社団法人日本ライフル射撃協会競技者育成プログラム

社団法人日本ライフル射撃協会
競技者育成プログラム
競技者育成マニュアル
メインポールを目指して
2004 年度版
競技者育成プログラム委員会編
1
目次
3
はじめに
Ⅰ
Ⅱ
競技者育成活動の環境
1
ISSF
4
2
JOC
6
3
日体協
7
4
NAASH
8
5
JADA
9
6
JSAA
10
7
NRAJ
11
プログラムの実行にあたるもの、指導者として基本的に理解しておくこと
1
指導上の指導者自身の安全確保について
13
2
指導者の損害賠償責任について
15
3
競技者資格並びにスポンサーシップについて
17
4
競技者自身の傷害保険について
25
Ⅲ
競技者の育成
1
一貫指導体制、競技者育成プログラムの定義
26
2
一貫指導体制の基本概念(理念)
27
3
競技者育成の時系列
29
4
競技者育成上の指針
32
4−1
競技への導入、人材発掘段階
32
4−2
競技者の育成段階
35
4−3
競技者の強化段階
38
5
Ⅳ
競技会への参加
41
本会競技者育成事業の実施方針
1
競技会
42
2
選手強化事業
44
2−1
ナショナルチーム強化事業(A事業)
44
2−2
強化選手強化事業(B事業)
47
2−3
競技力向上事業(C事業)
48
3
Ⅴ
成果の評価
50
競技者育成プログラム委員会と育成に係る個別問題
1
競技者育成プログラム委員会
54
2
競技者育成のアワードプログラム
58
2−1
競技者育成優秀コーチ表彰
58
2−2
優秀新人競技者表彰
60
3
ピストル選手発掘育成の特別プログラム
61
2
はじめに
競技者育成マニュアルは、ライフル射撃競技のもつ競技特性とわが国の競技環境を考
慮し、一貫指導体制のなかで指導者並びに事業執行者として基本的に理解すべき事柄を整
理し、効果的な選手育成の一助をなすことを目的として策定されました。
一貫指導体制は平成 12 年度第 151 号告示において文部科学省より示された競技団体の
変革への要望に応え、社団法人日本ライフル射撃協会がその事業構成の見直しを実施し、
国際的競技者の早期の育成とわが国の競技力の向上を目指し、競技者育成マニュアル(本
書)の作成とその実行によりスタートしたものです。その基本的な概念は、競技者にとっ
て上達と共にどのような競技会で成果を収める必要があるかの道程を構造的に示し、指導
者に対しては指導する選手の育成のためのステップとなる事柄を明示することにあります。
従来、わが国の選手強化の大きな障害は法的制限による競技導入時期の遅れがその代
表的なものとして上げられてきました。それらはまさに事実でありますが、反面 16 歳から
の導入では国際的競技力に並ぶためには少なからず遅いことも事実です。国際的競技力へ
の到達に関しては効果的な目標設定やトレーニングの実施で対処することは当然でありま
すが、加えて競技導入以前の子供たちに対する指導・育成も全国的な競技力の向上を目指
すためにはもはや避けては通れない状況となっております。本マニュアルではそうした中
学生以下の年齢に相当する子供たちへの指導にも触れております。指導に当たられる皆様
にはぜひとも中学生以下の子供たちの中から才能を発掘する作業もお願い申し上げます。
本マニュアルは平成 16 年度以降の本会の諸事業の基本方針にも触れられており、指導
者がその流れを掌握することは選手育成の基本ともいえます。なにとぞ選手の指導に当た
られる方々ならびに本会事業の実行にあたられる方々には本会と本会を取り巻く環境の変
化を充分理解していただき、日本のライフル射撃競技のレベルアップと一人でも多くの国
際級選手の誕生を目指そうではありませんか。
平成 15 年 11 月 22 日
競技者育成プログラム委員会委員長
岸高
清
3
Ⅰ
競技者育成活動の環境
<競技を管轄する組織と競技者育成活動の関係>
1.
ISSF(International Shooting Sport Federation=国際射撃スポーツ連盟)
ISSF は本部をドイツ・ミュンヘンに置き、世界の射撃競技を統括し、
世 界 の 競 技 射 撃 界 を 代 表 し て IOC に 参 加 す る IF ( International
Federation ) と し て 活 動 を し て い ま す 。 本 会 も NF ( National
Federation)として ISSF に加盟し、競技規則は ISSF の制定する国際共
通規則を採用しています。
ISSF の総会では各国 2 票の投票権がありますが、日本の場合ライフル競技・ピストル
競技を統括する本会とクレー競技・ランニングターゲット競技を統括する社団法人日本ク
レー射撃協会がそれぞれ 1 票の投票権を分け合っています。現在ではこのような同一国で
複数団体による加盟は認められていません。
ISSF は IOC との間の射撃競技における唯一の交渉団体としてオリンピックの開催や
参加について様々な取り決めを交わします。オリンピックの参加人数や実施種目も ISSF と
IOC の話し合いの中で原案が作成され、IOC 総会で最終決定がなされます。北京オリンピ
ックでは QP(Quota Place=オリンピック参加権)数が 390、実施種目が 15 種目の予定で
す。また本会の管轄種目の中のオリンピックで実施されるのは以下のとおりで、本会にお
ける一貫指導体制の対象となる競技種目はこれらのオリンピック実施種目となります。
50mライフル 3x40
50mライフル P60
男子種目
10mエア・ライフル
50mピストル
25mラピッドファイア・ピストル
10mエア・ピストル
50mライフル 3x20
女子種目
10mエア・ライフル
25mピストル
10mエア・ピストル
4
QP はワールドカップ大会・世界選手権大会・大陸選手権大会であらかじめ定められた
数だけ、QP 未獲得者のなかで上位の選手の所属 NF に対して配分されます。QP を獲得し
ていない NF はオリンピックに参加できません。したがって競技者育成プログラムの第一義
的目標は QP の早期の獲得に置かれます。オリンピックの翌年に相当するオリンピアードの
2 年目は QP の配分は実施されず、3・4 年目に配分されますので、ナショナルチームの目
標もそれに応じて、例えば北京オリンピックに向かっては、2005 年は強化に重点を置き、
2006-7 年は QP の獲得に、そして 2008 年に向かってメダルの獲得に重点目標が移行して
いくこととなります。
オリンピアード
1 年目
3 年目
3 年目
4 年目
チーム目標
メダルの獲得
競技力強化
QP 獲得
QP 獲得
各 NF は獲得した QP に対して、ISSF が公認した競技会において MQS(Minimum
Qualification Score=参加標準記録)を突破した選手の中からオリンピックに代表選手を送
ることが出来ます。アテネ大会の MQS は以下のとおりとなっておりますが、そのレベルは
低く設定されており実際の参加制限とはなっておりません。MQS は 4 年ごとに見直されま
す。
50mライフル 3x40
1135
50mライフル P60
587
10mエア・ライフル
570
50mピストル
540
25mラピッドファイア・ピストル
573
10mエア・ピストル
563
50mライフル 3x20
555
10mエア・ライフル
375
25mピストル
555
10mエア・ピストル
365
競技の指導に当たる指導者にとって ISSF の動きに関する情報は重要なものですが、な
かでも競技規則の変更については随時情報を獲得する必要があります。ISSF の規則変更は
わが国では ISSF で実施された年の翌年から実施されますので、競技者のトレーニングに関
する長期計画の立案の際にはとりわけ留意が必要です。またすでに代表候補レベルに到達
した競技者については ISSF 当年規則により競技することになりますので、とりわけ ISSF
で規則変更年にあたるオリンピアード 2 年目(オリンピック開催の翌年)については ISSF
5
規則と日本国内規則の間に時間的ギャップ(1 年間)が生じるので注意が必要です。ISSF
規則変更の概要は本会ホームページでご覧いただけます。また ISSF ホームページでは英文
規則の全文がダウンロードできます。お手持ちのノート PC に保存するなどして活用するよ
うにしてください。
2.
JOC(財団法人日本オリンピック委員会)
JOC はわが国のオリンピック委員会として IOC に加盟しています。本会は
JOC に加盟し、オリンピック大会とアジア競技大会に関しては JOC の決定を受
け選手を派遣することとなります。またユニバーシアードを管轄する日本ユニ
バーシアード委員会も JOC の一部門として組織されていますので、FISU(Federation
Internationale du Sport Universitaire=国際大学スポーツ連盟)の管轄する世界学生射撃
選手権大会へのエントリーなどは JOC を経由して行うことになります。
JOC の認定のもとに送り出される国際競技大会のうち最大のものはオリンピック競技
大会とアジア競技大会で、これらの派遣人員枠は競技実績により査定されますので不断の
競技に関する好成績を獲得し続ける必要性は競技団体の宿命とも言えるでしょう。また本
会の行う代表選手派遣事業の多くも助成金の交付を伴う JOC 委託事業となっており、本会
の強化事業の目標として継続的な国際級競技者の育成が基本的なものとなります。
JOC の全競技に共通した強化プランは
ゴールドプラン
と呼ばれ、ゴールドプラン
のもと様々な事業が実施されています。JOCではすでに「競技者個人がその才能を絶え
間ない努力で鍛錬し、オリンピックにおいて栄光を勝ち取る時代は終わりを告げた」(JO
Cゴールドプラン担当理事市原則之氏)という方針で、事業そのものの再編成を行ってい
ます。本会では射撃競技のもつ特性を考慮し、個人の努力が果実をつけやすくなるような
競技会や事業のあり方を求め、競技者育成マニュアル(本書)を作成し、ゴールドプラン
の実施現場としての活動を展開しているところです。ゴールドプランでは強化全般の事業
のあり方を定めていますが、そのなかのナショナルコーチアカデミー及びナショナルスタ
ッフプログラムは現場の指導者に直接・間接にかかわってくる事柄ですので、競技者育成
に携わる方々は JOC の発信する情報を常に入手することが必要です。
ゴールドプランにおける強化では、強化スタッフを以下のとおり分類しています。
コーチングスタッフ
マネジメントスタッフ
情報・戦略スタッフ
6
医科学スタッフ
本会の選手強化事業(このなかの最高峰としてナショナルチームの強化・遠征事業が
位置することになります)もこれらの分類に基づき強化スタッフが組織されていきますの
で、競技現場の指導者の方々におかれましても各分野の連携を図るようご協力ください。
3.
日体協(財団法人日本体育協会=JASA, Japan Amateur Sports Association)
本会の加盟する財団法人日本体育協会は、競技者育成に当たる方々にとって
国民体育大会の開催にあたってのリーダーとしての存在感が大きいのですが、一
方、本会は現在参加していませんが、今後国民体育大会と補完関係をなすと見込まれる日
本スポーツマスターズも日体協が中心となって主催する事業です。国民体育大会はその性
格を社会体育の頂点から競技スポーツの頂点の競技会へと変革されつつあります。ライフ
ル射撃は社会体育と競技が一体となっている側面が強く、本会としては環境が改善されつ
つあると捉えるべきでしょう。
本会はそのほかにも様々なサポートを日体協から受けています。代表的な例は本書を
手にしておられる皆様方の多くが修了されている競技力向上指導者養成事業があげられま
す。本会では近い将来国民体育大会の監督になられる資格に C 級コーチ(制度が変わりま
す)または一定の資格の取得を条件とする予定でおりますので(現在 30%の競技が C 級コ
ーチ資格を監督要件としている)、指導者資格をお持ちでない方は出来るだけ取得するよう、
また現役の競技者の皆様方で将来指導者として活動される可能性の高い方々は指導者資格
を取得されますようお願いいたします。本会ではナショナルチームのコーチになるには B
級コーチまたは同等の知識・経験を求めております。
国民体育大会を頂点とする日体協の活動はスポーツ振興基本計画の告示以後大きく変
貌を遂げようとしています。地域の体協が主体となり将来 NPO の取得を念頭に置いた総合
型地域スポーツクラブの活動はその代表的な例といえます。従来の学校体育に基盤を置い
た日本のスポーツ活動の一部を地域に基盤を置き換えて全年齢を対象者としたスポーツ活
動にするということですが、競技者育成に携わる方々は人材発掘活動の可能性のなかに総
合型地域スポーツクラブの活用も選択肢に入れておく必要があるものと思われます。また
ISSF によるサマーバイアスロン競技の開始に呼応する形での競技導入活動の新たな可能性
にも目を向ける必要があるでしょう。
日体協では公認スポーツ指導者(スポーツ少年団登録指導者、体力テスト員を含みま
7
す。)保険制度を実施しております。本会では競技者育成に当たられる方々に、当該保険ま
たは類似の損害賠償責任保険の購入を強く推奨いたしております(別掲)のでご一考いた
だけますようお願いいたします。
4.
独立行政法人日本スポーツ振興センター
(NAASH=National Agency for the Advancement of Sports and Health)
平成 15 年 10 月 1 日より特殊法人日本体育・学校健康センターが独立行政法人に本ス
ポーツ振興センターに衣替えしております。
NAASHの業務は以下の通りです。
①
国立競技場、国立スポーツ科学センター等の施設運営
②
スポーツ振興基金によるスポーツ団体の選手強化活動等への助成
③
スポーツ振興投票(toto)の実施及び収益によるスポーツ環境の整備等への助成
④
学校の管理下における児童生徒等の災害に対する災害共済給付
⑤
スポーツに関する調査研究並びに資料の収集及び提供等
⑥
その他
これらの事業のうち①②および③については本会が直接恩恵を受ける事業であり実際
にこれまでも多くの助成を受けてきました。
①
国立スポーツ科学センター(JISS)で
は、研究・訓練施設としての射撃場(ア
ーチェリー場を兼ねる)を年間契約で貸
借しております。(写真)ここでは 25
mのライフル・ピストル標的、10mラ
イフル・ピストル標的が設置され、ナシ
ョナルチームのトレーニング並びに技
術研究が可能となっています。指導者養
成事業も主には AV 装置の充実した
JISS の会議室で行われることとなっています。
②
スポーツ振興基金は、平成2年に政府出資金250億円を受けて設立されました。
これに民間からの寄付金を合わせて基金規模の拡充を図り、その運用益と国庫補助
金等を財源として、我が国のスポーツの国際競技力向上とスポーツの裾野を拡大す
8
るため、文部科学省及びスポーツの統括団体である財団法人日本体育協会、財団法
人日本オリンピック委員会等の関係機関と
密接に連携しながら、スポーツ団体、選手・
指導者等が行う各種スポーツ活動に対して、
必要な資金援助を行っています。本会も中央
競技団体としてスポーツ振興基金より直接
助成を受ける立場にあり、JOC 特別強化指
定選手(制度が変更される可能性がありま
す)とそのパーソナルコーチに対する強化補
助、強化事業等に対する助成を受けています。
③スポーツ振興くじは、21世紀の我が国のスポーツ環境の整備・充実を図るため、新
たな財源の確保を目的として始められたもので、その収益は、誰もが身近にスポーツに
親しめる環境づくりから、世界の第一線で活躍する選手の育成まで、あらゆるスポーツ
の振興を図るために活かされます。toto の助成は競技者育成プログラムの運営に対して
もその助成対象となっています。
5.
