⽂文化遺産における知的財産権問題 (IPinCH) プロジェクト 「⽂文化遺産における知的財産権問題 (IPinCH) プロジェクト」は、⽂文化遺産の分野で顕 在化しつつある知的財産権 (IP) に関する問題、特に先住⺠民に影響を与える問題を検討 する国際的かつ分野横断的な研究プロジェクトである。プロジェクトは、遺物、考古学 的遺跡、および関連する伝統的知識識 (形象、歌、物語など) や価値観 (Nicholas and Bannister 2004) 等の有形・無形の⽂文化遺産の利利⽤用とその利利⽤用から⽣生じる利利益は、誰 のものか、誰が責任を持つのかという複雑で難しい問題に取り組んでいる。IPinCHは、 研究者、研究機関、先住⺠民コミュニティ、政策⽴立立案者、その他のステークホルダーがこ のような問題に対応し、考古学的遺産などの⽂文化遺産について公平かつ適切切で、効果的 な研究⽅方針や研究活動を⾏行行えるよう話し合うために設⽴立立された。また本プロジェクトは、 知識識の本質に関する洞洞察をもたらし、IPに対する理理解を深め、⽂文化的権利利請求をめぐる 学問的議論論に貢献することも⽬目指している。 IPinCHは、世界中の学者・研究者・実務家・政策⽴立立案者・先住⺠民グループによる共同 プロジェクトであり、⼈人類学・考古学・倫倫理理学・⺠民族⽣生物学・先住⺠民研究・遺産管理理・ 情報管理理・法律律学・博物館研究などの学者・研究者と、実務家、先住⺠民族コミュニティ の成員、および地域・国・国際の各レベルの政府機関や研究機関の政策⽴立立案者が連携し ている。本プロジェクトの重要な点は、カナダ、⽶米国、オーストラリア、ニュージーラ ンド、南アフリカ、ボツワナ、⽇日本、キルギスタンの先住⺠民とその代表組織がパートナ ーとしてプロジェクトに関与していることである。プロジェクトはサイモン・フレイザ ー⼤大学 (カナダ) を拠点としており、ジョージ・ニコラスがプロジェクトディレクター を務めている。 IPinCHは、考古学者のジョージ・ニコラス、⽂文化⼈人類学者のジュリー・ホロウェル、 ⺠民族⽣生物学者のケリー・バニスターによって設⽴立立された。設⽴立立にあたっては、マイケ ル・ブラウンの論論⽂文「⽂文化は著作権で保護できるか」(1998) や、キャサリン・ベルの 「カナダにおけるファーストネーションの⽂文化遺産の保護および返還プロジェクト」 (2000-‐‑‒2009) (Bell and Napoleon 2008; Bell and Paterson 2009) の影響を受けた だけでなく、無形⽂文化遺産に関する問題に取り組む同僚僚との会話からインスピレーショ ンを得ている。本プロジェクトは、カナダの社会・⼈人⽂文科学研究評議会 (Social Sciences and Humanities Research Council of Canada) より7年年間 (2008〜~2015 年年) の助成⾦金金を得ている。 プロジェクト組織と研究⽅方法 本プロジェクトは3つの部分で構成され、研究・分析・情報交換の主要ツールとして、 オンライン・ナレッジベース、コミュニティベース研究、テーマ別ワーキング・グルー プを使⽤用する: (1) 「ナレッジベース」とは、⽂文化遺産のIP問題に関するコンテンツを集めた検索索可能 なフルテキストのオンライン・アーカイブのことであり、出版物、⽂文献レビュー、グロ ーバルケーススタディ、研究プロトコルおよびその他の関連リソースが含まれている。 ⼀一般の⼈人びともこのナレッジベースにアクセスして、⽬目録を検索索することができる。 (2) IPinCHは、世界各地の先住⺠民コミュニティで15の「コミュニティベースのイニシ アティブ」を実施している (Hollowell and Nicholas 2009)。各プロジェクトはIPinCH の資⾦金金提供のもと、コミュニティのパートナーと共同で開発される。パートナーは研究 課題の設定、研究⼿手法の開発、アウトプットの創出のすべてに関与し、プロジェクトデ ータを公表する前にレビューを⾏行行う。プロジェクトでは次のような幅広い問題に取り組 んでいる: 1) 遺物を取り扱うプロトコルの作成; 先住⺠民のIPに関するレビュー・ボード の設置; ⽂文化的配慮を要する場所や情報を外部者が取り扱う際のプロトコルの構築; 2) 地域運営に関する意思決定や政府の協議プロセスに、伝統的⽂文化の原理理や知識識を取り⼊入 れること; 美術館・博物館に所蔵されている先住⺠民の遺物をコミュニティに返還する⽅方 法や、それらに関する知識識の保存⽅方法を開発すること; 3) ⽂文化的に重要な場所の無形価 値を保護するために、政府機関と共同で管理理計画を策定すること。