化 す る た め に 式42が
な 条 件(十 分 条 件)の み 考 察 す る 。 最 も単 純 な 条 件 は1項
目 、2項
正 に な る 最 も単 純
目 、3項
目が全 て正 に
なれ ば よい 。本 稿 で は この 条件 の み考 察 す る。
単 純 な 条 件 を 満 た す に は 以 下 の3つ
の 条 件 を満 た せ ば よ い 。
v1(.ノ1)+v2(ノ2)+Ll+」 乙2-2v12(ノ1,ノ2)-L12-L21>0
α>0
(式43)
(Vl2(ノ1,ノ2)-Cl2(ノ1,ノ2))-(Vl(ノ1)-Cl(ノ1))>0
まず 上段 の 条件 か ら考 察 す る。 上段 の 条 件 は以 下 の よ うに変 形 で きる。
v1(ノ1)+v2(ノ2)+Ll+4>2v12(ノ1,ノ2)+42+Ll
こ の 式 に お い て 、Vl(ノ1)+v2(ノ2),
和 を 表 し、4+瑞,Ll2+L茎1は
1
(式44)
2v12(ノ1,ノ2)は統 合 前 後 の 市 場 全 体 の 情 報 手 数 料 の
統 合 前 後 の市 場 全 体 の そ の他 の 資 産 へ の投 資 量 を表 す 。
次 に 下 段 お よ び 、 中段 の 条 件 を 考 察 す る 。 上 段 の 条 件 は 以 下 の よ う に 変 形 で き る 。
v12(ノ1,ノ2)-c12(ノ1,ブ2)>v1(ノ1)-c1(ノ1)
(式45)
下段 の 式 にお い て 、
vc=v12(ノ1,ノ2)-Cl2(ノ1,ノ2)
(式46)
とお く。 こ れ を ノ1にっ い て 偏 微 分 す る と以 下 の よ う な 結 果 に な る 。
寄1=寄-寄 ◇q誉
一守-守
く9諾
誌-舞
く・
(式47)
32
こ の 式 は 、 式34を
用 い れ ば 符 号 の 判 定 力・で き る 。 し か し、 並
は正 負 両 方 考 え る こ と
砂1
がで きるので、 それが正 の ときと負 の ときで分 けて考 える。
∂γc
-が
1
とき
正 の と きは証券取 引所の 限界 コス トが低 い と きと考 え るこ とがで きる。 この 砂
vcは 増加関数で ある。 しか し、統合 の効 果(
∂2vc
<0)に
よ
1∼
ガ2
り増加割 合が高い と考 え られる、つ ま り正 であれ ば下段 の条件 を満 たす と解釈で きる。
並
が 負 の と き は 、vCは
減 少 関 数 で あ り、 か つ 統 合 の 効 果 よ り、 vCは 右 辺 の 関 数 よ
の1
り減少割合 が高い と考 え られ る。つ ま り、負 であれば下段 の条件 を満た しに くい。
。 詔S+ES
∂δ
=一
〃3LL刀
一=α>0よ
り、以下 の条件
が導 き出せ る。
∂δ
∂δ
諺 〉¢ ∂ES>0
(式48)
3.5イ ンプリケーション
以上 の ような分析 は、各証券取 引所 が どの ような場合 に再編 ・統合 を決定す るか とい
う点 にお いて非常 に重 要な示唆 を与 えてい る。
式43が
成 り立 てば、証券取引所 は再編 ・
統合 を選択 す るが、その条件式 におい ては ㎎
や 贋 が存在 しない。 ㎎ や 贋 は各市場 におけ る投資家 の総資産 規模 である。総資産規
模 は証券売買 の規模 とその他 の資産 の規模 を足 し合 わせた ものであ る。つ ま り、ここか
ら分か る重要 なこ とは、各証券市場 の規模 の大小 は統 合の判断材料 には入 らない とい う
こ とであ る。
式43の
上 段 の 式(式44)に お け るv1(ノ1)+v2(ノ2)+4+4は
統 合 前 の 市 場1と
お け る 証 券 取 引 額 以 外 の 取 引 額 の 合 計 で あ る 。2Vl2(ノ1,ノ2)+42+L三1は
と市場2に
市 場2に
統 合 後 の 市 場1
おける、証券取引額以外 の取 引額 の合計 であ る。この条件 は統合 前の証券取
33
∂δ
引 額 以 外 の 取 引 額 の 合 計 は 統 合 後 よ り多 い こ と を意 味 す る 。つ ま り、 こ こ か ら 分 か る こ
と は 、統 合 後 に お い て 証 券 取 引 額 が 統 合 前 よ り多 くな る と予 想 さ れ る とい う こ とが 、統
合 を 決 断 す る上 で 必 要 な 条 件 の1つ
式43の
中 段 の 式(式48)か
で あ る とい う こ と で あ る 。
ら い え る こ と は 、 δ つ ま り取 引 参 加 料 金 が 株 式 発 行 数 や 社
