講義ノート 物理化学 III 内容 1. 電気化学 熱力学の応用 化学エネルギー

講義ノート
物理化学 III
内容
1.
電気化学
熱力学の応用
化学エネルギーと電気エネルギーの変換
ネルンストの式、電池
2.
反応速度論
熱平衡にない系の取り扱い
素反応と反応速度
定常状態近似
活性化エネルギー
(微分方程式)
3.
光化学
(摂動論、光の量子論)
反応速度論の応用としての光化学
蛍光、燐光、量子効率、緩和時間
講義ノートは、以下の研究室ホームページで公開しています。
http://www.sci.u-hyogo.ac.jp/material/funct_mat1/index-j.html
1.
熱力学に関する復習 I
○熱力学関数の相互関係
(一成分系)
(アトキンス
第1回
3.5、3.7)
温度(T)、圧力(P)、体積(V)、エントロピー(S)
内部エネルギー
(U)
dU  TdS  PdV
(1.1)
エンタルピー
(H=U+PV)
dH  TdS  VdP
(1.2)
(A=U-TS)
dA   SdT  PdV
(1.3)
(G=A+PV=H-TS)
dG   SdT  VdP
(1.4)
Helmholtz 自由エネルギー
Gibbs 自由エネルギー
dS  dq T ; dS  dq rev T
dq rev は微小可逆過程で吸収される熱量
理想気体の場合の内部エネルギーは温度のみの関数
[統計力学を用いると、単原子の場合 C v  3R / 2
問1
G / T P   S ; (G / T ) / T P   H
上の結果を用いて G / T P   S
U  CvT
(3:は並進の自由度)]
T 2  (G / T ) / T P   H T 2 を示せ。
を示せ。
は何を示しているか?
問2
関 数 F x, y  に 関 し て 、 Fx  F / x  y 、 F y  F / y  x と す る と 、 一 般 に
Fy / x y   2 F / xy   Fx / y x が成り立つ。この式を適用して、Maxwell の関係
式を求めよ。
問3
理想気体に関して、等温可逆膨張 [(T, P1, V1)→(T, P2, V2)]の時の内部エネ
ルギー変化(U)、エンタルピー変化(H)、Gibbs 自由エネルギー変化(G)、Helmholtz
自由エネルギー変化(A)、エントロピー変化(S)を求めよ。
解答
問1
まず第一に G / T P は、「P を一定に保った状態(すなわち dP=0)で、dG と dT の比を
求めるといくらになるか?」ということを聞いている。(1.4)を用いれば G / T P   S である
ことは、明らかである。
次に、高校数学で用いられる基本公式を確実に使えるようにしよう。
d ( XY ) / dt   Y dX
X
d ( X / t ) / dt   1 dX

dt
t dt
dY
1
と d (1 / t ) / dt   
を組み合わせると、
dt
t2
X
t2
同じような式は、偏微分に関しても成り立つので
(G / T ) / T P

1  dG 
G
S G
H

  2   2  2
T  dT  P T
T T
T
G と書くとき、これはある状態にある自由エネルギーと別の状態にある自由エネルギーの差とい
う意味がある。dG との違いは、G が大きな違い(2つの状態間の自由エネルギー差)を考えて
いるのに対して、dG では微小の状態変化を考えている点にある。つまり G / T P   S を示
せという問題は、圧力の等しい 2 つの状態に関する、自由エネルギー、エントロピーの差に関し
て 聞 い て い る 。 G / T P   S だ か ら 状 態 1 お よ び 2 に 関 し て 、 G1 / T P   S1 、
G2 / T P
  S 2 が成り立っている。G  G1  G2 、S  S1  S 2 だから G / T P   S
が成り立っている。同様にして  ( G / T ) / T P   H T
問2
2
も成り立つ。
(1.1)式に関して言えば、U が F、S が x、V が y、T が Fx 、-P が F y に相当していることに
注意する。このことを考慮するとマックスウェルの関係式
V / S P  T / P S
;
 P / S V  T / V S
 S / P T  V / T P が得られる。
dG  VdP ;
問3
P2
P2
P1
P1

G  VdP 

V2
V1
V1

dA   PdV (等温なので)
nRT
dP  nRT lnP2 / P1 
P
V2
A   PdV 
;

等温なので U  0
nRT
dV   nRT lnV2 / V1   nRT lnP2 / P1 
V
PV=nRT(一定)なので、 H  0
G  H  TS  TS
なので、 S   nR ln( P2 / P1 )
S / V T  P / T V
;
2.
熱力学に関する復習 II
5 章)
第2回
このときは、G を使うのが有利
○開放系の基本方程式
G  G (T , P, n1 , n2 , , , n N )
dG   SdT  VdP 
(多成分系:アトキンス
ni :
 G 
  ni 
i
i 成分のモル数
(2.1)
dni ( j  i )
(2.2)
T , P ,n j
 G 

i  
化学ポテンシャル(1モルあたりの自由エネルギー)
 ni T , P ,n
(2.3)
j
○Gibbs 自由エネルギーに関する加法則
G 
 ni  i
(2.4)
i
この式は温度、圧力一定のもとで上記微分式を積分して得られる。
○化学ポテンシャルの意義 (アトキンス 5.1)
化学ポテンシャルは、
 G 
 U 
 H 
 A 




i  
 
 
 

n

n

n

n
 i T , P ,n  i  S ,V ,n  i  S , P ,n  i V ,T ,n
j
j
j
(2.5) と表すことができる。
j
この性質ゆえ、化学ポテンシャルは化学反応で重要な意味を持つ
問4
(2.5) 式を示せ。
○標準状態と化学ポテンシャル
成分 i の標準状態の圧力 Pi  、分圧 Pi 、標準状態の化学ポテンシャル  i  、分圧 Pi の時
の化学ポテンシャル  i とする。第1回の問 3 の結果を使うと
 i   i   RT lnPi Pi 
(2.6)
○化学平衡
(アトキンス 7.1)
温度一定、全圧 P 一定の時の化学反応
 i Ai  0
(2.7)
i
を考える。ある時間経過後の物質量 ni は以下のように書ける。
ni  ni 0   i 
 はどのくらい反応が進んだかを示す量である。
d に対する自由エネルギー変化は、
dG 


 i dni    i i d

i
i

平衡状態では dG=0 となるので、
 i i  0
(2.8)
i
(2.6)式を代入すると
 (i   RT lnPi
Pi ) i  0
(2.9)
i
これより
 i ln Pi  const
i
 Pi
 const
i
(2.10)
i
このようにして平衡定数が導出される。
問5 (2.7)式の各変数は何を意味しているか。
2H2+O2=2H2O の場合の例をとり、i、Ai を具体的に書いてみよ。
問6
P
i
i
 KP
で、平衡定数である。標準状態として Pi   P  1 atm をとり、(2.9)
i
に適用することにより、 G   RT ln K P が導かれることを示せ。ただし、 G は化学
反応に伴う自由エネルギー変化である。 K P は無次元になっていることを示せ。
○理想溶液の化学ポテンシャル
理想溶液では化学ポテンシャルは
i  i   RT lnxi 
ただし xi は i 成分のモル分率
溶媒の場合、標準状態として純液体を考える。すると
i   . ただし、 i * 純液体の化学ポテンシャルである

*
○活量と活量係数
理想液体からのずれを考慮するときに活量を使う。
i  i *  RT lnai 
ai :
(2.11)
活量
活量とモル分率の比を活量係数と呼ぶ。
すなわち ai   i xi
標準状態として、溶液と同温の純液体を選ぶと xi  1 の時に  i  1 となる。
解答
問 4 U=-PV+TS+G
dU   PdV  VdP  SdT  TdS  SdT  VdP   i dni
i
  PdV  TdS   i dni
i
 U 

したがって i  

n
 i  S ,V ,n j
 H 
 A 


i  
、 i  
 ni  S , P ,n
 ni V ,T ,n
同様にして
j
j
問 5 数学的には、右辺を移項するか左辺を移項するかの自由度があるが、実際は
2H2O-2H2-O2-=0 となるように書く。つまり、左辺がマイナスになるように書く。こ
れは平衡定数で左辺の成分が分母にくることと対応する。反応として右側に進んだも
のを正としていることに対応する。
1:-2 A1:H2 2:-1 A2:O2 3:2 A3:H2O
したがって
問6


 
(2.9)より   i i   RT  ln Pi Pi  i  RT ln  Pi Pi  i 
i
i
 i

ここで G   i i  は標準状態での自由エネルギー変化を表す
また Pi   P  1 atm とすれば, また  Pi Pi  i  K P は無次元の平衡定数である。
i
したがって G   RT ln K P

i
標準状態として1気圧のときの化学ポテンシャルをとるゆえに、KP が気圧であらわ
した圧力平衡定数となる。
3.
電気化学平衡
(アトキンス
○クーロンの法則
7.5)