これらは⽂文化遺産と その知的財産権の保護や教育⽬目的での使⽤用を⽬目指す、持続可能で、⽂文化的に適切切であり、 地域コミュニティに根ざした取り組みである。いくつかのプロジェクトでは、コミュニ ティの⻑⾧長⽼老老と若若者が伝統的知識識の収集・⽬目録作成・保存活動に共同で取り組んでいる。 (3) 8つのテーマ別に「ワーキング・グループ」を設置し、研究、作⽂文能⼒力力開発イニシ アティブ、ワークショップを通じて、⽂文化遺産におけるIP問題の理理論論的、実務的、倫倫理理 的、政策的意味合いを検討する。グループは以下の8つに分かれているが、各グループ のテーマは必然的に⼀一部が重なり合っている: 1) ⽣生物考古学、遺伝学およびIP; 2) 連 携、関係構築およびケーススタディ; 3) 商品化; 4) ⽂文化ツーリズム; 5) IPの慣習的利利 ⽤用・⼟土地特有の形態・法形式; 6) デジタル情報システムと⽂文化遺産; 7) IPと研究倫倫理理; および 8) コミュニティベースの⽂文化遺産研究。上記グループは、しっかりした根拠と 事例例に基づく経験的なデータを⽤用いて、⽂文化遺産のIP問題に関する理理論論・実務・政策・ 研究について共同で分析し、報告を⾏行行うとともに、研究倫倫理理、⼈人権、主権、オープンア クセス、⽂文化の商品化が与える影響を検討する。 IPinCHは、特定のIP問題を研究する⼤大学院⽣生とポスドク研究者に研究助成⾦金金を⽀支給し ている。このような問題に関⼼心のある学⽣生、研究者、その他の⼈人びとはIPinCHのアソ シエイトになり、ワーキンググループ、プロジェクトの取り組み、イベントに参加する ことができる。 主な成果 IPinCHプロジェクトの⽬目標は、先住⺠民の知識識体系や研究協⼒力力関係にますます影響を及 ぼすようになっている知的財産権の複雑な問題を理理解することである。こうした問題に 対する理理解を深め、対応を促すために、IPinCHは多様なステークホルダーに⽀支援とリ ソースを提供している。先住⺠民のパートナーと共同開発した連携プロジェクトを通じて 得られた知⾒見見は、新たな理理論論的洞洞察をもたらし、政策⽴立立案の⽀支援や研究における説明責 任の強化につながっている。こうした知⾒見見には、先住⺠民の知的財産権の本質に対する理理 解や、有形/無形の「財産」と⾃自然/⽂文化が分ちがたく結びついている先住⺠民の遺産とい う概念念に対する理理解が含まれている。 IPinCHプロジェクトの⽬目標は、2015年年まで有形無形の⽂文化遺産に関する政策と実践に 貢献し、先住⺠民コミュニティでコミュニティベースの遺産研究を⾏行行う能⼒力力を形成して、 次世代の若若⼿手研究者に研究の現場を経験する機会を提供することである。 参考⽂文献 BELL, C. E. and V. NAPOLEON (editors) 2008 First Nations cultural heritage and law: case studies, voices, and perspectives. UBC Press, Vancouver, BC. BELL, C. E. and R. K. PATERSON (editors) 2009 Protection of First Nations cultural heritage: laws, policy, and reform. UBC Press, Vancouver. BROWN, M. 1998 Can Culture be Copyrighted. Current Anthropology 39: 193-222. HOLLOWELL, J. & G. NICHOLAS. 2009 Using Ethnographic Methods to Articulate Community-Based Conceptions of Cultural Heritage Management. Public Archaeology: Archeological Ethnographies 8: 141-160. NICHOLAS, G. & K. BANNISTER. 2004 Copyrighting the Past? Emerging Intellectual Property Rights Issues in Archaeology. Current Anthropology 45: 327–350 IPinCH のロゴマークは、先住⺠民族コースト・セリッシュのアーティストである lessLIE (Leslie Sam) がデザインしたもので、「不不滅性」を表現しています。lessLIE は、さま ざまな表現⽅方法を取り⼊入れたアートを通じて、伝統的価値観と近代的価値観のインター フェース領領域で、社会的不不平等や政治的不不平等の問題を扱っています。