Drugs for Osteoporosis(骨粗鬆症治療薬) 1、骨粗鬆症とは 健常人では、古くなった骨は絶えず吸収され、新しい骨に造り替えられて、バランスが 保たれている(リモデリングという)。 骨粗鬆症は、骨の吸収が増加しているのに、骨形成が追いつかない状態であり、 次第に骨密度が減少していく。その結果、骨折しやすくなる。 骨密度は、20-50 歳までが最大で、以降次第に減少する。 若年者の平均骨密度(YAM)の 80%以上が正常で、70%未満を骨粗鬆症とし、 70-80%を骨量減少症とする。 我国では、骨粗鬆症は、50歳以上の男性では 3.2%、女性では 24%の罹患率である。 骨折は、大腿骨頸部骨折と脊椎椎体骨折が多く、寝たきりの原因になる。 また、寝たきり老人の約 10%は、転倒骨折が原因である。 健常人では、古くなった骨は絶えず吸収され、新しい骨に造り替 えられ、バランスが保たれている。 これに関与する細胞は、破骨細胞(osteoblast cells)と骨芽細胞(osteoclast cells)である。破骨細胞 は、多核細胞で、多くの波状縁(ruffled border)を 持ち、これが骨梁内に食い込み、酸や酵素(alkaline phosphatase)を分泌することにより、骨を溶かしていく。一方、骨芽細胞は、コラーゲンなどの基質タンパ ク質を分泌し、そこに基質小胞を埋め込 む。この小胞の中でリン酸カルシウムの結晶が成長して骨の 基質が完成する。そして自分の作った基質のなかに埋って骨細胞になる。 骨粗鬆症では、骨吸収が増加しているのに、骨形成が不十分な状態であ り、骨量が減少する。 その結果、骨の脆弱化がおこり、骨折の危険性が増大する。 骨破壊細胞を活性化するもの:エストロゲン欠乏 骨破壊細胞を抑制するもの:カルシトニン、エストロゲン、ビスホスホネート、デノスマブ 骨芽細胞を活性化するもの:運動、カルシウム、ビタミンD、副甲状腺ホルモン間欠投与 2、骨粗鬆症の原因 1)性ホルモンの低下 女性ホルモン、男性ホルモンとも骨の形成を促進し、骨の減少を抑制する作用がある。 女性では閉経期から、男性では70才前後から性ホルモンが低下するので、退行期骨粗鬆症に なりやすくなる。 2)カルシウムの摂取不足や運動不足 牛乳や乳製品にはカルシウムが多く含まれているが、日本人は牛乳や乳製品の摂取量が少ない。 年齢と共に運動量が低下するので、骨粗鬆症の原因になる。運動をすることにより、 骨に圧力を加えるだけでなく、筋肉も強くなるので、骨形成を促進する。 3、骨粗鬆症の治療薬 大規模臨床試験で、alendronate、risedronate と raloxifene の骨折防止効果が示されている。 婦人科領域では、50歳代では更年期障害の有無で、HRTか raloxifene を選択し、 60歳代では raloxifene を、大腿および椎体骨折の増加する75歳以上では bisphosphonates が 第一選択薬として使用されている。 分類 薬物 作用機作・副作用など 骨吸収抑制作用がある。Estrogen によるホルモン補充療 法(HRT)は、子宮癌と乳癌のリスクがあり、使用頻度が低 estriol estrogens raloxifene bazedoxifene 下している。 raloxifene と bazedoxifene は、SERM (selective estrogen receptor modulator)と呼ばれ、骨形成や LDL コレステロー ルには agonist として働き、乳腺や子宮には antagonist とし て働き、骨吸収の抑 制と、乳癌と子宮癌のリスクを抑える。 副作用は、ほてり感と足の痙攣(こむらがえり)。 骨 第一世代: 吸 etidronate 収 第二世代: 抑 bisphophonates alendronate 制 第三世代 薬 risedronate minodronate calcitonin elcatonin caltitonin salmon vitamin K menatetrenone ipriflavone ipriflavone 破骨細胞に働き、骨吸収を抑制する。ハイドロアパタイトに 結合した薬物が骨吸収と共に破骨細胞に取り込まれ、骨 吸収を抑える。 副作用は、消化器症状で、特に食道潰瘍。 第一世代は吸収が悪く、高用量で骨軟化症を生じる。 minodronate は、月1回投与で有効。 骨吸収を抑制するホルモン。 骨基質蛋白質の osteocalcin の活性化に Vit K が必要であ り、活性化された osteocalcin がカルシウムと結合する。 骨吸収抑制作用と、estrogen の calcitonin 分泌促進作用を 増強する。 モノクロナール 抗体(mAb) 骨 形 成 薬 parathyroid hormone (PTH) そ の vitamine D 他 raloxifene alendronate 破骨細胞の分化を促進する NF-κB 活性化受容体リガンド denosumab (RANKL)に結合し、骨吸収を抑える。6 ヶ月に 1 回の皮下 注射でよい。副作用は低カルシウム血症。 PTH teriparatide alfacalcidol calcitriol 欧米で使用されている。 週1-2回の間欠投与で強い骨形成促進作用がある。 teriparatide は遺伝子組み換え PTH(1-34) Vit D は消化管からのカルシウムの吸収を増加させる。 (参考)骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン 2015 年度版 非椎体 大腿骨 骨折 近位部骨折 B B C C C C C A or B A or B B C ビタミン K2 製剤 B B B C ビスホスホネート製剤 A A A or C A or C SERM A A B C カルシトニン薬 B B C C 副甲状腺ホルモン薬 A A A or C C 抗 RANKL 抗体 A A A A 薬物名 骨密度 椎体骨折 カルシウム薬 B 女性ホルモン薬 活性型ビタミン D3 製剤 骨密度 A:上昇効果あり、B:上昇するとの報告あり、C: 上昇するとの報告なし 椎体・非椎体・大腿骨近位部骨折 A:抑制する、B:抑制するとの報告あり、C: 抑制するとの報告なし 4、話題 PTH は唯一の骨形成薬であるが、2年以内の 使用期限があるので、骨吸収抑制薬を引き続いて投与 すると効果が持続するかどうかを調べた。米国の California 大学で、閉経後女性に最初の1年間は parathyroid hormone(PHT-1-84)を投与してから、次の1年間を palcebo 投与群(60 人)と alendronate 投与群(59 人)に分け、脊椎骨などの骨密度を測定した。PTH の1年間投与で、脊椎骨の骨密度は 30%増加したが、続く1年間の placebo 投与群では、14%まで骨密度が減少してしまった。 しかし、alendronate 投与群では骨密度の減少が完全に阻止された。 (D.M.Black et al, New Engl. J. Med., 353, 555, 2005) (2015/11/18)
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