集落営農組織の法人化マニュアル (Q&A)

集 落 営 農 組 織 の 法 人 化 マニュアル
(Q&A)
平成24年(201
2年)
3月
滋賀県農業再生協議会
は
じ
め
に
滋賀県では平成元年から集落営農の育成を進め、平成2
2年の集落営農数は7
9
8集落と全国1位の数
となっています。そのうち、特定農業団体など経理の一元化を実践している組織は平成2
2年度末で3
8
2
組織、経営体質の強化を図ろうと法人化している組織は8
9法人となっており、今後も集落営農組織の
法人化が注目され、現在は1
1
0法人を超える状況になっています。
また、平成2
3年3月に滋賀県が策定した「しがの農業・水産業新戦略プラン」では、集落営農組織
の経営管理や組織運営の改善のため、担い手の経営体質強化の手段として法人化を支援することとし、
平成2
7年には1
5
0法人を目標としています。
そこで、県内の集落営農組織が農業者戸別所得補償制度を活用し、今後の経営発展・経営体質強化
をめざすための手段として、集落営農組織の法人化を推進するため本冊子を作成することとしました。
法人化を目指す集落営農組織・特定農業団体のリーダーや担い手の支援機関・団体の担当者の方々に
広くご活用いただけると幸いです。
最後に、この冊子をとりまとめるにあたってご協力をいただいた滋賀県農業会議の農業経営スペシ
ャリストの中村邦男税理士、石井俊行税理士をはじめ、各農業農村振興事務所農産普及課の担当者の
みなさんや滋賀県農業再生協議会担い手育成部会の事務局の方々に深く謝意を申し上げます。
平成2
4年
(2
0
1
2年)
3月
滋賀県農業再生協議会
目
次
1.法人化制度
Q1 法人化のメリットはなにか?………………………………………………………………………1
Q2 平成2
2年1
2月に農地法が改正されたが、農業法人に関わる変更点はなにか?………………3
Q3 農業生産法人か農業生産法人以外の法人か、どちらを選択すべきか?………………………4
Q4 特定農業団体を法人化したが、特定農用地利用規程の変更は必要か?………………………5
Q5 特定農業団体が法人化したが、特定農用地利用規程を変更しなかった場合、法人化
した特定農業団体は「特定農業法人」とはならないのか?……………………………………6
Q6 「特定農業法人」はどのような制度か? …………………………………………………………7
Q7 法人の形態(農事組合法人、
株式会社)の選択の留意点(メリット・デメリット)は?………8
Q8 麦・大豆しか協業経営していないが、法人化することは可能か?また、事例はあるか?………9
Q9 農地を全て法人に預けた場合、農業委員の選挙権等はどうなるのか?また、その他
に影響はあるか?……………………………………………………………………………………1
0
Q1
0 「構成員」
「組合員」
「従事者」等の意味の違いは? ……………………………………………1
1
Q1
1 今後経営の多角化を考える場合、農業生産法人の要件としての関連事業とは?……………1
2
2.法人設立
Q1
2 現状組織の規約を反映できるように、定款は自由に変更できるのか?………………………1
3
Q1
3 資本金(出資金)額はどの程度がよいか?………………………………………………………1
4
Q1
4 事業年度は何月から何月までがよいか。また、水稲・麦・大豆主体の法人組織の場
合、設立月日はいつが望ましいか?………………………………………………………………1
5
Q1
5 法人設立の手続きはどうすればよいか。また、法人化後に毎年届けや報告をしなけ
ればならないことは何か?…………………………………………………………………………1
6
Q1
6 法人化にかかる費用はどれくらいか?……………………………………………………………2
1
Q1
7 組合員の条件とは?…………………………………………………………………………………2
2
Q1
8 構成員以外の農地を引き受けることはできるのか?従事分量配当の対象になるのか? ………2
3
Q1
9 組合員の労賃の支払い方法と組合員以外が出役した場合の労賃の支払い方法に違い
があるか?……………………………………………………………………………………………2
4
Q2
0 営農組合で保有している資産(預金、機械・施設、肥料・農薬・農産物、未収穫農産
物等)
、負債(借入金・未払い金等)の法人への引き継ぎ方法は?……………………………2
5
Q2
1 現行の集落営農組織との関係についてどのように整理すればよいか?………………………2
6
Q2
2 集落内に事務手続きに精通した人材がいない場合、どの様に設立事務を進めたら良
いのか?委託することも可能か?…………………………………………………………………2
7
3.法人運営
Q2
3 法人に全て「お任せ状態」となり組合員の協力が弱くなる事例があると聞くが、その
対応は?………………………………………………………………………………………………2
8
Q2
4 従事分量配当の考え方は?…………………………………………………………………………3
0
Q2
5 農事組合法人が今後経営難に陥った場合の対応方法、解散方法は?…………………………3
1
Q2
6 組合員として加入しても、ほとんど出役しない場合は何か問題はあるか?…………………3
2
Q2
7 将来世代交代や若手の登用を行う場合、役員(理事)の選出方法はどのように考え
ればよいか?…………………………………………………………………………………………3
3
4.会計・税務
Q2
8 任意組合と法人の税金負担の差は?………………………………………………………………3
4
Q2
9 出資金額による課税割合の違いは?………………………………………………………………3
5
Q3
0 従事分量配当は期中に仮払いし、期末に内容により単価を変更することは可能か。
また、毎年、利益余剰金しだいで単価変更することはよいか?………………………………3
6
Q3
1 組合員の家族の出役は、
従事分量配当に含む場合と賃金で払う場合の問題はあるか? ………3
7
Q3
2 従事分量配当で家族数人が配当を受けた場合、所得税の申告は個人が行うのか、家
の代表者がまとめて行うのか?……………………………………………………………………3
8
Q3
3 役員報酬の金額設定はどの様に考えたらよいか?………………………………………………3
9
Q3
4 農業経営基盤強化準備金の活用方法と手続きについて教えて。………………………………4
0
Q3
5 法人化後も組合員個人が青色申告で個人所有の機械を経費処理したいが可能か?…………4
6
5.労務管理
Q3
6 農作業事故への対応方法は?………………………………………………………………………4
7
Q3
7 オペレーターの確保方法、効率的作業を進めるための作業管理方法は?……………………4
8
Q3
8 集落外の人をオペレーターや役員にできるのか?………………………………………………4
9
6.助成制度
Q3
9 法人設立にかかる経費4
0万円を助成する事業(戸別所得補償制度)について教えて。………5
0
Q4
0 農業者戸別所得補償制度の規模拡大加算について教えて。……………………………………5
1
Q4
1 農業用機械等を導入するための経営体育成支援事業について教えて。………………………5
2
Q4
2 補助事業で導入した機械・施設などの引継手続きは、どこに相談すればよいのか?………5
3
Q4
3 適当な補助金が見あたらず、機械や施設の導入が思うように進まない。……………………5
4
法人化制度
Q1
法
人
化
制
度
法人化のメリットはなにか?
A 集落営農組織を法人化した場合、以下のメリットが考えられます。
①経理事務が軽減できる
任意組合の集落営農組織は農業者個々の集合体ですから、集落営農組織の決算書(貸借対照表・
損益計算書等)を構成員個々に分配する必要があり、分配を受けた構成員個々が所得税の申告を
行わなければなりません。一方、法人は法人の決算書を作成し、法人が法人税の申告をすれば良
いことになります(ただし、法人から労賃を受けた個人は所得税の申告は必要)
。
したがって、法人は任意組合のように決算書を構成員個々に分配する必要がなく、経理事務を
軽減できることになります。
②労災保険へ加入できる
大型機械を使うことの多い集落営農組織では、労働災害への対応が大きな課題となっています。
組合員の死亡事故や後遺症の残る事故が起こった場合、その対応には任意組合には限界があると
思われます。
任意組合の集落営農組織は農業者個々の集合体ですから、労災保険への加入は農業者個々が事
業主として「特別加入」
(特定農作業従事者・特定農業機械作業従事者)することができます。
この労災保険の種別ですと保険料は一般の労災保険より高くなり、労災の適用範囲は狭いもので
すから、集落営農組織の研修会や役員会の行き帰りでのケガなど広範囲にわたる集落営農組織の
業務に十分対応できないものです。
一方、法人の場合は組合員に賃金を支払えば、法人の業務に携わる組合員は一般企業と同様の
労災保険に加入でき、広範囲にわたる集落営農組織の業務に対応できます。
○労災保険料比較
区 分
組合員等
代表理事
加入種別
一般加入
特別加入 中小事業主等
特定農作業従
組合員等(役員含む) 特別加入
事者
保険料率
00
0
1
2/1
1
2/1
00
0
給付基礎額(注1) 労賃額(注2)
−
3,
0
00,
00
0
8,
00
0
2,
9
20,
0
00
保険料額 組合負担額(注3)
備 考
36,
000
法人として
7
1,
040
加入
35,
0
40
9/1
00
0
8,
00
0
2,
9
20,
00
0
26,
28
0
1,
0
51,
20
0 個人加入
組合員等(役員含む) 特別加入
特定農業機械
作業従事者
5/1
00
0
8,
00
0
2,
9
20,
00
0
14,
60
0
5
84,
00
0 個人加入
組合員等(役員含む) 特別加入
上 記2つ の 特
別加入(注4)
9/1
00
0
00
0
5/1
8,
00
0
2,
9
20,
00
0
40,
80
0
1,
6
32,
00
0 個人加入
(注1);給付基礎額は3,
5
0
0∼20,
0
0
0の1
3段階あるが、8,
0
00円とする
(一般組合員の日給と同程度)
。
(注2);特別加入の労賃額は給付基礎額×3
6
5日。
(注3);組合員数を4
0名
(役員含む)
とした場合。
(注4);特定農業機械作業従事者では草刈り等の業務に対応できないため、特定農作業従事者にも加入した場合。
○農事組合法人(集落営農組織)
の組合員の業務内容と労災適用範囲
業 務 内 容
担当する者
業務を行う
主な場所
想定されるリスク
経営管理業務
組合員
屋内
(事務所・ 集落の会館への行き帰
(生産・販売・労務等の管理業務)(○○部長) 会館等)
りの事故
労務管理
(出役計画・出退勤管理……)
生産活動業務
販売活動業務
(営業・配達)
販売活動業務
(精米・梱包)
組合員
屋内・外
(生産
(○○部長) 作業現場)
組合員
屋外
(圃場)
管理業務を屋外で行っ
た場合の事故
組合員
事業所外
営業先までの途上、営
業先での事故
組合員
事業所内
直売のための梱包作業
での事故
経理事務
組合員
研修活動
組合員
全て
組合員外
屋内
(事務所・ 事務所・会館への行き
会館等)
帰りの事故
組合員の研修・理事の
事業所外
講演活動等
1
労災適用
特定農作業等 一般労災
×
○
×
○
○
○
×
○
×
○
×
○
×
○
−
○
法
人
化
制
度
③対外信用力がつく
スーパーなどの企業との取引には、一般的に法人格がないと取引ができません。任意組合の集
落営農組織では企業側から法人化を求められた、という事例もあると聞きます。
県内の集落営農組織でも野菜生産などの複合化や農産物加工などの多角化の志向が高まってい
ます。こういった事業を小売業・卸売業などと連携して進める場合には、法人化により対外信用
力を高める必要があります。
④農業経営基盤強化準備金の活用が可能
集落営農組織を法人化して、認定農業者になると「農業経営基盤強化準備金」の活用が可能と
なります。この準備金制度は、農業者戸別所得補償制度などの交付金や補助金を農業経営改善計
画などに従い、農業経営基盤強化準備金として積み立てた場合、この積立額を損金に算入できる
というものです。
任意の集落営農組織では、機械等の更新のためには構成員個々の拠出によらなければなりませ
んが、この制度を活用すれば法人で積み立てた積立金によって計画的な機械更新が可能となります。
⑤経営管理能力の向上
集落営農組織を法人化することで、複式簿記が必須となります。複式簿記では単式簿記と異な
り資金の調達・運用状況までもが把握でき、経理が明確になることで、コスト意識が醸成され、
経営の効率化す進めることが可能となります。
県内でも、
「集落営農組織を法人化して、毎年決算書を見ることで、経営がわかってきた」と
言う法人の役員も多数存在します。
2
Q2
平成2
2年1
2月に農地法が改正されたが、農業法人に関わる変更点はなにか?
