高カルシウム血症

Oncologic emergency
ー高カルシウム血症ー
2015.4.24
救急カンファレンス
Oncologic emergency
がんの病状の中で早急に対応しなければ不可逆的
な臓器障害や生命の危機に直結する病状。
□ 高カルシウム血症
□ 低ナトリウム血症
□ 腫瘍崩壊症候群
□ 肺塞栓症
□ 脊髄圧迫
etc
Oncologic emergency
がんの病状の中で早急に対応しなければ不可逆的
な臓器障害や生命の危機に直結する病状。
□ 高カルシウム血症
□ 低ナトリウム血症
□ 腫瘍崩壊症候群
□ 肺塞栓症
□ 脊髄圧迫
etc
高カルシウム血症(症状)
補正Ca値 (㎎/dL )
症状
補正Ca <12㎎/dL
無症状、便秘など軽い症状
12 ≦ 補正Ca <14
倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐、口喝、多尿
14㎎/dL ≦ 補正Ca
腎不全、異所性石灰化、脱力、意識障害、昏睡
⊛骨外に存在するCaの約半分がAlbと結合しているため、Ca値は
Alb <4.0の場合はAlb値で補正する必要がある。(Payneの式)
「 補正Ca値(㎎/dL) = 実測Ca値+(4.0‐血清Alb値) 」
高カルシウム血症(原因)
悪性腫瘍関連(固形癌、血液悪性疾患)
原発性副甲状腺機能亢進症(孤発性腺腫、びまん性過形成 etc)
(上記2つで原因の9割を占める)
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)
3次性副甲状腺機能亢進症(慢性の腎不全やVitD欠乏)
活性化VitD3製剤、肉芽腫疾患による活性化VitD3産生過剰
不動症候群(Immobilization)
ミルク・アルカリ症候群
薬剤性(サイアザイド系利尿剤、テオフィリン、リチウム) etc
高カルシウム血症(検査と診断)
薬剤性
ビタミンD過剰
不動症候群
問診
FeCa
FeCa <1%
Intact PTH
Intact PTH上昇
家族性低Ca尿性高Ca血症
原発性副甲状腺機能亢進症 3次性副甲状腺機能亢進症
PTH低下
PTHrP
PTHrP上昇
1,25(OH)2
-VitD3
Calcitriol上昇
悪性腫瘍関連(HHM)
悪性リンパ腫 肉芽腫性疾患
悪性腫瘍関連(LOH) 甲状腺機能亢進症 副腎不全 etc
PTH検査法の違い
検査項目名
Intact PTH
腎機能の影響
少し受ける
(偽低値)
保存の影響
受ける
Whole PTH
受けない
受ける
高感度PTH
PTH-C端
受ける
(偽高値)
受ける
(偽高値)
少ない
少ない
測定部位
全長PTHと一部の
不完全PTH(7-84)
全長PTHのみ
全長PTHと中間部を 全長PTHとC端
含むPTH断片
を含むPTH
測定感度
高感度
活性のあるPTHを
低感度
選択的に高感度
使い分け
低/高Ca血症の鑑
別や副甲状腺機能
評価。
安定している。冷蔵
腎透析患者の
古く使用されて
検体。減少傾向にあ
PTH分泌能評価。
いない。
る。
低感度
* 簡易的に Whole PTH ×1.7≒intact PTH
高カルシウム血症(原因)
悪性腫瘍関連(固形癌、血液悪性疾患)
原発性副甲状腺機能亢進症(孤発性腺腫、びまん性過形成etc)
(上記2つで原因の9割を占める)
3次性副甲状腺機能亢進症(慢性の腎不全やVitD欠乏)
活性化VitD3製剤や肉芽腫疾患による活性化VitD3産生過剰
不動症候群
ミルク・アルカリ症候群
薬剤性(サイアザイド系利尿薬、テオフィリン、リチウム) etc
腫瘍随伴性高カルシウム血症
がん患者の10~30%に起こり、固形癌においては予
後不良因子となる。
機序
①悪性体液性高カルシウム血症
(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)
②局所的な骨融解性の高カルシウム血症
(LOH:local osteolytic hypercalcemia)
③活性化VitD3(カルシトリオール)産生腫瘍
④異所性PTH産生腫瘍
①悪性体液性高カルシウム血症
(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)
最も一般的ながん随伴性高カルシウム血症の原因で80%以上
を占め、PTHrP産生により起こる。
◎ 肺や頭頸部の扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、乳がん、子宮
癌などのがん原発巣、ATLなど一部の非ホジキンリンパ腫や慢
性骨髄性白血病(急性転化)に見られる。
◎ 機序としては、PTHrPが骨と腎臓に作用し高カルシウム血症を