財団法人日本アンチドーピング機構(JADA=Japan Anti-Doping Agency)
スポーツ振興基本計画ではアンチドーピング活動に力点を置いています。
本会も JADA の加盟団体としてアンチドーピング活動に参画しています。
JADA は文部科学省、JOC などが協賛した財団で、国内のドーピング検
査や陽性結果に基づく制裁処分を決定したりする機関でもあります。全日本選手権や国民
体育大会などでドーピング検査が実施されますが、仮に陽性結果が出た場合、それに対す
る裁定は原則的に JADA が行います。
(国民体育大会におけるアンチドーピングコントロー
ルには別途日体協規定があります)本会や日体協、JOC には基本的に権限がありません。
過去にライフル射撃の全日本選手権におけるドーピング検査で陽性反応を示したサンプル
が出たのですが、その当時は制裁などが競技団体の権限であったので
悪意なし
として
当該選手は失格に処せられました。IOC コードでは 2 年間の資格剥奪であったので現在同
じ事例が生じると、原則として 2 年間の資格剥奪が科せられると理解する必要があります。
9
競技現場ではドーピング検査だけがアンチドーピング活動と捉えがちですが、その活
動はスポーツからドーピングを追放しようとするもので、日常から薬物に頼った競技活動
の可能性を排除する決意が必要です。ドーピング検査は競技外検査も実施され、また登録
競技者全員が対象となりますので競技者全体の意識向上が求められます。本会の競技者育
成活動にあたられる方々にはアンチドーピング活動の推進者となられますよう要請いたし
ます。本会ではアンチドーピングに関する情報を本会 WEB サイトにて広報いたします。
JADA は世界アンチドーピング機構(WADA)に加盟しており、日本のアンチドーピ
ング規定は世界と同一のものとなっています。オリンピックなどで実施されるドーピング
検査は WADA が実施します。WADA の設立にもっとも多額の拠出をしたのは日本の文部科
学省であることを見てもわが国のアンチドーピング活動への取り組みは強固なものと捉え
る必要があります。
6.
日本スポーツ仲裁機構(JSAA= Sports Arbitration Agency)
JSAA は JOC、日体協、財団法人日本障害者スポーツ協会の支援で、わが国におけるス
ポーツをめぐる競技者と競技団体との紛争について、仲裁による解決を円満に行い、スポ
ーツ界のさらなる発展に資することを目的に設立された機構です。裁判による紛争解決は
選手生命を考えると時間的に制約が多く結果的に問題解決とならない場合が多いことを考
慮し、早期和解を目指した仲裁を取り持つ機関として設立されました。
対象とする紛争は、競技会への参加資格、代表競技者の選定、ドーピング検査結果に基
づく処分など、スポーツ競技またはその運営に関して競技団体またはその機関がした決定
について、競技者またはその競技者の属する団体が申立人として、競技団体を相手方とし
てする仲裁申立てだけとなっています。また競技団体同士の紛争、競技団体が競技者を相
手として何らかの請求をするもの、さらには、スポンサー契約や放送契約などをめぐる紛
争も当面は対象外とされています。
現段階では仲裁に法的効力はありませんが、中立な立場の弁護士や元選手の方々で構成
される委員の仲裁であるので、当事者双方の良識のもと紛争を円満に解決する手段として
期待されています。詳細につきましてはhttp://www.jsaa.jp/をご参照ください。
10
7.
社団法人日本ライフル射撃協会(NRAJ=National Rifle Association of Japan)
社団法人日本ライフル射撃協会は文部科学省認可の公益法人であり日本のラ
イフル射撃競技を統括する団体として存在しています。NRAJの行う事業は定款
に規定されており、そのなかの多くの部分が競技者育成プログラムに包含されま
す。(次表)
定款に定めるNRAJの事業
一
ライフル射撃の普及および指導に関すること
二
ライフル射撃に関する講習会の開催および指導者の養成
三
ライフル射撃に関する,日本選手権大会の開催およびその他の競技会の開催
四
ライフル射撃に関する国際競技大会等に対する代表参加者の選定および派遣
五
ライフル射撃に関する競技規則およびアマチュア規程の制定
六
ライフル射撃に関する審判員の養成およびその資格の認定
七
ライフル射撃に関する競技場の施設・設備の整備に対する指導およびその公認
八
ライフル射撃に関する銃器,弾薬および標的の検定
九
ライフル射撃に関する選手の競技力の向上,および段級審査に関すること
十
ライフル射撃に関する記録の公認
十一
ライフル銃の管理およびライフル射撃の安全確保の指導
十二
ライフル射撃に関する資料の収集および保存
十三
ライフル射撃に関する機関誌および図書の発行
十四
国際射撃連合等に対し,日本のライフル射撃界を代表して加盟すること
十五
財団法人日本体育協会及び財団法人日本オリンピック委員会等に対し,ライフル射
撃界を代表して加盟すること
十六
その他前条の目的を達成するために必要な事業
競技者育成の現場から見ると、本会の存在意義は概略的には2点に集約されます。
第1は人格のある法人として日体協に代わり銃砲刀剣類所持等取締法上の競技者として
の認定を実質的に行うこと。これには法律で定められる国際競技、射撃競技の存在を保障
したうえでの行為でなければいけませんのでNRAJの法人としての存在はISSF射撃に参画
することによって成立していることは明らかです。
第2は、最終的に国際競技において日本の知名度を高めるための活動を実施することで、
競技者育成プログラムの各パーツとなる諸事業を有機的に結合させ一貫指導体制を構築、
運営していくことがその存在意義として挙げられます。この点は従来の活動方針から変革
11
を迫られる部分であり、政策=スポーツ振興基本計画を推進する現場である競技団体に課
せられた役割であるといえます。政策目標はオリンピックでのメダル獲得率を3.5%にする
ことですが、そのために社会体育的活動を含めた強化体制の再構築(=一貫指導体制の構
築)が要求され、本会では競技者育成プログラム委員会が結成されてこの目標に取り組ん
でいるところです。本会主催の競技会の開催形式などが変化していくのも政策目標実現を
目指してのことであり、指導者は競技がおかれた社会環境の変化にも敏感であることが要
求されます。それについてはすでに競技者自らによるスポンサーシップの獲得や職業競技
者の容認などの規制の解除などに変化の一端が現れています。
ライフル射撃競技を取り巻くスポーツ組織の概要
12
Ⅱ
1.
プログラムの実行にあたるもの、指導者として基本的に理解しておくこと
指導上の指導者自身の安全確保について
射撃競技はオリンピック種目の中で身体的に最も安全な種目といえます。もちろん威
力が小さいとはいえ銃器を取り扱いますので、最大限の安全規律が必要ですが、それらの
規律は代々の安全教育の継承によって確立されるものです。競技の指導にあっては、規則
に掲げる安全規律を競技者に第 2 の天性となすべく繰り返し指導することが必要です。ま
た安全に関する教育は指導者の第 1 指導義務であることも忘れてはなりません。安全に関
しては、それのもつ重大な意義を競技者に理解させ、時には叱責という手段もとりいれる
必要性を理解すべきです。
本会では競技会での安全性の確保は競技者の将来の可能性を確保すると共に、競技そ
のものの存続を保証するものと捉え、指導者、競技者ともどもその重要性を常に認識する
土壌を継承していくことを重点課題とします。
指導者は以下の安全規則を、規則としてだけではなく競技継続の基本要件としての性
格も交え競技者に指導してください。(太字の部分は行動規範として指導してください)ま
た指導者自身、技術指導の際に必要とあれば競技者の銃器のボルトの解放、ラッチの開放
を自ら確認する習慣を身につけてください。指導上の必要性で射撃線の前に出るときは特
に注意し、習慣となるようにしてください。
日本ライフル射撃協会国内危害予防規則(一部省略)
本規則は危害予防上、銃器、弾薬の所持、保管並びに取り扱いについて守らなければなら
ない事項について定める。射撃にたずさわるものは競技役員も含めて本規則を完全に理解、
吸収し、危害予防に立脚した優れた競技人たることを本分とする。
2.1
銃器の所持、保管、携行及び使用、並びに火薬類の譲り受け、保管にあたっては
「銃砲刀剣類所持等取締法」および「火薬類取締法」またはその関係法令に定められた諸
条項を確実に遵守しなければならない。
2.2
銃器、弾薬の取り扱い
射手は当項を反復、復習、実行し第二の天性とするまでにならなければならない。
2.2.1
射撃をする場合のほか、銃を手にしたときは必ず「抜弾してあること」を確
認すること。
2.2.2
銃はたとえ「抜弾してあること」を確認しても絶対に人または人のいる方向
13
に銃口を向けてはならない。
2.2.3
弾を装填する場合は銃口を概ね自己の標的の方向を向けて装填すること。
2.2.4
銃を置く場合は必ず銃を「安全な状態」にしなければならない。
安全な状態とは、
① エアガンでは装填ラッチを上げるか、蓄気レバーを開放するか或いは蓄気ボンベを外
す、
② ボルト式にあってはボルトを開放する、
③
自動式にあってはスライドを後部で固定する、
④
弾倉付きの銃の場合は弾倉を外す、
⑤
その他の場合は物理的に弾が発射できないことが外観から明瞭に識別できる、
以上の状態と定義する。
2.2.5
銃を人に手渡すときは、必ず抜弾してあることを確認し、
「安全な状態」にし
て手渡さなければならない。
2.2.6
許可なく他人の銃に触れてはならない。
2.3
射撃場における遵守事項。
2.3.1
当該射撃場で定める管理規定(使用規定)を遵守すること。
2.3.2
酒気を帯びて射撃場に入ってはならない。
2.3.3
常に危害予防に細心の注意を払い、射撃線においては銃口は常に標的の方向
に向けておかなければならない。
2.3.4
銃声等で射場長や射場役員の号令が聞こえなかった場合、これを正しく確認
してから次の行動に移るのは射手の義務である。
2.3.5
他の射手の注意をそらし、または射場長の指示、号令の徹底を結果的に妨害
する言動を行ってはならない。
2.3.6
銃を置いたまま射座を離れるときは、射場役員の許可を得て銃を「安全な状
態」にしなければならない。また競技中、許可なく銃を射座より移動させてはならない。
2.3.7
銃の手入れまたは修理は、必ず射座あるいは定められた場所で行うこと。
2.3.8
整備不良、機能不良の銃、または危害予防上疑念のある弾薬を用いて射撃を
してはならない。
2.3.9
監的壕のない射撃場において2名以上の射手が射撃をする場合は、必ず射場
長を定め、射場長の統制のもとに射撃を行うこと。射場長は射場備え付けの射場長章を着
用すること。射撃線より前方に出る場合に際しては射場長は STOP (射撃中止)の号
令を発し、全射手はただちに銃を「安全な状態」にして床または銃置台に置かなければな
らない。全射手が「安全な状態」の銃を置いたことを確認した上で、射場長は、 標的交換
等の号令を発する。射手は安全を確認の上
出ます
と合図して標的交換等のため射線前
に出る。作業終了後の安全の確認が終了し、射場長の START (射撃開始)の号令が
あるまで射手は射撃を再開してはならない。
14
<指導結果の評価>
指導者は以下の点を自ら観察し指導成果を確認してください。
1. 競技者が銃をケースより取り出した直後に銃を安全な状態にする行動が習慣化さ
れているかどうか。
2. 空気銃の装填の際に銃口の方向が標的方向を向いているかどうか。
3. 射撃中止または終了の際に競技者が直ちに銃を安全な状態にしているかどうか。
<本会の方針>
競技を安全に遂行する習慣のない競技者はナショナルチーム員に選出されることはあ
りません。しかしながら代表選手に限らず、安全に対する重要性の認識に関しては、技術
レベルの差異にかかわらず等しく競技者、指導者全員に求めるものです。また会員外の方々
に対しましても安全に関して本会は指導的立場にあるものという認識の下、安全な応援、
見学をお願いしています。競技指導に当たられる方々にも安全に関しては認識を共有する
ようお願い申し上げます。
2.
指導者の損害賠償責任について
<本会の方針>
競技指導中の事故に関しましてはあってはならないこととはいえ、可能性はゼロでは
ありません。銃器による事故は注意力と指導によりかなりの確率で防止で来うることでは
ありますが、熱中症の発症や突然死に対しましては充分な注意力の範囲を超えたところに
起因する場合も考えられます。高校部活動の顧問の先生や職務による競技指導に携わる方
はともかく、ボランティアを主体とするライフル射撃競技指導者の競技者の事故に対する
監督責任に関しましては充分の配慮をしていただくと共に、本会は各指導者の責任におい
てなんらかの損害賠償責任保険に加入されるよう強く推奨いたします。
一例として(財)日本体育協会公認スポーツ指導者総合保険制度を以下に紹介いたし
ます。(各種損害保険会社の商品もご検討ください)
15
(財)日本体育協会公認スポーツ指導者総合保険制度概要=平成15年度版
1.
本制度の趣旨
日本体育協会では、本会に登録した公認スポーツ指導者のみなさま方が常に安心して指導活動に専念できるよ
うに、本制度を昭和 62 年に設置致しました。本制度は、指導者が負傷したり、他人からの損害賠償の請求を受
け、治療費・慰謝料等の多額の出費を負担せざるを得なくなった場合に、迅速に救済・補償できる制度としてお役
に立っています。
2.
対象となる指導者
財団法人日本体育協会 公認スポーツ指導者(スポーツ少年団登録指導者、体力テスト員を含みます)
※但し、スポーツ指導を職業とされている場合は、本制度に加入することは出来ません。
3.
(1)
対象となる事故
指導者自身の傷害
指導者ご自身が、指導を行なっている間、自主練習中等に負ってしまった傷害が対象となります。
※
(2)
傷害とは、急激かつ偶然な外来の事故によってその身体に被った傷害のことをいいます。
他人への賠償責任
指導者として登録されたスポーツ指導中 や練習中の事故で指導者が負うべき法律上の損害賠償責任額(治療
費、修理代など)が対象となります。
4.
本制度では対象とならない主な場合
●
お申し込み人や保険金を受け取る方の故意による事故
●
自殺、犯罪または闘争行為による事故
●
無資格運転または酒酔運転中の事故
●
頸部症候群(いわゆる「むちうち症」)または腰痛で他覚症状のないもの
●
山岳登はん、ハンググライダー、リュージュ、スカイダイビングなどの危険な運動によるケガ
●
自動車、船などによる賠償責任
●
世帯を同じくする親族に対する賠償責任
●
預かっていた他人の財物に対する賠償責任
●
地震・噴火、津波による事故 ・・・など
5.
加入タイプと支払われる保険金
Aタイプ
指導者自身の傷害 死亡保険金
後遺障害保険金
Bタイプ
500 万円
200 万円
最高 500 万円
最高 200 万円
16
入院保険金
4,500 円
3,000 円
3,000 円
2,000 円
(1日につき)
通院保険金
(1日につき)
Aタイプ、
1事故につき1億円限度として賠償金の金額を補償します。(免責 1,000
他人への賠償責任
Bタイプとも同じ 円)
※
「公認スポーツ指導者総合保険制度」は普通傷害保険・施設賠償責任保険で構成されています。
※
入院・通院とも初日から対象となります(免責日数なし)。ただし、入院・通院とも事故日からその日を含めて 180 日目までが
対象期間となり、通院はその期間内の 90 日分が限度となります。
※
通院保険金について、保険の対象者が平常の業務に従事すること、または平常の生活に支障がない程度に傷害がなおっ
たとき以降の通院に対しては保険金の支払い対象になりません。
※
整骨院での治療の場合の保険金の支払いは、病院または診療所での治療の場合と取扱が異なります。また、骨粗鬆症等
の疾病とケガとが重なった場合は、ケガの部分のみの支払いとなります。
※
既往症や、野球肩・テニス肘など長年の蓄積による症状については、保険金のお支払いの対象とはなりません。
[お問い合わせ]
財団法人日本体育協会 公認スポーツ指導者総合保険制度係
〒150-8050 東京都渋谷区神南 1-1-1
TEL 03-3481-2210 / FAX 03-3481-2284
3.