A 農地の貸借を進め、効率的な利用を促進するため、農地法が改正されました。農業法人に関わる
改正内容は次のとおりです。
①農業生産法人以外でも農地の借入が可能となりました。
従来の法律では、法人が農地を借りるためは「農業生産法人」の要件を満たす必要がありまし
た。今回の法改正では、農地の貸借については規制が緩和され、地域の他の農業者との適切な役
割分担の下に、農業経営を継続的・安定的に行うと見込まれる、①農作業常時従事者以外の個人、
②農業生産法人以外の法人(業務執行役員のうち1人以上の者が耕作等の事業に常時従事)も、
農地を借りることができます。ただし、この場合、借りた農地を適正に利用していない場合に貸
借を解除できる旨の条件つきの貸借契約が必要です。
農業生産法人と農業生産法人以外の法人の相違点
区
分
農地の権利移動
の要件
農業生産法人
農業生産法人以外の法人
①全部効率利用要件
②下限面積要件
③農業生産法人要件
④地域との調和要件
契約条件
−
①全部効率利用要件
②下限面積要件
④地域との調和要件
備
考
①「全部効率利用要件」
:農地のすべてを
効率的に利用して耕作の事業を行うこと
④「地域との調和要件」
:周辺の農地利用
に悪影響を与えないこと
解除条件付き契約
②農業生産法人の出資制限が緩和されました。
従来の法律では、①法人へ農作業を委託している者は、議決権の制限を受ける構成員となって
いました。また、②関連事業者の議決権を1事業者当たり1/1
0以下とする制限がありました。今
回の改正では、集落営農組織の法人化と農業への新規参入の促進のため、①農作業を委託する者
も、農地を貸している者(農地提供者)等と同等の取り扱いとなりました。また、②関連事業者
の議決権について、1事業者当たり1/1
0以下とする制限が廃止されました。ただし、総議決権の
原則1/4以下という制限は残り、農商工連携の相手方等となる事業者が構成員である場合、議決
権の合計は1/2未満が上限になります。
法改正後の農業生産法人の要件
)
法人形態要件
農事組合法人、合名会社、合資会社、合同会社
株式会社(株式譲渡制限のあるもの)
*
事業要件
農業(農産物の加工・販売、農作業受託などの
関連事業を含む。
)の売上高が過半であること。
+
構成員要件
,
!
%
%
%
農業関係者
#
%
%
%
&
!
%
%
(
%
農業関係者以外;%
#
関連事業者
%
%
(
%
%
&
業務執行役員要件
・法人が行う農業の常時従事者
・農地の権利提供者
・農業協同組合、農業協同組合連合会
・地方公共団体
・作業受託農家
・法人から物資の供給を受ける者又は法人の
事業の円滑化に寄与する者
!
(例)
%
%
%
%
&
・産直契約する個人 "
%
・食品加工業者
%
%
・生協・スーパー
%
・農産物運送業者 等'
"
%
%
%
$ 総議決権の3/4超
%
%
%
'
"
%
%
%
(
$ 総議決権の1/4以下
%!
"
%%農業生産法人と連携して事業を実施%
%%する一定の関連事業者(農商工連携%
(
事業者等)が構成員である場合には%
%%
%
%
%&議決権の合計の上限は1/2未満
'
'
当該法人が農業経営改善計画について市
町の認定を受けた場合(=認定農業者に
" なった場合)、総議決権の1/2未満
①役員の過半が農業の常時従事者(原則年間1
50日以上) %
%
である構成員であること。
$ 役員全体の過半
%"
② ①のうち過半の者が農作業に従事(原則年 %%
%$ 過半の過半
間6
0日以上)すること。
%%
''
3
法
人
化
制
度
法
人
化
制
度
Q3
農業生産法人か農業生産法人以外の法人か、どちらを選択すべきか?
A 特定農業法人制度は前のQのとおり、農地法の改正により、農地の借り入れだけで農業を行う場
合は、農業生産法人か農業生産法人以外の法人か、の選択が必要となりました。
農業生産法人で農事組合法人の場合は、農業に係る事業税が非課税となっています。集落営農組
織の法人化は農事組合法人を設立されることが多いので、農業生産法人として税制上の優遇措置を
受ける方が有利といえますから、農業生産法人を選択されることをお勧めします。
したがって、税制上の優遇措置を受けるには、農事組合法人の設立後、農地を法人で借り入れて
農業生産法人となることが必要です。
4
Q4
特定農業団体を法人化したが、特定農用地利用規程の変更は必要か?
A 特定農用地利用規程は地域ぐるみで農用地の利用改善を図る規程で、農地・作業の集積を一定の
担い手に任せていこうというものです。
したがって、特定農業団体が法人化した場合は、特定農用地利用規程を見直し・変更が必要だと
思います。
また、農用地利用規程を変更する場合は市町の認定が必要ですが、特定農業団体が特定農用地利
用規程の期間内に法人化した場合、その特定農用地利用規程を変更して法人化した特定農業団体
(特
定農業法人)として定めるときは、市町の認定が必要ないこととなっています(経営基盤強化法第
2
4条)
。
なお、手続きは以下の手順となります。
①特定農業団体が、あらかじめ農用地利用改善団体に法人化することの通知
②農用地利用改善団体が、特定農用地利用規程を変更(特定農業団体が特定農業法人となる)
特定農業団体を法人化する場合は、事前に市町に相談して下さい。
5
法
人
化
制
度
法
人
化
制
度
Q5
特定農業団体が法人化したが、特定農用地利用規程を変更しなかった場合、
法人化した特定農業団体は「特定農業法人」とはならないのか?
A 特定農業団体が法人化しても農用地利用改善団体が作成する特定農用地利用規程に位置づけられ
ていませんので特定農業法人にはなりません。
6
Q6 「特定農業法人」はどのような制度か?
また、特定農用地利用規程で、農地の預け先が規定できるが、同規定が1回の更新しかできないのはなぜか?
A.特定農業法人の制度は、地域の実情に応じ、地域の農業生産を集落全体で担う途を明確に位置づ
けることで、将来的に地域の効率的かつ安定的な農業経営へと発展させることを目的として、農業
経営基盤強化促進法により創設されたものです。
特定農業法人は、担い手不足が見込まれる地域において、その地域の農用地面積の過半
(1/2以上)
について農業上の利用を担う法人として、地域合意の下に特定農用地利用規程に明確化された農業
経営を営む法人です。
なお、特定農用地利用規程の有効期間は5年間とされていますが、特定農業法人が有効期間内に
農用地集積の目標面積を達成できない場合、有効期間を延長することが認められています。ただし、
あまりにも長期間にわたって、特定農業法人に農地の引き受け義務を負わせることは酷と考えられ
るため、延長は1回に限り認められています。
農用地面積の過半 ! 特定農業法人
7
法
人
化
制
度
法
人
化
制
度
Q7
法人の形態(農事組合法人、株式会社)の選択の留意点(メリット・デメリット)は?
A 法人の形態の違いによって、それぞれ特徴も異なります。法人の形態の特徴を十分吟味して形態
を選択することが必要です。
集落営農組織で選択されることの多い農事組合法人と一般の農業法人で使われることの多い会社
型法人(株式会社)との相違点は下表のとおりです。
特に、議決権は農事組合法人が「1人=1票」
、株式会社が「1口=1票」となっています。よっ
て、従来の集落営農組織と同様に運営できるのが農事組合法人です。また、農事組合法人は
「配当」
という形で労働報酬を受け取ることが可能です。この配当を受け取った個人は「農業所得」として
申告することになりますから、従来の所得区分と変わりません。一方、株式会社は労働報酬を
「給
与」として支払いますから、サラリーマンは勤務先の就業規則に留意する必要があります。
さらに、集落営農組織の運営方法や多角化といった六次産業化など取り組む事業によっても法人
形態の選択肢が異なります。近年、集落営農型農業法人でオペレーターが特定されるなど、少数の
人数で法人を運営される事例が散見されます。このように、集落の少数のオペレーターで農業経営
を行う場合や農産物の加工事業によって従業員を多数雇用する場合は株式会社の選択が可能です。
農事組合法人の場合、構成員が平等に議決権を持つという性格上、会社型法人と比較して「意思
決定に時間がかかる」というデメリットがあります。このようなことから、当初は設立コストも安
価な農事組合法人を設立して、法人の状況に応じて会社型法人(株式会社)へ形態変更することも
考えられます。
株式会社は経営に責任を持つ者が議決権を多く持ち、その経営者の意思で法人の運営ができます。
集落の農業・農地を永続的に守るためには後継者が必要です。やる気のある若い後継者を育てるた
めには、どういった法人形態がいいのか、といった視点でも検討されることをお勧めします。
区
分
農事組合法人
農
出 資 者
議 決 権
労働報酬
会社型法人
民
誰でもOK
*農民とは、農協法3条の規定で、
「自ら農業を
営み、または農業に従事する個人」をいいます。
1人=1票
1口=1票
*集落営農組織の運営そのままでOK
*多くの出資をする者が議決権を多く持つ
○従事分量配当
○給
*従事分量配当;法人は「損金」
、受け取った個
人は「農業所得」
*源泉徴収することが必要
*サラリーマンは地元で兼業していることになり
ます
○給
与
与
*源泉徴収することが必要
*サラリーマンは地元で兼業していることになり
ます
事
業
営農組合の事業をそのまま引き継ぐ。
営農組合の事業をそのまま引き継ぐ。
*但し、実施できる事業の範囲は会社型と比較し
て狭い
*但し、農事組合法人より事業範囲は広い
設立コスト
・公証人の承認手続き不要(認証手数料不用) ・公証人の承認手続き必要(認証手数料必要)
・設立、定款の変更等の登記にかかる登録 ・設立、定款の変更等の登記にかかる登録
免許税非課税
免許税必要
形態変更
株式会社への形態変更可能
農事組合法人への形態変更不可能
8
Q8
麦・大豆しか協業経営していないが、法人化することは可能か?また、事例
はあるか?