債 発 行 額 の 増 加 関 数 で あ る と い う こ と で あ る 。こ れ は 式7に
お い て用 い た仮 定 が 妥 当 で
あ る と い う こ と を支 持 した 内 容 で あ る 。
式43の
下 段 の 式(式45)に
お け るv12(ノ1,ノ2)ーc12(ノ1,ノ2)は
統 合 後 にお け る証券 取 引所
の 情 報 や シ ス テ ム に 関 す る 利 益 を表 し、V1(ノ1)-Cl(ノ1)は 統 合 前 の 証 券 取 引 所 の 情 報 や
シス テ ム に 関 す る利 益 を表 す
∂vc
。前 節 で 導 い た 内 容 は 一
が 正 で あ る こ と 、 つ ま り情 報
1
や シ ス テ ム に 関 す る 限 界 収 入 が 、そ れ に 関 す る 限 界 コ ス トよ り高 い こ とが 統 合 に 必 要 な
条 件 で あ る と い う こ とで あ る 。 した が っ て 、統 合 す る こ とで 、 限 界 コ ス トが 減 る とい う
内 容 の 効 率 化 が 進 ま な い と 統 合 へ の イ ン セ ン テ ィ ブ が 生 ま れ な い こ と を 示 して い る 。
本稿 の分析 の結 果 、制 度 的 制 約 が 存 在 しな け れ ば 、証 券 取 引 所 の統 合 が 進 む こ とが モ
デル に よ っ て証 明 で きた とい え る。 なぜ な らモ デ ル で 導 い た 統合 を選 ぶ た め の 条 件 は 、
効 率 化 に よ って ほ と ん どが 達 成 で き るか らで あ る。
事 実1998年
の ユ ー ロ導 入 に よっ て急 速 に欧 州 圏 にお け る証 券 取 引 所 の 統 合 が 進 ん だ
事 実 も こ の 理 論 に 指 示 さ れ る 。グ ロ ー バ ル 市 場 の 統 合 が 進 む に つ れ て 制 度 が 後 追 い とい
う形 で 改 変 さ れ る こ と もあ る だ ろ う 。
34
第4章
結 論 と残 され た研 究課 題
4.1結 論
本稿 における理論分析 で得 られた結果をまとめると以下の通 りになる。
①
証券取引所 の利 潤最大化 とい う観点 か ら見 れば、統合 に関 して、お互いの証券市場
の規模 は、統合の是非 に影響 を及 ぼ さない。
②
以下3つ の条件 を満 たす場 合 に証券 取引所 は統 合の イ ンセ ンティブを持 つ。
(a)統
合 する こ とで双 方の市場 にお ける証券取 引額 の和(統合 後 にお ける双 方の市場
の規模 の和)が 、統合前 と比べ 増 えると予想 され る場合。
(b)証
券 取引所 にお け る情報 や システ ム体系 の限界費用 が情 報関係収 入の 限界 収入
よ り低い場 合。
(c)証 券会社 か ら得 る取 引参加料 金が株式発 行数や社債発行額の増加関数であ る場合。
前 節 で は 触 れ な か っ た が 、② に お け る3つ
の 条 件 は 必 ず し も3つ
全 て を満 た さ なけ れ
ば な ら な い とい う わ け で は な い 。(c)の 条 件 は 現 実 的 に 考 え れ ば 必 須 条 件 で あ る が 、(a)
か(b)の ど ち ら か が 満 た さ れ な くて も、 そ れ を補 う程 度 に ど ち ら か の 要 因 が 満 た さ れ れ
ば 、 そ の 場 合 も証 券 取 引 所 は 統 合 の イ ン セ ン テ ィ ブ を持 つ 。
4.2残
され た研 究 課 題
最 後 に 残 さ れ た 研 究 課 題 を 述 べ る 。 まず 、本 稿 に お け る 理 論 分 析 以 外 で の 課 題 を述 べ
る 。 そ の 後 、 理 論 分 析 に お け る 研 究 課 題 を述 べ 、 最 後 に 今 後 の 研 究 の 展 望 を 述 べ る 。
本 稿 に お け る 理 論 部 分 以 外 で の こ れ か らの 研 究 課 題 は 以 下2点
る 視 点 と し て 考 え ら れ る の は1.現
やPTS(私
あ る 。本 稿 に 欠 け て い
在 急 速 に プ レゼ ン ス を増 して い る金 融 派 生 商 品 市 場
設 取 引 シ ス テ ム:Proprietary
Trading
System)に
戦 略 的 視 点 か ら証 券 取 引 所 の 今 後 を 考 え る 必 要 な どで あ る 。
35
つ い て 扱 う必 要 性 、2.