Q1Q2  r 
 
4 0 r r 2  r 


1
Q r 
E
 
4 0 r r 2  r 

F
電荷に働く力
電場

電位
1
1
Q
4 0 r r
電荷 Q に対する電気ポテンシャル
○
電気的中性条件
第3回
Q
(3.1)
(電解液の各相に関して以下の中性条件が成立する)
 ni z i  0
(3.2)
i
ni は電荷 z i e のイオン数
○
電気化学ポテンシャル
電解質溶液では、自由エネルギーとして電気ポテンシャルを加える必要がある。これ
を考慮すると(2.2)は以下のようになる。
dG   SdT  VdP 
 i dni  F  zidni
i
  SdT  VdP 

i
~ dn
i
(3.3)
i
i
~i   i  Fz i を電気化学ポテンシャルと呼ぶ。実際には、  i ではなく ~i のみが測定
で得られることになる。化学平衡を表す式は(2.8)の代わりに
~   0

i i
(3.4)
i
となる。これが電気化学反応に対する、基本方程式となる。
○化学電池の考え方
PtL|H2(g)|HCl(m)|AgCl(cr)|Ag(cr)|PtR の構造の化学電池を考える。HCl(m)は重量 mol 濃
度 m の HCl 溶液という意味である。cr は固体状態、g は気体状態を意味する。
電池で起こる化学反応は
H2(g)+2AgCl(cr)=2HCl(m)+2Ag(cr)
これを電極での電子移動を含めた、2 つの反応式に分解する。
H2(g)=2H+(m)+2e-(PtL)
2AgCl(cr)+2e-(PtR)=2Ag(cr)+2Cl-(m)
H2(g)+2AgCl(cr)+2e-(PtR)=2H+(m)+2e-(PtL)+2Ag(cr)+2Cl-(m)
平衡状態に関しては上記の反応式に対応して、
~ (H 2 (g))  2~ (AgCl(cr ))  2~ (e  (Pt R ))  2~ (H  (m))  2~ (e  (Pt L ))  2~ (Ag(cr ))  2~ (Cl - (m))  0
2 ~ (e  (Pt R ))  2 ~ (e  (Pt L ))  2 ~ (Ag(cr ))  2 ~ (Cl - (m))  2 ~ (H  (m))  ~ (H 2 (g ))  2 ~ (AgCl(cr ))
 2 FE  2  (Ag(cr ))  2  (Cl - (m))  2  (H  (m))   (H 2 (g ))  2  (AgCl(cr ))
ここで E は起電力である。また左辺での ~ がとなっているのは、同じ場所にあり、
電位差がないと考えているからである。(つまり電位差は電極で発生していると考え
ている。電流が流れると、溶液中での電位差がないという考えは正しくなくなる。こ
のことが、電池の「内部抵抗」の起源である。)
上の考え方を拡張してゆくと、Nernst(ネルンスト)の式
 nFE   i (  i   RT ln(a i ))
i
  i (  i )  RT ln  (a i ) i
i
(3.5)
i
が得られる。
 nFE    i ( i ) とすれば、
(3.6)
 nFE  nFE   RT ln  (ai ) i
(3.7)
i
i
この式は電池の起電力と化学反応とを結び付ける電気化学の基本方程式となってい
る。すべての活量が 1 のときの電位 E  を標準電極電位という。
この式は、一見するとわかりにくいが、要は、化学反応における自由エネルギーの差
が電子のエネルギーに対応していることを示す式である。化学平衡の話と類似してい
るが、化学平衡の場合は成分比が大きく偏って、自由エネルギーの和がゼロになるの
に対して、成分比が平衡からずれているときのエネルギー差が、電気エネルギーとし
て観測されている。
○液間電位および化学電池の表記法
(アトキンス 7.6)
上で記したネルンストの式を用いるためには、液間
電位がないようにする必要がある。塩橋を用いるこ
とにより、液間電位を事実上ゼロにすることができ
る。
Zn(s)|ZnSO4(aq)||CuSO4(aq)||Cu(s)
における|| は
液間電位が消去されていることを示す。
(アトキンス 7.5)
○半反応
電池は、2つの半反応の組み合わせによってできている。与えられた電池の式からど
のような半反応が形成されているかを推測するのが、Nernst の式を使うための基本と
なっている。
たとえば Ag|AgBr|Br-||Ag+|Ag の化学反応を以下のように書く。この電池の場合の半
反応は以下のとおりである。
右反応 Ag++e- = Ag
(右反応は左に電子を書く。これは右極が陽極であることを示している。)
左反応 Br-+Ag = AgBr+e(左反応は右に電子を書く。これは左極が陰極であることを示している。)
全反応 Ag++Br- = AgBr
電圧が正のときは、上記の反応が自発的に起こることを示している。すなわち G<0
電圧が負のときは、上記の反応が自発的に起こらないこと、すなわち G>0 を示し
ている。化学エネルギー -G と、電気エネルギー nFE がつりあっていることに注意。
(左反応を AgBr+e-=Br-+Ag と書き、差をとるという考え方もあるが上のように書い
たほうがわかりやすい )
問題
上の書き方に習って、以下の電池の電極反応を書け
(a) Ag|AgCl|HCl(1M)|H2(1bar)|Pt
(b) Pt,H2(g,P)|HCl(aq,0.1m)|Hg2Cl2(s)|Hg(l)
(c) Na|Na+||Cl-|Cl2(g),Pt
(d) Zn|Zn2+||Fe3+,Fe2+|Pt
(e)
Pt,H2(1atm)|H+(a(H+))||H+(a=1)|H2(1atm),Pt
解答
(a)
右反応 H++e- = (1/2)H2
左反応 Cl-+Ag = AgCl+e全反応 Ag+Cl- +H+= AgCl+(1/2)H2
(b)
右反応 (1/2)Hg2Cl2(s)+e- = Cl-(0.1m)+Hg(l)
左反応 (1/2)H2(g,P) = H++e全反応 (1/2)H2(g,P)+(1/2)Hg2Cl2(s)= H+(0.1m)+Cl-(0.1m)+Hg(l)
(c)
右反応 (1/2)Cl2(g)+e- = Cl左反応 Na = Na++e全反応 Na+(1/2)Cl2(g)= Na++Cl-
(d)
右反応 Fe3++e- = Fe2+
左反応 Zn = (1/2)Zn2++e全反応 Fe3++Zn = (1/2)Zn2++Fe2+
(e)
右反応 H+(a=1)+e-=(1/2)H2(1atm)
左反応 (1/2)H2(1atm)=H+(a(H+))+e全反応 H+(a=1)= H+(a(H+))
4.
Nernst(ネルンスト)の式の応用
アトキンス
7.5
第4回
○ 起電力測定の意義
Nernst の式より、  nFE   G 0
(4.1)
すなわち、起電力測定から標準状態の自由エネルギー変化を求めることができる。ただし、E  は、
活量係数が1のときの起電力であり、これを実験的に直接求めることはできない。
○
溶解度積、イオン積
難溶性の塩 A+B-(s)に対する溶解平衡-、A+B-(S)=+AZ+ + -BZ-、を考える。固相 A+B-(S)の濃
度は一定であるから、平衡定数はこの部分を無視して
KSP=[AZ+]+[BZ-]-
(4.2)
これを溶解度積という。同じように、水溶液中の水の電離の場合は、水の濃度は一定としてよい
ため
Kw=[H+][OH-]
(4.3)
が一定である。これを水のイオン積と呼ぶ。
○ネルンストの式の練習 1


298 K(25℃)における臭化化銀電池、 Ag Ag ( aAg  ) Br ( aBr - ), AgBr Ag
を考え、(1)~(3)の手順に
従って、この温度における溶解度積を求めよ。ただし、 aAg  , aBr - は Ag+、Br- それぞれの活量で
ある。必要に応じて、下記 i)~iii)の式、データを用いよ。
i)
ファラデー定数は F=96494 C/mol である。
ii)
T = 298 K のとき、(RT/F)ln(x)  0.0591log(x)である。(ln は自然対数、log は常用対数)
iii) 関連する反応の 298 K における標準電極電位(活量が 1 のときの電位、E°で表される)は以下
のとおり
(1)
Ag+ + e- = Ag
E° = +0.7989 V
AgBr + e- = Ag + Br-
E° = +0.0711 V
臭化銀電池の右極および左極で起こっている反応を書き、電池全体で起こっている化学反応
を示せ。
(2)
298 K における臭化銀電池の標準起電力( aAg  = aBr - = 1 の時の起電力)を答えよ。
(3)
任意の活量のときの 298 K における臭化銀電池の起電力を答えよ。
(4)
(3)を利用すると、298 K における飽和濃度におけるイオン積 Ksp=[Ag+][Br-]を求めることがで
きる。log(Ksp)を答えよ。この計算に当たっては、[Ag+]、[Br-]はいずれも小さいため、活量係数
は 1 と近似でき、活量は重量モル濃度と等しいとしてよい。 (0.7278/0.0591=12.31; 100.31  2)
○ネルンストの式の練習 2(類似問題)
Ag Ag  (c  0.100) I  (c  0.0100), AgI Ag
この電池の起電力を 298 K において測定したところ、E=0.753V であった。
(ただし、左側が正極、
右側が負極)これより AgI の溶解度積を求めよ
○ネルンストの式の練習 3
下のデータを用いて 298K での平衡定数
K
a Fe(2  ) ( a Zn(2  ) )1/ 2
a Fe(3 )
を求めよ。
(1) Fe3+ + e- = Fe2+
2+
-
(2) Zn + 2e = Zn
+0.771V
-0.7626V
○ネルンストの式の練習 4
Weston 電池は一定の仕様で作られている電池の一例で、一定の起電力を持っており、寿命が長い。
電池の一つの電極はカドミウムで飽和した水銀アマルガムだめからなっており、その上には水和
8
3
物 CdSO 4  H 2 O
として存在するいくらかの固体硫酸カドミウムが浮かんでいる。もう一つの
電極は水銀だめからなり、その上には水銀と固体の硫酸水銀 Hg2SO4 の混合物が浮かんでいる。
この電池は以下のようにあらわされる。
8
Cd(Hg) CdSO 4  H 2 O(s), Hg 2SO 4 (s) Hg
3
(1)
この電池の電極反応と電池反応を書け
Weston 電池の起電力は次の経験式によって温度 t℃の関数としてあらわされる。
E (V)  1.0186  (4.06  10 5 )(t  20)  (9.5  10 7 )(t  20) 2
(2)
20℃における電池反応に関する、Gibbs 自由エネルギー変化、エントロピー変化、エンタル
ピー変化を求めよ。
解答
練習 1
(1)
右反応
AgBr+e- = Br- + Ag
E° = +0.0711 V
左反応
Ag = Ag++e-
E° = -0.7989 V
----------------------------------------全反応
(2)
(3)
AgBr = Br- + Ag+
標準起電力は E = -0.7989+0.0711=-0.7278(V)
全反応に対して、Nernst の式を作る。
E  E 
RT
ln  (ai ) i
nF
i
E  E 
RT
ln aBr  aAg 
F