A 麦・大豆の協業経営でも法人化することは可能です。
法人化には「これぐらいの所得がないと法人化できない」といった所得要件などはありません。
ただし、法人の経営が成り立たなければ続かないわけですから、麦・大豆の協業経営で法人の経営
が成り立つか否かを見極める必要があります。麦・大豆の協業経営でも適正な労働報酬が支払える
など経営が成り立ち、将来規模拡大など経営発展が望めるのであれば法人化は可能です。
また、県内でも麦・大豆の協業経営の法人は存在します。
しかしながら、一般的には麦・大豆の経営では経営が成り立ちにくいので、水稲を含めた協業経
営を目指すことが必要です。近年、農業従事者の高齢化が進んでいます。将来の集落の状況を考慮
して、法人化の検討の際には、どのように水稲経営を取り入れていくのかといったことも検討すべ
きです。
なお、水稲の協業経営を進めるメリットには、①個人所有機械を減少させ、組織所有の大型高性
能機械の導入による低コスト・省力化が実現できる、②水田の共同管理で適期作業が可能となり、
水稲の品質向上が可能になる、③①と②によって所得向上につながる、といったことが考えられます。
*参考資料
みんなで考えよう集落の明日を−水稲を含めた協業経営のすすめ−
(http : //www.shiga-suiden.jas.or.jp/ninaite/nks-0010.pdf)
9
法
人
化
制
度
法
人
化
制
度
Q9
農地を全て法人に預けた場合、農業委員の選挙権等はどうなるのか?また、
その他に影響はあるか?
A 農業委員の選挙権・被選挙権は、①1
0a以上の農地について耕作の業務を営む者、②①の同居の
親族又はその配偶者(年間概ね6
0日以上耕作に従事)
、③1
0a以上の農地について耕作の業務を営
む農業生産法人の構成員(年間概ね6
0日以上耕作に従事)
、となっています。集落営農組織を法人
化して、構成員が農地を全て法人に賃貸借した場合は、③に該当し、構成員だけが選挙権・被選挙
権を持つことになります。よって、従来の集落営農組織の場合は、農家個々が協業経営をしていた
わけですから、例えば経営主の他に配偶者、子供が従事して選挙権・被選挙権が認められていたと
すると、1農家で3票の選挙権・被選挙権があったものが、法人化によって1票になってしまうこ
とになります。例えば集落に4
0戸の農家があって、1農家当たり3票あった場合は、4
0×3=1
2
0
票あったものが、4
0票になる、ということになります。
また、JAの組合員資格については、
「農業者」であれば組合員となれます。農協法では「農業者」
とは「農民」であり、
「農民」とは、自ら農業を営み、又は農業に従事する個人をいいます。した
がって、農地(水田)を全て法人に貸し付けたとしても畑地の経営があれば農民といえますし、農
事組合法人等の構成員で農業に従事すれば農民といえ、組合員になることは可能です。
農業共済組合の評価委員は、理事会の承認を得て任命され、組合長の命を受けて従事します。評
価員は、その人の経験、技術、見識等に着目して任命されることとなっており、特に農業者でなけ
ればならないということはありません。
ちなみに、共済には損害評価会委員という方もおられますが、評価会委員は学識経験者等であり、
農業者でなくても構いません。
10
Q1
0 「構成員」
、
「組合員」
、
「従事者」等の意味の違いは?
A 法人の「構成員」は出資者のことです。農事組合法人の出資者が「組合員」であり、株式会社の
場合は「株主」です。
「従事者」は、法人の事業等に従事する者であり、出資の有無には関係あり
ません。
出 資
有
(構成員)
組合員
(農事組合法人)
株主
(株式会社)
無
11
法
人
の
事
業
へ
の
従
事
従事者
法
人
化
制
度
法
人
化
制
度
Q1
1 今後、
経営の多角化を考える場合、農業生産法人の要件としての関連事業とは?
A 農業生産法人の要件の関連事業とは、農地法第2条第3項第1号で「その法人の主たる農業(そ
の行う農業に関連する事業であって農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農
林水産省令で定めるもの)
」と規定されています。
具体的には下表のとおりですが、注意しなければならないのは、関連事業は法人が行う農業に関
連する事業ですから、例えば、米・麦・大豆の経営で下表の事業範囲の具体例にある畜産食料品の
製造は関連事業にはあたらない、ということです。
農業生産法人の農業および関連事業の例示
農
業
1.耕 作
2.養 畜
3.養 蚕
4.・上記の業務に必要な肥料、飼料等の
購入
・通常商品として取り扱われる形態ま
での生産物の処理(例えば、果実等
の選別・包装)
・生産物の販売
5.農業と併せ行う林業経営
(林業の作業受託含む。例えば、山林を
所有しない農業生産法人による枝打ち
作業等の受託)
6.農事組合法人の場合は、農協法第7
2条
の8第1項第1号の事業含む
「農業に係る共同利用施設の設置
(当該
施設を利用して行う組合員の生産する
物資の運搬、加工又は貯蔵の事業を含
む。
)
又は農作業の共同化に関する事業」
農業に関連する事業
法人の行う農業と一次的な関連を持ち農業生産の安定発展に役
立つもの
事業の種類
事業範囲の具体例
農畜産物を原料又は
材料として使用する
製造又は加工
○畜産食料品の製造
○野菜缶詰・果実缶詰・農産物保存・食料品
製造
○精穀・製粉
○パン・菓子製造
○製茶
−ミカンを生産する農業生産法人が、その生
産したミカンに加え、他の生産者から購入し
たミカンを原材料にジュースの生産を行う場
合など−
○レストランの設置運営
−当該生産法人で生産した米を使ったおにぎ
りや、生産した肉を使って、他から仕入れた
米、パンや野菜等を添えたステーキを販売す
るレストラン等の設置運営をする場合など−
農畜産物の貯蔵・運
搬又は販売
○普通・冷蔵倉庫による貯蔵
○トラックによる運搬
○農畜産物卸売
○食肉小売
○野菜・果実小売
−ミカンを生産する農業生産法人が、その生
産したミカンに加え、他の生産者が生産した
ミカンを貯蔵・運搬又は販売する場合など−
○直売施設の設置運営
−当該生産法人で生産した農畜産物及び他の
農家が生産した農畜産物を直接消費者に販売
する場合など−
農業生産に必要な資
材の製造
○肥料の生産
○飼料の生産
−肉用牛の一貫経営を行う農業生産法人が、
その法人の肉用牛の飼育に使用する飼料に加
え、他の畜産農家等へ販売のための飼料の製
造を行う場合など−
農作業の受託
○稲作の基幹3作業の受託
−当該生産法人の作業に加え、他の農家の作
業を受託する場合など−
(農園利用方式に限定)
農村滞在型余暇活動 ○観光農園や市民農園
への利用を目的とし ○農作業体験を行う都市住民等が宿泊・休養
するための施設
た施設の設置・運営・
○上記農園や施設内で行われる各種サービス
必要な役務の提供
○上記宿泊・休養するための施設内に設置さ
れた農畜産物等の販売施設等
12
法人設立
Q1
2 現状組織の規約を反映できるように、定款は自由に変更できるのか。
A 農事組合法人は農協法に規定された法人形態です。したがって、農林水産省が定めた定款例は農
協法に準じて示されているものですので、設立する法人の運営上不要なものは削除いただいて結構
ですが、基本的に定款例に準じてください。
現状の集落営農組織の独自の決めごとについては、定款例第4
6条に「規約」が規定されています
ので、それによって独自の決め事を規程、規則等細則で定めて下さい。
13
法
人
設
立
Q1
3 資本金(出資金)
額はどの程度がよいか?
A 資本金は法人の運転資金であり設備資金でから、資本金は多ければ多いほど法人の運営は資金的
に余裕があることになり、少なければ資金ショートしてしまいます。
税務上は、消費税の納税義務が個人事業の前々年または法人の前々年度の課税売上が1,
0
0
0万円
法
人
設
立
を超える事業者となっていますが、新設法人など資本金が1,
0
0
0万円以上の場合は課税業者となり
ます(あえて資本金を1,
0
0
0万円以上にして課税業者となる場合もあります)
。さらに、法人住民税
は資本金が1,
0
0
0万円を超えると税額が高くなります。
こういったことから、資本金は1,
0
0
0万円未満の法人が多いようです。
また、任意の集落営農組織の営農用の預金口座をみて、資金繰り上から必要な資金額を見積もれ
ば資本金額が決定できます。例えば、前年度の開始時期の残高が8
0
0万円あって、コメの販売代金
が入金されるまでに7
9
0万円支出し、販売代金が入金されてからは販売代金で賄ってきた、といっ
た場合であれば最低7
9
0万円の資本金があれば法人の運営が可能、ということになります。
したがって、資本金は設立する法人の資金繰りと課税の取り扱いの相違から金額を決めることと
なります。
法人住民税
法人等の区分
法人県民税
左のうち「琵琶湖森
林づくり県民税」
法人市町民税*
「資本金等の額」が1千万円
以下である法人等
年額 22,
200円
年 2,
200円
年5
0,
000円
「資本金等の額」が1千万円
を超え1億円以下である法人
年額 55,
500円
年 5,
500円
年1
30,
000円
*法人市町民税は市町税務課で確認してください。
14
Q1
4 事業年度は何月から何月までがよいか。また、水稲・麦・大豆主体の法人組
織の場合、設立月日はいつが望ましいか?
A 法人の決算時期は一般に「棚卸資産が少なくて、ヒマな時期で納税資金があるときが良い」と言
われています。法人税の申告時期は決算後2ヶ月以内となっていますから、それまでに法人の決算
総会で利益を確定する必要があります。例えば、決算月を1月にすれば3月に申告することになり、
3月の申告までに総会を開催する必要がある、というスケジュールになります。
多くの集落営農組織では総会を冬期に開催されています。農家のみなさんが集まりやすい時期を
選んで総会を開催されているということを考えると、水稲・麦・大豆の農業経営の場合は、冬期に
決算期とした事業年度とするのがベターだと思われます。一般的には1月∼1
2月、4月∼3月、3
月∼2月といった事業年度が多いようです。また、法人税の申告は個人の所得申告と異なり、複雑
なものですから税理士と顧問契約をされている法人が多いようです。税理士に法人税申告を依頼す
る場合は、事業年度について当該税理士と相談することをおすすめします。
一方、法人の設立時期はいつの時期でも結構ですが、任意の集落営農組織の資産を引き継ぐこと
を考えると、決算時期と同様に棚卸資産の少ない時期がベターと言えます。ただ、法人設立を優先
して、法人設立後に任意組合の資産を引き継ぐことも可能です。例えば、事業年度を4月∼3月と
定め、法人を1
2月に設立した場合、法人の第1期の事業年度である1
2月∼3月は活動せず(法人税
申告は課税所得0円で申告、法人住民税は月割り計算することになります。
)
、その間に引き継ぎ準
備を進めて法人の第2期の4月から事業を開始することもできます。
要はどの業務から法人の業務とするか(田植えから、麦の播種から)を決定し、それにあわせて
法人を設立することがスムースだと思います。ただ、夏季など水田に作物がある時期に法人を設立
して、収穫から法人の業務とする場合は、法人を設立して水田にある作物を棚卸価格で法人が買い
取り、収穫して法人の売上に計上するといった面倒な事務が発生しますので留意が必要です。
さらに、集落営農組織で具体的に法人設立を検討されている段階で国庫補助事業に取り組む場合
は、法人設立後の資産の引き継ぎが発生しますので、補助金を受ける前に法人を設立する方が便利
です。ただし、こういった場合は、市町農政担当課等と相談の上、事務を進めることが必要です。
15
法
人
設
立
Q1
5 法人設立の手続きはどうすればよいか。また、法人化後に毎年届けや報告を
しなければならないことは何か?