理 論 面 に お け る研 究 課 題 は4点
あ る 。1点 目 は 、 再 編 ・統 合 の 障 壁 で あ る と考 え ら れ
る 税 制 や 会 計 基 準 の 違 い を分 析 に 含 め る こ とで あ る 。現 実 の 証 券 取 引 所 の 統 合 に お い て 、
こ れ ら の 違 い が 統 合 に対 す る 障 壁 に な る こ とが し ば しば あ る。 こ れ ら は 企 業 に 直 接 影 響 す
る 内 容 で あ る か ら 、こ れ ら を考 慮 す る に は 企 業 に お け る 関 数 か ら再 検 討 す る 必 要 が あ る 。
2点 目 は 、本 稿 の モ デ ル に お い て 統 合 す る 条 件 を や や 単 純 化 し て い る と い う こ と で あ
る 。 式42を
さ ら に 詳 し く検 討 す る こ とで さ ら な る イ ン プ リ ケ ー シ ョ ン が 得 ら れ る こ と
も充 分 考 え ら れ る 。
3点 目 は 、 再 編 ・統 合 の 形 態 を極 め て 限 定 的 に扱 っ た と い う こ と で あ る 。 今 後 の 課 題
と して は 、統 合 す る こ と に よ っ て 企 業 が お 互 い の 証 券 取 引 所 に 上 場 で き る よ う に な る ケ
ー ス が挙 げ られ る
。
4点 目 は 、本 稿 の モ デ ル は よ り単 純 化 す る こ と に よ っ て 、 ほ ぼ 同 様 の 結 論 が 得 ら れ る
可 能 性 が あ る とい う こ と で あ る 。本 稿 は 理 論 分 析 とい う ア プ ロ ー チ を 取 っ て い る 。 こ れ
は 「特 定 の 社 会 事 象 に 対 して 特 定 の 理 論 を 当 て は め る こ と に よ っ て 、事 象 の 単 純 理 解 を
図 り、 何 ら か の 政 策 的 示 唆 を得 よ う と す る ア プ ロ ー チ 」35で あ る 。 こ の 手 法 の 短 所 と し
て 、 数 理 的 な 処 理 に 特 化 し て し ま う 可 能 性 が あ る と い う こ とが あ る36。 本 稿 の 分 析 は 、
理 論 分 析 の 短 所 が 表 れ て い る 可 能 性 が あ る 。数 理 的 な 処 理 に 特 化 し な い よ う な 理 論 の 構
築 が 今 後 の 課 題 に な る。
最 後 に 、今 後 の 研 究 の 展 望 を 述 べ る 。本 稿 の 理 論 分 析 を単 純 化 し 、 か つ 深 み を与 え る
こ とで さ ら に 多 くの イ ン プ リケ ー シ ョ ンが 得 ら れ る と考 え る 。例 え ば 、証 券 市 場 の2つ
の 側 面(発 券 市 場 と流 通 市 場)を 別 々 に 扱 う と い う ア プ ロ ー チ が 考 え ら れ る 。 こ れ に よ り、
変 数 が 単 純 化 さ れ 、ゲ ー ム 理 論 や 契 約 理 論 な ど の 理 論 を 導 入 す る 余 地 が 現 れ る 。 こ れ ら
を 導 入 す る こ とで 本 稿 の 分 析 に さ ら な る 深 み が 付 加 さ れ る で あ ろ う。
以上
35千 野(2006)。
36千 野(2006)。
36
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[6】 大 阪 証 券 取 引 所http:〃www.ose.oLjp1
[7】 世 界 証 券 取 引 所 連 合http:〃www.world-exchanges.org1
38
Report。