298K では

E  E   0.0591 log aBr  aAg 
(4)

飽和溶液は熱平衡状態だから、起電力はゼロである。したがって

0  0.7278  0.0591 log aBr  aAg 


log aBr  aAg   12.31
活量係数は 1 だから

aBr  aAg   10 12.31  5 10 13
K sp  5 1013 mol2 kg 2
練習 2
通常は左を負極、右を正極にとる。したがって、通常の書き方に従えば、起電力は-0.753V であ
る。
-0.753=E=E - 0.0591 log(0.10.01)
E = -0.753 - 0.0591 3
一方で E =E - 0.0591 log[Ag+][I-]
において、飽和濃度、[Ag+]s、[I-]s に対して、E=0 になるから
E = 0.0591 log[Ag+]s[I-]s= 0.0591 logKsp
したがって
logKsp = -0.753/0.0591 - 3=-15.74
KSP=1.8*10-16
練習 3
(1)
Fe3+ + e- = Fe2+
+0.0771V
(2) (1/2)Zn=(1/2)Zn2+ + e3+
2+
Fe +(1/2)Zn=Fe +(1/2)Zn
+0.7626V
2+
全反応

a Fe(2 ) (a Zn(2 ) )1/ 2 
E  0.7626  0.771  0.0591log

a Fe(3 )



a Fe(2 ) (a Zn(2 ) )1/ 2  0.7626  0.771
 25.95
平衡では E=0 だから、 log

a Fe(3 )
0.0591


log K 
K
a Fe(2 ) (a Zn(2 ) )1/ 2
 0.7626  0.771
 log 
Fe(3 )
  25.95
a
0.0591

a Fe(2 ) (a Zn(2 ) )1/ 2
 8.9  10 25
Fe(3 )
a
練習 4
(1) 右反応
(2)
Hg2SO4+2e- = SO42- + 2Hg
左反応
Cd+SO42-+(8/3)H2O=CdSO4・(8/3)H2O+2e-
全反応
Hg2SO4+Cd+(8/3)H2O= 2Hg+CdSO4・(8/3)H2O
 nFE   G 0
-1.0186×2×96485=G
G=-196.6 kJ/mol
 G 
 E 
S  
  nF 


T

P
 T  P
5
1
したがって S  2  96485(C)  4.06  10 VK
 7.3JK 1
H=G+TS=-196.6-7.3293/1000=198.7kJ
5.
Nernst(ネルンスト)の式の応用 II ,デバイヒュッケルの式
練習1
第5回
(アトキンス 自習問題 7.11)
298.15K における塩化水銀(I)の溶解度定数(これは反応 Hg2Cl2=Hg22++2Cl-
の平衡定数である)
[ヒント:水銀(I)イオンは Hg22+である。
]
と溶解度を計算せよ。
Hg22++2e- =2Hg
0.79 V
Hg2Cl2 + 2e- = 2Hg + 2Cl
-
0.27 V
解答
0=-0.52-(0.0591/2)log[Hg22+][Cl-]2 K=[Hg22+][Cl-]2 = 2.510-18
溶解度を a とすると
K=a(2a)2 =4a3 これから a=8.710-7 mol kg-1
溶解度の単位が mol l--1 となるのは、溶液に関する標準状態、平衡状態を mol kg-1 で定義している
からである。
○ 起電力測定の熱力学的意味 (再掲)
Nernst の式より、  nFE   G 0
(5.1)
すなわち、起電力測定から標準状態の自由エネルギー変化を求めることができる。ただし、E  は、
活量係数が1のときの起電力であり、これを実験的に直接求めることはできない。
○ 化学電池の熱力学
E  を温度を変えて測定すれば、自由エネルギー変化の温度変化を決めることができる。このこと
からいろいろな熱力学量が、化学電池の起電力測定を通して、求めることができる。
たとえば、
 G 
S  

 T  P
(5.2)
 E  
S    nF 

 T  P
(5.3)
H   G  TS 
(5.4)
だから
化学電池は、化学反応に伴う自由エネルギー変化を、電気エネルギーとして、直接観測している
といえる。
○電解質溶液の電気伝導度、抵抗率
R   (l / A) ;   1 / 
(5.5)
R: 電気抵抗 : 抵抗率; l: 長さ; A: セルの面積; : 電気伝導度
  c
:モル伝導度
(5.6)
c: モル濃度
すなわち伝導度はモル濃度に比例する。
無限希釈時には、正負のイオンは独立に電荷を運び、モル伝導率に対して独立な寄与をする。た
とえば A+B-=+AZ+ + -BZ-に対して、正負のイオンに対して独立のモルイオン伝導度、   、  
を定義すれば、無限希釈時のモル伝導度は
            
(5.7)
で表される。無限希釈で、イオンの寄与が独立という考えを用いれば、弱電解質の極限モル伝導
度を推定することができる。例えば酢酸の時
 HAc    NaAc    HCl    NaCl 
   /  (無限希釈では 100%の解離が起こることに注意)
電離度は
○
(5.8)
平均活量係数(アトキンス 5.9)
 i   i   RT lnai 
ai   i bi
ai :活量、bi:モル濃度
i:活量係数
 i ideal   i   RT lnbi  とすると  i   i ideal  RT ln  i 
MX(M+と X-)の実在溶液に対して
G      
より        
ideal
1/ 2

G  
ideal
 
ideal
 RT ln    RT ln     
ideal
 
ideal
 RT ln    
を定義すると
 
 RT ln     
ideal
 RT ln  

第1項と第2項を改めて、正負のイオンに対する化学ポテンシャルと定義する(これは本当の化
学ポテンシャルとは異なっている)と、いずれの化学ポテンシャルも等しく RT ln   だけずれる
ことになる。
同じような発想で MpXq の化学ポテンシャルを考えると、  
練習2

p

 q

1/ pq 
ととるの
が都合よいことを示せ
(解答はアトキンスをみよ)
○デバイヒュッケルの極限法則
(アトキンス 5.9)
デバイヒュッケルの理論によれば、非常に低い濃度では平均活量は


で計算できる。ただし、A=0.509(25℃)、I は、 I  1  z i 2 bi / b  であら
2 i
log     z  z  AI 1 / 2
わされるイオン強度である。( b   1 mol/kg )
練習3
MpXq のモル濃度を b としたとき、以下の塩でのイオン強度を例にならってあらわせ。
I
例)NaCl
1
(1  b  1  b) / b   b / b 
2
I  k (b / b  )
k
X-
X2-
X3-
X4-
M+
1
3
6
10
M2+
3
4
15
12
3+
6
15
9
42
10
12
42
16
M
M4+
○標準電位の求め方
(アトキンス 7.8)
Pt|H2(g)|HCl(aq)|AgCl(s) |Ag(s)
この電池の式は、(1/2)H2+AgCl=HCl+Ag
ネルンストの式は
aH2=1 とおく。
E  E 
E  E 
RT a H  aCl
ln
1/ 2
F
aH 2
(これは何を意味しているか?)
RT
ln a H  aCl
F
HCl の濃度を b とすると aH     b / b 、 aCl     b / b


2
RT  2  b  
ln     
したがって E  E  
F   b   
2 RT  b 
2 RT
ln    E  
ln  
F
F
b 

ここで b を無視して、デバイヒュッケルの式を用いると
2 RT
E
ln b  E   Cb1/ 2
F
E
プロットして切片を取ることにより標準起電力 E°を得る。
6.
反応速度論 I (アトキンス 22 章)
第6回
反応速度論
反応速度論では、非平衡の現象を直接扱う。利用範囲は非常に広い。
○化学反応論の基礎
反応速度論の基本的な考え方は、化学反応を2つの方向に分けることにある。例えば
ABYZ
(6.1)
という平衡反応があった時は、
ABYZ
YZAB
(6.2)
という化学反応の速度と
(6.3)
という逆反応の速度が釣り合っていると考える。
反応速度は、反応式の左側にある成分で決まると考える。例えば(6.2)では、反応速度は[A]と[B]
で決まり、(6.3)では[Y]と[Z]で決まる。
○反応次数
A  B  Y  Z という化学反応を考える。このときの反応速度は
d [A]
  k [A ] [B] 
dt
となるが、を反応次数と呼ぶ。がの時は次反応、の時は次反応、の時は次反応と呼
ぶ。は必ずしも整数ではなく、実験的に決められる量である。また、化学量論係数(化学反
応式に出てくる係数)と必ずしも関連を持たない。k を速度定数と呼ぶ。反応次数は、一般的に、
化学反応機構と密接な関連がある。
○Arrhenius の式
Arrhenius は、反応速度論における速度定数が
k  A exp( E a / RT )
(6.4)
で表されることを見出した。この式を Arrhenius の式と呼ぶ。また Ea を活性化エネルギーと呼ぶ。
○素反応
素反応は、もっとも単純な反応である。反応式における化学量論係数は反応次数と一般には関係
を持たないことを上で述べたが、素反応の場合は、素反応に含まれる分子数を通して関連を持つ。
たとえば、高濃度の不活性気体 M のもとでのオゾンの分解は、以下の 1、2の素反応で起こると
されている。
k
1.
1

