サンタクロースっているのでしょうか(2015/12/24)

サンタクロースっているのでしょうか(2015/12/24)
今日は,昨年皆さんに約束した「サンタクロースっているのでしょうか」という話をします。
サンタクロースがいると思う人,挙手して下さい。いないと思う人,挙手して下さい。では,
皆さんが大人になり結婚し,子どもが与えられたとします。自分の子どもから,
「サンタクロー
スはいるの」と聞かれた時,どう答えますか?いないと答える人?いると答える人?
1897 年9 月21日,ニューヨークサン新聞社説は
「サンタクロースいるんでしょうか」
でした。
この社説は,8歳の少女バージニアの問い合わせへの返信です。紹介する社説は,大変生硬な
訳,直訳に近い未熟な訳で,私が訳したものです※1。実は,この本(
『サンタクロースいるんでし
ょうか』偕成社)に中村妙子さんが少女に語りかけるように訳された名訳があります。なぜ私
の訳を紹介するかと言えば,私の訳はどちらかと言うと原文に忠実ではないかと思うことと,
是非,この機会に『サンタクロースいるんでしょうか』を図書館や書店で手に取ってもらいた
いからです。ちなみに,バージニアの生涯を紹介したこの『サンタの友だち バージニア』偕
成社という本もあります。バージニアの手紙は,次のようでした。
編集長様
私は8歳です。私の友達には,サンタクロースはいないという人がいます。パパは,「サン新聞」が
いるというならいるよ,といいます。どうぞ,サンタクロースがいるかどうか,ほんとうの事を教えてく
ださい。
バージニア・オハンロン
バージニアへの返信としての社説は,次のようでした。
バージニア,それはあなたのお友達がまちがっています。その人達は,この世の中の疑い深い影響を
うけているのです。目で見えるものしか信じていないのです。自分達の小さな頭の中で理解できない
ものは,何一つもないのだと思っているのです。
バージニア,人間の頭の中というものは,それそ,それは大人のものであれ,子どものものであれ小さ
いものなのなんです。この広くて大きい宇宙の中では,人間の知恵は,ほんの小さな虫や蟻のようなも
のなんですよ。限りのない世界をおしはかるには,全ての真理や知恵を極める事ができる知性が必要な
のです。
そうです,バージニア,サンタクロースはいるのです。サンタクロースは愛と寛容と献身が確かにあ
るようにサンタクロースもいるのです。あなたは知っているでしょ,愛と寛容と献身が満ち溢れ,あな
たの生活を美しく楽しいものにしてくれていることを。
ああ,もしサンタクロースがいないとすれば,この世の中は何と味気ないものになるでしょう。それ
はバージニアみたいな子どもがいないと同じくらい味気ないことでしょう。そうなれば,この世を生
きていく中で出会う苦しみを耐えるのに必要な,子どものように素直に信じる心も,詩も,ロマンも
なくなってしまうに違いありません。そして私達は手で触れられるもの,目に見えるものだけからし
か,喜びを感じられなくなってしまいます。世界は明るくする子どもらしさという永遠の光も消えて
しまうでしょう。
サンタクロースが信じられないなんて,妖精を信じないのと同じです。なんだったら,パパに頼ん
で人を雇ってサンタクロースを捕まえるためニューヨーク中の煙突を見はらせてみてもいいね。たと
え,煙突から降りてくるサンタクロースが見えなくても,それがどうしたって言うのでしょう。誰も
サンタクロースを見た人はいません。しかし,それがサンタクロースがいないという証拠になるので
1
しょうか。この世の中で一番確かなもの,それは子どもの目にも大人の目にも見えないものなんです
よ。バージニア,あなたは今まで芝生の上で妖精が踊っているのを見たことありますか。もちろん,
ないよね。だからといって,養成がいないという証拠にはならないでしょう。誰もが世の中の見えな
い不思議なものすべてを分りはしないのです。
赤ちゃんのガラガラを壊して,なぜ中から音が出ているのかを知ることはできます。しかし見えな
い世界はベールのカーテンに包まれていて,一番の力持ちでも,いやかつて生きていたすべての力持
ちが束になってもそのベールを引き裂くことはできないのです。ただ信じる心,想像力,詩,愛,夢
見る心だけが,カーテンをどけて,このうえない美しさと輝かしさを見せてくれるのです。カーテン
の向こうの世界は真実でしょう。そう,バージニア,これより真実で不変な世界がいったい他のどこ
にあるでしょう。
サンタクロースがいないって,とんでもない。感謝なことに,サンタクロースはちゃんといるので
すよ,ずっといつまでも。バージニア,今から千年後も。いやその百倍の年月が流れた後も,サンタ
クロースは子どもの心を喜ばせ続けてくれるでしょう。
私が小学校の教員をしていた時,2年生に「サンタクロースってほんとうにいるの」という