岡部研 究会優秀 論文一覧
■次の論文は、研究 会優秀論文 と して認め られ、湘南藤沢学会か ら出版 さ れ た もので ある。
■ 各 論 文 は 、 メ デ ィ ア セ ン タ ー2階
の指 定 図書 棚 に
「岡 部 研 究 会 優 秀 論 文 」 と し て フ ァ イ ル
さ れ て い る 。 ま た 、 す べ て の 論 文 は イ ン タ ー ネ ッ ト上 で も 閲 覧 お よ び 全 文PDFフ
ウ ン ロ ー ドが 可 能 で あ る 。 〈http://web.sfc.ke
k).ac jp/∼okabe/pape
r/〉
■ こ れ ら の 論 文 は 、 岡 部 光 明 編 『金 融 お よ び 日本 経 済 の 研 究 』 第1巻(1994∼1996年
第2巻(1997∼1998年
2003年
2006年
度)、
度)、
第6巻(2004年
第3巻(1999年
度)と
度)、
第4巻(2000年
し て 刊 行 さ れ て い る(メ
ァイ ル の ダ
度)、
度)、
第5巻(2002∼
デ ィ ア セ ン タ ー 蔵 書)。
度秋学期
・証 券 取 引 所 の 国 際 的 再 編 ・
統 合 に 関 す る 理 論 分 析--ー-----
塚 越 博 基 ・小 林 龍-一良
・少子 高齢化社会 の基本 問題 に関す る研 究
一 出生率低下 および国民健康保険運営一 一
・次 世 代 に 配 慮 し た 金 融 商 品
一一
「
お 年 玉 フ ァ ン ド」 の 開 発
一 社 会 的 必 要 投 資 と い う 新 た な 概 念 の 提 案 一[特 別 推 薦 論 文]ー---風
2006年
山本 巧 ・黒須 隆寿
岡 宏 樹 ・梶 田 幸 作
度 春 学期
・金 融 商 品 取 引 法 お よ び 診 療 報 酬 決 定 に 関 す る ミ ク ロ
経 済 学 的 分 析-法
律 お よ び 政 治 プ ロ セ ス の 構 造 解 明---ー-一-ー
永 井 裕 二 ・塚 越 博 基
・市場機能活用 と市場構造理解 の新たな試み
一 スポーツ選 手の証券化お よび人工市場 を用 いた株価理解一-一
2005年
一木上貴史 ・風 岡宏樹
度秋学期
・金 融 イ ン フ ラ ス ト ラ ク チ ャ ー に 関 す る 理 論 分 析
一 プ ラ ッ トフ ォー ム とそ の 効 率 性 評 価一 一 一 一
藤原史義 ・千野剛 司
・近 年 に お け る 日本 の 金 融 政 策 と そ の 評 価
ー ゼ ロ金 利 な らび に量 的 緩 和 政 策一 一
一一
(1)
田中竜二郎 ・加藤祐子
2004年
度秋学期
・ 日 本 の 金 融 シ ス テ ム は ど う 変 質 し つ つ あ る か?-メ
な ら び に 市 場 型 間 接 金 融 の 実 証 的 検 討---一
イ ンバ ン ク制
一----一-一
一
藤井
恵 ・光 安 孝 将
・協 同 組 合 組 織 の あ り 方 に 関 す る 契 約 理 論 的 分 析 一 農 業 協 同 組 合 σA)
を 対 象 に し て--一-一
2004年
一----一
一---一
一 一 一-一
一
律 論 ・ゲ ー ム 理 論 ・契 約 理 論 の 視 点 か ら 一 千 野 剛 司
・日本 企 業 お よ び 公 共 投 資 の 効 率 性 に 関 す る 実 証 分 析-一-一---
イ ン セ ン テ ィ ブ の 視 点 か ら の 理 論 的 分 析-一
ス ク ・ガ バ ナ ン ス ・
一 一 ー-一
・ 日 本 企 業 の ガ バ ナ ン ス 構 造 と 企 業 パ フ ォ ー マ ン ス:株
雇 用 調 整 に 関 す る 実 証 研 究 一 一--ー
・ 一 一-・
式持合 および
一--一
一 一.-藤
恵 ・杉 山 貴 昭
