派生式

景気循環論
vol.7
小巻泰之
高度成長(2)モデル
暑い(?)ですね....
これが,景気循環の変動要因になるのです!
本日の講義は,景気循環の要因として
(1)乗数効果(池に石を投げ込んだ時の効果)
(2)加速度原理
(3)乗数加速度モデル
を扱います.
景気循環の要因(1):乗数効果
大前提:経済が均衡・不均衡にかかわらず,安定(静止状態)
乗数プロセス
円安だ、儲かる
かもしれない。。
暑いなぁ。。。
新規の
需要
民間消費
増加
生産
拡大
税
増加
生産
拡大
税
増加
雇用増大
所得増加
民間消費
増加
生産
拡大
税
増加
雇用増大
所得増加
貯蓄
増加
民間消費
増加
生産
拡大
税
増加
雇用増大
所得増加
貯蓄
増加
雇用増大
所得増加
貯蓄
増加
景気循環の要因(1):乗数効果
「暑い」という新規の需要が発生
⇒しかし,クーラーは既に生産された分はない(企業は在庫ができ
る商品は作らない)
⇒そこで,クーラーの「生産拡大」を企業は考える
⇒でも,現在の生産量を超える生産のため,新たな雇用者が必要
⇒雇用者が増加し,その企業全体の収益も増加.雇用者の所得も
増加
⇒新たな所得が増加すると,消費したくなる.でも全ては使わない.
新たな所得の80%を使うと仮定
⇒これが,どんどん,次々と行われる
乗数効果の算出方法
100億円の初期需要
2.
派生需要(2次需要)=100*0.8=80
3.
派生需要(3次需要)=80*0.8=64
4.
派生需要64*0.8=51.2......
1
以上のメカニズムにより,初期需要は5倍(=
)となる
(
1
−
0
.
8
)
1
こうして算出した数値を「乗数」(= (1 − c ) )という
1.
(導出)
公的固定資本形成,民間消費支出および国民所得の増加分をそれぞれ
∆I g, ∆C , ∆Y とすれば,以下の式のような掛け算的な伸びとなることから
乗数効果と呼ばれている.
ここで,∆C = c∆Y を ∆Y = ∆C + ∆I g に代入すれば, ∆Y = 1 ∆I g
となる.
1− c
現在の所得の増加が消費の増加につながるというケインズ型消費関数を前提
としたもので,限界消費性向の大きさでその大きさが決定される.
景気循環の要因(2):加速度原理
・資本ストックの変化率と最終需要の増加率との間に決まった関係
がある
I = ν∆Y
・ここで,資本係数を ν  = 資本 産出(GDP ) とすると,設備投資 I とする
景気循環の要因(3):乗数加速度モデル
・ 設備投資が加速度原理で決定されると仮定する.
I = ν∆Y
ここで Y の変化に1期ラグを入れ
∆Y = Y−1 − Y−2 (2)
企業も家計も現在の状況は
分からない
とすれば,(1)式より I は
I = ν (Y−1 − Y− 2 )
(3)
となる.
・ 次に,消費については,1期前の所得によって決定される消費関数を考える.
C = cY−1
(4)
・ ここで,消費 C ,設備投資 I ,外的なショック A (あるいは,政府支出と想定してもよい)からなるマクロ経
済を考えれば,以下の(5)式によって Y は決定される.
先ほどの乗数効果の説明と
同じ(静止状態)
Y = C + I + A = cY−1 + ν (Y−1 − Y− 2 ) + A
= (c + ν )Y−1 − νY−2 + A (5)
*
・ さて,このままでは経済は動くことはない. Y が変動しない(定常状態)状況における Y は定義により
Y * = Y = Y−1 = Y− 2
(6)
そして,新たなショック(暑い
等)が起こる
であるから,(6)式を(5)式に代入することにより,(7)式のような乗数の公式を得ることができる.
Y* =
A
1− c
(7)
・ ここで,突然外的なショック( A の増大)が生じたとしよう.過去の Y である Y−1 , Y−2 は動かないが, A の増
大により Y は増加する.
・ その結果,次の期になると加速度原理により投資が増加する((3)式).消費関数を通じて消費も増大する
から,これもまた Y の増大に寄与することとなる.乗数・加速度原理が相互に作用し,当初 A に加わった単
純なショックが, Y への循環へと変換される.
・ なお, Y の変動は,(5)式を決めるパラメータ c,ν の値に依存する.
シミュレーション : c = 0.8,ν = 1.0 の場合
(5)式を具体的な式とする. Y = 0.8Y−1 + 1.0(Y−1 − Y− 2 ) + A = 1.8Y−1 − Y− 2 + A
外的ショックが起こる前の均衡した経済状況を,A = 100 C = 400 Y = 500
ここで, A にショックが生じ,0期に100の需要が生じたとする
A
Y
C
△Y
I
-2
100
500
400
0
0
-1
100
500
400
0
0
0
200
600
400
0
0
Y=C+A
=400+200
∆Y = Y−1 − Y− 2
=600-500
1
100
680
480
100
100
2
100
724
544
80
80
3
100
723
579
44
44
4
100
678
579
-1
-1
5
100
597
542
-45
-45
C = cY−1
=0.8×600
I = ν (Y−1 − Y− 2 )
=1.0×(600-500)
6
100
496
477
-81
-81
7
100
397
397
-100
-100
8
100
318
317
-100
-100
9
100
275
254
-79
-79
10
100
278
220
-43
-43
11
100
325
222
2
2
12
100
406
260
47
47
13
100
507
325
82
82
14
100
576
406
101
101
15
100
617
461
69
69
先ほどの結果をグラフにすると,,
乗数・加速度モデルの動き
800
700
Y
C
I
A
600
500
400
300
200
100
0
-100
-200
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
(期)
投資サイクル; (投資の二面性から,投資は景気循環の変動となりやすい)
(1)技術革新:コンドラチェフサイクル(約50年周期)
・仏、米などの公債利回りや物価・賃金等の時系列データを観察し発見(1925
年)
・サイクルの原因としては農業、技術革新、戦争及び金生産量の4つ
・技術革新は、その後シュンペーターによりその重要性が強調
(2)建設投資:クズネッツサイクル(約20年)
・実質GDP成長率の動きを観察することにより発見(1930年)」
(3)設備投資:ジュグラーサイクル(約10年)
・英、米、仏の物価、利子率などの観察から7~10年のサイクルを発見(1860年)
(4)在庫投資:キチンサイクル(約3~4年)
・周期3~4年のサイクルを発見(1923年)
・在庫循環は戦後の日本の景気循環と基本的に対応
次回の講義予定
次回は,
vol.8 60年代のアメリカ経済
1.
Goleden 60s
2.
アメリカ経済の変調
を検討します.