バリアフリー改修減税で立法ミス

daily コラム
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2013 年 6 月 11 日(火)
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今年の税制改正
バリアフリー改修減税で立法ミス
財務省が立法ミスで記者会見
財務省はホームページで、バリアフリー
税制に関して、次のように、
①平成 29 年 12 月 31 日まで期限延長し、限
度額を 200 万円とする
②平成 26 年 4 月 1 日までの間の経過措置と
して、200 万円を 150 万円に読み替える
と、すべきところ②の規定の立法洩れをし
てしまった、と書いています。
朝日新聞はフライング減税
朝日新聞の「フライング減税」というネ
ーミングも話題を呼びました。同紙は、税
制改正法で「来年4月以降」という規定を
記し忘れたためで、過去に例がなく、税収
減1億円、関係者は処分、と報じています。
他紙の報道でも、ミスの内容を、平成 26
年4月以降分の控除上限枠を1年3ヶ月早
く前倒しで引き上げ、と伝えています。
バリアフリー改修と省エネ改修
ローンなし住宅改修税額控除には、耐
震・バリアフリー・省エネの3つがあり、
そのうち、バリアフリーと省エネは同一の
条文に規定されています。
そうすると、省エネには立法ミスがなく、
バリアフリーにのみ立法ミスが起きたのは
どうしてか、と疑問が湧きます。
ヒューリック福岡ビル 7 階
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読み替え規定はないのか
バリアフリーと省エネの条文は平成 24
年 12 月 31 日で期限切れ、新改正法は平成
26 年4月1日∼平成 29 年 12 月 31 日の期
間適用の規定として立法されています。
平成 25 年1月1日∼平成 26 年3月 31 日
の期間については、法律の附則で「なお従
前の例による」という文言をおいて、期限
延長と読み替えをしています。
前倒立法ミスではなく遡及適用排除ミス
「従前の例による」との文言は、期限切
れになった条文がそのまま継続適用になる
との意味です。期限切れ条文をみると、
①バリアフリー・・・200 万円を超える場
合には 200 万円とし、平成 24 年分について
は、150 万円を超える場合には 150 万円
②省エネ・・・200 万円を超える場合には
200 万円とし、太陽光パネル設置工事を行
う場合で 300 万円を超えるときは 300 万円
となっています。
すなわち、「直前の例による」ではなく、
「従前の例による」では、バリアフリーで
は、平成 24 年以外は 200 万円との規定なの
で、遡及期間の限度額が復活してしまう、
ということになったわけです。これが立法
ミスの実体です。
どこが立法ミスなの
か確認するのが難し
かった
補足と解説(お客様へは 1 ページ目だけを送付してください)
25.5.31 朝日新聞『フライング減税 来春
のはずが…法律に書き忘れ 財務省
財務省は30日、来年4月の消費増税に
合わせて始めるはずだった住宅関連減税の
一つを、誤って今年1月から始めていたと
発表した。税制改正法で「来年4月以降」
という規定を記し忘れたためだ。財務省は
税制に関する法律のうっかりミスは「過去
に例がない」としている。
ミスがあったのは、住宅のバリアフリー
改修をすると所得税の一部が戻る減税。3
月に成立した今年度税制改正法に含まれて
いた。予定では、減税対象の工事の限度額
を来年4月に今の150万円から200万
円に引き上げ、これに合わせて、所得税か
ら差し引く減税額を今の最大15万円から
最大20万円に拡大するはずだった。
だが、財務省が法案をつくる際、所得税
の規定に「来年3月末までは150万円の
まま」という記述を書き漏らした。法案は
国会提出前に内閣法制局のチェックを受け、
国会で審議されたが、だれも気づかずに3
月末に成立した。規定がないと今年1月1
日の入居分から減税が拡大されてしまう。
財務省はそのまま減税拡大を適用すること
にした。ミスは最近になって財務省が関連
する政令をつくろうとして気づいたという。
麻生太郎財務相は「ツメが甘かったとい
うことだと思う」と謝罪し、近く関係者を
処分する考えを明らかにした。』
租税特別措置法 附則 第 60 条 既存住
宅に係る特定の改修工事をした場合の所得
税額の特別控除に関する経過措置
居住者が旧租税特別措置法第 41 条の 19
の 3 第 1 項に規定する改修工事又は同条第
2 項に規定する一般断熱改修工事等をした
これらの規定に規定する居住用の家屋(当
該改修工事又は当該一般断熱改修工事等に
係る部分に限る。)を平成 26 年 4 月 1 日前
に同条第 1 項又は第 2 項の定めるところに
よりその者の居住の用に供した場合の所得
税については、なお従前の例による。
財務省広報室
平成 25 年 5 月 30 日掲載分
◆税制
・「所得税法等の一部を改正する法律」(平
成 25 年法律第 5 号)の一部改正規定の内容
について
http://www.mof.go.jp/tax_policy/250530
shotoku_teisei.htm
財務省立法ミス報道に接して、そのミスの内容を
条文で確認しようとしたところ、なかなか確認し
きれませんでした。附則の規定に洩れはなさそう
に思えました。あれこれと詮索していて、その意
味を自分なりに納得できるところの理解・解釈に
到達したので、コラムにしてみました。