O3  M
O2  O  M

k
(6.5)
-1
2.
k
2
O  O 3 
2O 2
総反応
2O 3  3O 2
(6.6)
(6.7)
このときの反応速度式は、
d[O]
 k1[O 3 ][M ]  k -1[O 2 ][O][M ]  k 2 [O][O 3 ]
dt

d[O 3 ]
 k1[O 3 ][M ]  k -1[O 2 ][O][M ]  k 2 [O][O 3 ]
dt
(6.8)
(6.9)
と書くことができる。素反応においては、速度式が一意的に書くことができるのに注意する。化
学反応の研究においては、素反応を探し当てるのが重要である。
○定常状態近似
反応速度を計算するのは、微分方程式を解く必要がある。例えば、単純な一次反応
k
1
A 
Y
(6.10)
の場合、

d[A]
 k1[ A] だから [ A]  C exp(k1t )
dt
(6.11)
と即座に求めることができる。しかし一般には多段の化学方程式においては、複雑な微分方程式
を解く必要があり、数学的に多大な労を要する。このような場合に、化学的知見に基づいて行う
近似が定常状態近似である。この近似においては、中間生成体等の濃度が、生成物濃度と異なり、
(化学反応の開始時等を除けば)大きく時間変化をしないことを利用して、反応速度を計算する。
たとえば(6.8)、(6.9)の時、(6.7)の総反応に O がないことを考慮して、[O]が一定濃度(すなわち
d[O]
 0 )と仮定する。すると(6.8)式より、
dt
0  k1[O 3 ][M ]  k -1[O 2 ][O][M ]  k 2 [O][O 3 ]
(6.12)
 [O]  k1[O3 ][M ] / k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ]
(6.13)
この式を(6.9)に代入することにより

d[O 3 ]
 k1[O 3 ][M ]  (k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ])  k1[O 3 ][M ] / k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ]
dt
k [O ][M ](k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ]  k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ])
 1 3
(6.14)
k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ]
2k1k 2 [O 3 ] 2 [M ]

k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ]
この式は実験式と一致することがわかっている。
総反応の式(6.7)を素反応としてみなすと、
d [O 3 ]
 2k[O 3 ]2  2k '[O 2 ]3 という式ができそう
dt
だが、6.14 はこれとはまったく異なっている。これは総反応の式は素反応を表していないからで
ある。実験的には、O2, O3, M
の濃度しかわからないことが多いので、素反応は実験式から推定
されるものとなる。
○律速段階(rate determing step)
ある素反応の速度定数が小さいと、その反応が、全反応の速度を決める。このように、全体の反
応 を 決 定 し て し ま う よ う な 、 素 反 応 を 律 速 段 階 と 呼 ぶ 。 た と え ば 、 (6.14) 式 に お い て 、
k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ]
とすると
d[O 3 ]
 2k1[O 3 ][M ] となる。この場合は第1段(遅い反応)が律速段階になる。
dt
また k -1[O 2 ][M ]  k 2 [O 3 ] (第2段が律速段階)とすると


d[O 3 ] 2k1k 2 [O 3 ] 2 2 Kk 2 [O 3 ] 2


dt
k -1[O 2 ]
[O 2 ]
となる。ただし K 
k1
は第1段の平衡定数である。
k -1
問 1)正反応と逆反応の関係式
素反応では、化学反応式と反応速度式の間に厳密な関係式がある。これを用いて、平衡定数を以
下の速度定数から表せ。活性化エネルギーと Gibbs エネルギーの変化はどのような関係にあるか
k
1

AB
AB

k
-1
答
AB
[A][B]

k1
k 1
問 2)
平行反応
k
1
A 
B;
k
'2
A 
C
という2つの素反応が並行してあるときの、[A]、
[B]、[C]を
初期条件(t=0 において、[A]=[A]0, [B] = [C] = 0)の条件のもとで求めよ。
解答
問1)

d [A]
 k1[A][B]  k 1[AB]  0
dt
k1
より、 k

1
[AB]
[A][B]
したがって平衡定数は、
K
k
[AB]
 1
[A][B] k 1
活性化エネルギーを考える。
k1  A exp( E a / RT ) ;
とすると、
K
k 1  B exp( Eb / RT )
A exp( E a / RT ) A
k
[AB]
 1 
 exp{( E a  Eb ) / RT )
[A][B] k 1 B exp( Eb / RT ) B
この式は化学平衡に関する式
G   RT ln K
と対応している。(反応速度論の速度定数は、化学平衡の理論と矛盾してはいけない。
)
問 2)

d [A]
 k1[A ]  k 2 [A ]
dt
したがって
d [B]
 k1[A ] より
dt
k [A]
[B]  1 0 1  exp (k1  k 2 )t
k1  k 2
同様にして
[C] 
k 2 [ A ]0
1  exp (k1  k 2 )t
k1  k 2
[A]  [A]0 exp (k1  k 2 )t
7.
反応速度論 II (アトキンス 22 章) (続)
○
昨年度の経験に基づけばと、速度論の基本となる速度式が書けない人が意外と多いようであ
第7回
る。矢印一本ごとに考えるとわかりやすい。例えば
k
1

AB
AB

k
-1
と書かれているときに、左に行く上の矢印は
[AB]が k1[A][B]の速度で増えることと、[A]および
[B]が k1[A][B]の速度で減ることを意味している。また右に行く下の矢印は
[AB]が k-1[AB]の
速度で減ることと、[A]および[B]が k-1[AB]の速度で増えることを意味している。これは確率論
を考えれば理解できる。
現実には、この両方が起こるわけであるから、2 つの矢印が示すことを足し合わせる必要がある。
すなわち k1[A][B] - k-1[AB]が[AB]の増加速度、k1[A][B] - k-1[AB]が[A]および[B]の減少速度で
ある。矢印がいくつもあるときは、上の例に習ってそれぞれを足し合わせればよい。
○
微分方程式に関して
微分方程式の解き方が分からないという人がいた。高校の時に習った正式な解き方とは別に、
以下のことを覚えておくとよいと思う。
dx
0
dt
→
xA
d 2x
dt 2
0
→
dx
A
dt
→
x  At  B
<基本1> すなわち1階の微分方程式(の一般解)には1つの不定数が、2 階の微分方程式(の
一般解)には2つの不定数が必ず現れる。逆に1階の微分方程式(の一般解)に2つ以上の不定
数が現れることはない。
<基本2>
dx
 x
dt
この微分方程式の一般解は x  A exp(t ) である。
exp での微分を行うと exp が出てくることは誰でも知っているであろう。また係数が不定である
ことも、微分計算をすればすぐわかるであろう。基本1で言ったように、1 階の微分方程式では、
不定数は一つしか出てこないから、この式が一般解であることは、明らかである。
<基本3>
dx
  ( x  a)
dt
この微分方程式の一般解は x  a  A exp(t ) である。
x-a を新しい変数と考えればよい。
<基本4>
ついでにもう一つ、重要な数学的基礎を一つ。
f ( x  x)  f ( x)  f ' ( x)x
( x  1 の時)
x を dx とすれば、これは微分そのものの
式である。
f ' ' ( x)
f ( n) ( x)
2
より正確には f ( x  x)  f ( x)  f ' ( x) x 
x   .... 
x n ....
2!
n!
(テイラー展開)
この式を用いると、 x  1 の時
e x  1  x ;
sin(x)  x ;
cos(x)  1 
x 2
2
など
展開式を作るときは、x に関する最低次の項が出てくればよい。
○演習問題の続き
問 1(化学緩和)
外部変数を急に変化させて、それによる平衡濃度の変化を追跡し、反応速度を求める方法を緩和
法という。t=0 の時、温度 T0 で平衡
k
1

A
B

k
(素反応)
-1
にある系(その濃度を c A  、 c B  とする)を急に温度 T にすると、充分時間がたった時、新しい
平衡濃度 c A  、 c B  になる。この反応に対して、 c A 、 c B の時間変化を与える式時間 t の関数
として求めよ。
ヒント
(1)
以下の考え方にしたがって求めよ。
c  c A   c A と定義した時、 c B   c B を c で表せ。
dc A
dc
、 B に関する式を c A 、 c B を用いて書け。
dt
dt
(3) (1)を(2)に適用して、 c に関する微分方程式を導け。
(4) (3)を解き、 c A 、 c B の時間変化を求めよ。
(2)
速度論を用いて、
最終的な答えは、 c A  c A
るはず。
問 2(連鎖反応)

 (c A   c A ) exp(t (k1  k 1 )) 、類似の式が c B に関しても得られ
臭素と水素が反応して、臭化水素を生成する反応は、以下の素反応による連鎖反応として知られ
ている。
k
1)
'1
Br2 
2Br
2)
'2
Br  H 2 
HBr  H
3)
'3
H  Br2 
HBr  Br
4)
'4
H  HBr 
H 2  Br
5)
'5
2Br 
Br2
k
k
k
k
Br および H の濃度が極めて小さく、これらに関して、定常状態近似が使えると仮定して、HBr
の生成速度を、[Br2]、[H2]、[HBr]を用いた式として示せ。
ヒント
(1)
定常状態近似を用いて、 [ Br]  ( k1 k 5 )[Br2 ]
1/ 2
を示せ。
k 2 (k1 k 5 )1 / 2 [H 2 ][Br2 ]1 / 2
(2) 定常状態近似を用いて、 [ H] 
を示せ。
k 3 [Br2 ]  k 4 [HBr]
最終的な答えは
1/ 2
1 1 / 2
[H 2 ][Br2 ]1 / 2
d [HBr] 2k1 k 2 k 3 k 4 k 5

dt
k 3 k 4 1  [HBr][Br2 ] 1
になるはず。
<解答まとめ>
問1
(1)
c A  c B  c A   c B   c A   c B  が成り立つ。
(反応式から、和は時間に依存しな
い。)このことを利用すると c B

 c B  c
dcA
dcB
 k1c A  k 1c B ;
 k1c A  k 1c B
dt
dt
dc
(3) 
 k1 c  c A   k 1 c  c B 
dt
(2)