競技者資格並びにスポンサーシップについて
本会の事業に参加するためには社団法人日本ライフル射撃協会、競技者資格並びにス
ポンサーシップ規定(以下競技者資格規定)に合致する競技者でなければなりません。規
定には本会事業に参加するための基本的約束事に触れられており、そのなかにはスポンサ
ーシップにかかわることも規定されています。さらに拘束力の小さい競技者資格規定ガイ
ドラインも定められていますので必ずご一読ください。これらの規定は役員、指導者にも
適用されます。
本会では競技者が単独でスポンサーシップを得ることを容認しています。指導者とし
て競技者の競技活動の支援を得る手立てはその選択肢として広く一般に求める方法が認め
られているとご理解ください。学校単位のチームや加盟団体で独自に企業や個人と提携す
ることも容認されています。またユニフォームなどにつける製造者商標、スポンサー商標
の規定も記載されています。競技者の所属の商標の銃器への表示、貼付などもスポンサー
17
商標の規定が準用されますので競技者にはそのむねご指導ください。
社団法人日本ライフル射撃協会
競技者資格並びにスポンサーシップ規定
4.0.0
本規定は ISSF
競技者資格規定並びにスポンサーシップ規定に沿って制定され、ISSF にて規
定の改廃があった場合、その翌年の 1 月 1 日より本規定は改廃される。
4.0.1
本規定は日本国内においてのみ適用される。
4.1.0
射手の資格
4.1.1
社団法人日本ライフル射撃協会(以下協会)競技者資格規定は、協会管轄競技大会に参加す
る場合の選手に対する条件を規定する。該当競技会では本規定が厳格に適用されなければな
らない。
4.1.2
協会はオリンピック憲章45条、46条、附則を ISSF 競技者資格規定の基本条文と認識する。
4.1.3
協会管轄の競技大会出場の資格を得るには、射手はGR3.6に従い、自己の所属する加盟団体よ
り参加しなげればならない。
各加盟団体より参加する選手は:
4.1.3.1
射手の加盟団体の定めた手続きにより選考される。
4.1.3.2
日本代表であるためにはオリンピック憲章第46条、同付則、及びGR3.6.3に適合していなけれ
ばならない。
4.1.3.3
不適切な、あるいはスポーツマンらしくない行動、特に薬物違反や暴力行為による罪を犯し
ているものであってはならない。
4.1.3.4
当規則4.2に述べられているスポンサーや広告に関する協会規定について、違反があってはな
らない。
4.1.4
協会管轄の競技大会に出場する選手は直接、問接を問わず、金銭またはその他の物品を賞品
として、また大会参加そのものに対して金品を受領してもよい。然し、オリンピック大会参
加選手は、オリンピック憲章第45条の付則により、いかなる財政上の援助も受けられないも
のとする。
4.1.5
協会により認定を拒否されている競技会に、その事実を知りながら参加した選手に対しては、
理事会において決定された期間、協会管轄競技会への参加が認められない場合がある。
4.1.6
協会管轄の競技大会で、ドーピング規定またはその他の規則違反で、競技から除外された選
手の属する加盟団体は当該年度に行われる協会主催の競技会に出場する権利を失うが、次期
総会に出席出来る権利は残る。
4.2.0
4.2.1
スポンサーシップ及び広告
スポンサーシップとは選手に対する個人または組織による金銭、物品、サービスの提供の
うち契約に基づく支援を意味する。
4.2.2
当規定は、全ての協会管轄競技大会中の全ての公式行事に適用される。(トレーニング中、競
技中、開会式、閉会式、及び表彰式)
18
4.2.3
加盟団体は、商業組織あるいはスポンサー組織と、援助契約、装備品または広告に関し契約
を結んでもよい。
4.2.4
個々の選手は、個別のスポンサーシップを商業組織その他の組織と契約してよい。
4.2.5
スポンサーシップ契約ではで選手の写真、名前、または競技中の動きがその契約組織の広告
に掲載される事が許されることを基本とする。但し協会と財団法人日本オリンピック委員会
とのスポンサーシップ契約条項はこれに優先し、遵守されなければならない。
4.2.5.1
個々の選手はスポンサーシップ契約を締結するに際して事前に協会並びに財団法人日本オリ
ンピック委員会に金銭条項を除く契約内容の確認を受けるものとする。
4.2.6
選手に対するスポンサーシップ契約に基づく金銭は、選手の所属協会あてか、または選手に
直接支払われるものとする。
4.2.7
規定に定める範囲であれば、協会管轄競技大会射場または関連する場所に於いて、スポンサ
ーの商標等は看板・旗、ポスター、またはその他射手の衣類や装具上に使用しても良い。
4.2.7.1
協会主催大会の射場に於いては、そのような広告は協会の許可なく着板、旗、ポスター、あ
るいはその他の物に記する事は出来ない。
4.2.7.2
射撃場における広告は選手の照準映像に影響を与える標的設置地域には設置してはならな
い。
4.3.0
射手の衣類及び装具上の商標
4.3.1
トレードマークとは法的に会社名または商品、サービスを他の提供者のものと区別するため
に付された固有の名前、シンボル、デザインを意味する。
4.3.2
商標(コマーシャル・マーキング)とは目に見える、トレードマークそのものまたは競技大
会中に使用される衣服、用具に付される広告類全てを意味する。商標は2種に区分される。
4.3.2.1
製造者商標
製造者商標は商品の認定、出所を明確にするため製造者(トレードマーク所有者)により商
品に製造者名またはトレードマークを付したものである。
4.3.2.2
スポンサー商標
スポンサー商標は製造者商標を除く全ての物品上に記された広告商標を意味する。
4.3.3
製造者商標一般規定
4.3.1
協会管轄競技会で使用される射手の装備品に付けられる製造者商標は、一般に市販される用
具1種類に対して同一の製造者商標が使用されなければならない。製造者商標と製造社名は
その用具を実際に製造した者の物とし、1つの用具に1箇所のみの使用が許される。その他の
選手の固有の用具におけるサイズ表示、トレードマークの位置、形態、サイズ、製造者の名
前、選手の用具上の文字の大きさについては、専門委員会の上申により協会理事会にて決定
する。
4.3.2
製造者商標は用具、衣類1つにつき1箇所を超えて表示されてはならない。銃器の部品につ
いては用具の1つと認識される。
4.3.4
スポンサー商標一般規定
19
4.3.4.1
ナショナルチームに支給される用具または物品の製造者商標については、4.3.2の規定が遵守
されなければならない。
4.3.4.2
選手の肌にスポンサー商標を記すことは禁止される。
4.3.5
トレーニング時、競技時を通じて、スポンサー商標を展示することだけを目的とし或いは競
技に関連して使用されることの無い物品の使用等は禁止される。
4.3.6
当規定定める諸規定に反した商標を付した衣類を着用する選手の写真等を広告に使用するこ
とは禁止される。
4.4.0
射手の用具、衣類に使用される商標に関する規定
4.4.1
銃器
4.4.1.1
製造者商標
協会の競技規則に合致した銃器は、全てその使用が許される。
製造者商標は一般に市販される銃器と同一のもので、部品1つにつき表面積の10%を超
えない面積で1ヶ所だけ許可される。しかしながら製造者商標の大きさは60平方センチ
メートルを超えてはならない。
4.4.1.2
スポンサー商標
銃器には1つのスポンサー商標をつけることが出来る。スポンサー商標は銃器の両サイドに
付けてもよい。
4.4.2
銃ケース・用具箱・射撃バッグ・スーツケース・スリング・ニーリングロール・ベルト・ス
コープスタンド等その他の用具(組織委員会が備え付ける射撃マットを含む)
4.4.2.1
製造者商標
製造者商標は一般に市販される商品と同一のもので、商品1つにつき表面積の10%を超
えない面積で1ヶ所だけ許可される。しかしながら製造者商標の大きさは60平方センチ
メートルを超えてはならない。
4.4.2.2
スポンサー商標
制限しない。
4.4.3
射撃シューズ
4.4.3.1
製造者商標
片方の靴に6平方センチメートルを超えない製造者商標1つが許される。
4.4.3.2
スポンサー商標
射撃シューズには1つの商業スポンサー商標の表示が許される。同一の商標であれば左右両
方の靴での表示が許される。
4.4.4
4.4.1
グローブ
製造者商標
1つのグローブにつき6平方センチメートルを超えない製造者商標1つが許される。
4.4.2
スポンサー商標
1つのグローブにつき1つの商業スポンサー商標の表示が許される。
20
4.4.5
ヘッドギア(帽子)
4.4.5.1
射手の帽子の前後の位置には、所属チームの紋章あるいは加盟団体章、協会ロゴまたは組織
委員会の紋章のみ使用出来、スポンサー商標は表示できない。
4.4.5.2
製造者商標
ヘッドギアには6平方センチメートルを超えない製造者商標1つが前後の位置を以外の部位
に許される。
4.4.5.3
スポンサー商標
ヘッドギアには1つの商業スポンサー商標が前後の位置を以外の部位に許される。
4.4.6
射撃眼鏡またはアイウェア(サングラスなど)
4.4.6.1
製造者商標
眼鏡には2平方センチメートルを超えない製造者商標1つが許される。
4.4.6.2
スポンサー商標
眼鏡には1つの商業スポンサー商標が許されるが、フレームの両サイドに表示するものとす
る。
4.4.7
イヤープロテクション
4.4.7.1
製造者商標
イヤープロテクションには6平方センチメートルを超えない製造者商標 1 つが許される。
4.4.7.2
スポンサー商標
イヤープロテクションには1つの商業スポンサー商標が片方のプロテクターのみに許され
る。
4.4.8
競技衣服
競技衣服とは、競技時、トレーニング時に着用される全ての衣類を含む。
4.4.8.1
製造者商標
衣類には1着につき12平方センチメートルを超えない1つの製造者商標が許される。
4.4.8.2
スポンサー商標
選手の衣服は表1に示す部位に分けられる。表1に示される制限は厳守されなければならな
い。当規定は全ての競技衣服に適用される。
表1
部位
スポンサー商標
その他の制限
の最大数
胴体の上部 1/3
2
;前面
胴体の上部 1/3
1つの商標が協会によって予約される。
(右射手の左肩部位)
1
;背面
胴体中央部 1/3
1
1/2 は所属チームまたは加盟団体エンブ
21
;前面
レムのために予約される。
胴体中央部 1/3
0
ゼッケンのために予約される
;背面
胴 体 下 部 1/3 ( 腰
1
部);前面
胴 体 下 部 1/3 ( 腰
0
部);背面
4.4.9
袖
1
同一のものが左右に許される
ズボンの脚部
1
同一のものが左右に許される
ドレスユニフォーム
ドレスユニフォームとは、選手及びチームの一員が着用する服装で、慣例として服装にチー
ム紋章、所属の略称などの表示がなされる場面において、協会管轄競技会の公式行事中に着
用される衣服全てを意味する。
4.4.9.1
製造者商標
製造者商標は12平方センチメートルを超えてはならない。
4.4.9.2
スポンサー商標
公式ドレスユニフォームにはいかなる商業広告も表示できないが、スポンサーの名前または
トレードマークを3個まで表示することが出来る。
4.4.10
4.4.8、4.4.9 で規定された場面以外での選手のカジュアルウェアについては広告制限が適用
されない。
4.5.0
協会スポンサー商標ならびに組織委員会スポンサー
4.5.1
ISSF 総則 ANNEX
B
3.12.3.11 に定めるところに準拠し、協会主催競技会において、射撃場
メイン入り口、公式発表板、公式スコアモニター、的わく、Bib ナンバー(ゼッケン)に表
示されるスポンサー表示について、協会とスポンサーとの契約履行のため協会はその利用権
を留保するものとする。
4.5.2
Bib ナンバー(ゼッケン)
Bib ナンバーには競技会スポンサーの商標を全ての選手の Bib ナンバーに同一に表示するこ
とが出来る。ジェネラルスポンサーのために Bib ナンバー上の150平方センチメートルを
超えない面積または表面積の25%以内が割り当てられる。Bib ナンバーはトレーニング、
競技会を通じて常時選手の背面、腰より高い位置につけられなければならない。Bib ナンバ
ーをつけていない選手にはトレーニング及び競技への参加は許されない。Bib ナンバーには
選手の苗字、イニシャル、加盟団体の名称が表示されなければならない。一文字の高さは少
なくとも 20mm、可能な限り大きいものとする。
4.5.3
看板、旗、横断幕等
協会管轄競技会組織委員会は競技会開催中自らの監督のもと、競技会に関係するプログラム
22
及び印刷物をはじめ射撃場、その他の地域にジェネラルスポンサーまたはその他のスポンサ
ーの商標を表示したものを掲示させる権限を有するものとする。
4.5.4
助成事業、補助事業としての競技会では助成者の名称並びにロゴマークを競技会に関係するプ
ログラム及び印刷物をはじめ射撃場、その他の地域に掲示するものとする。
4.6.0
4.6.1
監督・認可
加盟団体、所属チームは協会とともに協会競技者資格規定ならびにスポンサーシップ規定の
遵守について責任を持つ。
4.6.2
競技ジュリーは競技エリアにおいて用具、服装上のISSF商標規定の遵守について責任を負う。
4.6.3
違反がある場合ジュリーは口頭または文書による警告を与えなければならない。規定を守ら
ない選手には競技を開始、または継続させてはならない。
4.6.4
競技ジュリーによる当規定に関する裁定に対しては上訴できる。上訴ジュリーの決定は最終
のものである。
4.6.5
選手の承諾または了解を得ず、商業広告、商品の推薦、商品の販売に関して選手の名前、タ
イトル、肖像を使用する広告主等が存在する場合、当該選手は
委任状
を所属加盟団体ま
たは所属チーム並びに協会に提出し、所属加盟団体、所属チームまたは協会が、必要な場合、
疑義のある広告主等に対して法的手段が取れるようにすることが出来る。
4.7.0
認可
当規定は1999年10月22日、ISSF理事会において改正認可されたものを日本に
適合させたものである。
4.7.0.1
当規定の改廃は理事会にて決定される。
4.7.0.2
本規定は平成14年10月19日施行された。
4.7.1
当規定は財団法人日本オリンピック委員会選手強化キャンペーン規程と並立して運用される
ものである。
社団法人日本ライフル射撃協会
競技者資格並びにスポンサーシップ規定
適用ガイドライン
〈前文〉
前文を含む当ガイドラインは、社団法人日本ライフル射撃協会
競技者資格並びにスポンサーシップ規定
について、その理解と円滑な適用を求めこれを定める。適用ガイドラインに示される事項は理事会におい
てこれを定め、理事会においてこれを改定するものとするが、実際の適用にあっては当該関係者並びに関
係者間相互の利益を優先し、合理的変更はこれを禁止するものではない。加えて、規定はガイドラインに
優先して適用されるものであり、規定に反する契約、行為等は当ガイドラインにおいても禁止されるもの
である。
〈競技者資格関係〉
4.1.2
オリンピック憲章 45 条に示されるとおり、オリンピック大会参加に対して金銭的報酬
の受
23
領、支弁は禁止されるものとする。
4.1.2
本会主催競技会の参加については、特に定める競技会を除き本会登録加盟団体より参加するも
のとする。職業競技者についても同様とする。
4.1.3-1
本会主催競技会において標記される競技者の所属については登録加盟団体名とするが、競技者
の要請に基づきそれを任意のものに変更するものとする。
4.1.6
ドーピング検査において陽性となったものの所属する加盟団体の競技者は当該年度の残存期間
に実施される本会主催競技会に参加できないものとするが、国民体育大会はこれに含まれるもの
とする。
4.1.6-1
4.1.6 に示される加盟団体とは当該者のその競技会での登録加盟団体であり、学生が学連より競
技会にエントリーした場合は学連をさし、都道府県協会からエントリーした場合は都道府県協会
をさす。
4.1.6.-2
規定 4.1.6 に関する加盟団体への制裁措置については、加盟団体の当該違反者への当該事案に
関する影響力の多寡を勘案し、理事会において軽減することが出来る。
〈スポンサーシップ関係〉
4.2.1
スポンサーシップ契約に基づく支援とは、契約書の有無にかかわらず競技することに対しその
訓練費用、生活費用等の支弁を定期的に受けることであり、この項には家族等による支援、企業
職務において競技することは含まれない。本会および加盟団体が契約するスポンサーシップには
競技活動全般に対する支援を対象としたもの、および特定の事業を支援する目的で契約されるも
のを含むものである。
4.2.1-1
職業競技者とは、競技することにより収入を得る契約をスポンサーと結んでいるもの、並びに
競技を指導することをもっぱらの業とするものの事を指す。訓練を支援する目的でのスポンサー
シップを得たものについては職業競技者と認定されない。
4.2.2
本会が契約したスポンサーシップは加盟団体が契約したスポンサーシップに対し優先権を持
つものとする。