きたす。 (骨吸収と遠位尿細管でのCa再吸収増加)
②局所的な骨融解性の高カルシウム血症
(LOH:local osteolytic hypercalcemia)
乳がん骨転移や多発性骨髄腫によくみられ、がん随伴性高
カルシウム血症の約20%を占める。直接浸潤よりは主に腫瘍
産生物質による局所での破骨細胞刺激因子による。
◎ 乳がんにおいては、特に骨への転移部において局所的に
PTHrP産生が起こり、RANK/RANKL系の亢進により破骨細胞
優位となる。またIL-6、IL-8、IL-1、VEGFなどのサイトカイン分
泌も骨吸収に影響していると考えられる。
◎ 多発性骨髄腫やリンパ腫の骨髄浸潤の場合でも、破骨細胞
刺激因子による溶骨と、間葉系細胞から骨芽細胞への分化
阻害のため骨破壊が進行する。
◎ 多発性骨髄腫では、IL-6、RANKL、MIP‐1a、オステオプロテ
ゲリン(OPG)、IL-3などの因子が原因となる。
◎ 特に多発性骨髄腫では、原疾患による腎障害と脱水による
腎前性要素も重なり、より高度の高Ca血症をきたしやすい。
多発性骨髄腫による高カルシウム血症
骨髄微小環境でのLOH
骨吸収促進因子
PTH
IL-6
MIP-1
1α25(OH)2D3
骨髄腫細胞
単球系前駆細胞
RANK
Ca↑
相互作用
骨髄間質細胞
Ca↑
RANK/RANKL
RANK- Ligand
分化
破骨細胞
Ca↑
③活性化VitD3(カルシトリオール)産生腫瘍
悪性疾患では、リンパ腫や子宮未分化胚細胞腫で認められる。
PTH非依存的に腎外で、異常リンパ球やマクロファージにより
カルシジオールからカルシトリオールが産生される。
治療としてはステロイドが有効。(PSL 20~50mg/日)
④異所性PTH産生腫瘍
子宮がん、肺がん、神経外胚葉性腫瘍、甲状腺乳頭がん、転移性
横紋筋肉腫、すい臓がんなどで報告があるが、珍しい。
高カルシウム血症(治療)
輸液負荷+カルシトニン投与+α(ビスホスホネートなど)
◎ 輸液負荷: 生理食塩水2-3L/日投与(300ml/hr程度で開始)
遠位尿細管での濃縮障害による多尿や、嘔気のため体液量が減
少している事が多い。まず細胞外液を補充し、生理食塩水により
利尿を図る。
フロセミドの使用は、心不全兆候などが見られる場合に限る。
うっ血性心不全や腎不全がある場合には透析も考慮される。
高カルシウム血症(治療)
◎ カルシトニン投与: エルシトニン 40単位 2回/日投与
効果が早く安全で毒性も極めて低い。
カルシウムを下げる作用は強くなく、繰り返し使用する事によって
効果が減弱する(タキフィラシー)が、早急に効果を期待したいとき
には有効。
作用としては、Caの腎排泄を増やし骨吸収を減らす。
高カルシウム血症(治療)
◎ ビスホスホネート製剤投与: ゾメタ 4㎎ 15分投与
効果発現までに48~72時間と効果が遅い。
骨病変に対してはGFRにより用量調整が必要。
破骨細胞機能を抑制しアポトーシスを誘導する。
*注意点
発熱や関節痛など急性反応がみられる。
急性腎不全を起こすことがある。
顎骨壊死、顎骨骨髄炎のリスク。(歯科処置や口腔衛生に注意)
長期使用患者において大腿骨の非典型骨折の発現が報告。
高カルシウム血症(治療)
おまけ
◎ デノスマブ投与: ランマーク 120㎎ 皮下投与
効果発現までに時間がかかる。
発熱や関節痛などの急性反応が少ない。
RANKLに対する完全ヒト型モノクローナル抗体で、強力な骨吸収抑
制薬である。*適応は、多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨
転移による骨病変。(高カルシウム血症ではない)
*注意点
遅発性の低カルシウム血症。
顎骨壊死、顎骨骨髄炎、大腿骨の非典型骨折の発現。
多発性骨髄腫による高カルシウム血症
骨髄微小環境でのLOH
骨吸収促進因子
PTH
IL-6
MIP-1
1α25(OH)2D3
骨髄腫細胞
単球系前駆細胞
RANK
Ca↑
ランマーク
相互作用
骨髄間質細胞
Ca↑
RANK/RANKL
RANK- Ligand
分化
破骨細胞
Ca↑
多発性骨髄腫による高カルシウム血症
骨髄微小環境でのLOH
骨吸収促進因子
PTH
IL-6
MIP-1
1α25(OH)2D3
相互作用
骨髄間質細胞
骨髄腫細胞
単球系前駆細胞
RANK
Ca↑
Ca↑
ランマーク
結合できない。
RANK- Ligand
分化
破骨細胞
Ca↑
多発性骨髄腫による高カルシウム血症
骨髄微小環境でのLOH
骨吸収促進因子
PTH
IL-6
MIP-1
1α25(OH)2D3
相互作用
骨髄間質細胞
骨髄腫細胞
単球系前駆細胞
RANK
ランマーク
結合できない。
RANK- Ligand
分化
破骨細胞