 (k1  k 1 )c  (k 1c B   k1c A  )
第2項は、平衡状態でゼロになるから、 
dc
 (k1  k 1 )c
dt




c  c 0 exp (k1  k 1 )t  c A   c A  exp (k1  k 1 )t
(4)
したがって c A  c A

 c  c A   c A   c A  exp (k1  k 1 )t
類似の式が c B に関しても得られる。
問 2.
(1)
定常状態近似により
0
d Br 
 2k1[Br2 ]  k 2 Br H 2   k 3 H Br2   k 4 H HBr   2k 5 [Br ] 2
dt
0
d H 
 k 2 Br H 2   k 3 H Br2   k 4 H HBr 
dt
①
②
①と②の和をとると
1/ 2
0  2k1[Br2 ]  2k 5 [Br]
(2)
2
k

したがって、 [ Br ]   1 [ Br2 ]
 k5

③
②を用いると
H 
k 2 Br H 2 
これに③を代入すると
k 3 Br2   k 4 HBr
k5 1 / 2 H 2 [Br2 ]1 / 2
k3 Br2   k 4 HBr
H  k2 k1
④
d HrBr 
 k 2 Br H 2   k 3 H Br2   k 4 H HBr 
dt
(3)
これに、④、③を代入する。
k k k  H 2 [Br2 ]1/ 2
d HrBr 
1/ 2
 k 2 k1 k5  H 2 [Br2 ]1/ 2  k3 Br2   k 4 HBr  2 1 5
dt
k3 Br2   k 4 HBr 
1/ 2
H 2 [Br2 ]1/ 2 1  k3 Br2   k4 HBr 
 k3 Br2   k 4 HBr  
2k3 Br2 
1/ 2
 k 2 k1 k5  H 2 [Br2 ]1/ 2
k3 Br2   k 4 HBr 
1/ 2
2k3 k 2 k 4 k1 k5  H 2 [Br2 ]1/ 2

1
1
k3 k 4  HBr Br2 
 k 2 k1 k5 
1/ 2
8.

反応速度論 III (アトキンス 22 章) (続続)
問1

第8回
自習問題 22.5 (化学緩和の類似問題:アトキンス)
反応
k


AB
C  D が双方向に2次であるときに、濃度の緩和時間の式を導け


k'
1 /   k [A]  [B]eq  k ' [C]  [D]eq になるはず
ka
問2
逐次反応
kb
A  I  P に関して、t=0 の
ときに, [A]=[A]0, [I]=[P]=0 としたときの[P]の速度
式を作れ.
 k e  kbt  k b e  kat 
[P]  1  a
[A]0 となるはず
k

k
b
a


この問題は、I に関する定常状態近似を適用しても
とくことができる。右図は、定常状態近似による結
果と厳密解の結果を数値的に比較した場合である。
このように時間が十分経過した後は、定常状態近似
は厳密解に近い結果を与える。
定常状態近似を使うためには、中間体が何かを見極
めて、正味の濃度変化がないようにすることが重要
である。
問3
自習問題 22.8
アトキンス
2O 3 ( g )  3O 2 ( g ) におけるオゾンの分解速度式を次の機構から導け
反応
O3  O2  O
ka
O2  O  O3
ka'
O  O3  O2  O2
kb
d [O 3 ]
 2 k a k b [O 3 ] 2

dt
k a ' [O 2 ]  k b [O 3 ]
問4
となるはず。
Michaelis-Menten の式 (アトキンス
酵素-基質
23.6)
反応においては、Michaelis-Menten の式という有名な速度式が知られている。以下
の手順に従ってこの式を導け。
以下の反応機構を考える
k
'1
E  S 
X
k' 2
X  E  S
k '3
X 
EP
1)
2)
3)
(1)
X と P に対して、速度式を導け。
(2)
初期条件:[E]=[E]0、[X]=0 を考慮し、[E]を[X]と[E]0 で表せ。
(3)
X に対して、定常状態近似を用いて解け。
(4)
(2)の結果を用いて、 [X] 
(5)
k k [E] [S]
k 3 [E]0
d [P]
 1 3 0

を示せ。
dt
k1[S]  k 2  k 3 1  k 2  k 3  (k1[S])
k1[E]0 [S]
を示せ。
k1[S]  k 2  k 3
この式を Michaelis-Menten の式という。
解答
問1
[A]=[A]eq-x; [B]=[B]eq-x; [C]=[C]eq+x; [D]=[D]eq+x (eq は平衡時の濃度を表す)とする。
k[A]eq[B]eq=k'[C]eq[D]eq
dx
 k[A][B]  k '[C][D]
dt
 k [A]eq  x [B]eq  x   k ' [C]eq  x [D]eq  x 
 k[A]eq [B]eq  k '[C]eq [D]eq  (k  k ' ) x 2  (k[B]eq  k[A]eq  k '[C]eq  k '[D]eq ) x
第一項はゼロとなる。また x2 の項を無視する。すると
dx
 k ([B]eq  [A]eq )  k ' ([C]eq  [D]eq )x  k ([B]  [A]) eq  k ' ([C]  [D]) eq x
dt
したがって緩和時間は 1 /   k [ A ]  [ B]eq  k ' [C]  [ D]eq となる。
問2
d [A]
 k a [A]
dt
①
d [ I]
 k a [ A ]  k b [ I]
dt
②
d [ P]
 k b [ I]
dt
①より、 [ A ]  [ A ]0 exp( k a t ) 、これを②に代入すると
③
d [ I]
 k a [A]0 exp(k a t )  k b [I]
dt
④
d [I]  X exp(k a t )
 k b [I]  X exp(k a t )
dt
⑤
④と⑤が同じ式になるように、X を決める。⑤を式変形すると
d [ I]
 (k a  k b ) X exp(k a t )  k b [I]
dt
k [A]0
したがって k a [ A ]0  ( k a  k b ) X 、 a
X
k a  kb
⑤より [ I]  X exp( k a t )  [ I]  X exp( k a t )0 exp( k b t )
[I]0=0 だから [ I]  X exp( k a t )  X exp( k b t )
[I]  X exp( k b t )  exp( k a t ) 
k a [A]0
exp(k b t )  exp(k a t )
k a  kb
③を用いると
[P] 



k a k b [A]0
1
1
 k b exp( k b t )  k a exp( k a t )  C
k a  kb
[A]0
 k a exp(k b t )  k b exp(k a t )  [A]0 (k a  k b )
k a  kb
k a  kb
  k a e  kb t  k b e  k a t 
 [A]0 1 

k a  kb


問3
d [O 3 ]
 k a '[O 2 ][O]  k b [O 3 ][O]  k a [O 3 ]
dt
d [O 2 ]
  k a '[O 2 ][O]  2k b [O 3 ][O]  k a [O 3 ]
dt
d [O]
  k a '[O 2 ][O]  k b [O 3 ][O]  k a [O 3 ]
dt
O に関して、定常状態近似を用いると
0   k a '[O 2 ][O]  k b [O 3 ][O]  k a [O 3 ]
したがって [O] 
k a [O 3 ]
k a ' [O 2 ]  k b [O 3 ]
この式を用いると
d [O 3 ]
 k a '[O 2 ]  k b [O 3 ][O]  k a [O 3 ]
dt
k [O ]k '[O 2 ]  k b [O 3 ]  k a [O 3 ]k a '[O 2 ]  k b [O 3 ]
 a 3 a
k a ' [O 2 ]  k b [O 3 ]

 2 k a k b [O 3 ] 2
k a ' [O 2 ]  k b [O 3 ]
問4
(1)
(2)
d [X]
 k1[ E][S] - k 2 [X] - k 3 [X]
dt
初期条件
[X]=0 、[E]=[E]0
;
d [P]
 k 3 [X]
dt
[E]+[X]=一定(時間変化なし)=[E]0 を用いると
[E]=[E]0-[X]
(3) 0  k1[ E][S] - k 2 [ X] - k 3 [ X]
k [E][S]
したがって [X]  1
k 2  k3
(4)
(3)に(2)を代入すると
[X] 
k1 [E]0  [X][S]
k 2  k3
この式を解くと
[X] 
k1[E]0 [S]
k 2  k 3  k1[S]
(5)したがって
k 3 [E]0
d [P]

dt
1  k 2  k 3  k1[S]
<第9回、第10回
中間試験およびその解答
(省略)>
光化学の基礎 I(量子力学の復習)
○
時間に依存しない摂動論
H  H 0  Ve  it
H  H 0  H 1 ;
第10回
(アトキンス 9 章
補遺)
H 0 n  En n
E  E ( 0 )  E (1)  2 E ( 2 )  ... ;    ( 0)   (1)  2 ( 2)  ...
これらの式をシュレディンガー方程式に代入すると、
H 0  H 1  ( 0)   (1)  2 ( 2)  ....  E 0  E (1)  2 E ( 2)  ... ( 0)   (1)  2 ( 2)  ....
H 0 ( 0)   ( H 0 (1)  H 1 ( 0) )  2 ( H 0 ( 2)  H 1 (1) )  ....
 E0 ( 0)   ( E(1) ( 0)  E( 0) (1) )  2 ( E( 0) ( 2)  E(1) (1)  E( 2) ( 0) )
λのべきを比較すると
H 0 ( 0 )  E ( 0 ) ( 0 )
H 0 (1)  H 1 ( 0 )  E (1) ( 0 )  E ( 0 ) (1)
H 0 ( 2 )  H 1 (1)  E ( 0 ) ( 2 )  E (1) (1)  E ( 2 ) ( 0 )
非摂動系の波動関数
 0 , 1 , 2 ,......, i ,....
 ( 0)   i とする。E(0) = Ei
H 0 (1)  H 1 i  E (1) i  Ei (1)
 (1)   c n n 無摂動系の波動関数で展開して代入する。
n
H 0 ( cn n )  H1 i  E(1) i  Ei ( cn n )
n
n
左辺から i をかけて積分する。
*
ci Ei  i H 1 i  E (1)  Ei ci
i H 1 i  E (1)
左辺から j
*
(j  i)をかけて積分する。
E j c j  j H 1 i  Ei c j
cj 
j H1 i
Ei  E j
H 0 ( 2 )  H 1 (1)  E ( 0 ) ( 2 )  E (1) (1)  E ( 2 ) ( 0 )
 ( 0)*   i * を左からかけて積分する
  ( 0 ) H 0  ( 2 )   ( 0 ) H 1  (1)  E ( 0 )  ( 0 )  ( 2 )  E (1)  ( 0 )  (1)  E ( 2 )
Ei  i  ( 2 )   i H 1  (1)  Ei  i  ( 2 )  E (1)  i  (1)  E ( 2 )
 i H 1  (1)  E (1)  i  (1)  E ( 2)
E( 2 )   c j  i H 1  j  E(1)  c j  i  j
j
E( 2)  
j i

