第8回学習会 2014年11月2日(日) 10:00~11:00 電気ビル共創館 3階カンファレンスB 血管石灰化、残された透析の問題点 池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック 池田 潔 本日の話 1 血管石灰化がなぜ起きるのか? 2 石灰化の判断 3 ビタミンDの静注療法をなぜ早くから開始す るのか? オキサロール、ロカルトロール 4 りん吸着薬の種類 5 皆さんのりん、PTH,のデータの推移 二次性副甲状腺機能亢進症の病態 骨吸収が亢進 PTH PTH Ca PTH Pi PTH PTH PTH Pi Ca PTH 線維性骨炎 生命予後 の増悪 Ca Pi Ca Pi Ca Pi Ca Pi Ca 血管石灰化 血中Ca, Pi値 の上昇 線維性骨炎 骨膜下吸収像 Salt & pepper像 Rugger jursey像 異所性石灰化 血管石灰化 腫瘍状石灰化 Case 1 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 84 男 0年7か月 糖尿病性腎症 Ca 8.4 P 3.8 PTH 114 腹部CT所見 Case 2 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 60 男 1年1か月 糖尿病性腎症 Ca 9.7 P 5.2 PTH 84 腹部CT所見 Case 3 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 34 男 1年11か月 糖尿病性腎症 Ca 8.9 P 5.8 PTH 150 腹部CT所見 Case 4 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 58 男 3年2か月 糖尿病 Ca 8.9 P 5.3 PTH 114 腹部CT所見 Case 5 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 56 女 4年0か月 糖尿病 Ca 9.2 P 4.0 PTH 26 腹部CT所見 Case 6 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 81 男 5年8か月 糖尿病 Ca 8.5 P 4.4 PTH 115 腹部CT所見 Case 7 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 80 男 14年6か月 IgA腎症 Ca 8.3 P 5.1 PTH 170 腹部CT所見 Case 8 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 53 女 24年6か月 糖尿病性腎症 Ca 8.1 P 6.0 PTH 24 腹部CT所見 Case 9 : 年齢 性別 透析歴 原疾患 66 女 25年10か月 慢性糸球体腎炎 Ca 8.9 P 4 PTH 114 腹部CT所見 PTH分泌を促す因子は? PTH 高Pi血症 低Ca血症 PTH PTH PTH PTH PTH PTH VitD欠乏 線維性骨炎 異所性石灰化 血中Ca,Piの補正およびVitDを補充しても改善しない症例が存在する 慢性腎不全 PTH PTH PTH PTH PTH PTH これらを補正すると改善するはず × 低Ca血症 × 活性型VitDの欠乏 × PTH PTH PTH PTH PTH 高リン血症 血中Ca・リンを是正し活性型 VitDを補充しても,PTH値が 低下せず, PTHの自律性分泌 が持続する症例が存在する 副甲状腺過形成の質的・量的変化 Diffuse hyperplasia 腫大した副甲状腺(特に結節性過形成)では… VDRやCaSRの発現低下に伴う感受性の低下 質的変化 細胞数増加による基礎分泌量の増加 量的変化 Nodular hyperplasia Single nodule 内科的治療に抵抗性を 示すようになる 《仮 説》 早期からの ビタミンD静注療法 びまん性過形成と考えられる時期から,ビタミンD静 注療法を行えば,結節性過形成への進展を防ぐこ とができ,内科的に良好なコントロールができる. 従来の ビタミンD静注療法 静注群では副甲状腺腫大を抑制できた ! P=0.007 P=0.006 1000 総副甲状腺体積 (mm3) 最大副甲状腺体積 (mm3) 500 400 300 200 100 0 経口群 静注群 500 0 v 経口群 静注群 Taniguchi M et al, Neprol Dial Transplant, 2008 早期からのビタミンD静注療法のより,長期的な二次性 副甲状腺機能亢進症のコントロールが可能になる. Diffuse hyperplasia 透析後にオキサロールとロカルトロールを 静注する治療 早期からのビタミンD静注療法 ・ 副甲状腺腫大抑制 ・ VDRやCaSRの発現保持 ・ 血中Pi, Ca, PTHの 良好なコントロール ・ PTXの回避 Nodular hyperplasia Single nodule (従来の)ビタミンD静注療法 ・ 副甲状腺腫大の進展 ・ 血中Pi, Ca, PTHの コントロール困難 ・ PTXを要する場合が多い 慢性腎臓病と骨ミネラル代謝異常の 治療概念 血管石灰化と生命予後 血管石灰化 血管石灰化は(おそらく)生命予後を増悪させる 血液透析患者を対象に、超音波検査で総頸動脈、腹部大動脈、 鼠径動脈、足背動脈の石灰化を調べ、スコア化した(0~4点) Blacher J et al, Hypertension 38: 938-942, 2001 透析患者におけるリン制限 食事 1000mg/日 一部は、 腸管内に分泌 骨形成に動員 90% 血漿中 リン 1% 腸 軟部組織 9% 700mg/日 便 300mg/日 骨 尿 700mg/日 透析 400mg/日 *透析患者のリン制限=700〜800mg/日 (秋葉 隆, 腎と骨代謝, 1999) (健常人:1100〜1400mg/日) (透析骨症に対する食事, 透析骨病変) 食事におけるリン制限 P摂取量は蛋白摂取量と強い相関を示すことから,過度 のP制限により栄養状態の低下を来し,予後を増悪させる 可能性がある. したがって,ここでいうP制限とは,Pの多く含まれる乳製 品や小魚類,さらに保存料などのP含有添加剤が多く含 まれる加工食品,インスタント食品,菓子,コンビニ弁当 などの摂取を控えることが肝要である. とは言え,食事療法だけで 700mg/日以下を達成するのは困難である. 