A 法人設立の手続きは法人形態によって異なります。一般に農事組合法人と株式会社など会社型法
人との違いは、公証人による定款認証の有無です(農事組合法人は定款認証が不要)
。法人の設立
法
人
設
立
事務は法人形態によって決まっていますので、下図(農業組合法人の場合)を参考にしてください。
下図の通り、法人の設立手続きは定型化されたものであり、集落の合意によって、①法人の名称、
②事業内容、③資本の総額、④構成員ごとの出資金額、⑤役員さえ決まれば、その後の手続きは1
∼2ヶ月程度で登記することは可能です。
法人設立で重要なのは、法人設立後の運営をどのようにするかといった事業計画と集落営農組織
内での合意形成です。よって、発起人(法人を設立しようと発起する人)で作成する事業目論見書
が重要なものとなりますので、①法人を設立する趣意、②法人の事業内容、③集落営農組織の構成
員の役割、④経営計画(損益計画)を十分検討することが重要です。
また、法人設立後の届け出等は次ページの通りです。法人設立後には、各種の役所へ届出をしな
ければなりません。しかも提出期限が決まっていますので、税務関係や従業員を雇用する場合は専
門家へ委託し、農業に関係するものは自らが手続きを進めるといったことをお勧めします。
○農事組合法人の設立手続き
発起人の事務
理事の事務
出資の払い込み
事業目論見書の作成
【作成書類】①出資引受書
②出資金領収書
定款の作成
【留意事項】類似の法人の名称
がないか県農政課等へ問い合わ
せが必要
登記申請書類作成
【作成書類】・登記申請書他
設立登記申請
設立同意の申し出
【作成書類】①設立同意書
②組合員名簿
登記完了=申請日で設立
役員選任
【作成書類】①役員選任決議書
(発起人会議事録)
②理事就任承諾書
行政庁への設立の届出
設立事務引き渡し
(発起人から理事へ)
16
以
内
に
登
記
申
請
出
資
の
払
い
込
み
か
ら
2
週
間
○法人設立後の届け出等
区
税務関係
分
法人市町民税
提出先
市町税務課
提出する書類
届け出時期
法人設立届(添付書類:定款の
設立登記の日以後2
コピー、登記簿謄本のコピー、
月以内
設立時の貸借対照表)
法人県民税
県税事務所
法人設立届(添付書類:同上)
法人事業税
税務署
法人設立届(添付書類:同上)
設立登記の日以後2
青色申告書の承認申請
月以内
給与支払い事務所の開設届
設立の日以後3月を
棚卸資産の評価方法の届出書、
経過した日と当該事
減価償却資産の償却方法の届出
業年度終了の日との
書
うちいずれか早い日
消費税の届出書
の前日まで
源泉所得税の納期の特例の承認
1か月以内
に関する申請書
農地の借り入れ
農業委員会・市町農
農地法3条申請または農用地利
政担当課
用集積計画作成申出書
農業者戸別所得補償制度 近畿農政局地域セン
農業経営の承継等に関する申出
*1
書(様式16号)*2
ター
交付申請書(様式1号)
交付金振込口座申出書(様式3
号)*3
収入減少影響緩和対策積 近畿農政局地域セン
原則は、積立金の返納の上、再
立金*1
度積立をするが、事前に地域セ
ター
ンターに相談すること。
認定農業者
市町農政担当課
農業経営改善計画書
農事組合法人の場合
農業農村振興事務所
農事組合法人設立届(定款(写)、
農産普及課
登記簿謄本、設立理由書、農事
組合法人調書、設立発起人の資
格調書添付)
従業員等を雇用する場合
労働基準監督署(労
労働保険の保険関係成立届
災保険)
従業員を雇い入れて
から10日以内
職業安定所(雇用保
険)
JA正組合員、口座開設
JA
加入申込書・口座開設申込書
(定款(写)、登記事項証明書、
印鑑登録証明書)
*1;集落営農の法人化といっても、様々な状況があり、事務的な手続についてもケースバイケースで判
断していく必要があります。よって、事前に地域センターまでご相談下さい。
*2;添付書類;①法人化について総会その他の議決機関で議決したことを証する書類の写し、②前身の
組織及び法人の構成員の一覧の写し
*3;添付書類;承継者(法人)名義の通帳の表紙裏のコピー
17
法
人
設
立
(農業者戸別所得補償制度「農業経営の承継等に関する申出書」
(様式1
6号)
)
法
人
設
立
18
(農業者戸別所得補償制度「交付申請書」
(様式1号)
)
法
人
設
立
19
(農業者戸別所得補償制度「交付金振込口座申出書」
(様式3号)
)
法
人
設
立
20
Q1
6 法人化にかかる費用はどれくらいか?
A 株式会社の場合は、①法人の印鑑(会社印・銀行印・代表者印)の調製代金(1万円程度∼)
、
②公証人役場の定款認証に9万円(収入印紙代4万円+認証手数料5万円)
、③法務局の登記(登
録免許税)に1
5万円(資本金額×7/1
0
0
0、最低額1
5万円)と約3
0万円必要です。
一方、農事組合法人の場合は、定款認証や登記にかかる登録免許税が不要ですから法人の印鑑調
製代金だけで設立できます。農事組合法人の場合は、設立費用も多額ではありませんし、設立事務
も困難なものではありません。時間的に余裕があれば、理事自らが設立手続きを進めることが可能
です(登記するものですから誤字・脱字のないように心がけることが必要です)
。
なお、法人の登記手続きを司法書士に依頼すると、上記以外に手数料が必要です。司法書士に依
頼する場合、定款や登記申請書など必要書類を作成した上で依頼すると、全てを依頼するより安く
設立できるようです。
なお、農業者戸別所得補償制度では、集落営農組織の法人化に対する事務費相当を助成する制度
があります。詳しくはQ3
9を参考にして下さい。
21
法
人
設
立
Q1
7 組合員の条件とは?
A 農事組合法人の組合員は農協法に定める「農民」でなければなりません。農協法による「農民」
とは「自ら農業を営み、又は農業に従事する個人」であり、農地の所有の有無は関係ありません。
また、組合員は出資者のことで、理事は組合員でなければなりません。監事を置く場合、組合員以
法
人
設
立
外でも監事になれます。
また、農事組合法人の定款例には第3条で地区の規定があります。この地区の規定は第9条の組
合員資格に記載されている地区のことです。よって、同定款例第3条の地区に
「住所を有する農民」
でなければ組合員になることができません。集落営農組織を設立する際に、集落内に農地を所有す
る不在村地主に出資を求め、構成員としているところもあります。このような不在村地主で集落営
農組織の出役実績もない構成員は、農事組合法人の定款の規定にしたがって組合員になることがで
きません。一方、不在村地主が日常の出役は期待できないものの、いくらかの出役が期待できる場
合は組合員外の臨時雇用者として雇用することは可能です。このような不在村地主がある場合の当
初の出資金の取り扱いは、①集落営農組織を清算する際に出資金を返還する、②法人の預かり金と
して引き継ぐ、③民間企業の「○○友の会」のように、集落営農型農業法人のサポーターとして位
置づけて会費として引き継ぐ、などの対応が考えられます。どのように取り扱うかは、集落営農組
織の役員が当該不在村地主と協議し、相互の合意によって決定します。
また、組合員には年齢制限はありません。ただし、未成年が営業する場合は商業登記法によって
制限があり、保護者等の承諾を得ないと未成年者商業登記簿に登記ができないこととなっています
ので、未成年者は法人の役員に就任することができないと考えられます。さらに、集落営農組織を
法人化する場合、出役作業のことを考慮すると組合員は1
8歳以上の方が望ましいと考えられます。
法人を設立し、農地を借入等する場合に留意しなければならないのは、納税猶予制度との関係で
す。納税猶予制度には、①贈与税納税猶予制度と、②相続税納税猶予制度があります。相続税納税
猶予制度の場合は、平成2
1年度税制改正により設立した法人に農業経営基盤強化法に基づく利用権
設定(特定貸付け)を行うことで納税猶予は引き続きます。また、贈与税納税猶予の場合は、平成
2
4年度から特例措置が創設される予定です。その内容は、受贈者が農地の贈与を受けてから1
0年以
上営農を継続した後、特定貸付けを行った場合、納税猶予が継続されるといったものです。
http : //www.maff.go.jp/test/keiei/koukai/pdf/zeisei_zouyo.pdf
区
組合員
組合員外
資
○
×
農事組合法人の定款に規定する農民であれば出資によ
って組合員となる。同定款に規定する農民でなければ
出資ができず組合員外となる。
農地所有
−
−
農地の所有の有無は組合員資格に関係ない
理
事
○
×
未成年者の組合員は理事になれないと考えられる
監
事
○
○
相続税納税猶予との関係
○
○
特定貸付け(利用権設定)
贈与税納税猶予との関係
○
○
特定貸付け(利用権設定)
出
分
備
22
考
(平成24年度の予定)
Q1
8 法人が構成員以外の農地を引き受けることはできるのか?また、組合員以外
の者が出役した場合、従事分量配当の対象になるのか?
A 法人が構成員以外の農地を借り入れることは可能ですし、法人に労働力や機械などの経営資源に
余力があるのであれば積極的に構成員以外の農地を借り入れて規模拡大すべきでしょう。
従事分量配当は組合員に対して行うものですから、組合員以外の者が出役した場合の労働報酬は
給料(賃金)として支払います。なお、組合員の家族(生計を一にする親族)が所得税法施行令第
6
2条3項に該当する場合には、組合員の家族の出役分も従事分量配当として支払うことが出来ます
が、その支払額は組合員の従事分量配当と合算して、組合員が申告することになります。なお、所
得税法施行令第6
2条3項に該当するか否かは、税理士さんに確認して下さい。
23
法
人
設
立
Q1
9 組合員の労賃の支払い方法と組合員以外が出役した場合の労賃の支払い方法
に違いがあるか?
