小学校体育授業に於ける時間配当に関する研究ま 岡沢 大友 高橋 祥訓(奈良教育大学・体育学教室)” 智(東大寺学園) 健夫(筑波大学・体育科学系) 要旨:本研究の目的は、体育授業の効果的な時間配当のあり方を求めるための 基礎資料を得ることであ私小学校の現職教師19名・教育実習生15名によって 行われた74体育授業の時間配当のデータを分析した。その結果、現職教師は 「補助課題」に4.7分、r主課題」に16.5分・一「準備・整理運動」に2.9分・「説明」 に10.7分、「マネージメント」に3.2分、「準備・後がたづけ」に415分費やして いることが明らかになった。 キーワード:体育授業、時間配当、教授活動 I.諸 言 小学校の体育授業は45分というきわめて限定された時間の中で行われるものである。この時間 量で授業成果を十分にあげることは、容易なことではない。このような限られた時間内に十分な 成果をあげるためには、現実の授業で時間の浪費を減少させること、有効な学習時間をできるだ け多く確保すること、学習活動を円滑に進めることが必要になる。また{授業実施に当たっては、 綿密な授業計画の作成が要求される。さらに、授業をスムーズに展開させ学習成果を高めるため には、どのような活動にどれだけの時間を配分すればよいのかという授業計画が重要な要因とな る。 有効な学習時間がどの程度確保されているのかを分析するための組織的観察法には、ジーデン トッフらによって開発されたALT−PE観察法’〕がある。このALT−PE観察法は、体育授拳で起こ る生徒の学習行動を一定のカテゴリーに分類して観察・記録するプロセス分析法であり、体育授 業における生徒の学習行動に焦点を当て、それらを客観的に分析することによって体育授業の実 態や問題点を明らかにしようとする授業分析法である。ALT−PEとは、「生徒が体育的内容に有 ’Study on the distribution of PhysicaユEducation c1ass hours in E1ementary Schoo1. ”Yoshinori OKAZAWA (Department of Physica1Eaucation,Nara University of Education,Nara630,Japan) Satoshi OTOMO (Todaiji High Schoo1,Nara631,Japan) Takeo TAKAHASHI (Institute of Hea1th and Sports Sciences,University of Tsukuba,Ibaraki305,Japan) 一21一 効かっ成功裡に従事する時間の割合」’〕と定義されている。そして、このALT−PE量が多いほど 学習成果も高くなるという仮説に立っており、それを高めるための方策も模索されている。4〕し かし、このALT−PE観察法は使用上いくつかの難点を有している。すなわち、ALT−PE観察法を 用いるためには、かなりの熟練が必要である点である。この点を改善する方法が岡沢ら3〕によっ て検討され、かなり簡便な方法が開発されている。しかし、教育実習の事前・事後指導あるいは 教員研修等で、学生あるいは教師がすぐに使用できるかというと困難な部分があると思われる。 生徒の学習活動を即座に判定・分析することが困難であること、つまりカテゴリーの概念が即座 に理解でき実際の授業場面で判断できるものばかりではない。また、これまでの研究では、学習 行動の次元及びA L Tの次元といった生徒の成功裡な学習活動に焦点が絞られ、授業計画と実際 の授業の展開とのずれにっいて検討するような利用はされていない。 我々もALT−PE観察法を利用して中学校や小学校の体育授業を分析してきた2川が、授業計画 と実際の授業との差異を十分検討するまでには至らなかった。多くの体育授業に於て、どのよう な活動にどの程度の時間が配当されているのか、その一般的な姿を明らかにすることによって授 業計画段階での配当時間に関する検討や授業実践者の教授技術に関する課題の把握・あるいは授 業計画と授業実践とのずれを検討することができると考えられ孔 そこで本研究においては、体育授業の効果的な時間配当のあり方を求めるための基礎資料を得 ようとした。そして、ALT−PE観察法の教授内容の次元を若干修正しながら、教師の時間配当を 容易に分析するための時間分析観察法を作成し、この時間分析観察法の授業場面での利用につい て検討した。 ■.方 1.