4.2.5.1
年間契約金額が 36 万円未満で当ガイドラインの範囲内で実施されるスポンサーシップ契約に
ついては事前の契約内容確認の手続きは要しない。本会と財団法人日本オリンピック委員会と
の関連契約の内容は役員を含む登録競技者全員に適用される。
4.2.5.1-1
個々の選手のスポンサーシップ契約締結については制限されないが、本会主催事業において
は本会のスポンサーシップ契約ならび本会と財団法人日本オリンピック委員会との関連契約
が優先される。
4.2.5.1-2
個々の選手のスポンサーシップ契約について、本会のスポンサーシップ契約または本会と財
団法人日本オリンピック委員会との関連契約に反する内容が含まれる場合、本会はその条項
の削除を勧告するものとする。
4.2.5.1-3
個々の競技者のスポンサーシップ契約について、本会のスポンサーシップ契約または本会と
財団法人日本オリンピック委員会との関連契約に反する内容が含まれる場合で当該競技者お
よび当該スポンサーが該当条項の存続を求めるとき、本会は財団法人日本オリンピック委員
24
会と協議の上、当該競技者を職業競技者と認定し本会と財団法人日本オリンピック委員会と
の関連契約より当該競技者に対する適用を除外する手続きをとる。
4.2.5.1-4
職業競技者に対して本会はその他の競技者と同等の権利を保障することとするが、助成金対
象事業または本会の競技力向上活動に職業競技者が参加する場合、その経費は全額当該職業
競技者が負担するものとする。
4.2.5.1-5
4.2.5.1.-4 の規定は本会が職業競技者または特定競技者を直接支援する場合は適用しない。
4.2.5.1-6
諸制度に基づく競技者に対する助成はスポンサーシップとは認定されない。
〈競技衣服に標示されるスポンサー商標〉
4.4.8.2
本会のスポンサーシップに対して競技衣服の左肩(左腕上腕外側を含む)の部位が予
約
され、この部位には個々の競技者のスポンサーシップに基づくスポンサー商標の標示は許可
されない。この規定は本会事業として派遣されるナショナルチームならびに候補者チームの
競技衣服およびドレスユニフォームに関して適用される。
4.4.8.2-1
競技衣服の胸の部位に 1 個の所属チームまたは加盟団体エンブレムの標示がゆるされるが、
ナショナルチームの競技衣服にあっては左胸上部の部位が本会スポンサーシップに対して割
り当てられる。ナショナルチーム員にあってはこの部位に個々のスポンサーシップに基づく
スポンサー商標を標記してはならない。
4.4.8.2-2
前 2 項において本会に割り当てられたスポンサーシップ商標標示部位は、本会がスポンサー
シップ契約を履行すべき状態にない場合または本会のスポンサーの承諾が得られた場合にお
いて、個々のスポンサーシップが個々のスポンサーシップ商標の標示、または企業体である
かどうかを問わずそれらによる選手の所属チームエンブレムの表示、あるいは他の目的のた
め個々に購入できるものとする。
4.4.8.2-3
4.4.8.2.-2 に基づく権利の購入は本会がスポンサーシップ契約を履行すべき状態である場合
はそのスポンサーシップ契約額または同等額の 2%、それ以外の場合は各人 1 箇所年額 2 万
円とする。
〈その他〉
4.5.4
助成金対象事業における助成者のロゴまたは助成者の名称は事業参加者全てに周知させなけ
ればならない。
平成 15 年 4 月 19 日制定
4.競技者自身の傷害保険について
競技者自身のスポーツ傷害保険などは学校、総合型地域スポーツクラブなどにより付保
されている場合が多いと思われますが、加盟団体単位では財団法人スポーツ安全協会のスポ
ーツ安全保険などがありますので指導に当たられる方々はご確認ください。本会では登録競
技者個人を被保険者とする障害保険等には加入しておりません。
25
Ⅲ
競技者の育成
本章は日本を代表する競技者を導入段階から育成する場合の標準マニュアルとして書
かれています。指導者の指導理念に対して本会としては現場の指導者の皆様に指図する立
場は採用しませんが、本会の競技者育成事業(全般を総称して競技者育成プログラムと定
義します)の想定する競技者育成活動計画を明示し、全国的に効果的な競技力向上活動が
展開できることを目指して作成されました。そのなかで若干の技術的目標について記述さ
れますが、各種目の具体的な技術指導内容につきましては技術教本を参照してください。
競技者の個人的特性により、明示された目標値に到達しないものや、進捗に進遅が現れる
ことは当然のことです。指導者の皆様方には本章で示される技術水準はあくまで羅針にす
ぎず、個々の競技者への対応こそ皆様方の指導技術の発揮するところとご理解ください。
また目標値に到達できない競技者に対する非難は本会の競技者育成のなかでは禁忌といた
します。また競技者育成プログラムで最終的に目指すところは国際競技会で活躍する競技
者の育成です。多くの競技者はその目標が国民体育大会の出場や、学校体育の範囲内の活
動といったようにその視野が限られているのが実情です。本会はそれらの人々の存在価値
を大いに認め、指導者の皆様の競技に対する認識と理解を深め、より高い目標に挑戦する
道程を標示し、さらには意欲ある競技者への全国的サポート体制の確立を目指すものです。
射撃競技は個人競技の最たるものとして、一人の天才により全体の社会評価が決まる
傾向がありました。それゆえ、個人の努力が尊ばれ、それに頼った選手強化策がとられて
きました。現在でも個人競技であることを考えれば、個人的努力に期待するところは不変
ではあります。しかし一方では組織的に才能を発掘する作業に対する努力が不足していた
ことも歴史的事実として否めません。競技者育成プログラムは中央競技団体として優れた
才能を一人でも多く発掘し、組織的に強化し、最終的にパーソナルコーチを含めた個人的
努力を継続する競技者の数を増加させ、しいては合理的評価を通じて国際的競技者へと育
成していくことが目的であると換言できるでしょう。
1.
一貫指導体制、競技者育成プログラムの定義
競技者を組織的に育成していくためには、競技団体として競技者育成の基本的な方針を
取りまとめ、世界との競技力の差を分析した結果を踏まえた強化策を全国の指導者に伝達
する必要があります。また協会全体のマネジメント機能を強化させ、情報の確実な伝達や
有効なお金の使い方も確立する必要があります。少子社会の現実を捉え、競技そのものに
チャレンジすることへのより高い価値観の醸成も重要なものとなっています。一貫指導体
制とは本会の管理部門も含めた競技者育成を主眼に置いた組織体制ならびに事業の取り組
26
みの方策を意味します。一方、競技者育成プログラムは競技現場に直結した競技者育成を
直接の目標とした事業そのもののあり方と、そこで要求される目標値の設定と到達への作
業、競技者ならびに指導者へのサポートの実施内容を包括したものといえます。いわば本
会の競技現場での活動そのものの実施方策と言えるでしょう。本書は一貫指導体制を結果
に結びつけるためのツールとしての
競技者育成マニュアル
として、全国の国際競技力
の獲得を目指した競技者育成活動と本会の事業の実施方針の羅針盤に相当するものです。
2.
一貫指導体制の基本概念(理念)
一貫指導体制の概念は図に示したとおりです。現状では、多くの部分を高等学校ライ
フル射撃部の尽力によりなされていますが、一貫指導体制では、導入→発掘→育成→強化
の概念で競技者育成プログラムが構成されます。わが国では銃砲刀剣類所持等取締法によ
る規制により、多くの場合は導入→発掘のステップを踏まずに競技に取り組んでいます。
一見諸外国に比べ不利な状況と思えますが、多くの若者が競技を最初から志向するという
意味で肯定的な事象と捉えるべきでしょう。導入→発掘のステップは現在の日本では更に
多くの数のタレントを競技に取り込むための補完事業といった側面もあります。事業群は
強化の果実をジュニアチーム及びナショナルチームに集結させて、国際競技力として完結
させていくことを理念として構成されています。またジュニア年齢を過ぎた年齢で競技を
開始した競技者については育成段階からのサポートとなりますが、ナショナルチームに向
けては競技会の成績での選考となりますので選考の際に年齢による不利益は生じません。
27
導入期における活動ではある意味では射撃競技が脇役になる場合も考えられます。ま
たこの時期では年少者においては遊びやゲームからの導入も肯定的に捉える必要がありま
す。総合型地域スポーツクラブでのイベントや、青少年射撃教室、青少年向けのサマーバ
イアスロン行事などのなかで銃砲刀剣類所持等取締法にかかわらない用具を使用しての活
動が主体となるでしょう。競技者育成は、従来のすでに「競技を始めている選手の指導」
という概念から青少年に競技を紹介し、競技に目覚めさせる活動も含まれると解釈すべき
でしょう。本会では毎年 JOC 主催のオリンピックデーイベントにビームライフル、デジタ
ルス・ポーツシ・ューティングを出展し、広く競技の紹介活動を実施しています。
競技者育成の発掘段階とは、導入事業のなかで射撃競技の才能を持つものを選抜し本
格的な射撃競技のトレーニングへと導く段階を意味します。加盟団体の多くでは、導入と
発掘は同時進行で進んでいくものと思われますが、競技者育成に携わる方はこの段階から
積極的にかかわりを持つことが求められます。国体チームに指導に当たるような方々が導
入事業の中での初心者指導を通して才能発掘の能力を向上させていくことは、結果的には
わが国の競技レベルの向上、とりわけ指導技術の向上に多大な貢献をなすものと期待され
ます。
育成段階では競技者はすでに指導者の指導の下でトレーニングを実施します。指導者
にとっては指導技術の発揮の中心となる時期ですが、この段階で競技者の目標となるレベ
ルが具体的に設定されます。本会ではこの段階でナショナルチームを目指す競技者にはパ
ーソナルコーチの設定を求めます。パーソナルコーチを持たない競技者は競技成績により
ナショナルチーム員となることは可能ですが、本会のナショナルチームの前段階における
強化対象競技者には原則としてなれません。競技者自らがコーチまたはインストラクター
の資格を取得している場合、競技者自らを当該競技者のパーソナルコーチと指定すること
が出来ます。一般にパーソナルコーチには必ずしも資格取得を求めませんが、競技者育成
に携わる指導者の方々は出来るだけ早期の資格取得が望まれます。競技者がナショナルチ
ームの選手またはその候補者となったとき、ナショナルコーチがパーソナルコーチに競技
者の指導カルテ(後述)の提出を求める場合があります。
本会における強化は主に選抜されたジュニアチームまたはナショナルチームに対して
なされます。この段階で選抜された競技者はナショナルコーチまたはナショナルジュニア
コーチの指導を受けることになりますが、その指導はパーソナルコーチとの連携のもとに
実施されます。育成段階までの事業は主として競技者育成プログラム委員会選手強化部が
立案しますが、強化段階では多くの部分をナショナルチーム部会が担当します。ナショナ
ルチーム部会による強化は国際競技会に直結するものと位置づけられます。
28
3.
競技者育成の時系列
ライフル射撃競技は他の競技と比較して、年齢の差による基本的な競技能力の差が小
さいことがその特長のひとつとされますが、競技者育成の観点に立てば競技の導入は早期
に行うに越したことはありません。一方、わが国の銃砲刀剣類所持等取締法は競技者の導
入時期を諸外国に比較し大幅に遅らせるものとして大きな障害であることは事実であり、
ある意味では少年期の人たちに対する競技への機会提供の任務遂行が手薄になりがちなこ
とへの免罪符として利用されてきた一面も否定できません。国際的競技者の競技の開始年
齢は正確な統計はありませんが、インタビューをみるとそのほとんどが 11 歳〜13 歳の時期
に集中しています。また強豪国である韓国ではエア・ライフル、エア・ピストルによる中
学校の射撃リーグも活発で世界チャンピオンレベルの競技者を恒常的に育成しています。
競技者育成プログラムでは 15 歳以下の年齢層を競技導入期にある競技者の候補として
捉え、ビームライフル、デジタル・スポーツ・シューティングを使用した競技者の発掘を
目指します。導入にあっては射撃競技単独ではなく、サマーバイアスロンを代表とした複
合競技、或いは総合型地域スポーツクラブでの遊びも含めた射撃活動を想定し、その中か
らのタレントを発掘、育成し、現在の高等学校射撃活動に競技者を包含していくことが目
標とされます。未成年競技者の育成が法令上困難であるピストル種目については、デジタ
ル・スポーツ・シューティング競技活動を通じて競技者候補を相当レベルまで育成し、年
齢が達してピストルが所持できた当初から上級のレベルで競技活動を開始できることを想
定しています。
下記の表は 2003 年 7 月現在の ISSF 世界ランキング上位の競技者の年齢比較です。
種目
1〜8 位
平均年齢
1〜20 位
10mエア・ライフル
26
29
男
3x40
31
32
子
P60
31
32
種
10mエア・ピストル
30
34
目
50mピストル
32
36
25mRFP
34
32
女
10mエア・ライフル
26
25
子
50m3x20
30
27
種
10mエア・ピストル
27
29
目
25mピストル
32
32
平均年齢
29
アジア諸国における本会管轄競技種目での ISSF 世界ランキング上位 10 位以内の競技
者の数は、中国 15、韓国 4、インド 2、日本 2、モンゴル 1、カザフスタン 1、となってい
ます。ISSF ランキングは参加競技回数が多いほど有利であるなど直ちに実力を示すかどう
かについては議論の余地はあるものの、おおむねの国別競技力の比較には有意な資料と思
われます。
ISSF ランキングの上位者の年齢を見るとおのずと競技者育成の時系列での目標が明ら
かになります。この資料は 2003 年のものですが、上位にランクされる競技者が 2004 年の
オリンピック大会の上位候補であるといって過言ではありません。オリンピック大会の QP
を争う年度の上位者の年齢層は、換言すると競技人生のピークパーフォーマンスを発揮す
る年齢といえます。表の競技者が技術的に競技者として完成の域に達した年齢は、おそら
く示された年齢の数年前が平均と考えて差し支えないでしょう。
これらの資料のもとに競技者育成プログラムでは競技者の技術的ピークの達成に関す
る目標年齢をライフル種目では 25 歳または競技生活開始後 10 年目においています。ピス
トル種目では国情を勘案しエア・ピストル種目のみ 25 歳とします。これらは厳格な目標値
ではあり得ませんが、プログラムの事業体系の指針となっています。具体的には 2008 年の
オリンピックを目指す場合、プログラムが生年で 1985 年〜1990 年の世代層を対象に立案
されることを意味します。(世代層とオリンピックサイクル早見表参照)勿論これはその世
代に属さない競技者が排除されることを意味するものではありません。
競技者の育成に当たる方々、特に競技者のパーソナルコーチの方々にとって、世代層
とオリンピックサイクル早見表は大きな意味があるものです。現在競技を導入している子
供たちが将来出場する可能性のあるオリンピック大会は何年であり、上達までに残された
時間はどれくらいで、ナショナルチームに入る時間的期限は何年であるかを的確に把握し
最終目標を見据えたトレーニング計画の概略の立案は育成の基本となります。パーソナル
コーチは競技者と共に 90 点の突破を共に喜ぶ姿勢が必要ですが、一方では 100 点への道筋
が頭の中に描かれていなければなりません。そしてそれには時間的な制約を付与する必要
があります。それが伴わない指導はコーチングにはなりえても競技者の育成という観点か
らは効果的ではないと言わざるを得ません。競技者の中でオリンピックのレベルまで到達
できるのは、おそらく 1%に満たない数であることは事実です。またこの1%の競技者の中
で最初からオリンピックを目指していた人はほんのわずかに過ぎないことも事実です。競
技者本人にことさら圧力をかけるのは多くの場合問題を含みますが、育成に当たる方々は
この事実を認識したとき計画目標とその達成努力の繰り返しのなかに 10 年後の目標をしっ
かり組み込むことにより、より多くのオリンピックレベルの競技者の育成の確率が高まる
であろうことが理解できるでしょう。
30
世代層とオリンピックサイクル早見表
2013
2014
2015
2016
2017
2018
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1983
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1982
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42
オリンピック
2012
世界選手権
2011
オリンピック
2010
世界選手権
2009
オリンピック
2008
世界選手権
2007
オリンピック
2006
世界選手権
2005
オリンピック
2004
世界選手権
生年
31
4.