A 農事組合法人の組合員(構成員)へ労賃を支払う方法には、①給料などの確定給与を支払う方法
と、②従事分量配当として支払う方法、の二通りあります。一方、組合員以外の者への労賃の支払
法
人
設
立
いは、給料(アルバイト賃金を含む)として支払います。
組合員に給料を支払う農事組合法人は、法人税法上普通法人扱いとなり、税率の軽減はありませ
ん。従事分量配当を支払う農事組合法人は、従事分量配当が損金として認められ、法人税は協同組
合等の軽減税率が適用されます。
また、組合員が受け取る給料はサラリーマンの場合は確定申告が必要となり、従事分量配当は個
人の事業所得となります。
組合員への労賃の支払い方法は、年度毎に給料と従事分量配当を変更してもかまいませんが、組
合員に給料と従事分量配当を併用すること(組合員Aは給料、組合員Bは従事分量配当)はできま
せん。
24
Q2
0 営農組合で保有している資産(預金、機械・施設、肥料・農薬・農産物、未収穫
農産物等)
、負債(借入金・未払い金等)の法人への引き継ぎ方法は?
A 大まかにいえば、動産は有償譲渡(売買)
、不動産は賃貸借契約によって引き継ぎます。
預金の場合、営農組合は任意組合ですから、組合で保有している預金は組合員個々の財産です。
組合員個々の持分が決まっていますから、これを資本金として引きつぎます。必要な資本金より預
金の方が多い場合は、①資本金との差額を組合で預かっておき、将来の設備投資資金の原資とする、
②または組合員個々へ返金する、③組合員の合意の基で「預かり金」として法人へ引き継ぐ、こと
となります。必要な資本金より預金の方が少ない場合は、不足分だけ出資者になろうとする者から
出資してもらいます。
借入金は!日本政策金融公庫などの公的資金の場合、
「重畳的債務引受」の手続きが必要です。
借入金がJA等の市中銀行からの借入の場合は、JA等の市中銀行と事前に相談の上、借入金と同額
の動産を譲渡することが可能です。
棚卸資産(肥料・農薬・農産物)は有償譲渡します。特に、農産物の場合はそのものの原価を計
算して原価で法人が買い取ります。
機械はその機械の買入資金の種類によって異なります。集落営農組織の構成員がお金を出し合っ
て購入したものであれば、有償譲渡か賃貸借によります。国庫補助事業によるものは、市町農政担
当課や県の農業農村振興事務所農産普及課と事前に相談することが必要です。特に、国庫補助金に
よる機械等の場合、国庫補助金を返還することなく引き継ぎするには、①財産処分の事前申請、②
有償譲渡または無償譲渡による引き継ぎ、③組織の同一性、の3つが重要です。一般的には、法人
設立前に市町等を通じて国に財産処分の申請をし、国の承認を受けてから有償譲渡または無償譲渡
をします。
特に、
「組織の同一性」の要件については国の判断によりますので、あらかじめ市町等を通じて
確認することが必要です。
また、譲渡価額は時価です。時価とは一般に市中での取引価額です。農業用機械には市中での取
引価額が決まっていませんので、JAなどに評価してもらうことが必要です。時価がわからない場
合は、簿価(帳簿価額。減価償却費を控除した残存価額)によります(一般に農業用機械の場合は、
時価<簿価ですから、時価での譲渡の方が有利です)
。
近年、リースによって機械を保有している集落営農組織が多くあります。リースによるものは、
事前にリース会社と相談することが必要です。リースの場合は、一般的にはリース契約を法人が引
き継ぐことが可能です。
集落営農組織の場合、多くの機械を所有されている事例があります。全てを有償譲渡するにはそ
れだけの資金力が法人に必要です。譲渡価額が多額になる場合は、集落営農組織に対して未払いと
する「未払金」処理をすることも可能です。無償譲渡の場合は、法人側にその価額分の収益が発生
することになります。さらに、当面は賃貸借によって集落営農組織から借り入れ、時価が下がり、
法人に買入資金があれば買い取るということも可能です。貸借の場合の賃借料は減価償却費を参考
に決定します。減価償却費相当額で借り入れれば、賃借料を受け取った集落営農組織で減価償却費
を計上することができます。
このように、資産の引き継ぎには税務上のことも考慮しなければなりませんし、法人の資金力と
機械の保有状況によって総合的に判断することが必要です。
25
法
人
設
立
Q2
1 現行の集落営農組織との関係についてどのように整理すればよいか?
A 任意組合の集落営農組織を法人化するため、法人設立によって従来の集落営農組織は清算するの
が望ましいわけですが、集落営農組織の保有資産の状況によって一定期間清算できないケースがあ
ります。
法
人
設
立
例えば、集落営農組織で格納庫を保有している場合、これを法人に譲渡すると多額の資金が必要
になります。したがって、こういった場合は、格納庫などの資産は法人に引き継ぐのではなく、集
落営農組織に残し、法人が集落営農組織から格納庫を借り受けることになりますので、格納庫を法
人が買い取るまでは集落営農組織を存続する必要があります。
一方、集落営農組織の保有資産が少ない場合は、法人設立後に集落営農組織の資産を全て引き継
ぎ、集落営農組織を解散することができます。
また、非常に少数ですが、集落営農組織の保有資産を法人に現物出資として集落営農組織を解散
した事例があります。
集落営農組織の保有資産が多く、集落営農組織に保有資産を残す場合、法人と集落営農組織で賃
貸借契約を締結しますが、その家賃等の水準は、格納庫であればその減価償却費相当額が適当です。
法人が減価償却費相当額を支払い、集落営農組織は家賃収入を得るとともに減価償却費を計上しま
すから、集落営農組織で課税利益は発生しません。ただし、毎年集落営農組織には家賃収入という
資金が入りますから、集落営農組織ではその構成員の持ち分に応じて収支を配分することが必要で
す。また、県内の事例では、その資金を集落営農組織で「預かり金」として構成員から預かり、次
期の設備投資のための資金として留保しているところもあります。
このように集落営農組織の保有資産の全てを法人に引き継げない場合、集落に従来の農業組合と
任意の集落営農組織、新たに設立した法人の3種類の組織ができることになります。県内の事例で
は、農業組合が農地所有者で構成され、法人は耕作者が中心で構成されていることから、賃借料の
決定や農地の利用調整などの両者の利害調整を行う組織をもっている集落があります。法人設立の
際に農道・水路の維持管理や畦の管理など農業関係の諸業務を再整理して、それぞれの組織に何を
担ってもらうのか、といった検討をおすすめします。
26
Q2
2 集落内に事務手続きに精通した人材がいない場合、どの様に設立事務を進め
たら良いのか?委託することも可能か?
A 集落内に法人設立事務に精通した人材がいない場合、司法書士に委託することも可能です。ただ、
設立事務のほとんどは文書作成です。集落営農組織の構成員の家族にはパソコン・ワープロを使い
慣れた若い人も存在すると思います。定款や登記申請書などの書類は書式が決まっていますし、関
係機関にはそのデータがあると思います。そういったデータを入手して、関係機関や法務局に相談
して集落営農組織で決定された事項を当てはめて書類を作成することは容易です。
一方、従来、法人の登記は法務局の各支所でも取り扱われていましたが、近年法人の登記は大津
地方法務局に移管されつつあります。よって、集落営農組織を法人化する場合は、多くの集落営農
組織で大津地方法務局へ出向かなければならなくなります。このような状況ですから、登記申請ま
で集落営農組織でできない場合は、定款や登記申請書などの書類は集落営農組織で作成して、登記
申請事務を司法書士に委託することをお勧めします。
ただ、定款や登記申請書は誤字・脱字があってはなりません。どうしても、事務手続きができな
い場合は、直接もしくは顧問税理士を通じるなどして、司法書士に委託することになります。
27
法
人
設
立
法人運営
Q2
3 法人に全て「お任せ状態」となり組合員の協力が弱くなる事例があると聞くが?
A 県内の集落営農組織の運営には、集落の地理的条件や人材の確保状況によって様々なものがあり
ます。大まかに分類すると、①「組合員全員参加型」と、②特定のオペレーター等で全てをまかな
う「オペレーター型」があるようです。
集落営農組織を法人化する場合、事業目論見書を作成します。その事業目論見書には「従事関係」
という項目がありますが、集落の実態に応じて組合員・地主にどのような役割を果たしてもらうの
か、といったことを農業組合など関係者とともに十分検討する必要があります。
法
人
運
営
例えば、集落の麦・大豆の配分や作付地の団地の決定、農道・水路の管理などの生産手段として
の農地の維持管理に関わる仕事は農業組合等の業務と位置づけ、集落営農組織は水田の中の仕事を
担当する、といった取り決めをしている集落もあります。また、畦の草刈りは地主の義務として面
積単位や距離を単位として委託する、水管理は危険な作業を任せられない高齢者に委託する、など
様々です。
また、県内の集落営農型農業法人の状況をみてみると、法人設立当初は「組合員全員参加型」で
あったものが「オペレーター型」に移行する傾向もあるようです。こういった状況ですので、上記
のような地主、組合員、法人の役割を集落の状況に応じてルール化することが必要です。
農業従事者の高齢化がすすんでいる現状で、若い人の出役・育成は大きな課題となりつつありま
す。集落内に若い人がいないのかというとそうではありません。多くの集落では若い人が住んでい
るものの集落営農組織に参加していないのです。それではどのようにして営農活動に若い人の参加
を促すのでしょうか。一人に参加を求めても出役しにくいので、集落の関心のありそうな若い人に
「友達を連れてきてもいい」と言って仲間との参加を促しているケースや若い人の「小遣い稼ぎに」
と出役の際はその日に労賃を支払っている事例もあります。要は若い人が参加しやすい環境を作っ
ていくことが重要です。
役員についても同様で、若い人の関心のありそうな大型機械の操作から参加してもらって、徐々
に営農活動の幅を広げ、経験を積ませて責任を与えている事例もあります。なかには集落のイベン
トの企画から運営を任せて自信をもたせ、営農組合の役員候補として育てていくという事例もあり
ます。
次ページに組織体制や人材確保の取り組みなどについて、普及指導員の調査研究で取りまとめた
結果を掲載していますので、参考にして下さい。
28
(普及指導員の調査研究による調査結果)
表
集落営農組織
設立*
調査結果一覧表
A生産組合
(農)B
平成3年
平成元年
(農)C
平成1
3年
営農タイプ
1集落1農場方式
1集落1農場方式
1集落1農場方式
経営面積
7
3.
8ha
3
5.
