マルチメディアDAISY図書を活用してみました!! ~高等部シーコース2

白兎養護学校図書館だより(職員編)NO.3
2008 年 8 月 1 日
発行
毎日暑い日が続きます。夏休みに入っても、日々研修で、忙しい日が続きますが、夏バテしな
いように夏を乗り切りましょう。
さて今回は、7月に行われた高等部の図書館を活用した国語科の実践をご紹介したいと思いま
す。
マルチメディアDAISY図書を活用してみました!!
~高等部シーコース2年国語科の授業実践の紹介~
1
ある生徒の呟きから始まった題材設定
屋外での活動の時間であった。男子生徒たち3人が集まって、何やらこそこそ活動しているの
で何気なく覗いてみると、なんと、1匹のくもを木切れでつついて遊んでいた。そこで、「そん
なことしていると、お釈迦様からくもの糸をたらしてもらえないよ。」と声をかけたところ、「何
ですか。それ?」と不思議そうに尋ねてきた。芥川龍之介作『くもの糸』の話を紹介したところ
「ぜひ、国語の時間に読んでください。」と一人の生徒が興味を示した。そこで「日本文学に親
しむ」というねらいのもと、3時間の計画で学習することにした。
2 授業計画
まずは教材探しのため司書教諭の児島先生に、本校生徒にもわかりやすく学習できるよりよい
教材はないかということを相談し、一方、学校司書の平木先生に『くもの糸』の絵本版を探して
いただくよう依頼した。すばやい連携のもと、私の手元に多少絵の入った文庫本1冊、絵本版1
冊、最新のマルチメディア DAISY 図書が届いた。そこで、以下のような授業計画を立てて学習す
ることにした。
1時間目
文庫本を使ってみんなで順番に音読、その後各自で、視写
2時間目
教師による絵本の読み聞かせ
3時間目
マルチメディア DAISY 図書の視聴と感想
3 生徒の様子
文庫本を読むという経験の少ない生徒たちにとって、1時間目
の授業は苦痛だったに違いない。実際、順番に音読をしようと提
案したとき返ってきた言葉は一斉に「え~っ・・・・」の一言。
読み終えた後も、「長いし、読みにくいし、難しくてよくわから
ん!」との声が多く聞こえた。2時間目、絵本の読み聞かせを終
えた後、簡単な質問をしながら話の内容をみんなで確認。そのう
ち、糸を切った後のお釈迦様の気持ちについて、簡単に尋ねたと
ころ以下のような生徒たちの反応が返ってきた。
お釈迦様の気持ちは?
A:みんなで一緒に上ってくればよかったのに。
B:一人だけ登ろうとするから・・・
C:自分だけ助かろうなんて、なんて奴だ・・・
生徒たちの反応を受け、かなりの手ごたえを感じながら最後の学習、マルチメディア DAISY 図
書の視聴を行った。プロの朗読と視覚的に訴える情景描写が生徒の心をさらにひきつけたようで、
どの生徒も食い入るように見ていた。ある生徒からは「えっ、もう終わり?もう1回見たい。」
という声が上がったほどで、結局リクエストに応え2回の視聴を行った。
生徒の感想
D:最初は「くもの糸」って何だろうと思っていたけれど、
何回も読んでいくうちに、話の内容が分かってきまし
た。難しかったけれどよい勉強になりました。
E: ちょっとし~んとする話でした。糸を切った後のお釈様
はとても悲しそうな顔をしていたのでちょっと悲しい気
持ちになりました。
F:読んでいる人の声がいい声だったなぁと思いました。
4
授業を終えての感想
ある生徒の呟きから始まった今回の授業であったが、正直なところ、シーコース2年生の生徒
たちにどこまで受け入れてもらえるのかという不安がかなりあった。けれど、図書館担当の先生
方の迅速な教材収集により、1つの題材に取り組むのに、3つの教材を使って授業を展開できた
ことが、生徒たちにも無理なく受け入れてもらえた要因だったと感じている。また、最後の学習
にマルチメディア DASIY 図書を活用したことで生徒たちの興味関心をよりひきつけることができ
た。文庫本のままでは理解が難しい場合でも、使う教材によってこんなにも生徒たちの学ぶ姿が
変わるのかと、授業者である私のほうが感心させられた学習であった。このような教材がほかに
もあれば、またやってみたい授業である。お世話になった先生方ありがとうございました。
(文責)
高等部シーコース
国語科担当
澤
尚恵
本校にあるマルチメディア DAISY
マルチメディア DAISY は、現在広く流通して
いる音声 DAISY 図書のさらに進んだもので、音
声とその部分のテキストや画像などがシンクロ
ナイズ(同期)して出力されます。読まれている
箇所がハイライトされるので、どこを読んでいる
のかがわかり、読みの速さのコントロールもでき
ます。
今回の実践では、読みの速さを遅めに設定して
読み聞かせを行いました。活字からだけでは、な
かなか内容を理解することが難しい生徒も、教師
が読み聞かせをしたり、マルチメディア DAISY
を使用したりすることで、話の内容をより深く理
解することができました。ゆっくりと聞こえてく
る音声に耳を傾け、画面に映し出される映像に見
入り、じっくりと話を聞く姿が見られました。
活字からだけでは読書の喜びを味わうことが
できない児童生徒に対しては、特別な資料や人の
存在が必要です。それが、このマルチメディア
DAISY であったり、教師の読み聞かせであった
りするのだと思います。
(文責)児島 陽子
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