競技者育成上の指針
技術的問題につきましては、ここでは汎論のみ提示いたします。詳細については射
撃教本をご参照ください。
4−1. 競技への導入、人材発掘段階
導入に関する事業は加盟団体各位における新人獲得の努力に負うところが大きいので
すが、競技者育成プログラムでは本会の事業雛形と導入時期の競技者以前の子供たちに対
する留意点を示します。
文部科学省のスポーツ振興基本計画の実施のなかで、広く一般に対して総合型地域ス
ポーツクラブの展開が重要な柱として上げられています。本会では特に射撃場を抱える地
域において、ビームライフル教室などの従来型の導入事業に加えて新たな選手獲得の可能
性を見出すためクラブへの積極的参画を推奨いたします。クラブへの参画には種々の問題
点も存在しますが、広く社会に競技を導入することにより理解者の増加とタレント発掘の
底辺拡大を目指すのは競技の存在そのものを担保する活動であると共に、施設の維持にも
貢献するものと考えられます。指導者育成部会では要請に応じて各クラブ、施設などに指
導者の派遣を実施します。また資格指導者養成にあってはカリキュラムにスポーツ振興基
本計画とそれにまつわる諸環境について、並びに競技未経験者に対する競技導入について
の課目が追加されます。
導入活動に当たっての一例としてはサマーバイアスロンの活用が考えられます。ISSF
ではエア・ライフルとレーザーガン(詳細は未定)を使用したサマーバイアスロンを IBU
(International Biathlon Union=国際バイアスロン連盟)より移管させることが決定され
ています。あくまでも予測ですが将来夏のオリンピック大会で、ISSF の管轄競技としての
サマーバイアスロンの導入もその狙いとして考えられる状況です。ISSF による競技規則の
発効もこれからで本格的な競技の開始までにはしばらく時間を要しますが、現在のわが国
ではビームライフルやデジタル・スポーツ・シューティング機材を使用した、遊びの延長
としてのサマーバイアスロンまたはその模倣競技が導入活動に活用できます。導入活動の
立案では施設や社会環境を現実的に考慮し、子供たちや参加者にスポーツの楽しさを提供
することを主眼に置いた上で、そのなかに射撃の要素を取り入れていくといった配慮が必
要と思われます。また導入活動を通して、運動能力や骨格構造が射撃競技に適した人材を
選別してゆくといった競技者育成の底辺に当たる発掘活動も競技の普及とならんで重要な
着眼点となります。このような活動を通して、子供たちがバイアスロンをはじめとする他
の競技に進んでいくことも本会としては可としています。
32
各加盟団体で実施されるビームライフル教室をはじめとする導入事業は、従来にも増
してプログラムでは重要な意味を持ってきています。導入期においては教室で行われる活
動についてその内容は競技の形態にとらわれる必要はありません。むしろ導入のレベルに
おいて競技ポジションからの射撃行為は体に対する負荷を考慮するとむしろ薦められませ
ん。導入事業の組織的目的は底辺競技者と競技に対する理解者の確保であり、競技者育成
の観点からの目的は競技者の発掘ですが、これらの目的の達成のためには競技的なポジシ
ョンからの射撃は必ずしも必要ではありません。導入事業の初期にあってはとりわけ最初
から立射の姿勢を導入するなどということは困難を伴うだけで、効果的に機材を使用する
という観点からも問題を生じる恐れがあります。導入事業にあっては、当初は依託系の射
撃を通じて射撃のゲーム性を楽しみ、同時に照準技能の学習と撃発の物理的特性の会得を
目標とすることが望まれます。むしろこの段階を経ることにより子供たちの射撃競技に関
するポテンシャルの一端を観察することが可能になります。導入事業の後期に競技姿勢を
取り入れる場合、とりわけ少年期の人たちに対しては銃身を依託台に載せるか、天井から
銃口部を吊るすことにより銃の重量による関節への負担を軽減させた段階を経ることが推
奨されます。もちろん発育の進んだ人たちにはこれらの段階を省略することも可能です。
発掘に当たっては対象者のスポーツに対する動機の高さが重要になるでしょう、また
本人の家庭事情や進路に対する志望により制限もありますが、競技者育成に関して技術的
には主として次の点に注目する必要があります。これらの注目点は選別のための要素では
なく、競技者を育成していくなかで解決していくポイントの想定と指導の上での計画のラ
フスケッチを描くための指針となるものです。
A ライフル種目にあっては骨格構造が立射ポジションに適しているかどうか
立射において骨格構造によるサポートを完成させ
るには生来の骨格構造により困難が生じる場合があり
ます。トップパーフォーマンスを目指した場合、これ
らの要素は半ば必須の条件になります。技術により補
填できる範囲であるかどうかは指導者の判断によりま
すが競技者の発掘に関しては最も注目すべき点のひと
つと考えられます。
骨格構造的に恵まれない選手の一部にも努力によ
りメダリストのレベルに到達した事例も多くあります
ので、この要素である特定の競技者または子供を排除
することは間違いです。良く知られるようになで肩の
人は照準動作に難点が出ますが、50mライフルではこの難点は銃のセッティングによ
33
り簡単に解決できます。
B 照準能力が標準的であるかどうか
照準能力の優劣に関しては視力の問題が浮上してきますが、矯正できるものであ
れば競技にとって大きな障害ではありません。矯正後の視力がランドルト環で 0.5 程度
に満たない場合でも照準器のピープ径の調整により多くの射手が標準的な照準能力に
到達できています。照準能力は射撃の成績を決定するひとつの要因ですが、決定的要
因ではありません。成績に関する因果のほとんどは射撃技術によるものであることを
確認しておきます。
照準能力の判定は依託射撃の射撃精度で推察できますが、タレントの発掘に関し
ては、照準器(銃器)を固定した状態での3点照準監査法が最も簡便で的確に被験者
の照準精度が観察できます。10mの試験で5発のセンター誤差 2mm 以下程度(競技者
として訓練を積んだ場合は 1mm 以下)が望まれますが、この数値は環境光や照準器の
設置方法により異なりますので絶対評価はできません。ナショナルチームの過去の経
験では 3 点照準監査の成績が標準以下の人はチームにはいませんでした。候補レベル
では成績の悪いものが観察されましたが、伏射の精度に問題がありました。
ノプテルなどが使用できる環境では、枕等を使用した依託射撃において最終照準
段階での照準 COG の位置の拡散状況を観察することにより、大体の照準能力の比較も
可能です。
照準精度は被験者の意思決定力にも関係すると思われます。ある程度の訓練効果
は期待できますが、照準能力に先天的な問題のある場合、照準に関しては比較的要求
精度が低いピストル射撃の可能性も考慮に入れる必要があるでしょう。
C 基本的体力が平均以上であるかどうか
基本的な体力はあらゆる競技活動にとって競技者のポテンシャルを左右する要素
といえます。導入にあっては多くの場合その対象が成長段階にある少年たちと想定で
きますので、体力に関してはそのトレーナビリティに注目する必要があります。他の
子供たちより長く走れる、体の柔軟性が高い、下半身の筋力が優れている、定型化さ
れた運動形態において安定感がある、などといった要素は肯定的に捉えるべきでしょ
う。
15−6歳以上の対象者にあっては、ある程度の基準が設定できます。この年齢
以上にあって、1kmも走れない、起き上がり腹筋運動が 20 回も出来ない、といった
状態であれば明らかに体力的に問題があります。そのような対象者に立射を導入する
場合、立射姿勢を保つ時間は短く設定するなどの留意も必要になります。
34
対象者に克服できない関節の障害がある場合は特に留意が必要です。射撃競技は
その技術的目標として骨格サポートを完成し、筋力を使用しないコントロールを目指
すという特徴があります。これは換言すれば関節群に荷重を負担させると言うことな
ので、これらの人々に競技を導入する場合専門家との協力体制の確立が必要と思われ
ます。
4−2.
競技者の育成段階
育成に関する事業は主として加盟団体において行われますが、競技者育成プログラム
では指導者の育成、情報の提供によって事業の核とします。また競技会の開催のうち、ジ
ュニア層を対象としたものも育成事業に位置づけられ、それらの上位のものはプログラム
の中での育成対象者として認定されます。育成活動の大部分は、高等学校射撃部に代表さ
れる加盟団体や、学校・地域の射撃チームによって行われ、その内容は射撃教本を標準と
しますが実際の指導に当たっては指導者の創意工夫にその成果が依存することは避けられ
ません。技術系の競技である射撃ではハイパーフォーマンスを創出する基本的要素の習得
が育成段階での主題となってきます。競技者育成プログラムでは育成段階の競技者をとく
にジュニア強化事業対象者として選抜する場合もありますが、ナショナルコーチ・ナショ
ナルチームのコーチングスタッフが技術評価により競技者を選抜する場合には、将来にお
いてハイパーフォーマンスの創出が可能な基本的技術の習得の状況が最も大きな選定基準
となります。
ナショナルコーチが着眼する技術的要素は多岐にわたりますが、競技者育成プログラ
ムでは立射の基本要素をチェックリストにまとめ育成段階の競技者を指導する方々への課
題として例示いたします。技術的なチェックリストを含む
競技カルテ
は指導者が競技
者ごとに作成し、各競技者の技術の進歩を確認するのに供し、指導記録として保存すると
共に、競技者育成に当たられる指導者、特にパーソナルコーチの方々は常にこれらの技術
要素の向上に留意するようにしてください。特に重要な骨格サポートとバランスに関して
はナショナルコーチの最も関心のある要素であると共に、国際的競技力の習得には高いレ
ベルでの要素の完成が必須のものとご理解ください。各技術要素に関する詳細は各コーチ
の技術思想により若干の変更は可能ですが、バイオメカにクスの観点から理論に反する姿
勢の採択などは評価されません。体型により理想的なポジションの構築が困難と思われる
場合、または競技者個人にとって最良のポジションの発見に困難を感じた場合、ナショナ
ルコーチに相談するなど、幅広い意見の聴取も重要な解決策となります。選手強化部では
本会 WEB サイトにて技術情報を公開いたしますので、それらも合わせてご活用ください。
競技者が骨格サポートとバランスを獲得してゆくためのパーソナルコーチの役割はとりわ
35
け大きいもので、少ない数の競技者で諸国に伍していくための指導上のキーポイントとな
ります。
A 骨格によるサポートの完成
現在の競技理論は全ての事柄において、ポジション
そのものが骨格によりサポートされていることが前提
として構成されています。競技者育成プログラムのなか
で育成段階にある競技者に対してトレーニングの中で
最優先の課題となるのがポジションを骨格で支えると
いう最も基本的な事柄です。
骨格サポートの洗練がなければリラックス姿勢の
構築は不可能であり、基本的には小さい技術要素の向上
を犠牲にしても骨格サポートの完成は優先される技術
要素です。これはピストル種目においても同様で、自ら
の体重は骨格により支持されるポジションつくりが必
要です。骨格サポートに関する着眼点は立射の例をとると次の2点です。
*
体重が骨格を伝達して両足の裏で支えられている
*
銃器が骨格の上に筋力の多大な使用を排除して支持されている
B 姿勢のバランス
重量を筋の使用を最小限に抑えて支持することに成功したポ
ジションでは、銃器と体で構成されるポジションの持つ物理的平衡
を直接的な体の静止のための要素として認定できるようになりま
す。
骨格でサポートされたポジションでは銃口の動揺の発生源は
筋力の使用によるものから、姿勢の持つ物理的バランスによるもの
へと主原因が変化します。射撃の遂行には照準状態での集中が必要
ですが、バランスの取れたポジションはポジションを維持するため
に費やされる努力の必要性が低下し、撃発に対するより高い集中の
発揮が期待できます。
指導者が恒常的に意識すべき点は、ジャケットの形状や硬度に頼ったポジショ
ンを骨格構造の上にバランスを持ったポジションへと洗練する作業を継続する点に
あります。競技者育成プログラムではこの要素を、10点を獲得し続けファイナル
36
で勝ち抜くための基本要件と位置づけています。ナショナルコーチが競技者を選抜
する場合もポジションのバランスに欠陥のある競技者は排除される方向で検討され
ます。
競技カルテ(立射の例)
チェックポイント
注目点
チェック(コメント)
ポジションが規則に合致するか
両脚の伸展
骨格構造による骨盤の傾斜
骨格サポート
左腕の支持状況
左手首の使用形態
リラックス状況
姿勢全体の揺れの大きさ
姿勢全体の揺れの方向
姿勢のバランス
脊椎の傾斜状況
銃の体に対する位置
銃と左肘の位置関係
技術に対する集中
達成動機
得点に対する執着心
目標の掌握
射撃のテンポ
照準の安定性
撃発過程
撃発行為の安定性
フォロースルーの実行
着弾グループの方向性
不規則弾痕の方向性
ノプテル観察
体力トレーニング
トレーニング競技会
Sx,Sy の大きさ、ファイル名
実施状況、効果の記録
結果、状況
この競技カルテは雛形です。競技者の育成にあたるパーソナルコーチは、上記の例を参考
に競技者の技術向上の進捗の記録を指導経験の資産として残してください。また競技者の
パーソナルコーチが変更になる際に競技カルテを新しい指導者に引き継ぐようにしてくだ
さい。ナショナルコーチはパーソナルコーチに訓練経緯を問い合わせる場合があります。
その場合競技カルテに基づいた正確な情報の交換が必要になります。
37
4−3.