j i

j i
○
j
j H1 i
 i H 1  j  ci  i H 1  i  E (1) ci
Ei  E j
j H1 i
i H 1 j  ci E (1)  E (1) ci
Ei  E j
2
j H1 i
Ei  E j
時間に依存する摂動論と光吸収 (アトキンス 9 章
H  H 0  Ve  it
i
cj を代入
H 0 n  E n  n

 H (t )
t
ci (0)  1
c f (t )  f V i
2
 (t )   c n (t ) exp(iE n t / ) n
n
c n (0)  0 (i ≠ n)
i, n, f
1  exp(i fi t  it )
c f (t )  f V i
補遺)
(i ≠ f)
 fi  
2
1  expi  fi   t
 2  fi   
2
量子状態を表すサフィックス
 fi 
2
 f Vi
2
E f  Ei

  fi   t 
4 sin 2 

2


2
2
  fi   
c f (t )
遷移確率
2
t

2 f V i
2
2
  fi   
これを Fermi の黄金率と呼ぶ。
光による遷移を考える場合は、 V  E
c f (t )
2

t
2 f  i
2
E2
2
ここでは電気双極子である。これを用いると
  fi   
つまり、遷移確率は電場の 2 乗に比例し、遷移双極子モーメント f
 i の 2 乗に比例する。ま
たデルタ関数は、遷移に必要な光のエネルギーが、2 つの量子状態のエネルギー差に比例するこ
とを示している。光強度は E2 に比例するので、光の吸収率は、遷移双極子モーメント f
i の
2 乗に比例する。以下遷移双極子モーメントについて詳しく述べる。
○遷移双極子モーメント (アトキンス
9.10)
ボルンオッペンハイマー近似のもとでは、波動関数は、一般に       S  I と書くことができ
る。ここで、 はスピンを除いた電子軌道波動関数(電子座標のみの関数)
、  は核軌道波動関数
(核座標のみの関数)、S は電子スピン波動関数、I は核スピン波動関数である。電子双極子モー
メントをあらわす演算子は、電子座標のみを含むので、これを用いると
f  i   f   f  S f  I f  i   i  Si  Ii   f  i  f  i
S f Si
I f Ii
上の項が値を持つためには、電子遷移による吸収が存在すること、すなわち
 f  i  0
および
 f  i  0 、 S f S i  0 、 I f I i  0 が必要である。
一電子の波動関数の場合、   ex
(電場の方向を x とする)
問題) x 方向に並んだ 2 原子分子を考える。4 つの波動関数、1 ( r ) 、 2 ( r ) 、 3 ( r ) 、 4 ( r ) が
以下のようにあらわされるとき
1   a

a

 p z    x, y , z   p z   x, y , z  
2  2

2

1   a

a

 2 (r ) 
 p z    x, y , z   p z   x, y , z  
2  2

2

1   a

a

 3 (r ) 
 p x    x, y , z   p x   x, y , z  
2  2

2

1 ( r ) 
 4 (r ) 
1   a

a

 p x    x, y , z   p x   x, y , z  
2  2

2

 f   i  e  f x  i  0 となるのは、どの組み合わせか?
答
1、2 と 3、4
○スピンの軌道関数に関しては、一電子の場合はすぐにわかる。問題は多電子の場合である。2
電子系のスピンの関数
S1   (1) (2)
S 2   (1)  (2)
1
S3 
 (1)  (2)   (2)  (1) 
2
1
S4 
2
 (1)  (2)   (2)  (1) 
S1~S3 はスピン 3 重項と呼ばれる状態で、S4 はスピン 1 重項と呼ばれる状態である。
スピン演算子
Sz 
s
j 1, 2
jz
、 S 
s
j 1, 2
j
、 S 
s
j 1, 2
j
S3 が一重項で S4 が三重項になるのは、上向き三重項波動関数のスレーター行列表示に対して、Sをかけるとわかる
 


1 1 (r1 ) 1
2 1 (r2 ) 2
1
2
1
2
 2 (r1 ) 1
 2 (r2 ) 2
1 (r1 ) 1 2 (r2 ) 2   2 (r1 ) 11 (r2 ) 2 
(1 (r1 ) 2 (r2 )   2 (r1 )1 (r2 )) 1 2
S  l ,m  l (l  1)  m(m  1)  l ,m 1
l=1, m=1 のだから
S  1,1  2 1, 0
S  l ,m  l (l  1)  m(m  1)  l ,m 1
スピンに関しては
l=1/2
, m=1/2
だから
s  
S
S  1 1 (r1 )1 2 (r1 )1 

 1,1   
2
2  2 1 (r2 ) 2 2 (r2 ) 2 
1 1 (r1 ) 1 2 (r1 )1 1 1 (r1 )1 2 (r1 ) 1


2 1 (r2 )  2 2 (r2 ) 2 2 1 (r2 ) 2 2 (r2 )  2
 1,0 
1
1
(1 (r1 ) 12 (r2 ) 2  2 (r1 )11 (r2 )  2 )  (1 (r1 )12 (r2 )  2  2 (r1 ) 11 (r2 ) 2 )
2
2
1
1
 1 (r1 )2 (r2 )1 2  1 2   2 (r1 )1 (r2 )1 2  1 2 
2
2
1
1 (r1 )2 (r2 )  2 (r1 )1 (r2 )  1 1 2  1 2 

2
2

3 重項どうし、あるいは一重項どうしに関しては、 S f S i  0 。一重項と三重項どうしに関して
は S f S i  0 となる。これに対して、スピン軌道相互作用が作用すると、S1 と S2、S2 と S3、S3
と S1 あるいは一重項と三重項に関して、 S f S i  0 が起こるようになる。このようなスピン多
重項の間の交差を光化学では扱う。
光化学の基礎 II
第11回
○ 光の吸収、蛍光と燐光
一重項-三重項の交差項は、特に区別して、
intersystem crossing (系間交差)と呼ばれ
ることが多い。
蛍光: Fluorescence
燐光: Phosphorescence
は英語も覚えておくと良い
Fermi の Golden rule は、光吸収、発光のいずれに関しても用いることができる。Golden rule の教
えることの一つは、スピン状態が1重項の電子状態と、3重項の電子状態の間では、光の吸収・
発光は起こらないということである。このようなことをスピン状態に関する選択則という。
現実には、スピン軌道相互作用のため、純粋なスピン一重項とスピン3重項は存在しない。こ
のため、スピン選択則は厳密な意味では成り立っておらず(特に励起状態のスピン3重項)、遷移
モーメントは2つの状態(スピン1重項とスピン3重項[と思われる状態])の間で非常に小さい値
を持つ。
この値は非常に小さいため、吸収スペクトルではあらわには見えない。一方で、いったん励起
3重項ができたときは、基底状態への電子遷移が起こる可能性がある。
(基底状態の分子は通常一
重項である。)このような励起3重項から基底状態への電子遷移を”燐光”という。これに対して、
励起1重項から基底状態への遷移を”蛍光”という。燐光は蛍光と比べると非常に小さな遷移確率
しか持たない。そのため、格子緩和などの別のプロセスと競合しやすい。
○ Franck-Condon の原理と振電相互作用
局在した電子系では、運動量保存則が成り立たなくなるので、電子遷移は振動モードと結合し
やすくなる。Born-Oppenheimer 近似によれば、核の運動と電子の運動を分離することができ、励
起状態と基底状態の核ポテンシャルは、曲率は同じだが極小値の場所が異なる 2 つの曲面として
表すことができる。Franck-Condon の原理によれば、電子遷移は、これらの曲面で、配位座標に関
する変化なしに起こる(垂直遷移、図 1(a))。
吸収スペクトル A()は遷移確率 em
  gn の2乗に比例する。ここで g,e は基底電子状態、
励起電子状態を示す。また n, m はそれぞれ基底電子状態と結合した振動モード、励起電子状態と
結合した振動モードを表す。 em 、 gn を電子部分の波動関数 e 、 g と分子振動に関する波動
関数  em 、  gn を用いて分離し、また電子部分の遷移双極子モーメントが核座標に依存しない
(Condon 近似)とすると、




em   gn   e * (r , q )  g (r , q )dr

  eg   em * (q ) gn (q )dq

 em * (q) gn (q)dq
(14)
吸収スペクトルの場合、T = 0 K では始状態として n=0 の振動モードだけを考慮すればよい。また.
図 1(a)の配位座標モデルを考慮すれば、励起状態の振動モードの波動関数は基底状態の波動関数
を用いて、  em ( q )   gm ( q  q 0 ) と表されるから、
em   g 0
2
  eg 2   m * (q  q 0 ) n (q )dq
2
(15)
ただし、ここで基底状態の振動に関する波動関数から g を省いた。上の式中の積分項は、調和振
動子の波動関数を用いることにより計算でき
em  g 0
2
 S m

  eg 2 
exp( S )
 m!