このマークは本 プロジェクトのメンバーであるアーティストの許可を得て使⽤用しています。 • 「ユーコンのファーストネーションの遺産価値と遺産資源管理理」(カナダ・ユ ーコン準州) パートナー: Champagne & Aishihik First Nations Heritage; Carcross-‐‑‒ Tagish First Nation Heritage; Taʼ’an Kwächʼ’än Council; University of Alberta Faculty of Law. 本プロジェクトでは、コミュニティベースのエスノグラフィック・リサーチを⽤用いて、 ユーコンのファーストネーションの遺産価値を検討する。プロジェクトはパートナーで ある 3 つのファーストネーションの遺産管理理スタッフによって企画・指揮された。ユー コン⼟土地請求協定に署名したファーストネーションは、居留留地内にある遺産資源を所有 し、⾃自ら管理理する責任を負っている。ユーコン準州政府とカナダ政府は、ユーコン準州 内の居留留地以外にある遺産資源を管理理する責任を負っている。本研究は、(a) 先住⺠民の 価値観を理理解し; (b) 先住⺠民の価値観と、欧⽶米の遺産資源管理理の考え⽅方や実践に現れる 価値観を⽐比較する⽅方法を決定して; (c) ユーコンのファーストネーションが⾃自らの⼟土地 請求権に基づいて⾃自治を⾏行行い、⾃自らの価値観を採⽤用することにより、遺産資源の管理理に どのような影響がもたらされるかを考察する。本プロジェクトでは、研究倫倫理理とエスノ グラフィック・リサーチの⼿手引きは作成済みである。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/yukon-‐‑‒first-‐‑‒nations-‐‑‒heritage-‐‑‒values-‐‑‒and-‐‑‒heritage-‐‑‒reso • 「IP問題の⼀一つの解決策としての条約関係」(カナダ・オンタリオ州およびノ ースウエスト準州) パートナー: University of Victoria 本研究は、先住⺠民集団とその他の集団との知的財産権に関する問題を解決する枠組みと して、歴史的条約について検討する。具体的には、カナダのオンタリオ州中部およびノ ースウエスト準州で 19 世紀に⾏行行われた条約交渉の記録を詳細に調査する。本研究は、 「財産」、「所有権」、「裁判管轄権」をめぐる現在の論論議の参考になると思われる歴 史的条約のさまざまな側⾯面を、歴史的・⼈人類学的⽅方法を⽤用いて理理解しようとするもので ある。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/treaty-‐‑‒relations-‐‑‒method-‐‑‒resolving-‐‑‒ip-‐‑‒issues • 「シフェップムの基礎⾃自治体 – 有形無形⽂文化の所有権を公的に認めること」 (カナダ・ブリティッシュコロンビア州) パートナー: Secwepemc Territorial Authority; Adams Lake Band; Little Shuswap Band; Dalhousie University. 本研究は、ブリティッシュコロンビア州に居住するシフェップムのコミュニティリーダ ーと伝統的知識識保持者、および社会・法律律・政治を専⾨門とする研究者を結集して⾏行行われ ている。研究チームは、シフェップムの⼈人びとは⾃自らのテリトリー内で経済的・政治 的・法的権限を持っているという前提のもとに、シフェップムの⼈人びとの政治的-‐‑‒法的 権利利に最⼤大の配慮を払いながら、有形・無形⽂文化に関する研究で連携する⽅方法について 議論論を⾏行行っている。本研究は、有形無形の⽂文化財や遺産に関する研究のグッドプラクテ ィスを理理解し、今後の研究プロジェクトに向けて先住⺠民の⾃自決権と基礎⾃自治体を尊重す るガイドラインを提供するものである。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/secwepemc-‐‑‒territorial-‐‑‒authority-‐‑‒honoring-‐‑‒ownership-‐‑‒ta • 「ペノブスコット・ネーションの⽂文化的配慮を要する知的財産権のための政策 およびプロトコル」(⽶米国・メイン州) パートナー: Penobscot Indian Tribe; University of Massachusetts-‐‑‒ Amherst. ペノブスコット・ネーションとマサチューセッツ⼤大学アマースト校のパートナーは、ペ ブノスコットの知的財産権と伝統的知識識を守るためにプロトコルを作成中である。