Interview ミヤコシ デジタルプリントビジネス 成功のポイントは!

Interview ミヤコシ
デジタルプリントビジネス 成功のポイントは!
フロントエンドから後加工まで デジタル印刷技術を総合提案
- デジタル印刷のさらなる付加価値創造 -
水性/UV インクジェット印刷機、電子写真印刷機と、連続紙タイプの各種フルカラーデジタル印刷機を発
表し、デジタル印刷市場を牽引している㈱ミヤコシ。同社は、デジタル印刷機単体の提供だけにとどまら
ず、フロントエンド構築から後加工による付加価値創出、ユーザーのビジネスに応じたカスタマイズまで対
応することで、世界のデジタル印刷機ユーザーから支持を受けている。このようなトータルソリューションの
提供を通して、デジタル印刷市場発展をサポートする取り組みについて、POD 営業部の宮腰亨取締役部
長に話しを聞いた。
---- 御社が発表しているデジタル印刷機のラインナップと、各々の機種の特徴、ユーザーとして適した
規模・業種について簡単にお聞かせください。
宮腰 ロール紙タイプのインクジェット印刷機「MJP シリーズ」に、水性インク対応の製品と UV インク対応
の製品をラインナップしています。
あらゆるニーズに応えられる多彩なラインナップを用意
水性インク対応の製品として、印字幅が約 20 インチ(541mm)で A4 判 2 面付けが可能なモデルが
4 種類、印字幅が約 30 インチ(757mm)で菊半裁や新聞サイズにも対応可能なモデルを 1 種類揃え
ています。
印字幅 20 インチのモデルには
① 平成 19 年に上市して既に多くの採用実績があります、600×600dpi の解像度でフルカラー毎分
150m の印字スピードを実現する、基本モデルの「MJP20C」
② 昨年から発売開始しています、600×600dpi の解像度でフルカラー毎分 75m の印字スピードを持
つ、ローボリューム向けの「MJP20D」
③ JGAS2009 で発表しました、600×600dpi の解像度でフルカラー毎分 200m まで印字スピードを上
げました「MJP20F」
④ モノクロ専用機の「MJP-mono」
をラインナップし、ユーザーが用途やビジネスの大きさに応じて選択してもらえる準備をしています。
さらに、印字幅 30 インチのモデルとして 600×600dpi の解像度でフルカラー毎分 150m という印字ス
ピードの「MJP30A」を用意しています。
「MJP20C」は 1 印字タワーで片面印刷をしますので、半幅の用紙であれば 1 印字タワーで表裏印
字できますが、全幅の用紙に表裏印刷をする場合には 2 つの印字タワーが必要となります。
「MJP20D」と「MJP20F」に関しては、省スペースで全幅の用紙に表裏印刷ができるように紙パスを
工夫し、1 印字タワーでそれらができるようにしました。
これらの印字幅 20 インチのモデルでは、トランザクションやデータ処理系の仕事で多く活用されて
います。その他に、One to one 教材、旅行パンフレットや DM などでも多く活用してもらっています。
「MJP20C」「MJP20F」に関しては生産性が高い機械なのでハイボリュームの仕事を持つユーザー
から、「MJP20D」に関してはローボリュームのオンデマンド印刷を志向するユーザーからの支持を
受けています。また、「MJP30A」に関してはそのサイズを活かして、新聞・書籍印刷などの用途で活
用していただいています。
フィルムや軟包装にも使用可能 UV インク対応の「MJP20V」
一方、UV インク対応のモデルとして、印字幅が約 20 インチで、600×600dpi の解像度で毎分
100m の印字スピードを持つ「MJP20V」というモデルを drupa2008 でリリースしました。この
「MJP20V」の最大の特徴は、様々な原反を使用できることです。国内および海外でも既に採用が進
んでいまして、様々な用途で活用していただいています。シール・ラベル用途や紙ベースへの印刷
でも使われています。また、フィルム・軟包装やパッケージ分野で活用したいという相談も多くいただ
いています。
また、印刷業界とは異なる分野に向けた製品となりますが、テキスタイル向けにワイドフォーマット
