投資家の視点からみたイスラム金融

特集2 イスラム金融
投資家の視点からみたイスラム金融
岩 田 佳 也
目
1.イスラム金融投資のポテンシャル
2.イスラム債(スクーク)
3.イスラム株価指数
次
4.イスラム不動産ファンド
5.イスラム金融におけるリスク管理
中東オイルマネーの拡大、欧米大手金融機関の参入、投資家層の広がりなどを受けて、イスラム金融商品は拡大・
多様化しつつある。非イスラム圏からみたイスラム金融商品に投資する大きな意義は、オイルマネーで潤うイス
ラム圏の経済成長の果実を享受できることであり、中期的に同商品の供給拡大が見込まれる。一方、イスラム金
融市場の拡大を受けてリスク管理が重要な課題となっている。イスラム債の流通市場の整備、金利・為替リスク
のヘッジ手法の開発、格付けの整備などが進んでおり、イスラム法解釈の標準化に向けた機運も高まりつつある。
1.イスラム金融投資のポテンシャル
信託、イスラム株価指数、イスラム保険(タカフ
ル)などの新しいイスラム金融サービスは、イス
 拡大・多様化するイスラム金融商品
ラム圏のオイルマネーのみならず非イスラム圏の
イスラム金融では、中東のオイルマネーの拡大
投資家に対する受け皿ともなり始めている。
を背景にリテールに加えて、ホールセールの市場
規模が急拡大している。高度の金融ノウハウや人
 イスラム金融商品に投資する意義
材を擁する欧米大手金融機関の参入やイスラム圏
イスラム圏においてはイスラム法(シャリア)
および非イスラム圏における投資家層の裾野の拡
の順守が義務付けられる資産の運用規模の拡大を
大を受けて、イスラム金融の品ぞろえは充実しつ
受けて、イスラム金融が有力な投資対象を提供す
つあり、イスラム債(スクーク)
、イスラム投資
る役割を担いつつある。
岩田 佳也(いわた よしや)
野村證券金融経済研究所 アジア調査部投資戦略調査課シニアストラテジスト。1990年
年4月、野村総合研究所入社。同社経済調査部を経て95年より野村綜合研究所(香港)
、
野村シンガポール、野村国際(香港)にて、アジア経済、アジア企業、政府系投資会社な
どの調査活動に従事。2004年1月より野村證券金融経済研究所投資調査部アジア株スト
ラテジスト。05年7月より現職。主な論文に「アジアにおけるイスラム金融―現状と展望」
(
『財界観測』2007年新春号)、「存在感を増す国富ファンド」(
『財界観測』2008年新春号)
などがある。2006年度財務省イスラム金融研究会委員。
証券アナリストジャーナル 2008. 8
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