ネー ションの成員と⼤大学関係者が専⾨門チームを結成し、ペノブスコットの遺産に関する問題 に取り組んでいる。特に考古学関連の知的財産権を重視しているが、⾔言語・⼝口頭伝承・ アイデンティティ・⼟土地・家族・ペノブスコット川などの他の⽂文化的問題にも取り組ん でいる。本プロジェクトは現在、知的財産権に関する問題を管理理する制度度を構築し、考 古学研究者と先住⺠民の関係を規定する指針を作成している段階である。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/developing-‐‑‒policies-‐‑‒and-‐‑‒protocols-‐‑‒culturally-‐‑‒sensitiv • 「Ngaut Ngaut 解釈プロジェクト」(オーストラリア・南オーストラリア州) パートナー: Mannum Aboriginal Community Association Inc.; Flinders University. Ngaut Ngaut の岩陰遺跡は、1929 年年にオーストラリアで始めて「科学的」に発掘され た遺跡であるが、地元マナムの先住⺠民にとってはもっと⼤大きな意味を持っている。マナ ムのアボリジニ・コミュニティによれば、Ngaut Ngaut に関する既存の情報は不不完全 または不不正確なものであった。フリンダース⼤大学の考古学者と南オーストラリア州のマ ナム・アボリジニ・コミュニティとの連携は、1 万年年前から神聖な場所であった岩絵遺 跡を共同管理理することにつながり、さらにマナム・アボリジニ・バンドと州政府機関と の関係にプラスの影響をもたらしている。新たにインターネット・リソースが作成され て、岩絵や⼝口承の⽂文化的意味や解釈を記した⽂文書などが共有できるようになった。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/ngaut-‐‑‒ngaut-‐‑‒interpretive-‐‑‒project-‐‑‒providing-‐‑‒culturally • 「ホコテヒ・モリオリ・トラスト: 遺産ランドスケープ・データベース」(ニ ュージーランド・レコフ) パートナー: Te Keke Tura Moriori (Moriori Identity Trust); Hokotehi Moriori Trust. レコフ (ニュージーランド・チャタム諸島) の先住⺠民であるモリオリは、⾃自らのアイデ ンティティ・⽂文化遺産保護・⼟土地利利⽤用・リソース管理理に関する研究を相互に関連づける ために、⽂文化的に配慮した⽅方法でデータベースを作成している。このデータベースは、 モリオリの遺産と知的財産権を保護する必要性が⽣生じたことから作成されたもので、経 済の持続可能性を促進し、⼗十分な情報に基づいて⼟土地利利⽤用に関する意思決定を⾏行行うため に使⽤用される。データベースはモリオリの⻑⾧長⽼老老の知識識に基づいており、モリオリ⾃自らが 研究⼿手法・所有権・使⽤用⽅方法を管理理・メンテナンスしている。データベースの作成・管 理理プロセスには、⻑⾧長⽼老老の持っている伝統的知識識をモリオリの若若者が記録する訓練プログ ラムも含まれ、メンタリングの機能も果たしている。これまでのワークショップは、伝 統的な集会所でモリオリの若若者と返還された遺物の展⽰示とともに開催された。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/moriori-‐‑‒cultural-‐‑‒database • 「キルギスタンにおける草の根レベルの遺産資源の保護管理理」(キルギスタン) パートナー: Kyrgyz Sacred Heritage Association; Uzgben State Museum; Indiana University. 本プロジェクトは、地域コミュニティの観点からキルギスタンにおける知的財産権と⽂文 化遺産の特性を研究する。プロジェクトの⽬目的は、キルギス共和国の⼀一般市⺠民によって ⽴立立案された⼩小規模の⽂文化遺産保護・教育プロジェクトを開発・推進・記録・評価するこ とである。現在、以下の 4 つのプログラムが計画されている: 1) ⽂文化財とキルギスタ ン考古学に関する教師向け教育ワークショップの開催; 2) ⼝口頭伝承を保護するために岩 絵の形象を収集・共有; 3) 神聖な場所の地図を作成; 4) ⽂文化ツーリズムと⽂文化財に関 する会議および教育アウトリーチ活動の実施。キルギスタンの地元コミュニティによっ て、⽣生徒⽤用ワークブック、授業課程、教師⽤用参考資料料、旅⾏行行者向け情報、ラジオ番組、 ⼀一般市⺠民向けウェブサイトが作成されている。