対 法 象 表1に示すように、奈良県下12校及び、東京都下2校の小学校計!4校19名の現職教師が担当し た52体育授業と、教育実習として奈良教育大学3回生7名及び香川大学3回生8名が担当した22 体育授業、計74体育授業を対象とした。 表1 対象(教師、教材、授業時間) 現日教師 教育実習生 計 基本の運重力 ポール運動 器械運動 陸上運動 その他 教師徴 19 15 34 3 9 19 授業時数 52 22 74 4 16 26 2.期 12 19 5 9 日 授業の観察は昭和62年5月から10月下旬及び昭和63年9月上旬から10月上旬、及び平成元年9 月上旬から10月上旬にかけて行われた。 3 時間分析観察法 教授活動に対する時間配当が明確になるように、ALT−PE観察法をもとにして時間分析観察法 一22一 を作成した。(注1)。 ビデオ収録された対象となる教師の体育授業を「教授活動の時間配当」について、「準備・整 理運動」、「準備・後がたづけ」、「マネージメント」r説明」r主課題」r補助課題」、「演示」、r移 動」、「待機」の9つのカテゴリーからなる時間分析観察法に従って、観察・記録した。 次に記録のとり方について説明すると、コンピューターに内蔵してあるタイマーを使い、ある カテゴリーから次のカテゴリーまでの時間をリアルタイムで記録していく。ひとつのカテゴリー は、生徒がひとりでも教師の説明・指示等に従い次の新しいカテゴリーに移行した時点で終了と した。このようにして、各カテゴリー総時間数が1授業の総時間数に対する割合を算出した。 4.時間分析のカテゴリーとその定義 ①準備・整理運動 安全に学習活動を行うことのできるように最初にウォーミングアップを行う、あるいは学習活 動を終えたあとにクーリングダウンを行う場面。これはラジオ体操、ストレッチ体操といった運 動以外の運動(エアロビクス、鬼ごっこの様なあそび的要素を含んだもの)も含む。 ②準備・後がたづけ 運動用具、教具の搬出や配置、グラウンドにラインを引く、砂場をとんぼを使ってならすなど の学習活動を行うことのできる状態をつくる活動及び後がたづけの場面。 ③マネージメント 教授活動に関係なく、授業運営を円滑に進めるために当てられる時間。(例:ゲームを行うた めのチーム編成、練習を行うための組織化、出欠席をとるなど。) ④ 説 明 教材などについての情報を与える知的活動時間。質問したり、解答したり、考えたりする時間 もこれに含まれる。 ⑤ 主課題 その日の授業課題とされる運動技能課題に配当された技能練習時間。 ⑥ 補助課題 主課題の達成を補助するために配当された技能練習時間。(例=台上前転を行う前にマット上 で前転の練習をするなど。) ⑦ 演 示 模範演技による、運動技能の構造要素を視覚的に生徒に示唆を与える活動の場面。これには教 師が行う場合と生徒が行う場合の2通りがある。 ⑧ 移 動 ある活動から仲の活動へと移っていくまでの時間。(例:生徒がグラウンドの砂場から鉄棒の 前に移動など) ⑨ 待 機 実際に授業が開始される前や、ある学習と次の学習との間の、何も学習活動がおこなわれてい ない時間。 一23一 皿.結果と考察 1.教師のタイプによる時間配当の違い 現職教師の時間配当に関する結果は表2に示されているように、補助課題10.38%(4.7分)、 主課題36.67%(16.5分)、準備・整理運動6.50%(219分)と運動に従事している時間は全体で、 53.58%(24.1分)と授業時間の約半分であ乱説明に23.67%(!0.7分)・マネージメントに7.19 %(3.2分)、準備・後がたづけに1O.08%(4,5分)を費やしている。 表2 教師のタイプによる時間配当の違い カテゴリー 現 職 教 師 t値 (N=52) 実 習 生 (N−22) 補 助 課 題 10.38(13.60) 2.28ホ 4.90( 6.99) 準備・後がたずけ 10.08(7.62) 0.70 1.57 8.68(8.37) 1.09(0.97) 移 動 1.56( 1.24) 説 演 明 示 23.67(8,67) 主 課 題 準備・整理運動 マネージメント 待 機 一3.85‡}‡ 32.■5( 9.66) 2.9一(3.71) 36.67(17.67) 1.02 0.94 6.50( 6.00) 7.19(6.35) 2.14“ 一3.10‡“ 2.00(3.56) 33.36(11.79) 4.09(3.56) 12,64(8.09) 0.85( 1.35) 0,61 0.6■( 1.36) ()内標準偏差。 ‡ PくO−05 ’■ Pく0.O1 舳“PくO.O01 教育実習生の時間配当の結果は表2に示されているように・補助課題4.90%(2.2分)・主課題 33.36%(1510分)、準備・整理運動4.90%(2.2分)と運動に従事している時間は全体で、43.1% (1914分)と約4割である。説明に32,45%(14.6分)、マネージメントに12.64%(5.7分)、準備・ 後がたづけに8168%(3.9分)を費やしているこれらの結果は学年や教材を無視した平均値であ り、この結果を比較して即授業評価を行うことはできない。 上記の現職教師と教育実習生の各カテゴリーの出現パーセントの差異を検討するためにt検定 を行った。教育実習生が、「準備・整理運動」に配当した時間は全授業時間の4.09%を示し、現 職教師の6.50%と比較して有意に低い値を示している。準備運動は生徒がその授業時間内の体育 的活動を効果的に、また安全に行うことができるように身体をほぐさせること目的としている。 そのため現職教師の行う準備運動は教材によって変化し、主課題あるいは補助課題を行うに足る だけの身体ができていると判断されるまで準備運動を行うために、教育実習生よりも多めの時間 をかけていると考えられる。これは準備運動の目的となる生徒の安全面に注意しているためであ ると思われる。また、ゲーム形式にして班ごとに競争させるなどの工夫をして生徒に興味をもた せ、その授業に積極的に取り組ませることにも応用していることもその要因のひとつであると考 えられる。授業において一番最初に行う体育的活動である準備運動を現職教師はこのように扱っ ているのに対して、教育実習生は教材によって変化することはあまりみられず、ラジオ体操や屈 伸、伸脚などの軽い運動だけを行っているにすぎず、それが終了するとすぐ次の課題へと進めて いる。これは自分の立てた計画どうりに授業を進。めていくことだけにとらわれ、生徒の身体の状 一24一 態のことを考えるまでにいたっていないためと考えられる。 「説明」に配当された時間は教育実習生が32.45%と現職教師の23.67%と比較して有意に高い 値を示している。「説明」は新しい活動を導入したり、ゲームなどの活動の戦術、また一層高度 な技能の指導など認知学習をすることで生徒に学習内容を意識づけることを目的として行われる。 このカテゴリーでは教育実習生の方が有意に高い値を示しているが、これは生徒が理解しにくい 説明であるために同じこ÷を繰り返ししゃべっていると考えられるgまた、学習や練習の手j順の 説明に一貫性がなく途中で何度も変更するためであると考えられる。現職教師にはこのような時 間はあまりみられず、その時間を他の活動時間に費やしていると考えられる。 「補助課題」に配当された時間は教育実習生が4190%と現職教師の10,38%と比較して有意に少 なく、現職教師の半分以下の値を示している。「補助課題」は主課題の難易度とも関係するが生 徒の運動学習の安全を確保し、主課題において成功を収めるように指導する上で重要なものであ ると考えられる。現職教師は課題設定の段階で生徒の運動能力、教材などを把握し、その場面に 応じた「補助課題」を学習させることによって、主課題へのスムーズな導入を図っているのでは ないかと考えられる。これに対して教育実習生は授業計画立案の段階において生徒の運動技能を 明確に把握することは難しく、また教材研究の不足によって主課題につながる効果的な「補助課 題」を設定することが困難であることが例える。 次に「マネージメント」に配当された時間は教育実習生が12.64%を示し現職教師の7.19%と比 較して有意に高い値を示している。「マネージメント」は生徒を管理し、教授活動を円滑に進め るために行うものである。教育実習生は、この「マネージメント」に費やす時間を必要最小限に 押さえて減少させ、その時間を体育的活動に費やすための「マネージメント」技術が未熟である と考えられる。現職教師は、授業の進行の仕方などをこれまでの授業の間に生徒に約東ごととし て理解させ、それを守らせることで「マネージメント」時間の浪費を防ぐことを行っている。し かし、教育実習生は限られた期間内で生徒とのコミニケーションを図ることが難しいため、そう いった約東ごとが明確に理解されておらず、授業中に生徒をきちんと並ばせられない、説明どう り動かすことができないなどから無駄な「マネージメント」時間を費やしていると考えられる。 2 教材による時間配当の違い 教材による時間配当の各カテゴリーごとの差異を分析するために一要因分散分析を行った。表 3はその結果である。 