6ha
4
7ha
組合員数
8
3戸
2
9戸
8
4戸
役員は1
5名。組合長、副組合長2名会計の
下に営農企画班、栽培班、労務班、機械施設
班を配置し、各班正副班長を入れて3から4
名で構成している。
役員会への諮問機関として、正副組合長・
会計・各班長・監事で構成する企画会議を設
置している。
役員は6名。組合長、副組合長、営農部、
機械資材部、新規事業部、販売部を配置して
いる。
役員会の重要案件を検討する機関として、
現行役員に次期役員を加えた拡大経営委員会
を設置している。
役員は1
5名。組合長、副組合長2名の下に
総務部、生産労務部、設備・機械部を配置し、
各部長を入れて3または6名で構成している。
法人の理事は、正副組合長と各部長の6名
となっている。役員会への諮問機関として理
事会を位置づけている。理事会は、議事録を
作成する協議事項とそうでない事項分けて開
催している。
育苗管理は、専任高齢者。水管理は、集落
を5ブッロクに分けて在宅高齢者が管理して
いる。
防除・穂肥施肥等中間管理は自営業が中心
に管理している。
基幹作業、畦畔除草は全戸出役が原則といっ
た作業分担方式を採用している。
育苗管理、水管理は高齢者3人に管理委託
している。水稲作業時間1
6時間の内6時間が
管理委託時間である。
その他基幹作業は全戸出役といった作業分
担方式を採用している。
水管理は在宅高齢者に、圃場管理は営農組
合から委託費を支払って組合員にしてもらっ
ている。大豆の選別は、女性・高齢者に委託
している。
その他基幹作業は全戸出役といった作業分
担方式を採用している。
一般的に、水稲労働時間1
4hr/1
0aとすると
所有農地1
0aあたり2日は出役する必要があ
ることを組合員に浸透させている。
年間総労働時間から水田面積割合で各戸の
出役日数を決め、総会で諮っている。
兼業先の問題、健康上の問題、家族労力不
足については、生産組合に委託できるよう規
程を整備している。
年間労働時間時間から水田面積割合で各戸
の出役日数を決め依頼している。
高齢等出役できない場合は、
「余裕のある」
組合員に委託し、その組合員の持ち分として
出役日数が計算される。営農組合への全面委
託は認めていない。
人材確保方針・計画について明文化したも
のはない。しかし、利益(配当)を受けるた
めには、生産組合に参加しなければならない
という暗黙の了解がある。
営農組合への参画意識
向上
収穫祭等組合活動のコミュニケーション活
動を高めている。親世代から若者世代への出
役者の代替わりのため、3
0歳代の若者世代の
参画が重要である。
体協→実行組合→自治会の役員を経て生産
組合の役員になる流れはある。
3
0歳代1
0人を次世代の運営の中心人物と位
置づけ、収穫祭等生産組合のイベント企画・
実行を任せている。イベントを通じて、役員
の素養を養成する。
3
0歳代は営農作業を経験し、組織運営のた
めの理解を高める。4
0歳代は役員業務を経験
し、5
0歳代からは組織運営を担う中核的人材
に登用するといった計画的なキャリア開発を
実施している。これにより世代間のバランス
のとれた役員構成を実現している。
1
0年後の組織がたちゆかなくなるため、3
0
歳代は必ず役員に入れる。
できるだけ集落の多くの人を営農組合の何
らかの役割・関係を持たせるようにしておく。
構成員能力・技術レベ
ル把握
役員候補は、その素養について現役員があ
集落内のことであり、誰がどのような仕事
をしているのか等はみんなの知るところであ たりをつけている。いわゆる農村部の良いと
ころである「ムラの機能」によりどのような
り、組合で把握しなくても分かっている。
会計は銀行OB、税理士、機械施設整備は、 ことが得意か否かは自然と情報が入る。
電気屋・整備士がいる。
農業機械ごとに作業日報を作成し、作業内
容と作業時間が記帳される。そのデータから
作業能率を算出し、役員がオペレータ能力を
評価している。
情報誌は年4回発行し、営農情報等を組合
委員に周知している。
ロゴは県単ソフト事業で検討したが、作成
していない、初代組合長は「楽々農業」と言っ
ていたがCIはない。
年によっては、経営管理委員会だよりを発
行した。春・秋のイベントにより情報発信し
ている。経営スローガン(理念)は組織設立
時に作成し、明文化して総会資料に記載する
など常に周知している。
その他、毎年行動指針を作成し、これも総
会で周知している。
情報誌は特に発行していない。経営理念は
組合の定款に記載し、総会で確認している。
標準収量を目標としているので、指導機関
発行の栽培暦等がマニュアル代わりである。
作業記録がベースとなる。失敗事項は、口頭
で役員へ報告している。
作業機にマニュアルを備え付けてあるが、
十分読んでくれないのが悩みである。
約5
0種類のマニュアル(機械の操作手順・
作業のポイント・作業経路等)を作成してい
る。オペレータの意見により随時修正して完
成度を高めている。最近は確認事項に関する
マニュアルを追加している。
人員配置は経験の浅い(若手)とベテラン
の組合せにより作業をしてもらうよう配慮し
ている。
新しい作業機やコンバイン作業では農機メー
カに来てもらって事前研修を実施している。
それぞれの能力差もあるので、適材適所を
基本としている。全戸出役型のデメリットで
ある同じ機械に乗る機会が少ないので、複数
年で技術取得できるように考えている。
若手は、作業機械の扱いは早く習得できる
が、下回りの仕事の覚えが悪いので、作業機
→下回を経験することにより、作業機械が効
率的に動くための下回り作業を理解すること
ができ、結果的に作業効率が上がる。
基幹作業前に実技講習会を実施している。
新人オペレータは熟練オペレータがマンツー
マンで1年間かけて指導し、1年後に技量評
価を行うといったOJTシステムを導入している。
日替わり作業体制のバラツキを少なくする
ため、作業遂行責任者、オペレータ、準機械
作業者、補助作業者の4つの職域階層別人員
配置を構築し、人員変更の場合は同じ職域階
層内で行い、同じ技能レベルの作業班編成を
実現している。
基幹作業前に実技講習会を実施している。
栽培暦を基本とした栽培管理に心がける。
栽培管理(品種・栽培方法・作付時期・肥
培管理・収穫・土づくり・圃場管理等)にか
かる重点取組計画を作成し、その実績評価を
行うことで、次作への改善計画に反映させて
いる。
(総会時)
(PDCA)
作業日報、資材投入記録、機械日報、収穫
物量管理表等の記録データを専用のソフトで
数値化し、情報共有するとともに、改善活動
に向けた判断材料・動機付け材料として活用
している。
(PDCA)
マニュアルは作成していないが、ベテラン
集落営農前に営農していた(6
0歳代)は2
0
からOJTで技術を身につけるようにしている。 年のキャリアがあるので、全作業経験者のノ
ウハウを活かすようにしている。
マニュアル作成とベテランからOJTで技術
力を伝承させる。
経 営 概 要
役員体制
組 織 体 制
出役体制
人材確保方針・計画
人材確保の取組
情報発信
栽培方法・ノウハウの
蓄積
作業遂行能力向上
作業部員等
育成の取組
栽培管理能力向上
技術伝承
役員育成の取組
運営体制
職務不満防止
共 通 事 項
人材活用
役員は、各組(5組)から専任される。選
任基準は特に定めていないが、4
0∼6
5歳まで
で、兼業先の仕事の状況、子育て等家庭の事
情を配慮している。
正副組合長は、過去に役員経験があるもの
が選ばれる。それ以外は、メンバーを見てか
ら担当部署を決める。役員任期は2年である
が、特に若い役員はいろんな部署を経験して
もらうため、班替えを行っている。適材適所
+ジョブローテーションを基本としている。
理事は経営委員会6名で、次期役員6名を
含めた拡大経営委員会で運営している。
任期は2年であることから2年目の後半は
拡大委員会を開催して次年度計画の検討を行っ
ている。
組合設立時の理念を持った組合員(5名)
のうち誰かが役員の中にいるようにすること
により、経営方針(理念)を基にした営農活
動の継続性を確保している。また、必ず若手
役員を入れるよう配慮している。
役員は1
5名で、3
0歳代は営農作業を経験し、
組織運営のための理解を高める。4
0歳代は役
員業務を経験し、
5
0歳代からは組織運営を担う
中核的人材に登用するといった計画的なキャ
リア開発を実施している。これにより世代間
のバランスのとれた役員構成を実現している。
1
0年後の組織がたちゆかなくなるため、3
0
歳代は必ず役員に入れる。役員会には、元役
員(3名)も加わり、アドバイザイーとして
位置づけ、高度・専門的役員業務の円滑な継
承を実現している。
不満防止は、個人レベル、個人間の問題は
役員は不満を口外してはならない。年4回
の懇親の場を設定しており、問題があればそ 組合として無視している。営農組織運営の妨
げになるものは、解決を図る。規約等による
の場で話ある。
一般組合員には、作業能力・作業量に差が 明文化は問題が起こった後に考えることが重
あるのに同一賃金等金銭面の不満とオペレー 要で、以降同様な問題が起こっても同じ基準
ターと補助者の労働強度の差の不満があるが、 で対応できる。
作業者の調整程度で対応している。
不満防止は、個人の利害関係は組合として
無視している。組織全体に係る事項は、役員
会にあげるかどうかを検討する。いまのとこ
ろ役員会にあげたものは全て対応している。
人材を活用した組織運営は重要である。小
さい集落のことであるから、兼業先のことや
資格の保有等の情報は自然と集まってくる。
特に組合として情報を整理していない。
総務部門は、公務員の総務・企画部署の仕
事経験者、生産部はJAの営農指導員等、機
械部は工場施設納入担当、工場内溶接・旋盤
担当など集落の人材をフル活用している。
法人化に伴い、雇用契約を締結したが、そ
のときに履歴書の提出を求めたところ、様々
な資格を保有していることが分かり、情報と
してストックしている。
兼業先の仕事、資格等の技能については、
集落のことであり、自然とみんなの知るとこ
ろとなり、特に組合として情報を整理してい
ない。
*法人は、任意組合設立年を示す。
29
法
人
運
営
Q2
4 従事分量配当の考え方は?
A 従事分量配当は農事組合法人の定款に定めがあります。定款例の第4
3条第3項には、
「事業に従
事した程度に応じてする配当は、その事業年度において組合員がこの組合の営む事業に従事した日
数及びその労務の内容、責任の程度等に応じてこれを行う。
」と記載されています。このように従
事分量配当は日数だけでなく「労務の内容」
、
「責任の程度」に応じて支払うことが可能です。
したがって、水稲・麦・大豆作業だけでなく園芸品目など、労務の内容が異なりますから、労務
の内容に応じた単価設定が可能です。また、主作業や補助作業、役員の仕事はそれぞれ責任の程度
が異なりますから責任の程度においても労働単価を変えることも可能です。
しかし、あまり単価設定を細分化すると計算も複雑になりますから、現状の集落営農組織の実態
法
人
運
営
にあわせ、おおまかに労賃単価を設定し、必要に応じて細分化していくのがスムースだと思います。
また、特に役員報酬は税務上給与として取り扱われますが、役員報酬は従事分量配当と併給する
ことができます。役員報酬を給与として支払うことが困難な場合は、役員報酬分を従事分量配当に
含めて支払うこともできます。
労務の内容×責任の程度
30
Q2
5 農事組合法人が今後経営困難に陥った場合の対応方法、解散方法は?