過度の蛋白制限は,生命予後を増悪させる可能性があり注意が必要である. (30,075名の血液透析患者,3年予後) 蛋白摂取 ↑,P摂取 ↑ 蛋白摂取 ↑,P摂取 ↓ 蛋白摂取 ↓,P摂取 ↑ 蛋白摂取 ↓,P摂取 ↓ Shinaberger CS et al, Am J Clin Nutr 88: 1511-1518, 2008 リン吸着薬 1. 2. 3. アルミニウム製剤 (アルミゲル® ) Al毒性 (脳, 骨, 貧血)のため、透析患者への投与は禁忌 炭酸カルシウム (カルタン® )(Ca含量 40%) 1980年後半から主流になるものの高Ca血症が問題点 H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬との併用で効果激減 酢酸カルシウム (Phos-Ex ®) (Ca含量 23%) リン吸着能は炭酸カルシウムの2倍 日本薬局方には収載されていない 2, 3 は、Caを含有していることが問題点 Ca製剤は食直後に服用するのがコツ(食中や食前に飲むより効果的) 胃酸分泌抑制薬(ガスターなど)の減量もしくは中止 必ず間食するような患者には、間食用のリン吸着薬を処方してもらう Ca非含有リン吸着薬の方が、生命予後が良い 「Ca含有(カルタン)」を使用しない Block GA et al, Kidney Int: 2007 透析患者では、血中 Ca 濃度を上げない方がよい (8.4~9.5mg/dl) 1日に服用できる炭酸カルシウムは3gまでとした. <K/DOQI ガイドライン2003> Ca を含有しないリン吸着薬が望まれた レナジェル®, フォスブロック® リオナ、キックリン、 ホスレノール <長所> Al蓄積、高Ca血症が見られない LDLコレステロールを低下させる ホスレノールはレナジェルの200倍の吸着力 <短所> Ca, Al製剤よりリン吸着力が弱い (カルタン(500mg) 1錠 ≒ レナジェル(250mg) 3~4錠) 便秘・腹部膨満を認める、(腸管穿孔の報告あり)、下痢 レグパラ投与により,ビタミンDが使いやすくなる ~レグパラはビタミンDの引き立て役~ レグパラ レグパラ投与が, VDRの発現を亢進する (Rodriguez, et al, 2007) VitD投与が,副甲状腺の CaSRの発現を亢進する (Taniguchi, et al, 2007) (Canaff et al, 2002) Vit D Pi, Ca低下作用 増量を 可能にする * さらなる 生命予後の改善 * RAS系の制御 心肥大抑制 動脈硬化炎症 プロセスの抑制 『9分割図』 改定の提案 7 高Ca血症の要因検索 透析液Ca濃度の変更 を検討 炭酸Ca ↓ Ca非含有P吸着薬 ↓ 活性型ビタミンD ↓ 10.0 血清補正Ca値 8.4 透析液Ca濃度 の変更を検討 レグパラ ↑* 8 Ca非含有P吸着薬 ↓ 炭酸Ca ↓ 活性型ビタミンD ↑ (mg/dl) 4 1 炭酸Ca ↓ 炭酸Ca ↓ Ca非含有P吸着薬 Ca非含有P吸着薬 ↑ へ切り替え 活性型ビタミンD ↓ 活性型ビタミンD ↓ レグパラ ↑ * レグパラ ↑ * 5 P, Ca 管理目標値 活性型ビタミンD ↑ 9 炭酸Ca ↑ 炭酸Caの食間投与 活性型ビタミンD ↑ レグパラ ↓ ** Ca非含有P吸着薬 ↓ 炭酸Caの食間投与 活性型ビタミンD ↑ レグパラ ↓ ** 3.5 食事摂取量および 栄養状態の評価 6 2 Ca非含有P吸着薬 ↑ 炭酸Ca ↑ 活性型ビタミンD ↓ レグパラ ↑ * 3 炭酸Ca ↑ Ca非含有P吸着薬 ↑ レグパラ ↓ ** 6.0 血清P値 (mg/dl) 十分な透析量の確保 食事指導(P制限) 「↑」は開始もしくは増量、「↓」は減量もしくは中止を示す。 * 血清PTH濃度が高値,** もしくは低値の場合に検討する. #1 PTHとリンの関係 2012年 (pg/mL) 1100 1000 900 800 700 600 PTH 500 400 300 200 100 0 ※相関係数:0.13 1 2 3 4 5 リン 6 7 8 (mg/dL) #2 PTHとリンの関係 2014年 (pg/mL) 400 300 PTH 200 ※相関係数:-0.06 100 0 1 2 3 4 5 リン 6 7 8 (mg/dL) #3 カルシウムとリンの関係 2012年10月 n=67 10.0< 8.4-10.0 Ca<8.4 (mg/dL) 2 5 1 (3.0%) (7.5%) (1.5%) 7 42 6 (10.4%) (62.7%) (9.0%) 1 2 1 (1.5%) (3.0%) (1.5%) P<3.5 3.5-6.0 6.0< (mg/dL) #4 カルシウムとリンの関係 2014年10月 n=67 10.0< 8.4-10.0 Ca<8.4 (mg/dL) 1 12 2 (1.5%) (17.9%) (3.0%) 10 37 5 (14.9%) (55.2%) (7.5%) 0 0 0 (0.0%) (0.0%) (0.0%) P<3.5 3.5-6.0 6.0< (mg/dL)
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