転換社債発行のアナウンス効果

論 文
論 文
転換社債発行のアナウンス効果
-MSCB発行と投資家の反応-
アブレウ・山田聖子
土
目
1.はじめに
2.データと分析方法
3.日本企業のアナウンス効果
村
宜
明
次
4.MSCB発行のアナウンス効果
5.アナウンス効果の要因
6.結論
本稿では、近年の日本のサンプルを対象に転換社債発行のアナウンス効果を検証した。その結果、市場の反応
は「負」であり、バブル期前後の1980・90年代とは異なることを確認した。特に「下方のみ」に転換価額が修正
されるタイプのMSCBに対し、市場は強い負の反応を示した。検出された負の効果は、バブル期前後と同様に企業
のファンダメンタルズに基づいたものであり、近年、進展した発行形態の多様化は一概に負の効果の要因とは言
えない。超過収益が生じる同様のメカニズムが時期を問わずに働いている可能性が高い。
がどのようなアナウンス効果を持つか、その要因
1.はじめに
は何かを先行研究と比較可能な形で分析する。
近年、日本では転換社債の発行形態が多様化し
企業が株式や債券、または転換社債によって資
ている。かつてのように大企業だけでなく、新興
金調達した場合、その後の株価パフォーマンスが
市場の上場企業も転換社債による資金調達を利用
低下する現象が世界中で観察されている一方で、
するようになった。このような状況の変化に着目
日本では異なる現象が観察されている。Loncarski
し、本稿は近年の日本企業による転換社債の発行
et al.[2006]によると、転換社債発行のアナウ
アブレウ・山田 聖子(あぶれう・やまだ せいこ)
Codenomicon Oy(Finland) Financial assistant. 2002年横浜国立大学国際開発研究科にて博士号取得。医療科学研
究所研究員、科学技術政策研究所研究員、オウル大学経済学部研究員を経て、08年11月より現職。
土村
宜明(つちむら
よしあき)
神奈川大学 非常勤講師。2004年9月横浜国立大学国際社会科学研究科博士課程修了。博士(経済学)
。同研
究生を経て08年4月より現職。著書に『日本の金融問題』
(共著、日本評論社、2003年)
、論文に「最適な負
債構成と企業資産流動化の効率性―債務不履行によるコントロール権移転効果の分析―」
(
『証券経済研究』
、
2007年)などがある。
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証券アナリストジャーナル
2009. 1