(16)
スペクトルは、これらをすべて足し合わせればよいので
A( ) 
図1
 S m

  m! exp( S ) (U em  U g 0   )
m 0


(17)
(a)Frank-Condon の原理を示す配位座標モデル。光励起において、配位座標は変化しない。
また基底状態と励起状態では、極小値をとる配位座標が異なる。A は吸収、F は発光を表す。そ
れぞれ基底状態および励起状態の振動量子数が 0 となることに注意。(b).15、.17 式を用いた、吸
収スペクトル(A())、発光スペクトル(F())の計算値。0 はゼロフォノン線の位置、g は調和振動
子の量子化エネルギーを示す。グラフはゼロフォノン線での重なりを避けるため、吸収スペクト
ルと発光スペクトルでバーの位置をわざとずらしてあることに注意。

となる。ただし、 S  W  g

である。
(W は緩和エネルギー、g は調和振動子の量子化エネル
ギー;図 1(a)参照)上記は吸収スペクトルについて議論したが、発光スペクトル F()の場合は Kasha
の法則を考えると m=0、n0 になるから
F ( ) 
 S n

  n! exp( S ) (U e0  U gn   )
n 0 


(18)
蛍光スペクトルの場合、対応する吸収スペクトルは禁制遷移ではないため、2 つのスペクトルで
共通する電子遷移が観測されることになる。m=0 の蛍光スペクトルおよび n=0 の吸収スペクトル
は、純粋な電子遷移のエネルギー(0)となり重なる。この遷移をゼロフォノン線と呼ぶ。
式(17)および(18)より、ゼロフォノン線を中心に、蛍光スペクトルと吸収スペクトルは、振動構
造に関して対称的になることが予想される(図 1(b)参照)。このような対称性は、実際に多くの物
質で観測されている。
○光化学への速度論の応用
蛍光、燐光等の光吸収プロセスを反応速度論を使って議論することがある。本講義では、以下
この現象に関して詳しく述べる(図 23.1 参照)。
光吸収は高エネルギー状態からのプロセスなので、室温では熱平衡にならない。しかしながら
反応速度論では、平衡状態になることを必要としないので、光化学に適用することができる。
<寿命の定義>
ある物性量が  exp(t /  ) という形で、時間に対して減衰するとき、を寿命という。
<量子効率(量子収率)の定義>
現象によって異なるが、たとえば発光の場合は、波長の光を吸収して波長の光()を放
出する。このような場合、光子吸収して光子放出する場合に、量子効率が%であると定義す
る。光のエネルギーはに比例し、であるから、量子効率が%であってもエネルギ-が
保存されるわけではない。量子効率は、いろいろな場合で定義される。たとえば太陽電池の場合、
一光子が電子-正孔対に変わるときに、量子効率がと定義する。また電界発光の場合、一電
子-正孔対が一光子に変わるときに、量子効率が%と定義する。
問題 1
一定の光強度で照射し続けると定常状態に到達する。その時の[S1]、[T1]を定常状態近
似を用いて求めよ。ただし、光吸収によって単位時間当たり励起される分子数を Ia とする。
問題2
蛍光量子収率と燐光量子収率を求めよ
問題 3
光照射がないときの一重項の速度式を作り、一重項寿命を求めよ。
解答 1
一定の光強度で照射し続けると定常状態に到達する。その時の定常状態近似は
d [ S1 ]
 I a  k IC [S1 ]  k F [S1 ]  k ISC [S1 ]
dt
ただし、ここで Ia は光吸収によって単位時間当たり励起される分子数である。
[S1 ]  I a / k IC  k F  k ISC 
T1 に対する定常状態速度式は
d T1 
 k ISC [S1 ]  k P [T1 ]  k ' ISC [T1 ]
dt
k [S ]
k ISC I a
したがって T1   ISC 1 
k P  k 'ISC k P  k 'ISC k IC  k F  k ISC 
0
解答 2
蛍光量子収率は
燐光量子収率は
F 
k F [S1 ]
 k F / k IC  k F  k ISC 
Ia
P 
k P k ISC
k P [T1 ]

k P  k 'ISC k IC  k F  k ISC 
Ia
解答3
光照射がないときの一重項に関する速度式は
d [S1 ]
 k IC  k F  k ISC [S1 ]
dt
なので一重項寿命は  S  1 / k IC  k F  k ISC 
光化学の続き
第12回
励起状態のモデル図(再掲)
問題1
光照射がないときの三重項の速度式を作り、三重項寿命を求めよ。
問題2
強い蛍光を観測するためには、速度定数がどのような条件を物質がもっている必要が
あるか。強い燐光の場合はどうか。
蛍光を示す物質に関して、光吸収によって単位時間当たり励起される分子数を Ia となる
問題3
ように一定の光量で分子を励起し続け、その後光をきった。どのような時間依存性を蛍光 IF が示
すかを答えよ。この問題を解くにあたって、一定の光量で分子を励起子し続けているときは定常
状態近似であつかってよいとする。
○
消光
励起状態にある分子は溶液あるいは気体中の分子によって不活性化することがある。このような
分子を消光剤(quencher: Q)と呼ぶ。
k
'Q
T1  Q 
 S0  Q *
(1)
上の式が示すように、T1 励起状態が基底状態に変わると同時に、消光剤自体が励起されている。
(消光剤が発光するかどうかという問題が生じるが、発光するためには無輻射遷移[以前の図で
波線で描いた遷移]の速度定数が、発光の速度定数よりも小さい必要がある。これが大きいと発
光は観測されない。) 燐光の消光によって、三重項分子と消光剤の速度定数を決定することがで
きる。
問題4
(1)のプロセスの消光剤が存在するとき、T1  
k ISC S1 
k P  k ' ISC  k Q Q
となることを示
せ。また消光剤があるときの燐光収率は
k P  k ' ISC
P

 P  k P  k ' ISC  k Q Q
  k P  k ' ISC  k Q Q
 1  k Q T [Q] となることを示
すなわち P 
P
k P  k ' ISC
せ。ただし  T は燐光寿命。この式は Stern-Volmer の式とよばれる。
1
1
問題の解答
解答1
光照射がないときの三重項に関する速度式は
d [T1 ]
 k P  k 'ISC [T1 ]
dt
 P  1 / k P  k 'ISC 
すなわち三重項寿命は
解答2
なので、 [T1 ]  [T1 ]0 exp k P  k ' ISC t
F 
蛍光量子収率は
P 
燐光量子収率は
k F [S1 ]
1
 k F / k IC  k F  k ISC  
Ia
k IC k F  k ISC k F  1
k P k ISC
1

k P  k 'ISC k IC  k F  k ISC  1  k 'ISC k P k IC k ISC  k F k ISC  1
この式が解答の根拠となる。すなわち強い蛍光を観測するためには、kIC<<kF , kISC<<kF が必要であ
る。また強い燐光を観測するためには、k'ISC<<kP , kIC<<kISC , kF<<kISC すなわち T1 がたくさんで
きて、かつ燐光が無輻射プロセスに勝つことが必要である。
解答3
0  I a  k IC [S1 ]  k F [S1 ]  k ISC [S1 ]
[S1 ]0  I a / k IC  k F  k ISC 
I F 0  k F [S1 ]0  k F I a / k IC  k F  k ISC 
d [S1 ]
 k IC [S1 ]  k F [S1 ]  k ISC [S1 ] だから [S1 ]  [S1 ]0 exp (k IC  k F  k ISC )t
dt
I F  k F [S1 ] だから
IF 
kF I a
exp (k IC  k F  k ISC )t
k IC  k F  k ISC
ただし t=0 を定常光を切ったときにしている。
解答4
T1 に対する定常状態速度式は
d T1 
 k ISC [S1 ]  k P [T1 ]  k 'ISC [T1 ]  kQ [T1 ][Q]
dt
k [S ]
k ISC [S1 ]
したがって [T1 ] 
消光剤がないときは [T1 ]  ISC 1
k P  k 'ISC  kQ [Q]
k P  k 'ISC
0
は I P  k P [T1 ]
だから
k P  k ' ISC
P

P  k P  k 'ISC  kQ Q
kQ
P  k P  k 'ISC  kQ Q

 1
[Q]  1  kQ T [Q]
P
k P  k ' ISC
k P  k ' ISC
1
となる。
であり、燐光強度
光化学続き
第13回
○分子間エネルギー移動
光化学の特徴として、分子間エネルギー移動がある。消光剤はその一種である。エネルギー移動
には3つのタイプがある。
すなわち
a)輻射エネルギー移動、b)短距離移動、c)長距離移動
である。
a)は電磁波の放出吸収を通したエネルギー移動である。すなわち
D*  D  h ;
A  h  A *
b)は Dexter transfer と呼ばれるもので、全角運動量が保存されるという特徴がある。例えば S0、
S1、T1 を考えれば、
D * (S1 )  A(S0 )  D(S0 )  A * (S1 )
D * (T1 )  A(S0 )  D(S0 )  A * (T1 )
といったエネルギー移動が起こる。
c)は Förster transfer と呼ばれる、双極子-双極子相互作用によるものである。エネルギー移動の効
率は、 D*  D と A  A * のスペクトルの重なりに依存する。
○
有機太陽電池
有機太陽電池は、光化学反応の非常によい応用になっている。有機太陽電池と知られているもの
には、C60 と導電性高分子、C60 とポルフィリン化合物、といったいくつかの組み合わせが知ら
れている。エネルギー効率は、シリコン太陽電池の 1/2~1/3 程度にとどまっているが、インクジ
ェットプリンタ-あるいは印刷法で、回路が作れる可能性があるため、研究が盛んにおこなわれ
ている。
たとえば PCBM(C60 の誘導体)と P3HT(導電性高分子の一種)
)の場合
h
PCBM  P3HT 
1  PCBM  P3HT *
PCBM  P3HT * 
 PCBM -  P3HT 
h
2  PCBM *  P3HT
PCBM  P3HT 