一--一-.一-
類 学 的 下 部 構 造 か ら み た 生 産 と 消 費--一-一
藤井
一
恵
遠藤倫生
度秋学期
・金 融 制 度 と経 済 発 展:多
国 デ ー タ に 基 づ く実 証 研 究-一-一
・情 報 技 術 革 新 の 経 済 効 果:先
一一一一
ー-一
行 研 究 の 展 望 と実 証 分 析 ー 一 一 ー 一 一
鈴木卓実
加 藤 卓 也 ・赤 野 滋 友
度春学期
・企 業 債 務 と 設 備 投 資:デ
・保 育 制 度 と 女 性 の 就 業:児
2000年
井
度春学期
・ 日 本 資 本 主 義 の 地 域 構 造:人
2002年
光安孝将
一 ー-ー-
・日 本 企 業 の 資 金 調 達 と コ ー ポ レ ー ト ・ガ バ ナ ン ス----一
2002年
杉 山 貴 昭 ・村 上 淳 也
度秋学期
・企 業 の 資 金 調 達 に お け る 転 換 社 債 の 意 義:リ
2003年
一 一千 野 剛 司
度春学 期
・職 務 発 明 制 度 に 関 す る 理 論 分 析:法
2003年
-一
ッ トオ ー バ ー ハ ン グ 効 果 の 実 証 分 析 ー 一--一-一
童 福 祉 政 策 の あ り 方 一--一
一 ー 一-一--一
一
倉重雅一
ー一
福元千佳
度 秋学期
・銀 行 の 合 併 は 経 営 の 効 率 性 と安 全 性 を 高 め る か?一
(2)
ー-一-一
一-
山 口 陽 平 ・嶋
頼彦
・銀 行 の 経 営 資 源 と そ の 役 割 に 関 す る 研 究-一
・排 出 許 可 証 の 価 格 形 成 に 関 す る 確 率 解 析[特
2000年
一--一
一一
山 本(島
別 掲 載 論 文]----一
元)洋
輔
一-一
・大 井 暁 道
一
堀 田朋 也
度 春学期
・技 術 進 歩 の 要 因 と 影 響 に 関 す る 実 証 研 究-一-一-ー
一
青柳 直樹
・ 日 韓 自 由 貿 易 圏 形 成 に 伴 う 経 済 効 果 の 実 証 分 析 ー--一
1999年
一
・永 井 秀 児 ・堀 田 朋 也
ー-
北 川 英 弘 ・松 村 音 彦
度秋学期
・判 別 分 析 の 手 法 に よ る 銀 行 の 健 全 性 評 価 一----一----一
・設 備 投 資 の 決 定 要 因 に つ い て の 実 証 分 析:資
関係の影響 一
1999年
一 一-一----一
一 一--
産 価 格 変 動 と メイ ンバ ン ク
一 一-ー-一---一--一
一
と 銀 行 リ ス ク ー--一--ー
ー-一
一
ー ポ レ ー トガ バ ナ ン ス
一
一一一一一
一
一-一
・東 ア ジ ア の 高 成 長 の 源 泉 に 関 す る 実 証 的 再 検 討---ー--一-一
浜 田 紘 子 ・嶋
一-一
一一
頼彦
堀 田朋 也
度秋学 期
・通 貨 危 機 発 生 の 予 測 可 能 性 お よ び 予 防 可 能 性 に 関 す る 考 察:東
通 貨 危 機 の教 訓 と課 題
アジア
一--ー--ー--一--ー---ー-一
・情 報 化 投 資 は 日 本 経 済 の 成 長 力 を ど う 変 え た か:日
1998年
大 井 暁 道 ・山 本 洋 輔
度春学期
・市 場 規 律 の 強 ま り の 影 響 に 関 す る 研 究:コ
1998年
廣 田 雄-一
一
一 一 一-岡
米 比 較 を含 む実 証分 析 一
部貴士
都澤総 明
度春 学期
・情 報 技 術 革 新 お よ び 取 引 グ ロ ー バ ル 化 の 中 で の 銀 行 経 営
お よ び 国 際 通 貨 一 一一
・ 一 一--一-ー
一-一
一
箱 田 雅 之 ・中 西 健 一 郎 ・都 澤 総 明