表3に示されているように、「準備・後がたづけ」において一要因分散分析の結果[F=3,77, P<0.05]有意差が認められた。また多重比較の結果、ボール運動と器械運動、複合運動と器械 運動、陸上運動と器械運動との間に有意差が認められた。中でも器械運動が一番高い値を示して いる。これは他の教材と比べて器械運動の授業に使用するマットや跳箱などの運動用具が大型で あるために「準備・後がたづけ」をする時に多人数が必要とされること、また体育倉庫の広さと も関係するが一度に多くの運動用具を搬出できないために一つのグループが体育倉庫の中にいる 時に他のグループは外で待機していなければならないためであると考えられる。 「演示」において一要因分散分析の結果[F=8,69,P<O.001]有意差が認められた。また多重 一25一 表3 教材による時間配当の差異 器械運動 陸ト運動 ボール運動 その他 一一 ω・10〕 カテゴ1」一 ω・10工 ‘一・15, {咋。〕 [固分散分析 F f直 M(SD〕 M{SD〕 . M{SD〕 多重比較(LSD.05〕 M‘SD〕 ■ 題 ll.6τ{13.刊〕 5.m{10.80〕22100(15.32〕 3.OO:3.0心 5.53‡} その他くボール陸ヒ<ポール器械<ポール 準備・後がたづけ 14.28‘τ.捌 O.20‘O,OO〕 5.60{6.㎜〕 o.ll{8.皿1〕 5.η^ ボール<器械その他<器械陸ト<器械 1.胴〔I.Oln 1.lOい1.馴 2.3“2.12〕 21τo 23,03{6.60)21、τO〔O.OO〕 2τ.OO‘O.02〕 補 助 課 移 動 1.1τ{o.80〕 説 明 22.8900.52〕 演 示 5.τ2い.2ω 題 3I.83“0.52〕 主 課 O.0τ{0.00〕 0.05 1.20‘1.τ5, 0.I1{3.τ2〕 佃.20‘lI.05〕一2.lo伽.oτ〕 40.50{O.醐〕 I.55 o.57 8.00‡^ヰ 準備・整理運動 τ.“‘0.00〕 売.〃=3.柵〕 5.20u.鋤 τ.τ8〕.oo〕 マネージメント 4.OI‘5.92〕 8.0τ{5.90〕 lO.10{O.OO〕 6.30U.00〕 2.25‡} 撤 O.1I{0.柵〕 I.80{1.刊〕 O,40−O.τ0〕 1.22‘1.ω o.州■‡} 待 芋主〕 陸ヒ<器械ボール<器械その他<器械 器械<その他 隆止=ボール<陸ト U受業さ安 = 52〕 ‘o oく0.05・.印く0.OI.‘‘o(0.OOi〕 比較の結果、陸上運動と器械運動、ボール運動と器械運動、複合運動と器械運動との間に有意差 が認められた。中でも器械運動が一番高い値を示している。これは他の教材と比べて器械運動は、 身体の操作の仕方がそのまま、できる・できないという結果に結び付いてしまいやすいために教 授内容を明確に理解させる必要性がある。そのため言葉による説明だけでは不十分であると考え られ直接視覚にうったえることのできる「演示」を多く行うことになると考えられる。 「補助課題」において一要因分散分析の結果[F=5.53,P<O.01]有意差が認められた。また 多重比較の結果、複合運動とボール運動・陸上運動とボール運動、器械運動とボール運動との間 に有意差が認められた。中でもボール運動が一番高い値を示している。これは他の教材と比べて ボール運動が段階的に「補助課題」を行って生徒に無理なく課題目標に到達させるように行われ ていることを示している。つまり、比較的容易に補助課題が設定されていると考えられる。 「待機」において一要因分散分析の結果[F=6.44,P<01001コ有意差が認められた。また多 重比較の結果、器械運動と複合運動・陸上運動、ボール運動と陸上運動との間に有意差が認めら れた。 lV.摘 要 本研究においては、小学校の現職教師19名、教育実習性15名によって行われた74体育授業を対 象として観察・記録し得られた教授活動の時間配当のデータを①現職教師と実習生、②教材別の 2つの観点から比較、検討を行うことによって、体育授業の効果的な時間配当のあり方を求める ための基礎資料を得ようとした。 その結果、次に示す諸点が明らかとなった。 ①現職教師は「補助課題」に4.7分、「主課題」.に16.5分、「準備・整理運動」に2.9分、「説明」 に10.7分、「マネージメント」に3.2分、「準備・後がたづけ」に4.5分費やしていることが明らか になった。 ②現職教師と教育実習生との比較の結果、教育実習生は「マネージメント」、「説明」に費やす 一26一 時間が多く、逆に「準備・整理運動」「補助課題」に費やす時間が少ないことが認められた。