シリアルプリンターの「TXP18A」という製品もラインナップしています。この機械の特徴は、2m という
広幅に対応し、従来のテキスタイルプリンターの 10 倍以上の処理スピード(毎時 400 平方メートル)
を持っており、これまでのスクリーン印刷からの置き換えを勧めています。
インクジェット方式のデジタル印刷機の他に、液体トナーを使った電子写真方式のデジタル印刷
機「MD-Press1260」の開発を進めています。この「MD-Press1260」は色々な展示会で既に参考出
品をしていますが、一番の特徴は高速生産性で、1200dpi の高解像度で毎分 60m の印字スピードを
達成しています。
個々のユーザーの要望にカスタマイズ技術で応える
---- 「MJP20C」を発売して以降、ここまで製品の幅が広がった背景についてお聞かせください。
宮腰 ユーザーからいただいた要望や相談に応え、それを具体化してきたことで、色々な機種をラインナッ
プするに至っています。当社は、様々なカスタマイズ要望に柔軟に対応できる体制と社風を持って
います。ユーザーと共にビジネスや付加価値創出法を考え、それに合わせた製品を作ってまいりま
した。また、インクジェット印刷分野はこれまでも、そしてこれからも伸展を遂げる市場だと認識して
いますので、そこに開発の資源を投入しているという側面もあります。
---- 御社では、デジタル/バリアブル印刷市場の現在、そして今後の伸展について、どのように予測して
いますか?
宮腰 インクジェット印刷の技術はどんどん進化し、さらに原反もインクジェット印刷に適応するものが出て
きていますので、インクジェット印刷物の品質は目覚しく向上しています。
また、インクジェット印刷の優位性の 1 つとして、ランニングコストの引くさが挙げられます。その優
位性から、これまでレーザープリンターでやっていた仕事を、インクジェットへ移行する傾向も見られ
ます。そのような背景から、インクジェット印刷による製作物の量は増加すると考えています。
また、オフセット印刷分野に関しても、付加価値創出法として可変データを載せるアプリケーション
が増えています。さらに、インクジェット印刷の品質が一層上がってオフセット印刷に肉迫するように
なると、追い刷りで可変データを載せていた仕事を、インクジェット印刷機のみで製作するという動き
も出てくるでしょう。
当社としては、近い未来に生まれるであろうこのようなニーズに対応できるように、各種インクジェ
ット製品・ソリューション群を揃えておくことが必要だと思っています。
---- 後加工による付加価値提案も積極的にしていますが、デジタル印刷での後加工バリエーションにつ
いてお聞かせください。
宮腰 これまでビジネスフォーム分野で一般的に使われています、ミシンや Z 折り、マージナルパンチ、ス
キップミシン(バリアブルミシン)などの後加工ユニットを「MJP シリーズ」にも実装することができ、実
際に納入しているものの多くもそのような仕様になっています。これまで当社がビジネスフォーム印
刷機の提供を通して培ってきた全ての装置や技術を、デジタル印刷機の後加工ユニットとしても搭
載できる体制を整えています。特に後加工については、ユーザーによって要望がそれぞれ違うの
で、それをひとつひとつ形にして納入しています。
インライン後加工ユニットでデジタル印刷に高付加価値を
これこそが、他のデジタル印刷機メーカーにはない、当社だけが持つ強みだと自負しています。当
社だけが持つ強みだと自負しています。当社は、印刷ユニットだけでなく全てを自社製品として納入
できますので、データ入稿から最終製品に至る全工程まで、ユーザーの皆様の仕事に対して責任
をもてます。
---- 昨年に開催された JGAS2009 では「MJP20F」の表裏 5/5 色の機種に、糊綴じ製本機をインラインで
つないだモデルを出品しました。
宮腰 あのラインも、当社が提供する後加工技術の一端になります。後加工ユニットを接続したインライン
機ですが、完全な糊綴じ加工専用機ではなく、後加工ユニットを切り離した使い方もできるという柔
軟性を、デモンストレーションで提案しました。
---- 近時、印刷産業に寄せられる強い要望として「環境対応」が挙げられますが、デジタル印刷機はそ
の点においてどのような評価がされていますか?