A 集落営農組織を法人化する目的は様々ですが、多くが「集落の農業・農地を維持・発展させたい」
との想いで農事組合法人を設立されています。法人はそのための仕組みですから、本来、法人は永
続し、その運営をする人間が世代交代等によって代わっていくことになります。
そのため、法人が経営困難に陥らないように、不断の努力が必要になります。集落営農組織の強
みは集落内にいろんな能力を持った人材が存在し、人数も一定のボリュームがあることです。した
がって、毎年の決算書から経営状況をチェックしつつ、経営環境と集落営農組織の強みを分析して
早めに「次の手」を打っていくことが必要です。県内の事例でも「常に集落に刺激を与えるように
している」という役員も存在しています。
こういった不断の努力に関わらず、残念ながら経営困難となった場合は、解散もしくは合併とい
うことになると考えられます。集落の農業・農地を担ってきた法人が継続できないわけですから、
集落の農業・農地をどのように守っていくか、といった課題が残ります。よって、①法人を解散し
て近隣集落の担い手に任せるか、②近隣集落に集落営農型農業法人がある場合は解散して近隣集落
の同法人に参加するか、③解散せずに近隣集落の同法人と合併するかの選択になると考えられます。
農事組合法人の解散については、定款によって解散事務を進め、解散後2週間以内に県へ「解散
届」を提出する必要があります。
定款例の第3
5条の特別議決の事項として解散が規定されています。また、第4
5条に「残余財産の
分配」として解散する場合の残余財産の分配の規定があります。
したがって、解散にあたっては、①総会の特別議決として解散と残余財産の分配方法の議決を行
い、②総会の決定にしたがって残余財産の分配を行い、③解散登記を行う、ことになります。
なお、定款例による残余財産の処分方法は、次のようになります。
・X
(解散する事業年度の貸借対照表の資産総額−負債総額)
>出資額
出資額+ α
(一般的に「α」は出資額等に応じて分配する。
)
・X<出資額
出資額−Xを各組合員の出資額に応じて減算
また、解散による清算所得がある場合は法人税等の課税の対象になりますから、解散する場合も
税理士と相談することが必要です。
なお、解散については資産の処分(売却等)
、負債の清算(返済等)が必要なため、相当の期間
を要することが通常です。
合併には吸収合併と新設合併があります。合併の場合も特別議決が必要ですから、総会によって
合併を議決し、手続きを進め、合併から2週間以内に「合併届」を提出する必要があります。
31
法
人
運
営
Q2
6 組合員として加入しても、ほとんど出役しない場合は何か問題はあるか?
A 法人に出資したものの、出役ができないことでペナルティーはありません。ただ、農事組合法人
の場合、農業生産の協業をはかり、共同の利益を追求することが目的ですから、出役しない組合員
が多いことは好ましいことではないと思われます。
また、農業生産法人の場合は、農地提供か常時従事が構成員要件(出資者の要件)になっていま
すので、農地も提供せずに出役もしない場合は農業生産法人の要件を満たすことができません。
定款には脱退や除名も規定されていますから、このような規定に抵触する場合は、脱退・除名の
措置が必要になると考えられます。
法
人
運
営
32
Q2
7 将来世代交代や若手の登用を行う場合、役員(理事)
の選出方法はどのように
考えればよいか?
A 集落営農組織の法人化は、集落の農業・農地を維持・発展させるためのものです。したがって、
法人を永続性のあるものにしなければなりません。よって、役員等の世代交代を円滑にする必要が
あります。
県内の事例にはQ2
3の通り、若い人の登用を実現しているところもあります。一般的には、法人
の業務で定型的なものから任せるようにして、徐々に複雑な意思決定をともなう仕事を任せるといっ
たことが必要です。そのためには、OJTなどによって計画的に人材育成を図っていくことが重要で
す。また、農事組合法人の場合は、役員を総会で選出することになっていますが、法人で育成して
きた人材を役員に選出するルール化が必要です。
33
法
人
運
営
会計・税務
Q2
8 任意組合と法人の税金負担の差は?
A 任意組合は個人の集合体ですから組織自体には課税されず、任意組合の構成員の申告によって課
税されることになります。一方、法人の税金には、代表的なものには法人税・法人事業税・法人住
民税(県・市町)があります。また、消費税の課税業者であれば消費税の納付も必要です。
したがって、組織自体の税負担としては、任意組合が「0」に対して、法人は法人税等の負担が
ある、ということになります。
ただし、法人の課税所得が「0」であれば、法人住民税の均等割だけが負担となります。
会
計
・
税
務
34
Q2
9 出資金額による課税割合の違いは?
A 資本金額による法人税・法人事業税・法人住民税は次表の通りです。
なお、法人住民税(市町)は区分や金額が異なる場合がありますので、該当の市町で確認して下
さい。
○法人税(国税)
法人の種類
所得の金額
税率
普通法人
(資本金1億円超)
3
0%
普通法人
(資本金1億円以下)
年8
0
0万円超
30%
年8
00万円以下
22%
公益法人等・協同組合等
2
2%
○法人事業税
法人の種類
資本金1億円超
資本金1億円以下
所得の金額
会
計
・
税
務
税率
付加価値割
0.
48%
資本割
0.
2%
所得割
7.
2%
年8
00万円超
9.
6%
年4
0
0万円超8
0
0万円以下
7.
3%
年4
0
0万円以下
5%
*農業生産法人である農事組合法人が行う農業については、法人事業税が非課税。
○法人住民税
県民税(年額)
資本等の金額
うち「琵琶湖森林
づくり県民税」
5
0億円超
8
88,
0
00円
8
8,
800円
1
0億円超5
0億円以下
5
99,
4
0
0円
59,
400円
1億円超10億円以下
1千万円超1億円以下
1千万円以下
1
44,
30
0円
市町民税(年額)*1
従業者数
5
0人超
3,
000,
000円
50人超
1,
750,
000円
50人以下
410,
000円*2
50人超
4
00,
000円
50人以下
160,
000円
50人超
1
50,
000円
50人以下
130,
000円
50人超
1
20,
000円
1
4,
300円
5
5,
50
0円
5,
50
0円
2
2,
2
00円
2,
200円
50人以下
*1;大津市の場合
*2;資本金等の額が「1
0億円超」
35
50,
000円
Q3
0 従事分量配当は期中に仮払いし、期末に内容により単価を変更することは可
能か。また、毎年、利益余剰金しだいで単価変更することはよいか?
A 従事分量配当は期末の総会の剰余金処分で決定されます。したがって、期中に支払った労賃は従
事分量配当の仮払いであり、剰余金処分によって当初の労賃単価が変更になってもかまいません。
会
計
・
税
務
36
Q3
1 組合員の家族の出役は、従事分量配当に含む場合と賃金で払う場合の問題は
あるか?
A 一般的には、従事分量配当は組合員に対する労賃の支払いですから、組合員以外の家族の出役に
対しては給料(賃金)を支払うことになります。なお、組合員の家族(生計を一にする親族)が、
所得税法施行令第6
2条第3項に該当する場合には、組合員の家族の出役分も従事分量配当として支
払うことができますが、その支払い額は組合員の従事分量配当と合算して、組合員が申告すること
になります。
なお、所得税法施行令第6
2条3項に該当するか否かは、税理士さんに確認して下さい。
会
計
・
税
務
37
Q3
2 従事分量配当で家族数人が配当を受けた場合、所得税の申告は個人が行うの
か、家の代表者がまとめて行うのか?
A 従事分量配当は農業所得として申告します。農業所得は農業経営主(組合員)が申告しますから、
家族が受け取った従事分量配当も合算して農業経営主(組合員)が申告してください。
会
計
・
税
務
38
Q3
3 役員報酬の金額設定はどの様に考えたらよいか?
A 集落営農組織の役員または法人の役員は経営計画・作付計画等の策定や諸業務の意思決定、管理
業務や渉外活動など多岐にわたっています。一般に、集落営農組織の場合、役員報酬は非常に少額
となっている事例が多いですが、法人設立の際に、その額を役割に応じた適正な報酬額に変更する
べきです。
具体的な報酬額については、組合員の感情などの集落内の環境や法人の経営状況にもよりますの
で、役員報酬の金額設定は総合的に勘案しなければなりません。
役員報酬の金額は、総会で決定されます。したがって、出資者が納得できるものでなければなり
ません。県内では、役員報酬が安すぎると将来の役員が確保できないと判断し、一定程度の報酬を
確保している事例もあります。
会
計
・
税
務
39
Q3
4 農業経営基盤強化準備金の活用方法と手続きについて教えて。
A 農業経営基盤強化準備金は青色申告を行う認定農業者に対する税制の特例措置です。認定農業者
の経営改善計画等に従い、準備金として積み立てた場合、その積立金を損金算入することができます。
さらに、同認定計画等に従い、5年以内に準備金を取り崩したり、受領した交付金等を準備金と
して積み立てずに受領した事業年度で農用地や農業用機械・施設等の固定資産を取得した場合には、
圧縮記帳できます。
集落営農組織の場合、機械等の再投資のための資金は、労賃を分配する際にその一部を「預かり
金」として留保したり、再投資の際に構成員から資金を徴収するといった対応をされています。集
落営農組織を法人化して、農業経営基盤強化準備金の活用が可能になれば、法人独自で機械等の再
投資の積み立てができることになります。
しかし、この積立金を活用する場合、いくつかの留意点があります。一つ目は、機械等の投資計
画を具体的にもつことです。準備金は5年間積み立てができますが、6年目には益金算入すること
になります。したがって、準備金が損金算入されるからといって無計画に準備金を積み立てること
会
計
・
税
務
のないようにすることが必要です。二つ目は、具体的な投資計画を経営改善計画等に反映すること
です。準備金は経営改善計画等にしたがって積み立てたり取り崩したりすることができる制度です
から、準備金を活用して購入する機械等は経営改善計画等に記載がなければなりません。
手続きの大まかな流れは、①仮決算において準備金を試算し、②近畿農政局地域センターで証明
書の発行を受け、③剰余金処分を確定させ、④法人税申告書を提出する、といったものになります。
次ページ以降に農林水産省が作成した農業経営基盤強化準備金のパンフレットを掲載しています
ので参考にして下さい。また、同制度は積立時や取り崩し時には近畿農政局地域センターの証明書
が必要ですので、お近くの地域センターへお問い合わせ下さい。
40
(農業経営基盤強化準備金パンフ)
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計
・
税
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・
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45
Q3
5 法人化後も組合員個人が青色申告で個人所有の機械を経費処理したいが可能か?
A 青色申告は事業主に認められた制度です。したがって、組合員個人の自営の農業経営等があれば
青色申告が可能であり、個人所有の機械の減価償却費の計上も可能だと考えられます。詳しくは、
税理士さんに相談して下さい。
会
計
・
税
務
46
労務管理
Q3
6 農作業事故への対応方法は?