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/grassroots-‐‑‒resource-‐‑‒preservation-‐‑‒and-‐‑‒management-‐‑‒kyrgy • 「故郷への旅: 遺⾻骨分析時の知識識⽣生産の⼿手引き」(カナダ・ブリティッシュコ ロンビア州) パートナー: Stó:lö Research and Resource Management Centre; University of British Columbia. 本研究は、先住⺠民の遺⾻骨を研究・返還するベストプラクティスを模索索することに重点を 置いている。遺⾻骨返還によって⽣生じる問題または遺⾻骨返還に関連する問題に対応するた めに、現在 Stó:lō の⽂文化的指導者や精神的指導者と⽣生物⼈人類学者の間で協議が⾏行行われ ており、次のような問題が議論論されている: コミュニティベースの問題に答えることが できるのはどのようなタイプの⼈人類学的研究・科学的分析か。詳細な分析、および分析 の破壊的・⾮非破壊的な⽂文化的意味合いとは何か。問うべき問題や採⽤用すべき研究⼿手段を 決めるのは誰か。成果を解釈するのは誰か。データを所有するのは誰か。得られた知識識 を共有し、知識識から利利益を得ることができるのは誰か。本研究の計画書には、追求すべ き研究の種類や変数が整理理され、研究で得られた知⾒見見を公平に共有することが記載され ているが、関連研究に従事する当事者は、後⽇日、了了解覚書または合意覚書を締結して対 応することができる。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/journey-‐‑‒home-‐‑‒guiding-‐‑‒intangible-‐‑‒knowledge-‐‑‒production-‐‑‒ • 「アクセスの事例例: イヌヴィアルイット (Inuvialuit) とスミソニアン・マクフ ァーレン・コレクションの取り組み」(カナダ・ノースウエスト準州) パートナー: Inuvialuit Cultural Resource Centre; Arctic Studies Center; Parks Canada; Smithsonian Institution; Prince of Wales Northern Heritage Centre. 本ケーススタディの⽬目的は、⽶米国ワシントン D.C.のスミソニアン協会に所蔵されてい るイヌイットの⼈人⼯工遺物コレクション 300 点に関する⽂文化的知識識を、ソース・コミュ ニティに還元することである。これらの所蔵品は 1860 年年代にカナダ⻄西部北北極域で先住 ⺠民のイヌヴィアルイットから収集されたものである。2009 年年にイヌヴィアルイットの ⻑⾧長⽼老老たち、伝統⽂文化の専⾨門家、教育関係者は、上記コレクション(「マクファーレン・ コレクション」)を⾒見見学するためにスミソニアン博物館を訪れた。彼らの訪問はイヌヴ ィアルイットの⼈人びとと博物館関係者双⽅方の関⼼心を⼤大いに集め、イヌヴィアルイットの 若若者・⻑⾧長⽼老老・その他の成員と幅広い内容のアウトリーチ・プログラムを開始することに なった。プログラムを通じて、伝統的⽂文化に関する新しい知識識が⽣生み出されている。ま た、マクファーレン・コレクションの検索索可能なアーカイブが作成されて、Inuvialuit Pitqusiit Inuuniarutait のウェブサイト (www.inuvialuitlivinghistory.com) で展⽰示さ れるようになり、イヌヴィアルイットや関⼼心のある⼀一般の⼈人びとがアクセスできるよう になった。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/case-‐‑‒access-‐‑‒inuvialuit-‐‑‒engagement-‐‑‒smithsonian-‐‑‒s-‐‑‒macfa • 「ホピ⽂文化保護局の歴史と最近の動向」(⽶米国・アリゾナ州) パートナー: Hopi Tribe; University of Chicago. 本研究は、ホピ⽂文化保護局 (HCPO) がホピの⽂文化的知識識やリソースをどのように管理理 しているかを調査する。ホピの伝統的知識識と欧⽶米の知的財産権に対する考え⽅方には⼤大き な違いがある。本研究はアーカイブ研究、オーラル・ヒストリー・インタビュー、フォ ーカス・グループ・インタビュー、参与観察の技法を⽤用いて、HCPO 政策の発展史を記 録している。このプロジェクトでは、予測可能な将来に HCPO とホピ族が持続可能な ⽂文化遺産管理理を⾏行行うための基礎となる実務的ガイドとして、公式の「ホピ⽂文化保護プロ トコルマニュアル」を作成する予定である。