宮腰 CO2 排出量削減という観点から見まして、印刷物製作工程において最も大きな負荷要因は紙です。
したがいまして、損紙をいかに減らすかが最大のポイントとなります。デジタル印刷機はオフセット
印刷のように多くの損紙を発生しませんので、CO2 排出量は格段に少なくなります。
---- インクジェット印刷のさらなる品質向上に向けた取り組みについてお聞かせください。
宮腰 取り組みの 1 つとして、1200×1200dpi で印字できるよう開発を進めています。
また、商業印刷物を手掛けているユーザーから、「水性インクに適さないコート系やグロス系の原
反に、フルカラー高品質の商業印刷物をインクジェットで印刷したい」という相談が寄せられていま
す。そのような相談に応えるべく、当社では下塗り・アンカー剤の評価を進めています。これにより、
様々な原反に対して、水性インクを使ったフルカラー印刷が可能になります。
---- そのような相談があるということは、オフセット印刷で手掛けていた商業印刷物を、インクジェット印
刷で行う動きが潜在的にあるのでしょうか?
宮腰 国内市場での事例はまだ極めて少ないですが、市場はそのような志向にあると思います。その市
場ニーズに先駆けて、対応できるようなラインナップを整えていきます。
---- 今後のデジタル印刷のあり方や、御社のデジタル印刷市場に対するサポートの方向性を教えてくだ
さい。
超高速機のスピードに追従するフロントエンドを積極サポート
宮腰 市場では当社に対して、機械メーカーというイメージを強くお持ちかもしれませんが、デジタル印刷
を展開する上で重要となるフロントエンドに関しても当社はサポートしています。高速処理ができる
インクジェット印刷機・後加工機を提供していますので、フロントエンドでの処理能力不足によって印
刷機・後加工機の高速パフォーマンスを落とさずに追従できるような仕組み作りもサポートしている
のです。
現在の印刷の仕事の進め方として、顧客から PDF で入稿されたものを出力するというフローが増
えています。インクジェット印刷分野でも当然、同様のフローを構築しなければなりません。その問
題に対して当社では、PDF をオン・ザ・フライで高速 RIP 処理できるシステムを「MJP シリーズ」はか
なり高速で稼動しますが、扱うデータの大きさによってそのパフォーマンスが落ちてしまわぬよう、
パフォーマンスを落とすことなく PDF を高速処理しながら吐き出せる環境を作りました。これにより
当社は、フロントエンドから後加工までをトータルで提案できるようになりました。
高品質なオフセット印刷にバリアブル印刷技術を搭載
また、従来のオフセット印刷機にインクジェットヘッドを搭載して、ワンパスでオフセット印刷の上に
可変情報を追い刷りするハイブリッド印刷技術も提供しています。「MJP シリーズ」のインクジェット
ヘッドは、解像度を少し下げることで毎分約 300m のスピードで印字できますので、オフセット印刷機
に追従できるスピードを実現できます。国内市場でもハイブリッド印刷の採用例は増えていて、相談
や引き合いも活発化しています。
当社としては今後、さらなるインクジェット印刷市場の発展に向け、先程お話しました印字品質をさ
らに上げていく取り組みに加え、スピードをさらに向上させる取り組みをしています。具体的には、
600×600dpi の解像度で毎分 200m、また解像度を下げて毎分 330m までスピードを上げるための研
究を続けています。さらに、付随する後加工システムも含めて全てを自社で提供できるという強みを
さらに確かなものにするため、あらゆるニーズに応えられるラインナップを取り揃えてまいります。
(2010 年 03 月号 印刷界 掲載)