授業をしました。その時,12 問のサンタテストをしました。その5問目が「どうして夜中にく
るの」というものでした。この問題の子どもとのやりとりの一部を紹介します※2。
C サンタさんは,夜の方が好きだから。
T 夜が好き,みんな夜の方が好きな人。
(子ども達「夜が好きか」でしばらく自分の好みを述べ合
っている)じゃ,この5番のことでまだ言いたい人。
C サンタは子どもの寝顔がみたいから。
T 子どもの顔がみたい,ああ~。(「ああ~。
」は私の納得と驚きをあらわしたものです。引用者
補足)
C 先生,付け足し。サンタはね。持っていくついでにねぇ。子どものかわいい寝顔がみられるか
ら。
最後にお願いがあります。まだまだ深める必要はありますが,学校では,三宅先生を中心に
先生方全員で避難訓練等,在校中の災害への備えを考えてきています。今,私が気になるのが,
通学中に地震等が来た場合です。皆さんはどうしますか,考えたことがありますか。本校は他
校と違い広範囲から通学してきます。通学中,先生方はいません。保護者の方々もいません。
自分で考え,自分で判断しなければいけません。そこで,冬休み,必ず通学路の点検をして下さ
い。点検の仕方は皆さんに任せます。例えば,このブロック塀は倒れそうだから地震時は避け
て通る等といったことを地図に書き込むのはどうでしょう。点検する前に,自宅から学校まで
の通学路がある市や町のハザードマップを見て,危険な場所を確認するのもよいですね。最終
的に,1・2年生は年度の終わりまでには,通学路安心・安全マップの形でまとめてもらおうと
思っています。3年生は進路などで時間がとられることもありますので,通学路安心・安全マ
ップについてはどうしてもらうかは考えているところです。とにかく,全員,冬休み,必ず自宅
から本校までの通学路の点検はして下さい。
では,皆さん,残された 2015 年を,疑わず,まっすぐ素直に進む心で顔晴って,よい年を迎え
て下さい。
※1 伊藤裕康(2001)『憧れ力を育む授業の構想 とびだせ生活科!地域へ!未来へ!総合的
2
な学習へ!』
,溪水社,119-120
※2 同上,135
「見ざる,聞かざる,言わざる」
,素直な気持ちを大切に(2016/1/8)
明けましておめでとうございます。今年は猿年ですね。猿と言えば,私は,日光東照宮の三
猿を思い出します。三猿は,3匹の猿が両手でそれぞれの目,耳,口を隠した姿で,
「見ざる,
聞かざる,言わざる」を示しているそうです。皆さん,三猿,日光東照宮のどこにいるか知っ
ていますか。猿が馬の守護神とされることから,三猿は神馬をつなぐ神厩舎に彫られています。
そこには,猿の一生を表す8場面が彫られ,三猿は2場面目の幼少期を示しています。この世
の中の悪いことを見たり,聞いたり,言ったりせず,良いものだけを受け入れて素直な心で成
長しなさいという教えを表しているそうです。
12 月 24 日の「サンタクロースっているのでしょうか」では,皆さんに,「残された 2015 年
を,疑わず,まっすぐ素直に進む心で顔晴って行って,よい年を迎えて下さい」と話しました。
三猿の教えのようにまっすぐに,素直な心で進む 2016 年でありたいですね。皆さん,本年も
しっかり顔晴っていきましよう。
http://allabout.co.jp/gm/gc/459570/2/,2015/12/26
アムンセンから学ぶこと (2016/1/8 全校集会後の3年激励会)
3年生の皆さん,受験勉強顔晴って下さい。私のがんばるは,顔が晴れ晴れする「顔晴る」
でしたね。頑張るは頑なに張ると書きます。頑張ってしまって頑なになり,他人の有益な忠告
に耳を傾けられず,自分が自分がと我をはったら成功するものも成功しません。先ほども言い
ましたように,素直な気持ちが大切です。私は,経験上素直な人は伸びると実感しています。
さて,12 月 14 日にアムンセンの南極点初到達の話をしました。実は,スコット率いる英国
隊が先に南極点初到達をめざし航海していました。しかし,南極点初到達争いはアムンセン隊
が勝利します。スコット隊も一月遅れで南極点に到達しましたが,帰路全員が遭難死しました。
御立尚資氏は,
「南極で生死を分けたリーダーシップ」として,次のことを述べています※1。
西堀(栄三郎,引用者)氏によれば,リーダーシップのあり方の様々な違い,両者(アムンセ
ンとスコット,引用者)との明暗を分けたという。西堀氏はその中でも,
「極地探検への情熱」
「チーム運営手法」
「徹底的な準備と細部へのこだわり」
「楽観から来る平常心」などの違い
を,重要な要素として挙げている。ー中略ー
例えば,チーム運営手法の違い。英国海軍軍人であるスコットが,軍隊式の上意下達型の
