橡 Taro8-17.「バリアフリー」の学習

「バリアフリー」の学習の中で
パソコンを道具の一つとして使う
その1
点訳ソフトの利用
総合的な学習の時間に「めざせ バリアフリー」と銘打ち 、『福祉・ボランティア』
の学習をしてきた。
この中で子どもたちは「点字」の学習にたいへん興味を示した。
町の中の点字を次々に見つけてきて、何と書いてあるのかを一生懸命に読みとろうと
していた。
これは、授業で点字一覧表を配布してあったので、子どもたちはそれなりに点字を読
むことができるようになった。
次に子どもたちが興味をもったのは、点字をうつ、ということであった。
しかし、これはなかなか難しい。
点字は、うつのと読むのとでは裏返しになるからである。
そこで使用したのが「学習点字ペン」というチューブ状の中にインクが入っているペ
ンである。
これならば点字を読むのと同じ感覚でうつことができる。
これまた子どもたちは大喜びであった。
はじめのうちは自分の名前をうって名刺を作ったりしていたのだが、そんな子どもた
ちにゲストティーチャーの話が舞い込んできた。
目の不自由な方のお話を聞かせていただくというものだ。
そこで子どもたちは考えた。
点字案内板を作れば、目の不自由な方でも安心して学校に来ていただける、と。
しかし、今までは自分の名前ぐらいしか点字でうったことがない子どもたちである。
いくら点字一覧表があるといっても「図書館」や「職員室」などを点字でうつのは不
安がある。
そこで登場したのがWindows版点訳ソフト「Win−BES 99」である。
これは、文字を入力すると点字に変換してくれるソフトである。
以下に、授業での使用の様子を述べる。
子どもたちに練習用紙を配り、次のような指示をした。
練習用紙に、点字一覧表を見ながら自分のうちたい点字を鉛筆で書きなさい
いきなり点訳ソフトを使わせると、子どもたちは混乱する。
-1-
まずは自分で点字をうつことから始めなければならない。
全員が書けたことを確認して、プロジェクターを使いパソコンの画面をスクリーンに
映した。
スクリーンには「win−BES 99」の画面が映し出されている。
ここに教師がおもむろに言葉をうちこんでEnterKeyを押す。
すると、さっきまでカタカナで表示されていた言葉が急に点字に変換された。
子どもたちからは「おぉっ!」というどよめきが起こった。
早く触りたくて、子どもたちはうずうずしている。
そこで教師は4人で1台のパソコンを割り当て、次のように言った。
点訳ソフトを使って、自分が書いた点字があっているかどうか確かめなさい
はじめから“すべてパソコンにお
任せ”にしてはいけない。
点訳ソフトは、あくまでも自分が
うった点字があっているかどうかの
確認のための道具として使うのであ
る。
4月よりパソコンを何度か使用し
ているので、子どもたちもだいぶ慣
れてはきているが、まだ充分ではな
い子もいる。
しかし、パソコンの前では、子ど
もたち同士で教えあう姿が見られ、
作業もスムーズに進めることができ
た。
その2
ホームページの活用
点字の学習をした後は、「町のバリアフリーをさがそう」というテーマで総合的な学
習を進めた。
子どもたちをパソコンルームの真ん中に集め、次の発問をした。
町にあるバリアフリーの施設や設備でどんなものを見たことがありますか?
子どもたちからは「点字ブロック」や「点字案内板」などいくつかの発表があるが、
数は少ない。
町にはたくさんのバリアフリーがあるのだが、子どもたちはなかなか気づくことがで
きなかった。
そこで、ひとつのホームページを授業で使用した。
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「バリアフリーのまちへようこそ」
http://www.pref.mie.jp/KENFUKU/plan/bfree/home/home.html
このページを表示したパソコンをプロジェクターにつなぎ、スクリーンに映して子ど
もたちが一斉に見られるようにした。
はじめから子どもたちをそれぞれのパソコンの前に座らせ、自由にページを見させて
は授業にならない。
必ず指導の時間が必要である。
この「バリアフリーのまちにようこそ」の中に「まちのバリアをチェックしよう」と
いうページがある。
「駅」や「歩道」などをクリックすると、それぞれにあるバリアを表示するようにな
っている。
また絵に動きがあるために、子どもたちにとっては親しみやすいページになっている。
車いすの人が「駅」に行きました。
「駅」には一体どのようなバリアがあると思いますか?
このような具体的な場面を示してはじめて子どもたちは気づくようになる。
「階段は車いすではのぼれないと思います」
「電車に乗るときに困ると思います」
一体どんなバリアがあるのか、ホームページを見てみましょう
“バリアのある駅”を見てみる。
すると、階段のことと電車に乗るときのことが書かれている。
それでは、
“バリアのない駅”は
どうなっていると思いますか?
子どもたちにいろいろと予想をさせ
てから“バリアのない駅”をクリック
する。
すると、エレベーターを設置するな
どのバリアフリーが紹介されている。
このページでは、この他にも「 改札」
や「バス 」「建物」など、さまざまな
まちのバリアをチェックできるように
なっている。
ここではじめて10台のパソコンに子どもたちを分担する。
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駅の他に一体どんなバリアがあるか
そしてどんなバリアフリーがあるか
を確かめましょう
1つのパソコンを4人で見ることに
なる。
放っておくと、いつまでも特定の子
がマウスを握り、おとなしい子はずっ
と見ているだけの状態になっているこ
とがある。
そこで次の指示を出した。
一つの項目を見たら、次の人と交代しましょう
このページには「駅」「改札口」「券売機」「歩道 」「バス」
「建物」「点字ブロック」
「公
衆電話」の8つの項目がある。
全部の項目を見終わったグループからパソコンルームの真ん中に集合させる。
全グループが集合したら、授業のはじまりと同じ発問をする。
町にあるバリアフリーの施設や設備でどんなものを見たことがありますか?
「○○に点字ブロックがありました」
「段差のないバスに乗ったことがあります」
「○○にある公衆電話は、低い位置にありました」
子どもたちの発表は、授業のはじまりの時とはずいぶん違うものになった。
今まで気づかなかったバリアフリーに気づくようになった。
そして「○○にある」というような具体的な発表になった。
子どもたちの中で整理されていなかった情報が、パソコンという道具を用いたことで
すっきりと整理され、再構築された結果である。
以上が「バリアフリー」の学習の中でのパソコンの使用についてである。
今後、各教室にパソコンとプロジェクターが設置されるようになる。
そうなると、パソコンとプロジェクターをどのように使うかが大きな課題となる。
黒板とチョークは、授業をわかりやすくするためのひとつの道具として使われている。
パソコンもそれと同じく、授業をわかりやすくするためのひとつの道具として使われ
なくてはならない。
パソコンをどのように授業に活用していくか、これからも更に研修を積み重ねていき
たい。
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