競技者の強化段階
競技者育成プログラムの本会事業なかで、強化活動とはナショナルチームそのものの
活動を中心として、その直前の段階の競技者を含めた強化事業を意味します。競技会では
全日本選手権またはそれに準ずる競技会を競技者育成プログラム指定競技会とし、ナショ
ナルチーム員をはじめとする強化対象競技者はナショナルコーチを中心としたスタッフに
よりそれらの競技会において選考され、その多くはオリンピック強化選手としての認定を
受けます。本会における強化事業は競技者育成プログラムの核となるところです。
強化段階にある競技者はすでに全日本選手権を視野にいれたトレーニングが可能な競
技者ですが、育成の中途ですでにこの段階に達することが理想ともいえます。その場合パ
ーソナルコーチはどうしても早期の成果を期待しますが、最終的に国際競技力の習得に目
標をおけばこの段階でのトレーニング思想が重要なものとなります。競技会は競技者の技
術的能力を評価する場であり、精神的能力の鍛錬の場であることを考慮すれば安易に得点
の比較を持って出場競技会を決定することや、競技者の達成動機の向上を無視した目標競
技会の設定には疑問が残ります。このことはポテンシャルの高い競技者に対して特に熟慮
が必要であることを提案しています。たとえば将来的に期待される能力がありながら、よ
うやく出場権の得られるレベルの選手が全日本選手権大会に出場したとしても、その結果
が競技経験として競技者の将来の発展に寄与するかどうかの判断がパーソナルコーチに求
められるといったことです。ナショナルコーチが競技者を選抜する場合、パーソナルコー
チに過去のトレーニング経緯を問い合わせる場合がありますが、この場合どのような方針
で競技者が育成されてきたかが中心となります。
パーソナルコーチは強化段階にある競技者の可能性が、国民体育大会入賞レベルにあ
るか、全日本選手権レベルにあるか、ナショナルチーム入りが可能か、または国際競技力
の習得が可能かの判断やそれに基づいたトレーニング計画の立案実行がその任務となりま
す。ポテンシャルの低い競技者や、動機の低い競技者にナショナルチーム入りの目標を課
すことがあったとしても、それは競技者の可能性を引き出していくことには繋がっていか
ないでしょうし、逆に低すぎる目標は上達の加速度を失うことになりかねません。またエ
アー・ライフルでは得点が比較的早く向上しますので、そのなかで基本技術の洗練がなさ
れているかどうかの見極めや適切な指導が将来の恒常的な活躍の可能性を決定します。ま
た進学や就職、スポンサーの獲得など競技環境の整備も、とりわけナショナルチーム入り
を目指す場合に周到な計画が必要です。
選考会などでは競技結果がその評価対象になりますが、競技者育成プログラムでの競
技者の競技力評価は基本的には平均点を基準に考慮されます。パーソナルコーチは競技者
38
の競技結果を記録する場合、当該競技会の経過と結果とともに、競技歴を通した競技得点
の平均の推移や平均点クリア状況の推移を的確に掌握して、安定した競技力の向上トレン
ドを維持するように勤める必要があります。パーソナルコーチはこのような競技結果の観
察を通して競技者個人の能力を目標競技会でいかに引き出していくかといったピーキング
技術の開発、獲得を技術目標の一つとして重要視してください。表計算ソフトの使用は競
技者の成績管理上非常に有効に作用します。以下に成績管理の一例と作製グラフの雛形を
掲載しますので参考にしてください。
競技会
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
N
O
P
成績
389
395
386
389
393
395
384
392
392
397
397
395
393
396
390
394
平均点
389.00
392.00
390.00
389.75
391.00
391.17
390.14
390.38
390.56
391.20
391.73
392.00
392.08
392.36
392.20
392.31
平均点クリア
○
×
×
○
○
×
○
○
○
○
○
○
○
×
○
競技得点
平均点
累乗近似
結果と平均点の推移
398
396
394
平均点
日時
051223
051224
060108
060109
060219
060328
060329
060501
060509
060622
060715
060811
060905
061011
061030
061121
この例の場合全般にトレンドは上達
方向にあり、この年度はピークが 3
392
390
388
386
回訪れたものの、ピークアウトで極
384
061121
061030
061011
060905
060811
060715
060622
060509
060501
060329
060328
060219
060109
060108
051224
す。
051223
端に成績が落ちることが観察されま
日時
競技者育成プログラムの目指す北京オリンピックに向けての(2005〜2008)強化段階
の到達レベルは以下の想定がなされています。これらはプログラムの目標値であり、いず
れの事業においても基準点に相当するものではありません。また少数の上位競技者グルー
プに対する想定目標値ですので、これらの目標値の達成の成否を持ってプログラム全体の
評価がなされるものでもありません。(装薬ピストル種目には想定がなされていません)プ
ログラムの進捗における評価基準は後述されます。また各種事業(指定競技会)において
基準点の設定がなされる場合は選手強化部またはナショナルチームにより決定され、競技
会競技要項または本会 WEB サイトで公開されます。
39
種目
強化段階初期での
ナショナルチームの
ナショナルチームの
想定レベル
想定レベル
目標記録
AR60
585
591
598
50m3x40
1150
1160
1175
50mP60
590
593
598
AR40
390
394
399
50m3x20
570
575
585
AP60
564
574
585
AP40
376
380
388
強化段階での競技者のトレーニングには比較的慎重に管理された観察眼が必要で、パ
ーソナルコーチは自らの指導技量を高める姿勢も要求されます。競技者育成プログラムで
は選手強化部ならびにナショナルコーチにより技術情報紹介の電子メールをパーソナルコ
ーチならびに希望する登録競技者宛に送付し、全国に競技情報を伝達してゆきます。ワー
ルドカップでの技術情報なども同じく電子メールで配信いたします。
また、コーチ相互間の協力を進め指導技術の練成のため、指導者育成部会により強化
段階の競技者の指導者を対象にセミナーを開催いたします。また、選手強化部またはナシ
ョナルチームが独自に計画する選考競技会やランクリスト競技会の要綱などはすべて
WEB サイトにて扱いますので、競技者育成にあたる皆様にとって WEB 閲覧環境は必要な
ものとなります。
本会 WEB サイト URL:http://www.riflesports.jp/
40
5.
競技会への参加
競技会はトレーニングの成果発表の場ですが、同時に競技者の育成の舞台となります。
競技会における競技者への精神的圧力は競技者自身の競技能力への自己評価によるところ
が大きいのですが、パーソナルコーチはつねに競技者の競技能力と競技者の競技会での目
標設定に細心の注意を払う必要があります。競技者育成プログラムにおける競技者の評価
はいわゆる成績による絶対評価が基本となりますが、育成の現場では競技会への参加が育
成上好ましい効果を生むものでなければなりません。個人種目では競技者個別に設定され
た目標に応じた結果評価が必要となります。同時に参加権があるからといって極端なスラ
ンプにある状態の競技者や、充分戦えないレベルの競技者をその競技会に参加させること
が育成上有効かどうかの判断は非常に重要なこととなります。また育成期を過ぎた競技者
と育成中の競技者の間に目標設定に違いが出てくるのも当然と言えるかもしれません。
パーソナルコーチが競技会での競技者の目標設定がトレーニングの内容を決定する最
も大きな要素として捉えていることと同様に、競技者育成プログラムにおいてもその育成
段階での目標値を設定しています。プログラムが目標とする全日本選手権における競技レ
ベルは以下のとおりです。(競技人口が比較的多いライフル種目において設定されていま
す)目標値は 4 年サイクルで見直され、全体の到達レベルが低いような場合競技者育成プ
ログラムの事業内容などが年度ごとに見直されることになっています。年度ごとの評価に
ついては 10m種目の成績をバロメーターとして競技レベルを測定し、事業の見直し・検討
が実施されることとなっています。また、これらの設定値は競技者育成プログラム全体の
設定値であり、個別の競技者にはそれぞれに目標値が設定されるべきことは当然ですが、
例えばナショナルチームにあって国際競技力目標値にはるかにいたらない種目にあっては
予算化されていたとしても派遣より強化に予算が振る向ける等の計画変更を実施する可能
性を示唆しています。
種目
上位 20%タイル
8 位入賞レベル
国際競技力目標値
AR60
585
588
594
P60
588
590
594
3x40
1150
1155
1165
AR40
390
392
396
3x20
565
570
580
41
Ⅳ
1.
本会競技者育成事業の実施方針
競技会
本会の主催する競技会のうち、競技者育成のための競技者育成プログラム指定競技会
として別表に示すAおよびB競技会が指定されています。A・B指定競技会はプログラム
指定競技会として本会の競技者育成プログラムの事業の中心におかれるものです。これら
はあくまでナショナルチームを頂点とした国内における競技者育成の流れを醸成するため
の指定で、指定された競技会と指定外競技会との価値を分別することが目標ではありませ
ん。事実、A指定競技会に出場するためには指定外競技会にて上位に位置しなければ参加
すら出来ないわけですから、指導者として競技者育成の道筋は指定外競技会にあると考え
て差し支えないものです。
A指定競技会は全国的に公的な評価を与える競技会で、ナショナルチーム員やジュニ
ア強化チーム員の選考の基礎となりますので、競技者育成にあたるかたがたは、トレーニ
ングプランの作成の際の目標競技会設定の指針とすべきものです。ナショナルチーム部会
による選考会を除くA指定競技会の成績は本会の派遣する日本ナショナルチーム員候補選
考の第 1 次審査として使用されます。ナショナルチーム部会による選考会がチーム員以外
に開放された競技会である場合、該当競技会もA指定競技会となります。(ナショナルチー
ム詳細は年度ごとにナショナルチーム部会により決定されます)
A指定競技会は次の原則の下に実施されます。なお各競技会の要項が伝統的な方式に
よる場合、順次以下の原則にそって実施されるよう変更されます。
ⅰ. 参加者定員の少なくとも 50%、または 20 名のいずれか小さい数を越す人数におい
て直近の実力上位のものを優先して参加させる。 実力上位
ングシステムの順位を持って実施する。この項で定められた
の認定方法はランキ
実力上位
に該当
しないものの参加については要項にて定める。
ⅱ.
ⅰ.により参加を認定されたものについて、屋外で実施される競技については当
該認定により参加した競技者全員を同一のコンディションで競技させる。それ以
外の競技者については主催者が抽選をもって、或いは任意に射群等を決定する。
ⅲ.
ナショナルチーム員に指定されているものはⅰ.のカテゴリーの上位に位置し、
ナショナルコーチの指定した種目については無条件に参加させる。
ⅳ.
年齢・学域制限等の参加資格制限のある競技会で参加希望者のうちランキング制
度において 20 位以内(オープンランキング)の競技者はシード選手とする。
42
ⅴ.
ⅵ
当該年末をもって 21 歳未満のものをジュニアとする。
ⅰ.ⅱ.ⅲ.の条件が満たされている限り、施設などの条件の許される限り参加人
数は制限しない。
B指定競技会は主に将来を担う競技者の強化育成を主眼とした競技会です。ナショナ
ルチームの方針によりB指定競技会もナショナルチーム員選考の資料となる場合がありま
す。特にジュニア選手権などの参加者の帰属を限定されたチーム編成の場合に多く利用さ
れることが想定されます。
これらの指定競技会の成績は選手強化部会に集められ、選手選考のデータとして蓄積
されます。国際競技会を除く指定外競技会の成績がナショナルチーム員選考の第一義的な
基礎資料となることは原則としてありません。また指定競技会は国際競技会のスケジュー
ル変更などの理由により、年度途中で追加される場合がありますので、本会WEBなど情
報の収集に留意してください。
プログラム競技会は、年度ごとに競技者育成プログラム委員会により指定されますが、
基本的には次の競技会が含まれます。また参加者の選定基準が上記のものと著しく異なる
場合は指定競技会とはなりません。
A指定競技会(オリンピック種目のみ指定)
備考
1.全日本選手権
全日本選手権は屋外射撃種目については夏季
〜秋季に、10m種目は 2〜3 月に開催されま
す。
2.選手強化部およびナショナルチームによ
詳細は選手強化部会およびナショナルチーム
って行われる選考会ならびに国際競技会*注
部会により立案されます。
3.JOCカップ
JOCがJOCカップの開催を中止した場
合、本会にて代替のジュニア競技会を開催し
ます。
(この競技会はジュニアカテゴリーの最
高峰の競技会と位置づけらます)
4.全日本学生選抜選手権大会
参加者の選定は学連の規定によります
5.全国高等学校ライフル射撃選手権大会
参加者の選定は高校射撃部の規定によります
6.全日本社会人選手権大会
参加者の選定は開催要項によります
7.春夏秋冬ピストル大会
8.全日本選抜選手権
通常春季に開催されます。
9.統轄部会があらかじめ指定した競技会
通常事業計画策定時に指定されます
43
*注:世界選手権大会、ISSFワールドカップ、アジア競技大会、アジア選手権大会、
並びにこれらの予選会はこの中に含まれます。
B指定競技会(オリンピック種目のみ指定)
備考
1.国民体育大会
国民体育大会の成績は原則として各種代表候
補の一次審査にのみ使用されます
2.冬季 10mランクリストマッチシリーズ
ランクリスト競技会は全日本選手権 10m種目
の参加者を選考する資料となります。また冬
季の強化海外遠征を実施する場合選考会を兼
ねる場合がありますが、この場合選手強化部
会より告示されます。
3.全国高等学校選抜選手権大会
選抜された選手の成績のみ対象となります
プログラム指定競技会に含まれない次の競技会は、次世代の選手のタレント発掘事業
として指定されていますので、競技者育成に当たる方々は競技者のプロモーションの場と
して認識する必要があります。
*
小学生を含むデジタル・スポーツ・シューティング競技大会
*
全国ジュニアビームライフル射撃選手権大会
2.
選手強化事業
本会における選手強化事業は大別すると対象者により3種類に分けられます。第 1 は
ナショナルチームに関する事業(A 事業)で、第 2 はそこに至る直前のレベル(強化選手)
に対する事業(B 事業)、そして第 3 は競技導入レベルを含めた登録競技者全般に対する事
業(C 事業)です。A 事業および B 事業は主に選手強化部会およびナショナルチーム部会
の連携の下に実施され、C 事業は競技者育成プログラム委員会の各部会が担当となって実施
します。
2-1
ナショナルチーム強化事業(A 事業)
ナショナルチーム員に対する事業には、選手の選考、強化合宿、海外遠征の実施など
が含まれます。これらの事業はナショナルコーチおよびナショナルチーム部会によって企
画され執行されます。ナショナルチーム部会は、ナショナルコーチを頂点とするコーチン
グスタッフ、競技者をサポートする医科学スタッフ、総務的な役割を担うマネジメントス
44
タッフ、競技成績を管理・分析し情報の整理を担当する情報・戦略スタッフにより構成さ
れます。各スタッフは連携をとりチームのサポートとチーム外の登録競技者への情報提供
を図ります。なかでもナショナルコーチには大きな権限があたえられますが、統轄部会は
その権限行使の合理性を監督する機関として機能します。
ナショナルチーム員は基本的にA指定競技会の成績の上位のものの中で、本会の派遣
方針「日本代表選手派遣にあたって了解していただく事項(方針)」(別掲)に同意する競
技者のなかから選考されますが、その要項はナショナルチーム部会より発表されます。ナ
ショナルチーム員選考に特別な選考競技会を実施せずA指定競技会の成績を直接使用する
か、または(A指定競技会に含まれる場合もありますが)選考競技会を実施するかはナシ
ョナルコーチの判断に基づいて決定されます。ナショナルチーム員の選考要項については
本会WEBページに掲載されます。
また年度の途中においても、A競技大会における成績等により成長が著しくナショナ
ルチームに加えて国際大会の我が国代表として十分活躍することが期待できる選手につい
ては、ナショナルコーチの推薦によりナショナルチーム部会および理事会の承認を得て、
随時ナショナルチーム員に加えることがでます。
日本代表選手派遣にあたって了解していただく事項(方針)
社団法人日本ライフル射撃協会(以下協会)は、選手派遣について以下の方針を持って実施いたします。協会は当方針を了解された選手の中から代表選手を選
考させていただきます。
1.