組織管理を行ったのに対し,アムンセンはメンバーのやる気と創意工夫を生み出すようなチ
ームワーク重視型の運営手法を取っていたという。
アムンセンは,探検の成否を分ける装備品について各メンバーから改良のための知恵を求
め続け,ゴーグルについては「改良コンテスト」まで実施したらしい。西堀氏の述べている
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「チーム運営手法」と「細部へのこだわり」が好循環になっており,まるで日本企業の QC
(品質管理)活動のようである。
「徹底的な準備」という点で見ると,アムンセンの移動手段(犬ぞり)へのこだわりと
それに基づく準備は,スコットのそれと大きく異なっている。アムンセン隊は,北半球から
南半球への航海の間に,そりを引くエスキモー犬を徹底的に労わり,赤道を越える間に,多
くの犬を失いかねないところを,97 匹から 116 匹に増やした。(ヨーロッパから南極に行き
ますよね。途中赤道等熱い所を通過しなくてはいけません。エスキモー犬は寒い所の動物で
すから,暑さに弱いのですね。引用者補足)
そのうえで,南極到着後は犬ぞりの訓練に明け暮れた。この訓練は,基地周辺での練習に
とどまらない。極点探検をする場合には,極地に向かう道中各所に食料貯蔵地点(デポ)を
作る必要があるのだが,そのための遠征も犬ぞりを実地使用する訓練として考え,3 回にわ
たって行っている(スコットは,1 回のみ)
。また,この 3 回の遠征で,衣類やテントなどの
備品についても様々な改善点を見いだし,実際に改良を加えている。
アムンセンは,スコット隊が南極からの帰路全員凍死したのは,飢餓に瀕したためで,原因
は食料を充分適当に配置し得なかったことだと考えていました。アムンセン隊の犬ぞりの大活
躍には,北西航路初通過時にエスキモーから習得した犬ぞりの技術が活きていました。
アムンセンは,スコットの南極点到達計画を知りつつ一足先に栄冠を横取りしたとしてイギ
リスから恨まれました。招かれてのアムンセンの英国地理学協会での講演が終った時,英国地
理学協会会長がアムンセン隊成功の大きな要素だったそり犬の様子を悪意のある皮肉な調子
で質問した後,「ではアムンセン氏を南極点初到達の栄誉に導いた最功労者,そり犬に乾杯!」
と締めくくりました。アムンセンは,
「完全な準備のあるところに常に勝利がある。人はこれ
を幸運という。そして,不完全な準備しかないところに必ず失敗がある。これが不運といわれ
るものである」と応えました。この言葉から分かるように,アムンセンの成功は考えられるだ
けの準備をして怠りなく南極点初到達に備えたことが大きいと思います。
「完全な準備のある
ところに常に勝利がある。人はこれを幸運という。そして,不完全な準備しかないところに必
ず失敗がある。これが不運といわれるものである」
。怠りなく受験の準備をしてほしいです。
12 月 14 日に紹介したように,アムンセンは,極地探検家になるべく,確かに様々な準備を
していましたね。さらに,アムンセン一人ががんばるのでなくチームとして顔晴ったことが,
成功に導いたと思います。以前勤めていた広島の女子大学の私のゼミ生は,皆で励まし合って
教員採用試験を顔晴っていました。当時は教員採用試験の競争率が十何倍と言う大変難しい時
でした。同じ県を受ける人はライバルのはずですが,同じ学校を受ける人はライバルですね,
でも,そんなことを考えず,有益な情報があると教え合っていました。結果的に,仲間で励ま
し合い助け合った方が良い結果が出ていました。試験は自分でやるしかありません。かわりに
他の人が受けられるものでもありません。ですが,励ましてくれる,アドバイスしてくれる仲
間は大きな力になります。しかも,皆さんにあるのは仲間だけではありません。皆さんのこと
を思う保護者の方々,そして先ほど激励してくれた下級生の皆さん,さらに先生方もいます。
最後に,一つの言葉を紹介して終わります※2。
あなたは,学習なしでは生きていけない。
しかし,学習は一人きりでは成立しない。
だから,あなたは一人きりじゃ生きていけない。
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皆さん,受験勉強を顔晴って下さい。
※1http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20070905/134106/?P=1,2015/12/26
※2http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/014.,2015/12/27
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