PCBM *  P3HT 
 PCBM -  P3HT 
という電子移動を伴う光化学反応が起こる。これによってできたキャリアが電子を運び、電流を
流すことが知られている。
○
光化学の連鎖反応
以前問題に出した、連鎖化学反応は光化学反応としても起こる。
熱化学反応の場合
k
1)
'1
Br2  M 
2Br  M
2)
'2
Br  H 2 
HBr  H
3)
'3
H  Br2 
HBr  Br
4)
'4
H  HBr 
H 2  Br
5)
'5
2Br  M 
Br2  M
[問 1]
k
k
k
k
1)、5)に M(担体気体)を含むが、[HBr]に関する速度式は以前の解と同じになること
を確かめよ。(
[H]、[Br]に関して定常状態近似を仮定せよ)
参考
1/ 2
1 1 / 2
[H 2 ][Br2 ]1 / 2
d [HBr] 2k1 k 2 k 3 k 4 k 5

dt
k 3 k 4 1  [HBr][Br2 ] 1
となるはず
光化学反応の場合(熱反応は 200℃以下では起こらない)
1)
h
Br2  M  2Br  M
k
2)
'2
Br  H 2 
HBr  H
3)
'3
H  Br2 
HBr  Br
4)
'4
H  HBr 
H 2  Br
5)
'5
2Br  M 
Br2  M
k
k
k
[問2] 1)に対する速度式が、
d [Br]
 2 I a であることを考慮して、光化学反応の時の HBr の
dt
速度式を求めよ。(H, Br に対する定常状態近似を仮定せよ)
1/ 2
1 1 / 2
[H 2 ][M ] 1 / 2
d [HBr] 2 I a k 2 k 3 k 4 k 5

dt
k 3 k 4 1  [HBr][Br2 ] 1
となるはず
[M]が全圧 P に比例すれば
1/ 2
1 1 / 2
[H 2 ]P 1 / 2
d [HBr] 2 I a k 2 k 3 k 4 k 5

dt
k 3 k 4 1  [HBr][Br2 ] 1
となる。同等の実験式が得られている。
○光電荷移動に関するマーカス理論
マーカス理論は、化学反応の広い分野で使われている理論である。以下光化学反応に関して応用
した例を示す。
1
A  B * 
A   B
k
という化学反応を考える。右辺の状態は左辺よりエネルギーが低いとする。この場合、左辺の状
態が常に実現するように思われるが、この反応の活性化エネルギーが高いと、
B* 
 B の基
底状低への遷移が起こるために、光電荷分離は観測できなくなる。
A、B の周りの分子の分極を表す座標を Q として表す。分極が起こっている状態の自由エネルギ
ー曲線を G2、いない状態の自由エネルギー曲線を G1 とする。
すると左辺および右辺の自由エネルギーは以下のように表される。
G1 (Q)   G0  aQ 2
G2 (Q)  aQ  Q0 2
;
0
( G <0)
  aQ0 2
0
0
分極が起こらない状態よりも起こった状態の方が安定であるから- G >0(すなわち G は負)
である。左辺と右辺の状態の移り変わりは、G1=G2 の時に起こる。このときの Q を Qx とすると


Q x  G0  aQ0 2 / 2aQ0  G0    / 2aQ0
したがって活性化エネルギーは
G   G1 (Q x )  G1 (0)  aQ x 2  a
k
 G 
exp 
 kT
 4kT

2V 2
G0   2
4a 2 Q0 2

G0   2
4aQ0 2

G0   2
4




 G0   で、この速度定数は最大になり、それよりも小さな  G0 および大きな  G0 の両方
で速度定数は小さくなる。
 G0   : 正常領域
0
この状態では G が大きくなるほど(つまりイオン化状態が安定化されるほど)速度定数は大き
くなる。
 G0   : (Marcus の)逆転領域
この領域では、イオン化状態が安定化されると、逆に活性化エネルギーが大きくなり、イオン化
状態が実現されないことになる。エネルギーだけを考えるとこの状態は逆であることに注意
前回の解答と講義の復習
第14 回
問1
0
d [Br ]
  k 2 [Br ][H 2 ]  2k1 [Br2 ][M ]  k 3 [H][Br2 ]  k 4 [H][HBr]  2k 5 [Br ] 2 [M ] ①
dt
0
d [H]
 k 2 [Br ][H 2 ]  k 3 [H][Br2 ]  k 4 [H][HBr] ②
dt
d [HBr]
 k 2 [Br ][H 2 ]  k 3 [H][Br2 ]  k 4 [H][HBr]
dt
③
①+②より
0  2k1 [Br2 ][M ]  2k 5 [Br] 2 [M ]
したがって
k1 [Br2 ]  k 5 [Br]
2
 k [Br2 ] 

∴ [ Br ]   1
 k

5


1/ 2
④
②より
k 3 [H][Br2 ]  k 4 [H][HBr]  k 2 [Br ][H 2 ]
∴ [H] 
④を利用すると
k 2 [H 2 ]
k 2 [H 2 ]

[Br ]
k 3 [Br2 ]  k 4 [HBr] k 3 [Br2 ]  k 4 [HBr]
⑤
③-②より
d [HBr]
 2k 3 [H][Br2 ]
dt
⑥
⑤を利用すると
k 2 [H 2 ]
d [HBr]
 2k 3 [Br2 ]
[Br ]
dt
k 3 [Br2 ]  k 4 [HBr]
 k1 [Br2 ] 
k 2 [H 2 ]


 2k 3 [Br2 ]
k 3 [Br2 ]  k 4 [HBr]  k 5 
1
1/ 2

問2
0
2 k1 k 2 k 3 k 4 k 5
1 / 2
1/ 2
⑦
[H 2 ][Br2 ]1 / 2
1
k 3 k 4  [HBr][Br2 ] 1
d [Br ]
  k 2 [Br ][H 2 ]  2 I a  k 3 [H][Br2 ]  k 4 [H][HBr]  2k 5 [Br ] 2 [M ]
dt
②、③は同じ
②と⑧を足すと
⑧
0  2 I a  2k 5 [Br] 2 [M ]
⑨
 Ia 

したがって [ Br ]  
 k 5 [M] 
1/ 2
⑩
②-⑤は同じだから、⑦の途中までは同じである。したがって
k 2 [H 2 ]
d [HBr]
 2k 3 [Br2 ]
[Br ]
dt
k 3 [Br2 ]  k 4 [HBr]
 Ia 
k 2 [H 2 ]


 2k 3 [Br2 ]
k 3 [Br2 ]  k 4 [HBr]  k 5 [M ] 

2I a
1/ 2
1
k 2 k3k 4 k5
1 / 2
[H 2 ][M ] 1 / 2
1
k 3 k 4  [HBr][Br2 ] 1
[M]が全圧 P とすれば
1/ 2
1 1 / 2
[H 2 ]P 1 / 2
d [HBr] 2 I a k 2 k 3 k 4 k 5

dt
k 3 k 4 1  [HBr][Br2 ] 1
1/ 2
⑪
熱力学の復習
(-1) dU  TdS  PdV を参考にして、エンタルピー(H)
、Helmholtz 自由エネルギー(A)、Gibbs
自由エネルギー(G)、相互の関係を S, T, P, V を用いて表せ。
(0) G / T P   S 、  (G / T ) / T P   H T を示せ。
2
電離平衡とネルンストの式
(1)ネルンストの式を書け。
(2)ネルンストの式における-nFE は何を反映しているか?
(3)化学反応における、Gibbs エネルギーの重要性はどこから来るか
(4)AgAgBrBr-Ag+Ag の化学反応を以下のように書く。
右反応
Ag++e- = Ag
左反応
Br-+Ag = AgBr+e-
全反応
Ag++Br- = AgBr
この書き方に習って、以下の電池の電極反応を書け
(5)
(a)
AgAgClHCl(1M)H2(1bar)Pt
(b)
Pt,H2(g,P)HCl(aq,0.1m)Hg2Cl2(s)Hg(l)
(c)
NaNa+Cl-Cl2(g),Pt
(d)
ZnZn2+Fe3+,Fe2+Pt
(e)
Pt,H2(1atm)H+(a(H+))H+(a=1)H2(1atm),Pt
(e)に関して、起電力を求めよ。
(6)AgAgBrBr-(a1)Ag+(a2)Ag の電池の起電力と、イオン積 K=[Ag+]
[Br-]の関係を求め
よ。
反応速度論
(7)素反応とは何か?
(8)定常状態近似とは何か?定常状態と見なしやすいのは、どのようなパラメータか?
(9)反応速度論で出てくる、Arrhenius の式に関して説明せよ。
k
1

AB
(10) A  B

k
左の 2 つの素反応に関して、d[A]/dt、d[B]/dt、d[AB]/dt を表す式を
-1
書け。平衡定数を k1, k-1 を用いて表せ。
光化学
(11)
基底状態で一重項にある分子が、光によって励起された後に、再び基底状態に戻る道
筋を書け。
<発光しないプロセスは一般に無輻射遷移とよぶ。>
(12)
(11)のそれぞれのプロセスに関して、適当に速度定数を割り振り、一重項寿命、三重
項寿命がどのようになるか求めよ。
(13)一重項量子効率、三重項量子効率を求めよ。
(14)(13)の結果に基づき、三重項からの発光を観測するための条件を考えよ。ただし、消
光剤(quencher)の存在は考えなくてよい。