派遣チームの役員選手は競技者育成プログラム委員会で予備選考され、理事会において決定されます。
2.
派遣チームの指揮はチーム監督または代表者によってとられ、チーム員はその指揮下に入ります。
3.
派遣チーム員がやむをえない個人的事由で参加を取りやめた場合、または派遣日程を変更した場合に発生する旅行に関する損金等は当該個人にご
負担いただきます。
4.
派遣に際しては一定額の派遣負担金を徴収いたします。
5.
派遣競技会での選手起用の判断はチーム監督または代表者によってなされます。
6.
協会競技者資格並びにスポンサーシップ規定に違反することが明らかになった派遣チーム員は派遣競技会に参加できません。この項にはJOC 選
手強化キャンペーンに関する規定も含まれます。また協会のスポンサーシップに関する企業ロゴなどのユニフォーム等への標記に関して、チーム
員は協会スポンサーシップ契約内容に従う義務を負います。個々の選手のスポンサーシップ契約に基づく企業ロゴ等の標記に関しては、協会競技
者資格並びにスポンサーシップ規定に基づき実施することができます。
7.
競技中のチーム員の肖像権は協会に属するものとします。この項は職業競技者に対しても同様に適用されますが個人的に使用される肖像の取得を
禁止するものではありません。
8.
派遣チーム選手及びその候補者は、ドーピング競技外検査を含め、求めに応じてドーピング検査を受ける義務を有します。拒否することはできま
せん。
(特別な場合を除きWADA、JADA規定が適用されます)
45
9.
ドーピング検査において陽性となった選手は、処分決定後少なくとも2 年間は代表選手にはなれません。
(特別な場合を除きWADA、JADA 規
定が適用されます)
10.
協会は派遣活動の安全確保のため善意を持って活動いたしますが、派遣チーム員の安全を保障することはできません。
11.
協会は派遣チーム員に対して、派遣期間の間に限って協会を受取人とする生命保険等を購入する場合があります。この保険金は事故の際の事後処
理に充当され、残余のある場合家族等に引き渡されます。
12.
協会がチーム員を受取人とする旅行損害保険等を購入することはありません。必要な場合、チーム員個人でご用意ください。協会が旅行損害保険
等を斡旋することはありません。
上記、協会選手派遣方針を了解しました。
平成
年
月
日
氏名(自署)
未成年の場合親権者のご署名
オリンピック大会、世界射撃選手権大会、ISSFワールドカップ各大会、アジア競
技大会、アジア射撃選手権大会など主要な国際競技会への派遣選手の選考方法については、
ナショナルチーム部会が起案し理事会の承認を得て協会のWEBページ等で公表します。
さらにそれらの国際競技大会での参加チームの競技者構成は、理事会で承認されあらかじ
め公表されている選考方法にもとづき、第一義にはナショナルコーチが起案します。国際
競技会の派遣選手については理事会の決議事項ですが、その他の強化策についてはナショ
ナルコーチおよびナショナルチーム部会があたえられた予算とその目的の範囲内で裁量し
て実施します。
我が国の選手が国際競技会で取得したオリンピック国別参加権(クォータプレース=
QP)は取得した競技者ではなく、当該競技者の所属するNF(日本ライフル射撃協会)
が属するNOC(日本オリンピック委員会)に与えられます。
ナショナルチーム員に選考されたものの競技力向上については競技者のパーソナルコ
ーチとナショナルコーチとの連携の下に実施されます。競技者にパーソナルコーチがいな
い場合、ナショナルコーチをパーソナルコーチとすることもできます。A 事業の強化合宿等
はナショナルコーチまたはナショナルチームのコーチングスタッフの指導のもとに実施さ
れます。
ナショナルチーム員に選考された競技者は、医科学部会のサポートや限られてはいま
すが経済的な制度支援の対象者となります。また就職支援の一環として実績証明書の発行
なども本人の要望に基づいて実施されます。
(ナショナルチーム経験者以外には発行されま
せん)継続して競技活動を実施する意思のあるものに対しては将来の競技キャリアに必要
な以下の講座の受講料および本会資格の認定料について本会が負担します。
46
対象事業
備考
本会公認審判員登録料
初回のみ
ISSF ジュリー講習会
受講料全部
C級コーチ(または新制度における同格の資格)
受講料全部
本会インストラクター資格(予定)
受講料全部
ISSF コーチ講習会
受講料全部
2-2
強化選手強化事業(B 事業)
強化選手強化事業(B 事業)はナショナルチームを目指す競技者グループを対象として
実施されます。公的な助成を受ける競技会のなかには予算体系の中でこの事業の範囲内に
おかれるものもありますが、(ジュニア対象の一部の競技会など)競技会そのものでは A・
B 指定競技会の区分を採用しています。(A・B 事業と A・B 指定競技会とは直接的な関連
はありません。)
B 事業にはナショナルチーム海外派遣に該当しない国際競技会も含まれます。そのなか
にはジュニアカテゴリーの国際競技会、日韓高校対抗戦、世界学生射撃選手権などが含ま
れます。一般に派遣選手の帰属が限定されている競技会については強化事業部会担当役員
または加盟団体などの組織にその執行が依託されますが、これらの派遣事業のうちナショ
ナルコーチが競技者育成上特に重要と指定した派遣についてはナショナルチーム部会がこ
れを執行します。ワールドマスターズゲームもB事業に含まれ、その事業の執行は担当役
員が責務を負うこととし、ナショナルチーム部会は関与しませんが加盟団体等の要請に基
づき技術指導等の支援を実施します。またパラリンピック等の関連事業についてもNPO
法人日本障害者スポーツ射撃連盟等の加盟団体の要請に基づいて支援をいたします。
ナショナルチーム部会が B 事業内の派遣事業を執行する場合、派遣に当たってはその
派遣選手全体の66%以上は競技会の成績をもとに選考します。残りの部分はナショナル
チーム部会がわが国の将来の競技力向上に寄与すると思われる選手をナショナルコーチの
競技技術評価に基づいて選考する場合があります。評価の基準は、競技得点、骨格サポー
トの完成度、バランス技術の完成度ならびに競技者のモチベーションに置かれます。この
権限は行使されない場合もありますが、行使する可能性のある場合事前に告知されます。
競技者自身または競技者の育成にあたる方々はナショナルコーチに対する選手のプロモー
ションレターを出すことが出来ますが、このレターは個人情報の記載部分を除いて公開さ
れます。プロモーションレターだけで選手が選考されることはありません。
47
ナショナルチームの強化合宿に該当しない強化合宿は一般に B 事業に該当します。こ
れらの合宿の多くは予算化されたもので、おもにジュニア年齢層の競技者を対象に実施さ
れます。ジュニア年齢層の競技者に対してはジュニア担当コーチがその指導に当たります。
本会で実施するジュニア対策事業は原則としてジュニア担当コーチの指導のもとに実施さ
れます。その対象となった競技者の一部はナショナルコーチの最良によりナショナルチー
ムの強化合宿に招待される場合があります。
2-3
競技力向上事業(C 事業)
本会の主催する事業のうち多くの部分が C 事業に分類されます。これらの事業は各担
当部会の主たる業務とするところです。C 事業は広く全登録競技者の競技力向上に寄与する
ことを主眼に以下の事業が実施されます。
競技力向上事業(C 事業)
指導者育成部会
導入事業部会
強化事業部会
サイト技術情報
WEB
ジュニア研修事業︑高校選抜・合宿
情報提供事業・
ブロック別強化事業
総合型地域スポーツクラブ活動支援
青少年射撃教室
ジュニアビーム
デジタル・スポーツ・シューティング
インストラクター養成事業
競技力向上コーチ養成事業
競技力向上指導者養成事業
廃止されるコーチ制度に代わる新制度の専門科目カリキュラムの講座を担当すると共
48
に、新たな本会内インストラクター制度を創設する予定です。現在、国民体育大会におい
て都道府県チームの監督要件に C 級コーチの取得を求めている競技団体が 30%ありますが、
ライフル射撃も近い将来同様の制度を採用いたします。本会では現状に鑑み、要求資格を
インストラクターとする予定です。
(今後の(財)日本体育協会との協議の上決定されます)
また全国または東西日本に分けた指導者の集合研修も実施されます。この研修会はナショ
ナルコーチまたはナショナルチームのコーチングスタッフなどにより指導される予定です。
競技力向上指導者養成事業は指導者育成部会が担当します。
また資格指導者は組織されより多くの方々が選手のパーソナルコーチとして活動でき
るように情報の伝達やブロック単位の再講習事業を実施します。
競技導入事業
本会では競技者育成のための競技の導入年齢について 13 歳を想定しています。学齢で
置き換えると、中学校の 3 年間に相当しますが、これらの年代及び高校生、成人も含め、
これからライフル射撃を競技として実施したい方々を対象に事業を展開します。インフラ
として整備が完了しているビームライフル機材の活用を中心に、新たに開発されたデジタ
ル・スポーツ・シューティングを加えた銃砲刀剣類所持等取締法の適用を受けない機材を
使用します。全国的なタレント発掘を目的とした青少年射撃教室やインターネットを利用
したデジタル・スポーツ・シューティング大会を実施します。競技導入事業は導入事業部
会が担当します。
ブロック別強化事業
主にジュニア層とその指導者を対象とした強化講習合宿を実施します。ブロック別強
化事業は各ブロックのリーダーにより主導されますが、要請に基づき本会から指導者が派
遣されます。また加盟団体が独自で行う強化合宿などにも要請に基づき指導者を派遣しま
す。ブロック別強化事業は競技力向上事業の中核と位置付けられ、競技者とパーソナルコ
ーチがこれらの事業は強化事業部会が担当します。
技術情報提供事業
競技技術に関する情報は強化事業部に集められます。そのなかにはナショナルチーム
やナショナルコーチからの技術情報、海外論文の紹介などが含まれます。技術情報の提供
は強化事業部が担当します。ナショナルチーム内では情報・戦略スタッフが技術情報を収
集研究の上、強化事業部からWEBを通して全国に配信されます。一部の比較的大きな情
49
報は広報誌やWEBサイトの記事として広報されますが、多くのケースで電子メールが使
用されますので競技者の育成に当たる方々は事前にメールアドレスの登録が必要となりま
す。
3.
成果の評価
競技者育成プログラムでの事業の評価についてはナショナルチームの成績に集約され
る一面があるのは従来と変わるところはありません。例えばオリンピックの実施年度でメ
ダルの獲得に成功すれば、社会的評価を得ることは事実でそのことが競技者育成プログラ
ムの最終的な目標といえます。ナショナルチームの目標は各オリンピアードに、メダル獲
得-強化-QP獲得の目標サイクルにあわせ年度ごとに目標を設定し、それに対する評価をし
て事業内容の修正を実施します。ナショナルチーム部会は改善すべき点は迅速に対応する
ことをモットーに評価結果と次年度の計画を明示し、恒常的な国際競技力の向上を目指し
ます。
ナショナルチームの基本的な競技会(A事業)サイクルは以下のようになっており、
これらの競技会に対して目標が設定され、競技結果を通して評価が実施されます。(世界学
生選手権大会はB事業ですが便宜のため記載しております。また競技会の開催時期が変更
される場合もあります)種目によっては最大の目標となる競技会が相違する場合も想定で
きますが、その場合も目標値が別個に設定されます。ナショナルチーム員にはそのことが
伝達され、日本代表としての個別のトレーニング計画が立案されていきます。
オリンピアード
目標
1 年目(2004)
メダル獲得
主競技会
オリンピック
活動の焦点
オリンピック代表の強化
(世界学生選手権大会)
2 年目(2005)
競技力強化
ワールドカップ
ナショナルチームの競技力
の向上
3 年目(2006)
QPの獲得
ワールドカップ
世界選手権大会・アジア大
世界選手権大会
会に向けての強化
(世界学生選手権大会)
アジア大会
4 年目(2007)
QPの獲得
ワールドカップ
QP獲得に向けての強化
アジア選手権大会
次期 1 年目(2008)
メダル獲得
オリンピック
オリンピック代表の強化
(世界学生選手権大会)
メダル獲得
50
過去のオリンピックとメダルの獲得状況(別表)をみれば本会の国際競技力の浮沈が
時系列では周期的に現れていますが、それはその時期に優秀な選手が出現したことを意味
しており、それと同時に国内競技レベルが向上していたとは残念ながら言い切れません。
開催年
場所
メダルの獲得の有無
1952
ヘルシンキ
なし
1956
メルボルン
なし
1960
ローマ
銅*1
1964
東京
銅*1
1968
メキシコシティー
なし
1972
ミュンヘン
なし
1976
モントリオール
なし
1980
モスクワ
不参加
1984
ロスアンゼルス
金*1
1988
ソウル
銀*1
1992
バルセロナ
銅*1
1996
アトランタ
なし
2000
シドニー
なし
競技者育成プログラムでは国際競技力の恒常的な向上を担保するために国内の競技レ
ベルの向上をはかり、そこからナショナルチーム候補競技者を潤沢に供給できる状況を作
り上げることに重点が置かれます。実施事業の構成やその方法は年度ごとに見直され逐次
改善されることとなっています。見直しに掛かる評価基準は一般に全日本選手権の成績に
よってなされます。オリンピック実施種目のうち、競技結果を左右する気象条件などの外
的要因が比較的小さい 10m競技種目の成績を年度ごとに比較し、プログラムの成果評価を
実施します。これらの評価はナショナルチーム、情報・戦略スタッフなどにより分析され、
競技者育成プログラム委員会の検討を経て、次年度または次次年度のプログラム事業の立
案のために使用されます。(屋外種目は技術以外の要因が結果を形成する性格が強く、年度
ごとに総合的に評価するものとします)
国内の競技レベルの評価は 10m種目の上位 20 名(AP40 は 10 名)の全てのシリーズ
の平均点によって実施されます。ひとつの競技会の成果で全てを評価することは科学性に
疑義があることは事実ですが、全日本選手権の 10m種目が年度の最終時期に実施されるこ
となどを勘案すると、目標値としてそれなりの意味を持たせても差し支えないものと判断
51
されています。2000 年〜2003 年の結果は以下の通りとなっています。
AR60
AR40
AP60
AP40
2000 年
96.69
96.61
94.21
93.58
2001 年
97.25
97.15
94.89
93.58
2002 年
96.99
97.45
94.03
92.65
2003 年
97.38
97.54
95.14
94.15
競技レベルの変遷
98
97
96
AR60
AR40
AP60
AP40
95
94
93
92
2000年
2001年
2002年
2003年
これらの数値に仮に 1.00 の動きがあった場合、60 発競技ですと競技者一人当たり 6 点
に相当しますので大きな競技レベルの変化が観察されたことになります。ここでは 2002 年
はピストル種目に問題点が観察されると言えます。ライフル種目では 2006 年に競技規則が
改訂されますので、仮にそのことによる数値低下があるとするとその対策がプログラムと
してなされることとなるでしょう。
競技者育成プログラムの進捗に対する評価は毎年実施され、本会事業報告書に記載さ
れると共に、年度ごとに必要な変更が実施されます。また評価に基づく競技者育成プログ
ラムの基本方針の変更が必要な場合、オリンピック競技大会の翌年から実施することを原
則とします。
52
競技者育成プログラム競技会構成の概略
プログラム指定競技会群
国際競技会
(ナショナルチーム候補者選考)
全日本選手権
(予選会)
JOC カップ
全日本社会人
春夏秋冬ピストル
全日本学生選抜
全国高等学校
全日本選抜
ナショナルチーム
指定競技会
選考会
高校選抜・合宿
ランキング
国民体育大会
ランクリストマッチ
ジュニアチーム
(育成)
(予選会)
デジタル・スポーツ・シューティング競技大会
全国ジュニアビームライフル射撃選手権大会
国際競技会
青少年射撃教室
53
Ⅴ
1.