こ れは、教育実習生のマネージメント技術の不足、説明の不明確さなどを示していると考えられ る。 ③教材別の比較の結果、器械運動は他の運動より、大型の運動用具を多人数で運搬、配置する ため「準備・後片づけ」に多く時間を費やし、また、身体の操作の理解が授業課題の達成に重要 な要因と考えられるため演示を多く行う。ボール運動では「補助課題」に、陸上では「待機」に 多く時間を費やすことが明らかとなっれ 以上のように、本研究で作成した時問分析観察法によって、教育実習生の問題点や教材別の特 徴はある程度検出できることが明らかになった。 本研究での分析はVT Rに収録された授業を再生しながら分析を行うという方法をとった。問 題点としては、活動が変化した最初の段階でどのカテゴリーに分類すればよいのか判断すること は困難であった。本研究においては、VT Rを数回再生して授業の流れを理解した後に分析した が、それにもかかわらず失敗を繰り返した。それゆえ、この時間分析観察法を授業現場で利用す るためには、事前に授業計画を理解し、授業の流れを把握した上で実際の授業観察・分析を実施 することである。さらに、VT Rに収録したあとで観察・分析を行う場合は、授業者立会いのも とで実施する必要があると考えられる。授業現場で分析するためには、授業場面での運動が主課 題、補助課題、準備・整理運動の3つのカテゴリーに分類されるのかを授業者と分析者の間であ らかじめ決定しておくこと、マネージメント場面と演示場面への時間配当の分類については教師 の発言よりも場面設定を重視し、それらの場面に時間が配当されたと分析することが必要である と考えられる。以上のような修正を加えることによって授業現場で分析可能な時間分析法になる と思われる。 〈注1〉 ALT−PE観察法との主な相違点は、以下の通りである。 1)「マネージメント」について、従来、準備・後がたづけ及び授業運営に配当された時間量 をこのカテゴリーとして分類してきたが、それらに対する配当時間を明確にするために2っ のカテゴリーに細分化した。一つは、授業のr準備・後がたづけ」で、もう一つは学習方法 に関わる指示という意味での「マネージメント」である。 2)r個人的技能練習」「集団的技能練習」「ゲーム」のカテゴリーについて、教師が技能成果 に向けでどのように技能練習時間を配当をしたかを分析するために、「主課題」と「補助課 題」の2つのカテゴリーに分類しなおした。つまり、教師がその日の授業課題を達成するた めに設定した多くの課題を質的に分析しようとし㍍ 3)「知的活動」について、知識に関わっ.た配当時間をすべてこのカテゴリーに分類していた が、運動技能の構造要素を視覚的に生徒に示唆する活動場面を「演示」とし、それ以外の知 的活動を「説明」とした。 一27一 〈文 献〉 1)Metz1er,M.W.The measurement of academic1eaning time in physica1education,Doc tora I dissertation,University Microfi1ms Internationa1,No.8009314:Michigan, 1979. 2)岡沢祥訓、高橋健夫、大友智「体育授業における生徒行動や生徒の授業評価に及ぼす要因の 検討一中学校の体育授業のALT−PE分析を通して一」、奈良教育大学紀要、37−1=49−59. 1988. 3)岡沢祥訓・高橋健夫・大友智・清藤昭裕・芳本真:ALT−PE観察法の簡便化に関する検討一 特に観察生徒数の制限と観察インターバルの拡大について一、奈良教育大学紀要、第39 巻、第1号、71−82.1990 4)Siedentop,D、,Deve1oping teaohing ski11s in physica1education,2nd ed.,Mayfie1d Pub 1ishing Company:Ca1ifornia,1983. 5)高橋健夫・岡沢祥訓・大友智「体育のA L T観察法の有効性に関する検討一小学校の体育授 業分析を通して一」、体育学研究、34−1:31−43.1989、 <付記〉本研究は文部省科学研究費(一般B課題番号(01450106)研究代表者 岡沢祥訓)を得 て行われた。また、本研究は、平成2年度奈良教育大学卒業生見渡英治君の協力を得て行われた。 一28一
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