・貯 蓄 の 世 代 間 移 転 お よ び 国 際 的 移 転 に 関 す る 研 究---一-一-一
1997年
岡 部 貴 士 ・堀 田 朋 也
度春学 期
・ネ ッ ト ワ ー ク 化 と 金 融 サ ー ビ ス 産 業 の 形 成 一 一 一 一 一 一--一---鷹
(3)
岡 澄 子 ・堤
千絵
・高 齢 化 に よ る 貯 蓄 率 の 低 下 予 想 と 政 策 課 題-ー
1996年
一-ー
ー-一
ー---ー
一 一 一
前 側 文 仁
度秋学期
・情 報 技 術 革 新 に よ る 銀 行 の 顧 客 サ ー ビ ス の 多 様 化 ・対 顧 客
ネ ッ ト ワ ー ク サ ー ビ ス ー--ー
一-ー
一 一-一
・ク レ ジ ッ ト カ ー ド を 応 用 し た 電 子 決 済 一
・ベ ン チ ャ ー 企 業 の 育 成 に つ い て:そ
1996年
鷹岡澄子
一 一-ー
ー-一---一
堤
一 ー--一---
千絵
桑原真盾
の 意 義 と 環 境 整 備 の た め の 課 題 課 題--一
度春学期
・ 「電 子 マ ネ ー 」 の 現 状 と 課 題:ネ
の 比 較 を 中 心 に ー-一
ッ トワ ー ク 上 に お け る 各 種 決 済 方 法
一--一
ー-一
・日 本 経 済 の 成 長 力 は 低 下 し た か:経
1995年
一---一--一
一-一
一--一
一 ー-一
一 一-ー
済 成 長 の 要 因 分 解 と 若 干 の 展 望-一
鷹 岡澄 子
一--
隅田和人
度 秋 学 期
・金 融 業 の 変 革 に つ い て
ー 一 一---一
・求 め ら れ る 銀 行 の 経 営 革 新
一--一
一 一 ー ー-一
ー ー.ー
一---一
一 一----一
・東 ア ジ ア に お け る 企 業 機 能 分 業 型 直 接 投 資--一
in North
1995年
of
America
the
since
Japanese
the
Foreign
Late
一-一
Direct
一--一
一
一-一---.--一
齋 藤 圭 介
駒 沢
毅
冨 田
賢
織 田 崇 信
Investment
1980s--ー---一
一 一-一
ー-Norikazu
Tawara
度 春 学 期
・情 報 技 術 革 新 は 金 融 に 何 を も た ら し た か?--一---一
・内 外 価 格 差 に つ い て の 考 察
1994年
一 ー
ー 一-ー--一----
・ 日 本 に お け る ベ ン チ ャ ー 企 業 の 育 成 に つ い て-一
・Determination
一 一-ー-一
ー---一
一-一
一 一--一-一
一 一--一
渡 邉 秀 文
一 一 一--.-一--ー
桑 田
昇
度秋学期
・円 高 下 の 産 業 構 造 調 整.--一
一
・金 融 政 策 に お け る 中 間 目標 に つ い て
--一
一
一
一-一--一
(4)
ー
一
一
一
一------一
ー
一-一
一
一-一
一-一-
津
田
知
佳
斉
藤
圭
介
1994年
度 春 学 期
・資 産 価 格 の 変 動 と 物 価 の 安 定
一-一-一-一--一
*
一
*
(5)
*
一-一
一--一--一
斉藤圭介
初版発行
塚越博基、小林龍一良
岡部光明
慶応義塾
大学 湘南藤沢学会
〒252-081
6
神奈川
県藤沢市遠藤5322
印刷・
製本
発
監修
著者
2007年3月30日
証券取引所の国際的再編・統合に関する理論分析
Printed
TEL:0466-49-3437
SFC-SWP
ワキプリントピア
in
2006-A-002
Japan
\
●本 論 文 は 研 究 プ ロジ ェクト にお いて優 秀 と 認 め ら れ 、出 版 さ れ たも の で す 。