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/history-‐‑‒and-‐‑‒contemporary-‐‑‒practices-‐‑‒hopi-‐‑‒cultural-‐‑‒pres • 「ezhibiigaadek asin (サニラック・ペトログライフズ遺跡) に関する教育・ 保護・管理理」(⽶米国・ミシガン州) パートナー: Ziibiwing Center of Anishinabe Culture and Lifeways of the Saginaw Chippewa Indian Tribe of Michigan; University of Massachusetts-‐‑‒Amherst. ミシガン州のサギノー・チッペワ族にとって ezhibiigaadek asin は神聖な場所である。 この場所の岩肌に先祖の教えが 100 以上の岩絵となって残されている。伝統的な⽂文化 ではこうした教えを共有することが重要視されるが、教えが不不適切切に使⽤用されているの ではないかという懸念念がサギノー・チッペワ族の⼈人びとの間に⾼高まっている。特に懸念念 されるのは岩に描かれた形象が商品化されてしまうことであるが、⼀一部の岩絵が⾵風化し つつあることや、故意に破壊されたことも憂慮されている。本プロジェクトの⽬目的は ezhibiigaadek asin の遺跡を保護し、遺産の使⽤用⽅方法を管理理するために、サギノー・チ ッペワ族とミシガン州が共同計画を策定することである。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/education-‐‑‒protection-‐‑‒and-‐‑‒management-‐‑‒ezhibiigaadek-‐‑‒asi • 「ヌナブトにおける⽂文化ツーリズム」(カナダ・ケベック州) パートナー: Avataq Cultural Institute; Kuujjuaq, Kangiqsualujuaq, and Kangiqsujuaq villages. 本プロジェクトはアヴァタク⽂文化研究所の開発によるもので、⽂文化ツーリズムの強化に よってヌナブト地域 (カナダの北北ケベックおよびラブラドール地⽅方) のイヌイットの⾔言 語や⽂文化が受ける影響を調査し、⾔言語や⽂文化を保護することを⽬目的としている。ツーリ ズム開発におけるイヌイットの利利益を理理解することは、ヌナブトのイヌイット (Nunavimmiut) が⾃自らの伝統と⽂文化にマイナスの影響を与える可能性があるツーリズ ムの問題点を理理解し、このような問題にどのように取り組むべきかを検討する⼀一助とな るだろう。この⼀一⽅方で、アヴァタクのチームはヌナブトで⽂文化ツーリズムを促進するこ とも検討しており、カンジルスジュアック(Kangirsujuaq) とカンジッカルジュジュア ック (Kangiqsualujjuaq) の 2 カ所で観光プロジェクトの開発に⼒力力を⼊入れている。ヌナ ブトのイヌイットの利利益に基づいた⽂文化ツーリズムに関する政策パッケージと⽂文化ツー リズムに関するアヴァタクの⽅方針が決定される予定である。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/cultural-‐‑‒tourism-‐‑‒nunavik • 「アイヌにおける⽂文化遺産と⾃自然遺産の概念念」(⽇日本) パートナー: Nibutani Ainu Community; Center for Ainu and Indigenous Studies, Hokkaido University; Simon Fraser University. 本プロジェクトは、IPinCH、北北海道⼤大学アイヌ・先住⺠民研究センター (CAIS)、北北海道 アイヌ協会、およびアイヌコミュニティと共同で実施されている。IPinCH は、情報と リソースの共有を通して北北海道アイヌ協会とアイヌコミュニティに協⼒力力しており、⽂文化 的・知的財産権に関する政策や先住⺠民の遺産を保護するためのプロトコルについて、ア イヌの⼈人びとのニーズを踏まえた取り組みを⾏行行っている。 WEB: http://www.sfu.ca/ipinch/project-‐‑‒components/community-‐‑‒based-‐‑‒ initiatives/ainu-‐‑‒conceptions-‐‑‒cultural-‐‑‒and-‐‑‒natural-‐‑‒heritage
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