A 集落営農の場合、大型機械が導入されており、農作業事故のリスクも高くなります。よって、労
災保険や傷害保険への加入をおすすめします。
労災保険は労働者に対する保険で、保険料は事業主である法人が負担します。加入するためには
労働基準監督署への手続きが必要です。ただし、代表理事は労働者ではありませんので、労働基準
監督署での手続きでは労災保険に加入できません。代表理事も含めて法人で労災保険に加入するに
は 「労働保険事務組合」
(※1)
を通じて全ての方が労災保険に加入することになります。
ただし、代表理事の加入種別は特別加入の中小事業主等として加入します。この種別は一般の中
小企業の社長と同様のものです。一般の労災保険との違いは保険料だけであり、一般の労災保険が
賃金の1
2/1
0
0
0に対し、特別加入は代表理事が日当を定め、それを基に計算
(※2)
されます。日当の
金額は出役日当と同等とされている法人が多いと思われます。集落営農型農業法人の場合、年間の
保険料が一般の労災保険のものより特別加入の方が高くなります。このことから、
「高い分は個人
で支払う」といった代表理事がおられましたが、代表理事も世代交代を前提にすれば、全ての保険
料を法人が負担すべきです。
加入方法は、代表理事の特別加入もするのであれば、労働保険事務組合に委託することが必要で
すし、特別加入をしなくても労働保険事務組合に委託すれば加入ができます。代表理事の加入をし
ない場合は、労働基準監督署で手続きができます(下表参照)
。
また、不幸にも労災事故が発生した場合は、委託する労働保険事務組合へ連絡すれば同事務組合
で手続きを進めてくれます。労働基準監督署で加入された場合は、労働基準監督署への手続きが必
要です。
農業の場合、危険な作業が伴います。よって、従事者に対する安全教育を十分心がける必要があ
ります。県内でも農機具メーカー・販売店に依頼して安全教育も含めてオペレーターの講習を実践
している事例もあります。
民間の傷害保険会社でも労災事故に対応するような保険があります。JA共済でも「農作業中傷
害共済」という制度があります。こういった保険は一時金ですが、例えば入院が必要となった事故
などの場合、この保険を使って「見舞金」を支給することも可能ですので、労災保険と併せて傷害
保険にも加入することが重要です。
○労災保険の加入方法
提 出 先
提出書類
労働保険事務組合
入会申込書
労働保険事務委託書
労働基準監督署
保険関係成立届
概算保険料申告書
備
考
保険関係が成立した日から10日以内
保険関係が成立した日から50日以内
※1;県内の農業向けの労働保険事務組合
! JAグループ滋賀労働保険事務組合(事務局;JA滋賀中央会)
加入対象;個人の農業者、集落営農型農業法人
" 滋賀県農業法人労務協会(事務局;滋賀県農業法人協会(滋賀県農業会議))
加入対象;個人・有志による農業法人
※2;特別加入の保険料計算方法
日当×3
6
5日×1
2/1
00
0
47
労
務
管
理
Q3
7 オペレーターの確保方法、効率的作業を進めるための作業管理方法は?
A どのような作業でもそうですが、労働者が気持ちよく働ける環境づくりが必要です。オペレーター
の確保には、①適正な労賃単価、②OJTなどによる教育、③参画意識の向上などのことが必要です
(Q2
3の「調査結果一覧表」参照)
。
また、作業管理においては、数ヶ月先までの「出役カレンダー」を作成・配布し、出役当番の組
合員等の都合に応じて組合員等で出役を調整している事例が多くあります。さらに、
「出役カレン
ダー」作成時には、組合員の勤務状況等の生活環境を役員で共有化してあらかじめ調整している事
例もあります。
労
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理
48
Q3
8 集落外の人をオペレーターや役員にできるのか?
A 集落外の人にオペレーターを依頼する場合は、雇用するか組合員として働いてもらうかといった
選択となります。定款で集落外の人も組合員になれるのであれば、組合員として働いてもらうこと
も可能ですし、単なる従業員として働いてもらうことも可能です。定款の規定で集落外の人が組合
員になれないのであれば、雇用して賃金を支払うことになります。
また、農事組合法人の役員(理事)は組合員でなければなりません。したがって、定款の規定に
よって集落外の人が組合員になれるのであれば役員に選出することも可能です。
労
務
管
理
49
助成制度
Q3
9 法人設立にかかる経費4
0万円を助成する事業(戸別所得補償制度)
について
教えて。
A 地域農業の持続的な発展のためには、集落営農(任意組織)を持続性のある経営体(法人)に育
成することか必要となります。
このため、農業者戸別所得補償制度推進事業において、法人化した集落営農組織に対して、法人
登記などの事務費相当として、1法人当たり4
0万円が助成されます。
○交付対象となる集落営農組織は、次のとおりです。
①事業実施年度の3月1
0日までに法人設立登記を行った集落営農組織であること。
②事業実施年度に農業者戸別所得補償制度に加入していること。
③構成員が複数戸であること。
④集落等を単位とした農作業受託組織を基礎として設立された法人であること。
○交付を受ける場合は、
「集落営農の法人化支援申請書」に次の書類を付けて、市町または地域農
業再生協議会に提出します。
①法人設立登記事項証明書
②定款の写し
③構成員名簿
手続きについて詳しいことは、最寄りの市町または地域再生協議会にお問い合わせ下さい。
助
成
制
度
50
Q4
0 農業者戸別所得補償制度の規模拡大加算について教えて。
A.農業者戸別所得補償制度の規模拡大加算については、農業者戸別所得補償制度の加入者が、農地
利用集積円滑化事業
(※)
により、農地を面的集積するために新たに利用権を設定した面積に応じて、
農地の受け手に交付される交付金です。
交付金の単価は、1
0aあたり2
0,
0
0
0円です。
○交付の要件としては、次のとおりです。
①農振農用地区域内の農地であること。
②交付を受ける年度の4月1日から2月末日までに、農地利用集積円滑化事業
(※)
により、公告
が行われた利用権設定であること。
ただし、利用権は存続期間が6年以上のものが対象です。
③面的集積された利用権の設定であること。
面的集積とは、同一の農業者によって経営される2筆以上の農地がまとまりを構成しているも
ので、次のいずれかに該当する場合をいいます。
・2筆以上の農地が畦畔で接続しているもの
・2筆以上の農地が農道または水路等を挟んで接続しているもの
・2筆以上の農地が各々一隅で接続し、農作業の継続に大きな支障のないもの
・段状をなしている2筆以上の農地の高低の差が農作業の継続に影響しないもの
・2筆以上の農地が当該農地の耕作者の宅地に接続しているもの
・農業再生協議会が一連の農作業を継続するのに適当と認めるもの
○交付の申請は、
「規模拡大加算交付申請書」を作成し、2月末日までに地域農業再生協議会に提
出してください。
※農地利用円滑化事業
各市町に設立された農地利用集積円滑化団体(滋賀県では主にJA)が、農地の所有者から農地の
貸付け等の委任を受け、農地を面的にまとめて意欲ある農業者に貸付け等を行う事業です。
51
助
成
制
度
Q4
1 農業用機械等を導入するための経営体育成支援事業について教えて。
A.経営体育成支援事業は、新規就農者や経営発展を目指す農業者など多様な経営体の育成・確保を
図る上で必要となる農業用機械や施設の導入、土地基盤の整備を支援する事業です。
ここでは、集落営農組織が農業用機械を整備する際、活用できるメニューをご紹介します。
①集落営農補助事業
集落営農の組織化・法人化に必要な農業用機械の導入を支援する事業です。
○対象となる集落営農組織は、次の要件を満たしている必要があります。
・農家3戸以上が構成員に含まれている団体であること
・規約、代表者を定めていること
・目標年度までに農産物の共同販売経理を行うこと。
・支援計画の承認までに法人化していない団体であって、目標年度までに法人化することが見
込まれること。
○補助率 1/2以内
②融資主体型補助事業
集落営農組織などが、金融機関からの融資を活用して農業用機械などを導入する場合、融資残の
自己負担部分について助成を行う事業です。
○対象となる集落営農組織は、次の要件を満たしている必要があります。
・規約、代表者を定めていること
・目標年度までに農産物の共同販売経理を行うこと。
○対象となる整備内容は次のとおりです。
・農産物の生産、加工、流通、販売、その他農業経営の改善に必要な機械や施設の改良、造成、
復旧又は取得
助
成
制
度
・農地等の改良、造成又は復旧
○融資主体型補助事業の場合は、融資率が5
0%を超えることが要件となります。
具体的な要件や手続きについては、最寄りの地域農業再生協議会へお問い合わせください。
52
Q4
2 補助事業で導入した機械・施設などの引継手続きは、
どこに相談すればよいのか。
A.通常、国の補助事業等により取得した農業用機械・施設等を有償で譲渡する場合、補助金相当額
の返還が求められます。
しかし、任意団体である集落営農組織の法人化を進めるために、集落営農組織が、農業生産法人
か計画等に基づいて設立した農業生産法人に有償譲渡する場合(法人化前の任意団体と設立した法
人が、実質的に同じ組織と見なされる場合に限ります。
)は、補助金相当額の返還を求めないこと
とされています。また、無償譲渡の場合も、処分制限期間の残期間内で補助条件を継承する場合は、
補助金相当額の返還を求めないこととされています。
ただし、これらの特例を受けるためには、譲渡する前に農林水産大臣に財産処分の手続きをし、
事前に承認をもらうことが必要となります。
財産処分申請にあたっては、財産処分承認申請書に加え、
・財産管理台帳の写し
・譲渡される資産の評価額(第3者による見積書)
・農業生産法人化計画
・法人化以前の組織の組合員名簿
・法人の発起人名簿・構成員名簿
・事業目論見書
・農業機械の現物写真
などの書類の添付が必要となります。
具体的な処分手続きについては、県、地域再生協議会にご相談ください。
なお、譲渡方法については、有償譲渡や無償譲渡などがありますが、それぞれ課税額が異なりま
すので、税理士さんにご相談ください。
助
成
制
度
53
Q4
3 適当な補助金が見あたらず、機械や施設の導入が思うように進まない。
A.なるべく機械や施設の導入経費負担を軽くしたいと思うのは当然ですが、補助金に頼るのはよく
ありません。補助金がつかないと導入できないという考え方に問題があります。
組合としては、中長期経営計画を作成して計画的な運営に当たりましょう。その一環として機械
や施設の更新・導入計画、資金計画、導入したときの効果の試算などを検討しておきましょう。
その計画を市・町やJAと相談しましょう。計画の実行に当たって活用できそうな補助事業があ
れば「ラッキー!」ぐらいに考えたいものです。
補助事業や制度資金の内容は年度によって変わり、手続き等に時間のかかることも多いので、補
助事業を活用するときは早めに関係機関に相談するのが良いでしょう。
○経営体育成支援事業(Q4
1)参照
○機械の更新を予測して積み立てをしましょう。農業共済の農機具更新共済制度は有利です。
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成
制
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