競技者育成プログラム委員会と育成に係る個別問題
競技者育成プログラム委員会
競技者育成プログラムは本会主催事業群として競技者育成プログラム委員会の管轄の
もとに置かれます。競技者育成プログラム委員会は正会員から負託を受けた本会の執行機
関である理事会のもとに置かれる専門委員会のひとつで、競技現場に直接関係する事業を
有機的に展開して一貫指導体制を構築すべく 2003 年度に旧専門委員会を改編して創設され
たものです。スポンサーシップ関連など一部のプログラムは総務委員会など別の委員会が
担当する場合もありますが、多くの日常の競技者育成活動や競技会の実施は同委員会の執
行事業となります。委員会の組織は以下のようになっています。
競技者育成プロ
統括部会
グラム委員会
(主に各部会長により構成
される統轄ボード)
競技企画部会
競技者育成プログラム全体の調整
事業の進捗の評価
ナショナルチーム監督・スタッフの選考検討
AB 指定競技会、主催競技会企画・調整
記録部会
記録公認業務
審判部会
規則翻訳・国内規定制定
審判員養成・国際審判員養成・派遣
指導者育成部会
指導者育成事業(C事業)
指導者認定事業、指導者派遣
導入事業部会
導入時期のものに対する事業(C事業)
ビームライフル競技推進
デジタルスポーツシューティング事業推進
強化事業部会
選手強化事業(B事業)計画・実施
ブロック別強化事業(C事業)
競技者育成情報の集約
競技技術情報のWEBでの提供(C事業)
射撃競技情報の広報
ナショナルチーム部会
選手強化事業(A事業)事業・実施
ナショナルチーム選手選考
ナショナルチーム派遣
医科学部会
医科学関係事業
ナショナルチームスタッフ派遣
54
生涯スポーツ推進部会
シニア対策事業
協会外への射撃関係事業支援
スポーツマスターズ参画準備
各部会はそれぞれの分担事業の企画、執行を担当しますが総合的な計画は統轄部会に
て事業調整がなされ、年度評価が実施されます。
①
競技企画部会
競技企画部会は主催競技会、AB 指定競技会の企画を担当します。年度を通じた指
定競技会の基本的な時系列による構成は以下の通りとなります。
(開催月は固定さ
れたものではありません)
A 指定競技会
4月
B 指定競技会
春季ピストル
5月
6月
7月
夏季ピストル
全日本学生選抜
全日本高校
8月
9月
JOC カップ
全日本社会人
秋季ピストル
10 月
11 月
国民体育大会
全日本選手権(屋外種目)
12 月
10mランクリストシリーズ
1月
10mランクリストシリーズ
2月
10mランクリストシリーズ
3月
全日本選手権(10m種目)
全国高校選抜
全日本選抜
これらの指定競技会の合間に各種の競技会が組み込まれますので、パーソナルコ
ーチは競技者個別のトレーニング状況や生活環境を年間スケジュールと参照の上
目標競技会を設定する必要があります。
55
②
記録部会
記録部会は日本記録の公認実務を行います。公認日本記録は年齢に制限のない 日
本記録 、当該年 12 月末日をもって 21 歳未満の競技者の最高記録に対する ジュ
ニア日本記録
③
50 歳以上の競技者による
シニア日本記録
に分類されます。
審判部会
審判部会は ISSF 競技規則の翻訳、競技規則の制定を担当します。国際競技会での
ISSF 競技規則の実態等はナショナルチーム部会から審判部会に報告されて規則改
訂作業の参考とされます。
公認審判員の認定に関しての第 1 次審査は審判部会が担当し、理事会上程(案)
を作成することも審判部会の任務ですが、現在の本部公認審判員のなかからジュ
リー資格認定を 2004 年から実施し、2009 年度以降ジュリー資格を持つもので指
定競技会のジュリー団を構成することとする予定です。また 2004 年度以降の指定
競技会には審判部会からテクニカルデレゲートが派遣または指名されます。
④
指導者育成部会
指導者育成部会は資格講習の専門科目教程を決定し、資格認定の任にあたります。
最も基本的な資格講習のカリキュラムの概要は以下の通りとなっていますので自
習する方は参考にしてください。インストラクター制度が実施される場合、イン
ストラクター講習のカリキュラムは*印の内容を実施する予定です。
競技環境
スポーツ振興基本計画、競技者育成プログラム*、
ナショナルチームへの道程*、射撃組織、
銃砲刀剣類所持等取締法*、IT と射撃、
競技規則
競技規則*、クォータ・プレース制度、など
医科学
アンチドーピング*、基礎弾道学、赤外線訓練機、
ライフルの技術
伏射、立射、膝射の技術に対する基礎理論*、実技、
ピストルの技術
エア・ピストル射撃に対する基礎理論*、実技、
射撃理論発表
あたえられた課題についての発表または射撃技術を主題とし
たディベート
考査
知識試験*、実技試験
56
指導者養成部会では資格指導者などに対して補習講習会を実施いたします。これ
らの講習会は選手強化部のブロック講習などとは別個に実施されます。また指導
者や講師の派遣要請があった場合、資格指導者のなかから適任者に依頼調整する
作業も担当します。
⑤
導入事業部会
導入事業部会は本会の競技導入事業の企画、執行を担当いたします。導入事業の
多くは加盟団体で実施されますが導入事業部会は要請に応じてこれらの事業のサ
ポートを実施します。
⑥
強化事業部会
強化事業部会はナショナルチーム事業を除く競技者育成 B 事業の多くを担当しま
す。海外遠征事業のなかでも B 事業とされるものは強化事業部会が管轄する強化
事業のなかでナショナルチームへの前段階での集大成として位置づけられます。
登録競技者全体への強化事業の中で、競技情報の発信は強化事業部会が担当しま
す。各部会からの情報、とりわけ競技力向上に直結するナショナルコーチなどか
らの情報は一括して強化事業部会に集められ、電子メールで発信されます。尚こ
の情報発信の内容は競技者育成プログラムに関する技術情報であり、理事会決議
事項等組織的文書に代替するものではありません。また広報紙を補完する性格の
ものでもありません。
JOC ゴールドプランの施策変更等や国際競技会でナショナルチームが得た技術情
報の整理も強化事業部の担当となっています。これらの情報のうち機関紙に掲載
されるべきもの、WEB にて広報すべきものの分類がなされます。また JOC ゴー
ルドプランに基づく各種認定競技者の選定作業なども第一義的に強化事業部で実
施されます。
パラリンピックを目指す競技者への技術的なサポートも NPO 法人日本障害者ス
ポーツ射撃連盟との協調のもと強化事業部会が窓口となり実施します。尚、障害
者全日本選手権大会などの競技会そのものは競技企画部が担当します。
⑦
ナショナルチーム部会
57
ナショナルチーム部会はナショナルチームそのものといえます。監督およびライ
フル、ピストルの各ナショナルコーチを中心としたコーチングスタッフ、医科学
部会より選任される医科学スタッフ、チーム予算やスポンサーシップに携わるマ
ネジメントスタッフおよび情報戦略スタッフにより構成されます。
ナショナルチームに選考された選手で派遣される国際競技会は、オリンピック大
会、アジア大会に加え全てのクォータ・プレースが配分される競技会が中心とな
ります。
⑧
医科学部会
医科学部会は本会のアンチドーピング活動とナショナルチームへの医科学サポー
トを担当します。また JSAA の研究分門との協力も主として医科学部会が窓口と
なって行います。
⑨
生涯スポーツ推進部会
生涯スポーツ推進部会は登録競技者のうちシニア年齢に到達したもの以上に対す
るプログラムを担当します。ワールドマスターズなど国際的なシニアプログラム
への参加や日本スポーツマスターズへの参画に関する調査研究を実施します。
更には本会外への射撃競技のプロモーションも担当し、要請があれば本会外に射
撃プログラムを提供します。これらの事業は導入事業部会との連携のもとに実施
される場合があります。
2.
競技者育成のアワードプログラム
競技者育成プログラムでは年度ごとの以下の対象者に対し以下の表彰が制度化されて
います。これらの表彰は本会表彰規定にかかわりなく、日本の競技力向上に功績のあった
ものに対しての感謝の意として本会会長より授与されます。
2−1
競技者育成優秀コーチ表彰
パーソナルコーチ、チームコーチ、射撃部監督等のうち以下に掲げる基準点を指定競
技会において突破した新人競技者を同一年度内に3名以上育成した指導者に与えられます。
58
男子種目
基準点
女子種目
基準点
AR60
585
AR40
390
P60
588
3x20
565
3x40
1150
AP60
565
AP40
375
* ナショナルチーム・コーチングスタッフは対象となりません
* 実際に技術指導を担当している方が対象となります
* 受賞回数に制限はありません
* 新人競技者とは過去にナショナルチームに属するものまたは B 事業に相当する海
外遠征競技会に出場した経験のないものをさします。(当該年度にはじめてナショ
ナルチームに選考された場合、B 事業に相当する遠征に参加した場合はかまいませ
ん)
* 過去に受賞した際に評価対象になった新人競技者は以後の受賞の際の評価対象と
はなりません
* 進学等でパーソナルコーチ等を変更した競技者のうち、過去に別のコーチにおいて
評価対象となった競技者は新たなパーソナルコーチ等の評価対象とはなりません
* 該当する指導者等は年度終了後4月15日までに以下の書式をもって競技者育成
プログラム委員会まで申請するものとします。コピーを所属団体にもご送付くださ
い。尚申請書に書かれた情報のうち*印に関しては公開されます。
* 競技者育成奨励金が贈呈されます。
社団法人日本ライフル射撃協会、競技者育成プログラム委員会殿
月
日
競技者育成優秀コーチ表彰申請書
指導者氏名*
住所
〒
-
E メール
電話番号
@
所属*
所属での役割
指導対象者の成績*
競技者氏名
指導者の略歴*
(射撃競技関係)
指導者の持つ資格*
(射撃競技関係)
日付
記録
競技会名
自由記入欄*
この書類の作成者
印
59
2−2
優秀新人競技者表彰
ジュニア競技者を対象とし、規定を満たすものの中で次の基準点を指定競技会で同一
年度内において3回以上クリアしたものに対し与えられます。
男子種目
基準点
女子種目
基準点
AR60
588
AR40
392
P60
590
3x20
570
3x40
1155
AP60
565
AP40
375
* ナショナルチームに属する競技者は対象となりません
* 年齢が20歳に達する年が属する年度まで受賞回数に制限はありません
* JOC ゴールドプラン等、外部組織からユースアスリート等に指定されている競技
者は対象となりません
* 学校卒業などに際し、競技を継続する予定のないものは対象となりません
*
3回
は複数種目を合算してもかまいません
* 該当する競技者が所属する加盟団体長またはパーソナルコーチ等が以下の書式を
もって申請してください。尚申請書に書かれた情報のうち*印に関しては公開され
ます。
* 競技者育成奨励金が贈呈されます。
社団法人日本ライフル射撃協会、競技者育成プログラム委員会殿
月
日
優秀新人競技者表彰申請書
競技者氏名*
住所
〒
-
E メール
電話番号
@
所属*
競技者の成績*
競技者氏名
日付
記録
競技会名
競技者略歴*
指導者の氏名*
自由記入欄*
この書類の作成者
印
60
3.
ピストル選手の発掘育成の特別プログラム
ピストル射撃競技は銃砲刀剣類所持等取締法の制限により銃器の所持に 18 歳または
20 歳に達することが条件となっています。また手続きに要する時間を加算すると実体とし
ては 19 歳からの競技の開始が最も早い可能性となっていました。諸外国の選手強化の実態
を鑑みると現状では競技者の発掘さえ非常に困難な状況となっています。
競技者育成プログラムではこの状態を改善すべく、18 歳の年齢になったと同時に有望
な国際拳銃射撃競技者の候補者に対してエア・ピストルが所持できることを目的に以下の
プログラムを提供します。
①
青少年射撃教室
青少年射撃教室は、加盟団体のビーム射撃教室などと呼応して主に 13-15 歳の青
少年に射撃競技を体験させる機会提供として実施されますが、デジタルス・ポー
ツシ・ューティングのピストル種目を通じてピストル射撃候補者の発掘にも利用
されます。ここで発掘された競技者は加盟団体でデジタルス・ポーツシ・ューテ
ィングまたはビームピストルを訓練機材とし基本的な競技技術を習得します。
②
競技会参加
青少年射撃教室などで発掘された競技者(候補)は 16-17 の年齢にあたる 2 年間
は会員としてデジタルス・ポーツシ・ューティングまたはビームピストルの競技
会に参加し実績を積み重ねます。競技成績の良好なものは強化事業部による人選
がなされ、ナショナルコーチまたはそのスタッフによるタレント認定事業(集合
教育)に参加できます。会員経験が実質で 1 年未満のものはその資格は与えられ
ませんので、将来ピストル射撃に進む希望をもつ競技者で、早期にトレーニング
開始を望むものは 16 歳で加盟団体より会員登録を行う必要があります。
③
タレント認定事業(集合教育)
タレント認定事業では国際射撃競技大会の概要学習や、トレーニングが実施され、
推薦書取得に必要なライフル射撃に関する講習会なども実施されます。ナショナ
ルコーチまたはそのスタッフにより拳銃射撃の基本技術があり、銃器の安全な取
扱いが身についていて、エア・ピストル種目において早期に 95 点の技術に達する
能力があると認定された競技者には推薦書の申請に関して 18 歳の誕生日と共に発
61
行がなされるよう強化事業部が推薦委員会と調整を行います。この場合人格に関
する調査を加盟団体に対し実施します。
(手続きは通常通り加盟団体経由で行いま
す)
この事業には高等学校ライフル射撃部でライフル射撃競技を経験してきたものに
も開放されますが、評価基準はデジタルス・ポーツシ・ューティングなどでピス
トル競技を目指してきたものと同じものが採用されますので、事前の基礎訓練な
どは終了しておく必要があります。なお自ら申請して参加する競技者の集合教育
に関する経費は競技者自身の負担となります。
④
ジュニア育成事業
上記のステップによりエア・ピストルを所持したジュニア選手に対しては 20 歳に
達する年までナショナルチームの訓練合宿に参加することなど、特別な訓練がナ
ショナルチーム部会より実施されます。また地理的に可能な場合、ナショナルチ
ームスタッフまたはその経験者に対し当該ジュニア競技者のパーソナルコーチと
して指導に当たるよう要請がなされます。
62